(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6096048
(24)【登録日】2017年2月24日
(45)【発行日】2017年3月15日
(54)【発明の名称】電子装置
(51)【国際特許分類】
H05K 7/14 20060101AFI20170306BHJP
H05K 3/28 20060101ALI20170306BHJP
H05K 5/00 20060101ALI20170306BHJP
【FI】
H05K7/14 F
H05K3/28 G
H05K5/00 B
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-102827(P2013-102827)
(22)【出願日】2013年5月15日
(65)【公開番号】特開2014-225492(P2014-225492A)
(43)【公開日】2014年12月4日
【審査請求日】2016年4月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000115854
【氏名又は名称】リンナイ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000100562
【氏名又は名称】アール・ビー・コントロールズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106105
【弁理士】
【氏名又は名称】打揚 洋次
(72)【発明者】
【氏名】横山 考志
(72)【発明者】
【氏名】荒川 良平
【審査官】
石坂 博明
(56)【参考文献】
【文献】
特開2014−096438(JP,A)
【文献】
特開2005−291162(JP,A)
【文献】
特開平08−162742(JP,A)
【文献】
実開昭54−085361(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 3/28
5/00−5/06
7/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上方に開口したケーシングの内部に、回路基板の下面の全周にわたって接触して、回路基板をケーシングの底部から所定の距離を存して保持する保持部を形成し、保持部に回路基板を保持させた状態で回路基板の上面に樹脂を流し込むことにより、回路基板とケーシングの底部との間に樹脂が充填されない空間を残存させてポッティングされた電子装置において、上記ケーシングの内底面に環状の保持部を立設し、ケーシングの周壁と保持部との間に樹脂溜まり部となる空間を形成するとともに、この保持部の上面に全周にわたって上記回路基板を載置することにより回路基板を保持し、上記樹脂が回路基板の上面から樹脂溜まり部まで流れた状態で保持部を越えて保持部で囲まれた空間に樹脂が流れ込まないようにすると共に、回路基板に形成された位置決め穴に下方から挿通され、ケーシング内での回路基板の位置決めを行う位置決めピンを上記樹脂溜まり部内に立設したことを特徴とする電子装置。
【請求項2】
上記回路基板は、回路基板の周縁近傍に上下に貫通する開口を備えており、上記保持部を湾曲させてこの開口の下部空間を樹脂溜まり部側に連通させたことを特徴とする請求項1に記載の電子装置。
【請求項3】
上記回路基板は、回路基板の中央部近傍に上下に貫通する開口を備えており、上記保持部で囲まれた空間内に、この保持部と同じ高さの樹脂止め壁を環状に形成し、樹脂止め壁で囲まれた空間がこの開口の下方に位置するようにしたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電子装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路基板をケーシング内に位置決めした状態でポッティングした電子装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種の電子装置として、ケーシングの周壁の内面から内側に向かって水平方向に庇状の保持部を張り出して設け、その保持部の上面に回路基板を載置した状態で樹脂を流し込んでポッティングしたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このものでは、回路基板の上面に流し込んだ樹脂が回路基板の上面に沿って広がり、回路基板の上面に実装されている電子部品を樹脂で覆うが、保持部と回路基板との当接部分を樹脂が通れず、回路基板の下方に樹脂が充填されない空間が形成される。このように回路基板の下方に樹脂が充填されない空間を残存してポッティングを行うと、樹脂の使用量が減少してコストが削減でき、かつ、電子装置全体の重量が軽くなるというメリットがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−162742号公報(
図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来のものでは、回路基板を庇状の保持部に単に載置しているだけであるので、回路基板をケーシング内で位置決めすることができない。なお、このようにケーシング内で回路基板の位置決めを行う際には、回路基板の複数個所に位置決め穴を形成すると共に、庇状の保持部の上面に位置決めピンを形成し、位置決め穴に位置決めピンが挿通することによって回路基板の位置決めを行う構成が一般的である。
【0006】
ところが、回路基板に位置決め穴を設けると、位置決め穴と位置決めピンとの間の隙間を通って樹脂が回路基板の下方に漏出し、回路基板の下方の空間に漏出した樹脂が流入するという不具合が生じるおそれがある。
【0007】
このように樹脂が回路基板の下方に流入すると、回路基板の上部の樹脂量が減少するので、回路基板の上面に実装された部品が樹脂で覆われずに露出することになる。
【0008】
そこで本発明は、上記の問題点に鑑み、回路基板に位置決め穴などの貫通個所があっても樹脂が回路基板の下方の空間内に流入しない電子装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために本発明による電子装置は、上方に開口したケーシングの内部に、回路基板の下面の全周にわたって接触して、回路基板をケーシングの底部から所定の距離を存して保持する保持部を形成し、保持部に回路基板を保持させた状態で回路基板の上面に樹脂を流し込むことにより、回路基板とケーシングの底部との間に樹脂が充填されない空間を残存させてポッティングされた電子装置において、上記ケーシングの内底面に環状の保持部を立設し、ケーシングの周壁と保持部との間に樹脂溜まり部となる空間を形成するとともに、この保持部の上面に全周にわたって上記回路基板を載置することにより回路基板を保持し、上記樹脂が回路基板の上面から樹脂溜まり部まで流れた状態で保持部を越えて保持部で囲まれた空間に樹脂が流れ込まないようにすると共に、回路基板に形成された位置決め穴に下方から挿通され、ケーシング内での回路基板の位置決めを行う位置決めピンを上記樹脂溜まり部内に立設したことを特徴とする。
【0010】
上記構成では樹脂溜まり部を設けているので、樹脂とケーシングとの接触面積を従来のものよりも広げて樹脂がケーシングから剥がれにくくした。そして、位置決めピンをこの樹脂溜まり部の中に設けているので、位置決めピンが挿通される位置決め穴を通って樹脂が回路基板の下方に流れても、その樹脂は全て樹脂溜まり部内に流れ込み、保持部の内側の空間に流れ込むことはない。
【0011】
回路基板には位置決めを目的とするもの以外で上下に貫通する部分を有している場合がある。例えば、上記回路基板は、回路基板の周縁近傍に上下に貫通する開口を備えていれば、上記保持部を湾曲させてこの開口の下部空間を樹脂溜まり部側に連通させることが望ましい。
【0012】
あるいは、上記回路基板は、回路基板の中央部近傍に上下に貫通する開口を備えていれば、上記保持部で囲まれた空間内に、この保持部と同じ高さの樹脂止め壁を環状に形成し、樹脂止め壁で囲まれた空間がこの開口の下方に位置するように構成することが望ましい。
【発明の効果】
【0013】
以上の説明から明らかなように、本発明は、回路基板に位置決め穴を形成しても、その位置決め穴を通って回路基板の下方に流れた樹脂が回路基板の下方に形成される空間内に流れ込まないので、回路基板の下方に空間を確保した状態でポッティングを行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図3】樹脂を充填した状態での位置決めピンを示す断面図
【
図4】ケーシングの中央部に設けた樹脂止め壁を示す斜視図
【
図5】樹脂止め壁内に位置決めピンを設けた場合の断面図
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1を参照して、1は本発明による電子装置の一例である。この電子装置1は射出成形によるケーシング2内に、上面に電子部品が実装された回路基板3を配設し、その状態でウレタン樹脂等の未硬化の樹脂Pを流し込み、その樹脂Pを硬化させたものである。
【0016】
図2を参照して、ケーシング2には、ケーシング2の底面に立設した壁状の保持部21が連続して形成されている。そのため、ケーシング2の周壁とこの保持部21との間に溝状の樹脂溜まり部22が形成される。そして、本実施の形態では、樹脂溜まり部22内の3カ所に位置決めピン23を立設した。この位置決めピン23の高さはケーシング2の周壁よりも低いが保持部21よりも高く設定されている。
【0017】
一方、回路基板3には上記位置決めピン23に対応する位置に位置決め穴31を形成した。従って、回路基板3をケーシング2内に配設する際に、位置決め穴31に位置決めピン23が挿通され、回路基板3の位置決めが行われる。
【0018】
また、回路基板3には外部からの100ボルトの給電を受けるための1対の端子32が設けられており、両端子32の間には、両端子32間の絶縁性を高めるためのスリット33が設けられている。このスリット33は回路基板3の周縁から内側に向かって切り込まれている。
【0019】
上記位置決め穴31と位置決めピン23とによる位置決めがされた状態で、このスリット33を囲うように保持部21を湾曲させ、湾曲させることによって形成される空間24が樹脂溜まり部22に連通して形成されるようにした。従って、ケーシング2内に回路基板3を位置決めし、その状態で回路基板3の上面に樹脂Pを流し込むと、スリット33を通って樹脂Pは回路基板3の下方に流れ落ちるが、その流れ落ちた樹脂Pは全て空間24内に流れ落ち、樹脂溜まり部22内の樹脂Pと共に一体になるようにした。
【0020】
図3を参照して、位置決め穴31には位置決めピン23が挿通されているが、両者の間には若干ながら隙間が生じるため、その隙間を通って樹脂Pが回路基板3の下方へ流れる。ところが、位置決めピン23は樹脂溜まり部22内に位置しているので、この隙間を通って流れ落ちた樹脂Pも樹脂溜まり部22内の樹脂Pと一体となる。以上のように、位置決め穴31やスリット33が回路基板3に形成されていても、それらを通って流れ落ちる樹脂Pは全て樹脂溜まり部22内に留まるので、回路基板3の周縁から樹脂溜まり部22内へと流れ落ちた樹脂Pと共に、保持部21を越えて保持部21に囲まれた空間内に流れ込むことがなく、その結果、樹脂Pが硬化したあとは、回路基板3の下方に樹脂Pが充填されない空間が確保される。
【0021】
ところで、上記位置決め穴31やスリット33は回路基板3の周縁近傍に形成されていたので、それらを通って流れ落ちる樹脂Pを樹脂溜まり部22で受けることができたが、回路基板3の中央部近傍に開口がある場合には、その開口を通って流れ落ちる樹脂Pを樹脂溜まり部22で受けることができない。そこで、回路基板3の中央部近傍に位置決め穴31が存在する場合を、
図4を参照して説明する。
【0022】
図4に示すように、回路基板3の中央部近傍に設けられた位置決め穴31に対応する位置に位置決めピン23を立設した。そして、その位置決めピン23を囲繞するように樹脂止め壁25を形成した。この樹脂止め壁25は保持部21と同じ高さである。なお、
図4では他の位置決めピン23を図示していないが、
図2に示したような樹脂溜まり部22内に位置する他の位置決めピン23が適宜形成されているものとする。
【0023】
図5を参照して、この回路基板3の中央部近傍に形成した位置決め穴31と位置決めピン23との隙間から樹脂Pが回路基板3の下方に漏出しても、その樹脂Pは樹脂止め壁25で囲まれた空間内には流れ込むが、樹脂止め壁25の上面と回路基板3の下面とが当接しているので、樹脂Pは樹脂止め壁25を越えて回りに広がることがない。なお、
図4および
図5に示した実施の形態では、位置決め穴31に位置決めピン23が挿通されるものであったが、位置決めピン23が挿通されない貫通穴が回路基板3の中央部近傍に形成されている場合にも、その貫通穴を囲むように樹脂止め壁25を形成することにより、樹脂Pの広範囲への拡散を防止することができる。
【0024】
なお、本発明は上記した形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更を加えてもかまわない。
【符号の説明】
【0025】
1 電子装置
2 ケーシング
21 保持部
22 樹脂溜まり部
23 位置決めピン
25 樹脂止め壁
3 回路基板
31 位置決め穴
33 スリット