【実施例】
【0039】
本発明のレーザスキャナ制御装置に係る実施例を図面に基づいて説明する。
【0040】
<第1実施例>
本発明のレーザスキャナ制御装置に係る第1実施例について、
図1乃至
図6を参照して説明する。
【0041】
先ず、本実施例に係るレーザスキャナ制御装置が搭載される給電器等について、
図1を参照して説明する。
図1は、第1実施例に係る非接触給電システムの構成を示すブロック図である。
【0042】
図1において、非接触給電システムは、給電器10と、例えば電気自動車等の車両20とを備えて構成されている。
【0043】
車両20は、コイル21、整流器22、蓄電モジュール23、蓄電池24及び通信装置27を備えて構成されている。ここでコイル21は、車両20の底面に設置されることが多い。尚、コイル21、整流器22、蓄電モジュール23、蓄電池24及び通信装置各々には、公知の各種態様を適用可能であるので、その詳細についての説明は割愛する。
【0044】
給電器10は、コイル11、給電送電部12、給電制御部13、レーザスキャナ14、サンプリング部15、異物検知部16、通信装置17及びレーザスキャナ制御装置100を備えて構成されている。
【0045】
コイル11は、典型的には、給電器10に対応する駐車スペースの路面からその一部が露出されるように設置されている。該コイル11には、給電器10の動作時に、給電送電部11を介して外部電源(図示せず)からの電力が供給される。この際、給電制御部13により、コイル11に適切な電力が供給されるように、給電送電部11が制御される。
【0046】
ここで、通信装置17及び通信装置27は、無線により相互に通信可能に構成されている。給電制御部13は、通信装置17を介して、例えば蓄電池27に係る残量値等を取得して、該取得された残量値等に応じて給電送電部11を制御する。
【0047】
レーザスキャナ14には、公知の各種態様を適用可能であるので、その構成についての説明は省略する。レーザスキャナ14の光源(図示せず)から出射されたレーザ光は、ポリゴンミラー(図示せず)により反射され、レーザスキャナ14の外部に照射される。この結果、コイル11及びコイル21間の空間がレーザ光により走査される(
図2参照)。
【0048】
レーザ光は、反射板(
図2参照)により反射され、レーザスキャナ14の受光素子(図示せず)に導かれる。該受光素子から出力された信号は、サンプリング部15に入力される。
【0049】
サンプリング部15は、レーザスキャナ14からの出力信号をサンプリングデータとして異物検知部16に送信する。異物検知部16では、受信されたサンプリングデータに基づいて異物検知処理が実施される。異物検知処理の一例としては、例えばサンプリングデータを、異物が存在しない場合の基準データで正規化し、該正規化されたデータの基準値からの減衰量に基づいて異物が存在するか否かが判定される。尚、異物検知処理には、公知の各種態様を適用可能であるので、上記異物検知処理に限定されない。
【0050】
ここでレーザスキャナ14の性能の一例について、
図3及び
図4を参照して説明する。
図3は、異物が存在する場合と異物が存在しない場合との受光強度分布の一例を示す図である。
図4は、検知時間と最小検知可能サイズとの関係の一例を示す図である。
【0051】
図3(a)は、レーザ光で1回のみ走査した場合の受光強度分布の一例である。
図3(a)に示すように、1回のみ走査した場合には、異物が存在するにもかかわらず、異物が存在しないと判定される閾値th以上の受光強度が得られる可能性が比較的高い。つまり、1回のみの走査では誤判定が生じる可能性が高いといえる。
【0052】
他方、
図3(b)は、レーザ光で20回走査した場合の受光強度分布の一例である。
図3(b)に示すように、20回走査した場合には、異物が存在するにもかかわらず、閾値th以上の受光強度が得られる可能性は極めて低い。つまり、
図3に示す結果を得るために用いたレーザスキャナでは、20回走査すれば誤判定をほぼなくすことができる。走査回数は、20回に限定されず、例えば、用いるレーザスキャナの性能や、目標とする判定の信頼性等に鑑みて適宜設定すればよい。
【0053】
このように、レーザ光で複数回走査することが、異物検知の信頼性を向上させるうえで重要であることがわかる。
【0054】
図3(a)、(b)からわかるように、レーザ光の走査回数が増加すると受光強度のバラツキが小さくなる。これは、走査回数が増加すると、上述の如く誤判定を低減することができると共に、サイズの小さな異物を検知することができるようになることを意味する。
【0055】
例えばレーザスキャナ14が、4面ポリゴンミラーを備え、該4面ポリゴンミラーが、300rpmの回転速度で回転される場合、レーザスキャナ14は、1秒間に20回の走査を行うこととなる。ここで、
図4に示すように、検知時間1秒(即ち、走査回数20回)では、約1mm
2までの異物を検知することができることがわかる。
【0056】
再び
図1に戻り、レーザスキャナ制御装置100は、スピンドル回転速度制御部110及び給電電力−回転速度変換テーブル120を備えて構成されている。
【0057】
例えばメモリ、プロセッサ等を備えてなるスピンドル回転速度制御部110は、レーザスキャナ14のミラーを回転駆動するスピンドルモータの回転速度(即ち、レーザ光の走査速度)を制御する。
【0058】
より具体的には、スピンドル回転速度制御部110は、給電制御部13からコイル11からコイル21に伝送される電力に係る電力値を取得し、該取得された電力値と給電電力−回転速度変換テーブル120とを参照して、目標回転速度を特定しスピンドルモータの回転速度を制御する。
【0059】
ここで、コイル11及びコイル21間に、金属からなる異物が存在した場合の該異物の温度上昇について、
図5及び
図6を参照して説明する。
【0060】
図5は、直径約5cm、高さ約10cmの中空の円筒形の異物(具体的には例えば、容量180cm
3のスチール缶に相当)に係る温度上昇の様子の一例を示す図である。尚、コイル11及びコイル21間で伝送される電力は1.75kWである。
【0061】
図5に示すように、比較的短時間(ここでは1分以内)であっても、コイル11及びコイル21間で電力伝送が行われることに起因する誘導加熱により、異物の温度が大幅に上昇していることがわかる。
【0062】
加えて、
図6に示すように、伝送される電力が増加する程、異物の温度が急激に上昇することがわかる。尚、
図6は、異物の温度上昇の様子を、伝送される電力毎に示す概念図である。
【0063】
安全上の観点からは、可能な限り短時間で異物が検知されることが望ましい。しかしながら、レーザスキャナ14のスピンドルモータには、交換時期の目安となる総回転数が設定されている。このため、スピンドルモータを常に最高速度で回転させて、レーザ光を走査すると、該スピンドルモータの交換時期が早まる(即ち、使用可能期間が短くなる)。
【0064】
他方で、
図6に示すように、安全上許容可能な温度の上昇値である温度T
thに達するまでにかかる時間は、コイル11及びコイル21間で伝送される電力により変化する。具体的には、“4×A[kW]”(“A”は基準となる電力値を示す)では、温度T
th上昇するまでに時間t1しかかからないが、“2×A[kW]”では、温度T
th上昇するまでに時間t2かかる。尚、“A[kW]”では、
図6に示した時間範囲内では、上昇温度が温度T
thに達しない。
【0065】
つまり、電力値が“4×A[kW]”の場合、時間t1以内に異物が検知される必要があるが、電力値が“2×A[kW]”の場合、時間t2以内に異物が検知されれば、安全上の問題はないといえる。言い換えれば、電力値が“4×A[kW]”の場合、比較的早い速度で、スピンドルモータを回転又はレーザ光を走査させなければならないが、電力値が“2×A[kW]”の場合は、電力値が“4×A[kW]”の場合よりも遅い速度で、スピンドルモータを回転又はレーザ光を走査させても、安全上の問題はないといえる。
【0066】
従って、伝送される電力値に基づいて、スピンドルモータの回転速度(或いは、レーザ光の走査速度)を制御すれば、スピンドルモータの消耗を抑え、該スピンドルモータの使用可能期間を比較的長くすることができると共に、適切に異物を検知することができるといえる。
【0067】
スピンドルモータの使用可能期間(即ち、寿命)について以下具体的に数値を示して説明を加える。
【0068】
スピンドルモータの動作が保証される回転数を2億回とし、該スピンドルモータには4面ポリゴンミラーが直接(即ち、ギア等を介さずに)接続されているものとする。異物検知に費やすことが可能な安全上問題のない時間(以降、適宜“安全検知時間”と称する)内の走査回数を20回とする。伝送電力値が2kWの場合、安全検知時間は600ミリ秒とし、伝送電力値が1kWの場合、安全検知時間は3秒とする。
【0069】
伝送電力値が2kWの場合、安全検知時間600ミリ秒の間に走査回数20回を達成するためには、スピンドルモータが600ミリ秒の間に5回転する必要がある。即ち、伝送電力値が2kWの場合、スピンドルモータの回転速度は500rpm(revolutions per minute)となる。同様に、伝送電力値が1kWの場合、スピンドルモータの回転速度は100rpmとなる。
【0070】
給電器10により、車両20の蓄電池24が毎日充電されるとする。充電電力量は10kWhであるとする。ここでは、給電器10が、伝送電力値2kWで2時間、伝送電力値1kWで6時間動作することにより、充電電力量10kWhが充電池24に供給されるものとする。
【0071】
本実施例に係るレーザスキャナ制御装置100では、スピンドル回転速度制御部110が、給電電力−回転速度変換テーブル120を参照して、伝送電力値が2kWの場合、スピンドルモータの回転速度を500rpmに制御すると共に、伝送電力値が1kWの場合、スピンドルモータの回転速度を100rpmに制御する。
【0072】
この結果、スピンドルモータの使用可能期間は、
2億[回]/(365(日)×8[時間]×60[分]×(1/4×500[rpm]+3/4×100[rpm]))=約5.7[年]、となる。
【0073】
他方で、スピンドルモータの回転速度が、伝送電力値に関係なく常に500rpmであるとすると(即ち、従来技術では)、スピンドルモータの使用可能期間は、
2億[回]/(365(日)×8[時間]×60[分]×500[rpm])=約2.3[年]、となる。
【0074】
このように、本実施例に係るレーザスキャナ制御装置100によれば、従来技術に比べて、スピンドルモータの消耗を抑制し、該スピンドルモータの使用可能期間を延ばすことができる(上記例では、従来技術の約2.5倍)。ここでは、説明の便宜上、単純な数値を挙げたが、実際の給電器においても、充電期間中に伝送電力値は多かれ少なかれ変動するので、本発明に係る技術は実用上非常に有用である。
【0075】
尚、検知対象とする異物の大きさや形状等によって、例えば、単位時間当たりのレーザ光の走査回数(及び/又はスピンドルモータの回転速度)、サンプリング部16に係るサンプリング周波数等は変化する。このため、給電電力−回転速度変換テーブル120やサンプリング周波数は、検知対象とする異物に応じて適宜設定すればよい。
【0076】
本実施例に係る「スピンドル回転速度制御部110」は、本発明に係る「電力値取得手段」の一例である。本実施例に係る「スピンドル回転速度制御部110」及び「給電電力−回転速度変換テーブル120」は、本発明に係る「制御手段」の一例である。
【0077】
<第2実施例>
本発明のレーザスキャナ制御装置に係る第2実施例について、
図7を参照して説明する。第2実施例では、スピンドル回転速度制御部と給電制御部とが協働する以外は、第1実施例と同様の構成であるので、第1実施例と重複する説明を省略すると共に、図面上における同一箇所には同一符号を付して示し、基本的に第1実施例と異なる部分のみ、第2実施例について
図7を参照して説明する。
【0078】
本実施例に係る給電器10aでは、給電制御部13が、通信装置17を介して、車両20の蓄電池24に係る残量値を取得すると共に、当該給電器10aが車両20に対して電力を伝送可能な時間である充電可能時間を取得する。尚、充電可能時間は、典型的には、ユーザにより、例えば入力パネル(図示せず)等の入力手段を介して設定される。
【0079】
給電制御部13は、取得された残量値及び取得された充電可能時間に加え、給電電力−回転速度変換テーブル120に基づいて、取得された充電可能時間中におけるスピンドルモータの回転数が比較的少なくなるように、車両20に伝送すべき電力値を設定する。
【0080】
続いて、レーザスキャナ制御装置100のスピンドル回転速度制御部110は、給電制御部13により設定された電力値と給電電力−回転速度変換テーブル120とを参照して、目標回転速度を特定しスピンドルモータの回転速度(即ち、レーザ光の走査速度)を制御する。
【0081】
本実施例の効果について以下具体的に数値を示して説明する。
【0082】
第1実施例と同じく、スピンドルモータの動作が保証される回転数を2億回とし、該スピンドルモータには4面ポリゴンミラーが直接接続されているものとする。安全検知時間内の走査回数を20回とする。伝送電力値が2kWの場合、安全検知時間は600ミリ秒とし、伝送電力値が1kWの場合、安全検知時間は3秒とする。
【0083】
伝送電力値が2kWの場合、スピンドルモータの回転速度は500rpmであり。伝送電力値が1kWの場合、スピンドルモータの回転速度は100rpmである。給電器10により、車両20の蓄電池24が毎日充電されるとする。充電電力量は10kWhであるとする。充電可能時間は8時間であるとする。
【0084】
本実施例に係る給電制御部13は、スピンドルモータの回転数が比較的少なくなるように、充電可能時間である8時間かけて10kWhの電力量が車両20に供給されるように伝送電力値を設定する。具体的には例えば、充電開始から2時間は電力値2kWで充電が行われ、残りの6時間は電力値1kWで充電が行われるように伝送電力値を設定する。
【0085】
スピンドル回転速度制御部110は、伝送電力値が2kWの場合、スピンドルモータの回転速度を500rpmに制御すると共に、伝送電力値が1kWの場合、スピンドルモータの回転速度を100rpmに制御する。
【0086】
この結果、1回の充電期間におけるスピンドルモータの回転数は、2[時間]×60[分]×500[rpm]+6[時間]×60[分]×100[rpm]=96000[回]となる。従って、スピンドルモータの使用可能期間は、2億[回]/(365[日]×96000[回])=約5.7年となる。
【0087】
他方で、スピンドルモータの回転数を考慮せずに、常に伝送電力値2kWで電力量10kWhが車両20に供給される場合、充電時間は5時間となる。この場合(即ち、従来技術では)、1回の充電期間におけるスピンドルモータの回転数は、5[時間]×60[分]×500[rpm]=150000[回]となる。従って、スピンドルモータの使用可能期間は、2億[回]/(365[日]×150000[回])=約3.7年となる。
【0088】
このように、本実施例に係る給電器10aによれば、従来技術に比べて、スピンドルモータの消耗を抑制し、該スピンドルモータの使用可能期間を延ばすことができる(上記例では、従来技術の約1.5倍)。
【0089】
本実施例に係る「給電器10a」及び「車両20」は、夫々、本発明に係る「電力伝送装置」及び「受電側装置」の一例である。本実施例に係る「給電制御部13」は、本発明に係る「時間取得手段」及び「電力値設定手段」の一例である。
【0090】
尚、上述した第1実施例及び第2実施例に示した、伝送電力値とスピンドルモータの回転数との関係は一例であり、限定されるものではない。例えば、比較的低い一の電力値において、コイル11及びコイル21間に金属からなる異物が存在したとしても、該異物の温度がほとんど上昇しないことが明らかである場合には、一の電力値以下の場合に異物検知が行われないように(即ち、スピンドルモータの回転数が零になるように)構成されてもよい。このように構成すれば、スピンドルモータの使用可能期間をより延ばすことができる。
【0091】
本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴うレーザスキャナ制御装置及び電力伝送装置もまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。