(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
磁気カードやICカードを処理するカード処理装置においては、カードに備わる磁気ストライプに記録されているデータを読み取ったり、磁気ストライプにデータを書き込んだりする磁気ヘッドが、所定の位置に配置されている。一般に、磁気ヘッドは、カードの厚み方向へ移動可能なように、ばねで付勢されている。そして、磁気ヘッドは、カードの磁気ストライプと接触しながらデータを読み書きする際に、ばねの付勢力に抗して厚み方向へ移動し、その移動距離に応じた適度な押圧力をカードに与える。
【0003】
しかし、カードの中には反りなどの変形を伴ったものもあり、このようなカードは形状が平面でないため、磁気ヘッドと磁気ストライプとの接触が不完全となり、データの読み書きに支障が生じる。そこで、変形したカードであっても、磁気ヘッドが磁気ストライプに密着できるように、磁気ヘッドを揺動自在に支持する機構が提案されている。
【0004】
たとえば、磁気ヘッドのカード通過方向の両側に、磁気ヘッドを揺動自在に支持する支点軸を設け、この支点軸をカードへ向かって押圧する機構がある。これによると、変形したカードが磁気ヘッドを通過するときに、磁気ヘッドが支点軸の回りに揺動してカードへ密着するので、全体的にはカードに所定の押圧力を与えることができる。しかしながら、この機構では、揺動した磁気ヘッドを元の姿勢へ戻す力(以下、「揺動復元力」という。)が不十分なため、後述する
図18、
図19のように、磁気ヘッド13が磁気カード200から離れる方向に揺動した部分でギャップgが生じ、十分な密着力が得られない。
【0005】
また、他の例として、磁気ヘッドを板ばねからなる保持部材で保持し、この保持部材が揺動自在となるように、当該保持部材の両端を2個のピンで支持する機構がある。これによると、板ばねの弾性力によって、磁気ヘッドの揺動復元力が得られる。しかしながら、この板ばねは、本来、磁気ヘッド全体をカードの厚み方向へ付勢するものであるため、この全体付勢力と独立して揺動復元力を設定することができない。揺動復元力が大きすぎると、磁気ヘッドの本来の揺動に支障が生じるので、揺動復元力はある程度以下に抑える必要があるが、揺動復元力を小さくすると、全体付勢力も小さくなり、磁気ヘッドに対する必要な付勢力が得られなくなる。
【0006】
特許文献1には、磁気ヘッドと、磁気ヘッドを保持するヘッド保持板と、ヘッド保持板を支持する第1支持部および第2支持部とを備えた磁気ヘッド保持機構が記載されている。第1支持部は、カードの通過方向を揺動軸の軸方向とする磁気ヘッドの揺動が可能となるようにヘッド保持板を支持し、第2支持部は、カードに摺接していないときの磁気ヘッドの先端部が、対向部材と略平行になるようにヘッド保持板を支持している。ヘッド保持板は、別部材の板ばねにより磁気カードに対して付勢されている。しかし、この保持機構では、磁気ヘッドを揺動させるための付勢部分は狭い範囲であり、磁気ヘッドに対する揺動復元力が十分ではない。
【0007】
特許文献2には、ワイヤばねを用いた磁気ヘッド保持機構が記載されている。磁気ヘッドは、カード搬送方向に延在するワイヤばねを介して回転ブロックに収容され、カード搬送方向に直交して揺動自在な状態でガイドフレームに取り付けられる。回転ブロックには、スリットを設けたホルダ部と、突起からなる揺動軸と、ワイヤばね端受け部とが一体に形成され、揺動軸はガイドフレームに形成された軸受け部に嵌合される。しかし、この保持機構においても、磁気ヘッドの中央部の狭い範囲がワイヤばねによって付勢されるだけなので、やはり磁気ヘッドに対する十分な揺動復元力が得られない。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。各図において、同一部分または対応する部分には同一符号を付してある。また、図中の矢印に付されている「F」は前方向、「B」は後方向、「L」は左方向、「R」は右方向、「U」は上方向、「D」は下方向を表している。
【0021】
まず、本発明の実施形態に係るカード処理装置の概略構造を、
図1を参照しながら説明する。
図1において、(a)はカード処理装置の側面断面図、(b)はカード処理装置の正面図である。このカード処理装置は、たとえばATM(現金自動預け払い機)に搭載される。
【0022】
カード処理装置100は、筐体1と、この筐体1の前面に設けられたカード挿入部2とを備えている。カード挿入部2には、磁気カード200がX方向から挿入される挿入口3が設けられている。筐体1には、ローラ5、6、9、10、磁気ヘッド13、磁気ヘッド保持機構A、プラテンローラ14、ICカード処理部15、支持部材7、11、およびばね8、12などが収納されている。なお、カード処理装置100には、上記以外に、カードの挿入を検出するセンサ、カードの位置を検出するセンサ、挿入口3を開閉するためのシャッタ、シャッタを駆動するためのソレノイドなどが備わっているが、
図1ではこれらの図示を省略してある。
【0023】
ローラ6、10は、図示しないモータにより駆動力が与えられて回転するドライブローラであり、ローラ5、9は、駆動力が与えられないアイドラローラである。ドライブローラ6、10は、それぞれ支持部材7、11に支持され、ばね8、12によりカード搬送路4側へ付勢されている。アイドラローラ5、9は、カード搬送路4を挟んで、それぞれドライブローラ6、10と対向する位置に設けられている。ローラ5、6とローラ9、10との間の距離は、磁気カード200の長手方向(X方向)の長さよりも短く設定されている。磁気カード200は、ローラ5、6およびローラ9、10で挟まれた状態で、ローラ6、10の回転方向に応じて、カード搬送路4をB方向またはF方向に搬送される。これらの4つのローラ5、6、9、10は、本発明における「搬送手段」の一例である。
【0024】
磁気ヘッド13は、磁気ヘッド保持機構Aに保持されており、カード搬送路4を搬送される磁気カード200に対して、情報の読み取りまたは書き込みを行う。磁気ヘッド保持機構Aの詳細については、あとで説明する。プラテンローラ14は、カード搬送路4を挟んで、磁気ヘッド13と対向する位置に設けられており、磁気ヘッド13との間に磁気カード200を挟持する。ICカード処理部15は、カード搬送路4の上側に設けられており、挿入口3から挿入されたカードがICカードである場合に、当該ICカードに対して情報の読み取りまたは書き込みを行う。
【0025】
磁気カード200は、例えば、
図2に示すような第1トラックT1、第2トラックT2、第3トラックT3の3つのトラックを含む磁気ストライプ201を有している。このため、磁気ヘッド13には、各トラックに対して情報の読み書きを行う3つのコア(図示省略)が備わっている。
【0026】
次に、第1実施形態に係る磁気ヘッド保持機構の構成について、
図3ないし
図5を参照しながら説明する。
図3において、(a)はカード処理装置における磁気ヘッド保持機構が設けられている部分の正面図、(b)は磁気ヘッド保持機構の裏面図、(c)は磁気ヘッド保持機構の側面図である。
【0027】
図3(a)に示すように、磁気ヘッド保持機構Aは、取付部材であるブラケット20と、このブラケット20の内側に組み込まれたホルダ30と、ホルダ30をブラケット20に揺動自在に保持する揺動軸21と、磁気ヘッド13をホルダ30に揺動自在に保持する揺動軸18と、ホルダ30に保持された磁気ヘッド13に、磁気カード200に対する押圧力を与える捻りコイルばね22と、揺動軸18の回りに揺動した磁気ヘッド13に対して、揺動した姿勢を元の姿勢に戻すための揺動復帰力を与える板ばね40とを備えている。
【0028】
ホルダ30は、本発明における「保持部材」の一例である。揺動軸21は、本発明における「第1揺動軸」の一例であり、揺動軸18は、本発明における「第2揺動軸」の一例である。捻りコイルばね22は、本発明における「第1付勢部材」の一例であり、板ばね40は、本発明における「第2付勢部材」の一例である。
【0029】
ブラケット20は、その基部20bにおいて、フレーム16に固定されている。フレーム16は、これと対向するフレーム17とともに、筐体1(
図1)の内部に設けられている。フレーム16には、プラテンローラ14の回転軸14aが支持されている。フレーム17には、ドライブローラ6の回転軸6a、およびドライブローラ10の回転軸(図示省略)が支持されている。
【0030】
ブラケット20の側部20aには、上下方向(UD方向)に延びる切欠部23が設けられており、この切欠部23内を、揺動軸18が上下動できるようになっている。
【0031】
磁気ヘッド13は、
図3(c)に示すように、ヘッド本体13aと、このヘッド本体13aを収容するケース13bとから構成されている。揺動軸18は、ケース13bの両側に、磁気カード200の通過方向(FB方向)と平行な方向に延びるように設けられている。
【0032】
ホルダ30の側部30aの先端側には、左右方向(LR方向)に延びる切欠部31が設けられており、この切欠部31に揺動軸18が嵌合されることにより、磁気ヘッド13がホルダ30に揺動自在に保持される。また、ホルダ30は、切欠部31と反対側において、揺動軸21によりブラケット20に揺動自在に保持される。
図3(b)に示すように、揺動軸21は、揺動軸18と同様に、磁気カード200の通過方向(FB方向)と平行な方向に延びている。ブラケット20には、揺動軸21の両端部が嵌合する孔(図示省略)が形成されている。
【0033】
図3(a)に示すように、揺動軸21の周りには、捻りコイルばね22が配備されている。捻りコイルばね22の一端はブラケット20の基部20bに係合しており、他端はホルダ30の下部と係合している。このため、ホルダ30には、捻りコイルばね22によって、揺動軸21を中心とする時計方向の力が作用する。この力は、ホルダ30に保持されている磁気ヘッド13の磁気カード200に対する押圧力(カード押圧力)となる。
【0034】
板ばね40は、
図4に示すように、磁気ヘッド13に対して揺動復帰力を与えるための1対のアーム片41、42と、これらのアーム片41、42を連結する連結部43とを備えている。アーム片41、42は、連結部43に対して所定の角度だけ上方(U方向)へ折り曲げられている。また、アーム片41、42の先端部は、所定の角度だけ下方(D方向)へ折り曲げられて、折曲部41a、421aが形成されている。さらに、連結部43の2箇所に、板ばね40をホルダ30に取り付けるための取付孔44、45が形成されている。
【0035】
取付孔44、45に挿通されるねじなどの固定部材(図示省略)によって、板ばね40は、
図3(b)(c)に示すように、ホルダ30の側部30aの下面に固定される。この状態では、板ばね40のアーム片41、42に形成された折曲部41a、42aが、磁気ヘッド13(ケース13b)の下面と僅かな間隙を隔てて対向するか、あるいは軽く接触している。したがって、磁気ヘッド13には、アーム片41、42のばね力は作用しない。また、
図3(a)に示すように、アーム片41、42は、揺動軸18の径方向(LR方向)の両側に配置される。すなわち、アーム片41は揺動軸18の左側(L側)に配置され、アーム片42は揺動軸18の右側(R側)に配置される。
【0036】
なお、板ばね40としては、
図4に示したものに限らず、
図5に示すように、連結部43がなく、アーム片41、42が分離したものであってもよい。
【0037】
次に、上述した第1実施形態の磁気ヘッド保持機構Aの動作について説明する。
【0038】
挿入口3から挿入された磁気カード200が、ドライブローラ6とアイドラローラ5によって搬送され、磁気ヘッド13の位置に到達すると、磁気カード200は、プラテンローラ14と磁気ヘッド13とに挟まれ、情報の読み書きが開始される。磁気ヘッド13とプラテンローラ14の間の間隙は、磁気カード200の厚みよりも小さく設定されているので、磁気カード200が両者の間に挟まれると、磁気ヘッド13が磁気カード200と密着した状態で、揺動軸21を中心にホルダ30が揺動する。これにより、揺動軸18はホルダ30と連動して、ブラケット20に形成された切欠部23に沿って、下方(D方向)へ移動するので、これに伴って下降する磁気ヘッド13は、捻りコイルばね22による上向きの反力を受けて、磁気カード200をU方向に押圧する。すなわち、捻りコイルばね22の反力が、磁気カード200に対してカード押圧力として作用する。そして、この状態で、ドライブローラ6、10およびアイドラローラ5、9で磁気カード200を搬送しながら、カードと密着した磁気ヘッド13により、情報の読み書きを行う。
【0039】
図6は、変形した磁気カード200が磁気ヘッド13を通過する際に、磁気ヘッド13が、揺動軸18を中心としてP方向(反時計方向)へ揺動した状態を示している。磁気ヘッド13のP方向への揺動により、磁気ヘッド13は左側(L側)に傾いた姿勢となるので、板ばね40のアーム片41に形成された折曲部41a(
図4)が、磁気ヘッド13の下面で下向き(D方向)に押圧される。この結果、磁気ヘッド13の下面のアーム片41との当接部分に、アーム片41の弾性力による反力yが働く。この反力yは、磁気ヘッド13に対して、P方向と反対方向の力、すなわち、揺動した磁気ヘッド13の姿勢を元の姿勢に戻すための揺動復帰力として作用する。
【0040】
図7は、変形した磁気カード200が磁気ヘッド13を通過する際に、磁気ヘッド13が、揺動軸18を中心としてQ方向(時計方向)へ揺動した状態を示している。磁気ヘッド13のQ方向への揺動により、磁気ヘッド13は右側(R側)に傾いた姿勢となるので、板ばね40のアーム片42に形成された折曲部42a(
図4)が、磁気ヘッド13の下面で下向き(D方向)に押圧される。この結果、磁気ヘッド13の下面のアーム片42との当接部分に、アーム片42の弾性力による反力zが働く。この反力zは、磁気ヘッド13に対して、Q方向と反対方向の力、すなわち、揺動した磁気ヘッド13の姿勢を元の姿勢に戻すための揺動復帰力として作用する。
【0041】
ホルダ30に板ばね40が設けられていない従来の磁気ヘッド保持機構A’を、
図16に示す。この磁気ヘッド保持機構A’では、変形した磁気カード200によって磁気ヘッド13が揺動した場合、磁気ヘッド13が常に
図17のように磁気カード200と密着するとは限らず、磁気ヘッド13と磁気カード200との間の摩擦が大きいと、
図18や
図19に示すように、両者の間に僅かなギャップgが生じる。このため、磁気カード200に対する情報の読み書きを正常に行えないことがある。特に、
図2に示したような複数のトラックを有する磁気カード200の場合は、ギャップgが生じている部分のトラックに対して、情報の読み書きが全く出来なくなる可能性がある。また、ギャップgが生じない状態であっても、磁気カード200に対する磁気ヘッド13の押圧力は殆ど期待できないことから、両者の密着性が悪くなり、情報の読み書きの信頼性が低下する。
【0042】
これに対して、第1実施形態の場合は、前述のように、揺動した磁気ヘッド13に対して、板ばね40のアーム片41、42による反力y、zが揺動復帰力として作用するので、磁気ヘッド13はこの揺動復帰力を受けて、元の姿勢に戻ろうとする。このため、磁気ヘッド13と磁気カード200との間の摩擦が大きくても、
図18や
図19に示された従来例のようなギャップgが生じることはなく、磁気ヘッド13と磁気カード200とが良好に密着するので、磁気カード200に対する情報の読み書きが正確に行われて信頼性が向上する。
【0043】
また、第1実施形態では、板ばね40は、磁気ヘッド13を保持したホルダ30に設けられており、ホルダ30と連動して動く。このため、磁気ヘッド13を通過する磁気カード200が変形のない正常なカードで、磁気ヘッド13が揺動しない場合は、カード通過時に磁気ヘッド13が下降しても、板ばね40のアーム片41、42は磁気ヘッド13によって押圧されないので、磁気ヘッド13には、アーム片41、42の反力が作用しない。つまり、変形した磁気カード200によって、磁気ヘッド13が揺動した場合にのみ、磁気ヘッド13に対して、アーム片41、42による揺動復帰力が働くことになる。したがって、正常な磁気カード200に対して、不用意に揺動復帰力が働いて、情報の読み書きに支障が生じるのを回避することができる。(因みに、板ばね40を例えばブラケット20に固定した場合は、変形のないカードが磁気ヘッド13を通過する際に磁気ヘッド13が下降すると、板ばね40が押圧されて磁気ヘッド13に反力が作用することになる。)
【0044】
また、第1実施形態では、磁気ヘッド13に揺動復帰力を与える第2付勢部材としての板ばね40は、磁気カード200にカード押圧力を与える第1付勢部材としての捻りコイルばね22とは別に設けてあるので、揺動復帰力とカード押圧力とをそれぞれ独立して設定することができ、両者を最適の値に容易に設定することができる。また、板ばね40は、種々の形状に簡単に加工できるため、磁気ヘッド13の大きさや保持機構Aの構成に合わせて、必要な揺動復帰力を容易に得ることができる。さらに、板ばね40のアーム片41、42に折曲部41a、42aを形成し、この折曲部41a、42aが磁気ヘッド13と当接するようにしてあるので、アーム片41、42の先端のエッジ部が磁気ヘッド13と摺接して磨耗粉が発生するのを抑制することができる。
【0045】
また、第1実施形態では、板ばね40の1対のアーム片41、42が、揺動軸18の径方向の両側に配置されているので、
図6のように磁気ヘッド13がP方向へ揺動する場合は、一方のアーム片41によって磁気ヘッド13の一方の側に揺動復帰力yが与えられ、
図7のように磁気ヘッド13がQ方向へ揺動する場合は、他方のアーム片42によって磁気ヘッド13の他方の側に揺動復帰力zが与えられる。したがって、磁気ヘッド13がP、Qのいずれの方向に揺動しても、揺動した磁気ヘッド13に対して揺動復帰力y、zを作用させることができる。
【0046】
次に、第2実施形態に係る磁気ヘッド保持機構について、
図8ないし
図10を参照しながら説明する。
図8において、(a)はカード処理装置における磁気ヘッド保持機構が設けられている部分の正面図、(b)は磁気ヘッド保持機構の側面図である。
【0047】
第2実施形態では、第1実施形態の板ばね40に代えて、ゴムやスポンジのような弾力性を有する高分子材料(以下、「エラストマ」という。)を第2付勢部材として用いる。ここでは、エラストマはゴムプレート50から構成されている。これに伴い、ホルダ30には、ゴムプレート50が載置される底部30cが設けられている。ゴムプレート50は、この底部30cと磁気ヘッド13(ケース13b)の下面との間に挟まれた状態で、ホルダ30に保持される。その他の構成については、第1実施形態と同様である。
【0048】
図9は、変形した磁気カード200が磁気ヘッド13を通過する際に、磁気ヘッド13が、揺動軸18を中心としてP方向(反時計方向)へ揺動した状態を示している。磁気ヘッド13のP方向への揺動により、磁気ヘッド13は左側(L側)に傾いた姿勢となるので、ゴムプレート50の左側の部分が、磁気ヘッド13の下面で下向き(D方向)に押圧され圧縮される。この結果、磁気ヘッド13の下面の左側の部分に、圧縮されたゴムプレート50の反力yが働く。この反力yは、磁気ヘッド13に対して、P方向と反対方向の力、すなわち、揺動した磁気ヘッド13の姿勢を元の姿勢に戻すための揺動復帰力として作用する。
【0049】
図10は、変形した磁気カード200が磁気ヘッド13を通過する際に、磁気ヘッド13が、揺動軸18を中心としてQ方向(時計方向)へ揺動した状態を示している。磁気ヘッド13のQ方向への揺動により、磁気ヘッド13は右側(R側)に傾いた姿勢となるので、ゴムプレート50の右側の部分が、磁気ヘッド13の下面で下向き(D方向)に押圧され圧縮される。この結果、磁気ヘッド13の下面の右側の部分に、圧縮されたゴムプレート50の反力zが働く。この反力zは、磁気ヘッド13に対して、Q方向と反対方向の力、すなわち、揺動した磁気ヘッド13の姿勢を元の姿勢に戻すための揺動復帰力として作用する。
【0050】
このように、第2実施形態では、揺動した磁気ヘッド13に対して、ゴムプレート50による反力y、zが揺動復帰力として作用するので、必要な揺動復帰力を容易に得ることができる。そして、この揺動復帰力により、磁気ヘッド13は元の姿勢に戻ろうとするので、第1実施形態と同様に、磁気ヘッド13と磁気カード200との密着性が高まり、磁気カード200に対する情報の読み書きが正確に行われて信頼性が向上する。
【0051】
また、ゴムプレート50は、磁気ヘッド13を保持したホルダ30に設けられており、ホルダ30と連動して動く。このため、磁気ヘッド13を通過する磁気カード200が変形のない正常なカードで、磁気ヘッド13が揺動しない場合は、カード通過時に磁気ヘッド13が下降しても、ゴムプレート50が圧縮されないので、磁気ヘッド13には、ゴムプレート50の反力が作用しない。つまり、変形した磁気カード200によって、磁気ヘッド13が揺動した場合にのみ、磁気ヘッド13に対して、ゴムプレート50による揺動復帰力が働くことになる。したがって、第1実施形態と同様に、正常な磁気カード200に対して、不用意に揺動復帰力が働いて、情報の読み書きに支障が生じるのを回避することができる。
【0052】
また、磁気ヘッド13に揺動復帰力を与える第2付勢部材としてのゴムプレート50は、磁気カード200にカード押圧力を与える第1付勢部材としての捻りコイルばね22とは別に設けてあるので、第1実施形態と同様に、揺動復帰力とカード押圧力とをそれぞれ独立して設定することができ、両者を最適の値に容易に設定することができる。
【0053】
また、ゴムプレート50が、揺動軸18の径方向(LR方向)の両側の領域に存在するので、
図9のように磁気ヘッド13がP方向へ揺動する場合は、ゴムプレート50の左側の部分によって磁気ヘッド13の左側に揺動復帰力yが与えられ、
図10のように磁気ヘッド13がQ方向へ揺動する場合は、ゴムプレート50の右側の部分によって磁気ヘッド13の右側に揺動復帰力zが与えられる。したがって、第1実施形態と同様に、磁気ヘッド13がP、Qのいずれの方向に揺動しても、揺動した磁気ヘッド13に対して揺動復帰力y、zを作用させることができる。
【0054】
次に、第3実施形態に係る磁気ヘッド保持機構について、
図11ないし
図13を参照しながら説明する。
図11において、(a)は磁気ヘッド保持機構の側面図、(b)は要部の拡大図である。
【0055】
第3実施形態では、第1実施形態の板ばね40に代えて、コイルばね60を第2付勢部材として用いる。これに伴い、
図11(a)に示すように、ホルダ30には、側部30aから外側へ延びる支持壁30dが設けられている。この支持壁30dには、支持軸18bが固定されている。支持軸18bは、揺動軸18aの延長線上に位置している。
図11(b)に示すように、コイルばね60の一端は、揺動軸18aの端部に圧入などの手段で固定されており、コイルばね60の他端は、支持軸18bの端部に圧入などの手段で固定されている。つまり、コイルばね60の他端は、支持軸18bを介してホルダ30(支持壁30d)に固定されている。その他の構成については、第1実施形態と同様である。
【0056】
図12は、変形した磁気カード200が磁気ヘッド13を通過する際に、磁気ヘッド13が、揺動軸18を中心としてP方向(反時計方向)へ揺動した状態を示している。磁気ヘッド13のP方向への揺動と連動して、コイルばね60がP方向へ捻られる結果、コイルばね60による反力vが生じる。この反力vは、磁気ヘッド13に対して、P方向と反対方向の力、すなわち、揺動した磁気ヘッド13の姿勢を元の姿勢に戻すための揺動復帰力として作用する。
【0057】
図13は、変形した磁気カード200が磁気ヘッド13を通過する際に、磁気ヘッド13が、揺動軸18を中心としてQ方向(時計方向)へ揺動した状態を示している。磁気ヘッド13のQ方向への揺動と連動して、コイルばね60がQ方向へ捻られる結果、コイルばね60による反力wが生じる。この反力wは、磁気ヘッド13に対して、Q方向と反対方向の力、すなわち、揺動した磁気ヘッド13の姿勢を元の姿勢に戻すための揺動復帰力として作用する。
【0058】
このように、第3実施形態では、揺動した磁気ヘッド13に対して、コイルばね60による反力v、wが揺動復帰力として作用するので、必要な揺動復帰力を容易に得ることができる。そして、この揺動復帰力により、磁気ヘッド13は元の姿勢に戻ろうとするので、第1実施形態と同様に、磁気ヘッド13と磁気カード200との密着性が高まり、磁気カード200に対する情報の読み書きが正確に行われて信頼性が向上する。
【0059】
また、コイルばね60は、磁気ヘッド13を保持したホルダ30に設けられており、磁気ヘッド13の揺動と連動して捻られる。このため、磁気ヘッド13を通過する磁気カード200が変形のない正常なカードで、磁気ヘッド13が揺動しない場合は、カード通過時に磁気ヘッド13が下降しても、コイルばね60が捻られないので、磁気ヘッド13には、コイルばね60の反力が作用しない。つまり、変形した磁気カード200によって、磁気ヘッド13が揺動した場合にのみ、コイルばね60が捻られ、磁気ヘッド13に対して、コイルばね60による揺動復帰力が働くことになる。したがって、第1実施形態と同様に、正常な磁気カード200に対して、不用意に揺動復帰力が働いて、情報の読み書きに支障が生じるのを回避することができる。
【0060】
また、磁気ヘッド13に揺動復帰力を与える第2付勢部材としてのコイルばね60は、磁気カード200にカード押圧力を与える第1付勢部材としての捻りコイルばね22とは別に設けてあるので、第1実施形態と同様に、揺動復帰力とカード押圧力とをそれぞれ独立して設定することができ、両者を最適の値に容易に設定することができる。
【0061】
また、コイルばね60は、巻き方向とその反対方向のいずれにも捻ることができるので、
図12のように磁気ヘッド13がP方向へ揺動する場合は、コイルばね60によってP方向と反対側の揺動復帰力vが磁気ヘッド13に与えられ、
図13のように磁気ヘッド13がQ方向へ揺動する場合は、コイルばね60によってQ方向と反対側の揺動復帰力wが磁気ヘッド13に与えられる。したがって、第1実施形態と同様に、磁気ヘッド13がP、Qのいずれの方向に揺動しても、揺動した磁気ヘッド13に対して揺動復帰力v、wを作用させることができる。
【0062】
本発明では、以上述べた以外にも、種々の実施形態を採用することができる。例えば、第1実施形態では、板ばね40の取付孔44、45に挿通されるねじなどの固定部材によって、板ばね40をホルダ30に固定した例を挙げたが、ホルダ30に形成した突起(図示省略)を取付孔44、45に嵌合し、突起を熱カシメすることにより、板ばね40をホルダ30に固定してもよい。また、ホルダ30に形成した溝(図示省略)に、板ばね40を圧入することにより、板ばね40をホルダ30に固定してもよい。また、第1実施形態では、
図4や
図5に示すように、アーム片41、42の先端部に、折曲部41a、42aを形成した例を挙げたが、折曲部に代えて、
図14に示すような突き出し加工によるリブ41b、42bを形成してもよい。
【0063】
また、第2実施形態では、第2付勢部材としてゴムプレート50を用いたが、ゴムに代えてスポンジなどを用いてもよい。また、
図15に示すように、ゴムやスポンジなどのエラストマに代えて、コイルばね61、62を、ホルダ30の底部30cと磁気ヘッド13(ケース13b)の下面との間に設けてもよい。
【0064】
また、第3実施形態では、
図11に示すように、磁気ヘッド13の両側にコイルばね60が設けた例を挙げたが、磁気ヘッド13の片側にのみコイルばね60を設けてもよい。また、
図11では、コイルばね60の他端が、支持軸18bを介してホルダ30の支持壁30dに固定されているが、コイルばね60の他端を直接支持壁30dに固定してもよい。
【0065】
また、
図1の実施形態では、磁気カードとICカードの両方を処理可能なカード処理装置100を例に挙げたが、本発明は、磁気カード専用のカード処理装置にも適用することができることはいうまでもない。さらに、
図1の実施形態では、ATMに搭載されるカード処理装置を例に挙げたが、本発明は、ATMに限らず、カードを取り扱う機器に搭載されるカード処理装置全般に適用することができる。