(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記碇着部を押える前記押え部材は、前記碇着部の外側の前記躯体に設けられたアンカー部材に中間部が締め付けられた固定アーム部材の先端部で押えられていることを特徴とする請求項1に記載の止水試験装置。
前記試験用ガイド部材の前記ガイド孔でガイドして穿孔する穴あけ部材を備えており、前記穴あけ部材は、前記試験用孔を穿孔して碇着部材を切り抜き、切り抜いた前記碇着部材片を取り出し可能に構成してあることを特徴とする請求項1に記載の止水試験装置。
【背景技術】
【0002】
生活用水や工業用水等を貯水する貯水池や浄水池、あるいは上下水道の水路等を構成する大型のコンクリート構造体では、コンクリートの亀裂を避けることが難しくコンクリートのさらなる亀裂を防止するため、目地部を設けることが一般的に行われている。
【0003】
コンクリート構造体の目地構造に関しては各種の提案がなされているが、一般的に、漏水を阻止するために目地部の幅方向にたるみを形成した可撓性止水部材を構造体に設けている。
【0004】
従来の目地構造およびその漏水対策は、例えば
図8(a)に示すように、コンクリート構造体1の目地部2に対して、ゴム製などの可撓性止水部材3の中央にある溝状の伸縮部分3aで目地部2を塞ぎ、両側の平板もしくは躯体に接合する2列の平行な突起を配置した碇着部3bを躯体に植設した定着具としてのアンカーボルト4aとナット4bとで躯体であるコンクリート構造体1に固定している。
【0005】
そして、ナット4bを締め付けることによって可撓性止水部材3の各突起などの碇着部3bを押しつぶした状態で躯体であるコンクリート構造体1の表面に圧着して目地部2からの漏水を防止している。
【0006】
このような目地構造では、ナット4bの締め付け力が均等でない場合や突起などの碇着部3bが押しつぶされるときに変転する場合などに、十分な止水性能が発揮されなくなることから、施工中や施工後などに止水状態を確認する試験を行うことがある。
【0007】
このような止水性の確認試験には、例えば特許文献1に開示されている試験装置が用いられる。
【0008】
この試験装置10は、
図8(b)に示すように、外管11及び中管12を備えて構成され、外管11は上端が閉塞された円筒形で、その上端には、中心部に孔13aが形成され、外周部にねじ13bが形成されて漏洩確認試料供給部からの試料を供給する接続パイプ14を結合する結合部13とされるとともに、下端には、パッキン(Oリング)15用の溝11aを備えたフランジ11bが形成してある。
【0009】
また、中管12は、外管11と類似の形状で、外管11の内部に配置されて四方からの結合部材16で支持されており、その内周に試験装置10をアンカーボルト4aに取り付ける雌ねじ12aが形成してある。
【0010】
このような試験装置10は、外管11の内部に配置されている中管12を、押え板17を介してアンカーボルト4aと螺合させて装着するとともに、外管11の下端のフランジ11bに装備されたOリング等のパッキン15で外管11内に水等の供給を受けた際に外管11から漏洩しないようにする。
【0011】
そして、外管11の結合部13に、図示しない試料供給部に接続するパイプ14から漏洩確認試料である水等を供給する。
【0012】
これにより、可撓性止水部材3の両突起列間の試験空間Aが、可撓性止水部材3のボルト孔,押え板17のボルト孔を介して試験装置10の外管11内と連通することから可撓性止水部材3の止水性に問題があると、供給された水が可撓性止水部材3の縁から漏れてくることになり、止水性の欠陥部所が簡単に確認できる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
ところが、このような試験装置10では、外管11内に結合部材16を介して取り付けた中管12をねじ込むことで外管11のフランジ部11bを押し付けてパッキン(Oリング)15で密封する必要があるが、試験装置10を取り付けることで、押え板17を介して可撓性止水部材3に加わる締付け力が増減し、本来のアンカーボルト4aとナット4bによる締付け力と異なる状態の止水試験になってしまうという問題がある。
【0015】
また、外管11内に供給される試験用の水などを可撓性止水部材3による試験空間Aに供給する流路がアンカーボルト4aとナット4bのねじの隙間を利用して行うため、試験後に試験空間A内に供給した試験用の水などが抜けずに残ってしまうという問題もある。
【0016】
さらに、可撓性止水部材の取り付けをアンカーボルトで直接取り付けることなく固定アーム部材を介して取り付けるボルトレスタイプ(クランプ方式)の取り付け方法も提案されているが、このボルトレスタイプ(クランプ方式)の場合には、この試験装置10を固定することができず、止水試験を行うことができないという問題もある。
【0017】
この発明は、上記従来技術の問題点に鑑みてなされたもので、可撓性止水部材の設置状態と同じ荷重条件で試験できる止水試験装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
かかる従来技術の課題を解決するこの発明の請求項1記載の止水試験装置は、可撓性止水部材の碇着部が押え部材を介して躯体に固定された当該可撓性止水部材の前記碇着部の止水性を試験する止水試験装置であって、
前記碇着部を押える押え部材に代えて設置され止水試験位置にガイド孔が形成され当該ガイド孔で前記可撓性止水部材と前記躯体との止水性試験空間に連通する試験用孔を穿孔可能とする試験用ガイド部材と、
前記試験用ガイド部材に代えて設置され前記押え部材と同一状態で取り付けられて前記試験用孔の表面とは同一止水状態に保持可能な試験用押え部材と、
前記試験用押え部材に水密状態で取り付けられて前記試験用孔と連通可能とされるとともに、加圧流体供給手段と止水性判定手段とに連結可能な加圧流体供給部材とを備えた、
ことを特徴とするものである。
【0019】
この発明の請求項2記載の止水試験装置は、請求項1に記載の構成に加え、前記碇着部を押える前記押え部材は、前記碇着部の外側の前記躯体に設けられたアンカー部材に中間部が締め付けられた固定アーム部材の先端部で押えられていることを特徴とするものである。
【0020】
この発明の請求項3記載の止水試験装置は、請求項1に記載の構成に加え、前記碇着部を押える前記押え部材は、前記碇着部を貫通して前記躯体に設けられたアンカー部材で締め付けられていることを特徴とするものである。
【0021】
この発明の請求項4記載の止水試験装置は、請求項1に記載の構成に加え、前記試験用ガイド部材の前記ガイド孔でガイドして穿孔する穴あけ部材を備えており、前記穴あけ部材は、前記試験用孔を穿孔して碇着部材を切り抜き、切り抜いた前記碇着部材片を取り出し可能に構成してあることを特徴とするものである。
【0022】
この発明の請求項5記載の止水試験装置は、請求項4に記載の構成に加え、切り抜いた前記碇着部材片は、前記試験用孔の埋め戻し部材と兼用されて埋め戻されることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0023】
この発明の請求項1記載の止水試験装置によれば、可撓性止水部材の碇着部が押え部材を介して躯体に固定された当該可撓性止水部材の前記碇着部の止水性を試験する止水試験装置であって、前記碇着部を押える押え部材に代えて設置され止水試験位置にガイド孔が形成され当該ガイド孔で前記可撓性止水部材と前記躯体との止水性試験空間に連通する試験用孔を穿孔可能とする試験用ガイド部材と、前記試験用ガイド部材に代えて設置され前記押え部材と同一状態で取り付けられて前記試験用孔の表面とは同一止水状態に保持可能な試験用押え部材と、前記試験用押え部材に水密状態で取り付けられて前記試験用孔と連通可能とされるとともに、加圧流体供給手段と止水性判定手段とに連結可能な加圧流体供給部材とを備えているので、試験用ガイド部材のガイド孔をガイドとして試験用孔をあけ、試験用押え部材に取り替えて加圧流体供給部材を設置することで、試験用孔に対しては、その表面の止水状態を元の状態に保持することができ、この加圧流体供給部材を介して加圧流体を供給しその圧力が保持されるか否かで止水状態を判定することで、可撓性止水部材の設置状態と同じ荷重条件で止水試験をすることができる。
【0024】
この発明の請求項2記載の止水試験装置によれば、前記碇着部を押える前記押え部材は、前記碇着部の外側の前記躯体に設けられたアンカー部材に中間部が締め付けられた固定アーム部材の先端部で押えられているので、押え部材がアンカーボルトで直接取り付けることなく固定アーム部材を介して取り付けられるボルトレスタイプ(クランプ方式)の場合でも、可撓性止水部材の設置状態と同じ荷重条件で止水試験をすることができる。
【0025】
この発明の請求項3記載の止水試験装置によれば、前記碇着部を押える前記押え部材は、前記碇着部を貫通して前記躯体に設けられたアンカー部材で締め付けられているので、押え部材がアンカーボルトで直接取り付けられるボルト挿通タイプの場合でも、可撓性止水部材の設置状態と同じ荷重条件で止水試験をすることができる。
【0026】
この発明の請求項4記載の止水試験装置によれば、前記試験用ガイド部材の前記ガイド孔でガイドして穿孔する穴あけ部材を備えており、前記穴あけ部材は、前記試験用孔を穿孔して碇着部材を切り抜き、切り抜いた前記碇着部材片を取り出し可能に構成してあるので、穴あけ部材を用いて試験用孔をあけると同時に切り抜いた碇着部材片を取り出すことができる。
【0027】
この発明の請求項5記載の止水試験装置によれば、切り抜いた前記碇着部材片は、前記試験用孔の埋め戻し部材と兼用されて埋め戻されるので、切り抜いた碇着部材片を用いて試験終了後の試験用孔の埋め戻し部材とすることができ、簡単に埋め戻すことができる。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、この発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
この止水試験装置20が設置されて止水試験が行われるボルトレスタイプ(クランプ方式)で固定される可撓性止水部材3を用いた止水構造は、
図1に示すように、躯体としてのコンクリート構造体1、1間の目地部2に跨って可撓性止水部材3が配置され、この可撓性止水部材3は長尺帯状の幅方向中間部に略Ω字状に折り畳んだ折り畳み部で構成される伸縮部分3aを備えるとともに、幅方向両端部に平板状の碇着部3bが設けられてゴムや合成樹脂などの弾性部材で構成される。
そして、この可撓性止水部材3の碇着部3bに押え部材18を当て、アンカーボルト4aに基端部19aがコンクリート構造物1上とされ中間部19bが支持固定される固定アーム部材19の先端部19cで押え部材18を押えるようにすることで、アンカーボルト4aの位置に、鉄筋などとの干渉防止のためのズレなどが生じても簡単に対応して所定位置の押え部材18を押えて可撓性止水部材3を取り付けるようにする。
このような可撓性止水部材3を、アンカーボルト4aで直接コンクリート構造体1、1に固定することなく、固定アーム部材19を用いて支持固定するボルトレスタイプ(クランプ方式)の取付構造によれば、アンカーボルト4aの取り付け位置が決まる前でも可撓性止水部材3、押え部材18、固定アーム部材19を製作でき、施工も容易で、短期間に施工できる。
【0030】
このようなボルトレスタイプ(クランプ方式)の可撓性止水部材3に適用する止水試験装置20は、碇着部3bを押える押え部材18に代えて設置され止水試験位置Xにガイド孔21aが形成され、このガイド孔21aで可撓性止水部材3と躯体であるコンクリート構造体1との試験空間(止水性試験空間)Aに連通する試験用孔22を穿孔可能とする試験用ガイド部材21(
図3(a)参照)と、この試験用ガイド部材21に代えて設置され押え部材18と長さが異なる場合があるが断面形状などが同一形状とされ同一状態で取り付けられて試験用孔22の表面とは同一止水状態に保持可能な試験用押え部材23(
図3(b)参照)と、この試験用押え部材23に水密状態で取り付けられて試験用孔22と連通可能とされるとともに、加圧流体供給手段24と止水性判定手段25とに連結可能な加圧流体供給部材26(
図2参照)とを備えて構成される。
【0031】
すなわち、この止水試験装置20では、
図2に示すように、可撓性止水部材3の碇着部3bに任意に定めた止水試験位置Xに試験用孔22を形成し、この試験用孔22を試験用押え部材23で押えて可撓性止水部材3を通常と同じ荷重条件で止水状態としておき、試験用押え部材23に水密状態で取り付けた加圧流体供給部材26を介して加圧流体供給手段24から加圧流体を供給して加圧状態が維持されることを圧力計などの止水性判定手段25で判定するようにしている。
【0032】
止水試験装置20の試験用ガイド部材21は、可撓性止水部材3の碇着部3bに当てられている押え部材18に代えて取り付けられるもので、長さは異なる場合があるが、横断面形状は押え部材18と同一であり、碇着部3bと接する底面21bにガイド孔21aが形成してある。このガイド孔21aは、試験用孔22に対し大きく形成してあり、試験用孔22を穴あけ加工して穿設する場合に、穴あけ部材と干渉しないような大きさとしてある。
この試験用ガイド部材21は、可撓性止水部材3を固定している押え部材18を取り外した後、押え部材18と同様に、固定アーム部材19で固定される。
そして、試験用ガイド部材21のガイド孔21aから碇着部3bに試験用孔22を貫通させて形成する。通常、可撓性止水部材3のコンクリート構造体1への取り付けの際には、ブチルゴムなどをコンクリート構造体1の表面に敷いて不陸を無くすようにしているので、このブチルゴムなど貫通して試験用孔22が形成されていることを確認する。
【0033】
この試験用孔22の穿孔には、例えば
図4に示すような穴あけ部材30が用いられ、試験用孔22の外径に沿って円筒状に切り込み、切り抜かれた円筒状の碇着部材片31を穴あけ部材30の側面の取り出し孔30aから取り出せるようにした穴あけ部材30が用いられる。
なお、こうして、試験用孔22から円筒状に切り抜いて取り出した碇着部材片31は、止水試験終了後の試験用孔22の埋め戻しに利用する。
また、穴あけ加工は、通常のドリルを用いて行うこともできる。この場合には、加工した穴を埋め戻しするため別に用意したほぼ同一形状のゴム栓を碇着部材片31として使用するようにすれば良く、切り抜いた場合でも別に用意したもので埋め戻すようにすることもできる。
【0034】
止水試験装置20の試験用押え部材23は、試験用孔22の穿孔が完了した後試験用ガイド部材21を取り外して代わりに取り付けられるものであり、可撓性止水部材3を固定している押え部材18と同一断面形状とされ、同一状態で固定アーム部材19を介して固定されて止水状態を再現できるようにしてあり、碇着部3bと接する底面23aに試験用孔22と連通する加圧流体供給部材26となる試験用パイプ26aが底面23aと水密状態で取り付けてある。
この加圧流体供給部材26を構成する試験用パイプ26aは、
図3(b)に示すように、試験用押え部材23の底面23aを貫通して下方に端部が突き出し、底面23aの下面との周囲が溶接されて水密状態としてあり、上端部に連結用のねじ26bが形成してある。そして、この連結用のねじ26bに、
図2に示すように、分岐管26cが連結され、分岐管26cを介して一方から加圧流体供給手段24からの加圧流体を供給し、もう一方には、圧力計などの止水性判定手段25が接続されて加圧状態が維持されるかを判定するようにしている。なお、分岐管26cを介してエア抜きコック26dが設けられ、加圧流体の供給時にパイプ内のエアを抜くことができるようにしてある。
【0035】
この試験用パイプ26aでは、試験用孔22の孔内に下端の突き出し部が位置するものの孔周囲とは水密状態ではなく、隙間が形成される状態とされ、試験用押え部材23の底面23aの裏側面(下面)との平面接触とされ、これによって通常の押え部材18の場合と同一の止水状態が維持されている。
【0036】
なお、試験用パイプ26aを底面の裏側(下面側)で溶接してシールする場合には、溶接ビードが試験用孔22と干渉しない状態となるように試験用パイプ26aの大きさと試験用孔22の大きさの関係が定められる(
図5(a)参照)。
【0037】
また、試験用孔22の大きさを小さくし、試験用パイプ26aの直径を大きくすると共に、試験用押え部材23の底面23aから突き出さないようにすることで、通常の押え部材18の場合と同一の止水状態が維持されるようにしても良い(
図5(b)参照)。
【0038】
いずれの場合も試験用パイプ26aと試験用孔22との止水状態は、試験用押え部材23の底面23aが試験用孔22の表面と接触することでのみで確保するものであり、Oリングやパッキンなどを介在させることなくシール状態とすることで、通常の状態と同一の荷重条件を確保するものである。
【0039】
こうして試験用押え部材23を通常の押え部材18の代わりに配置して試験用パイプ26aが試験用孔22に連通した状態として固定アーム部材19で通常の可撓性止水部材3と同じ締め付けトルクで締め付ける。
すると、試験用押え部材23の底面23aの裏面と可撓性止水部材3とは止水状態となり、試験用孔22の表面も同一の荷重状態の止水状態となる。
【0040】
こうして止水試験の準備が完了した後、試験用パイプ26aに接続した分岐管26cの一方から加圧流体供給手段24を構成する加圧水ポンプなどを介して試験用の加圧流体を供給し、内部の空気を排出して加圧状態とする。また、試験用パイプ26aに接続した分岐管26cの他方に止水性判定手段25を構成する圧力計や圧力センサを取り付けて加圧状態が維持されるかを検出するとともに、目視で止水状態を監視する。
この止水試験での止水性の判定条件は、例えば加圧圧力を0.12MPa、許容低下圧力を0.01MPa以下、保持時間を5分以上とすることで判定する。
【0041】
こうして止水試験を行い止水状態の確認を行った後、試験用押え部材23を取り外し、試験用孔22に、試験用孔22を穿設する際に切り出した碇着部材片31を接着剤で接着して埋め戻す。
【0042】
この試験用孔22に切り出した碇着部材片31を接着することで元通りの止水性を確保できることは、確認してあり、埋め戻した試験用孔22の隣りに新たな試験用孔22を形成し、上記と同様の止水試験を行ったところ、埋め戻した試験用孔22からの漏水は認められず、止水性を確保できていることを確認した。
こうして試験用孔22を埋め戻した後、元の押え部材18を可撓性止水部材3の碇着部3bに当て、固定アーム部材19で押えることで復旧が完了する。
【0043】
このような止水試験装置20によれば、試験用孔22を形成してこの試験用孔22から加圧流体を供給して水圧をかけることができ、従来のボルトとナットのねじの隙間から水圧をかける場合に比べ、短時間に水圧をかけて止水試験を行うことができる。
【0044】
また、止水試験装置20の設置に必要なスペースが少なくて済み、しかも試験用孔22を形成できる場所であれば、任意の位置で止水試験を行うことができ、従来のアンカーボルトの位置でのみ止水試験が可能の場合に比べ、試験場所を選ばず止水試験を行うことができる利点がある。
【0045】
さらに、止水試験のため試験用孔22を穿孔するが、止水状態を確保するための荷重条件は、元の止水状態と同一に保持することができ、ボルトによる締め付け力を加えたり、シールのためのパッキンやOリングを必要とせず、確実に施工状態での止水試験を行うことができる。
【0046】
また、この止水試験装置20では、元の押え部材18に代えて、試験用ガイド部材21と試験用押え部材23とを用意して付け替えることで試験を行うことができ、同一の他の可撓性止水部材3に流用して簡単に止水試験を行うことができる。
【0047】
次に、この発明の止水試験装置40をアンカーボルトを介して直接コンクリート構造体1、1に取り付けた可撓性止水部材3に適用する場合について、
図6および
図7により説明する。
この可撓性止水部材3は、既に説明した可撓性止水部材3と同一の構造であり、コンクリート構造体1、1の目地部2への取り付け方法が、
図6(a)に示すように、異なるものである。
すなわち、この可撓性止水部材3は、コンクリート構造体1の目地部2に対して、ゴム製などの可撓性を有する材料で形成された可撓性止水部材3の中央の伸縮部分3aが目地部2上に配置されて跨るようにするとともに、両側の平板もしくはコンクリート構造体1である躯体に接合する2列の平行な突起が形成された碇着部3bを備えて構成され、躯体であるコンクリート構造体1に植設した固定締め付け部材としてのアンカーボルト4aおよびナット4bと平板状の押え板17とを介して躯体であるコンクリート構造体1に密着させた状態で設置されており、可撓性止水部材3によって目地部2からの漏水を防止する。
【0048】
このような可撓性止水部材3の止水状態を試験する止水試験治具40では、押え板17に代えて取り付ける平板状の試験用ガイド部材41を備えている。
この試験用ガイド部材41には、
図6および
図7に示すように、少なくとも2本のアンカーボルト4aで固定することができるように、2つのアンカーボルト用取付孔41aが形成されるとともに、試験用孔42を穿孔するためのガイドとなるガイド孔41bが少なくとも1個、図示例では、3個形成してある。
【0049】
また、この試験用ガイド部材41は、そのまま取り外すことなく止水試験ができるように試験用押え部材43と兼用してあり、試験用ガイド部材41の上面のガイド孔41bの位置に対応して、ガイド孔41bより大径の雌ねじ43aが形成されたリング部材43bが溶接などで取り付けてある。なお、試験用押え部材43と試験用ガイド部材41を兼用する場合に、ガイド孔41bに雌ねじ43aを形成するようにしてリング部材を省略しても良い(
図7参照)。
そして、このリング部材43bの雌ねじ43aに加圧流体供給部材44を構成する試験用パイプ44aの下端部がねじ込まれて連結されるようにしてあり、試験用パイプ44aの上端部にも連結用のねじ44bが形成してある。そして、この試験用パイプ44aに加圧流体供給部材26と同様に、図示しない分岐管が連結できるようにしてあり、この分岐管を介して一方から加圧流体供給手段からの加圧流体を試験用パイプ44aに供給し、もう一方には、圧力計などの止水性判定手段が接続されて加圧状態が維持されるかを判定するようにしている。
また、この止水試験装置40では、分岐管を介してエア抜きコックが設けられ、加圧流体の供給時にパイプ内のエアを抜くことができるようにしてある。
【0050】
このように構成した止水試験装置40では、可撓性止水部材3を押えている押え板17をアンカーボルト4aから取り外した後、試験用ガイド部材41と試験用押え部材43を兼用する試験用ガイド部材41を2つのアンカーボルト用取付孔41aを利用してアンカーボルト4aおよびナット4bで固定する。
【0051】
この後、試験用ガイド部材41のガイド孔41bを利用し、穴あけ部材30を用いて試験用孔42を可撓性止水部材3の碇着部3bに穿設し、切り抜いた碇着部材片31を保管する。
【0052】
この後、試験用ガイド部材41を試験用押え部材43と兼用するため、リング部材43bの雌ねじ43aに加圧流体供給部材44を構成する試験用パイプ44aをねじ込んで連結する。さらに、試験用パイプ44aの上端部の連結用のねじ44bに分岐管を連結する。
【0053】
こうして止水試験の準備が完了した後、試験用パイプ44aに接続した分岐管の一方から加圧流体供給手段を構成する加圧水ポンプなどを介して試験用の加圧流体を供給し、内部の空気を排出して加圧状態とする。また、試験用パイプ44aに接続した分岐管の他方に止水性判定手段を構成する圧力計や圧力センサを取り付けて加圧状態が維持されるかを検出するとともに、目視で止水状態を監視する。
この止水試験での止水性の判定条件は、例えば加圧圧力を0.12MPa、許容低下圧力を0.01MPa以下、保持時間を5分以上とすることで判定する。
【0054】
こうして止水試験を行い止水状態の確認を行った後、試験用押え部材(試験用ガイド部材41と兼用)43を取り外し、試験用孔42に、試験用孔42を穿設する際に切り出した碇着部材片31を接着剤で接着して埋め戻す。
なお、試験用孔42の埋め戻しは、切り出した碇着部材片31を用いる場合に限らず、別に用意したほぼ同一形状で同一素材のゴム栓などを用いるようにしても良い。
【0055】
こうして試験用孔42を埋め戻した後、元の押え板17を可撓性止水部材3の碇着部3bに当て、アンカーボルト4aおよびナット4bで締め付けて復旧が完了する。
【0056】
このような止水試験装置40によれば、試験用孔42を形成してこの試験用孔42から加圧流体を供給して水圧をかけることができ、従来のボルトとナットのねじの隙間から水圧をかける場合に比べ、短時間に水圧をかけて止水試験を行うことができる。
【0057】
また、止水試験装置40の設置に必要なスペースが少なくて済み、しかも試験用孔42を形成できる場所であれば、任意の位置で止水試験を行うことができ、従来のアンカーボルトの位置でのみ止水試験が可能の場合に比べ、試験場所を選ばず止水試験を行うことができる。
【0058】
さらに、止水試験のため試験用孔42を穿孔するが、止水状態を確保するための荷重条件は、元の止水状態と同一に保持することができ、ボルトによる締め付け力を加えたり、シールのためのパッキンやOリングを必要とせず、確実に施工状態での止水試験を行うことができる。
【0059】
また、この止水試験装置40では、元の押え板17に代えて、試験用ガイド部材41と試験用押え部材43とを兼用したり、別に用意して付け替えることで試験を行うことができ、同一の他の可撓性止水部材3に流用して簡単に止水試験を行うことができる。
【0060】
なお、止水性判定手段として、圧力センサを設けるとともに、タイマーにより一定時間経過後の圧力の変化を比較して表示するようにしたり、変化が設定値を越えた場合に警報を発するようにすれば、止水状態の良否を自動的に検知して表示・警報することができ、一層止水試験を容易に行うことができる。
また、上記実施の形態では、止水性試験後の加圧流体の処理については説明を省略したが、試験用孔22、42を埋め戻す前に試験用孔22、42を利用して吸引ポンプなどで吸引したり、熱風を送ることで加圧流体を除去するようにしても良く、これらを組み合わせて処理を行うようにしても良い。