(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記塗工ヘッド本体内部の副スラリ状物質の通路には当該物質として前記二次電池の短絡防止用樹脂のスラリが供給されることを特徴とする請求項2に記載の塗工ヘッド。
前記塗工ヘッド本体内部において、主スラリ状物質の流入口が形成された側面部と反対側の側面部に主スラリ状物質の通路のエア抜き穴が形成されたことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の塗工ヘッド。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。
【0012】
[第一の実施形態]
図1〜9は本発明に係る塗工ヘッドを用いて二次電池用電極シートを製造する具体的な形態を示す。
図1は、ラミネートフィルム外装体型の薄型リチウムイオン二次電池(以下、単に二次電池と言う。)1であって、端子(タブ)として機能する一対の集電体リード部5b,50bが外装体の同一辺から突出するように配置された電極積層体Mに使用される電極シートを製造する場合の例を示している。
【0013】
そして、
図1の(A)は二次電池1の平面図を、
図1の(B)は同図(A)のa−a線に沿った拡大断面図をそれぞれ示している。また、
図2は
図1における電極積層体Mの分解説明図を、
図3は
図2における正極電極シート2単体での詳細をそれぞれ示している。
【0014】
図1,2に示すように、二次電池1は、共に矩形状をなす正極としての正極電極シート2と負極としての負極電極シート3との間にセパレータSを挟み込みながらそれらを多数組積層した電極積層体Mを主要素として、電極積層体Mを互いに接合された外装体としての複合構造の一対のラミネートフィルム4内に封入したものである。
【0015】
電極シートは、一例として、正極電極シート2はアルミニウムを、負極電極シート3は銅を集電体とするものであって、いずれも幅狭のいわゆる集電体リード部5bまたは50bとなる集電体露出部(活物質未塗布部)を残して、正極電極シート2については集電体5のうち集電体本体部5a上に正極活物質層が、負極電極シート3については同じく集電体本体部上に負極活物質層がそれぞれ形成されているものである。そして、セパレータSを介して正極電極シート2と極電極シート3とを交互に積層してなる電極積層体Mは、集電体リード部5b,50bのそれぞれの一部が外装体である一対のラミネートフィルム4の同一辺から外部に端子(タブ)として突出するようにして、それらの一対のラミネートフィルム4の周縁部同士が重ね合わされた上で熱融着等の手段により互いに接合される。このように周縁部同士が互いに接合された袋状の一対のラミネートフィルム4により電極積層体Mが包囲され、内部には電解液が封入されることになる。
【0016】
なお、
図1の例では、集電体リード部5b,50bのそれぞれの一部が端子(タブ)として外装体である一対のラミネートフィルム4の外部に突出しているが、この構造に代えて、正極側の集電体リード部5bに正極端子を、負極側の集電体リード部50bの負極端子をそれぞれ電気的に接続し、これらの正極端子および負極端子が外装体である一対のラミネートフィルム4の同一辺から外部に突出する構造としても良い。
【0017】
図3は
図1,2における電極積層体Mのうち正極電極シート2単体での状態を示していて、この正極電極シート2は、例えばアルミニウム箔からなる集電体5を母体とし、集電体5は集電体本体部5aとこの集電体本体部5aから延長形成された集電体リード部5bとから構成されている。集電体5のうち集電体本体部5a上には正極活物質層6が形成されているとともに、この正極活物質層6が形成された集電体本体部5aよりも幅狭の集電体露出部(活物質未塗布部)が集電体リード部5bとして集電体本体部5aから延長されるかたちで付帯している。そして、正極活物質層6と集電体リード部5bとの境界部には、両者にまたがるようにして短絡防止のための絶縁材層7が形成されている。
【0018】
正極活物質層6は、例えば溶剤で溶いたマンガン酸リチウム(LiMn
2O
4)とバインダであるPVDF(ポリフッ化ビニデリン)とを混合した流動性のある活物質スラリを集電体本体部5a上に所定厚みで塗布した上で、これを乾燥させて定着させることにより形成される。また、絶縁材層7としては、例えばアルミナ(Al
2O
3)と活物質スラリのバインダと同じPVDFとの混合物が用いられる。
【0019】
このような構造は、集電体5および活物質6の材質は異なるものの、負極電極シート3についても基本的に同様である。ここで、絶縁材層7は、正極電極シート2および負極電極シート3のうち少なくともいずれか一方に形成されていれば良い。また、
図3では、集電体本体部5aの片面にのみ正極活物質層6および絶縁材層7を形成する場合の例を示しているが、集電体本体部5aの両面に正極活物質層6を絶縁材層7とともに形成しても良い。さらに、
図3における集電体5、正極活物質層6および絶縁材層7のそれぞれの厚み寸法は、構造上の理解を容易にするために誇張して描いてあり、実際の製品の厚み寸法を示しているものではない。
【0020】
図4は例えば正極電極シート2の製造工程全体の概略を模式的に示している。同図に示す製造工程では、集電体5の母体となる所定幅で且つ長尺箔状の集電体シート5Aが幾重にも巻かれたシートロールとしての集電体ロール(送り出しロール)8と、塗工装置9の塗工ヘッド(ダイコーター)10と、乾燥機11と、引き取りロール12と、第1裁断機13と、第2裁断機14と、回収エリア16と、仕上げ裁断機17と、を備えている。
【0021】
集電体ロール8から送り出された長尺箔状の集電体シート5Aは、塗工装置9のシート搬送部91を構成するガイドロール17,19、バックアップロール18および引き取りロール12に巻き掛けられるようにして案内される。そして、その巻き掛け状態をもって集電体シート5Aに所定の張力が付与されながら所定速度で走行して、第1裁断機13側に引き取られる。
【0022】
塗工ヘッド10はバックアップロール18による集電体5Aの巻き掛け部位に近接するように配置される。集電体シート5Aがバックアップロール18にバックアップされながら走行する過程で、後述する塗工ヘッド10の吐出口から活物質スラリおよび絶縁材スラリが吐出されて、集電体シート5Aに所定厚みで塗布(塗工)される。集電体シート5Aに塗布された活物質スラリおよび絶縁材スラリは乾燥機11を通過する過程で乾燥されて活物質層6および絶縁材層7のそれぞれの塗膜として集電体シート5Aに定着し、ガイドロール19および引き取りロール12を経て第1裁断機13側に引き取られる。
【0023】
ここで、正極電極シート2として、
図3に示したように集電体5の片面に正極活物質層6および絶縁材層7を形成したタイプのほか、集電体5の両面に正極活物質層6および絶縁材層7を形成したタイプのものがあることは先に述べた。このような両面に正極活物質層6および絶縁材層7を有する正極電極シートを製造する場合には、乾燥機11を経ることで片面に正極活物質層6および絶縁材層7が形成された集電体シート5Aを引き取りロール12にて一旦巻き取ってロール状にした上で、このロール状の集電体シート5Aを
図4の集電体ロール8として供給して、もう一方の面に正極活物質層6および絶縁材層7を形成することになる。
【0024】
そして、引き取りロール12の後段の第1裁断機13、第2裁断機14および仕上げ裁断機16において、後述するように長尺な集電体シート5Aを複数の切断線で裁断することにより、
図3に示したような短冊状の複数の正極電極シート2が得られることになる。
【0025】
図5は
図4における塗工装置9の詳細を示していて、本実施の形態では、共通且つ単一の塗工ヘッド10にて
図3の正極活物質層6となる活物質スラリおよび絶縁材層7となる絶縁材スラリの双方を同時またはほぼ同時に集電体シート5A(5)に塗布するところに特徴がある。
【0026】
図5に示すように、塗工装置9は、塗工ヘッド10,シート搬送部91のほか、活物質スラリ(主スラリ状物質)6Aと絶縁材スラリ(副スラリ状物質)7Aのスラリ供給部92を備える。
【0027】
スラリ供給部92は、活物質スラリ6Aと絶縁材スラリ7A個別に貯留されたスラリ状物質供給源としてのスラリタンク20,21を有しており、塗工ヘッド10に対して一方のスラリタンク20から活物質スラリ6Aをポンプ22によって供給するほか、他方のスラリタンク21から絶縁材スラリ7Aをポンプ23によって供給する。なお、活物質スラリ6A,絶縁材スラリ7Aのそれぞれのスラリ供給経路24,25には開閉バルブ26または27を設けてある。そして、塗工ヘッド10からの活物質スラリ6Aおよび絶縁材スラリ7Aのそれぞれの吐出および吐出停止のタイミングは、図示外のコントローラによって制御される。
【0028】
また、
図6は塗工ヘッド10の詳細を示していて、この塗工ヘッド10は、
図7に示した第1〜第3のダイプレート28,29,30同士を重ね合わせるとともに、アッパー側およびロア側のダイホルダー31,32間にそれらのダイプレート28〜30を挟み込んだ上で、図示外のボルト等にて締結することにより構成されている。
【0029】
アッパー側のダイホルダー31には、
図6に示すように断面が半円状で第1のダイプレート28から見て長方形状のチャンバー部41とともにエア抜き穴42が開口形成されていて、このエア抜き穴42は塗工ヘッド10内の活物質スラリの通路33に連通しているとともに、エア抜き穴42の開放側には開閉弁43を付帯させてある。
【0030】
また、ロア側のダイホルダー32には、同図に示すように断面が半円状で第3のダイプレート30から見て長方形状のチャンバー部37,38とともに活物質スラリの流入口39と絶縁材スラリの流入口40とがそれぞれ開口形成されていて、
図5に示すように、活物質スラリの流入口39は活物質スラリの供給経路24に、絶縁材スラリの流入口40は絶縁材スラリの供給経路25にそれぞれ接続されることになる。
【0031】
最上段の第1のダイプレート28は、
図7の(A)に示すように、その中央部に比較的大きな矩形状の開口部28aが形成されていることにより、第1のダイプレート28自体がいわゆる中抜き枠状のものとして形成されている。この開口部28の大きさはアッパー側のダイホルダー31のチャンバー41を包含するようにしている。また、中央部の第2のダイプレート29は、同図(B)に示すように、第1のダイプレート28側の開口部28aと重なり合う比較的小さな開口部29aが形成されている。さらに、最下段の第3のダイプレート30には、同図(C)に示すように、第2のダイプレート29側の開口部29aと同じ大きさで且つロア側のダイホルダー32のチャンバー部37と重なり合う開口部30aが設けられているとともに、ダイホルダー32のチャンバー部38と重なり合う比較的小さな二つの開口部30bが形成されている。さらに、これらの二つの開口部30bの一辺部には開口部30bよりも幅狭のスロット部30cが延長形成されている。なお、幅狭でなく同じ幅でも良い。
【0032】
そして、先に述べたように、
図7に示した第1〜第3のダイプレート28〜30同士を重ね合わせるとともに、
図6に示すように、アッパー側およびロア側のダイホルダー31,32間にそれらのダイプレート28〜30を挟み込んだ上で、図示外のボルト等にて締結することにより、同図から明らかなように、塗工ヘッド10の内部には活物質スラリの通路33と絶縁材スラリの通路34とが形成されるとともに、塗工ヘッド10の先端面には、第2のダイプレート29を挟んでその下方側に絶縁材スラリの通路34に連通する左右一対の絶縁材スラリの吐出口35が、第2のダイプレート29の上方側に活物質スラリの通路33に連通する活物質スラリの吐出口36がそれぞれ開口形成される。
【0033】
活物質スラリは絶縁材スラリよりも多い量を高い精度で安定して吐出させる必要があるため、該当するチャンバー部の容量を大きく確保する必要がある。そこで、一つの塗工ヘッド10で活物質スラリおよび絶縁材スラリの二種類のスラリをほぼ同時に吐出する場合に、アッパー側のダイホルダー31およびロア側のダイホルダー32のうちいずれか一方のダイホルダーから活物質スラリを流入させ、他方のダイホルダーから絶縁材スラリを流入させようとすると、チャンバー部は片側のみとなりチャンバー部の容積が不足することが考えられる。
【0034】
そのため、
図6,7に示す塗工ヘッド10では、アッパー側のダイホルダー31のチャンバー部41とロア側のダイホルダー32のチャンバー部37との間に、第1のダイプレート28の開口部28a、第2のダイプレート29の開口部29a、第3のダイプレート30の開口部30aをそれぞれ設け、これらを連結することで十分な容量を確保するようにしている。このような構造では、アッパー側のダイホルダー31のチャンバー部41にエアが溜まってしまうことも考えられるため、エア抜き穴42と開閉弁43を設けている。
【0035】
図8は
図4,5に示した塗工装置9による塗工工程の詳細を示している。同図に示すように、
図4の集電体ロール8から引き出された所定幅で且つ長尺な集電体シート5Aがバックアップロール18にてバックアップされながら矢印Q1方向に所定速度で連続的に走行している。また、
図4,5に示すように、集電体シート5Aをはさんでバックアップロール18と対向配置された塗工ヘッド10は定位置固定式のものとなっていて、塗工ヘッド10からは活物質スラリと絶縁材スラリとが同時に吐出されるようになっている。ただし、後述するように、活物質スラリが連続吐出であるのに対して、絶縁材スラリは間歇吐出となっている。
【0036】
なお、
図6の(A),(D)に示した塗工ヘッド10に対する集電体シート5Aの走行方向は上向きとなるが、
図8,9では、説明の都合上、集電体シート5Aの走行方向を下向きとしてある。
【0037】
図8の(a)〜(f)に示すように、バックアップロール18にバップアップされている長尺な集電体シート5Aが連続的に走行している過程で、塗工ヘッド10から
図5のように活物質スラリ6Aおよび絶縁材スラリ7Aの双方を吐出すると、活物質スラリ6Aが集電体シート5Aの長手方向に所定幅で連続的に塗布されるとともに、活物質スラリ6Aの塗布幅の両端部において絶縁材スラリ7Aが所定の間隔(ピッチ)で集電体シート5Aの長手方向に間歇的に塗布される。
【0038】
この場合において、絶縁材スラリ7Aの塗布位置においてその絶縁材スラリ7Aの吐出タイミングを活物質スラリ6Aのそれよりもわずかに先行させることで、活物質スラリ6Aと絶縁材スラリ7Aとは集電体シート5Aの幅方向で所定量だけ互いにオーバーラップするかたちとなる。また、絶縁材スラリ7Aを含む活物質スラリ6Aの塗布幅は集電体シート5Aの幅寸法よりも小さいものとされる。
【0039】
こうして活物質スラリ6Aおよび絶縁材スラリ7Aの双方が塗布された集電体シート5Aは、
図4に示した乾燥機11を経ることにより、それらの活物質スラリ6Aおよび絶縁材スラリ7Aがそれぞれ乾燥・固化することにより集電体シート5Aに定着して、活物質層6および絶縁材層7となる。
【0040】
なお、
図8では集電体シート5A上の一条の連続塗工の例を示したが、これに限るものではなく、二条以上の複数条の塗工も可能である。
【0041】
図9は
図4の乾燥機11を経た後の第1裁断機13、第2裁断機14および仕上げ裁断機16での裁断工程の詳細を示している。
【0042】
図9の(a),(b)のほか
図10に示すように、第1裁断機13ではガイドロール44,45,46のほかロータリーカッター47が用意されており、所定速度で走行する集電体シート5Aにロータリーカッター47を当てることで、集電体シート5Aの長手方向に沿った切断線、すなわち集電体シート5Aを幅方向に二分する切断線C1にて集電体シート5Aを幅狭の二つの幅狭集電体シート5Bに切断する。そして、二分された幅狭集電体シート5Bは後段の第2裁断機14側に引き取られる。なお、二分しない実施の形態、つまり
図9の左側だけの一条の場合には切断線C1は必要ない。
【0043】
一方、第2裁断機14では図示しない直刃式の複数のカッターが用意されており、
図9の(b),(c)に示すように、先の集電体シート5Aの長手方向に沿った切断線C1に直交する切断線、すなわち集電体シート5Aの幅方向に沿った複数(4本)の切断線C2にてそれぞれの幅狭集電体シート5Bをその長手方向で切断・分割して、それぞれの幅狭集電体シート5Bから三つの短冊状の電極シート素片5Cを個別に切り出す。これにより、当初の集電体シート5Aの長手方向の連続性が断たれて、第2裁断機14を経ることで当初の幅寸法Wの集電体シート5Aから合計で6枚の短冊状の電極シート素片5Cが同時に切り出されたことになる。そして、第2裁断機14にて得られた合計6枚の短冊状の電極シート素片5Cは、整列・積層されて後段の回収エリア15に一旦回収される。
【0044】
ここで、
図9の(d)に示すように、それぞれの短冊状の電極シート素片5Cには、活物質層6と同じ幅の集電体露出部または活物資未塗布部が不完全集電体リード部(集電体延長部)2Aとして付帯している。そこで、
図4の回収エリア15に回収された複数枚の短冊状の電極シート素片5Cは、さらに後段の仕上げ裁断機16に送られ、
図9の(d),(e)に示すように、互いに直交する2本の切断線C3にて不完全集電体リード部2Aの一部を切断除去する。こうすることにより、
図3に示したように、正極活物質層6が表面に形成された集電体本体部5aと、集電体本体部5aの一辺側で接続されこの一辺部よりも幅狭の集電体リード部5bと、を有する正極電極シート2が初めて得られることになる。
【0045】
以上の説明から明らかなように、
図4,5の塗工装置9での作業が活物質スラリ6Aおよび絶縁材スラリ7Aの塗工のための塗工工程に相当し、乾燥機11での乾燥作業が乾燥工程に相当する。また、
図4の第1裁断機13および第2裁断機14での裁断(切断)作業が複数枚の電極シート素片5Cを形成する切断工程に相当し、同様に
図4の仕上げ切断機16での裁断(切断)作業が電極シート素片5Cを電極シート2に仕上げる仕上げ切断工程に相当する。
【0046】
このように本実施の形態によれば、絶縁テープに代えて絶縁材スラリ7Aを塗布し乾燥することで、正極電極シート2における正極活物質層6と集電体リード部5bとの境界部に絶縁材層7を形成するようにしているので、絶縁テープを用いる場合と比べて低コスト化とともに製造ラインの高速化を図ることができ、生産性に優れたものとなる。特に、絶縁材スラリ7Aを活物質スラリ6Aとともに塗布した上で双方のスラリ6A,7Aを実質的に同時に乾燥させることで、絶縁材スラリ7A単独での乾燥工程を廃止できるから、製造工程の簡略化とともに製造コストの一層の低減化が図れるようになる。その上、不完全集電体リード部2Aの一部を絶縁材層7の幅寸法に略合わせて切断するため、絶縁材層7の切断が抑制されるので、それらの絶縁材スラリ7Aの無駄がなく、これによってもまた一段と低コスト化に寄与できる。また、絶縁材層7と活物質スラリ6Aとの重なりを少なくできるので、活物質スラリの有効面積の減少を最小化することができる。
【0047】
また、塗工ヘッド10の本体内部には、活物質スラリ6Aを滞留させるチャンバー部37,41が上下に形成されて連通しているので、スラリ6Aを精度よく安定して吐出させるのに必要なスラリ6Aのチャンバー容量を確保できる。したがって、絶縁材スラリ7Aよいも多い量の活物質スラリ6Aを精度よく安定的に塗工できる。
【0048】
そして、アッパー側のダイホルダー31のチャンバー部41にはエア抜き穴42が形成されており、チャンバー部41内に溜まったエアを放出できるので、活物質スラリ6Aをより一層安定的に吐出させることができる。
【0049】
なお、本実施の形態の電極シートの製法は、先に述べたように、集電体5の両面に絶縁材層7とともに活物質層6を有するタイプの電極シートの製造にも適用できるほか、
図1,2に示した負極電極シート3の製造にも同様に適用できることは言うまでもない。
【0050】
また、上記実施の形態では、
図8に示すように、絶縁材スラリ7Aは集電体シート5Aの長手方向に沿って間歇的に塗布する一方で、活物質スラリ6Aは集電体シート5Aの長手方向に沿って連続的に塗布するようにしているが、
図8の(c)の絶縁材スラリ7Aを含む6枚分の活物質スラリ6Aを集電体シート5Aの長手方向に沿って間歇的に塗布することも可能である。
【0051】
さらには、絶縁材スラリ7Aを集電体シート5Aの長手方向に沿って連続的に塗布するとともに、活物質スラリ6Aを集電体シート5Aの長手方向に沿って連続的に塗布することも可能である。
【0052】
[第二の実施形態]
図11,12は
図4とほぼ同様の製造工程を前提とした本発明に係る製造方法の第2の実施の形態を示している。
【0053】
図11において、符号Q1は
図4の集電体ロール8から引き出された長尺な集電体シート5Aの走行方向を示していて、同図(a)に示すように、最初に集電体シート5Aの幅方向の三箇所に間歇的に絶縁材スラリ7Aを塗布し、次いで同図(b)に示すように、複数の絶縁材スラリ7Aとオーバーラップするように活物質スラリ6Aを集電体シート5Aの幅方向全幅にわたってストライプ状に塗布する。このような複数の絶縁材スラリ7Aの塗布と活物質スラリ6Aのストライプ状の塗布とを1サイクルとして、同図(c),(d)に示すように、上記サイクルを集電体シート5Aの長手方向で間歇的に繰り返す。
【0054】
ここで、上記のような活物質スラリ6Aおよび絶縁材スラリ7Aの塗工は、
図6に示したような塗工ヘッド10を活物質スラリ6A用のものと絶縁材スラリ7A用のものとにそれぞれ独立させ、それら二つの塗工ヘッドを集電体シート5Aの走行方向において直列に配置することで容易に実施可能である。
【0055】
なお、
図8のように幅方向に二つの絶縁材を配置する場合には、
図7で示した第3のダイプレート30のように二本のスロット30cで良いが、
図11で示すように幅方向に三つの絶縁材を配置するには、
図7の第3のダイプレート30のスロット30cを3本とすることで実現可能となる。
【0056】
続いて、
図12の(a),(b)に示すように、
図4の第1裁断機13にて、集電体シート5Aの長手方向に沿った切断線、すなわち集電体シート5Aを幅方向に三等分する二本の切断線C4にて集電体シート5Aを幅狭の三つの幅狭集電体シート5Dに切断する。
【0057】
さらに、
図12の(c)に示すように、
図4の第2裁断機14にて、先の集電体シート5Aの長手方向に沿った切断線C4に直交する切断線、すなわち集電体シート5Aの幅方向に沿った複数の切断線C5にて長手方向で三つの幅狭電極シート素片5Dをそれぞれ切断・分割して、それぞれの幅狭集電体シート5Dから三つの短冊状の電極シート素片5Eを個別に切り出す。これにより、当初の集電体シート5Aの長手方向の連続性が断たれて、第2裁断機14を経ることで当初の幅寸法Wの集電体シート5Aから合計で6枚の短冊状の電極シート素片5Eが同時に切り出されたことになる。そして、第2裁断機14にて得られた合計6枚の短冊状の電極シート素片5Eは、整列・積層されて後段の回収エリア15に一旦回収される。
【0058】
続いて、
図4の回収エリア15に回収された複数枚の短冊状の電極シート素片5Eは、さらに後段の仕上げ裁断機16に送られ、
図12の(c),(d)に示すように、互いに直交する2本の切断線C6にて不完全集電体リード部(集電体延部)2Aの一部を切断除去する。こうすることにより、
図3に示したような正極電極シート2が得られることになる。
【0059】
この第2の実施の形態においても先の第1の実施の形態と同様の効果が得られることは言うまでもない。
【0060】
[第三の実施形態]
図13は本発明に係る塗工ヘッドの他の形態を示す。図示された塗工ヘッド50は、
図15に例示されたように基材シート5F上の主材からなる主材層6Bを副材からなる副材層7Bによって被覆させるものであって、
図6の塗工ヘッド10におけるダイプレート30がダイプレート48に置き換えられた構成となっている。
【0061】
塗工ヘッド50は、
図14に示したダイプレート48,29,28同士を重ね合わせるとともに、アッパー側およびロア側のダイホルダー51,52間にダイプレート48,29,28を挟み込んだ上で、図示外のボルト等にて締結することにより構成されている。
【0062】
アッパー側のダイホルダー51には、
図13(A)に示すように断面が半円状でダイプレート48から見て長方形状のチャンバー部57,58と共にエア抜き穴59、副材のスラリ状物質(以下、副スラリ状物質)の流入口60が開口形成されている。エア抜き穴59はチャンバー部57に連通している。エア抜き穴59の開放側には開閉弁43を付帯させてある。流入口60はチャンバー部58に連通している。流入口60は図示省略の副スラリ状物質の供給経路にそれぞれ接続されることになる。
【0063】
また、ロア側のダイホルダー52には、同図に示すように断面が半円状でダイプレート28から見て長方形状のチャンバー部61とともに主材のスラリ状物質(以下、主スラリ状物質)の流入口62が開口形成されている。主スラリ状物質の流入口62はチャンバー部61に連通している。流入口62は図示省略の主スラリ状物質の供給経路にそれぞれ接続されることになる。
【0064】
ダイプレート48には、
図14(A)に示すように、ダイプレート29側の開口部29aと同じ大きさで且つダイホルダー51のチャンバー部57と重なり合う開口部48aが設けられているとともに、ダイホルダー51のチャンバー部58と重なり合う、ダイプレート28の開口部28aよりも幅広の矩形状の開口部48bが設けられている。
【0065】
そして、先に述べたように、
図14に示したダイプレート48,29,28同士を重ね合わせるとともに、
図13に示すように、アッパー側およびロア側のダイホルダー51,52間にそれらのダイプレート48,29,28を挟み込んだ上で、図示外のボルト等にて締結することにより、同図から明らかなように、塗工ヘッド50の内部には主スラリ状物質の通路53と副スラリ状物質の通路54とが形成される。また、塗工ヘッド50の先端面には、ダイプレート29の上方側に通路54に連通する副スラリ状物質の吐出口56が形成される。一方、ダイプレート29を挟んでその下方側に通路53に連通する、吐出口56よりも幅狭の主スラリ状物質の吐出口55が開口形成される。
【0066】
図5を参照しながら基材シート5F上に主材層6B,副材層7Bを形成させる塗工工程について説明する。
【0067】
同図に示された塗工装置の要部においては、塗工ヘッド10に代えて塗工ヘッド50が適用される。スラリタンク20,21には予め主スラリ状物質,副スラリ状物質がそれぞれ貯留される。そして、所定幅で且つ長尺な基材シート5Fはバックアップロール18にてバックアップされながら矢印方向に所定速度で連続的に走行する。塗工ヘッド10からは主スラリ状物質と副スラリ状物質とが同時に連続的に吐出される。主スラリ状物質,副スラリ状物質が集電体シート5Aの長手方向に所定の長さで塗布された時点で、塗工ヘッド50からの主スラリ状物質の吐出が停止され、その直後に副スラリ状物質の吐出が停止される。
【0068】
この主スラリ状物質および副スラリ状物質の双方が塗布された基材シート5Fは、
図4に示された乾燥機11を経ることにより、各スラリ状物質がそれぞれ乾燥・固化し、
図15に示したように基材シート5F上には主材層6Bを被覆させた副材層7Bが形成される。
【0069】
以上のように、塗工ヘッド50の本体内部においては、主スラリ状物質のチャンバー部57,61が、上下のダイホルダー51,52のそれぞれに設けられ、両者がダイプレート48,29,28の開口部48a,29a,28aを通して連通している。したがって、副スラリ状物質よりも多い量の主スラリ状物質を精度よく安定して吐出させるのに必要な主スラリ状物質のチャンバー容量を確保できる。
【0070】
塗工ヘッド50は、例えば、基材シート5Fが磁気テープであり、このシート5Fに主材層6Bである比較的肉厚の磁気層を副材層7Bである薄膜の保護層によって保護する多層構造の積層体を製造する場合に有効に適用できる。
【0071】
尚、本発明の塗工ヘッドは、二層塗工方式の塗工ヘッドに限定することなく、三層以上の多層塗工方式の塗工ヘッドの態様を採ってもよい。多層塗工方式の塗工ヘッドの場合でも、ヘッド本体に各スラリ状物質を滞留させるチャンバー部が形成される。さらに、各スラリ状物質の流入口は塗工ヘッド本体の同一側面部に形成するよい。
【0072】
例えば
図16に示された塗工ヘッド70は、三層塗工方式の塗工ヘッドであって、
図13の塗工ヘッド50のヘッド本体内部において、第二の副スラリ状物質の通路が追加形成され、この通路にもチャンバー部72が形成されている。
【0073】
塗工ヘッド70は、ダイプレート71,48,29,28同士を重ね合わせるとともに、ダイホルダー51,52間にそれらのダイプレート71,48,29,28を挟み込んだ上で、図示外のボルト等にて締結することにより構成されている。
【0074】
ダイホルダー51には、チャンバー部57,58、流入口59,60に加えて、
図16に示すように、容積がチャンバー部37,38よりも小さく且つ断面が半円状でダイプレート71から見て長方形状のチャンバー部72が形成されている。さらに、第二の副スラリ状物質の流入口73がチャンバー部72に連通して開口形成されている。流入口73は図示省略の第二の副スラリ状物質の供給経路にそれぞれ接続されることになる。
【0075】
そして、先に述べたように、ダイプレート71,48,29,28同士を重ね合わせるとともに、
図16に示すように、ダイホルダー51,52間にそれらのダイプレート71,48,29,28を挟み込んだ上で、図示外のボルト等にて締結することにより、同図から明らかなように、塗工ヘッド70の内部には、主スラリ状物質の通路53と、第一の副スラリ状物質の通路54と、に加えて、第二の副スラリ状物質の通路74が形成される。また、塗工ヘッド70の先端面には、ダイプレート29のダイホルダー52側に主スラリ状物質の通路53に連通する主スラリ状物質の吐出口56が形成される。さらに、第2のダイプレート29を挟んでそのダイホルダー51側に第一の副スラリ状物質の通路54に連通する第一の副スラリ状物質の吐出口55が開口形成される。そして、ダイプレート71を挟んでそのダイホルダー51側に第二の副スラリ状物質の通路74に連通する第二の副スラリ状物質の吐出口75が開口形成される。
【0076】
この塗工ヘッド70によっても上述の塗工ヘッド50と同様の効果が得られることは言うまでもない。