特許第6096089号(P6096089)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ミネベア株式会社の特許一覧

特許6096089モータ駆動制御装置及びモータ駆動制御装置の制御方法
<>
  • 特許6096089-モータ駆動制御装置及びモータ駆動制御装置の制御方法 図000002
  • 特許6096089-モータ駆動制御装置及びモータ駆動制御装置の制御方法 図000003
  • 特許6096089-モータ駆動制御装置及びモータ駆動制御装置の制御方法 図000004
  • 特許6096089-モータ駆動制御装置及びモータ駆動制御装置の制御方法 図000005
  • 特許6096089-モータ駆動制御装置及びモータ駆動制御装置の制御方法 図000006
  • 特許6096089-モータ駆動制御装置及びモータ駆動制御装置の制御方法 図000007
  • 特許6096089-モータ駆動制御装置及びモータ駆動制御装置の制御方法 図000008
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6096089
(24)【登録日】2017年2月24日
(45)【発行日】2017年3月15日
(54)【発明の名称】モータ駆動制御装置及びモータ駆動制御装置の制御方法
(51)【国際特許分類】
   H02P 6/20 20160101AFI20170306BHJP
【FI】
   H02P6/20
【請求項の数】8
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2013-195335(P2013-195335)
(22)【出願日】2013年9月20日
(65)【公開番号】特開2015-61471(P2015-61471A)
(43)【公開日】2015年3月30日
【審査請求日】2016年3月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000114215
【氏名又は名称】ミネベアミツミ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110788
【弁理士】
【氏名又は名称】椿 豊
(74)【代理人】
【識別番号】100143557
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 美保
(74)【代理人】
【識別番号】100124589
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 竜郎
(74)【代理人】
【識別番号】100166811
【弁理士】
【氏名又は名称】白鹿 剛
(72)【発明者】
【氏名】西 秀平
【審査官】 森山 拓哉
(56)【参考文献】
【文献】 特開平7−337080(JP,A)
【文献】 特開平9−89352(JP,A)
【文献】 特開平11−187690(JP,A)
【文献】 特開2013−017289(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 6/00− 6/34
H02P 1/00− 1/58
H02P 21/00−31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータの回転状態を検出する回転検出手段と、
前記モータの駆動状態を検出する駆動検出手段と、
前記モータを起動させるための第1指令情報を取得する指令取得手段と、
前記指令取得手段により前記第1指令情報が取得されたとき、前記回転検出手段の検出結果と前記駆動検出手段の検出結果とに基づいて、前記モータがスロースタート可能な状態か否かを判定する状態判定手段と、
前記状態判定手段の判定結果と、前記指令取得手段により取得された前記第1指令情報とに基づいて、前記モータを回転させる速度に対応する第2指令情報を生成する制御手段と、
前記制御手段により生成された前記第2指令情報に対応する駆動信号を前記モータに出力して前記モータを駆動させるモータ駆動手段とを備え、
前記制御手段は、前記モータがスロースタート可能な状態であると判定されたとき、前記モータをスロースタートさせるように前記第2指令情報を出力する、モータ駆動制御装置。
【請求項2】
前記駆動検出手段は、前記制御手段により生成された前記第2指令情報に基づいて、前記モータの駆動状態を検出する、請求項1に記載のモータ駆動制御装置。
【請求項3】
前記回転検出手段は、前記モータの回転速度が所定値より小さいことを検出し、
前記駆動検出手段は、前記モータの駆動が停止されていることを検出する、請求項1又は2に記載のモータ駆動制御装置。
【請求項4】
前記状態判定手段は、前記駆動検出手段により前記モータの駆動が停止されていることが検出された場合において、前記回転検出手段により前記モータの回転速度が所定値より小さいことが検出されたとき、前記モータがスロースタート可能な状態であると判定する、請求項3に記載のモータ駆動制御装置。
【請求項5】
前記状態判定手段は、前記駆動検出手段により前記モータの駆動が停止されていることが検出されないとき、前記モータがスロースタート可能な状態であると判定する、請求項3又は4に記載のモータ駆動制御装置。
【請求項6】
前記駆動検出手段により前記モータの駆動が停止されていることが検出され、かつ、前記回転検出手段により前記モータの回転速度が所定値より小さいことが検出されないときに前記モータがショートブレーキ状態になるように前記モータ駆動手段を制御するショートブレーキ手段をさらに備える、請求項3から5のいずれか1項に記載のモータ駆動制御装置。
【請求項7】
前記モータ駆動制御装置は、その全部又は一部が集積回路装置としてパッケージ化されている、請求項1から6のいずれか1項に記載のモータ駆動制御装置。
【請求項8】
モータの回転状態を検出する回転検出手段と、
前記モータの駆動状態を検出する駆動検出手段と、
前記モータを起動させるための第1指令情報を取得する指令取得手段とを備えるモータ駆動制御装置の制御方法であって、
前記指令取得手段により前記第1指令情報が取得されたとき、前記回転検出手段の検出結果と前記駆動検出手段の検出結果とに基づいて、前記モータがスロースタート可能な状態か否かを判定する状態判定ステップと、
前記状態判定ステップの判定結果と、前記指令取得手段により取得された前記第1指令情報とに基づいて、前記モータを回転させる速度に対応する第2指令情報を生成する制御ステップと、
前記制御ステップにより生成された前記第2指令情報に対応する駆動信号を前記モータに出力して前記モータを駆動させるモータ駆動ステップとを備え、
前記制御ステップは、前記モータがスロースタート可能な状態であると判定されたとき、前記モータをスロースタートさせるように前記第2指令情報を出力する、モータ駆動制御装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、モータ駆動制御装置及びモータ駆動制御装置の制御方法に関し、特に、外部から入力された指令信号に応じてモータの駆動を制御するモータ駆動制御装置及びモータ駆動制御装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
モータ駆動制御装置によるモータ(例えば、ファンモータや扇風機用のモータとして使用されるブラシレスDCモータなど)の回転速度の制御方式として、静かにモータを起動させるために、PWM制御によってモータに供給する電力を徐々に上昇させることで、回転速度を徐々に上昇させる機能が用いられている(いわゆるスロースタート(ソフトスタート)機能)がある。
【0003】
このようなスロースタート機能を有する同期整流型のモータ駆動制御装置によりモータを駆動する場合において、モータが惰性により回転したり外乱により回転したりするとき、問題が発生する可能性がある。すなわち、モータが惰性により回転したり外乱により回転したりしているときにスロースタートすると、負電流(回生電流)が発生する。発生した負電流をモータ駆動制御装置の駆動回路の電源部に設けられているコンデンサなどで吸収しきれない場合、電源電圧が過大になって、駆動回路が損傷する可能性がある。
【0004】
図7は、従来のモータ駆動制御装置におけるスロースタート時の動作の一例を示すタイミングチャートである。
【0005】
図7においては、上段から、モータ駆動制御装置の電源電圧、駆動対象となるモータの回転数(回転速度)、モータのホール信号から得られるホール周期信号(モータの回転状態を示す信号)、モータを駆動するために生成される速度指令値(モータの駆動状態を示す信号)、モータの目標回転数(目標回転速度)に対応する目標値、モータ駆動制御装置の動作モードのそれぞれについて、時間の経過に伴う推移が示されている。
【0006】
モータの駆動が停止されており速度指令値がゼロである状態において、動作モードが駆動モードに設定され、モータの目標回転数がVoに設定された場合を想定する(時刻t15)。そうすると、時刻t15以降、速度指令値は、ゼロからVoになるまで緩やかに増大するように制御が行われ、徐々に大きい駆動電流がモータに流される。時刻t17になると、速度指令値がVoに到達し、モータの目標回転数に到達する。
【0007】
ここで、例えば外乱等によりモータが回転させられている状態において時刻t15が到来した場合には、モータが回転しているにもかかわらず、時刻t15から緩やかにモータに駆動電流が流される状態となる。そうすると、モータの回転に伴って生じた回生電流がモータ駆動制御装置に逆流し、電源電圧が一時的に激しく上昇する。このように電源電圧が過大になると、モータ駆動制御装置の電源部が破損する可能性がある。
【0008】
このような問題に関し、下記特許文献1には、ブラシレスモータの制御装置において、ブラシレスモータへ入力される交流電圧が遮断から復電した後の所定の期間、駆動手段に対して、指令電圧に代えて検出回転速度に応じた電圧を与える制御を行うことが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2001−211682号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上述の特許文献1に記載の装置には、停電を検出するための回路や、電圧を切り替えるための回路を設けることが必要となり、回路構成が複雑になり、製造コストが高くなるという問題がある。
【0011】
この発明はそのような問題点を解決するためになされたものであり、簡素な回路構成を有し、かつ、モータの回転状態や駆動状態にかかわらず電源電圧の上昇を抑制できるモータ駆動制御装置及びモータ駆動制御装置の制御方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するためこの発明のある局面に従うと、モータ駆動制御装置は、モータの回転状態を検出する回転検出手段と、モータの駆動状態を検出する駆動検出手段と、モータを起動させるための第1指令情報を取得する指令取得手段と、指令取得手段により第1指令情報が取得されたとき、回転検出手段の検出結果と駆動検出手段の検出結果とに基づいて、モータがスロースタート可能な状態か否かを判定する状態判定手段と、状態判定手段の判定結果と、指令取得手段により取得された第1指令情報とに基づいて、モータを回転させる速度に対応する第2指令情報を生成する制御手段と、制御手段により生成された第2指令情報に対応する駆動信号をモータに出力してモータを駆動させるモータ駆動手段とを備え、制御手段は、モータがスロースタート可能な状態であると判定されたとき、モータをスロースタートさせるように第2指令情報を出力する。
【0013】
好ましくは、駆動検出手段は、制御手段により生成された第2指令情報に基づいて、モータの駆動状態を検出する。
【0014】
好ましくは、回転検出手段は、モータの回転速度が所定値より小さいことを検出し、駆動検出手段は、モータの駆動が停止されていることを検出する。
【0015】
好ましくは、状態判定手段は、駆動検出手段によりモータの駆動が停止されていることが検出された場合において、回転検出手段によりモータの回転速度が所定値より小さいことが検出されたとき、モータがスロースタート可能な状態であると判定する。
【0016】
好ましくは、状態判定手段は、駆動検出手段によりモータの駆動が停止されていることが検出されないとき、モータがスロースタート可能な状態であると判定する。
【0017】
好ましくは、モータ駆動制御装置は、駆動検出手段によりモータの駆動が停止されていることが検出され、かつ、回転検出手段によりモータの回転速度が所定値より小さいことが検出されないときにモータがショートブレーキ状態になるようにモータ駆動手段を制御するショートブレーキ手段をさらに備える。
【0018】
好ましくは、モータ駆動制御装置は、その全部又は一部が集積回路装置としてパッケージ化されている。
【0019】
この発明の他の局面に従うと、モータの回転状態を検出する回転検出手段と、モータの駆動状態を検出する駆動検出手段と、モータを起動させるための第1指令情報を取得する指令取得手段とを備えるモータ駆動制御装置の制御方法は、指令取得手段により第1指令情報が取得されたとき、回転検出手段の検出結果と駆動検出手段の検出結果とに基づいて、モータがスロースタート可能な状態か否かを判定する状態判定ステップと、状態判定ステップの判定結果と、指令取得手段により取得された第1指令情報とに基づいて、モータを回転させる速度に対応する第2指令情報を生成する制御ステップと、制御ステップにより生成された第2指令情報に対応する駆動信号をモータに出力してモータを駆動させるモータ駆動ステップとを備え、制御ステップは、モータがスロースタート可能な状態であると判定されたとき、モータをスロースタートさせるように第2指令情報を出力する。
【発明の効果】
【0020】
これらの発明に従うと、モータを起動させるための第1指令情報が取得されたとき、モータの回転状態と駆動状態との検出結果に基づいて、モータがスロースタート可能な状態か否かが判定される。したがって、簡素な回路構成を有し、かつ、モータの回転状態や駆動状態にかかわらず電源電圧の上昇を抑制できるモータ駆動制御装置及びモータ駆動制御装置の制御方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の実施の形態の1つにおけるモータ駆動制御装置の回路構成を示すブロック図である。
図2】制御回路部の構成を示すブロック図である。
図3】スロー制御回路の速度制御機能を説明する図である。
図4】スロー制御回路の制御動作の一例を示すフローチャートである。
図5】本実施の形態に係るモータ駆動制御装置におけるスロースタート時の動作の一例を示すタイミングチャートである。
図6】本実施の形態に係るモータ駆動制御装置におけるスロースタート時の動作の他の例を示すタイミングチャートである。
図7】従来のモータ駆動制御装置におけるスロースタート時の動作の一例を示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態におけるモータ駆動制御装置について説明する。
【0023】
[実施の形態]
【0024】
図1は、本発明の実施の形態の1つにおけるモータ駆動制御装置の回路構成を示すブロック図である。
【0025】
図1に示すように、モータ駆動制御装置1は、モータ20を例えば正弦波駆動により駆動させるように構成されている。本実施の形態において、モータ20は、例えば3相のブラシレスモータである。モータ駆動制御装置1は、ロータの回転位置信号に基づいて、モータ20の電機子コイルLu,Lv,Lwに正弦波状の駆動電流を流すことで、モータ20を回転させる。本実施の形態において、ロータの回転位置信号は、ホール(HALL)素子の出力信号から、ロータの回転位置を推定した信号である(不図示)。
【0026】
モータ駆動制御装置1は、インバータ回路2a及びプリドライブ回路2bを有するモータ駆動部(モータ駆動手段の一例)2と、制御回路部4とを有している。なお、図1に示されているモータ駆動制御装置1の構成要素は、全体の一部であり、モータ駆動制御装置1は、図1に示されたものに加えて、他の構成要素を有していてもよい。
【0027】
本実施の形態において、モータ駆動制御装置1は、その全部がパッケージ化された集積回路装置(IC)である。なお、モータ駆動制御装置1の一部が1つの集積回路装置としてパッケージ化されていてもよいし、他の装置と一緒にモータ駆動制御装置1の全部又は一部がパッケージ化されて1つの集積回路装置が構成されていてもよい。
【0028】
インバータ回路2aは、プリドライブ回路2bとともに、モータ駆動部2を構成する。インバータ回路2aは、プリドライブ回路2bから出力された出力信号に基づいてモータ20に駆動信号を出力し、モータ20が備える電機子コイルLu,Lv,Lwに通電する。インバータ回路2aは、例えば、直流電源Vccの両端に設けられた2つのスイッチ素子の直列回路の対が、電機子コイルLu,Lv,Lwの各相(U相、V相、W相)に対してそれぞれ配置されて構成されている。2つのスイッチ素子の各対において、スイッチ素子同士の接続点に、モータ20の各相の端子が接続されている(不図示)。
【0029】
プリドライブ回路2bは、制御回路部4による制御に基づいて、インバータ回路2aを駆動するための出力信号を生成し、インバータ回路2aに出力する。出力信号としては、例えば、インバータ回路2aの各スイッチ素子に対応するVuu,Vul,Vvu,Vvl,Vwu,Vwlの6種類が出力される。これらの出力信号が出力されることで、それぞれの出力信号に対応するスイッチ素子がオン、オフ動作を行い、モータ20に駆動信号が出力されてモータ20の各相に電力が供給される。
【0030】
本実施の形態において、制御回路部4は、外部から入力される、回転速度指令信号Scと、スタート信号Ssとを取得し、それらに基づいてモータ20の駆動制御を行う。回転速度指令信号Scと、スタート信号Ssとは、モータを起動させるために入力される信号(第1指令情報の一例)である。
【0031】
回転速度指令信号Scは、モータ20の回転数に関する信号であって、例えば、モータ20の目標回転速度に対応するPWM(パルス幅変調)信号である。換言すると、回転速度指令信号Scは、モータ20の回転速度の目標値に対応する情報である。なお、回転速度指令信号Scとして、クロック信号が入力されてもよい。
【0032】
スタート信号Ssは、モータ駆動制御装置1の制御モードを設定する信号である。すなわち、スタート信号Ssは、モータ20の駆動制御を行う駆動モードとなるか、駆動制御を行わないスタンバイモードとなるかを設定するための信号である。なお、スタート信号Ssと他の制御信号(ブレーキ信号など)とが入力され、両信号がそれぞれ所定値となったときに、制御モードが駆動モードとなるように構成されていてもよい。
【0033】
本実施の形態では、スタート信号Ssに基づいて、制御モードが駆動モードである場合において、回転速度指令信号Scとして0でない(速度がゼロでない)値をとるものが入力されたときに、モータ20は、回転速度指令信号Scに応じた速度で回転するように駆動される。制御モードが駆動モードでないときには、モータ20は駆動されない。モータ20の駆動が行われていない場合において、制御モードが駆動モードとなり、回転速度指令信号Scとして0でない値をとるものが入力されると、モータ20が起動される(モータ20の駆動が開始される。)。なお、制御モードが駆動モードであるとき、回転速度指令信号Scとして「0」(速度がゼロ)が入力されると、モータ20は、ショートブレーキ状態になる。
【0034】
また、制御回路部4には、モータ20から、3つのホール信号Hu,Hv,Hw(以下、3つのホール信号Hu,Hv,Hwをまとめてホール信号Shということがある。)が入力される。ホール信号Shは、例えば、モータ20に配置された3つのホール(HALL)素子の出力である。制御回路部4は、ホール信号Shを用いて、モータ20の回転位置や、回転数情報(ホールFG信号)などの情報を得ることでモータ20の回転状態を検出し、モータ20の駆動を制御する。
【0035】
なお、制御回路部4は、このようなホール素子を用いて得られた情報と共に、又はその情報に代えて、モータ20の回転状態に関する他の情報が入力されるようにしてもよい。例えば、モータ20のロータの回転に対応するFG信号として、ロータの側にある基板に設けたコイルパターンを用いて生成される信号(パターンFG)が入力されるようにしてもよい。また、モータ20の各相(U,V,W相)に誘起する逆起電圧を検出する回転位置検出回路を設け、検出された逆起電圧に基づき、モータ20のロータの回転位置と回転数とを検出するようにしてもよいし、モータの回転数や回転位置を検出するエンコーダなどのセンサ信号を用いてもよい。
【0036】
制御回路部4は、例えば、マイクロコンピュータやデジタル回路等で構成されている。制御回路部4は、ホール信号Shと、回転速度指令信号Scと、スタート信号Ssと、回転位置信号に基づいて、駆動制御信号Sdをプリドライブ回路2bに出力する。制御回路部4は、駆動制御信号Sdを出力することで、モータ20が回転速度指令信号Scに対応する回転数で回転するようにモータ20の回転制御を行う。すなわち、制御回路部4は、モータ20を駆動させるための駆動制御信号Sdをモータ駆動部2に出力してモータ駆動部2を制御することで、モータ20の回転制御を行う。モータ駆動部2は、駆動制御信号Sdに基づいて、モータ20に駆動信号を出力してモータ20を駆動させる。
【0037】
[制御回路部4の説明]
【0038】
図2は、制御回路部4の構成を示すブロック図である。
【0039】
図2に示されるように、制御回路部4は、指令信号処理回路31と、ホール信号周期検出回路32と、スロー制御回路(回転検出手段、駆動検出手段、指令取得手段、状態判定手段、制御手段、ショートブレーキ手段の一例)33と、正弦波駆動回路35とを含む。各回路は、デジタル回路である。なお、図2において、各回路間での信号や情報等の送受は、後述の第2指令情報S3の生成に関する説明に係るものが示されている。
【0040】
指令信号処理回路31には、回転速度指令信号Scが入力される。指令信号処理回路31は、回転速度指令信号Scに基づいて、モータ20の回転数が、目標回転数となるように、速度指令情報S1を出力する。具体的には、例えば、指令信号処理回路31は、回転速度指令信号Scのデューティ比に基づいた一義的な速度指令情報S1であってもよいし、速度フィードバック制御によってモータ20の目標回転数に対応するクロック信号(回転速度指令信号として)とモータ回転速度情報との比較に基づいて得られる速度指令情報S1を出力してもよい。速度指令情報S1は、回転速度指令信号Scに基づく、モータ20の目標回転速度に対応する目標値である。速度指令情報S1は、スロー制御回路33に入力される。
【0041】
ホール信号周期検出回路32には、ホール信号Hu,Hv,Hw(ホール信号Sh)が入力される。ホール信号周期検出回路32は、入力されたホール信号Shの3相合成信号を生成し、その周期に対応する信号をホール周期信号S2として出力する。ホール周期信号S2は、モータ20の回転速度に対応する、モータの回転状態を示す情報である。ホール周期信号S2は、スロー制御回路33に入力される。
【0042】
スロー制御回路33には、上述のようにして出力された、速度指令情報S1とホール周期信号S2とが入力される。また、スロー制御回路33には、スタート信号Ssが入力される。スロー制御回路33は、スタート信号Ssに基づいて、制御モードが駆動モードであるか否かを判断する。駆動モードであるとき、スロー制御回路33は、入力された信号に基づいて、第2指令情報S3を出力する。第2指令情報S3は、モータを回転させる速度に対応する、速度指令である。
【0043】
正弦波駆動回路35には、スタート信号Ssと、第2指令情報S3とが入力される。正弦波駆動回路35は、スタート信号Ssに基づいて、制御モードが駆動モードであるか否かを判断する。駆動モードであるとき、第2指令情報S3に基づいて、モータ駆動部2を駆動させるための駆動制御信号Sdを生成する。駆動制御信号Sdがモータ駆動部2に出力されることで、モータ駆動部2からモータ20に駆動信号が出力され、モータ20が駆動される。すなわち、駆動信号は、第2指令情報S3に対応する、モータを回転させる速度に対応する信号である。
【0044】
[スロー制御回路33の動作の説明]
【0045】
本実施の形態において、スロー制御回路33は、モータ20の回転数の目標値が変更されるとき、実際のモータ20の回転数が緩やかに変化するように制御する速度制御機能を有している。これにより、モータ駆動制御装置1は、スロースタート機能、スローストップ機能、スロー加速機能、スロー減速機能などの動作を実行可能である。
【0046】
図3は、スロー制御回路33の速度制御機能を説明する図である。
【0047】
図3において、破線は回転数の目標値すなわち速度指令情報S1に対応し、実線は指令値すなわち第2指令情報S3に対応する。スロー制御回路33は、目標値が変化すると、目標値に向けて、カウンタ回路により定められた一定の傾きで、指令値を変化させる。
【0048】
例えば、時刻t101以前は第1の値R1であった目標値が、時刻t101に第1の値R1より大きい第2の値R2に変化し、その後、時刻t102に、第1の値R1より大きく第2の値R2より小さい第3の値R3に変化した場合を想定する。時刻t101において指令値が第1の値R1であったとき、時刻t101以後は、指令値は、第2の値R2に向けて変化する。このとき、指令値は時間の経過と共に一定量ずつ変化するので、徐々に上昇する。指令値が第3の値R3より大きくなったとき、時刻t102において目標値が第3の値R3に変化すると、その時点から、指令値は、第3の値R3に向けて下降を開始する。指令値は、下降時も、上昇時と同様に徐々に変化する。指令値が目標値に一致すると、指令値はその値のままとなる。
【0049】
このように指令値が徐々に変化することで、モータ20の回転数が指令値に確実に追従して変化し、モータ20の動作が急激に変化することがなくなる。これにより、モータ20の起動時等に異音、振動等が発生することが抑制される。なお、指令値が徐々に増減する程度は、例えば制御回路部4内に設けられているメモリ等に記憶されている設定値に応じて定められるようにすればよい。
【0050】
ここで、スロー制御回路33は、モータ20の回転状態と駆動状態とを、入力された信号に基づいて検出する。そして、それらの検出結果や、速度指令情報S1及びスタート信号Ssに基づいて、第2指令情報S3を生成し、出力する。
【0051】
すなわち、モータ20の回転状態としては、スロー制御回路33は、モータ20の回転速度が所定値より小さいか否かを、ホール周期信号S2に基づいて検出する。本実施の形態において、スロー制御回路33は、ホール周期信号S2がL(ロー)であるとき、モータ20の回転速度が所定値より小さいと判断する。
【0052】
なお、ホール周期信号S2は、例えば、ホール周期が27ミリ秒以上でL(ロー)となり、ホール周期が27ミリ秒未満である状態でホール信号の立下りエッジが4回カウントされたときにH(ハイ)となる信号である。
【0053】
また、モータ20の駆動状態としては、スロー制御回路33は、モータ20の駆動が停止されているか否かを、生成した第2指令情報S3に基づいて検出する。
【0054】
本実施の形態において、スロー制御回路33は、モータ20の駆動を開始する起動時において、次のように制御を行う。スロー制御回路33は、速度指令情報S1すなわち回転速度指令信号Scと、モータ20の回転状態及び駆動状態とに基づいて、モータ20がスロースタート可能な状態か否かを判定する。そして、スロースタート可能か否かの判定結果と、回転速度指令信号Scに基づく速度指令情報S1とに基づいて、第2指令情報S3が生成される。
【0055】
本実施の形態において、スロー制御回路33は、モータ20の駆動が停止されている場合において、ホール周期信号S2がLであるとき、モータ20がスロースタート可能な状態であると判定する。また、スロー制御回路33は、モータ20の駆動が停止されていないとき、モータ20がスロースタート可能な状態であると判定する。
【0056】
図4は、スロー制御回路の制御動作の一例を示すフローチャートである。
【0057】
図4に示されるように、ステップS101において、スロー制御回路33は、モータ20の起動指令が行われたことを検知する。例えば、スロー制御回路33は、スタート信号Ssの所定の値などが入力されて制御モードが駆動モードになっている場合において、回転速度指令信号Scに基づいて指令信号処理回路31からスロー制御回路33にモータ20を回転させるための速度指令情報S1(速度がゼロでない目標値)が入力されたとき、起動指令が行われたと検知する。
【0058】
ステップS102において、スロー制御回路33は、第2指令情報S3の速度指令がゼロであるか否か、すなわち、モータ20の駆動が停止されているか(第2指令情報S3がゼロ(0)であるか)そうでないか(第2指令情報S3がゼロ(0)でない値であるか)を判断する。
【0059】
ステップS102で第2指令情報S3がゼロであれば(YESの場合)、ステップS103以降の処理が行われる。すなわち、スロー制御回路33は、ホール周期信号S2がLであるか、すなわちホール信号の周期が27ミリ秒以上であるか確認する。周期が27ミリ秒以上であれば、スロースタート可能な状態であると判定される。
【0060】
ここで、周期が27ミリ以上でなければ、周期が27ミリ秒以上になるまで(ホール周期信号S2がLになるまで)、モータ20がショートブレーキ状態になるように第2指令情報S3をゼロとする。換言すると、スロースタート可能な状態でなければ、スロースタート可能な状態になるまで、第2指令情報S3をゼロとする制御が行われる。このとき、第2指令情報S3は、速度指令情報S1にかかわらず、周期が27ミリ秒以上になるまで、0に維持される。第2指令情報S3がゼロとされることで、モータ20はショートブレーキ状態となり、モータ20が減速される。周期が27ミリ秒以上になると、すなわちスロースタート可能な状態になると、ステップS104の処理に進む。
【0061】
ステップS104において、スロー制御回路33は、スロースタートを開始する。すなわち、速度指令情報S1(目標値)に到達するまで、第2指令情報S3を徐々に大きくする制御を行う。これにより、モータ20のスロースタートが行われ、一連の処理が終了する。
【0062】
他方、ステップS102で第2指令情報S3がゼロでなければ(NOの場合)、ステップS105の処理が行われる。すなわち、スロー制御回路33は、モータ20の駆動が停止されていないとき、スローストップ動作中であってモータ20がスロースタート可能な状態であると判定する。このとき、スロー制御回路33は、現在の第2指令情報S3の値から目標値に向けてスロースタートを開始させ、モータ20をスロースタートさせるように第2指令情報S3を出力する。これにより、モータ20のスロースタートが行われ、一連の処理が終了する。
【0063】
図5は、本実施の形態に係るモータ駆動制御装置1におけるスロースタート時の動作の一例を示すタイミングチャートである。
【0064】
図5においては、上段から、モータ駆動制御装置1のモータ駆動部2の電源電圧、モータ20の回転数、モータ20のホール信号Shから得られるホール周期信号S2、第2指令情報S3の速度指令の値、速度指令情報S1の値(目標値)、及びモータ駆動制御装置1の動作モードのそれぞれについて、時間の経過に伴う推移が示されている。
【0065】
図5に示されるように、時刻t23以前においては、モータ20の駆動が停止されており(速度指令値がゼロであり)、動作モードがスタンバイモードである。このとき、モータ20は、惰性又は外乱により回転しており、ホール周期信号S2はHとなっている。
【0066】
このような状況下において、動作モードが駆動モードに設定され、モータの目標回転数がVoに設定された場合を想定する(時刻t23)。そうすると、モータ20の駆動は停止されており、ホール周期信号S2はHであるので、スロースタートは開始されず、ショートブレーキ状態になるように制御される。
【0067】
時刻t25において、モータ20の回転数が下がると、ホール周期信号S2がLになる。そうすると、スロー制御回路33は、スロースタート可能であると判定する。時刻t25以降、スロー制御回路33により、第2指令情報S3が、ゼロから目標値であるVoになるまで緩やかに増大するように制御が行われ、徐々に大きい駆動電流がモータ20に流される。時刻t27になると、第2指令情報S3がVoに到達し、モータの目標回転数に到達する。
【0068】
このように、モータ20の起動指令が行われた場合において、モータ20が惰性や外乱により回転しているときには、スロースタートは開始されない。このとき、いったんモータ20をショートブレーキ状態とさせる制御が行われることで、モータ20の回転数が十分に下げられた後で、スロースタートが開始される。したがって、スロースタートの開始時に、大きな回生電流が発生することが防止され、電源電圧が上昇することがない。
【0069】
図6は、本実施の形態に係るモータ駆動制御装置1におけるスロースタート時の動作の他の例を示すタイミングチャートである。
【0070】
図6も、図5と同様に、各部の動作が示されている。図6においては、モータ20を停止させる制御が行われたとき(時刻t31)、スローストップにより完全にモータ20の回転が止まる前に、モータ20の起動指令が行われた場合の動作の例が示されている。
【0071】
すなわち、第2指令情報S3がVoとなるようにしてモータ20が駆動されているとき、時刻t31において、モータ20を停止させる制御が行われる。このとき、目標値が「0」とされ、動作モードが非駆動モード(スタンバイモード)となる。そうすると、スローストップ動作が開始され、第2指令情報S3は、目標値に向かって徐々に小さくなる。
【0072】
第2指令情報S3がまだ目標値の「0」より大きい時刻33において、モータ20の起動指令が行われると、動作モードが駆動モードとなり、目標値がVoとなる。このとき、第2指令情報S3の値が「0」ではなく、モータ20の駆動は停止されていないので、ホール周期信号S2がHの状態であっても、スロースタートが開始される。すなわち、その時の第2指令情報S3の値から、目標値であるVoに向けて、第2指令情報S3が徐々に大きくなるように制御が行われる。なお、第2指令情報S3の値が目標値Voよりも大きい場合は、目標値Voに向けて、第2指令情報S3が徐々に小さくなるように制御が行われる。時刻t35に第2指令情報S3が目標値に達すると、以後、そのまま駆動が継続される。
【0073】
このように、モータ20の起動指令が行われた場合において、モータ20の制御が行われているときには、スロースタートがすぐに行われる。すなわち、このようなときには、モータ20の回転数は、スロースタートの開始前後で第2指令情報S3に対応する駆動信号に従っている状態であるため、スロースタートを開始しても、回生電流が逆流することはない。そのため、起動指令に応じてすぐにスロースタートを開始することで、速やかに目標となる回転速度でモータ20を駆動させることができる。
【0074】
[実施の形態における効果]
【0075】
本実施の形態では、モータ20の起動指令が行われたとき、モータ20の回転状態や駆動状態に合わせて、スロースタート動作が開始される。したがって、モータ20の回転状態や駆動状態がどのような状態であっても、モータ駆動制御装置1における電源電圧の上昇を抑制することができ、モータ駆動制御装置1が損傷するのを防止することができる。回転状態や駆動状態に基づいて、簡素な回路でスロースタート可能か否かを判定することができ、モータ駆動制御装置1の製造コストを低減することができる。
【0076】
起動指令が行われた場合において、スロースタート可能でないときには、モータ20がショートブレーキ状態にされる。したがって、速やかにモータ20の回転数を低下させてから、スロースタート動作を開始させることができる。
【0077】
[その他]
【0078】
制御回路部は、図2に示されるような回路構成に限定されない。本発明の目的にあうように構成された、様々な回路構成が適用できる。
【0079】
モータ駆動制御装置の各構成要素は、少なくともその一部がハードウェアによる処理ではなく、ソフトウェアによる処理であってもよい。
【0080】
本実施の形態のモータ駆動制御装置により駆動されるモータは、3相のブラシレスモータに限られず、他の種類のモータであってもよい。
【0081】
本発明は、正弦波駆動方式によりモータを駆動するモータ駆動制御装置に限られず、例えば矩形波駆動方式によりモータを駆動するモータ駆動制御装置に適用してもよい。
【0082】
上述の実施の形態における処理の一部又は全部が、ソフトウェアによって行われるようにしても、ハードウェア回路を用いて行われるようにしてもよい。
【0083】
上記実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0084】
1 モータ駆動制御装置
2 モータ駆動部(モータ駆動手段の一例)
4 制御回路部
20 モータ
31 速度制御回路
32 ホール信号周期検出回路
33 スロー制御回路(回転検出手段、駆動検出手段、指令取得手段、状態判定手段、制御手段、ショートブレーキ手段の一例)
35 正弦波駆動回路
Hu,Hv,Hw,Sh ホール信号
Sc 回転速度指令信号(第1指令情報の一例)
Sd 駆動制御信号
Sr 回転数信号
Ss スタート信号(第1指令情報の一例)
S1 速度指令情報
S2 ホール周期信号
S3 第2指令情報
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7