(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6096097
(24)【登録日】2017年2月24日
(45)【発行日】2017年3月15日
(54)【発明の名称】定着器部材
(51)【国際特許分類】
G03G 15/20 20060101AFI20170306BHJP
【FI】
G03G15/20 515
【請求項の数】20
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-233800(P2013-233800)
(22)【出願日】2013年11月12日
(65)【公開番号】特開2014-106536(P2014-106536A)
(43)【公開日】2014年6月9日
【審査請求日】2016年11月9日
(31)【優先権主張番号】13/689,174
(32)【優先日】2012年11月29日
(33)【優先権主張国】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】596170170
【氏名又は名称】ゼロックス コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ユー・チ
(72)【発明者】
【氏名】ナン−シン・フー
(72)【発明者】
【氏名】チー・ツァン
(72)【発明者】
【氏名】ブリン・エム・ドゥーリー
【審査官】
杉山 輝和
(56)【参考文献】
【文献】
特開平11−323054(JP,A)
【文献】
米国特許第6103815(US,A)
【文献】
特開平10−10895(JP,A)
【文献】
特開2004−70046(JP,A)
【文献】
特開2003−131451(JP,A)
【文献】
特開2002−268426(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2013/0065045(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2011/0142508(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
定着器部材であって、
基材層と、
前記基材層の上に配置された表面層と、
を備え、
前記表面層が、フッ素化グラフェン粒子が分散したフルオロポリマーと、メタクリレート系フルオロ界面活性剤とを含む、定着器部材。
【請求項2】
請求項1に記載の定着器部材であって、
前記フッ素化グラフェン粒子は、フッ素含有量が約60重量%〜約10重量%である、定着器部材。
【請求項3】
請求項1に記載の定着器部材であって、前記フッ素化グラフェン粒子は、前記表面層の約1重量%〜約10重量%を構成する、定着器部材。
【請求項4】
請求項1に記載の定着器部材であって、
前記フルオロポリマーは、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ペルフルオロアルコキシポリマー樹脂(PFA)、および、テトラフルオロエチレン(TFE)とヘキサフルオロプロピレン(HFP)とのコポリマーからなる群から選択されるフルオロプラスチックを含む、定着器部材。
【請求項5】
請求項1に記載の定着器部材であって、
さらに、カーボンブラック、酸化スズ、二酸化アンチモン、アンチモンがドープされた酸化スズ、二酸化チタン、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化インジウムとインジウムとがドープされた三酸化スズ、ポリアニリン、およびポリチオフェンからなる群から選択される導電性粒子を含み、前記導電性粒子が前記表面層のフルオロポリマー中に分散している、定着器部材。
【請求項6】
請求項1に記載の定着器部材であって、
前記表面層は、厚さが約1μm〜約400μmである、定着器部材。
【請求項7】
請求項1に記載の定着器部材であって、
前記フッ素化グラフェン粒子は、平らな方の寸法が約0.3μm〜約10μmである、定着器部材。
【請求項8】
定着器部材を製造する方法であって、
基材の上に配置された中間層を備える定着器部材を得ることと、
フルオロポリマー粒子、フッ素化グラフェン粒子、メタクリレート系フルオロ界面活性剤、および溶媒の組成物を前記中間層にコーティングし、コーティングされた層を作成することと、
前記コーティングされた層を約80℃〜約380℃の温度まで加熱し、このとき、溶媒が除去され、前記フルオロポリマー粒子が溶融するか、または硬化し、剥離層を形成する、方法。
【請求項9】
請求項8に記載の方法であって、
前記フルオロポリマー粒子が以下からなる群から選択される粒子を含む、方法:ポリテトラフルオロエチレン(PTFE);ペルフルオロアルコキシポリマー樹脂(PFA);テトラフルオロエチレン(TFE)とヘキサフルオロプロピレン(HFP)とのコポリマー;フッ化ビニリデン、ヘキサフルオロプロピレン、およびテトラフルオロエチレンのうちの2つのコポリマー;フッ化ビニリデンおよびヘキサフルオロプロピレンのターポリマー;ならびに、フッ化ビニリデン、ヘキサフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレン、およびキュアサイトモノマーのテトラポリマー。
【請求項10】
請求項8に記載の方法であって、
前記溶媒は、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、およびメチルイソブチルケトン(MIBK)からなる群から選択される、方法。
【請求項11】
請求項8に記載の方法であって、
前記フッ素化グラフェン粒子は、フッ素含有量が約50重量%〜約10重量%である、方法。
【請求項12】
定着器部材であって、
基材と、
前記基材の上に配置された中間層と、
前記中間層の上に配置された表面層と、
を備え、
前記表面層が、フッ素化グラフェン粒子が分散したフルオロポリマーと、メタクリレート系フルオロ界面活性剤とを含む、定着器部材。
【請求項13】
請求項12に記載の定着器部材であって、
前記フッ素化グラフェン粒子は、フッ素含有量が約50重量%〜約10重量%である、定着器部材。
【請求項14】
請求項12に記載の定着器部材であって、
前記フッ素化グラフェン粒子は、前記表面層の約1重量%〜約10重量%を構成する、定着器部材。
【請求項15】
請求項12に記載の定着器部材であって、
前記フルオロプラスチックは、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ペルフルオロアルコキシポリマー樹脂(PFA)、および、テトラフルオロエチレン(TFE)とヘキサフルオロプロピレン(HFP)とのコポリマーからなる群から選択される、定着器部材。
【請求項16】
請求項12に記載の定着器部材であって、
前記中間層は、シリコーン、シロキサン、フルオロシリコーン、ビニル架橋した熱硬化性ゴムまたはシラノールを室温で架橋した材料、およびフルオロエラストマーからなる群から選択される、定着器部材。
【請求項17】
請求項12に記載の定着器部材であって、前記フッ素化グラフェン粒子は、平らな方の寸法が約0.3μm〜約10μmである、定着器部材。
【請求項18】
請求項12に記載の定着器部材であって、
さらに、前記表面層と前記中間層との間に配置された接着層を備える、定着器部材。
【請求項19】
請求項12に記載の定着器部材であって、
さらに、前記中間層と前記基材層との間に配置された接着層を備える、定着器部材。
【請求項20】
請求項1に記載の定着器部材であって、
前記メタクリレート系フルオロ界面活性剤の分量は、前記フッ素化グラフェン粒子および前記フルオロポリマーの合計重量を基準として約0.1重量%〜約5重量%である、定着器部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般的に、デジタル、多重画像型などを含む電子写真式装置で有用な定着器部材のための表面層に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE、商標名Teflon(登録商標))またはペルフルオロアルキル樹脂(PFA)のようなフルオロプラスチックを、油を用いない定着のための定着器トップコート材料として使用する。フルオロプラスチックポリマーに分散したカーボンナノチューブ(CNT)から、改良された機械特性、電気特性、化学特性を有する定着器部材が得られてきた。フルオロプラスチックに分散したフルオロエラストマーシェル層を有するCNTを含有する定着器トップコートが、米国特許第7,991,340号に記載されている。しかし、コーティング配合物を調製している間に乾燥CNT粉末を取り扱うことに安全性に関する関心事がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
表面エネルギーが低く、耐久性があり、簡単に製造されるコーティングが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0004】
一実施形態によれば、基材層と、基材層の上に配置された表面層とを有する定着器部材が提供される。表面層は、フッ素化グラフェン粒子が分散したフルオロポリマーを含む。
【0005】
別の実施形態によれば、定着器部材を製造する方法が提供される。この方法は、基材の上に配置された中間層を備える定着器部材を得ることを含む。フルオロポリマー粒子、フッ素化グラフェン粒子、フッ素化界面活性剤、溶媒の組成物を中間層にコーティングし、コーティングされた層を作成する。コーティングされた層を約300℃〜約380℃の温度まで加熱し、このとき、溶媒が除去され、フルオロポリマー粒子が溶融するか、または硬化して剥離層を生成する。
【0006】
別の実施形態によれば、基材と、基材の上に配置された中間層と、弾性層の上に配置された表面層とを備える定着器部材が提供される。表面層は、フッ素化グラフェン粒子が分散したフルオロポリマーを含む。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、本教示にかかる円柱状基板を備える例示的な定着部材を示す。
【
図2】
図2は、本教示にかかるベルト基板を備える例示的な定着部材を示す。
【
図3A】
図3Aは、本発明の教示にかかる、
図1に示した定着器部材を用いた例示的な定着構造を示す。
【
図3B】
図3Bは、本発明の教示にかかる、
図1に示した定着器部材を用いた例示的な定着構造を示す。
【
図4A】
図4Aは、本発明の教示にかかる、
図2に示した定着器ベルトを用いた別の例示的な定着構造を示す。
【
図4B】
図4Bは、本発明の教示にかかる、
図2に示した定着器ベルトを用いた別の例示的な定着構造を示す。
【
図5】
図5は、転写固定装置を用いる例示的な定着器構造を示す。
【
図6】
図6は、フッ素化グラフェンを製造するために用いられる化学プロセスを示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
種々の実施形態では、固定部材は、例えば、1つ以上の機能性層が形成された基板を備えていてもよい。基板は、例えば、
図1および
図2に示されるように、非導電性または導電性の適切な材料を用い、特定の構造に依存して、例えば、円柱(例えば、円筒管)、円柱状のドラム、ベルト、または膜のような種々の形状で作成されてもよい。
【0009】
特定的には、
図1は、本教示にかかる円柱状基材110を備える例示的な固定部材または定着部材100を示し、
図2は、本教示にかかるベルト基材210を備える、別の例示的な固定部材または定着部材200を示す。
図1に示されている固定部材または定着部材100および
図2に示されている固定部材または定着部材200は、一般化された概略をあらわしており、他の層/基材を加えてもよく、存在する層/基材を除去するか、または代えてもよいことは、当業者には容易に明らかになるはずである。
【0010】
図1において、例示的な固定部材100は、1つ以上の機能性層120(中間層とも呼ばれる)と外側層130とが形成された円柱状基材110を備える定着器ローラーであってもよい。種々の実施形態では、円柱状基材110は、円筒管の形(例えば、内部に加熱ランプを備える中空構造を有するもの)または中身が詰まった円筒状のシャフトをしていてもよい。
図2において、例示的な固定部材200は、1つ以上の機能性層(例えば、220)と外側表面230とが形成されたベルト基材210を備えていてもよい。
【0011】
(基材層)
ベルト基材210および円柱状基材110は、当業者には知られているように、剛性および構造一体性を維持するために、例えば、ポリマー材料(例えば、ポリイミド、ポリアラミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリフタルアミド、ポリアミド−イミド、ポリケトン、ポリフェニレンスルフィド、フルオロポリイミドまたはフルオロポリウレタン)、金属材料(例えば、アルミニウムまたはステンレス鋼)から作られていてもよい。
【0012】
(中間層)
中間層または機能性層120および220の例としては、フルオロシリコーン、シリコーンゴム、例えば、室温加硫(RTV)シリコーンゴム、高温加硫(HTV)シリコーンゴム、低温加硫(LTV)シリコーンゴムが挙げられる。これらのゴムは既知であり、商業的に簡単に入手可能であり、例えば、SILASTIC(登録商標)735ブラックRTVおよびSILASTIC(登録商標)732 RTV(いずれもDow Corning製)、106 RTV Silicone Rubberおよび90 RTV Silicone Rubber(いずれもGeneral Electric製)、JCR6115CLEAR HTVおよびSE4705U HTVシリコーンゴム(Dow Corning Toray Silicones製)である。他の適切なシリコーン材料としては、シロキサン(例えば、ポリジメチルシロキサン)、フルオロシリコーン(例えば、Silicone Rubber 552(Sampson Coating(Richmond,Virginia)から入手可能))、液体シリコーンゴム、例えば、ビニル架橋した熱硬化性ゴム、またはシラノールを室温で架橋した材料などが挙げられる。別の特定の例は、Dow Corning Sylgard 182である。市販のLSRゴムとしては、Dow Corning製のDow Corning Q3−6395、Q3−6396、SILASTIC(登録商標)590 LSR、SILASTIC(登録商標)591 LSR、SILASTIC(登録商標)595 LSR、SILASTIC(登録商標)596 LSR、SILASTIC(登録商標)598 LSRが挙げられる。機能性層は、弾力性を付与し、必要な場合には、例えば、SiCまたはAl
2O
3のような無機粒子と混合してもよい。
【0013】
また、中間層または機能性層120および220の例としては、フルオロエラストマーも挙げられる。フルオロエラストマーは、(1)フッ化ビニリデン、ヘキサフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレンのうち、2つのコポリマー、例えば、VITON A(登録商標)として商業的に知られているもの、(2)フッ化ビニリデン、ヘキサフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレンのターポリマー、例えば、VITON B(登録商標)として商業的に知られているもの、(3)フッ化ビニリデン、ヘキサフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレン、キュアサイトモノマーのテトラポリマー、例えば、VITON GH(登録商標)およびVITON GF(登録商標)として商業的に知られているものなどの種類に由来する。これらのフルオロエラストマーは、VITON E(登録商標)、VITON E 60C(登録商標)、VITON E430(登録商標)、VITON 910(登録商標)、VITON ETP(登録商標)とともに、上に列挙したような種々の名称で商業的に知られている。VITON(登録商標)という名称は、E.I.DuPont de Nemours,Incの商標である。キュアサイトモノマーは、4−ブロモペルフルオロブテン−1、1,1−ジヒドロ−4−ブロモペルフルオロブテン−1、3−ブロモペルフルオロプロペン−1、1,1−ジヒドロ−3−ブロモペルフルオロプロペン−1、または任意の他の適切な既知のキュアサイトモノマー(例えば、DuPontから市販されているもの)であってもよい。他の市販されているフルオロポリマーとしては、FLUOREL 2170(登録商標)、FLUOREL 2174(登録商標)、FLUOREL 2176(登録商標)、FLUOREL 2177(登録商標)、FLUOREL LVS 76(登録商標)が挙げられ、FLUOREL(登録商標)は、3M Companyの登録商標である。さらなる市販材料としては、AFLAS(商標)というポリ(プロピレン−テトラフルオロエチレン)、FLUOREL II(登録商標)(LII900)というポリ(プロピレン−テトラフルオロエチレンビニリデンフルオリド)(これらも、3M Companyから入手可能)、FOR−60KIR(登録商標)、FOR−LHF(登録商標)、NM(登録商標)FOR−THF(登録商標)、FOR−TFS(登録商標)、TH(登録商標)、NH(登録商標)、P757(登録商標)TNS(登録商標)T439(登録商標)、PL958(登録商標)、BR9151(登録商標)、TN505(登録商標)として特定されるTecnoflon(Ausimontから入手可能)が挙げられる。
【0014】
フルオロエラストマーであるVITON GH(登録商標)およびVITON GF(登録商標)は、フッ化ビニリデンの量が比較的少ない。VITON GF(登録商標)およびVITON GH(登録商標)は、約35重量%のフッ化ビニリデンと、約34重量%のヘキサフルオロプロピレンと、約29重量%のテトラフルオロエチレンと、約2重量%のキュアサイトモノマーとを有している。
【0015】
ローラー構造の場合、中間層または機能性層の厚みは、約0.5mm〜約10mm、または約1mm〜約8mm、または約2mm〜約7mmであってもよい。ベルト構造の場合、機能性層は、約25μm〜約2mm、または約40μm〜約1.5mm、または約50μm〜約1mmであってもよい。
【0016】
(剥離層)
本明細書には、フッ素化グラフェン/フルオロポリマーコンポジットを含有する剥離層または表面層が開示されている。グラフェンは、部分的にフッ素化されており、フルオロポリマー/フッ素化グラフェン組成物へのグラフェンの分散性が向上している。フッ素化領域は、本来のグラフェンよりも電気抵抗がかなり高く、この材料の基本的な骨格炭素の網目構造は失われずに残る。したがって、フッ素化グラフェンとフルオロポリマーを含む定着器トップコートは、機械的に頑丈であり、定着器の仕様を満たすほど導電性であり、熱伝導性である。コンポジット定着器トップコートは、フルオロポリマー、フッ素化グラフェン、溶媒と、場合によりフッ素化界面活性剤(例えば、GF400)との分散物をフローコーティングし、次いで、上のPFA溶融温度まで加熱して組成物を硬化させ、表面層を生成させることによって調製することができる。
【0017】
添加剤およびさらなる導電性フィラーまたは非導電性フィラーが、基材層110および210、中間層120および220、剥離層130および230中に存在していてもよい。種々の実施形態では、他のフィラー材料または添加剤(例えば、無機粒子を含む)を、コーティング組成物に用いてもよく、その後に形成される表面層に用いてもよい。本明細書で用いられる導電性フィラーとしては、カーボンブラック、グラファイト、フラーレン、アセチレンブラック、フッ素化カーボンブラックなどのようなカーボンブラック、カーボンナノチューブ、金属酸化物およびドープされた金属酸化物、例えば、酸化スズ、二酸化アンチモン、アンチモンがドープされた酸化スズ、二酸化チタン、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化インジウム、インジウムがドープされた三酸化スズなど、およびこれらの混合物を挙げることができる。特定のポリマー、例えば、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリアセチレン、ポリ(p−フェニレンビニレン)、ポリ(p−フェニレンスルフィド)、ピロール、ポリインドール、ポリピレン、ポリカルバゾール、ポリアズレン、ポリアゼピン、ポリ(フッ素)、ポリナフタレン、有機スルホン酸塩、リン酸エステル、脂肪酸エステル、アンモニウム塩またはホスホニウム塩、およびこれらの混合物を、導電性フィラーとして用いてもよい。種々の実施形態では、当業者に知られている他の添加剤を入れ、開示されているコンポジット材料を作成することもできる。
【0018】
(接着剤層)
場合により、任意の既知の接着層および入手可能な適切な接着層が、外側層または外側表面、中間層、基材の間に配置されていてもよい。接着層は、約2nm〜約10,000nm、または約2nm〜約1,000nm、または約2nm〜約5000nmの厚みで基材または外側層にコーティングされてもよい。接着剤を、スプレーコーティングまたはワイピングを含む既知の任意の適切な技術によってコーティングしてもよい。
【0019】
図3A〜3Bおよび
図4A〜4Bは、本発明の教示にかかる融合プロセスのための例示的な定着構造を示す。
図3A〜3Bに示されている定着構造300A〜B、および
図4A〜4Bに示されている定着構造400A〜Bが、一般化された模式的な図を示しており、他の部材/層/基材/構造を追加してもよく、または、すでに存在している部材/層/基材/構造を取り除くか、または変えてもよいことが当業者には容易に明らかになるはずである。本明細書では電子写真式プリンターを記載しているが、開示されている装置および方法を、他の印刷技術に応用してもよい。例としては、オフセット印刷およびインクジェット機および固体転写固定機が挙げられる。
【0020】
図3A〜3Bは、本教示にかかる、
図1に示される定着器ローラーを用いた定着構造300A〜Bを示す。構造300A〜Bは、定着器ローラー100(すなわち、
図1の100)を備えていてもよく、このローラーは、加圧機構335(例えば、
図3Aの加圧ローラーまたは
図3Bの加圧ベルト)とともに、画像支持材料315のための定着器用爪を形成する。種々の実施形態では、加圧機構335を、加熱ランプ337と組み合わせて用い、トナー粒子を画像支持材料315の上で融合させるプロセスのために圧力と熱を両方加えてもよい。それに加え、構造300A〜Bは、
図3Aおよび
図3Bに示されているように、1つ以上の外部熱ロール350を、例えば、クリーニングウェブ360とともに備えていてもよい。
【0021】
図4A〜4Bは、本教示にかかる、
図2に示される定着器ベルトを用いた定着構造400A〜Bを示す。構造400A〜Bは、定着器ベルト200(すなわち、
図2の200)を備えていてもよく、このベルトは、加圧機構435(例えば、
図4Aの加圧ローラーまたは
図4Bの加圧ベルト)とともに、媒体基材415のための定着器用爪を形成する。種々の実施形態では、加圧機構435を、加熱ランプと組み合わせて用い、トナー粒子を媒体基材415の上で融合させるプロセスのために圧力と熱を両方加えてもよい。それに加え、構造400A〜Bは、定着器ベルト200を動かし、媒体基材415の上でトナー粒子を融合させ、画像を作成するような機械システム445を備えていてもよい。機械システム445は、1つ以上のロール445a〜cを備えていてもよく、必要な場合には、これらを加熱ローラーとして用いてもよい。
【0022】
図5は、ベルト、シート、膜などの形態であってもよい、転写固定部材7の一実施形態の図を示す。転写固定部材7は、上述の定着器ベルト200と似た構成である。現像した画像12が中間転写体1の上にあり、ローラー4および8を介して転写固定部材7と接触し、転写固定部材7に転写される。ローラー4および/またはローラー8は、これらに関連して熱を帯びていてもよいし、帯びていなくてもよい。転写固定部材7は、矢印13の方向に進む。複写基材9がローラー10と11との間を進むにつれて、現像した画像が複写基材9に転写され、融合する。ローラー10および/または11は、これらに関連して熱を帯びていてもよいし、帯びていなくてもよい。
【0023】
本明細書には、定着器部材のためのフッ素化グラフェン/フルオロポリマー表面コーティングが記載されている。グラフェンは部分的にフッ素化されており、フッ素は、グラフェン炭素に直接接続している。この部分的にフッ素化されたグラフェンは、コーティング組成物への分散品質が向上しており、改良されたトナー剥離性能を含む改良された性能を有する表面層が得られる。
【0024】
溶媒へのグラフェン粒子およびフルオロポリマー粒子の分散品質は、定着器トップコートのためのグラフェンの真の利点を達成するために重要である。分散性または凝集性が悪いと、不純物混入および熱伝導性の不足に起因して、トナー剥離性が不十分な表面層が得られてしまう場合がある。グラフェン粒子は、集まって貼り付き、剥離させることが困難な傾向がある。また、改良されたトナー剥離性能を与えるために、グラフェンの表面がもっと疎水性になるように改質することも望ましい。フッ素は、グラフェンの表面エネルギーを増大させ、剥離層の表面にある粒子は、トナーの剥離に悪影響を与えない。フッ素化グラフェンは、表面層のコーティングの約0.1重量%〜約15重量%、または約0.5重量%〜約10重量%、約1重量%〜約5重量%の量で存在する。
【0025】
フッ素化グラフェン粒子は、平らな粒子である。フッ素化グラフェン粒子の厚みは、約0.34nm〜約100nm、または約0.5nm〜約75nmまたは約0.7nm〜約50nmである。平らな方または長い方の寸法は、0.3μm〜約10μm、または約0.4μm〜約7μmまたは約0.5μm〜約5μmの範囲であってもよい。
【0026】
フッ素化グラフェンは、フルオロポリマー(すなわち、Bellex International Corporationから入手可能なCytop(登録商標))と、グラフェンの選択した領域をフッ素化するためのレーザービームとを用いて製造することができる(
図6)。フッ素化は、レーザーによって攻撃された領域のみで起こるため、この材料の基本的な骨格炭素の網目構造は失われずに残る。この記載した手順を用い、フッ素化グラフェンは、粒子の片側にフッ素を有する。フッ素化グラフェン粒子中のフッ素の重量%は、約60重量%〜約10重量%または約50重量%〜約15重量%または約40重量%〜約20重量%である。グラフェン粒子は、XGSciencesまたはStrem Chemicals Inc.から入手可能である。
【0027】
本明細書に記載する配合物で使用するのに適したフルオロポリマーとしては、フッ化ビニリデン、ヘキサフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレン、ペルフルオロアルキルビニルエーテル、およびこれらの混合物からなる群から選択されるモノマー繰り返し単位を含むフルオロプラスチックが挙げられる。フルオロプラスチックの例としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ペルフルオロアルコキシポリマー樹脂(PFA)、テトラフルオロエチレン(TFE)とヘキサフルオロプロピレン(HFP)とのコポリマー、およびこれらの混合物が挙げられる。フルオロプラスチックは、化学安定性および熱安定性を提供し、表面エネルギーが低い。フルオロプラスチックは、融点が約280℃〜約400℃または約290℃〜約390℃または約300℃〜約380℃である。
【0028】
本明細書で記載する配合物に使用するのに適したフルオロポリマーとしては、(1)フッ化ビニリデン、ヘキサフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレンのうち、2つのコポリマー、例えば、VITON A(登録商標)として商業的に知られているもの、(2)VITON B(登録商標)として商業的に知られている、フッ化ビニリデン、ヘキサフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレンのターポリマー、(3)VITON GH(登録商標)またはVITON GF(登録商標)として商業的に知られている、フッ化ビニリデン、ヘキサフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレン、キュアサイトモノマーのテトラポリマーといった種類に由来する記載した配合物で使用するのに適したフルオロエラストマーが挙げられる。これらのフルオロエラストマーは、VITON E(登録商標)、VITON E 60C(登録商標)、VITON E430(登録商標)、VITON 910(登録商標)、VITON ETP(登録商標)とともに、上に列挙した種々の名称で商業的に知られている。VITON(登録商標)という名称は、E.I.DuPont de Nemours,Incの商標である。キュアサイトモノマーは、4−ブロモペルフルオロブテン−1、1,1−ジヒドロ−4−ブロモペルフルオロブテン−1、3−ブロモペルフルオロプロペン−1、1,1−ジヒドロ−3−ブロモペルフルオロプロペン−1、または任意の他の適切な既知のキュアサイトモノマー(例えば、DuPontから市販されているもの)であってもよい。他の市販されているフルオロポリマーとしては、FLUOREL 2170(登録商標)、FLUOREL 2174(登録商標)、FLUOREL 2176(登録商標)、FLUOREL 2177(登録商標)、FLUOREL LVS 76(登録商標)が挙げられ、FLUOREL(登録商標)は、3M Companyの登録商標である。さらなる市販材料としては、AFLAS(商標)というポリ(プロピレン−テトラフルオロエチレン)、FLUOREL II(登録商標)(LII900)というポリ(プロピレン−テトラフルオロエチレンビニリデンフルオリド)(これらも、3M Companyから入手可能)、FOR−60KIR(登録商標)、FOR−LHF(登録商標)、NM(登録商標)FOR−THF(登録商標)、FOR−TFS(登録商標)、TH(登録商標)、NH(登録商標)、P757(登録商標)TNS(登録商標)T439(登録商標)、PL958(登録商標)、BR9151(登録商標)、TN505(登録商標)として特定されるTecnoflon(Ausimontから入手可能)が挙げられる。
【0029】
フルオロエラストマーであるVITON GH(登録商標)およびVITON GF(登録商標)は、フッ化ビニリデンの量が比較的少ない。VITON GF(登録商標)およびVITON GH(登録商標)は、約35重量%のフッ化ビニリデンと、約34重量%のヘキサフルオロプロピレンと、約29重量%のテトラフルオロエチレンと、約2重量%のキュアサイトモノマーとを有している。フルオロエラストマーは、約80℃〜約250℃の温度で硬化する。
【0030】
フッ素化グラフェンとフルオロポリマー粒子との間の濡れ性を向上させるために、フッ素系界面活性剤GF300または400(東亞合成株式会社から市販)を湿潤剤として加える。GF−300およびGF−400は、フッ素化グラフトコポリマーと呼ばれるメタクリレート系フルオロ界面活性剤である。他のフッ素系界面活性剤としては、東亞合成化学製のGF−150、日油株式会社製のMODIPER F−600、AGC旭硝子製のSURFLON S−381およびS−382、3M製のFC−430、FC−4430、FC−4432およびFC−129が挙げられる。粉末中の湿潤剤の量は、フッ素化グラフェンとフルオロポリマーの合計重量を基準として、約0.1重量%〜約5重量%、または約0.5重量%〜約3.0重量%、または約1.0重量%〜約2.0重量%である。
【0031】
剥離層のためのコーティング組成物は、フッ素化グラフェンとフルオロポリマー(例えば、Dyneon製のTHVP210)を適切な溶媒中で剪断混合することによって調製される。フッ素化グラフェンとフルオロポリマーを分散させるのに適した溶媒としては、水、アルコール、例えば、メタノール、エタノールまたはイソプロパノール、ケトン、例えば、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、または他の適切な溶媒が挙げられる。
【0032】
種々の実施形態では、フッ素化グラフェンおよびフルオロポリマー溶媒と、任意要素の界面活性剤とのコーティング組成物は、例えば、コーティング技術、押出成形技術および/または成型技術を用いてコーティングすることができる。本明細書で使用する場合、「コーティング技術」との用語は、ある材料または表面に対し、分散物を塗布し、形成させ、または堆積させる技術またはプロセスを指す。したがって、「コーティング」または「コーティング技術」との用語は、本教示で具体的に限定されず、浸漬コーティング、塗装、ブラシコーティング、ローラーコーティング、パッドによる塗布、スプレーコーティング、スピンコーティング、キャスト成型、またはフローコーティングを使用してもよい。
【0033】
コーティングした後、組成物を、フルオロポリマーを溶融または硬化させるのに十分な時間をかけて、ある温度まで加熱し、コーティングされた層を作成する。フルオロプラスチックは、融点が約280℃〜約400℃または約290℃〜約390℃または約300℃〜約380℃であり、約1分間〜約30分間、または約2分間〜約25分間、または約3分間〜約20分間加熱する。フルオロエラストマーを約80℃〜約250℃の温度で約1分間〜約30分間、または約2分間〜約25分間、または約3分間〜約20分間硬化させる。
【0034】
あらゆる部は、他の意味であると示されていない限り、固形分の重量を基準とする。
【0035】
PFA、フッ素化グラフェンと、フッ素化界面活性剤とを含む溶媒系分散物をフローコーティングし、次いで、PFAの融点より高い温度まで加熱することによってコンポジット定着器トップコートを調製し、以下にさらに詳細に記載する。
【0036】
(コーティング分散物の調製)
出力60%の超音波発生器によって2時間超音波処理することによって0.6グラムのフッ素化グラフェンを120グラムのシクロヘキサノン(CHN)に分散させることによって、0.5重量%のフッ素化グラフェンを含有する溶媒分散物を調製した。この分散物を3重量%になるまで濃縮した。
【0037】
0.36グラムのGF400溶液を含有するメチルエチルケトン(MEK)(8グラム)とCHN(3グラム)の混合溶媒中、DuPontから購入したPFA粉末(MP320)(9グラム)を超音波によって分散させた(60%の出力で30分間)。30分間超音波処理しつつ、上に記載したフッ素化グラフェン分散物(6.2グラム)をPFA/MEK分散物に加えた。ローラーミル中、3.8グラムのポリ(プロピレンカーボネート)(PPC、Empower QPAC(登録商標)40)バインダーのCHN溶液(20重量%)を上のコンポジット分散物に加え、均一な2重量%のフッ素化グラフェン/PFAコンポジット分散物を作成した。
【0038】
(定着器トップコートの調製)
上の2重量%のフッ素化グラフェン/PFAコンポジット分散物を、プライマー処理した(透明プライマーCL990)シリコーンロールに対し、フロー速度3ml/分、コーティング速度2mm/sでフローコーティングすることによって塗布した。このフローコーティングされたコンポジットロールをオーブンで1時間焼き、溶媒を除去した後、340℃で15分間焼き、連続的なコンポジット定着器トップコートを作成した。