特許第6096099号(P6096099)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6096099太陽光発電システム及び太陽電池モジュールの診断方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6096099
(24)【登録日】2017年2月24日
(45)【発行日】2017年3月15日
(54)【発明の名称】太陽光発電システム及び太陽電池モジュールの診断方法
(51)【国際特許分類】
   G05F 1/67 20060101AFI20170306BHJP
【FI】
   G05F1/67 A
【請求項の数】5
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2013-242777(P2013-242777)
(22)【出願日】2013年11月25日
(65)【公開番号】特開2015-102998(P2015-102998A)
(43)【公開日】2015年6月4日
【審査請求日】2016年2月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】399048917
【氏名又は名称】日立アプライアンス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】特許業務法人磯野国際特許商標事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100064414
【弁理士】
【氏名又は名称】磯野 道造
(74)【代理人】
【識別番号】100111545
【弁理士】
【氏名又は名称】多田 悦夫
(72)【発明者】
【氏名】大久保 敏一
(72)【発明者】
【氏名】叶田 玲彦
(72)【発明者】
【氏名】仁木 亨
(72)【発明者】
【氏名】加藤 奨一
【審査官】 北嶋 賢二
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/26593(WO,A1)
【文献】 特開2004−280220(JP,A)
【文献】 特開2012−028435(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05F 1/67
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽光が照射されることで発電する太陽電池モジュールと、
最大電力追従制御に基づいて、前記太陽電池モジュールの動作点を変更するパワーコンディショナと、
前記太陽電池モジュールの異常の有無を診断する診断手段と、を備え、
前記パワーコンディショナは、
前記太陽電池モジュールの動作点を変更し、変更前後における電力値の比較結果に基づいて次の動作点を決定する山登り法と、
前記太陽電池モジュールの動作点を所定の電圧範囲で移動させ、前記電圧範囲における動作点のうち最大電力を与える動作点を特定するスキャン法と、を含む前記最大電力追従制御を実行可能であり、
前記診断手段は、前記山登り法の実行時における前記太陽電池モジュールの電流値が所定閾値以上であると判定した場合、当該判定後における前記スキャン法の実行中に前記太陽電池モジュールを診断すること
を特徴とする太陽光発電システム。
【請求項2】
前記診断手段は、
前記太陽電池モジュールの電力値の低下が一時的なものである場合、当該太陽電池モジュールを異常なしと診断すること
を特徴とする請求項1に記載の太陽光発電システム。
【請求項3】
複数の前記太陽電池モジュールを備え、
前記診断手段は、
複数の前記太陽電池モジュールに関して略同一の時刻に検出された電力値の大小を比較し、相対的に電力値の小さい前記太陽電池モジュールについて電力値が低下していると判定すること
を特徴とする請求項2に記載の太陽光発電システム。
【請求項4】
前記診断手段は、
前記パワーコンディショナの動作に伴って前記太陽電池モジュールに流れるリップル電流の振幅値を前記所定閾値として設定すること
を特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の太陽光発電システム。
【請求項5】
パワーコンディショナによって、太陽電池モジュールに対して最大電力追従制御を実行する最大電力追従ステップと、
診断手段によって、前記太陽電池モジュールの異常の有無を診断する診断ステップと、を含み、
前記最大電力追従制御には、
前記太陽電池モジュールの動作点を変更し、変更前後における電力値の比較結果に基づいて次の動作点を決定する山登り法と、
前記太陽電池モジュールの動作点を所定の電圧範囲で移動させ、前記電圧範囲における動作点のうち最大電力を与える動作点を特定するスキャン法と、が含まれ、
前記山登り法の実行時における前記太陽電池モジュールの電流値が所定閾値以上であると判定した場合、前記診断手段は、当該判定後における前記スキャン法の実行中に前記太陽電池モジュールを診断すること
を特徴とする太陽電池モジュールの診断方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池モジュールの異常の有無を診断する太陽光発電システム等に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化の防止や省エネルギ化を図るため、自然エネルギである太陽光を利用した太陽光発電システムの普及が進んでいる。また、太陽光発電システムの発電電力(時間平均)を所望の大きさで維持するために、太陽電池モジュールの経年劣化や故障を適切に検出し、その検出結果に基づいて保守作業を行うことが求められている。
【0003】
例えば、特許文献1には、発電モジュールの発電電力データのうち少なくとも電流値を標準日照条件下の値に補正し、当該補正で得られた日照補正発電データに基づいて発電モジュールの異常の有無を診断する異常診断装置について記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−195495号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般に、太陽光発電システムは、太陽電池モジュールから供給される直流電力を交流電力に変換するパワーコンディショナを備えている。このパワーコンディショナが実行する電力変換処理の影響や測定精度の影響から、太陽電池モジュールの電流・電圧特性の測定結果にノイズが重畳する場合がある。
【0006】
特許文献1に記載の発明では、前記したノイズの大きさに関わらず一律に太陽電池モジュールの異常診断を行っている。そうすると、補正後の発電電力データに大きなノイズが重畳している場合、太陽電池モジュールの異常の有無を適切に診断できない可能性がある。
【0007】
そこで、本発明は、太陽電池モジュールの異常の有無を適切に診断する太陽光発電システム等を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、本発明に係る太陽光発電システムは、太陽光が照射されることで発電する太陽電池モジュールと、最大電力追従制御に基づいて太陽電池モジュールの動作点を変更するパワーコンディショナと、太陽電池モジュールの異常の有無を診断する診断手段と、を備え、診断手段は、山登り法の実行時における太陽電池モジュールの電流値が所定閾値以上であると判定した場合、当該判定後におけるスキャン法の実行中に太陽電池モジュールを診断することを特徴とする。
なお、詳細については、発明を実施するための形態において説明する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、太陽電池モジュールの異常の有無を適切に診断する太陽光発電システム等を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の第1実施形態に係る太陽光発電システムの構成図である。
図2】太陽電池モジュールが正常である場合及び異常である場合のそれぞれについて、太陽電池モジュールの電流と電圧との関係を示すI−V特性図である。
図3】センサモジュールの構成図である。
図4】パワーコンディショナが有する電力変換手段の構成図である。
図5】最大電力追従制御の一つである山登り法の説明図である。
図6】最大電力追従制御の一つであるスキャン法の説明図である。
図7】パワーコンディショナの制御手段が実行する処理を示すフローチャートである。
図8】パワーコンディショナの制御手段が山登り法を実行する処理を示すフローチャートである。
図9】パワーコンディショナの状態と、パワーコンディショナの入力側の電流・電圧の変化と、太陽電池モジュールの電流・電圧の変化と、センサモジュールの状態と、を示すタイムチャートである。
図10】パワーコンディショナの入力電流波形の一例を示す説明図である。
図11】パワーコンディショナの制御手段がスキャン法を実行する処理を示すフローチャートである。
図12】センサモジュールの診断手段が実行する処理を示すフローチャートである。
図13】補正前における太陽電池モジュールのI−V特性、及び、補正後における太陽電池モジュールのI−V特性を示す特性図であり、(a)は補正前の電流値が比較的小さい場合であり、(b)は補正前の電流値が比較的大きい場合である。
図14】本発明の第2実施形態に係る太陽光発電システムの構成図である。
図15】部分影によって太陽電池モジュールのI−V特性が変化した場合の特性図である。
図16】パワーコンディショナの総合診断手段が実行する処理を示すフローチャートである。
図17】各時刻における太陽電池モジュールの電力値と、割合Qmと、を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
≪第1実施形態≫
<太陽光発電システムの構成>
図1は、本実施形態に係る太陽光発電システムの構成図である。太陽光発電システムSは、太陽電池モジュール11〜16によって太陽光の光エネルギを直流電力に変換し、この直流電力をパワーコンディショナ30によって交流電力に変換するシステムである。また、太陽光発電システムSは、センサモジュール21〜26によって、太陽電池モジュール11〜16の異常を検出する機能も有している。
図1に示すように、太陽光発電システムSは、太陽電池モジュール11〜16と、センサモジュール21〜26と、パワーコンディショナ30と、を備えている。
【0012】
(太陽電池モジュール)
太陽電池モジュール11は、太陽光の光エネルギを電気エネルギに変換するものであり、複数のセル(太陽電池:図示せず)を有している。
図2は、太陽電池モジュールが正常である場合及び異常である場合のそれぞれについて、太陽電池モジュールの電流と電圧との関係を示すI−V特性図である。図2に示すように、正常である太陽電池モジュール11のI−V特性は、電流がゼロの開放電圧点VOMから、電流値を増加させるにつれて電圧が徐々に低下し、電流値I12を過ぎた以降で急激に電圧が低下するような曲線状を呈している。
【0013】
一方、異常のある太陽電池モジュール11のI−V特性においては、例えば、電圧値V1に対応する電流値I11は、正常である場合の電流値I12よりも小さくなっている。つまり、正常な場合と比較して太陽電池モジュール11から出力できる電力が低い状態である。異常の原因として、例えば、太陽電池モジュール11の経年劣化や故障がある。本実施形態では、後記するセンサモジュール21(図1参照)によって、太陽電池モジュール11の異常を検出するようにした。なお、他の太陽電池モジュール12〜16についても同様である。
【0014】
図1に示すように、太陽電池モジュール11,12,13は直列接続され、太陽電池モジュール14,15,16も直列接続されている。太陽電池モジュール11の正極と、太陽電池モジュール14の正極と、は点αで接続されている。太陽電池モジュール13の負極と、太陽電池モジュール16の負極と、は点βで接続されている。つまり、図1に示す例では、6個の太陽電池モジュール11〜16が3直列2並列で接続されている。なお、太陽電池モジュールの個数及び接続関係は、図1に示す例に限定されない。
以下では、太陽電池モジュール11〜16の全体を指す場合、「太陽電池モジュール10」と記すことがあるものとする。
【0015】
太陽電池モジュール11,14の正極と点αとの間には、ブレーカBが介在している。太陽電池モジュール13,16の負極と点βとの間には、ブレーカB及びダイオードD1が介在している。
ブレーカBは、太陽電池モジュール11〜16の設置時や保守点検時に、太陽電池モジュール11〜16とパワーコンディショナ30とを遮断するものである。ダイオードD1は、逆流防止のために設けられている。なお、ブレーカB及びダイオードD1は、接続箱(図示せず)に収容されている。
【0016】
(センサモジュール)
図1に示すセンサモジュール21(診断手段)は、太陽電池モジュール11に接続されており、太陽電池モジュール11の異常の有無を個別で診断する機能を有している。他のセンサモジュール22〜26についても同様であり、太陽電池モジュール12〜16と、センサモジュール22〜26と、は一対一で対応している。
以下では、主に、太陽電池モジュール11と、これに接続されるセンサモジュール21と、について説明する。
【0017】
図3は、センサモジュールの構成図である。センサモジュール21は、複数のバイパスダイオードD2と、電流検出抵抗R2と、測定手段21aと、記憶手段21bと、診断手段21cと、通信手段21dと、を有している。
【0018】
バイパスダイオードD2は、太陽電池モジュール11が有する複数のセル(図示せず)に接続されている。例えば、太陽電池モジュール11に部分的な影(以下、部分影と記す)が発生すると、部分影のあるセルは発電量が落ちて出力できる電流値が他のセルと比較して低下する。このような場合に、部分影のない他のセルから出力される電流が部分影のあるセルをバイパスできるように、パイパスダイオードD2が設置されている。
【0019】
電流検出抵抗R2は、太陽電池モジュール11に流れる電流を検出するための抵抗であり、配線hに設置されている。なお、電流検出抵抗R2に代えて電流センサ(図示せず)を用いてもよい。
測定手段21aは、電流検出抵抗R2に流れる電流(太陽電池モジュール11に流れる電流)と、配線g,h間の電圧(太陽電池モジュール11の電圧)と、を測定する測定器である。また、測定手段21aは、測定によって得られた電流値及び電圧値に基づき、太陽電池モジュール11の電力値を算出する機能も有している。測定手段21aは、前記した電流値、電圧値、及び電力値を診断手段21cに出力する。
【0020】
記憶手段21bは、例えば、半導体メモリであり、太陽電池モジュール11の診断を行うための情報が格納されている。前記した情報には、標準条件(例えば、温度T=25[℃]、日射量p=1.0[kW/m2])で取得した太陽電池モジュール11のI−V特性である初期状態データが含まれる。なお、初期状態データの用途については後記する。
【0021】
診断手段21cは、測定手段21aから入力される情報(電流値、電圧値、電力値)と、記憶手段21bから読み出した情報、とに基づいて、太陽電池モジュール11を診断し、その診断結果を通信手段21dに出力する。前記した診断には、太陽電池モジュール11の故障や経年劣化の検出が含まれる。
診断手段21cは、例えばマイコン(Microcomputer:図示せず)であり、ROM(Read Only Memory)に記憶されたプログラムを読み出してRAM(Random Access Memory)に展開し、CPU(Central Processing Unit)が各種処理を実行するようになっている。なお、診断手段21cが実行する処理の詳細については後記する。
【0022】
通信手段21dは、診断手段21cから入力される診断結果を、配線gを介してパワーコンディショナ30(図1参照)に伝達するものである。本実施形態では、通信手段21dによる通信を行う際に配線g(電力線)を利用する場合について示したが、他の形態(有線通信、無線通信)で通信を行ってもよい。
【0023】
(パワーコンディショナ)
図1に示すパワーコンディショナ30は、太陽電池モジュール10から供給される直流電力を交流電力に変換し、電力系統Kに出力する機能を有している。また、パワーコンディショナ30は、太陽電池モジュール10の発電効率を高めるために、太陽電池モジュール10の動作点を変更する機能も有している。ここで、「動作点」とは、太陽電池モジュール10の電流(又は電力)と、電圧と、によって特定されるI−V特性(又はP−V特性)上の点である。
パワーコンディショナ30は、電力変換手段31と、通信手段32と、表示手段33と、データ出力手段34と、を有している。
【0024】
電力変換手段31は、太陽電池モジュール10からの直流電力を交流電力に変換したり、太陽電池モジュール10の動作点を変更したりするものである。
図4は、パワーコンディショナが有する電力変換手段の構成図である。図4に示すように、電力変換手段31は、電流検出抵抗R3と、測定手段31aと、コンバータ31bと、インバータ31cと、制御手段31dと、を有している。
【0025】
電流検出抵抗R3は、パワーコンディショナ30の入力側に流れる電流を検出するための抵抗である。
測定手段31aは、電流検出抵抗R3を流れる電流と、配線i,j間の電圧と、を測定するものである。また、測定手段31aは、測定によって得られた電流値及び電圧値に基づき、太陽電池モジュール10から供給される電力値を算出する機能も有している。測定手段31aは、前記した電流値、電圧値、及び電力値を制御手段31dに出力する。なお、電流検出抵抗R3に代えて電流センサ(図表せず)を用いてもよい。
【0026】
コンバータ31bは、制御手段31dからの指令に従って、太陽電池モジュール10の電圧を制御する機能を有している。なお、太陽電池モジュール10の電圧が変化すると、太陽電池モジュール10の動作点が移動し、その電流値及び電力値も変化する(図5図6参照)。
【0027】
インバータ31cは、制御手段31dからの指令に従って、太陽電池モジュール10から供給される直流電力を、電力系統Kの電圧波形に同期した交流電力に変換し、変換後の交流電力を電力系統Kに出力する。
【0028】
制御手段31dは、例えばマイコンであり、ROMに記憶されたプログラムを読み出してRAMに展開し、CPUが各種処理を実行するようになっている。制御手段31dは、測定手段31aから入力される情報(電流値、電圧値、電力値)に基づいて、コンバータ31b及びインバータ31cを制御する。なお、制御手段31dが実行する処理の詳細については後記する。
【0029】
再び、図1に戻って説明を続ける。パワーコンディショナ30が有する通信手段32は、配線iに接続されており、それぞれのセンサモジュール21〜26から送信された診断結果を受信し、表示手段33及びデータ出力手段34に出力する。
表示手段33は、太陽電池モジュール11〜16の診断結果等を表示するディスプレイであり、例えば、パワーコンディショナ30を収容する筐体(図示せず)の孔に嵌め込まれている。これによって、ユーザは、太陽電池モジュール11〜16の異常の有無を外部から容易に視認できる。
【0030】
データ出力手段34は、外部から接続されるコネクタ(図示せず)を介して、太陽電池モジュール11〜16の診断データを取り出すためのものである。データ出力手段34は、パワーコンディショナ30を収容する筐体(図示せず)の蓋を開けた状態で、その端子(図示せず)が露出するように配置されている。サービスマンによる保守点検時、データ出力手段34に外部からコネクタが接続され、太陽電池モジュール11〜16の診断データが取り出される。
【0031】
<最大電力追従制御について>
パワーコンディショナ30は、最大電力追従制御(MPPT:Maximum Power Point Tracking)を実行する機能を有している。ここで、最大電力追従制御とは、太陽電池モジュール10の発電電力を最大化するように、太陽電池モジュール10の動作点を移動させる制御を意味している。前記したように、制御手段31d(図4参照)からの指令に従ってコンバータ31bが動作することで、太陽電池モジュール10の動作点が移動する。
【0032】
本実施形態では、日射量が変化した場合でも太陽電池モジュール10の発電電力を無駄なく取り出せるよう、後記する山登り法とスキャン法とを時間的に交互に実行するようにした。
【0033】
(山登り法)
図5は、最大電力追従制御の一つである山登り法の説明図である。図5の横軸は、配線i,j間(図1参照)の電圧である。縦軸は、パワーコンディショナ30の入力側の電流、及び太陽電池モジュール10から供給される電力(発電電力の総和)である。なお、図5に示す電圧、電流、及び電力の値は、パワーコンディショナ30の測定手段31a(図4参照)によって測定される。
【0034】
図5の破線で示すように、太陽電池モジュール10のI−V特性は、太陽電池モジュール11単体のI−V特性(図2参照)と同様の曲線状になっている。また、太陽電池モジュール10のP−V特性は、上に凸の曲線状になっている。
【0035】
最大電力追従制御の一つである山登り法とは、太陽電池モジュール10の動作点を変更し、変更前後における電力値の比較結果に基づいて次の動作点を決定する方法である。制御手段31dは、太陽電池モジュール10の動作点を移動させた後の電力値が、移動前の電力値を上回るようにコンバータ31bを駆動する。これによって、太陽電池モジュール10の動作点を、図5に示す最大電力点G1の付近に留めることができる。
【0036】
前記した最大電力点G1とは、太陽電池モジュール10の発電電力の総和が最大となる動作点を意味している。図5では、P−V特性の極大値を与える動作点(以下、極大点という)が一つであり、この極大点が最大電力点G1に一致している。なお、太陽電池モジュール10の日射量に偏りが生じ、太陽電池モジュール10のP−V特性において複数の極大点が存在する場合もある(図6参照)。
【0037】
(スキャン法)
図6は、最大電力追従制御の一つであるスキャン法の説明図である。図6に示す例では、P−V特性の極大値である点G2,H2のうち、点G2が最大電力点に一致している。なお、時間の経過とともに日照や天候が変化すると、点G2,H2における電力値の大小が入れ替わったり、極大点の位置が変化したりする場合がある。
このような状況下において仮に山登り法のみを継続して行った場合、太陽電池モジュール10の動作点が極大点H2付近に留まる可能性もある。太陽電池モジュール10から最大限の発電電力を取り出すために、その動作点を最大電力点G2に移動させることが望ましい。そこで、本実施形態において制御手段31dは、最大電力追従制御の一つであるスキャン法を実行する。
【0038】
最大電力追従制御の一つであるスキャン法とは、太陽電池モジュール10の動作点を所定の電圧範囲で移動させ、この電圧範囲における動作点のうち最大電力を与える動作点(つまり、最大電力点G2:図6参照)を特定する方法である。
本実施形態では、制御手段31dがコンバータ31bを駆動することで、配線i,j間の電圧を開放電圧V0から最低動作電圧VLまで変化させるようにした。なお、最低動作電圧VLとは、電力変換手段31を動作可能な状態で維持するための必要最低限の電圧値である。
【0039】
スキャン法が実行された場合、太陽電池モジュール10のP−V特性の動作点は、図6の実線矢印で示すように変化する(I−V特性の動作点も変化する)。図6に示すように、太陽電池モジュール10のP−V特性において複数の極大点(点G2,H2)が存在する場合でも、スキャン法によって動作点を移動させる過程で最大電力点G2を特定できる。
【0040】
パワーコンディショナ30は、前記した山登り法を行い、適時にスキャン法に切り替えるという動作を繰り返す。これによって、日照や天候によって太陽電池モジュール10の特性が変化した場合でも、最大電力点G2(図6参照)の近くで太陽電池モジュール10を発電させることができる。
【0041】
<パワーコンディショナの動作>
図7は、パワーコンディショナの制御手段が実行する処理を示すフローチャートである。以下では、パワーコンディショナ30による最大電力追従制御について説明するが、パワーコンディショナ30は、最大電力追従制御を行いつつ、直流電力を交流電力に変換する処理も行っている。
図7のステップS101において制御手段31dは、山登り法を実行する(最大電力追従ステップ)。
【0042】
図8は、パワーコンディショナの制御手段が山登り法を実行する処理を示すフローチャートである。なお、「START」の時点において、太陽電池モジュール10の電圧V(配線i,j間の電圧)をV1とし、電力PをP1とする。
ステップS1011において制御手段31dは、コンバータ31b(図4参照)を制御し、太陽電池モジュール10の電圧Vを電圧(V1+ΔV)に変更する。なお、電圧の変化量ΔVは、予め設定されている。
ステップS1012において制御手段31dは、測定手段31a(図4参照)によって検出された電力Pの値を読み込む。
【0043】
ステップS1013において制御手段31dは、電圧変更後の電力Pが、電圧変更前の電力P1よりも大きいか否かを判定する。電圧変更後の電力Pが、電圧変更前の電力P1よりも大きい場合(S1013→Yes)、制御手段31dの処理はステップS1015に進む。この場合、太陽電池モジュール10の動作点は、P−V特性上の極大点(例えば、図5の最大電力点G1)に近づいている。したがって、電圧の変化量ΔVの符号を反転する(動作点の移動する向きを反対にする)必要はない。
【0044】
電圧変更後の電力Pが、電圧変更前の電力P1以下である場合(S1013→No)、制御手段31dの処理はステップS1014に進む。この場合、太陽電池モジュール10の動作点は、P−V特性上の極大点から遠ざかっている。
ステップS1014において制御手段31dは、電圧の変化量ΔVの符号を反転させ(動作点の移動する向きを反対とし)、ステップS1015の処理に進む。
ステップS1015において制御手段31dは、変更後の電圧V、電力Pを新たな電圧V1、電力P1とし、再び「START」から山登り法を実行する(RETURN)。
【0045】
図9は、パワーコンディショナの状態と、パワーコンディショナの入力側の電流・電圧の変化と、太陽電池モジュールの電流・電圧の変化と、センサモジュールの状態と、を示すタイムチャートである。図9の最上段(「パワーコンディショナの状態」)に示すように、制御手段31dは山登り法とスキャン法とを切り替え、時間的に交互に実行する。例えば、時刻t1〜t2では山登り法が実行され、太陽電池モジュール10の電圧は、最大電力点(極大点)を与える電圧V1P付近に留まる。
なお、パワーコンディショナ30の電力変換処理に伴う半導体素子のスイッチング動作により、パワーコンディショナ30の入力側の電流にはリップルが含まれる。図10は、パワーコンディショナの入力電流波形の一例を示す説明図である。図10に示すように、リップルの波形は、パワーコンディショナ30に内蔵するフィルタ(図表せず)の影響により、正弦波状や三角波状になる。
【0046】
再び、図7に戻って説明を続ける。ステップS102において制御手段31dは、山登り法の実行開始から所定時間Δt1が経過したか否かを判定する。所定時間Δt1は、時間の経過に伴って日射量が変化することを考慮し、適宜設定される。山登り法の実行開始から所定時間Δt1が経過した場合(S102→Yes)、制御手段31dの処理はステップS103に進む。一方、山登り法の実行開始から所定時間Δt1が経過していない場合(S102→No)、制御手段31dの処理はステップS101に戻る。
【0047】
ステップS103において制御手段31dは、スキャン法を実行する(最大電力追従ステップ)。図11は、パワーコンディショナの制御手段がスキャン法を実行する処理を示すフローチャートである。
ステップS1031において制御手段31dは、n=1とする。値nは、後記するステップS1036でインクリメントされる自然数である。
ステップS1032において制御手段31dは、コンバータ31b(図4参照)を制御し、太陽電池モジュール10の電圧(配線i,j間の電圧)を開放電圧V0P図6参照)とする。
【0048】
ステップS1033において制御手段31dは、測定手段31aによって検出された電力Pを読み込む。
ステップS1034において制御手段31dは、コンバータ31bを制御し、太陽電池モジュール10の電圧Vを電圧(V0−nΔV)に変更する。なお、電圧の変化量ΔV(<0)は、予め設定されている。
【0049】
ステップS1035において制御手段31dは、値nが値Nに等しいか否かを判定する。前記した値Nは、図6に示す最低動作電圧VLPに対応している(つまり、V0−NΔV=VLP)。値nが値Nに等しい場合(S1035→Yes)、制御手段31dはスキャン法を終了し(END)、図7のステップS104に進む。一方、値nが値Nよりも小さい場合(S1035→No)、制御手段31dの処理はステップS1036に進む。ステップS1036において制御手段31dは、値nをインクリメントした後、ステップS1033に進む。
【0050】
図9に示すように、例えば、スキャン法が開始された時刻t2の直後、パワーコンディショナ30の入力側の電圧が、開放電圧V0Pまで急上昇する。そして、時刻t2〜t3の間においてパワーコンディショナ30の入力側の電圧は、開放電圧V0Pから最低動作電圧VLPまで滑らかに低下する(S1034〜S1036:図11参照)。時刻t2〜t3の間における電力Pを検出することで(S1033)、太陽電池モジュール10の最大電力点G2(図6参照)を見つけ出すことができる。
【0051】
再び、図7に戻って説明を続ける。スキャン法を実行した後(S103)、ステップS104において制御手段31dはコンバータ31bを制御し、太陽電池モジュール10の動作点を最大電力点G2(図6参照)に変更する。この最大電力点G2は、スキャン法の実行中に逐次検出された電力Pの最大値に対応している。制御手段31dは、少なくとも日照中において、山登り法とスキャン法とを交互に実行する。
【0052】
図9に示す例では、時刻t2〜t3の間で行ったスキャン法に基づき、パワーコンディショナ30の入力側の電圧を、太陽電池モジュール10の最大電力点G2(図6参照)を与える電圧V2pに変更している。なお、時刻t3から再び山登り法が実行されるため、太陽電池モジュール10の動作点は最大電力点G2の付近に留まる。
【0053】
<センサモジュールの動作>
図12は、センサモジュールの診断手段が実行する処理を示すフローチャートである。なお、センサモジュール21の測定手段21a(図3参照)は、太陽電池モジュール11の電圧、電流、及び電力を常時測定し、測定結果を診断手段21cに出力する。
【0054】
ステップS201において診断手段21cは、自身に接続されている太陽電池モジュール11の電圧の変化率ΔV/Δtが、閾値X1以上であるか否かを判定する。ここで、閾値X1は、山登り法からスキャン法への切替えを検知できるように予め設定されている。例えば、図9に示す時刻t2の直後において、太陽電池モジュール11の電圧が急上昇したことを検知できるように、閾値X1が設定される。
【0055】
電圧の変化率ΔV/Δtが閾値X1以上である場合(S201→Yes)、診断手段21cの処理はステップS202に進む。つまり、診断手段21cは、山登り法からスキャン法への切替えを検知したときに(例えば、図9の時刻t2の直後)、太陽電池モジュール11の診断を開始する。一方、電圧の変化率ΔV/Δtが閾値X1未満である(S201→No)、診断手段21cはステップS201の処理を繰り返す。
【0056】
ステップS202において診断手段21cは、山登り法の実行時における太陽電池モジュール11の電流平均値Iaveを算出する。つまり、診断手段21cは、ステップS201における検知の直前に実行されていた山登り法(例えば、図9の時刻t1〜t2)における電流平均値Iaveを算出する。
【0057】
ステップS203において診断手段21cは、ステップS202で算出した電流平均値Iaveが閾値I1M以上であるか否かを判定する。ここで、閾値I1Mは、太陽電池モジュール11の異常の有無を適切に検出できるか否かの判定基準となる値であり、予め設定されている。
【0058】
ここで、閾値I1Mに関連する補正処理(S204)について簡単に説明する。図13(a)は、補正前・補正後における太陽電池モジュールのI−V特性を示す特性図であり、補正前の太陽電池モジュールの電流値が比較的小さい場合を示している。
図13(a)に示す破線は、太陽電池モジュール11の初期状態において、標準条件(例えば、温度T=25[℃]、日射量p=1.0[kW/m2])で取得されたデータである。太陽電池モジュール11のI−V特性は、日射量、温度、使用年数等によって変化する。したがって、屋外に設置される太陽電池モジュールを適切に診断するために、本実施形態では実際のI−V特性を初期状態のI−V特性に合わせて補正するようにした。
【0059】
図13(a)に示す例では、補正前における太陽電池モジュール11のI−V特性にノイズが含まれている。このノイズは、パワーコンディショナ30の電力変換処理に伴うリップルや、測定手段31a(図4参照)の検出精度等の影響によるものである。
太陽電池モジュール11の実際のI−V特性を初期状態に合わせて補正する(電流値を引き上げる)と、この補正に伴ってノイズの振幅ΔI1も大きくなる。なお、フィルタ(図示せず)を用いたとしても、ノイズの低減には限界がある。
【0060】
例えば、初期状態の短絡電流をI0sとし、補正前の短絡電流をI1sとすると、補正後におけるノイズの振幅ΔI1は、補正前の約(I0s/I1s)倍になる。このようにノイズが非常に大きい状態では、初期状態のデータとの比較が正しく行われず、太陽電池モジュール11を適切に診断できない可能性がある。
【0061】
図13(b)は、補正前の太陽電池モジュールの電流値が比較的大きい場合を示している。図13(b)のほうが図13(a)の場合よりも補正前の電流値は大きいが(I2s>I1s)、補正前のノイズの振幅は図13(a)の場合とほとんど変わらない。これは、補正前におけるノイズの振幅は、電力変換手段31の構成や測定手段21aの精度によって決まるものであり、太陽電池モジュール11の電流の大きさには依存しないからである。
【0062】
太陽電池モジュール11の実際のI−V特性を初期状態に合わせて補正すると、補正後のノイズの振幅ΔI2は、補正前の約(I0s/I2s)倍になる。電流値I2sが比較的大きいため、補正後のノイズは図13(a)と比較して小さい。このようにノイズが小さい場合、初期状態のデータとの比較に基づいて、太陽電池モジュール11の診断を適切に行うことができる。
【0063】
なお、前記した閾値I1M(S203:図12参照)として、パワーコンディショナ30の入力電流のリップルによるノイズの影響を低減するため、パワーコンディショナ30の動作に伴い太陽電池モジュール11に流れるリップル電流(図10参照)の振幅値を用いることが好ましい。電流平均値Iaveがリップル電流の振幅値以上である場合、補正を行ったとしてもノイズの影響は比較的小さく、太陽電池モジュール11を適切に診断できるという知見が得られたからである。リップル電流の振幅値は、事前の実験等に基づいて予め設定され、閾値I1として記憶手段21b(図3参照)に格納されている。
【0064】
再び、図12に戻って説明を続ける。ステップS203において山登り法の実行時における電流平均値Iaveが閾値I1以上である場合(S203→Yes)、診断手段21cの処理はステップS204に進む。
ステップS204において診断手段21cは、補正処理を実行する。つまり、診断手段21cは、太陽電池モジュール11の実際のI−V特性(スキャン法の実行中に得られるI−V特性:図9参照)を、標準条件に合わせて補正する。当該補正処理は、太陽電池モジュール11の温度、日射量、短絡電流、開放電圧等に基づいて行われる。なお、ステップS204の補正処理については、詳細な説明を省略する。
【0065】
ステップS205において診断手段21cは、補正後のI−V特性に関して、初期状態の電流値IAから補正後の電流値IBを減算した値が閾値ΔI以上となる電圧値が存在するか否かを判定する(診断ステップ)。なお、前記した電流値IA,IBを与える電圧値は同一である。また、閾値ΔIは、太陽電池モジュール11に異常があるか否かの判定基準となる閾値であり、予め設定されている。
診断手段21cは、一つ又は複数個の電圧値に関して差分(IA−IB)を算出し、それぞれの差分(IA−IB)と閾値ΔIとを比較する。つまり、診断手段21cは、経年劣化等によって太陽電池モジュール11の電流値が大きく落ち込んでいるか否かを判定する(図2参照)。
【0066】
差分(IA−IB)が閾値ΔI以上となる電圧値が存在する場合(S205→Yes)、診断手段21cの処理はステップS206に進む。ステップS206において診断手段21cは、太陽電池モジュール11について異常ありと判定する。
一方、差分(IA−IB)が閾値ΔI以上となる電圧値が存在しない場合(S205→No)、診断手段21cの処理はステップS207に進む。ステップS207において診断手段21cは、太陽電池モジュール11について異常なしと判定する。
【0067】
ステップS208において診断手段21cは、ステップS206又はS207で得た診断結果を、通信手段21d(図3参照)によってパワーコンディショナ30に送信する。パワーコンディショナ30の表示手段33(図1参照)は、通信手段32を介して受信した診断結果を表示する。これによってユーザは、太陽電池モジュール11の異常の有無を容易に把握できる。なお、ステップS201〜S208の処理は、太陽電池モジュール11〜16と一対一で対応するセンサモジュール21〜26それぞれで実行される。
また、ステップS201〜S208の処理中も、パワーコンディショナ30はスキャン法を実行している(図9参照)。
【0068】
図9に示す例では、時刻t1〜t2においてパワーコンディショナ30が山登り法を実行している間(S201→No:図12参照)、センサモジュール21は診断を行わずに待機し、電圧・電流・電力を測定し続けている。時刻t1の直後にパワーコンディショナ30がスキャン法に切り替えて電圧が急上昇すると(S201→Yes)、センサモジュール21は診断の可否を判定する。
【0069】
時刻t1〜t2(山登り法の実行時)において、太陽電池モジュール11の電流平均値Iaveは閾値I1M以上になっている(S203→Yes:図12参照)。したがって、センサモジュール21は、時刻t2の直後〜t3(スキャン法の実行中)において、太陽電池モジュール10の異常の有無を診断する(S205)。
一方、時刻t11の直前(山登り法の実行時)において、太陽電池モジュール11の電流平均値Iaveは閾値I1M未満になっている(S203→No)。これは、日射量の低下や、太陽電池モジュール11に部分的な影ができることに起因している。この場合、ノイズの影響が大きくなって太陽電池モジュール11を適切に診断できない可能性が高い。したがって、センサモジュール21は太陽電池モジュール11の診断を行わずに待機する。
【0070】
<効果>
本実施形態では、山登り法の実行時における電流平均値Iaveが閾値I1M以上である場合(S203→Yes)、センサモジュール21は太陽電池モジュール11を診断する(S205)。このように、太陽電池モジュール11の電流値が比較的大きいときに診断処理を行うことで、パワーコンディショナ30の入力電流のリップルや太陽電池モジュール11のI−V特性を取得する測定手段21aの検出精度に起因したノイズの影響を緩和できる。したがって、センサモジュール21によって太陽電池モジュール11を適切に診断し、太陽電池モジュール11の異常を早期に発見できる(他の太陽電池モジュール12〜16についても同様)。
【0071】
また、センサモジュール21は、パワーコンディショナ30によってスキャン法が実行されている間に診断処理を行う。つまり、パワーコンディショナ30による最大電力追従制御を停止させることなく、I−V特性に基づいて太陽電池モジュール11を診断する。したがって、診断を行うたびにパワーコンディショナ30を停止させる場合と比較して、太陽光発電システムSの発電効率を大幅に高めることができる。
【0072】
≪第2実施形態≫
第2実施形態は、パワーコンディショナ30A(図14参照)が記憶手段35及び総合診断手段36を備える点が第1実施形態と異なるが、その他については第1実施形態と同様である。したがって、第1実施形態と異なる部分について説明し、重複する部分については説明を省略する。
図14は、本実施形態に係る太陽光発電システムの構成図である。パワーコンディショナ30Aは、第1実施形態で説明した電力変換手段31、通信手段32、表示手段33、及びデータ出力手段34に加えて、記憶手段35と、総合診断手段36と、を有している。
【0073】
記憶手段35は、例えば、半導体メモリであり、総合診断手段36に接続されている。記憶手段35には、太陽電池モジュール11〜16それぞれの発電電力及び診断結果が格納される。
総合診断手段36(診断手段)は、センサモジュール21〜26での個別的な診断結果を、表示手段33等に出力する診断データとして採用するか否かを決定する。なお、総合診断手段36によって実行される処理の詳細については後記する。
総合診断手段36は、通信手段21d(図3参照)及び通信手段32を介して取得した太陽電池モジュール11の発電電力及び診断結果を記憶手段35に格納する(他の太陽電池モジュール12〜16について同様)。また、総合診断手段36は、自身が採用した診断結果を、表示手段33及びデータ出力手段34に出力する。
【0074】
図15は、部分影によって太陽電池モジュールのI−V特性が変化した場合の特性図である。特性図の横軸は太陽電池モジュール11(単体)の電圧であり、縦軸は太陽電池モジュール11の電流である。
季節や時間帯によって、太陽電池モジュール11の一部に影(いわゆる部分影)ができることがある。部分影ができると、一部のセル(図示せず)の発電電力が減少してI−V特性が階段状になる(図15参照)。なお、センサモジュール21によって「異常あり」と判定された場合でも、それが部分影に起因するのか、太陽電池モジュール11の性能劣化に起因するのかを個別的に判定することは困難である。
本実施形態では、センサモジュール21〜26による個別的な診断結果をパワーコンディショナ30Aで集約し、診断結果として採用するか否かを総合診断手段36によって判定するようにした。
【0075】
センサモジュール21の診断手段21cは、パワーコンディショナ30Aがスキャン法を実行している間の電力値を測定し、太陽電池モジュール11の最大電力点G2(図6参照)に対応する電力値を取得する。そして、診断手段21cは、通信手段21d(図3参照)によって、最大電力点G2の電力値と、太陽電池モジュール11の診断結果と、をパワーコンディショナ30Aに送信する。
【0076】
図16は、パワーコンディショナの総合診断手段が実行する処理を示すフローチャートである。なお、総合診断手段36(図14参照)は、それぞれのセンサモジュール21〜26から受信した情報を記憶手段35に格納しているものとする。
ステップS301において総合診断手段36は、所定時刻になったか否かを判定する。所定時刻は、太陽電池モジュール11〜16の診断結果を更新する時刻であり、予め設定されている。総合診断手段36は、例えば、数日に一回、太陽電池モジュール11〜16の診断結果を更新する。
【0077】
ステップS302において総合診断手段36は、m=1とする。値mは、後記するステップS308でインクリメントされる自然数である。
ステップS303において総合診断手段36は、太陽電池モジュール1m(m=1の場合、太陽電池モジュール11)に対応する割合Qmを算出する。ここで、割合Qmとは、太陽電池モジュール1mに関して所定時間ごとに得られた複数の発電電力のうち、他の太陽電池モジュールとの関係で相対的に発電電力が低いと認められるものの割合である。
【0078】
図17は、各時刻における太陽電池モジュールの電力値と、割合Qmと、を示す説明図である。なお、図17に示す電力値は、センサモジュール21〜26で測定されたものであり、記憶手段35(図14参照)に格納されている。
総合診断手段36は、他と比べて電力値(発電電力)が小さい太陽電池モジュールを、時刻t1,t2,…に関してそれぞれ特定する。時刻t1では、太陽電池モジュール14の電力値(40W)が他と比べて相対的に小さい。また、時刻t2では、太陽電池モジュール12,14の電力値(40W,30W)が他と比べて相対的に小さい。
【0079】
総合診断手段36は、例えば、太陽電池モジュール11〜16に関して時刻t1における発電電力の偏差値を算出し、この偏差値が所定値以下である太陽電池モジュール14を「発電電力が低い」ものとして特定する(図17の太枠を参照)。時刻t2,t3,…についても、総合診断手段36は同様の処理を行う。
【0080】
このように、総合診断手段36は、太陽電池モジュール11〜16に関して略同一の時刻に検出された電力値の大小を比較し、相対的に電力値の小さい太陽電池モジュールについて「電力値が低下している」と判定する。これによって、判定基準となる閾値を季節、天候、時間帯に応じて変更する必要がなくなる。
【0081】
そして、総合診断手段36は、太陽電池モジュール1m(S303)について、割合Qmを算出する。図17に示す例では、太陽電池モジュール12に関して、太枠線で示す箇所(40W)が全体(例えば、数日)に占める割合Qmは0.03である。この場合、太枠線で示す「40W」は、部分影による一時的なものである。
一方、太陽電池モジュール14に関して、太枠線で示す箇所が全体に占める割合Qmは0.9である。つまり、数日のうちほとんどの時刻において、太陽電池モジュール14の発電電力は他よりも著しく小さいため、太陽電池モジュール14は故障又は劣化している可能性が高い。
【0082】
再び、図16に戻って説明を続ける。ステップS304において総合診断手段36は、太陽電池モジュール1m(S303)に対応する割合Qmが、閾値Q1以下であるか否かを判定する。閾値Q1(例えば、0.8)は、相対的に発電電力の低い太陽電池モジュールを「異常あり」とするか否かの判定基準であり、予め設定されている。
【0083】
割合Qmが閾値Q1以下である場合(S304→Yes)、総合診断手段36は、太陽電池モジュール1mについて「異常なし」と判定する。例えば、図17に示す太陽電池モジュール12の割合Qは0.03であり、閾値Q1(=0.8)よりも小さい。したがって、総合診断手段36は、太陽電池モジュール12について「異常なし」と判定する。これによって、部分影等の影響で発電電力が一時的に低下した太陽電池モジュール12を「異常なし」と判定できる。
【0084】
割合Qmが閾値Q1よりも大きい場合(S304→No)、総合診断手段36は、太陽電池モジュール1mについて「異常あり」と判定する。例えば、図17に示す太陽電池モジュール14の割合Qは0.9であり、閾値Q1(=0.8)よりも大きい。したがって、総合診断手段36は、太陽電池モジュール14について「異常あり」と判定する。これによって、発電電力が相対的に低い状態が続いている太陽電池モジュール14を「異常あり」と判定できる。
【0085】
ステップS307において総合診断手段36は、値mが値Mに等しいか否かを判定する。値Mは、太陽電池モジュール11〜16の個数(本実施形態では、M=6)である。値mが値Mに等しい場合(S307→Yes)、総合診断手段36は処理を終了する(END)。なお、診断結果は、表示手段33及びデータ出力手段34(図14参照)に出力される。
値mが値M未満である場合(S307→No)、総合診断手段36の処理はステップS308に進む。ステップS308において総合診断手段36は、値mをインクリメントした後、ステップS303の処理に進む。
【0086】
<効果>
本実施形態に係る太陽光発電システムSでは、一時的に発電電力が小さい太陽電池モジュール12(図17参照)に関して、総合診断手段36は「異常なし」と判定する(S304→Yes、S305)。つまり、センサモジュール22の個別的な診断では太陽電池モジュール12が「異常あり」とされた場合でも、部分影等による発電電力の一時的な低下であれば総合診断手段36は「異常なし」と判定する。したがって、太陽電池モジュール11〜16の診断精度を高めることができる。
【0087】
また、総合診断手段36は、同一時刻(例えば、時刻t1:図17参照)における太陽電池モジュール11〜16の電力値の大小を比較する。これにより、ある閾値と太陽電池モジュール11〜16の電力値との大小を比較する場合と比較して、総合診断手段36を簡単かつ低コストで構成できる。前記した閾値を設定しようとすると、季節や時間帯によって閾値を変更したり、日付を特定するカレンダ機能を備える必要が生じたりするからである。
このように、本実施形態によれば、太陽電池モジュール11〜16の発電電力の大小を比較することで、診断処理を正確かつ容易に行うことができる。
【0088】
≪変形例≫
以上、本発明に係る太陽光発電システムSについて各実施形態により説明したが、本発明はこれらの記載に限定されるものではなく、種々の変更を行うことができる。
例えば、前記した各実施形態では、パワーコンディショナ30が最大電力追従制御として山登り法及びスキャン法の二つを実行する場合について説明したが、これに限らない。すなわち、パワーコンディショナ30は、山登り法及びスキャン法に加えて、他の種類の最大電力追従制御を実行するようにしてもよい。
【0089】
前記した最大電力追従制御として、最大電力点を与える電圧値VMPPを、太陽電池モジュール10の開放電圧V0Pに基づいて決定する方法がある。例えば、開放電圧V0Pに所定の比率k1を乗算することで、電圧値VMPPを設定する。
また、最大電力点を与える電圧値VMPPを、太陽電池モジュール10の短絡電流ISPに基づいて決定してもよい。例えば、短絡電流ISPに所定の比率k2を乗算することで、電圧値VMPPを設定する。
前記した比率k1,k2は、事前の実験等に基づいて経験的に定められる。
【0090】
このように他の種類の最大電力追従制御を追加する場合でも、山登り法で得られた電流平均値Iaveが閾値I1以上である場合、センサモジュール21は、その後のスキャン法の実行中に太陽電池モジュール11の異常の有無を診断する。これによって、太陽電池モジュール11の異常の有無を適切に診断できる。
なお、山登り法とスキャン法との間に、他の種類の最大電力追従制御を行うようにしてもよい。
【0091】
また、前記した各実施形態では、スキャン法を実行する際にパワーコンディショナ30は、太陽電池モジュール10の電圧値を開放電圧V0Pから最低動作電圧VLPまで変更する場合について説明したが(S1032,S1035:図11参照)、これに限らない。すなわち、VLP≦VL1≦VH1≦VOPを満たす閾値VL1,VH1を予め設定し、電圧範囲VL1≦V≦VH1において太陽電池モジュール10の電圧Vを変更するようにしてもよい。
【0092】
また、前記した各実施形態では、標準条件で取得した初期状態のデータに合わせて、太陽電池モジュール11等のI−V特性を補正する場合について説明したが(S204:図12参照)、これに限らない。すなわち、太陽電池モジュール11等の実際の環境条件(日射量、温度等)に合わせて、初期状態のデータを補正するようにしてもよい。
【0093】
また、前記した各実施形態では、山登り法の実行時における電流平均値Iaveが閾値I1M以上である場合(S203→Yes:図12参照)、センサモジュール21が診断処理(S205)を行う場合について説明したが、これに限らない。例えば、山登り法の実行中において所定時刻に取得した太陽電池モジュール11の電流値と、所定閾値との比較結果に基づいて、センサモジュール21が診断の可否を判定するようにしてもよい。
また、前記した各実施形態では、パワーコンディショナ30が電圧制御型のコンバータ31b(図4参照)を備える場合について説明したが、電流制御型のコンバータを用いてもよい。
【0094】
また、第2実施形態では、太陽電池モジュール11〜16それぞれに関して、略同一の時刻に得られた発電電力の偏差値を算出することで、相対的に発電電力が小さい太陽電池モジュールを特定する場合について説明したが、これに限らない。例えば、略同一の時刻に検出された太陽電池モジュール11〜16の電力値の平均値を算出し、この平均値との比較によって相対的に発電電力が小さい太陽電池モジュールを特定してもよい。
【0095】
また、例えば、1個の太陽電池モジュール11に関して、その発電電力と閾値とを比較し、太陽電池モジュール11の電力値の低下が一時的なものであるか否かを判定するようにしてもよい。この場合、電力値の低下が一時的なものであれば、総合診断手段36は太陽電池モジュール11について「異常なし」と診断する。
【符号の説明】
【0096】
S 太陽光発電システム
10,11,12,13,14,15,16 太陽電池モジュール
21,22,23,24,25,26 センサモジュール(診断手段)
30,30A パワーコンディショナ
31 電力変換手段
31d 制御手段
36 総合診断手段(診断手段)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17