(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
イットリウムアルミニウムガーネット(YAG)領域と、第1の表面と第2の表面との間にあるこのYAG領域の厚み方向に沿って濃度勾配を有するドーパントとを含み、この濃度勾配が、YAG領域の厚み方向に沿って4分の1から4分の3の間にある最大ドーパント濃度と、最大ドーパント濃度の第1の半値と、最大ドーパント濃度の第1の半値に第1の傾きとを含み、第1の傾きの絶対値が、0.001〜0.004(単位が原子%/μm(at%/μm))の範囲である放射性セラミック。
最大ドーパント濃度の位置から少なくとも25μm離れた位置にある最大ドーパント濃度の第2の半値をさらに含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載の放射性セラミック。
最大ドーパント濃度の第2の半値またはその濃度に第2の傾きを含み、第2の傾きの絶対値は、0.001〜0.004(単位が原子%/μm)の範囲にある、請求項7または8に記載の放射性セラミック。
YAG領域は、第1の非多孔性領域と第2の非多孔性領域とをさらに含み、第1の多孔性領域は、第1の非多孔性領域と第2の非多孔性領域の間に配置されている、請求項13〜17のいずれか1項に記載の放射性セラミック。
YAG領域は、第1の非多孔性領域と第2の多孔性領域とをさらに含み、第1の非多孔性領域は、第1の多孔性領域と第2の多孔性領域の間に配置されている、請求項13〜17のいずれか1項に記載の放射性セラミック。
イットリウムアルミニウムガーネット(YAG)領域と、第1の表面と第2の表面との間にあるこのYAG領域の厚み方向に沿って濃度勾配を有するドーパントとを含み、この濃度勾配が、YAG領域の厚み方向に沿って4分の1から4分の3の間にある最大ドーパント濃度と、最大ドーパント濃度の第1の半値と、最大ドーパント濃度の第1の半値に第1の傾きとを含み、第1の傾きの絶対値が、最大ドーパント濃度を厚みで割った値の8分の1から、最大ドーパント濃度を厚みで割った値の2倍までの範囲にある、放射性セラミック。
最大ドーパント濃度は、YAG領域の厚み方向の第1の表面またはその反対側にある第2の表面から、厚みの10分の1以上離れていない位置にある、請求項25に記載の放射性セラミック。
濃度勾配は、最大ドーパント濃度の第2の半値に第2の傾きをさらに含み、第2の傾きの絶対値が、最大ドーパント濃度を厚みで割った値の8分の1から、最大ドーパント濃度を厚みで割った値の2倍までの範囲にある、請求項25〜29のいずれか1項に記載の放射性セラミック。
最大ドーパント濃度の第1の半値は、第1の表面および第2の表面の両方からYAG領域の厚み方向に少なくとも10分の1離れており、最大ドーパント濃度の第1の半値は、最大ドーパント濃度から厚み方向に少なくとも10分の1離れている、請求項25〜31のいずれか1項に記載の放射性セラミック。
最大ドーパント濃度の第2の半値は、第1の表面および第2の表面の両方からYAG領域の厚み方向に少なくとも10分の1離れており、最大ドーパント濃度の第2の半値は、最大ドーパント濃度および最大ドーパント濃度の第1の半値の両方から厚み方向に少なくとも10分の1離れている、請求項30〜32のいずれか1項に記載の放射性セラミック。
ドーパントの濃度勾配が、YAG領域の厚みの実質的にすべてにわたってルミネッセンスを生成するのに有効なドーパント濃度を含む、請求項25〜35のいずれか1項に記載の放射性セラミック。
YAG領域は、第1の非多孔性領域と第2の非多孔性領域とをさらに含み、第1の多孔性領域は、第1の非多孔性領域と第2の非多孔性領域の間に配置されている、請求項40〜44のいずれか1項に記載の放射性セラミック。
YAG領域は、第1の非多孔性領域と第2の多孔性領域とをさらに含み、第1の非多孔性領域は、第1の多孔性領域と第2の多孔性領域の間に配置されている、請求項40〜44のいずれか1項に記載の放射性セラミック。
ドープ層は、第1の非ドープ層と、YAG、YAG前駆体、またはこれらの組み合わせを含む第2の非ドープ層との間に配置され、第1の非ドープ層および第2の非ドープ層は、それぞれ独立して、厚みが40μm〜400μmの範囲にある、請求項53に記載の方法。
【発明の概要】
【0005】
本明細書に開示されるいくつかの実施形態は、イットリウムアルミニウムガーネット(YAG)領域の厚み方向に沿ってドーパントの濃度勾配を有する放射性セラミック材料である。
【0006】
本明細書に開示されるいくつかの実施形態は、1つ以上の多孔性領域を有する放射性セラミック材料である。
【0007】
本明細書に開示されるいくつかの実施形態は、イットリウムアルミニウムガーネット(YAG)領域と、第1の表面と第2の表面との間にあるこのYAG領域の厚み方向に沿って濃度勾配を有するドーパントとを含み、この濃度勾配が、最大ドーパント濃度と、最大ドーパント濃度の第1の半値と、最大ドーパント濃度の第1の半値またはその濃度付近に第1の傾きとを含み、第1の傾きの絶対値が、約0.001〜約0.004(単位は原子%/μm(at%/μm))の範囲である放射性セラミックを含む。
【0008】
ある実施形態では、最大ドーパント濃度は、約0.25原子%〜約0.5原子%の範囲にある。
【0009】
ある実施形態では、最大ドーパント濃度は、第1の表面または第2の表面から約100μm以上離れていない位置にある。ある実施形態では、最大ドーパント濃度は、YAG領域の厚みの中心から約100μm以上離れていない位置にある。ある実施形態では、最大ドーパント濃度の第1の半値は、最大ドーパント濃度の位置から少なくとも約25μm離れた位置にある。ある実施形態では、最大ドーパント濃度の第1の半値は、第1の表面および第2の表面から少なくとも約50μm離れた位置にある。
【0010】
ある実施形態では、放射性セラミックは、最大ドーパント濃度の第1の半値の位置から少なくとも約25μm離れた位置に最大ドーパント濃度の第2の半値を含む。ある実施形態では、最大ドーパント濃度の第2の半値は、最大ドーパント濃度の位置から少なくとも約25μm離れた位置にある。
【0011】
ある実施形態では、放射性セラミックは、最大ドーパント濃度の第2の半値またはその濃度付近に第2の傾きを含み、第2の傾きの絶対値は、0.001〜0.004(単位は原子%/μm)の範囲にある。ある実施形態では、第1の傾きの絶対値は、第2の傾きの絶対値とほぼ同じである。
【0012】
ある実施形態では、ドーパントの濃度勾配は、半値全幅が約50μm〜約400μmの範囲にあるピークを含む。
【0013】
ある実施形態では、YAG領域の厚みは、約100μm〜約1mmの範囲にある。
【0014】
ある実施形態では、YAG領域は、第1の多孔性領域をさらに含む。ある実施形態では、第1の多孔性領域は、孔体積が約0.5%〜約80%の範囲にある。ある実施形態では、第1の多孔性領域は、孔体積が約1%〜約30%の範囲にある。
【0015】
ある実施形態では、第1の多孔性領域は、平均径が約0.5μm〜約50μmの範囲にある孔を含む。ある実施形態では、孔は、平均径が約1.0μm〜約10μmの範囲にある。
【0016】
ある実施形態では、YAG領域は、第1の非多孔性領域と第2の非多孔性領域とをさらに含み、第1の多孔性領域は、第1の非多孔性領域と第2の非多孔性領域の間に配置されている。
【0017】
ある実施形態では、YAG領域は、第1の非多孔性領域と第2の多孔性領域とをさらに含み、第1の非多孔性領域は、第1の多孔性領域と第2の多孔性領域の間に配置されている。
【0018】
ある実施形態では、第1の多孔性領域は、YAG領域の厚みの中心から約100μm以上離れていない位置にある。
【0019】
ある実施形態では、第1の多孔性領域は、YAG領域の厚みの中心から少なくとも約25μm離れた位置にある。
【0020】
ある実施形態では、第1の多孔性領域は、YAG領域の第1の表面もしくはYAG領域の第2の表面、またはその付近に位置している。
【0021】
ある実施形態では、YAG領域は、多孔性領域とほぼ同じ大きさである。
【0022】
ある実施形態では、第1の多孔性領域は、厚みが約10μm〜約400μmの範囲にある。
【0023】
ある実施形態では、YAG領域またはその前駆体の中の有機分子を揮発させることによって、第1の多孔性領域が得られる。
【0024】
本明細書に開示されるいくつかの実施形態は、イットリウムアルミニウムガーネット(YAG)領域と、このYAG領域の厚み方向に沿って濃度勾配を有するドーパントとを含み、この濃度勾配が、最大ドーパント濃度と、最大ドーパント濃度の第1の半値と、最大ドーパント濃度の第1の半値またはその濃度付近に第1の傾きとを含み、第1の傾きの絶対値が、最大ドーパント濃度を厚みで割った値の約8分の1から、最大ドーパント濃度を厚みで割った値の約2倍までの範囲にあるような放射性セラミックを含む。
【0025】
ある実施形態では、最大ドーパント濃度は、YAG領域の厚み方向に沿って約4分の1から約4分の3の間にある。ある実施形態では、最大ドーパント濃度は、YAG領域の厚みの中心またはその付近にある。
【0026】
ある実施形態では、最大ドーパント濃度は、YAG領域の厚み方向の第1の表面またはその反対側にある第2の表面から、厚みの10分の1以上離れていない位置にある。
【0027】
ある実施形態では、最大ドーパント濃度は、約0.25原子%〜約0.5原子%の範囲にある。ある実施形態では、第1の傾きは、0.001〜0.004(単位は原子%/μm)の範囲にある。
【0028】
ある実施形態では、ドーパント濃度は、最大ドーパント濃度の第2の半値またはその付近に第2の傾きをさらに含み、第2の傾きの絶対値が、最大ドーパント濃度を厚みで割った値の約8分の1から、最大ドーパント濃度を厚みで割った値の約2倍までの範囲にある。
【0029】
ある実施形態では、第1の傾きおよび第2の傾きの絶対値は、ほぼ同じである。
【0030】
ある実施形態では、最大ドーパント濃度の第1の半値は、第1の表面および第2の表面の両方からYAG領域の厚み方向に少なくとも約10分の1離れており、最大ドーパント濃度の第1の半値は、最大ドーパント濃度から厚み方向に少なくとも約10分の1離れている。
【0031】
ある実施形態では、最大ドーパント濃度の第2の半値は、第1の表面および第2の表面の両方からYAG領域の厚み方向に少なくとも約10分の1離れており、最大ドーパント濃度の第2の半値は、最大ドーパント濃度および最大ドーパント濃度の第1の半値の両方から厚み方向に少なくとも約10分の1離れている。
【0032】
ある実施形態では、YAG領域の厚みは、約100μm〜約1mmの範囲にある。
【0033】
ある実施形態では、ドーパントの濃度勾配は、一般的に、YAG領域の中心またはその付近を基準として対称形である。
【0034】
ある実施形態では、ドーパントの濃度勾配は、YAG領域の厚みの実質的にすべてにわたってルミネッセンスを生成するのに有効なドーパント濃度を含む。
【0035】
ある実施形態では、ドーパントの濃度勾配は、平均ドーパント濃度が約0.01原子%〜約0.5原子%の範囲にある。
【0036】
ある実施形態では、最大ドーパント濃度と平均ドーパント濃度の比率は、約5:1〜約1.5:1の範囲にある。
【0037】
ある実施形態では、ドーパントの濃度勾配は、半値全幅が厚みの約5分の1〜約5分の4の範囲にあるピークを含む。
【0038】
ある実施形態では、YAG領域は、第1の多孔性領域をさらに含む。
【0039】
ある実施形態では、第1の多孔性領域は、孔体積が約0.5%〜約80%の範囲にある。
【0040】
第1の多孔性領域は、孔体積が約10%〜約30%の範囲にある、請求項43に記載の放射性セラミック。
【0041】
ある実施形態では、第1の多孔性領域は、平均径が約0.5μm〜約50μmの範囲にある孔を含む。ある実施形態では、孔は、平均径が約1.0μm〜約10μmの範囲にある。
【0042】
ある実施形態では、YAG領域は、第1の非多孔性領域と第2の非多孔性領域とをさらに含み、第1の多孔性領域は、第1の非多孔性領域と第2の非多孔性領域の間に配置されている。
【0043】
ある実施形態では、YAG領域は、第1の非多孔性領域と第2の多孔性領域とをさらに含み、第1の非多孔性領域は、第1の多孔性領域と第2の多孔性領域の間に配置されている。
【0044】
ある実施形態では、第1の多孔性領域は、YAG領域の厚みの中心から約100μm以上離れていない位置にある。
【0045】
ある実施形態では、第1の多孔性領域は、YAG領域の厚みの中心から少なくとも約25μm離れた位置にある。
【0046】
ある実施形態では、第1の多孔性領域は、YAG領域の第1の表面もしくはYAG領域の第2の表面、またはその付近に位置している。
【0047】
ある実施形態では、YAG領域は、多孔性領域とほぼ同じ大きさである。
【0048】
ある実施形態では、第1の多孔性領域は、厚みが約10μm〜約400μmの範囲にある。
【0049】
ある実施形態では、YAG領域またはその前駆体の中の有機分子を揮発させることによって、第1の多孔性領域が得られる。
【0050】
ある実施形態では、放射性セラミックは、約455nmの波長を有する光にさらされたとき、少なくとも約0.80の内部量子効率(IQE)を示す。
【0051】
本明細書に開示されるいくつかの実施形態は、放射性セラミックを形成する方法であって、組立体を焼結させることを含み、この組立体は、第1の非ドープ層の片側に配置されたドープ層を含み、ドープ層は、イットリウムアルミニウムガーネット(YAG)、YAG前駆体、またはこれらの組み合わせと、ドーパントとを含み、ドープ層は、厚みが約10μm〜約200μmの範囲にあり;第1の非ドープ層は、YAG、YAG前駆体、またはこれらの組み合わせを含み、第1の非ドープ層は、厚みが約40μm〜約800μmの範囲にあり;上のプロセス中に、ドープ層中のドーパントの少なくとも約30%がドープ層から拡散する、放射性セラミックを形成する方法を含む。
【0052】
ある実施形態では、ドープ層は、第1の非ドープ層と、YAG、YAG前駆体、またはこれらの組み合わせを含む第2の非ドープ層との間に配置され、第1の非ドープ層および第2の非ドープ層は、それぞれ独立して、厚みが約40μm〜約400μmの範囲にある。
【0053】
ある実施形態では、ドープ層中のドーパントの少なくとも一部が、焼結中に第1の非ドープ層および第2の非ドープ層両方に拡散する。
【0054】
ある実施形態では、ドープ層中のドーパントの約80%以下が、このプロセス中にドープ層から拡散する。
【0055】
ある実施形態では、ドープ層は、厚みが約40μm〜約80μmの範囲にある。
【0056】
ある実施形態では、第1の非ドープ層の厚みは、第2の非ドープ層の厚みとほぼ同じであり、第1の非ドープ層の厚みおよび第2の非ドープ層の厚みは、両方ともドープ層の厚みより大きい。
【0057】
ある実施形態では、第1の非ドープ層の厚みは、第2の非ドープ層の厚みより小さく、第2の非ドープ層の厚みは、ドープ層の厚みより大きいか、または等しい。
【0058】
ある実施形態では、組立体は、合計厚みが約100μm〜約1mmの範囲にある。
【0059】
ある実施形態では、ドープ層は、約0.1原子%〜約5原子%を含む。
【0060】
ある実施形態では、ドープ層中のドーパントのうち第1の量が、このプロセス中に第1の非ドープ層へと拡散し、ドープ層中のドーパントのうち第2の量が、このプロセス中に第2の非ドープ層に拡散し、ドーパントの第1の量とドーパントの第2の量の比率が、約4:1〜約1:4の範囲にある。
【0061】
ある実施形態では、ドーパントの第1の量は、ドーパントの第2の量とほぼ同じである。
【0062】
ある実施形態では、組立体を焼結させることは、約1000℃〜約1900℃の範囲の温度で少なくとも約2時間、組立体を加熱することを含む。
【0063】
ある実施形態では、この温度は、約1300℃〜約1800℃の範囲にある。
【0064】
ある実施形態では、組立体をこの温度で少なくとも約5時間加熱する。
【0065】
ある実施形態では、組立体をこの温度で約20時間以下の時間加熱する。
【0066】
ある実施形態では、ドープ層または第1の非ドープ層のうち、少なくとも1つが有機粒子を含む。
【0067】
ある実施形態では、有機粒子は、ポリマーを含む。
【0068】
ある実施形態では、有機粒子は、最大直径が約0.5μm〜約50μmの範囲にある。
【0069】
ある実施形態では、ドープ層および第1の非ドープ層のうち、少なくとも1つが、約0.5体積%〜約80体積%の範囲の量の有機粒子を含む。
【0070】
ある実施形態では、ドープ層は有機粒子を含む。ある実施形態では、第1の非ドープ層は、有機粒子を含む。ある実施形態では、組立体のそれぞれの層は、有機粒子を含む。ある実施形態では、組立体中の少なくとも1つの層は、有機粒子を実質的に含まない。
【0071】
本明細書に開示されるいくつかの実施形態は、本明細書に開示するいずれかの方法によって作られる放射性セラミックを含む。
【0072】
ある実施形態では、放射性セラミックは、約455nmの波長を有する光にさらされたとき、少なくとも約0.80の内部量子効率(IQE)を示す。
【0073】
本明細書に開示されるいくつかの実施形態は、青色の光を発するような構造の光源と、本明細書に開示するいずれかの放射性セラミックとを含み、放射性セラミックが青色の光の少なくとも一部を受け取るような構成である、発光装置を含む。
【0074】
請求項1〜55および79のいずれか1項に記載の放射性セラミックを青色の光にさらすことを含む、光を作る方法。
【発明を実施するための形態】
【0102】
本明細書には、少なくとも1つの寸法に沿ったドーパントの濃度勾配を含むことによって優れた内部量子効率を与えることができる放射性セラミック材料が開示されている。驚くべきことに、出願人は、特定の条件下で、あるドーパント濃度プロフィールが優れた内部量子効率を与えることを発見した。放射性セラミックは、場合により、1つ以上の多孔性領域を含んでいてもよい。また、本明細書には、あるドーパント濃度プロフィールを含む放射性セラミックを製造する方法も開示されている。それに加え、本明細書は、放射性セラミック材料を含む発光装置と、放射性セラミック材料を用いる方法を含む。
【0103】
(放射性セラミック)
本明細書に開示されるいくつかの実施形態は、イットリウムアルミニウムガーネット(YAG)領域と、このYAG領域の厚み方向に沿って濃度勾配を有するドーパントとを含む放射性セラミックを含む。放射性セラミックは、たとえば、組立体を焼結させることによって調製されてもよい。したがって、「放射性セラミック」は、一般的に、発光目的に使用可能な最終的な放射性材料を記述するものであり、一方、「組立体」は、焼結して放射性セラミックを生成し得るコンポジットである。以下にさらに詳細に記載するように、組立体を焼結させることは、最終的な放射性セラミックの内部でドーパントの濃度勾配を生成するようにドーパントを拡散させる方法の1つである。
【0104】
放射性セラミックは、「YAG領域の厚み」方向に沿ってドーパントの濃度勾配を含んでいてもよい。
図1A〜Cは、放射性セラミックのさまざまな非限定例について、z軸に沿ったYAG領域の厚みを示す。
図1Aは、放射性セラミックの非限定例を示す。放射性セラミック100は、イットリウムアルミニウムガーネットホスト材料の中の分布がほぼ均一の放射性ドーパント材料を含んでいてもよく、それぞれ、x軸、y軸、z軸に沿って、長さ、幅、厚みを含む。ある実施形態では、YAG領域の厚みとは、放射性セラミックの最も小さな寸法である。たとえば、放射性セラミックは、長さおよび幅が約1mmに等しく、厚みが約100μmであってもよい。ある実施形態では、厚みは、最も小さな寸法ではない。もちろん、多くの他の幾何形状が本発明の範囲内にあり、
図1Aに描かれる一般的な直方体形状に限定されない。たとえば、放射性セラミックは、円柱形、立方体などであってもよい。さらに、放射性セラミックが、明確に規定される縁または特定数の面を含む対称形である必要はない。
【0105】
図1Bは、放射性セラミックの別の実施形態を示す。放射性セラミック110は、ほぼ均一に分散したイットリウムアルミニウムガーネットを含んでいてもよく、円柱形または円板状の幾何形状を有していてもよい。放射性セラミック110は、z軸方向に沿った厚みを有する。
【0106】
図1Cは、放射性セラミック全体にわたってイットリウムアルミニウムガーネットの分散がほぼ均一ではない放射性セラミックのある実施形態を示す。放射性セラミック115は、2つの非YAG領域130および140(たとえば、酸化アルミニウムからなる領域)に挟まれた放射性イットリウムアルミニウムガーネット領域120を含む。界面150は、放射性イットリウムアルミニウムガーネット領域120と非YAG領域140の間の界面である。同様に、界面160は、放射性イットリウムアルミニウムガーネット領域120と非YAG領域130の間の界面である。この実施形態では、イットリウムアルミニウムガーネット領域の厚みには、非YAG領域130および140の部分が含まれない。イットリウムアルミニウムガーネット領域120の厚みは、z軸に沿って表面150から表面160までの間である。したがって、イットリウムアルミニウムガーネット領域120の厚みは、放射性セラミック115の厚みよりも小さい。
【0107】
図2は、放射性イットリウムアルミニウムガーネット領域の厚み方向に沿ったドーパント濃度プロフィールの従来例を示すグラフである。水平方向の軸は、放射性イットリウムアルミニウムガーネット領域の厚み方向に沿った(たとえば、
図1Aに示される放射性セラミック100のz軸に沿った)位置である。水平方向の軸に沿った位置「0」は、放射性層の第1の表面(たとえば、放射性セラミック100の底面)であろう。水平方向の軸に沿った位置「1/2L」は、厚み方向に沿った中点(たとえば、放射性セラミック100の厚み方向に沿ったほぼ中心)であろう。水平方向の軸に沿った位置「L」は、放射性層の厚み方向に沿って第1の表面と反対側にある放射性層の第2の表面(たとえば、放射性セラミック100の上面)であろう。したがって、第1の表面と第2の表面は、厚み方向に沿って反対側にある(たとえば、z軸に沿って、放射性セラミック100の底面は上面と反対側にある)。
【0108】
その一方で、
図2の垂直軸は、厚み方向に沿った所与の位置でのドーパント濃度である。この従来技術のドーパント濃度プロフィールには、いくつかの顕著な特徴がある。第1に、この例は、一般的に、厚み方向に沿って実質的に一定のドーパント濃度プロフィールを含む(すなわち、その傾きが、厚み全体にわたってほぼ0である)。第2に、このドーパント濃度プロフィールは、厚みの実質的にすべてにわたってみられる最大ドーパント濃度(C
max)を有する。第3に、最小ドーパント濃度(C
min)は、最大ドーパント濃度とほぼ同じである。第4に、ドーパント濃度は、厚みの実質的にすべてにわたって、最大ドーパント濃度の半値よりも大きい。言い換えると、実質的に一定のドーパント濃度プロフィールは、最大ドーパント濃度の半値(C
max/2)を含まない。
【0109】
図3は、本発明の範囲内にあるドーパントの濃度勾配の一実施形態を示すグラフである。最大ドーパント濃度は、イットリウムアルミニウムガーネット領域の第1の表面またはその付近に位置しており、一方、最小ドーパント濃度は、厚み方向に沿って第1の表面とは反対側にある第2の表面またはその付近に位置している。また、最大ドーパント濃度の半値は、イットリウムアルミニウムガーネット領域の中心またはその付近に位置している。
【0110】
図2の実質的に一定のドーパント濃度プロフィールとは対照的に、
図3に示されたドーパントの濃度勾配は、ゼロではない値を含むさまざまな傾きを有する。本明細書で使用する場合、「傾き」との用語は、厚み方向(たとえば、
図2の水平軸)に沿った位置の変化に対する濃度変化の比率を意味する。ドーパント濃度を、連続的な関数f(x)によって合理的にあらわすことができる場合、その傾きは、この関数の導関数から決定されてもよい。一例として、
図3において、約1/2L(または、ほぼ最大ドーパント濃度の半値)での傾きの絶対値は、最大ドーパント濃度をイットリウムアルミニウムガーネット領域の厚みで割ったおおよその値(C
max/L)より大きい。
【0111】
図4は、これもまた本発明の範囲内にあるドーパントの濃度勾配の別の実施形態を示すグラフである。最大ドーパント濃度は、イットリウムアルミニウムガーネット領域の中心またはその付近に位置しており、一方、最小ドーパント濃度は、厚み方向に沿って対向する側面である第1の表面および第2の表面、またはその付近に位置している。また、2個の最大ドーパント濃度の半値が、Lのほぼ4分の1(すなわち、1/4L)から4分の3のところに位置している。この実施形態では、最大ドーパント濃度の半値は、両方ともほぼ同じ大きさの傾きを有する。さらに、ドーパントの濃度勾配は、厚みの実質的にすべてにわたって、ドーパント濃度についてゼロではない値(または検知できる量よりも大きな値)を示す。
【0112】
図4に示す実施形態のドーパントの濃度勾配は、イットリウムアルミニウムガーネット領域の中心に対してほぼ対称形でもある。言い換えると、ドーパント濃度勾配を、連続的な関数f(x)によって合理的にあらわすことができる場合、f(1/2L−z)は、0≦z≦1/2Lのときにf(1/2L+z)とほぼ同じであろう。さらに、ドーパントの濃度勾配は、1個のピークによって特徴づけられてもよい。このピークは、約1/2Lの半値全幅(たとえば、厚み方向に沿って2つの最大ドーパント濃度の半値間の距離)を有する(すなわち、3/4L−1/4L)。
【0113】
ドーパントの濃度勾配を特徴づけるのに使用可能な別の特徴は、平均ドーパント濃度である。平均ドーパント濃度は、厚み全体にわたって均一に分布した一連の濃度を合計し、この合計を、合計するのに使用した濃度の合計数で割ることによって決定されてもよい。または、ドーパントの濃度勾配を連続的な関数f(x)によって合理的にあらわすことができる場合、平均ドーパント濃度は、
[式1]
と等しくてもよい。単純な例として、
図2で示すプロフィールについて、平均ドーパント濃度は、最大ドーパント濃度であろう。これとは対照的に、
図3も
図4も、最大ドーパント濃度より小さな平均濃度プロフィールを示す。
【0114】
当業者には理解されるように、
図2〜4は、ドーパント濃度プロフィールを単純化した図をあらわす。これらのプロフィールを実験結果と比較するとき、さまざまな因子が考慮されるべきである。たとえば、測定したドーパント濃度をゆがめてしまうノイズを把握する必要があるだろう。当該技術分野で既知のさまざまな方法を用い、このゆがみを減らすためにデータ操作(たとえば、フーリエ変換、測定値の平均化など)を行うことが必要な場合がある。同様に、この材料の表面効果または小さな欠陥に起因して、さらなるゆがみが生じることがある。当業者は、これらのゆがみを認識することができ、これらの差が、本明細書に開示するような図示されているドーパントの濃度勾配と区別されるような特徴ではないことを理解するだろう。
最大ドーパント濃度
【0115】
(最大ドーパント濃度)
放射性セラミックのいくつかの実施形態は、最大ドーパント濃度を含むドーパントの濃度勾配を含む。出願人らは、最大ドーパント濃度が内部量子効率と相関関係にありそうだということを発見した。任意の特定の理論によって束縛されないが、最大ドーパント濃度が高いと、効率を下げる過度の消光が生じると考えられる。さらに、最大ドーパント濃度が低いと、光子を生成する能力を制限するという観点で、放射性中心の数が減るため、効率が下がる。
【0116】
したがって、ある実施形態では、最大ドーパント濃度は、約0.1原子%(at%)〜約1原子%の範囲にある。最大ドーパント濃度は、たとえば、少なくとも約0.1原子%;少なくとも約0.2原子%;少なくとも約0.25原子%;少なくとも約0.275原子%;少なくとも約0.28原子%;または少なくとも約0.3原子%であってもよい。最大ドーパント濃度は、たとえば、約1原子%以下;約0.75原子%以下;約0.5原子%以下;約0.4原子%以下;または約0.3原子%以下であってもよい。
【0117】
最大ドーパント濃度は、イットリウムアルミニウムガーネット領域の厚み方向に沿った1つ以上の位置にあってもよい。ある実施形態では、最大ドーパント濃度は、第1の表面および厚み方向に反対側にある第2の表面から離れた位置にある。たとえば、最大ドーパント濃度は、イットリウムアルミニウムガーネット領域の厚み方向に沿って、厚みのほぼ4分の1からほぼ4分の3の間に位置していてもよい。一例として、イットリウムアルミニウムガーネット領域の厚みが約100μmである場合、最大ドーパント濃度は、厚み方向に沿って約25μm〜約75μmの間に位置していてもよい。
【0118】
最大ドーパント濃度は、ある実施形態では、厚み方向に沿って厚みの少なくとも3分の1の位置;少なくとも約8分の3の位置、少なくとも約5分の2の位置;少なくとも約7分の3の位置;または少なくとも約9分の4の位置にあってもよい。最大ドーパント濃度は、ある実施形態では、厚み方向に沿って厚みの約3分の2以下;約8分の5以下;約5分の3以下;約7分の4以下;または約9分の5以下の位置にあってもよい。
【0119】
最大ドーパント濃度は、厚み方向に沿って、中点から特定の距離以上離れていない位置にあってもよい。一例として、最大ドーパント濃度は、厚み方向に沿って中点から約250μm以上離れていない位置にあってもよい。最大ドーパント濃度は、ある実施形態では、厚み方向に沿って中点から約200μm以上離れていない位置;約100μm以上離れていない位置;約50μm以上離れていない位置;約25μm以上離れていない位置;または約10μm以上離れていない位置にあってもよい。ある実施形態では、最大ドーパント濃度は、ある実施形態では、厚み方向に沿って中点から厚みの約8分の3以上離れていない位置;約4分の1以上離れていない位置;約5分の1以上離れていない位置;約8分の1以上離れていない位置;または約10分の1以上離れていない位置にあってもよい。ある実施形態では、最大ドーパント濃度は、イットリウムアルミニウムガーネット領域の中心またはその付近に位置している。
【0120】
最大ドーパント濃度は、ある実施形態では、第1の表面または第2の表面から特定の距離以上離れていない位置にあってもよい。最大ドーパント濃度は、ある実施形態では、第1の表面または第2の表面から約200μm以上離れていない位置;第1の表面または第2の表面から約100μm以上離れていない位置;第1の表面または第2の表面から約50μm以上離れていない位置;第1の表面または第2の表面から約25μm以上離れていない位置;または第1の表面または第2の表面から約10μm以上離れていない位置にあってもよい。ある実施形態では、最大ドーパント濃度は、第1の表面または第2の表面またはその付近に位置している。
【0121】
(最大ドーパント濃度の第1の半値)
ドーパントの濃度勾配は、最大ドーパント濃度の第1の半値も含んでいてもよい。最大ドーパント濃度の半値とは、特定の放射性セラミックについて、最大ドーパント濃度の半分であるドーパント濃度を指す。たとえば、一実施形態では、ドーパントの濃度勾配は、最大ドーパント濃度が約0.5原子%であり、最大ドーパント濃度の半値が約0.25原子%であってもよい。
【0122】
最大ドーパント濃度の第1の半値は、ある実施形態では、厚み方向に沿って第1の表面および第2の表面から特定の距離離れたところにあってもよい。最大ドーパント濃度の第1の半値は、たとえば、第1の表面および第2の表面から少なくとも10μm離れた位置;第1の表面および第2の表面から少なくとも約25μm離れた位置;第1の表面および第2の表面から少なくとも約50μm離れた位置;第1の表面および第2の表面から少なくとも約100μm離れた位置;第1の表面および第2の表面から少なくとも約200μm離れた位置;または第1の表面および第2の表面から少なくとも約250μm離れた位置にあってもよい。最大ドーパント濃度の第1の半値は、たとえば、第1の表面および第2の表面から厚みの少なくとも10分の1;第1の表面および第2の表面から厚みの少なくとも約8分の1;第1の表面および第2の表面から厚みの少なくとも約5分の1;第1の表面および第2の表面から厚みの少なくとも約4分の1;または第1の表面および第2の表面から厚みの少なくとも約8分の3の位置にあってもよい。
【0123】
さらに、最大ドーパント濃度の第1の半値は、最大ドーパント濃度から特定の距離離れたところにあってもよい。最大ドーパント濃度の第1の半値は、たとえば、最大ドーパント濃度から少なくとも10μm離れた位置;最大ドーパント濃度から少なくとも約25μm離れた位置;最大ドーパント濃度から少なくとも約50μm離れた位置;最大ドーパント濃度から少なくとも約100μm離れた位置;最大ドーパント濃度から少なくとも約200μm離れた位置;または最大ドーパント濃度から少なくとも約250μm離れた位置にあってもよい。最大ドーパント濃度の第1の半値は、たとえば、最大ドーパント濃度から厚みの少なくとも10分の1;最大ドーパント濃度から厚みの少なくとも約8分の1;最大ドーパント濃度から厚みの少なくとも約5分の1;最大ドーパント濃度から厚みの少なくとも約4分の1;または最大ドーパント濃度から厚みの少なくとも約8分の3の位置にあってもよい。
【0124】
ある実施形態では、ドーパントの濃度勾配は、最大ドーパント濃度の第1の半値またはその付近に第1の傾きを含む。第1の傾きの絶対値は、たとえば、最大ドーパント濃度を厚みで割った値の約8分の1(すなわち、C
maxを8Lで割ったもの)から、最大ドーパント濃度を厚みで割った値の約2倍までの範囲にあってもよい。一例として、最大ドーパント濃度が約0.2原子%であり、厚みが約100μmである場合、第1の傾きの絶対値は、約0.00025原子%/μm〜約0.004原子%/μmの範囲であろう。
【0125】
第1の傾きの絶対値は、たとえば、最大ドーパント濃度を厚みで割った値の少なくとも約4分の1;最大ドーパント濃度を厚みで割った値の少なくとも約8分の3;最大ドーパント濃度を厚みで割った値の少なくとも約半分;最大ドーパント濃度を厚みで割った値の少なくとも約4分の3;または少なくとも最大ドーパント濃度を厚みで割った値とほぼ同じであってもよい。
【0126】
第1の傾きの絶対値は、たとえば最大ドーパント濃度を厚みで割ったおおよその値以下;最大ドーパント濃度を厚みで割った値の約4分の3以下;最大ドーパント濃度を厚みで割った値の約2分の1以下;または最大ドーパント濃度を厚みで割った値の約8分の3以下であってもよい。
【0127】
さらに、第1の傾きの絶対値は、特定の数値範囲内にあってもよい。たとえば、第1の傾きの絶対値は、約0.001原子%/μm〜約0.004原子%/μmの範囲であってもよい。第1の傾きの絶対値は、ある実施形態では、少なくとも約0.0001原子%/μm;少なくとも約0.0005原子%/μm;少なくとも約0.001原子%/μm;少なくとも約0.0015原子%/μm;または少なくとも約0.002原子%/μmであってもよい。第1の傾きの絶対値は、ある実施形態では、約0.006原子%/μm以下;約0.005原子%/μm以下;約0.004原子%/μm以下;または約0.003原子%/μm以下であってもよい。
【0128】
(最大ドーパント濃度の第2の半値)
ドーパントの濃度勾配は、最大ドーパント濃度の第2の半値も含んでいてもよい。最大ドーパント濃度の第2の半値は、ある実施形態では、厚み方向に沿って第1の表面および第2の表面から離れた特定の距離にあってもよい。最大ドーパント濃度の第2の半値は、たとえば、第1の表面および第2の表面から少なくとも10μm離れた位置;第1の表面および第2の表面から少なくとも約25μm離れた位置;第1の表面および第2の表面から少なくとも約50μm離れた位置;第1の表面および第2の表面から少なくとも約100μm離れた位置;第1の表面および第2の表面から少なくとも約200μm離れた位置;または第1の表面および第2の表面から少なくとも約250μm離れた位置にあってもよい。最大ドーパント濃度の第2の半値は、たとえば、第1の表面および第2の表面から厚みの少なくとも10分の1離れた位置;少なくとも約8分の1離れた位置;少なくとも約5分の1離れた位置;少なくとも約4分の1離れた位置;または少なくとも約8分の3離れた位置にあってもよい。
【0129】
最大ドーパント濃度の第2の半値は、たとえば、最大ドーパント濃度から少なくとも10μm離れた位置;最大ドーパント濃度から少なくとも約25μm離れた位置;最大ドーパント濃度から少なくとも約50μm離れた位置;最大ドーパント濃度から少なくとも約100μm離れた位置;最大ドーパント濃度から少なくとも約200μm離れた位置;または最大ドーパント濃度から少なくとも約250μm離れた位置にあってもよい。最大ドーパント濃度の第2の半値は、たとえば、最大ドーパント濃度から厚みの少なくとも10分の1離れた位置;最大ドーパント濃度から厚みの少なくとも約8分の1離れた位置;最大ドーパント濃度から厚みの少なくとも約5分の1離れた位置;最大ドーパント濃度から厚みの少なくとも約4分の1離れた位置;または最大ドーパント濃度から厚みの少なくとも約8分の3離れた位置にあってもよい。
【0130】
ある実施形態では、最大ドーパント濃度の第2の半値は、厚み方向に沿って、最大ドーパント濃度の第1の半値から少なくとも特定の距離離れたところにある。最大ドーパント濃度の第2の半値は、たとえば、最大ドーパント濃度の第1の半値から少なくとも10μm離れた位置;最大ドーパント濃度の第1の半値から少なくとも約25μm離れた位置;最大ドーパント濃度の第1の半値から少なくとも約50μm離れた位置;最大ドーパント濃度の第1の半値から少なくとも約100μm離れた位置;最大ドーパント濃度の第1の半値から少なくとも約200μm離れた位置;または最大ドーパント濃度の第1の半値から少なくとも約250μm離れた位置にあってもよい。最大ドーパント濃度の第2の半値は、たとえば、最大ドーパント濃度の第1の半値から厚みの少なくとも10分の1離れた位置;最大ドーパント濃度の第1の半値から厚みの少なくとも約8分の1離れた位置;最大ドーパント濃度の第1の半値から厚みの少なくとも約5分の1離れた位置;最大ドーパント濃度の第1の半値から厚みの少なくとも約4分の1離れた位置;または最大ドーパント濃度の第1の半値から厚みの少なくとも約8分の3離れた位置にあってもよい。
【0131】
ある実施形態では、ドーパントの濃度勾配は、最大ドーパント濃度の第2の半値またはその付近に第2の傾きを含む。第2の傾きの絶対値は、たとえば、最大ドーパント濃度を厚みで割った値の約8分の1(すなわち、C
maxを8Lで割ったもの)から、最大ドーパント濃度を厚みで割った値の約2倍までの範囲にあってもよい。一例として、最大ドーパント濃度が約0.2原子%であり、厚みが約100μmである場合、第2の傾きの絶対値は、約0.00025原子%/μm〜約0.004原子%/μmの範囲であろう。
【0132】
第2の傾きの絶対値は、たとえば、最大ドーパント濃度を厚みで割った値の少なくとも約4分の1;最大ドーパント濃度を厚みで割った値の少なくとも約8分の3;最大ドーパント濃度を厚みで割った値の少なくとも約半分;最大ドーパント濃度を厚みで割った値の少なくとも約4分の3;または最大ドーパント濃度を厚みで割った値と少なくともほぼ同じであってもよい。
【0133】
第2の傾きの絶対値は、たとえば最大ドーパント濃度を厚みで割ったおおよその値以下;最大ドーパント濃度を厚みで割った値の約4分の3以下;最大ドーパント濃度を厚みで割った値の約2分の1以下;または最大ドーパント濃度を厚みで割った値の約8分の3以下であってもよい。
【0134】
さらに、第2の傾きの絶対値は、特定の数値範囲内にあってもよい。たとえば、第2の傾きの絶対値は、約0.001原子%/μm〜約0.004原子%/μmの範囲であってもよい。第2の傾きの絶対値は、ある実施形態では、少なくとも約0.0001原子%/μm;少なくとも約0.0002原子%/μm;少なくとも約0.0005原子%/μm;少なくとも約0.001原子%/μm;または少なくとも約0.002原子%/μmであってもよい。第2の傾きの絶対値は、ある実施形態では、約0.01原子%/μm以下;約0.008原子%/μm以下;約0.004原子%/μm以下;約0.002原子%/μm以下;または約0.001原子%/μm以下であってもよい。
【0135】
ある実施形態では、第1の傾きの絶対値は、第2の傾きの絶対値とほぼ同じである。
【0136】
飛行時間型二次イオン質量分析を使用し、たとえば、それぞれの対象点でのドーパント濃度、厚みまたは距離/位置と、それぞれの対象点で得られる傾きを決定することができる。
【0137】
(他の特徴)
イットリウムアルミニウムガーネット領域の厚みは、特に限定されない。ある実施形態では、イットリウムアルミニウムガーネット領域の厚みは、約100μm〜約1mmの範囲にある。イットリウムアルミニウムガーネット領域の厚みは、たとえば、少なくとも約100μm;少なくとも約150μm;少なくとも約200μm;少なくとも約250μm;少なくとも約400μm;または少なくとも約500μmであってもよい。イットリウムアルミニウムガーネット領域の厚みは、たとえば、約1mm以下;約900μm以下;約800μm以下;約750μm以下;約600μm以下;または約500μm以下であってもよい。
【0138】
ドーパントの濃度勾配のいくつかの実施形態は、イットリウムアルミニウムガーネット領域の中心またはその付近の点を基準として、ほぼ対称形である(たとえば、
図4に示されるように)。ドーパントの濃度勾配のいくつかの実施形態は、イットリウムアルミニウムガーネット領域の中心またはその付近の点を基準として、ほぼ非対称形である(たとえば、
図3に示されるように)。他の実施形態は、イットリウムアルミニウムガーネット領域の中心から離れた点に対し、たとえば、C
maxが0〜1/2L、たとえば、1/4L、または別の実施形態ではC
maxが1/2L〜L、たとえば、3/4Lの点を基準として、非対称形であってもよい(図示せず)。
【0139】
ドーパントの濃度勾配は、ある実施形態では、厚みの実質的にすべてにわたってゼロではないドーパント濃度を含んでいてもよい。すなわち、ドーパント濃度は、厚みの実質的にすべてにわたって0より大きい。ある実施形態では、ドーパントの濃度勾配は、厚みの実質的にすべてにわたってルミネッセンスを生成するのに有効なドーパント濃度を含んでいてもよい。
【0140】
ドーパントの濃度勾配は、特定の半値全幅を有するピークを含んでいてもよい。たとえば、半値全幅は、約50μm〜約500μmの範囲にあってもよい。半値全幅は、たとえば、少なくとも約50μm;少なくとも約75μm;少なくとも約100μm、少なくとも約150μm;または少なくとも約200μmであってもよい。半値全幅は、たとえば、約500μm以下;約400μm以下;約300μm以下;約250μm以下;約200μm以下;または約150μm以下であってもよい。ある実施形態では、半値全幅は、YAG領域の厚みの少なくとも約10分の1;YAG領域の厚みの少なくとも約4分の1;YAG領域の厚みの少なくとも約8分の1;YAG領域の厚みの少なくとも約4分の1;またはYAG領域の厚みの少なくとも約8分の3であってもよい。ある実施形態では、半値全幅は、YAG領域の厚みの約8分の5以下;YAG領域の厚みの約2分の1以下;YAG領域の厚みの約8分の3以下;またはYAG領域の厚みの約4分の1以下であってもよい。ある実施形態では、ドーパントの濃度勾配は、本質的に1個のピークからなる。
【0141】
さらに、ドーパントの濃度勾配は、厚み全体に沿った平均ドーパント濃度を特徴としてもよい。平均ドーパント濃度は、たとえば、約0.1原子%〜約0.5原子%の範囲にあってもよい。ある実施形態では、平均ドーパント濃度は、少なくとも約0.05原子%;少なくとも約0.1原子%;少なくとも約0.2原子%;または少なくとも約0.25原子%であってもよい。ある実施形態では、平均ドーパント濃度は、約1原子%以下;約0.5原子%以下;約0.4原子%以下;約0.3原子%以下;または約0.25原子%以下であってもよい。最大ドーパント濃度と平均ドーパント濃度の比率は、たとえば、約5:1〜約1.5:1の範囲;約4:1〜約1.5:1の範囲;または約3:1〜約2:1の範囲にあってもよい。
【0142】
イットリウムアルミニウムガーネット領域に組み込んでドーパントの濃度勾配を形成してもよいドーパントの非限定例としては、Nd、Er、Eu、Cr、Yb、Sm、Tb、Ce、Pr、By、Ho、Gd、Lu、およびこれらの組み合わせがあげられる。ある実施形態では、ドーパントはCeである。一例として、ドープされたイットリウムアルミニウムガーネット領域は、式(Y
1−xCe
x)
3Al
5O
12によってあらわされてもよい。
【0143】
上述のように、本明細書に開示する放射性セラミックの利点の1つは、優れた内部量子効率を示すことである。ある実施形態では、放射性セラミックは、約455nmの波長を有する光にさらされたとき、少なくとも約0.80の内部量子効率(IQE)を示す。ある実施形態では、放射性セラミックは、約455nmの波長を有する光にさらされたとき、少なくとも約0.85の内部量子効率(IQE)を示す。ある実施形態では、放射性セラミックは、約455nmの波長を有する光にさらされたとき、少なくとも約0.90の内部量子効率(IQE)を示す。
【0144】
(多孔性領域)
放射性セラミックは、場合により、1つ以上の多孔性領域(たとえば、0個、1個、2個、3個またはそれ以上の多孔性領域)を含んでいてもよい。任意の特定の理論によって束縛されないが、多孔性層を加えると、放射性セラミックの発光性の角度依存性が減ると考えられる。言い換えると、多孔性領域は、放射性セラミックの発光性において異方性を減らすだろう。
【0145】
YAG領域内の1つ以上の多孔性領域の位置および大きさは、特に制限されない。ある実施形態では、YAG領域は、第1の多孔性領域と、第1の非多孔性領域とを少なくとも含む。ある実施形態では、YAG領域は、第1の多孔性領域と、第1の非多孔性領域と、第2の非多孔性領域とを含む。ある実施形態では、YAG領域は、第1の多孔性領域と、第2の多孔性領域と、第1の非多孔性領域とを含む。
【0146】
図25Aは、多孔性領域を含む放射性セラミックの一例である。多孔性層2505は、第1の非多孔性層2510と第2の非多孔性層2515の間に挟まれている。多孔性層2505、第1の非多孔性層2510、第2の非多孔性層2515は、それぞれYAGホスト材料を含んでいてもよい(すなわち、これらの構成要素が合わさって放射性セラミックのYAG領域を形成する)。
図25Aに示されるように、多孔性領域は、放射性セラミックの中心またはその付近に位置していてもよい。
【0147】
ある実施形態では、放射性セラミックは、第1の多孔性領域と、第2の多孔性領域とを含んでいてもよく、第1の多孔性領域と第2の多孔性領域は、異なる孔体積率を有する。ある実施形態では、放射性セラミックは、第1の多孔性領域と、第2の多孔性領域とを含んでいてもよく、第1の多孔性領域と第2の多孔性領域は、異なる平均孔径を有する。
【0148】
図25Bは、異なる孔体積を有する複数の多孔性層を含む放射性セラミックの一例である。放射性セラミックは、第1の多孔性層2520を含み、第1の多孔性層は、第2の多孔性層2525よりも多孔性が低い(たとえば、低い平均孔径および/または低い孔体積率)。第1の多孔性層2520および第2の多孔性層2525は、両方とも第1の非多孔性層2530と第2の非多孔性層2535の間に配置されている。第1の多孔性層2520、第2の多孔性層2525、第1の非多孔性層2530、第2の非多孔性層2535は、それぞれYAGホスト材料を含んでいてもよい(すなわち、これらの構成要素が合わさって放射性セラミックのYAG領域を形成する)。
【0149】
図25Cは、異なる孔体積を有する複数の多孔性層を含む放射性セラミックの別の例である。放射性セラミックは、第1の多孔性層2540を含み、第1の多孔性層は、第2の多孔性層2545と第3の多孔性層2550の間に配置されている。第1の多孔性層2540は、第2の多孔性層2545および第3の多孔性層2550とは異なる多孔性を有していてもよい(たとえば、低い平均孔径および/または低い孔体積率)。ある実施形態では、第2の多孔性層2545と第3の多孔性層2550は、同じ多孔性を有する。ある実施形態では、第2の多孔性層2545と第3の多孔性層2550は、異なる多孔性を有する。第2の多孔性層2545および第3の多孔性層2550は、第1の非多孔性層2555と第2の非多孔性層2560の間に配置されていてもよい。第1の多孔性層2540、第2の多孔性層2545、第3の多孔性層2550、第1の非多孔性層2555、第2の非多孔性層2560は、それぞれYAGホスト材料を含んでいてもよい(すなわち、これらの構成要素が合わさって放射性セラミックのYAG領域を形成する)。
【0150】
ある実施形態では、放射性セラミック内のYAG領域の実質的にすべてが多孔性である。すなわち、YAG領域は、全体的に多孔性である。ある実施形態では、YAG領域は、厚み方向に沿って均一の多孔性を有する。ある実施形態では、YAG領域の多孔性は、厚み方向に沿って変化する。
【0151】
1つ以上の多孔性領域の中の孔の大きさは、特に制限されない。1つ以上の多孔性領域の平均孔径は、たとえば、少なくとも約0.5μm;少なくとも約1μm;少なくとも約2μm;少なくとも約4μm;または少なくとも約7μmであってもよい。多孔性領域の平均孔径は、たとえば、約50μm以下;約25μm以下;約10μm以下;または約7μm以下であってもよい。ある実施形態では、1つ以上の多孔性領域の孔の平均径は、約0.5μm〜約50μmの範囲にあってもよい。たとえば、平均孔径は、約4μmであってもよい。上述のように、放射性セラミックは、それぞれ異なる平均孔径を有する2つ以上の多孔性領域を含んでいてもよい。
【0152】
1つ以上の多孔性領域の孔の体積パーセントも、さまざまであってもよい。1つ以上の多孔性領域の孔の体積パーセントは、たとえば、少なくとも約0.5%;少なくとも約1%;少なくとも約2%;少なくとも約4%;少なくとも約10(%);または少なくとも約20%であってもよい。1つ以上の多孔性領域中の孔の体積パーセントは、たとえば、約80%以下;約50%以下;約30%以下;約20%以下;約10%以下;または約8%以下であってもよい。ある実施形態では、1つ以上の多孔性領域中の孔の体積パーセントは、約0.5%〜約80%の範囲であってもよい。たとえば、1つ以上の多孔性領域中の孔の体積パーセントは、約6%であってもよい。上述のように、放射性セラミックは、それぞれ異なる孔体積パーセントを有する2つ以上の多孔性領域を含んでいてもよい。
【0153】
上述のように、1つ以上の多孔性領域は、放射性セラミック中の層であってもよい(たとえば、
図25Aに示す多孔性層2505)。1つ以上の多孔性層の厚みは、さまざまであってもよい。1つ以上の多孔性層(たとえば、1つ、2つ、3つまたはそれ以上の多孔性層)は、それぞれ独立して、厚みが約10μm〜約800μmの範囲であってもよい。ある実施形態では、1つ以上の多孔性層は、それぞれ独立して、厚みが約20μm〜約400μmの範囲であってもよい。1つ以上の多孔性層は、たとえば、それぞれ独立して、厚みが少なくとも約10μm;少なくとも約40μm;少なくとも約80μm;少なくとも約100μm;または少なくとも約200μmであってもよい。1つ以上の多孔性層は、たとえば、それぞれ独立して、厚みが約400μm以下;約300μm以下;約250μm以下;約200μm以下;約150μm以下;約100μm以下;または約80μm以下であってもよい。ある実施形態では、少なくとも1つの多孔性層(たとえば、1つまたは2つの多孔性層)の厚みは、少なくとも1つの非多孔性層の厚みより小さいか、または等しくてもよい。ある実施形態では、少なくとも1つの多孔性層(たとえば、1つまたは2つの多孔性層)の厚みは、少なくとも1つの非多孔性層の厚みより大きいか、または等しい。
【0154】
以下にさらに詳細に記載するように、1つ以上の多孔性層は、たとえば、組立体の少なくとも一部分に分散した有機粒子を含む組立体を焼結させることによって調製することができる。有機粒子を、たとえば、バインダー除去または焼結中に揮発させ、放射性セラミックの領域内に孔を作ってもよい。ドーパントとは異なり、有機粒子は、加熱したときに(拡散があるとしても)最小の拡散を示し、したがって、多孔性領域の位置は、有機粒子を含む組立体の層と相関関係にある。したがって、多孔性領域の孔の大きさ、孔体積パーセント、位置は、組立体中の有機粒子の大きさ、有機粒子の量、有機粒子の分布によって制御されてもよい。したがって、多孔性層および非多孔性層(もしあれば)の配置は、放射性セラミックを調製するために用いられる組立体の構造を変えることによって、簡単に変動させることができる。さらに、上述のように、組立体の層のドーパント濃度を同じように変化させ、望ましいドーパントおよび多孔性分布を得ることができる。
【0155】
非多孔性領域は、実質的に孔を含まなくてもよい。非多孔性領域の孔の体積パーセントは、たとえば、約0.05%以下;約0.01%以下;または約0.001%以下であってもよい。
【0156】
上述のように、1つ以上の非多孔性領域は、放射性セラミック中の層であってもよい(たとえば、
図25Aに示す第1の非多孔性層2510)。1つ以上の非多孔性層の厚みは、さまざまであってもよい。1つ以上の非多孔性層(たとえば、1つ、2つ、3つまたはそれ以上の非多孔性層)は、それぞれ独立して、厚みが約10μm〜約800μmの範囲であってもよい。ある実施形態では、1つ以上の非多孔性層は、それぞれ独立して、厚みが約20μm〜約400μmの範囲であってもよい。1つ以上の非多孔性層は、たとえば、それぞれ独立して、厚みが少なくとも約10μm;少なくとも約40μm;少なくとも約80μm;少なくとも約100μm;または少なくとも約200μmであってもよい。1つ以上の非多孔性層は、たとえば、それぞれ独立して、厚みが約400μm以下;約300μm以下;約250μm以下;約200μm以下;約150μm以下;約100μm以下;または約80μm以下であってもよい。
【0157】
放射性セラミック中の1つ以上の多孔性領域の位置は、場合により、放射性セラミック内で対称的な構造を有していてもよい。たとえば、
図25Aは、(i)第1の非多孔性層2510の厚みが、第2の非多孔性層2515の厚みとほぼ同じであり、(ii)多孔性が多孔性層2505内でほぼ均一である、対称形の放射性セラミックを示す。ある実施形態では、放射性セラミック中の1つ以上の多孔性領域は、放射性セラミック内で非対称的な構造を有していてもよい。たとえば、
図25Bは、第1の多孔性層2520と第2の多孔性層2525が少なくとも異なる多孔性を有しているため、非対称形の放射性セラミックを示す。
【0158】
さらに、少なくとも1つの多孔性領域は、厚み方向に沿って中点から特定の距離以上離れていない位置にあってもよい。一例として、少なくとも1つの多孔性領域は、厚み方向に沿って中点から約250μm以上離れていない位置にあってもよい。少なくとも1つの多孔性領域は、ある実施形態では、厚み方向に沿って中点から約200μm以上離れていない位置;約100μm以上離れていない位置;約50μm以上離れていない位置;約25μm以上離れていない位置;または約10μm以上離れていない位置にあってもよい。ある実施形態では、少なくとも1つの多孔性領域は、厚み方向に沿って中点から厚みの約8分の3以上離れていない位置;厚み方向に沿って中点から厚みの約4分の1以上離れていない位置;厚み方向に沿って中点から厚みの約5分の1以上離れていない位置;厚み方向に沿って中点から厚みの約8分の1以上離れていない位置;または厚み方向に沿って中点から厚みの約10分の1以上離れていない位置にあってもよい。ある実施形態では、少なくとも1つの多孔性領域は、イットリウムアルミニウムガーネット領域の中心またはその付近に位置している。
【0159】
少なくとも1つの多孔性層は、ある実施形態では、第1の表面または第2の表面から特定の距離以上離れていない位置にあってもよい。少なくとも1つの多孔性領域は、ある実施形態では、第1の表面または第2の表面から約200μm以上離れていない位置;第1の表面または第2の表面から約100μm以上離れていない位置;第1の表面または第2の表面から約50μm以上離れていない位置;第1の表面または第2の表面から約25μm以上離れていない位置;または第1の表面または第2の表面から約10μm以上離れていない位置にあってもよい。ある実施形態では、少なくとも1つの多孔性領域は、第1の表面もしくは第2の表面、またはその付近に位置している。ある実施形態では、第1の多孔性領域は、第1の表面またはその付近に位置しており、第2の多孔性領域は、第2の表面またはその付近に位置している。
【0160】
ある実施形態では、少なくとも1つの非多孔性領域は、第1の表面または第2の表面またはその付近に位置している。ある実施形態では、第1の非多孔性領域は、第1の表面またはその付近に位置しており、第2の非多孔性領域は、第2の表面またはその付近に位置している。
【0161】
ある実施形態では、最大ドーパント濃度は、多孔性層の中に位置している。ある実施形態では、最大ドーパント濃度は、非多孔性層の中に位置している。ある実施形態では、最大ドーパント濃度の第1の半値は、非多孔性層の中に位置している。ある実施形態では、最大ドーパント濃度の第1の半値は、多孔性層の中に位置している。ある実施形態では、最大ドーパント濃度の第2の半値は、非多孔性層の中に位置している。ある実施形態では、最大ドーパント濃度の第2の半値は、多孔性層の中に位置している。ある実施形態では、最大ドーパント濃度は、多孔性層の中に位置しており、最大ドーパント濃度の第1の半値は、第1の非多孔性層の中に位置しており、最大ドーパント濃度の第2の半値は、第2の非多孔性層の中に位置している。ある実施形態では、最大ドーパント濃度は、第1の多孔性層の中に位置しており、最大ドーパント濃度の第1の半値は、第2の多孔性層の中に位置しており、最大ドーパント濃度の第2の半値は、第3の多孔性層の中に位置している。ある実施形態では、最大ドーパント濃度は、第1の多孔性層の中に位置しており、最大ドーパント濃度の第1の半値は、第2の多孔性層の中に位置しており、最大ドーパント濃度の第2の半値は、第1の非多孔性層の中に位置している。
【0162】
(放射性セラミックを製造する方法)
本明細書に開示されるいくつかの実施形態は、放射性セラミック、たとえば、上に開示したいずれかの放射性セラミックを形成する方法を含む。この方法は、非ドープ層の片側に配置されたドープ層を含む組立体を焼結させることを含んでいてもよい。
【0163】
図5Aおよび5Bは、本明細書に開示する方法によって焼結されてもよい組立体の一実施形態を示す。
図5Aは、非ドープ層520の片側に配置されたドープ層510を有する組立体500の側面図である。
図5Bは、組立体500の斜視図を示す。組立体500は、たとえば、
図3に示したものと同様のドーパント濃度勾配を得るのに適した条件下で構築し、焼結させてもよい。
【0164】
図6Aおよび6Bは、本明細書に開示する方法によって焼結されてもよい組立体の別の実施形態を示す。
図6Aは、第1の非ドープ層620と第2の非ドープ層630との間にドープ層610を有する組立体600の側面図である。
図6Bは、組立体600の斜視図を示す。組立体600は、たとえば、
図4に示したものと同様のドーパント濃度勾配を得るのに適した条件下で構築し、焼結させてもよい。
【0165】
組立体のドープ層は、イットリウムアルミニウムガーネット、イットリウムアルミニウムガーネット前駆体、またはこれらの組み合わせを含んでいてもよい。イットリウムアルミニウムガーネット前駆体は、プロセス中にイットリウムアルミニウムガーネットを形成するであろう任意の成分であってもよい。一例として、イットリウムアルミニウムガーネット前駆体は、Y
2O
3とA1
2O
3を化学量論比3:5で含む混合であって、焼結中にイットリウムアルミニウムガーネットを形成するものであってもよい。ある実施形態では、ドープ層は、少なくとも50%のイットリウムアルミニウムガーネットおよび/またはその等価な量の前駆体を含む。ある実施形態では、ドープ層は、少なくとも80%のイットリウムアルミニウムガーネットおよび/またはその等価な量の前駆体を含む。ある実施形態では、ドープ層は、少なくとも90%のイットリウムアルミニウムガーネットおよび/またはその等価な量の前駆体を含む。ある実施形態では、ドープ層は、イットリウムアルミニウムガーネットおよび望ましいドーパントから本質的になる。
【0166】
さらに、ドープ層は、Nd、Er、Eu、Cr、Yb、Sm、Tb、Ce、Pr、Gd、Dy、Ho、Luおよびこれらの組み合わせのようなドーパントを含む。ある実施形態では、ドーパントはCeである。ドープ層中のドーパントの量は、焼結が終了した後に放射性セラミックにルミネッセンスを付与するのに有効な量であってもよい。さらに、出願人らは、ドープ層中のドーパントの初期濃度が放射性セラミックの内部量子効率を変え得ることを発見した。したがって、ある実施形態では、ドープ層は、約0.1原子%〜約5原子%のドーパントを含む。ドープ層は、たとえば、少なくとも約0.5原子%;少なくとも約1原子%;少なくとも約1.5原子%;または少なくとも約2原子%のドーパントを含んでいてもよい。ドープ層は、たとえば、約4.5原子%以下;約4原子%以下;約3.5原子%以下;または約3原子%以下のドーパントを含んでいてもよい。ある実施形態では、ドープ層は、ほぼ均一に分布したドーパントを含む。
【0167】
組立体(たとえば、焼結し、放射性セラミックを形成することができる組立体)中の1つ以上の非ドープ層は、イットリウムアルミニウムガーネット、イットリウムアルミニウムガーネット前駆体、またはこれらの組み合わせを含んでいてもよい。ある実施形態では、1つ以上の非ドープ層は、少なくとも50%のイットリウムアルミニウムガーネットおよび/またはその前駆体を含む。ある実施形態では、1つ以上の非ドープ層は、少なくとも80%のイットリウムアルミニウムガーネットおよび/または等価な量のその前駆体を含む。ある実施形態では、1つ以上の非ドープ層は、少なくとも90%のイットリウムアルミニウムガーネットおよび/または等価な量のその前駆体を含む。ある実施形態では、1つ以上の非ドープ層は、本質的にイットリウムアルミニウムガーネットおよび/または等価な量のその前駆体からなる。しかし、1つ以上の非ドープ層は、ドーパントを実質的に含まなくてもよい。ある実施形態では、1つ以上の非ドープ層は、放射性セラミックにルミネッセンスを付与するのに有効ではない量のドーパントを含んでいてもよい。ある実施形態では、1つ以上の非ドープ層は、約0.05原子%未満のドーパントを含んでいてもよい。ある実施形態では、1つ以上の非ドープ層は、約0.01原子%未満のドーパントを含んでいてもよい。ある実施形態では、1つ以上の非ドープ層は、約0.001原子%未満のドーパントを含んでいてもよい。
【0168】
ある実施形態では、ドープ層と1つ以上の非ドープ層の相対的な厚みは、内部量子効率に影響を与える場合がある。たとえば、放射性層の方が厚い場合には、ドープ層の中のドーパントが周囲の非ドープ層に拡散することがあり、それによって最大ドーパント濃度が低下する。任意の特定の理論によって束縛されないが、ドーパント濃度が低いと、消光が減るため、内部量子効率が高まると考えられる。これとは対照的に、放射性層の方が厚いと、ドーパントが厚いドープ層を通って拡散することができないため、同様の最大ドーパント濃度の低下はみられない場合がある。これによって、最大ドーパント濃度が高くなり、消光が増えることがある。
【0169】
したがって、ある実施形態では、ドープ層は、ドープ層内で初期ドーパント濃度の低下を可能にするような構成の厚みを有する。ある実施形態では、ドープ層は、焼結中にドープ層から非放射性層への拡散を可能にするような構成の厚みを有する。ある実施形態では、ドープ層は、厚みが約10μm〜約200μmの範囲である。ある実施形態では、ドープ層は、厚みが約40μm〜約80μmの範囲である。ドープ層は、たとえば、厚みが少なくとも約20μm;少なくとも約30μm;少なくとも約40μm;または少なくとも約50μmであってもよい。さらに、ドープ層は、たとえば、厚みが約150μm以下;約120μm以下;約100μm以下;約80μm以下;または約70μm以下であってもよい。
【0170】
1つ以上の非ドープ層(たとえば、1つまたは2つの非ドープ層)は、それぞれ独立して、厚みが約40μm〜約800μmの範囲であってもよい。ある実施形態では、1つ以上の非ドープ層は、それぞれ独立して、厚みが約40μm〜約400μmの範囲であってもよい。1つ以上の非ドープ層は、たとえば、それぞれ独立して、厚みが少なくとも約40μm;少なくとも約80μm;少なくとも約100μm;または少なくとも約200μmであってもよい。1つ以上の非ドープ層は、たとえば、それぞれ独立して、厚みが約400μm以下;約300μm以下;約250μm以下;約200μm以下;約150μm以下であってもよい。ある実施形態では、少なくとも1つの非ドープ層(たとえば、1つまたは2つの非ドープ層)は、ドープ層の厚みより小さくてもよく、または等しい厚みであってもよい。ある実施形態では、少なくとも1つの非ドープ層(たとえば、1つまたは2つの非ドープ層)は、ドープ層の厚みより大きいか、または等しい。
【0171】
組立体は、たとえば、ドープ層と非ドープ層とから本質的になっていてもよい。言い換えると、組立体は、ドープ層と非ドープ層とを含むが、イットリウムアルミニウムガーネット領域を形成する任意の他の層を除外するものではない(たとえば、
図5Aおよび5Bの組立体500)。非ドープ層の厚みは、たとえば、ドープ層の厚みより大きくてもよい。非ドープ層の厚みとドープ層の厚みの比率は、ある実施形態では、約20:1〜約1.5:1の範囲であってもよい。非ドープ層の厚みとドープ層の厚みの比率は、たとえば、約15:1以下;約12:1以下;約10:1以下;約8:1以下;または約5:1以下であってもよい。非ドープ層の厚みとドープ層の厚みの比率は、たとえば、少なくとも約2:1;少なくとも約3:1;少なくとも約4:1;または少なくとも約5:1であってもよい。
【0172】
組立体は、ドープ層と2つの非ドープ層を含んでいてもよく、または本質的にこれらからなっていてもよい(たとえば、
図6Aおよび6Bの組立体600)。したがって、組立体は、第1の非ドープ層と、第2の非ドープ層とを有していてもよい。第1の非ドープ層および第2の非ドープ層は、それぞれ独立して、たとえば上に開示したような任意の厚みを有していてもよい。たとえば、第1の非ドープ層は、厚みが約40μm〜約400μmの範囲であってもよく、第2の非ドープ層は、厚みが約40μm〜約400μmの範囲であってもよい。ある実施形態では、第1の非ドープ層は、ドープ層よりも厚い。ある実施形態では、第2の非ドープ層は、ドープ層よりも厚い。ある実施形態では、第1の非ドープ層および第2の非ドープ層は、両方ともドープ層よりも厚い。ある実施形態では、第1の非ドープ層と第2の非ドープ層は、厚みが異なる。ある実施形態では、第1の非ドープ層と第2の非ドープ層は、厚みがほぼ同じである。
【0173】
第1の非ドープ層または第2の非ドープ層とドープ層の比率は、それぞれ独立して、上に記載した範囲内にあってもよい。たとえば、第1の非ドープ層の厚みとドープ層の厚みの比率は、約20:1〜約1.5:1の範囲であってもよい。また、第2の非ドープ層の厚みとドープ層の厚みの比率は、約20:1〜約1.5:1の範囲であってもよい。
【0174】
組立体中の1つ以上の層は、場合により、有機粒子を含んでいてもよい。これらの有機粒子を揮発させ、最終的な放射性セラミック中に1つ以上の多孔性領域を形成してもよい。ある実施形態では、有機粒子は、ポリマーを含んでいてもよい。たとえば、有機粒子は、架橋したポリメタクリル酸メチル(PMMA)ビーズ、ポリスチレンビーズ、ポリエチレンビーズであってもよい。ある実施形態では、組立体中の少なくとも1つのドープ層は、有機粒子を含む。ある実施形態では、組立体中の少なくとも1つの非ドープ層は、有機粒子を含む。ある実施形態では、組立体の実質的にすべてが有機粒子を含む。ある実施形態では、組立体中の少なくとも1つの層は、有機粒子を実質的に含まない。
【0175】
有機粒子の大きさは、最終的な放射性セラミックの中の多孔性領域の望ましい孔径に基づいて選択することができる。有機粒子の平均最大寸法は、たとえば、少なくとも約0.5μm;少なくとも約1μm;少なくとも約2μm;少なくとも約4μm;または少なくとも約7μmであってもよい。有機粒子の平均最大寸法は、たとえば、約50μm以下;約25μm以下;約10μm以下;または約7μm以下であってもよい。ある実施形態では、有機粒子の平均最大寸法は、約0.5μm〜約50μmの範囲であってもよい。たとえば、有機粒子の平均最大寸法は、約4μmであってもよい。組立体は、ある実施形態では、少なくとも2つの層の有機粒子の平均最大寸法が異なるような有機粒子を含む2つ以上の層を含んでいてもよい。たとえば、組立体は、平均最大寸法が約1μmの有機粒子を含むドープ層と、平均最大寸法が約4μmの有機粒子を含む非ドープ層とを含んでいてもよい。
【0176】
有機粒子は、ある実施形態では、ほぼ球状であってもよい(たとえば、ビーズ)。ある実施形態では、有機粒子は、アスペクト比が約10未満;約5未満;または約2未満であってもよい。ある実施形態では、有機粒子は、アスペクト比が約1である。
【0177】
それぞれの層の有機粒子の量は、望ましい孔体積パーセントに依存して変わってもよい。望ましい孔体積パーセントを得るのに必要な有機粒子の量は、さまざまな因子(たとえば、有機粒子の大きさおよび密度)に依存して変わるだろう。当業者は、本明細書の教示に導かれて、この量を容易に決定することができる。ある実施形態では、組立体中の少なくとも1つの層の中の少なくとも1つの有機粒子の量は、孔体積パーセントが約0.5%〜約80%である多孔性領域を有する最終的な放射性セラミックを与えるような構成である。ある実施形態では、組立体中の少なくとも1つの層の中の有機粒子の量は、孔体積パーセントが約1%〜約30%である多孔性領域を有する最終的な放射性セラミックを与えるような構成である。
【0178】
(組立体の形成)
組立体は、2つ以上のキャスト成型したテープを積層することによって作られてもよく、これらのキャスト成型したテープは、イットリウムアルミニウムガーネットを含んでいてもよい。キャスト成型したテープのうち、少なくとも1つは、ドープ層を形成するためにドーパントを含んでいるだろう。2つ以上のキャスト成型したテープを積層し、焼結させる方法の例は、米国特許第7,514,721号および米国特許公開第2009/0108507号に開示されており、両者ともその全体が本明細書に参考として組み込まれる。
図7は、積層を含む、放射性セラミックを形成する一実施形態の調製フロー図を示す。
【0179】
第1に、原材料(たとえば、硝酸塩系または酸化物系の原材料、たとえば、YAGを形成するためのY
2O
3およびAl
2O
3)の粒径は、場合により、キャスト成型したテープが溶媒を蒸発させている間に毛細管力によって割れるのを減らすように調節されてもよい。たとえば、その粒径は、望ましい粒径を得るために原材料粒子を前アニーリングすることによって調節することができる。原材料粒子を約800℃〜約1800℃(またはさらに好ましくは1000℃〜約1500℃)の温度範囲で前アニーリングし、望ましい粒径を得ることができる。前アニーリングは、減圧中、空気中、O
2、H
2、H
2/N
2中、または希ガス(たとえば、He、Ar、Kr、Xe、Rn、またはこれらの組み合わせ)中で行われてもよい。一実施形態では、それぞれの原材料(たとえば、YAGを形成するためのY
2O
3およびA1
2O
3)を、ほぼ同じ粒径になるように調節する。別の実施形態では、粒子は、BET表面積が約0.5m
2/g〜約20m
2/g(好ましくは、約1.0m
2/g〜約10m
2/g、またはさらに好ましくは約3.0m
2/g〜約6.0m
2/g)である。
【0180】
次いで、その後にキャスト成型してテープにするために、スラリーを調製してもよい。あらかじめ作製したリン光体(たとえば、本明細書に記載する流れに基づく熱化学合成経路によって調製されたリン光体)および/または化学量論量の原材料を種々の成分と混合して混合物を形成してもよい。混合物のための例示的な成分としては、限定されないが、ドーパント、分散剤、可塑剤、バインダー、焼結助剤および溶媒があげられる。
【0181】
ある実施形態では、所望な場合、組立体の焼結特性を改良するために、少量のフラックス材料(たとえば、焼結助剤)を使用してもよい。ある実施形態では、焼結助剤としては、限定されないが、テトラエチルオルトシリケート(TEOS)、コロイド状シリカ、酸化リチウム、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、酸化バリウム、酸化カルシウム、酸化ストロンチウム、酸化ホウ素またはフッ化カルシウムをあげることができる。さらなる焼結助剤としては、限定されないが、アルカリ金属ハロゲン化物、たとえば、NaClまたはKCl、有機化合物、たとえば、尿素があげられる。ある実施形態では、組立体は、約0.01%〜約5%、約0.05%〜約5%、約0.1%〜約4%、または約0.3%〜約1重量%のフラックス材料または焼結助剤を含む。焼結助剤を原材料と混合してもよい。たとえば、ある実施形態では、テトラエチルオルトシリケート(TEOS)を原材料に加え、所望量の焼結助剤を得てもよい。一実施形態では、約0.05%〜約5重量%のTEOSが組立体に与えられる。ある実施形態では、TEOSの量は、約0.3重量%〜約1重量%であってもよい。
【0182】
さらに、ある実施形態では、ガラス転移温度を下げるため、および/またはセラミックの可とう性を高めるために、種々の可塑剤が含まれていてもよい。可塑剤の非限定例としては、ジカルボン酸/トリカルボン酸エステル系可塑剤、たとえば、フタル酸ビス(2−エチルヘキシル)、フタル酸ジイソノニル、フタル酸ビス(n−ブチル)、フタル酸ブチルベンジル、フタル酸ジイソデシル、フタル酸ジ−n−オクチル、フタル酸ジイソオクチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジイソブチル、フタル酸ジ−n−ヘキシル;アジピン酸系可塑剤、たとえば、アジピン酸ビス(2−エチルヘキシル)、アジピン酸ジメチル、アジピン酸モノメチル、アジピン酸ジオクチル;セバシン酸系可塑剤、たとえば、セバシン酸ジブチル、マレエート;マレイン酸ジブチル;マレイン酸ジイソブチル;ポリアルキレングリコール、たとえば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、これらのコポリマー;ベンゾエート;エポキシ化した植物油;スルホンアミド、たとえば、N−エチルトルエンスルホンアミド、N−(2−ヒドロキシプロピル)ベンゼンスルホンアミド、N−(n−ブチル)ベンゼンスルホンアミド;有機ホスフェート、たとえば、トリクレシルホスフェート、トリブチルホスフェート;グリコール/ポリエーテル、たとえば、トリエチレングリコールジヘキサノエート、テトラエチレングリコールジヘプタノエート;クエン酸アルキル、たとえば、クエン酸トリエチル、クエン酸アセチルトリエチル、クエン酸トリブチル、クエン酸アセチルトリブチル、クエン酸トリオクチル、クエン酸アセチルトリオクチル、クエン酸トリヘキシル、クエン酸アセチルトリヘキシル、クエン酸ブチリルトリヘキシル、クエン酸トリメチル;アルキルスルホン酸フェニルエステル、およびこれらの混合物があげられる。
【0183】
ある実施形態では、時には、バインダー樹脂と溶媒を原材料粉末に加えることによって、このプロセスがもっと簡単に起こることがある。バインダーは、加熱してコンポジットを生成する組成物の粒子の付着性を高める任意の基質である。バインダーのいくつかの非限定例としては、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、ポリビニルブチラール、ポリスチレン、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、ポリ酢酸ビニル、ポリブタン酸ビニルなどがあげられる。すべてではないが、ある場合には、バインダーが、焼結段階中に前駆体混合物から完全に除去することができるか、または除外することができるように十分に揮発性であることが有用であろう。使用可能な溶媒としては、限定されないが、水、低級アルカノール(たとえば、限定されないが、変性エタノール、メタノール、イソプロピルアルコールおよびこれらの混合物、好ましくは、変性エタノール)、キシレン、シクロヘキサノン、アセトン、トルエン、メチルエチルケトン、およびこれらの混合物があげられる。好ましい実施形態では、溶媒は、キシレンとエタノールの混合物である。
【0184】
ある実施形態では、分散剤は、Flowen、魚油、長鎖ポリマー、ステアリン酸(steric acid)、酸化したMenhaden魚油、ジカルボン酸(たとえば、コハク酸)、ソルビタンモノオレエート(orbitan monooleate)、エタン二酸、プロパン二酸、ペンタン二酸、ヘキサン二酸、ヘプタン二酸、オクタン二酸、ノナン二酸、デカン二酸、o−フタル酸、p−フタル酸、およびこれらの混合物であってもよい。
【0185】
ある実施形態では、有機粒子を加え、最終的な放射性セラミックの1つ以上の層に多孔性を付与することができる。有機粒子は、組立体に関して上述のいずれかであってもよい。たとえば、有機粒子は、架橋したポリメタクリル酸メチルビーズであってもよい。ある実施形態では、有機粒子の平均最大寸法は、約0.5μm〜約50μmの範囲であってもよい。さらに、有機粒子の量は、最終的な放射性セラミックの任意の多孔性領域について、望ましい孔体積パーセントに基づいて選択することができる。
【0186】
次いで、たとえば、約0.5時間〜約100時間の所定時間、混合物をボールミルで混合することによって、混合物を粉砕してスラリーを形成してもよい。(好ましくは約6時間〜約48時間、またはさらに好ましくは、約12時間〜約24時間)。ボールミルによる混合は、混合物に混合する成分以外の物質を含む粉砕用の球(たとえば、粉砕用の球は、YAGを形成する混合物のためのZrO
2であってもよい)を利用してもよい。一実施形態では、ボールミルによる混合は、所定時間経過後、濾過または他の既知の単離方法によって粉砕用の球を単離することを含む。ある実施形態では、スラリーは、粘度が約10cP〜約5000cP(好ましくは、約100cP〜約3000cP、またはさらに好ましくは、約400cP〜約1000cP)である。
【0187】
第3に、離型物質(たとえば、シリコーンコーティングされたポリエチレンテレフタレート基材)の上にスラリーをキャスト成型し、テープを形成してもよい。たとえば、ドクターブレードを用い、移動する担体にスラリーをキャスト成型し、乾燥させてテープを形成してもよい。ドクターブレードと移動する担体とのギャップを変えることによって、キャスト成型したテープの厚みを調節することができる。ある実施形態では、ドクターブレードと移動する担体とのギャップは、約0.125mm〜約1.25mm(好ましくは、約0.25mm〜約1.00mm、またはさらに好ましくは、約0.375mm〜約0.75mm)の範囲である。一方、移動する担体の速度は、約10cm/分〜約150cm/分(好ましくは、約30cm/分〜約100cm/分、またはさらに好ましくは、約40cm/分〜約60cm/分)の範囲の速度であってもよい。移動する担体の速度と、ドクターブレードと移動する担体とのギャップを調節することによって、テープは、厚みが約20μm〜約300μmであってもよい。テープは、場合によりキャスト成型後に望ましい形状へと切断してもよい。
【0188】
2つ以上のテープを積層して組立体を形成する。積層工程は、2つ以上のテープを積み重ねることを含み(たとえば、2〜100枚のテープを積み重ね)、積み重ねたテープに熱および一軸方向の圧力(たとえば、テープ表面に垂直な圧力)を加えてもよい。たとえば、積み重ねられたテープを、テープに含まれるバインダーのガラス転移温度(T
g)より高い温度まで加熱し、金属ダイを用いて一軸方向に圧縮してもよい。ある実施形態では、一軸方向の圧力は、約1〜約500MPa(好ましくは、約30MPa〜約60MPa)の範囲である。ある実施形態では、熱および圧力を約1分〜約60分(好ましくは、約15分〜約45分、またはさらに好ましくは約30分)の所定時間加える。積層工程は、場合により、たとえば、成型ダイを用い、組立体にさまざまな形状(たとえば、穴または支柱)または模様を形成することを含んでいてもよい。
【0189】
組立体のいくつかの実施形態は、イットリウムアルミニウムガーネットまたはその前駆体を含み、ドーパントを実質的に含まないような少なくとも1つのテープを含む。それに加え、組立体は、イットリウムアルミニウムガーネットまたはその前駆体とドーパントとを含む少なくとも1つのテープを含む。積み重ねたテープを並べ、望ましい形状および層厚を得ることができる。たとえば、テープを積み重ね、
図5Aおよび5Bまたは6Aおよび6Bに示される形状を得てもよい。組立体のテープの数を変えることによって、ドープ層および1つ以上の非ドープ層の厚みを調整することができる。たとえば、もっと厚い非ドープ層を得るために、組立体にさらなるテープ層を加えてもよい。
【0190】
組立体は、場合により、有機粒子を含む少なくとも1つのテープを含んでいてもよい。ある実施形態では、組立体は、有機粒子を含む少なくとも1つのテープと、有機粒子を実質的に含まない少なくとも1つのテープとを含む。ある実施形態では、組立体は、第1の粒径の有機粒子を含む少なくとも1つのテープと、第2の粒径の有機粒子を含む少なくとも1つのテープとを含み、有機粒子の第1の粒径は、有機粒子の第2の粒径とは異なる。ある実施形態では、組立体は、第1の重量の有機粒子を含む少なくとも1つのテープと、第2の重量の有機粒子を含む少なくとも1つのテープとを含み、第1の重量は第2の重量とは異なる。
【0191】
(組立体を焼結させること)
本明細書に開示する方法は、組立体を焼結させて放射性セラミックを得ることを含んでいてもよい。当業者は、本明細書の教示に導かれて、組立体に適した形状と焼結条件を選択し、ドーパントの濃度勾配を有する本明細書に開示するような放射性セラミックを得ることができる。
【0192】
任意の特定の理論によって束縛されないが、本明細書に開示するプロセスによって、ドーパントがドープ層から非ドープ層に拡散すると考えられる。この拡散プロセスによって、最終的な放射性セラミック中にドーパントの濃度勾配を作り出す。拡散は、一般的に、ある種(たとえば、ドーパント)が高濃度の領域から低濃度の領域に移動することであると記述される。したがって、ドーパントは、ドーパント濃度が高いドープ層から、ドーパント濃度が低い非ドープ層へと拡散するだろう。
【0193】
焼結後に得られた放射性セラミックの厚み全体にわたる相対濃度を、Fickの第2法則によってモデル化してもよく、
[式2]
、式中、xは放射性セラミックの厚みに沿った位置であり、tは時間であり、C(x,t)は、位置xでのドーパント濃度である。境界条件(たとえば、組立体の初期構造)に依存して、この式に対して種々の解を得ることができる。たとえば、本明細書にその全体が参考として組み込まれる、J.Crank、The Mathematics of Diffusion、Oxford University Press、London 1956を参照。
【0194】
図5Aおよび5Bに示すような構成の組立体としてモデル化するために、単純な解を得ることができる。しかし、この解は、ドープ層と非ドープ層が、厚み方向に沿って第1の表面および第2の表面の付近で変わらない状態を維持するのに十分なほど厚いことを前提としている。この前提が合理的なものである場合、ドーパントの濃度勾配を以下のようにモデル化することができる。
[式3]
、式中、C
0は、ドープ層中の初期ドーパント濃度であり、xは、2つの層の界面から離れる距離である。最も顕著なことに、この式は、界面付近の拡散勾配の傾きが時間経過に伴って低下することを示す。この変化は、拡散係数にも比例している。拡散係数は、一般的に、温度に伴って指数関数的に増加する。また、最大ドーパント濃度の半値は、このモデルの2層の界面付近にあるだろう。
【0195】
上の内容に基づき、焼結条件が、最終的なドーパント濃度プロフィールに影響を及ぼすことは明らかである。たとえば、長い時間焼結すると、濃度勾配の傾きが小さくなり、ピークが広くなるだろう。一方、焼結温度を上げると、拡散係数が大きくなり、低い焼結温度の場合と比較して、短い時間で拡散が促進され、傾きが小さくなるだろう。もちろん、上に与えた式は、単に、望ましいドーパント濃度プロフィールを与えるのに適した焼結条件を当業者が選択するのに使用可能な単純化したモデルを与えるものである。当業者は、基礎となる前提が常に成り立つわけではないため、これらの式が単にガイドとして役立つことを理解するだろう。たとえば、Fickの第2法則は、濃度に関わらず、拡散係数が一定であることを前提としている。しかし、この前提は、常に適しているわけではない。
【0196】
したがって、本明細書に開示するプロセスは、ドーパントの少なくとも一部分がドープ層から拡散することを含む。ある実施形態では、ドーパントの少なくとも30%が、このプロセス中にドープ層の外に拡散する。ある実施形態では、ドーパントの少なくとも40%が、このプロセス中にドープ層の外に拡散する。ある実施形態では、ドーパントの少なくとも50%が、このプロセス中にドープ層の外に拡散する。ある実施形態では、ドーパントの少なくとも60%が、このプロセス中にドープ層の外に拡散する。ある実施形態では、ドーパントの少なくとも70%が、このプロセス中にドープ層の外に拡散する。
【0197】
ドーパントの少なくとも一部分が、非ドープ層へと拡散してもよい。たとえば、ドープ層の中のドーパントの約30%が、非ドープ層へと拡散してもよい。ある実施形態では、ドーパントの少なくとも一部分が、第1の非ドープ層および第2の非ドープ層へと拡散してもよい。一例として、ドープ層のドーパントの少なくとも約20%が第1の非ドープ層へと拡散してもよく、ドープ層のドーパントの少なくとも約20%が第2の非ドープ層へと拡散してもよい。
【0198】
ある実施形態は、焼結中に第1の非ドープ層へと拡散するドープ層のドーパントのうち第1の量と、第2の非ドープ層へと拡散するドープ層のドーパントのうち第2の量とを含む。第1の量と第2の量の相対的な値は、部分的に組立体の幾何形状によって調整されてもよい。たとえば、第1の非ドープ層が厚いとき、適切な条件下で、薄い第2の非ドープ層に対し、多い量のドーパントを受け取るだろう。第1の量と第2の量の比率は、たとえば、約4:1〜約1:4の範囲;約3:1〜約1:3の範囲;または約2:1〜1:2の範囲であってもよい。ある実施形態では、第1の量と第2の量はほぼ同じである。
【0199】
ドーパントのうち第1の量は、たとえば、ドープ層のドーパントの少なくとも約20%;ドープ層のドーパントの少なくとも約25%;ドープ層のドーパントの少なくとも約30%;ドープ層のドーパントの少なくとも約35%;またはドープ層のドーパントの少なくとも約40%であってもよい。ドーパントのうち第2の量は、たとえば、ドープ層のドーパントの少なくとも約20%;ドープ層のドーパントの少なくとも約25%;ドープ層のドーパントの少なくとも約30%;ドープ層のドーパントの少なくとも約35%;またはドープ層のドーパントの少なくとも約40%であってもよい。
【0200】
組立体中のドープ層の初期最大ドーパント濃度(たとえば、焼結前)に対し、放射性セラミックの最大ドーパント濃度を制御するために、焼結条件を調節してもよい。たとえば、0.5原子%のCeドープ層を含む組立体を焼結し、最大ドーパント濃度が約0.25原子%Ceのドーパントの濃度勾配を有する放射性セラミックを製造してもよい。したがって、この場合には、最大ドーパント濃度は、ドープ層の初期最大ドーパント濃度の約50%である。ある実施形態では、放射性セラミックのドーパントの濃度勾配は、組立体のドープ層の初期ドーパント濃度の約65%を超えないような最大ドーパント濃度を含む。放射性セラミックのドーパントの濃度勾配は、たとえば、最大ドーパント濃度が、組立体のドープ層の初期ドーパント濃度の約60%以下;組立体のドープ層の初期ドーパント濃度の約55%以下;組立体のドープ層の初期ドーパント濃度の約50%以下;組立体のドープ層の初期ドーパント濃度の約40%以下;または組立体のドープ層の初期ドーパント濃度の約25%以下であってもよい。
【0201】
焼結前に、任意のバインダー除去プロセスを完了させてもよい。バインダー除去プロセスは、組立体の中の有機成分の少なくとも一部分を分解することを含む(たとえば、組立体の中のバインダー、有機粒子、可塑剤を揮発させる)。一例として、組立体を空気中、約300℃〜約1200℃(好ましくは、約500℃〜約1000℃、またはさらに好ましくは、約800℃)の範囲の温度で、約0.1℃/分〜約10℃/分(好ましくは、約0.3℃/分〜約5℃/分、またはさらに好ましくは、約0.5℃/分〜約1.5℃/分)の速度で加熱してもよい。加熱工程は、この温度を約30分〜約300分維持することも含んでいてもよく、この時間は、組立体の厚みに依存して選択されてもよい。
【0202】
減圧中、空気中、O
2、H
2、H
2/N
2中、または希ガス(たとえば、He、Ar、Kr、Xe、Rn、またはこれらの組み合わせ)中、約1200℃〜約1900℃(好ましくは、約1300℃〜約1800℃、またはさらに好ましくは約1350℃〜約1700℃)の範囲の温度で約1時間〜約20時間(好ましくは、約2時間〜約10時間)かけて組立体を焼結させてもよい。ある実施形態では、バインダー除去および焼結のプロセスを1工程で完結する。
【0203】
加熱工程中、組立体のひずみ(たとえば、ゆがみ、反り、湾曲など)を減らすために、カバープレートの間に組立体を挟んでもよい。カバープレートは、加熱工程中に加えられる温度より高い融点を有する材料を含んでいてもよい。さらに、カバープレートは、カバープレート全体に揮発した成分が移動することができるように、十分に多孔性であってもよい。一例として、カバープレートは、多孔性が約40%の二酸化ジルコニウムであってもよい。
【0204】
ある実施形態では、焼結またはバインダー除去の条件は、組立体中の任意の有機粒子を揮発させるのに有効な条件であってもよい。これにより、組立体中の有機粒子の大きさ、量、位置に対応して、組立体中に多孔性領域を得ることができる。ある実施形態では、別個の加熱工程中に有機粒子を揮発させてもよい。
【0205】
(発光装置および放射性セラミックを使用する方法)
ある実施形態は、光源と、光源から放射される光の少なくとも一部分を受け取るような構成の放射性セラミックとを含む発光装置を提供する。放射性セラミックは、たとえば、上に開示したいずれかのようなドーパントの濃度勾配を有するイットリウムアルミニウムガーネット領域を含んでいてもよい。
【0206】
光源は、ある実施形態では、青色の光を放射するような構成であってもよい。青色の光は、たとえば、ピーク光の波長が約360nm〜約500nmであってもよい。ある実施形態では、光源は、ピーク光の波長が約450nm〜約500nmの光を発する。ある実施形態は、半導体LEDである光源を含む。一例として、光源は、電源に接続したAlInGaN系単結晶半導体材料であってもよい。
【0207】
図8は、本明細書に開示する放射性セラミックを含んでいてもよい発光装置の一例である。サブマウント10には、光源15、たとえば、従来の基本的なLEDが備わっている。光源15は、光源15から発せられる光の少なくとも一部分を受け取る放射性層30に隣接している。任意の封止樹脂25は、光源15および放射性層30を覆うように配置されている。放射性層30は、本明細書に開示するいずれかの放射性セラミックを含んでいてもよい。
【0208】
ある実施形態では、発光装置は、第1の多孔性領域と第2の多孔性領域とを有する放射性セラミック(たとえば、
図8に示す放射性層30)を含み、第1の多孔性領域は、第2の多孔性領域よりも多孔性が大きい(たとえば、大きな平均孔径および/または大きな孔体積パーセント)。第2の多孔性領域は、たとえば、第1の多孔性領域と光源(たとえば、光源15)との間に配置されていてもよい。
【0209】
さらに、本明細書には、本明細書に開示したいずれかの放射性セラミックに青色の光をあてることを含む、光を発生させる方法が開示されている。青色の光は、たとえば、ピーク光の波長が約360nm〜約500nmであってもよい。ある実施形態では、青色の光は、ピーク光の波長が約450nm〜約500nmである。
【0210】
ある実施形態では、第1の多孔性領域と第2の多孔性領域とを有する放射性セラミック(たとえば、
図8に示す放射性層30)を含み、第1の多孔性領域は、第2の多孔性領域よりも多孔性が大きい(たとえば、大きな平均孔径および/または大きな孔体積パーセント)。第2の多孔性領域は、放射性セラミックの第1の表面と第1の多孔性領域の間に配置されていてもよい。この方法は、たとえば、放射性セラミックの第1の表面に青色の光をあてることを含んでいてもよい。
【実施例】
【0211】
以下の実施例に、さらなる実施形態をさらに詳細に開示するが、いかなる様式でも特許請求の範囲を限定することを意図していない。
【0212】
実施例1:積層したコンポジットのための非放射性層(非ドープホスト材料) 50mlの高純度A1
2O
3ボールミル用瓶を、Y
2O
3で安定化した直径3mmのZrO
2球55gで満たした。20mlのガラスバイアルに、0.153gの分散剤(Flowlen G−700、共栄社)、2mlのキシレン(Fisher Scientific、研究グレード)、2mlのエタノール(Fisher Scientific、試薬アルコール)を分散剤が完全に溶解するまで混合した。分散剤溶液および焼結助剤としてテトラエトキシシラン(0.038g、Fluka)をボールミル用瓶に加えた。
【0213】
BET表面積が4.6m
2/gのY
2O
3粉末(3.984g、99.99%、ロット番号N−YT4CP、Nippon Yttrium Company Ltd.)と、BET表面積が6.6m
2/gのA1
2O
3粉末(2.998g、99.99%、グレードAKP−30、Sumitomo Chemicals Company Ltd.)をボールミル用瓶に加えた。粉末の合計重量は7.0gであり、Y
2O
3とA1
2O
3の比率は、化学量論比率で3:5であった。Y
2O
3粉末、A1
2O
3粉末、分散剤、テトラエトキシシラン、キシレン、エタノールをボールミルによって24時間混合することによって、第1のスラリーを製造した。
【0214】
3.5gのポリ(ビニルブチラール−コ−ビニルアルコール−コ−酢酸ビニル)(Aldrich)、1.8gのベンジルn−ブチルフタレート(98%、Alfa Aesar)、1.8gのポリエチレングリコール(Mn=400、Aldrich)を12mlのキシレン(Fisher Scientific、研究グレード)および12mlのエタノール(Fisher Scientific、試薬アルコール)に溶解することによって、バインダーと可塑剤の溶液を調製した。第1のスラリーに上のバインダー溶液4gを加え、さらに24時間ミルで混合することによって、第2のスラリーを製造した。ボールミルによる混合が終了したら、第2のスラリーを、孔径0.05mmの金属ふるいフィルターにシリンジによって通した。スラリーを室温で攪拌しつつ、スラリー中の溶媒を蒸発させることによって、第2のスラリーの粘度を400センチポイズ(cP)に調節した。次いで、調整可能な膜塗布機(Paul N. Gardner Company,Inc.)を用い、成型速度30cm/分で、スラリーを離型基材(たとえば、シリコーンコーティングされたMylar(登録商標)担体基材(Tape Casting Warehouse) )の上でキャスト成型した。膜塗布機のブレードギャップを0.381mm(15mil)に設定した。キャスト成型したテープを周囲雰囲気で一晩乾燥させ、厚みが約100μmの未焼結シートを製造した。
【0215】
実施例2:積層したコンポジットのための非放射性層(Al
2Q
3材料)
非放射性層を実施例1にしたがって製造するが、ただし、A1
2O
3未焼結シートの調製について上に記載したY
2O
3およびA1
2O
3の粉末の代わりに、BET表面積が6.6m
2/gのA1
2O
3(5g、99.99%、グレードAKP−30、Sumitomo Chemicals Company Ltd.)を使用した。厚みが約100nmの未焼結シートを製造した。
【0216】
実施例3:放射性層のプラズマ積層体
プラズマによって製造した、イットリウムに対して1.0原子%のセリウムを含み、BET表面積が約20m
2/gのアモルファスイットリウムアルミニウムオキシド(化学量論量Y:A1:O=3:5:12)の粉末(5.2g)を、高純度アルミナ燃焼皿に加え、その後、管状炉(MTI GSL−1600)で昇温速度3〜5℃/分で1350℃まで加熱し、空気中または3% H
2/97% N
2中で2時間アニーリングした。次いで、速度5℃/分で室温まで冷却した。アニーリング後に、BET表面積が4.6m
2/gの黄色粉末を得た。
【0217】
50mlの高純度A1
2O
3ボールミル用瓶を、Y
2O
3で安定化した直径3mmのZrO
2球24gで満たした。20mlのガラスバイアルに、0.084gの分散剤(Flowlen G−700、共栄社)、2mlのキシレン(Fisher Scientific、研究グレード)、2mlのエタノール(Fisher Scientific、試薬アルコール)を分散剤が完全に溶解するまで混合した。分散剤溶液および焼結助剤としてテトラエトキシシラン(0.045g、99.0%純度、Fluka)をボールミル用瓶に加えた。BET表面積が4.6m
2/gのアニーリングしたプラズマYAG粉末(3.0g)を上のボールミル用瓶に加えた。YAG粉末、分散剤、テトラエトキシシラン、キシレン、エタノールをボールミルによって24時間混合することによって、第1のスラリーを製造した。
【0218】
5.25gのポリ(ビニルブチラール−コ−ビニルアルコール−コ−酢酸ビニル)(Aldrich)、2.6gのベンジルn−ブチルフタレート(98%、Alfa Aesar)、2.6gのポリエチレングリコール(Mn=400、Aldrich)を18mlのキシレン(Fisher Scientific、研究グレード)および18mlのエタノール(Fisher Scientific、試薬アルコール)に溶解することによって、バインダーと可塑剤の溶液を調製した。第1のスラリーに上のバインダー溶液1.2gを加え、さらに24時間ミルで混合することによって、第2のスラリーを製造した。ボールミルによる混合が終了したら、第2のスラリーを、孔径0.05mmの金属ふるいフィルターにシリンジによって通した。スラリーを室温で攪拌しつつ、スラリー中の溶媒を蒸発させることによって、第2のスラリーの粘度を400センチポイズ(cP)に調節した。次いで、調整可能な膜塗布機(Paul N. Gardner Company,Inc.)を用い、成型速度30cm/分で、スラリーを離型基材(たとえば、シリコーンコーティングされたMylar(登録商標)担体基材(Tape Casting Warehouse) )の上でキャスト成型した。膜塗布機のブレードギャップを0.127mm(5mil)に設定した。キャスト成型したテープを周囲雰囲気で一晩乾燥させ、厚みが約40μmの黄色未焼結シートを製造した。
【0219】
実施例4:TOF−SIMS(飛行時間型二次イオン質量分析)において校正曲線を設定するためのYAGセラミック
校正曲線を設定するための標準サンプルとして、実施例3に記載したのと同じ処理手順に従って、YAG:Ceセラミックを製造するためのプラズマYAG未焼結シートを調製した。調製した未焼結シートには、それぞれ0.5原子%、1.0原子%、1.5原子%のCeが含まれていた。実施例1に記載したのと同じ処理手順を用いた固相反応によってYAG未焼結シートを調製した。調製した未焼結シートには、Ceが含まれていなかった。
【0220】
実施例5:積層コンポジット
非放射性(たとえば、非ドープホスト材料)の未焼結シートは、Y
2O
3とAl
2O
3の粉末を原子比率3:5で含み、それぞれのシートの厚みは約100μmであった。放射性未焼結シートは、約1.0原子%のCeを含み、前アニーリングしておいたプラズマ合成したYAG:Ce粉末を含む(厚み40μm)。Al
2O
3未焼結シートは、厚み100μmのAl
2O
3粉末を含む。これらの未焼結シートをレーザーカッターによって直径約13mmの円形に切断した。非放射性、放射性、Al
2O
3の切断片の数を変えることによって、表1に記載するようにいくつかの積層コンポジットを構築した。
【表1】
【0221】
表1において、[2−1−2]は、1つの放射性層のそれぞれの側面への2つの非放射性層の積層を指す。一方、[2−3−2]は、3×40μmの放射性層のコンポジットのそれぞれの側面への2つの非放射性層の積層を指す。
【0222】
打ち抜いた円形の非ドープ未焼結シートおよびプラズマYAG:Ce未焼結シートのそれぞれの試験片を、鏡面研磨した表面を有する円形のダイの間に置き、ホットプレート上で80℃まで加熱し、次いで、一軸方向の圧力が5メートルトンの水圧プレスで圧縮し、この圧力に5分間維持した。放射性層および非放射性層の積層コンポジットをこのようにして製造した。
【0223】
バインダー除去のために、積層した未焼結シートをZrO
2カバープレート(厚み1mm、グレード42510−X、ESL Electroscience Inc.)に挟み、厚みが5mmのA1
2O
3プレートの上に置き、次いで、管状炉中、空気中で昇温速度0.5℃/分で800℃まで加熱し、2時間維持して未焼結シートから有機成分を除去した。
【0224】
バインダー除去後、組立体を20Torr、加熱速度1℃/分、1500℃で5時間アニーリングし、非放射性層中のY−Al−Oの非ガーネット相(限定されないが、アモルファスイットリウムオキシド、YAP、YAMまたはY
2O
3およびA1
2O
3を含む)を、イットリウムアルミニウムガーネット(YAG)相に変換し、最終的なYAGの粒径を大きくした。
【0225】
第1のアニーリングの後、10
−3Torrの減圧状態、約1700℃で5時間、加熱速度5℃/分で組立体をさらに焼結し、冷却速度10℃/分で室温まで冷却し、厚みが約0.4mmの半透明YAGセラミックシートを製造した。炉中、20Torr、1400℃で2時間かけ、加熱速度10℃/分、冷却速度20℃/分で褐色がかった焼結セラミックシートを再び酸化させた。焼結した積層コンポジットは、800nmで70%より大きな透過率を示した。ピーク光の波長が455nmの青色LEDで照射すると、放射性層と非放射性層との間に明確な界面を観察することはできず、このことは、ドープされたプラズマYAG層から非ドープYAG層へのセリウムの顕著な拡散が起こったことを示している。
【0226】
実施例6:積層したコンポジットのIQE測定結果
Otsuka Electronics MCPD 7000マルチチャネル光検出システム(Osaka、JPN)を、必要な光学要素(たとえば、積分球、光源、モノクロメーター、光ファイバー、サンプルホルダー)とともに以下に記載するように用い、IQE測定を行った。
【0227】
上に記載したように構築した直径が約11mmのYAG:Ceリン光体セラミックプレートを、屈折率が約1.45のアクリルレンズを備え、ピーク波長が455nmの発光ダイオード(LED)の上に置いた。YAG:Ceを含むLEDを積分球の中に設置した。YAG:CeセラミックプレートにLEDを照射し、青色LEDおよびYAG:Ceセラミックの光の放射をそれぞれ記録した。次いで、YAG:CeセラミックプレートをLEDから取り出し、次いで、アクリルレンズを含む青色LEDの光を測定した。
【0228】
図9に示されるように青色LEDのみの光と、青色LED/YAG:Ceの組み合わせの光の差を積分することによって、IQEを計算した。積層コンポジットサンプルのIQEは、90%(厚みが200μmの厚いYAG非ドープ層の間に厚みが40μmのYAG:Ce層(1.0原子%Ce)を含む、プラズマによって生成したYAG)、85%(厚みが200umのYAG非ドープ層の間に厚みが120μmのYAG:Ce層(1重量%Ce)を含む、プラズマによって生成したYAG)、55%(厚みが200μmのA1
2O
3非ドープ層の間に厚みが40μmの厚いYAG:Ce層(1重量%Ce)を含む、プラズマによって生成したYAG)であると決定された。
【0229】
実施例7:TOF−SIMS分析
実施例5のサンプル1から得た焼結セラミックをTOF−SIMS(飛行時間型二次イオン質量分析)によって分析し、結果を
図10に示す。ここからわかるように、ほぼA点(放射性層と非放射性層の界面)から少なくとも約100μmの非放射性層へと広がるCeのテーリング量によって示されるように、Ceが非ドープ層へと拡散した。Ce濃度は、約0.45単位まで減った。
【0230】
実施例5のサンプル2から得た焼結セラミックもTOF−SIMSによって分析した。
図11で示されているように、120μm/YAG(0%Ce)を200μm(μmm)のYAG非ドープ層と組み合わせると、Ceの拡散が減った。これにより、焼結後に本質的に変化しない最大濃度(たとえば、約10.0単位)を得た。
【0231】
比較として、実施例5のサンプル3から得た焼結セラミックもTOF−SIMSによって分析した。
図12で示されるように、A1
2O
3層を使用すると、Ceの拡散が実質的に遮断され、ドーパントを実質的に含まない非放射性層が得られた。さらに、焼結後に最大ドーパント濃度は実質的に同じままであった(たとえば、約10.0単位)。
【0232】
実施例8
16種類の異なる組立体を調製し、実施例1、3、5にしたがって焼結させた。組立体は、厚みが約200μmの2枚の非ドープ層で挟まれたドープ層を含んでいた(それぞれの側面に2つの100μmシートが積層されていた)。ドープ層は、厚みが約30〜約160μmであり、濃度が0.2%〜約1.25%Ceの範囲であった。それぞれのコンポジットタブレットのIQEを上の実施例5に記載するように決定した。結果を
図13に示す。
【0233】
実施例9
9種類の異なる組立体を調製し、実施例1、3、5にしたがって焼結させた。組立体は、厚みが約200μmの2枚の非ドープ層で挟まれたドープ層を含んでいた(それぞれの側面に2つの100μmシートが積層されていた)。ドープ層は、厚みが約20〜約50μmであり、濃度が1.25%〜約2.0%Ceの範囲であった。それぞれのコンポジットタブレットのIQEを上の実施例5に記載するように決定した。結果を
図14に示す。
図15は、Ce濃度の関数としてプロットしたIQEを示す。この図は、濃度を2.0原子%まであげたときにIQEの増加が平坦状態になることを示す。
【0234】
実施例10
非放射性(たとえば、非ドープ)の未焼結シートは、Y
2O
3とAl
2O
3の粉末を原子比率3:5で含み、それぞれのシートの厚みは約100μmであった。放射性未焼結シートは、約2.0原子%のCeを含み、前アニーリングしておいたプラズマ合成したYAG:Ce粉末を含む(厚み37μm)。非放射性の2つの未焼結シート(200μm)を放射性層のそれぞれの側に置くことによって、未焼結シートの積層体を構築した。これらの未焼結シートをレーザーカッターによって直径約13mmの円形に切断した。比較サンプルにおいて、
図16に示されるように、それぞれの側面に1.0原子%のCeを含むプラズマYAG:Ce未焼結シートと、0.5原子%のCeを含むプラズマYAG未焼結シートとを含む放射性層を含むYAG:Ce積層体を構築した。ドープ層のCe濃度はほぼ同じであり、一方、それぞれの構造のCe濃度勾配は異なる。アニーリングおよび評価について上に記載した手順にしたがって、IQE値を得て、
図17に示した。050と表示されたサンプルは0.93のIQEを示し、一方、051と表示されたサンプルは、0.71のIQEを示した。この差は、ドーパントの濃度勾配がIQEに影響を及ぼすことを示す。Ce濃度が高く、薄い放射性層は、濃度を下げることなく、拡散中に高いIQEを達成するのに望ましいようである。
【0235】
実施例11
非放射性(たとえば、非ドープ)の未焼結シートは、Y
2O
3とAl
2O
3の粉末を原子比率3:5で含み、それぞれの厚みが約100μmのシートを実施例1に記載されるように調製した。サンプル5〜10において、放射性未焼結シートは、約0.5原子%のCe(厚み37μm)、1.5原子%のCe(厚み28μm)、2.0原子%のCe(厚み23μm)、0.2原子%のCe(厚み160μm)、1.25原子%のCe(厚み100μm)、4.0原子%のCe(厚み16μm)を含む前アニーリングしておいたプラズマ合成したYAG:Ce粉末を実施例3に記載したように調製したが、ただし、望ましい原子%を得るためにそれぞれ望ましいCe量を使用し、望ましい厚みの未焼結(preen)シートを得るためにそれぞれのブレードギャップを選択した。たとえば、37μmの場合0.127mm(5mil)、28μmの場合0.127mm(5mil)、23μmの場合0.127mm(5mil)、40μmの場合0.127mm(5mil)、160μmの場合4x40umの積み重ね、50μmの場合0.254mm(10mil)、100μmの場合2x50μmの積み重ね、16μmの場合0.1016mm(4mil)。
【0236】
サンプル11では、約1.0原子%のCeを含む放射性未焼結シート(厚み50μm)を実施例3に記載したように調製したが、ただし、望ましい原子%を得るためにそれぞれ望ましいCe量を使用し、望ましい厚みの未焼結シートを得るためにそれぞれのブレードギャップを選択した。たとえば、50μmの場合0.254mm(10mil)、実施例1に記載するようにY
2O
3およびA1
2O
3粉末を含む(BET表面積が4.6m
2/gのY
2O
3粉末[3.984g、99.99%、ロット番号N−YT4CP、Nippon Yttrium Company Ltd.]と、BET表面積が6.6m
2/gのA1
2O
3粉末[2.998g、99.99%、グレードAKP−30、Sumitomo Chemicals Company Ltd.])。
【0237】
図6に示すように、非放射性の2つの未焼結シート(200μm)を放射性層のそれぞれの側に置くことによって、未焼結シートの積層体を構築した。これらの未焼結シートをレーザーカッターによって直径約13mmの円形に切断した。アニーリングのために実施例4に記載した手順にしたがって、ただし、空気中、有機構成要素を除去するために800℃でアニーリングし、減圧下1700℃で約5時間焼結させ、評価し、表2に示すようなIQE値を得た。
【表2】
【0238】
実施例12
実施例11で調製したサンプル5〜10も分析し、飛行時間型二次イオン質量分析プロフィールを得た。
【0239】
YAG:Ceセラミックプレートをエポキシ樹脂で包んだ。包んだエポキシを硬化させた後、セラミックサンプルを機械的に研磨した。サンプルの表面汚染物質をビスマスイオンスパッタリングによって除去した。
【0240】
TOF−SIMS 5 (ION−TOF GmbH、ミュンスター、ドイツ)を用い、TOF−SIMS分析を行った。セラミックサンプルの表面に、25kVで加速したパルスビスマス一次イオン(Bi+)を照射した。質量スペクトルを得るために、リフレクトロン型飛行時間質量分析計によってサンプルから放射された二次陽イオンを集め、加速後のエネルギー10kVのマイクロチャネルプレート検出器によって検出した。分析モードで電荷を中和するために、低エネルギーエレクトロンフラッドガン(low−energy electron flood gun)を利用した。
【0241】
イオン画像(A1+、Ce+、Y+など)を最初に調製した。次いで、セラミックの厚み方向に沿ったそれぞれのイオンのプロフィール曲線をイオン画像から再構築した。シグナル強度とイオン濃度の関係をあらわす校正曲線を作成した。
図18に示すように、既知のイオン濃度を有する複数の標準サンプルを用い、TOF−SIMS装置のシグナル強度をプロットすることによって校正曲線を確立した。それぞれのYAG:Ceセラミックプレートの厚み方向に沿ったCe+イオンの実際の原子パーセントをこの校正曲線を用いて最終的に分析した。
【0242】
図19〜24は、実施例11のサンプル5〜10のそれぞれのTOF−SIMSプロフィールを示す。サンプル8およびサンプル9のCe+のTOF−SIMSプロフィールは、サンプル5〜7のプロフィールとは明瞭に異なっている。
【0243】
実施例13:ポリマービーズを含むドープ層
50mlの高純度A1
2O
3ボールミル用瓶を、Y
2O
3で安定化した直径3mmのZrO
2球55gで満たした。20mlのガラスバイアルに、0.153gの分散剤(Flowlen G−700、共栄社)、2mlのキシレン(Fisher Scientific、研究グレード)、2mlのエタノール(Fisher Scientific、試薬アルコール)を分散剤が完全に溶解するまで混合した。分散剤溶液および焼結助剤としてテトラエトキシシラン(0.038g、Fluka)をボールミル用瓶に加えた。
【0244】
BET表面積が4.6m
2/gのY
2O
3粉末(3.94g、99.99%、ロット番号N−YT4CP、Nippon Yttrium Company Ltd.)と、BET表面積が6.6m
2/gのA1
2O
3粉末(3.00g、99.99%、グレードAKP−30、Sumitomo Chemicals Company Ltd.)と、Ce(NO
3)
36H
2O(0.153g、99.99%、Aldrich)とをボールミル用瓶に加えた。粉末の合計重量は7.0gであり、Y
2O
3とA1
2O
3の比率は、化学量論比率で3:5であった。Y
2O
3粉末、A1
2O
3粉末、Ce(NO
3)
36H
2O、分散剤、テトラエトキシシラン、キシレン、エタノールをボールミルによって24時間混合することによって、第1のスラリーを製造した。
【0245】
3.5gのポリ(ビニルブチラール−コ−ビニルアルコール−コ−酢酸ビニル)(Aldrich)、1.8gのベンジル n−ブチルフタレート(98%、Alfa Aesar)、1.8gのポリエチレングリコール(Mn=400、Aldrich)を12mlのキシレン(Fisher Scientific、研究グレード)および12mlのエタノール(Fisher Scientific、試薬アルコール)に溶解することによって、バインダーと可塑剤の溶液を調製した。第1のスラリーに上のバインダー溶液4gを加え、さらに24時間ミルで混合することによって、第2のスラリーを製造した。ボールミルによる混合が終了したら、第2のスラリーを、孔径0.05mmの金属ふるいフィルターにシリンジによって通した。
【0246】
50mlの高純度A1
2O
3ボールミル用瓶を、Y
2O
3で安定化した直径3mmのZrO
2球15gで満たした。10gの第2のスラリー、0.081gのポリマー系ビーズ(1μm、架橋したポリメタクリル酸メチル樹脂、Nippon Shokubai、Epostar MA1001)を上のA1
2O
3ボールミル用瓶に入れ、次いで、ミルによって4時間混合した。スラリーを室温で攪拌しつつ、スラリー中の溶媒を蒸発させることによって、スラリーの粘度を400センチポイズ(cP)に調節した。次いで、調整可能な膜塗布機(Paul N. Gardner Company,Inc.)を用い、成型速度30cm/分で、スラリーを離型基材(たとえば、シリコーンコーティングされたMylar(登録商標)担体基材(Tape Casting Warehouse))の上でキャスト成型した。膜塗布機のブレードギャップを0.127mm(5mil)に設定した。キャスト成型したテープを周囲雰囲気で一晩乾燥させ、厚みが約50μmの未焼結シートを製造した。
【0247】
実施例14:ポリマービーズを含む非ドープ層
50mlの高純度A1
2O
3ボールミル用瓶を、Y
2O
3で安定化した直径3mmのZrO
2球55gで満たした。20mlのガラスバイアルに、0.153gの分散剤(Flowlen G−700、共栄社)、2mlのキシレン(Fisher Scientific、研究グレード)、2mlのエタノール(Fisher Scientific、試薬アルコール)を分散剤が完全に溶解するまで混合した。分散剤溶液および焼結助剤としてテトラエトキシシラン(0.038g、Fluka)をボールミル用瓶に加えた。
【0248】
BET表面積が4.6m
2/gのY
2O
3粉末(3.94g、99.99%、ロット番号N−YT4CP、Nippon Yttrium Company Ltd.)と、BET表面積が6.6m
2/gのA1
2O
3粉末(3.00g、99.99%、グレードAKP−30、Sumitomo Chemicals Company Ltd.)をボールミル用瓶に加えた。粉末の合計重量は7.0gであり、Y
2O
3とA1
2O
3の比率は、化学量論比率で3:5であった。Y
2O
3粉末、A1
2O
3粉末、テトラエトキシシラン、キシレン、エタノールをボールミルによって24時間混合することによって、第1のスラリーを製造した。
【0249】
3.5gのポリ(ビニルブチラール−コ−ビニルアルコール−コ−酢酸ビニル)(Aldrich)、1.8gのベンジル n−ブチルフタレート(98%、Alfa Aesar)、1.8gのポリエチレングリコール(Mn=400、Aldrich)を12mlのキシレン(Fisher Scientific、研究グレード)および12mlのエタノール(Fisher Scientific、試薬アルコール)に溶解することによって、バインダーと可塑剤の溶液を調製した。バインダー溶液4gを第1のスラリーに加え、次いでさらに24時間混合することによって第2のスラリーを製造した。ボールミルによる混合が終了したら、第2のスラリーを、孔径0.05mmの金属ふるいフィルターにシリンジによって通した。
【0250】
50mlの高純度A1
2O
3ボールミル用瓶を、Y
2O
3で安定化した直径3mmのZrO
2球15gで満たした。第2のスラリー10gと、ポリマー系ビーズ(4μm、架橋したポリメタクリル酸メチル樹脂、日本触媒、Epostar MA1004)2.284gをA1
2O
3ボールミル用瓶に加え、次いで4分間混合した。スラリーを室温で攪拌しつつ、スラリー中の溶媒を蒸発させることによって、スラリーの粘度を400センチポイズ(cP)に調節した。次いで、調整可能な膜塗布機(Paul N. Gardner Company,Inc.)を用い、成型速度30cm/分で、スラリーを離型基材(たとえば、シリコーンコーティングされたMylar(登録商標)担体基材(Tape Casting Warehouse) )の上でキャスト成型した。膜塗布機のブレードギャップを0.101mm(4mil)に設定した。キャスト成型したテープを周囲雰囲気で一晩乾燥させ、厚みが約40μmの黄色未焼結シートを製造した。
【0251】
実施例15:多孔性層を含む放射性セラミック
Y
2O
3とA1
2O
3粉末の粉末を原子比率3:5で含む2種類の非ドープ層
(たとえば、非ドープホスト材料)であり、片方は厚みが100μmであってポリマービーズを含まず、もう一方は厚みが約40μmであり、60vol%の4μmのポリマービーズを含む非ドープ層を、フォトルミネッセンスを分散させることによって色度の角度依存性を高める目的で、ポリマービーズを含まないドープ層と非ドープ層の間に挿入した。ドープ層は、導波路効果によってフォトルミネッセンスのアウトカップリングによる消失を減らすために、約1.0原子%のCe(厚み50μm)を含むY
2O
3とAl
2O
3と、粒径が1μmの5vol%ポリマービーズとを含んでいた。これらの層をレーザーカッターによって直径約13mmの円形に切断した。対称形の形状の積層コンポジットを表3に記載するように構築した。
【表3】
【0252】
打ち抜いた円形の非ドープ未焼結シートおよびドープした未焼結シートのそれぞれの試験片を、鏡面研磨した表面を有する円形のダイの間に置き、ホットプレート上で80℃まで加熱し、次いで、一軸方向の圧力が5メートルトンの水圧プレスで圧縮し、この圧力に5分間維持した。ドープ層および非ドープ層の積層コンポジットをこのようにして製造した。
【0253】
バインダー除去のために、組立体をZrO
2カバープレート(厚み1mm、グレード42510−X、ESL Electro science Inc.)の間に挟み、厚みが5mmのA1
2O
3プレートの上に置き、次いで、管状炉中、空気中で昇温速度0.5℃/分で800℃まで加熱し、2時間維持して未焼結シートから有機成分を除去した。このプロセスでは、ポリマー成分を燃焼することによって、ポリマービーズを含む層の一部に多孔性構造が生成した。
【0254】
バインダー除去後、組立体を20Torr、加熱速度1℃/分、1500℃で5時間アニーリングし、非放射性層中のY−Al−Oの非ガーネット相(限定されないが、アモルファスイットリウムオキシド、YAP、YAMまたはY
2O
3およびA1
2O
3を含む)を、イットリウムアルミニウムガーネット(YAG)相に変換し、最終的なYAGの粒径を大きくした。
【0255】
第1のアニーリングの後、10
−3Torrの減圧状態、約1700℃で5時間、加熱速度5℃/分で組立体をさらに焼結し、冷却速度10℃/分で室温まで冷却し、厚みが約0.4mmの半透明YAGセラミックシートを製造した。炉中、20Torr、1400℃で2時間かけ、加熱速度10℃/分、冷却速度20℃/分で褐色がかった焼結セラミックシートを再び酸化させた。焼結した積層コンポジットは、800nmで50%より大きな透過率を示した。ピーク光の波長が455nmの青色LEDで照射すると、放射性層と非放射性層との間に明確な界面を観察することはできず、このことは、ドープされたプラズマYAG層から非ドープYAG層へのセリウムの顕著な拡散が起こったことを示している。
【0256】
実施例16:積層したコンポジットのIQEおよび角度依存性の測定結果
実施例6に記載した装置と設定を使用し、IQEの測定を行った。実施例15にしたがって製造した多孔性層を含む積層したコンポジットサンプルのIQEは90%であった。
【0257】
YAGリン光体セラミックの色度座標の角度依存性を測定するために、
図26に示す設定を使用した。この設定は、フォトルミネッセンスシグナルを集めるために、高感度マルチチャネル光検出器と、積分球(OTSUKA ELECTRONICS、Osaka Japan)を含む。360度回転するプラットフォームと翻訳ステージによって、積分球に対するフォトルミネッセンス源の角度を0〜360度まで変えることができた。リン光体セラミックを1.0mm×1.0mmの四角に切り、シリコーン樹脂によって青色LED(Cree Inc.)に接続し、周囲雰囲気下、150℃で1時間硬化させ、LEDモジュールを形成した。LEDモジュールを、回転プラットフォームを接続したサンプルホルダーに取り付けた。角度依存性を測定するために、DC電圧3.0V、電流0.1AをLEDモジュールに印加した。0度での開始は、YAGセラミックが積分球に垂直に面するような位置であると定義され、YAGセラミックのフォトルミネッセンスを右回転および左回転で10度回転するごとに90度まで記録し、この角度は、積分球に面するYAGセラミックの縁を意味する。
【0258】
図27に示すような角度に対して色度座標をプロットすることによって、YAGセラミックの角度依存性を得た。四角のデータ点は、実施例15にしたがって調製した放射性セラミックについて測定したものであり、一方、丸のデータ点は、実施例11にしたがって調製した放射性セラミックについて測定したものである(すなわち、多孔性領域を含まない)。
図27から明らかなように、放射性セラミックに多孔性領域が含まれると、発光性の等方性が向上する。