(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6096171
(24)【登録日】2017年2月24日
(45)【発行日】2017年3月15日
(54)【発明の名称】高付加価値有機分富化無機肥料
(51)【国際特許分類】
C05F 9/00 20060101AFI20170306BHJP
C05F 5/00 20060101ALI20170306BHJP
C05F 7/00 20060101ALI20170306BHJP
B09B 3/00 20060101ALI20170306BHJP
【FI】
C05F9/00ZAB
C05F5/00
C05F7/00
B09B3/00 Z
B09B3/00 301Z
B09B3/00 304Z
【請求項の数】23
【全頁数】33
(21)【出願番号】特願2014-502740(P2014-502740)
(86)(22)【出願日】2012年3月28日
(65)【公表番号】特表2014-518828(P2014-518828A)
(43)【公表日】2014年8月7日
(86)【国際出願番号】US2012030895
(87)【国際公開番号】WO2012135317
(87)【国際公開日】20121004
【審査請求日】2014年11月4日
(31)【優先権主張番号】61/615,258
(32)【優先日】2012年3月24日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/468,157
(32)【優先日】2011年3月28日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/569,007
(32)【優先日】2011年12月9日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】513243882
【氏名又は名称】アヌビア・プラント・ニュートリエンツ・ホールディングス・エル・エル・シー
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ダームス,ゲイリー・エル
(72)【発明者】
【氏名】カー,ジエイムズ・ピー
(72)【発明者】
【氏名】バーナム,ジエフリー・シー
(72)【発明者】
【氏名】ジヤレツト,バリー・アール
【審査官】
西澤 龍彦
(56)【参考文献】
【文献】
特表2010−519019(JP,A)
【文献】
特表2007−500125(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C05B 1/00− 21/00
C05C 1/00− 13/00
C05D 1/00− 11/00
C05F 1/00− 17/02
C05G 1/00− 5/00
B09B 3/00
C02F 11/00− 11/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも10パーセントの固形分を有するバイオソリッド含有有機物質を準備すること、;
臭気防除剤を該有機物質に添加し、混合物にすること;
酸を該混合物に0〜60psigの第1の圧力および66℃から127℃の第1の温度下で第1の期間添加し、液化混合物を形成すること、ここで液化混合物が4,000cP以下の粘度であり;
アンモニアを該液化混合物に第2の圧力および第2の温度下で第2の期間添加すること、ここでアンモニアの添加後、液化混合物が1,000cP以下の粘度であり;ならびに
該液化混合物を加工して肥料を形成すること
を含む、肥料の製造方法。
【請求項2】
バイオソリッドが、都市バイオソリッド、熱乾燥バイオソリッド、製薬発酵廃棄物、有機生成物の微生物による消化物、食料品、食品副産物、動物の糞尿、消化された動物の糞尿、有機バイオソリッド、微生物含有バイオソリッド、およびこの組合せのうちの1種類以上を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
有機物質にさらにプラスチックおよび毛が含まれており、加工前にいずれかの除去が必要とされない、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
有機物質を15から40パーセントの固形分まで脱水または水和する、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
臭気防除剤が、鉄酸カルシウム、鉄酸ナトリウム、鉄酸カリウム、硫酸第一鉄七水和物、ローゼン石、緑礬、塩化第二鉄、硫酸第一鉄、硫酸第一鉄一水和物、過酸化水素、オゾン、ならびにこの塩、誘導体および組合せからなる群より選択される、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
第1の温度が66℃から127℃であり、ならびに第1の期間が3分間から30分間である、または、
第1の温度が93℃から121℃であり、ならびに第1の期間が5分間から10分間であり、
第2の温度が121℃から199℃であり、第2の期間が1分間から30分間であり、ならびに圧力槽内の圧力が50から200psigに維持される、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
酸がリン酸、硫酸またはこの組合せである、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
アンモニアを、液化混合物に添加する前に圧力下で加熱してガスを形成する、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
加工が、混合物を98パーセントより多い固形分まで乾燥することを含み、さらに、加工中に硬化剤を添加することを含み、加工を造粒機で行い、顆粒を形成する、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
各工程を連続過程で行う、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
さらに、加工によって生じる粉塵を収集する防塵システムを含む、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
所定の含有量の窒素、リン酸分およびカリウムの1種類以上を有する肥料の製造方法であって、
少なくとも10パーセントの固形分を有するバイオソリッド含有有機物質を準備すること、;
臭気防除剤を該有機物質に添加し、混合物にすること;
該混合物を0〜60psigの第1の圧力下で66℃から127℃の第1の温度まで第1の期間加熱すること;
ある量の所定の酸を該加熱混合物に添加し、これにより発熱反応を生じさせ、液化混合物を形成すること、ここで液化混合物が4,000cP以下の粘度であり;
該有機物質の組成により決定される所定量のアンモニアを該液化混合物に第2の圧力下で添加し、該混合物を第2の温度まで第2の期間加熱すること、ここでアンモニアの添加後、液化混合物が1,000cP以下の粘度であり;ならびに
該液化混合物を加工し、所定の含有量の窒素、リン酸分およびカリウムの1種類以上を有する肥料を形成すること
を含む、方法。
【請求項13】
さらに、加工中に1種類以上の植物栄養素および/または1種類以上の硬化剤を添加することを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
肥料の製造のためのシステムであって、
バイオソリッドを臭気防除剤とブレンドする混合機;
該ブレンドバイオソリッドを酸と混合し、ある期間、66℃から127℃の第1の所定温度まで加熱および0〜60psigの第1の所定圧力まで加圧し、液状物を形成する、第1の反応槽または圧力槽、ここで液化混合物が4,000cP以下の粘度であり;
該液状物をアンモニア供給源からのアンモニアと混合し、第2の期間、第2の所定温度まで加熱および第2の所定圧力まで加圧する第2の反応槽または圧力槽、ここでアンモニアの添加後、液化混合物が1,000cP以下の粘度であり;ならびに
該アンモニア添加された液状物を予備形成顆粒と混合し、加熱し、肥料の乾燥顆粒を形成する造粒機、
を備えている、システム。
【請求項15】
アンモニア供給源が圧力下の液化またはガス状のアンモニアである、請求項14に記載のシステム。
【請求項16】
さらに、肥料顆粒を分粒するためのスクリーニング過程、ならびに貯蔵前に温度を下げるためおよび粉塵を防除するための1つ以上の冷却およびコーティング装置を備えている、請求項14または15に記載のシステム。
【請求項17】
さらに、
バイオソリッドを混合機に輸送するためのコンベアおよびブレンドバイオソリッドを第1の反応槽または圧力槽に輸送するための別のコンベア;
酸性化されたバイオソリッドを第1の反応槽または圧力槽から第2の反応槽または圧力槽に、アンモニアを第2の反応槽または圧力槽内に輸送し;ならびにアンモニア添加された液状物を造粒機に分散させる加圧配管系
を備えており、
さらに、所定サイズの顆粒を選別するための1つ以上のスクリーン、ならびに分粒された顆粒を冷却および研磨するための回転式冷却器を備えており、
さらに、造粒機からの粉塵を収集してリサイクルさせる防塵装置を備えている、請求項14から16のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項18】
さらに水回収システムを備えており、これにより、加工中にバイオソリッドから抽出された水が回収されてリサイクルされる、請求項14から17のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項19】
製品の製造方法であって、
少なくとも10パーセントの固形分を有する有機物質を準備すること、;
酸を該有機物質に0〜60psigの第1の圧力および66℃から127℃の第1の温度下で第1の期間添加し、液化混合物を形成すること、ここで液化混合物が4,000cP以下の粘度であり;
アンモニアを該液化混合物に第2の圧力および第2の温度下で第2の期間添加すること、ここでアンモニアの添加後、液化混合物が1,000cP以下の粘度であり;ならびに
該液化混合物を加工し、製品を形成すること
を含み、
製品が肥料である、方法。
【請求項20】
有機物質が植物、真菌、藻類または細菌系物質である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
有機物質中に存在する毒性物質を加水分解するか、または無毒性もしくは不活化状態にする、請求項19または20に記載の方法。
【請求項22】
第1圧力が20から60psigであり、第1の温度が66℃から127℃であり、第1期間が3分間から30分間であり、
第2の圧力が50から200psigであり、第2の温度が121℃から199℃であり、第2期間が1分間から30分間である、請求項19から21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
肥料が適用の2週間以内に40から60%の窒素を、および残りの窒素のほとんどを3から6ヶ月の期間にわたって土壌中に放出する、請求項19から22のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、肥料を製造するための方法、システムおよび方法ならびにこの方法によって製造される肥料製品に関する。また、特に、本発明は、窒素、リン酸分および/またはカリウムを所定の濃度で有するまたは存在しない肥料の製造に関する。
【背景技術】
【0002】
汚泥は現在、米国において、乾燥重量測定で毎年800万トンを超える速度で生じており、または国民1人あたりほぼ約64ポンド(乾燥重量)のバイオソリッドを生成していると推定されている。汚泥という用語はバイオソリッドという用語に取って代わられつつあり、これには、あらゆる形態の都市廃棄物、例えば、家庭下水(domestic septage)、農場および工場の有機廃棄物(収集されるか、または廃水処理されることになる。)、下水管の排水、製薬廃棄物、例えば、発酵および加工廃棄物、微生物による消化物、食品廃棄物および食品副産物、動物の糞尿、消化された動物の糞尿、有機汚泥、生物体および微生物など、ならびにこのあらゆる組合せが包含される。ほとんどすべての工業廃棄物は、都市汚泥になってしまうか、または埋立地に、または一般的であろうが特定の業者で処分される。想像され得ようが、あらゆる形態の廃棄物質、例えば、生物学的活性分子、例えば、医薬品ならびにこの代謝産物、紙、プラスチック、金属およびほぼあらゆる形態のごみが都市汚泥に行き着くことになり得、典型的にはそうなっている。
【0003】
バイオソリッドは、典型的には、自治体によって、下水管ならびに他の型の住居用および工業用給排水配管系などの既存のインフラを通して収集される。収集された物質は、廃水処理プラントと称される1つ以上の中心施設に送られる。このようなプラントでは、水が固形物から分離され、精製手段を経て再生のために送られる。固形物は、焼却されるか、または埋設のためにトラックで、もしくは海洋への投棄のために船で輸送されるかのいずれかである。焼却(「burning」または「incineration」)は、未加工バイオソリッドの危険性の認識のため、一部においてより一般的になってきている。あらゆるバイオソリッドにおいて、有害な化学物質だけでなく生体活性化合物および病原体が存在することが想定される。作業者および一般市民の両方の安全性のためにバイオソリッドの取り扱いを厳格に規制する連邦政府、州および地方の規定が存在している。しかしながら、焼却であれ埋設であれ、かかる手段は非常に非効率的であり、極めて費用がかかる。
【0004】
焼却によりバイオソリッド中に存在する有害物質のほとんどが破壊されるが、環境に対するダメージにおける費用は常に甚大である。都市廃棄物を処理するための焼却炉が特別に建設されている。このような焼却炉では大量の汚染排煙が発生し、施設周辺の数百平方マイル内の空気を汚している。放出されるこの排煙には、バイオソリッド中に存在していたいろいろな汚染物質、例えば、金属および他の不燃性成分が含有されている。これらの汚染物質は田畑や水域に沈積し、周辺の植物および場合によっては遠く離れた風下の植物に生態学的悪夢をもたらす。焼却によってエネルギーが生成されるが、エネルギー生成は非常に非効率的であり、費用効果を高くするためには大量のバイオソリッドが必要とされる。生成されるエネルギーの量は、焼却される物質の量と比較すると常に少ない。焼却後であっても、大量の煤塵が残り、これを除去して処分しなければならない。元のバイオソリッドと比較すると、煤塵は環境に対して全く何のプラスの影響もなく、あっさり埋設されるか、または海洋に投棄されるだけである。全体として、焼却では、環境に対するバイオソリッド処分の悪影響が何年もの間、将来に向かって増大している。
【0005】
加工によりある程度まで処理されたバイオソリッドは、米国環境保護庁によって設けられた連邦政府の基準に従ってA級またはB級に分類される。「A級」バイオソリッドは、検出可能な病原体が含まれておらず、動物または人間用の作物に使用のための肥料として充分に安全であるとみなされるものである。例えば、サルモネラ属種の細菌、糞便性大腸菌指示菌、腸内ウイルス、および生存可能な蠕虫の卵などの病原体は検出可能なレベル未満である。病原体がバイオソリッド中に検出され得る場合、USEPAでは、かかる処理バイオソリッドを「B級」と分類し、「A級」処理バイオソリッドよりも低水準であることを示唆している。B級バイオソリッドは、指示病原体(従って、潜在的病原体)が含有されているため、動物および人間用の作物に適用され得る様式は制約される。
【0006】
パート503規則(連邦規則集のタイトル40,パート503,引用により本明細書に組み込まれる。)には、バイオソリッドの処理のための6つの択一法が示されており、このため、これらは病原体に関してA級に分類され得る。択一法1では、バイオソリッドを4つの時間−温度レジメンのうちの1つに供することが必要とされる。択一法2では、バイオソリッド加工がpH、温度および風乾要件を満たすことが必要とされる。択一法3では、バイオソリッドを他の方法で処理する場合、この方法によって腸内ウイルスおよび生存可能な蠕虫の卵が低減され得ることが実証されなければならず、病原体低減の実証が終了した後、実証に使用された操作条件は維持されなければならないことが必要とされる。択一法4では、未知の方法で処理した場合、バイオソリッドを使用もしくは処分する際、または特定の状況では使用もしくは処分のために調製する際に、バイオソリッドを病原体について試験することが必要とされる。択一法5では、バイオソリッドをさらなる病原体低減法(Processes to Further Reduce Pathogens)のうちの1つで処理することが必要とされる。択一法6では、バイオソリッドをさらなる病原体低減法のうちの1つと同等の方法(許可を出す権威によって判定)で処理することが必要とされる。
【0007】
また、A級病原体バイオソリッドは、全固形分(乾燥重量ベース)1グラムあたり1,000最確数(MPN)未満の糞便性大腸菌密度、または全固形分(乾燥重量ベース)4グラムあたり3MPN未満のサルモネラ属種の細菌密度を有するものでなければならない。これらの2つの要件はいずれも、以下の時点:バイオソリッドを使用もしくは処分するとき;バイオソリッドを、土地適用のために袋もしくは他の容器に入れて販売もしくは寄贈のために調製するとき;または例外品質(Exceptional Quality)バイオソリッドの要件を満たすようにバイオソリッドもしくは由来物質を調製するとき、のうちの1つの時点において満たされていなければならない。
【0008】
土地に適用されるバイオソリッドはすべて、10種類の重金属汚染物質:ヒ素、カドミウム、クロム、銅、鉛、水銀、モリブデン、ニッケル、セレンおよび亜鉛を含む汚染物質の天井濃度に適合するものでなければならない。これらのいずれか1種類の制限値を超えている場合、バイオソリッドは、かなりの制限の受け入れなしでは土地に適用することができない。例外品質(EQ)は、USEPA Guideパート503 規則7に、低汚染物質およびA級の病原体低減(実質的に病原体は存在しない。)の制限範囲を満たし、また保菌生物を誘引する分解性化合物が低レベルであるバイオソリッドの特徴を示すために使用されている用語である。
【0009】
乾燥しただけのバイオソリッドは、窯業用途のためには幾つかの不都合点を有する。バイオソリッドは低い肥料価を有する、典型的には窒素含有量が約2から5パーセントしかない。容積は大きく、単位窒素あたりのコストが高い。熱乾燥バイオソリッドは、多くの場合、特に湿潤している場合、嫌な臭気を有する。また、乾燥ペレットは密度と硬度が低く、他の市販肥料材料とブレンドすると、このペレットは分離して崩壊することがあり得、田畑に他の高密度成分と均一に拡延され得ない。バイオソリッドの使用に伴う嫌な臭気は、充分に処理しないと、窒素高含有肥料製品のさらなる加工中も存在し続け、最終製品中にも存在し続ける場合があり得る。これは、適当な肥料加工プラントを住宅地域社会の近隣でない場所に設置することを困難にする。さらに、バイオソリッドを輸送しなければならない距離が長くなるほど、この廃棄物処分のコストと物流が付加される。現在のバイオソリッド強化肥料の別の不都合点は、該物質が湿潤状態になった場合、細菌の作用が継続し得ること、および貯蔵条件下において、該物質の温度が自然発火点まで上昇し得ることである。従って、ブレンド肥料において土壌改良または充填剤のための有機質含有量を重視する特別な市場を除き、熱乾燥バイオソリッド製品に対する需要は比較的少ない。多くの場合、自治体が運送料を負担しなければならず、または栽培業者に該物質を使用する他の奨励を行う場合もあり得る。しかしながら、それでもなお、これは多くの場合で他の処分案よりも経済的である。
【0010】
農業用肥料に対する市場価値は、主としてこの窒素含有量が基準である。バイオソリッドの窒素含有量を市販の無機質肥料のものに近いレベル、例えば、8から22パーセントまで増大させるための実用的で安全で経済的な方法の必要性が存在している。かかるバイオソリッド肥料を製造することができれば、バイオソリッド製品の全体的な価値および製品に対する需要がおそらく高まるであろう。さらに、適正に製造されたバイオソリッド肥料は、この窒素の大部分が低速放出型であるという利点を有する。低速放出または制御放出型の肥料とは、栄養素、例えば、アンモニウムイオンとしての窒素、リン酸分および/または硫酸分が、土柱中において、従来の肥料からのような高速利用可能な栄養素、例えば、尿素、硫酸アンモニウムおよびリン酸二アンモニウムより遅い速度で利用可能となるものである。土柱中におけるこの栄養素の低速作用および/または長期利用可能性は非常に望ましく、植物に対して、植物の生育周期全体を通して栄養素を供給し、これは、土壌または作物に対して適用する必要がある窒素が少なくなり、これにより環境汚染の可能性が低減され、肥料使用のコストが削減されることを示唆する。従来の無機系製造による低速放出窒素肥料は、通常の無機質窒素肥料の何倍もの価格を有する。バイオソリッドからの高窒素バイオソリッド含有肥料の作製の計画下では、自治体は、バイオソリッド処分プログラムのための公的および規制機関による支援を享受できよう。かかるプログラムにより、例えば、バイオソリッドを高窒素肥料にリサイクルすることによって脱水または乾燥バイオソリッドを定期的に除去し、次いで、この肥料は、成熟した国内の肥料流通業界に直接販売することができ、これにより、バイオソリッド処理プログラムに伴う従来からの大きな問題のうちの1つが排除されることが確実となろう。
【0011】
以前に、これらの目的の幾つかを達成するための試みがなされた。米国特許第3,942,970号、同第3,655,395号、同第3,939,280号、同第4,304,588号および同第4,519,831号明細書には、下水バイオソリッドを肥料に変換させるための方法が記載されている。これらの方法の各々では、尿素/ホルムアルデヒド縮合生成物を、バイオソリッドを用いてインサイチュで形成させる。従って、これらの方法では、高度に毒性の催涙物質であり、発がん性が疑われる薬剤であるホルムアルデヒドを扱うことが必要とされる。
【0012】
他の方法は、高価なプロセス機器および/または既存の下水加工施設には容易に組み込まれない特別な条件を必要とするものである(日本特許 番号58032638;仏国特許発明第2,757,504号明細書参照)。
【0013】
バイオソリッド中の窒素を増加させるための単純な方法は、市販の窒素肥料材料を湿潤バイオソリッドとブレンドした後、乾燥させてペレット化することであり得る。農業における使用のための経済的な高窒素肥料材料はほんのわずかしかない。例としては:アンモニア(82重量パーセントのN)、尿素(46重量パーセントのN)、および硝酸アンモニウム(33.54重量パーセントのN)が挙げられる。アンモニアは揮発性が高く、大気中への排出については厳格な規制下にある。尿素は、湿気を非常に容易に吸着し、汚泥の乾燥をより困難にする固形物である。また、尿素は、適正に調製されていない場合、バイオソリッド中の微生物および酵素によってアンモニアに非常に分解され易く、窒素減損および臭気問題が生じる。硝酸アンモニウムは、強力な酸化剤であり、爆発の可能性の問題が生じることがあり得、これにより、この肥料はほとんどが2000年以降、市場から排除された。このような肥料はすべて高窒素含有量を有するが、特別な加工なしのバイオソリッドと合わせるには理想的とはいえない。
【0014】
他の参考文献、例えば、欧州特許第0143392号明細書、日本特許 番号9110570 A2、および「Granulation of Compost From Sewage Sludge.V.Reduction of Ammonia Emission From Drying Process」,Hokkaidoritsu Kogyo Shikenjo Hokoku,287,85−89(1988)には、硫酸アンモニウムの添加とともに酸を使用することは開示されておらず、酸条件下でのスチール製加工機器の腐食の問題も論考されていない。
【0015】
過去30年間にわたり、バイオソリッドのアルカリ固定化が、バイオソリッドを、主に土壌コンディショニング物質として使用され得る有益で有用な物質にする標準的で成功裏な方法であった。このようなアルカリ固定化バイオソリッド製品は、高い炭酸カルシウム当量を有するため、通常、農場の土壌管理ストラテジーにおける炭酸カルシウムの代用品として、農業用石灰処理物質またはAg−石灰物質として作製され、市販されてきた。この使用のため、この物質の価値は製品1トンあたりわずか数ドルという限定的なものであった。しかしながら、輸送コストは、主に該物質の相当な含水量のため高い。50パーセントに至る水分量のため、輸送は経済的および地理的に、処理物の供給源に近接した地域に限定される。
【0016】
従って、長年にわたって、窒素含有量を増加させることによって下水バイオソリッドの経済的価値を高めるため、および普及性を高めるための実用的な手段の必要性、ならびにこのような物質が、国内および国際的な商品肥料市場において大きな価値を有し得るような物理的および化学的および栄養素特性を有する商品肥料に変換されるように処理する必要性が存在している。一連の米国特許、米国特許第5,984,992号;同第6,159,263号;同第6,758,879号および同第7,128,880号明細書には、バイオソリッドを使用し、パイプクロス型反応器を用いて作製される高窒素有機的強化硫酸アンモニウム肥料の作製方法が記載されている(テネシー峡谷開発公社が最初に考案)。このT字型パイプのパイプクロス型反応器は、IFDCによるFertilizer Manual(1998),p440に:「リン酸、アンモニアおよび多くの場合、水が同時に、T字に似たパイプ構造内に(従って、「T字型反応器」という名称)一端から添加される、ある長さの耐食性のパイプ(約5から15m長)から基本的になるパイプ型反応器」と定義されている。T字型反応器は、TVAにより、リン酸供給口と反対に位置する別のパイプ供給口からさらに硫酸の流れも許容されるよう、このユニットが「クロス」構造(従って、「パイプクロス型反応器」という名称)になるように改造された。
【0017】
IFDC Fertilizer Manual(1998)およびFertilizer Technical Data Book(2000)のどちらにもパイプクロス型反応器が言及されている。パイプクロス型反応器では、濃縮されたミックスが造粒成形デバイスに送達され、肥料ミックスから不要な水分が他のデバイスよりも効率的に蒸発するが、これらの参考文献は、改善に対する長年の切実な必要性を示したものであり、パイプクロス型反応器の短所の1つは、目詰まりが生じ得るパイプ内部のスケール形成であると示されている。
【0018】
一群の特許(米国特許第5,984,992号;同第6,159,263号;同第6,758,879号および同第7,128,880号明細書)に教示された方法論は、このような狭い(この長さに相対して)「パイプクロス型」反応器構造の詰まり、かかる「パイプクロス型」反応器における非常に短い反応持続時間、ならびにかかるパイプクロス型反応器内での反応温度と圧力およびミックスの保持時間の制御の困難性に関連する問題を抱えている。このようなパイプクロス型反応器は、この長さと対比すると狭く、例えば直径は6から8インチまでであり、多くの場合、長さは15フィート以上である。有機的強化硫酸アンモニウム肥料の製造を行うプラントは、多くの場合、バイオソリッド蓄積による閉塞またはかかる反応器内での破壊的過熱(反応器の内側の反応面に一般的に使用されるテフロン(登録商標)コーティングが融解して崩壊するようなもの)のいずれかのため、パイプクロス型反応器を停止して分解しなければならなかった。さらに、パイプクロス型反応器の使用は、反応器内の保持期間が非常に短い(通常、20秒未満)という明白な不都合点を有し、これは、これは、硫酸アンモニウムなどの従来の肥料の製造では利点であるが、バイオソリッドの同時加工と対にする場合は不都合点となる。3種類の投入物質がこの反応器を通過するため、かかる短い加工時間は、未処理または不均一な混合の確率を増大させる。また、このような反応器は、通常、直接造粒機内への開放端排出口を有するため、かかるパイプクロス型反応器内の雰囲気圧を制御できないという制限がある。内部圧力を制御できないことに関連するが異なることは、パイプクロス型反応器では、反応器を通過するミックスに対して温度制御がほとんどまたは全くなされないことである。
【0019】
Robinsonに対する米国特許第4,743,287号明細書には、窒素濃度が低度から中程度(4重量パーセント窒素から10重量パーセントの最大窒素濃度までの範囲)の窒素肥料に有機バイオソリッドを組み込むために、連続する2つの反応槽を使用する方法が記載されている。Robinsonは、第1反応槽を、存在する分子の加水分解がなされるように非常に低pH値の混合物(pH0.2から1.5)を得るため、および第2反応槽での反応のためのミックスを調製するために使用している。Robinsonは、単一の反応器の使用が可能であることを示しているが、バッチ構造の場合のみであり、連続的な流れによる製造方法では可能でない。また、Robinsonは、酸とアンモニアはいずれかの順序で注入され得るのではなく、連続して注入しなければならないと示している。この特許には、パイプクロス型反応器と比べて比較的長い保持期間を伴って高圧(30psig)に達し得る反応槽が記載されている。しかしながら、Robinsonは、規定の温度、圧力および反応保持期間の利点をもつ新規で実用的な連続的な流れによる高窒素(8重量パーセントより多い窒素)のバイオソリッド含有肥料製品の製造方法の必要性を満たしていない。従って、有効で効率的および経済的なバイオソリッドの処理方法に対する緊急の必要性が存在している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【特許文献1】米国特許第3,942,970号明細書
【特許文献2】米国特許第3,655,395号明細書
【特許文献3】米国特許第3,939,280号明細書
【特許文献4】米国特許第4,304,588号明細書
【特許文献5】米国特許第4,519,831号明細書
【特許文献6】特開昭58−032638号公報
【特許文献7】仏国特許発明第2,757,504号明細書
【特許文献8】欧州特許第0143392号明細書
【特許文献9】特開平09−110570号公報
【特許文献10】米国特許第5,984,992号明細書
【特許文献11】米国特許第6,159,263号明細書
【特許文献12】米国特許第6,758,879号明細書
【特許文献13】米国特許第7,128,880号明細書
【特許文献14】米国特許第4,743,287号明細書
【非特許文献】
【0021】
【非特許文献1】「Granulation of Compost From Sewage Sludge.V.Reduction of Ammonia Emission From Drying Process」,Hokkaidoritsu Kogyo Shikenjo Hokoku,287,85−89(1988)
【非特許文献2】Fertilizer Manual(1998),p440
【非特許文献3】Fertilizer Technical Data Book(2000)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
本発明により、現在使用されているストラテジーおよび設計に伴う問題および不都合点が解決され、肥料の製造のための新たなツールおよび方法が提供される。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明の一実施形態は、少なくとも10パーセントの固形分を有する好ましくはバイオソリッドを含有している有機物質を準備すること、;場合により、臭気防除剤を該有機物質に添加し、混合物にすること;酸を該混合物に第1の圧力および高温下で第1の期間添加し、液化混合物を形成すること;アンモニアを該液化混合物に第2の圧力および高温下で第2の期間添加すること;ならびに該液化混合物を加工して肥料を形成することを含む、肥料の製造方法に関する。有機物質という語句は、あらゆるバイオソリッド、限定されないが、バイオソリッド、例えば、有機バイオソリッド、微生物含有バイオソリッド、都市バイオソリッドまたは熱乾燥バイオソリッドを包含しており、また、製薬および実験過程ならびに発酵による廃棄物、耕作および農業による廃棄物、腐朽したおよび消化された有機物質、収穫された植物、例えば、農作物物質、例えば、トウモロコシおよびダイズ植物の粗飼料およびサイレージならびにコムギ、コメおよびオオムギ植物、池および他の水域から収穫され得る藻類およびシアノバクテリア、細菌、カビおよび真菌、工業廃棄物およびこの副産物、有機生成物の微生物的、化学的および酵素的消化物、植物性および動物性食品、食料品および食品副産物、再生肥料、ならびにこのあらゆる組合せも包含している。本発明の要素の1つは、プラスチックおよび毛ならびに同様の物質が含まれた有機物質を加工前に除去する必要がないことである。好ましくは、有機物質を15から40パーセントの固形分まで脱水または水和し、より好ましくは、有機物質は22パーセント以下の乾燥度パーセントを有する。また、一部分の有機物質を70から85パーセントより大きい乾燥度まで脱水し、該有機物質の残りの部分とブレンドし、所望の乾燥度パーセントを得てもよい。好ましくは、有機物質は、当該方法の1つ以上の工程から回収された工程用水で水和させる。
【0024】
場合により、臭気防除剤が有機物質に添加され得る。好ましい臭気防除剤としては、限定されないが、鉄酸カルシウム、鉄酸ナトリウム、鉄酸カリウム、硫酸第一鉄七水和物、ローゼン石、緑礬、塩化第二鉄、硫酸第一鉄、硫酸第一鉄一水和物、過酸化水素、オゾン、ならびにこの塩、誘導体および組合せ、ならびにこの種々の塩のうちの1種類以上が挙げられる。好ましくは、有機物質と臭気防除剤の混合物はチキソトロピー混合物を形成しており、酸の添加の前に該混合物を加熱する。また、好ましくは、加熱を第1圧力槽において行い、第1の圧力を20から60psigに維持し、第1の温度は66C(150F)から127C(260F)であり、第1の期間は3分間から30分間である。より好ましくは、第1の温度は93C(200F)から121C(250F)であり得、第1の期間は5分間から10分間であり得る。好ましくは、酸性化して加熱した混合物の粘度は約4,000cP以下である。該混合物に添加する酸は、好ましくはリン酸、硫酸またはこの組合せである。酸性化後、液化混合物を第2圧力槽に移し、好ましくは、アンモニアを、液化混合物に添加する前に圧力下で加熱してガスを形成する。好ましい第2の温度は121C(250F)から199C(390F)であり、好ましい第2の期間は1分間から30分間であり、第2圧力槽内の好ましい圧力は50から200psigに維持される。このアンモニア添加混合物の粘度は、好ましくは約1,000cP以下である。液化混合物の加工は、使用可能な肥料の形成を含む。好ましくは、該加工は該混合体の92パーセントより多い固形分まで、またはより好ましくは少なくとも98パーセントの固形分までの乾燥を含む。1種類以上の硬化剤、例えば、リグノスルホネート、糖蜜、ミョウバンまたはこの組合せなどを該加工中に添加してもよい。好ましくは、該加工を造粒機で行って顆粒を形成し、該顆粒を分粒し、0.5から4mmの顆粒を選択する。好ましくは、4mmより大きい顆粒をさらに破砕し、0.5mm未満の顆粒と合わせ、両者を該加工中に添加する。本発明の要素の1つは、本方法の各工程が連続過程で中断することなく行われ得ることであるが、バッチ加工も可能である。また、本発明の方法は、好ましくは、該加工によって生じる粉塵物質を収集してリサイクルさせる防塵システムを含む。
【0025】
本発明の別の実施形態は、本発明の方法によって製造される肥料に関する。該肥料には、典型的には、バイオソリッド中に存在しているプラスチック、医薬化合物、抗生物質、ホルモン、ホルモン様分子、生物学的活性化合物、高分子、糖質、核酸、脂肪、脂質、タンパク質、および微生物のうちの1種類以上の加水分解ポリマーが含有されている。好ましくは、該加水分解ポリマーはアミノ酸であり、このほとんどは該加工方法中に破壊されず、肥料の補給物となり、肥料の価値をかなり増大させる。好ましくは、本発明の肥料は、6から20パーセントの窒素含有量、0から10パーセントのリン酸分含有量、0から5パーセントのカリウム含有量、10から30パーセントの硫黄含有量、0から10パーセントの鉄含有量、および5から30パーセントの有機質含有量を有するものである。また、好ましくは、肥料には不快または嫌な臭気がないか、またはほとんどない。
【0026】
本発明の別の実施形態は、少なくとも10パーセントの固形分を有するバイオソリッド含有有機物質を準備すること、;場合により、臭気防除剤を該有機物質に添加し、混合物にすること;該混合物を第1の圧力下で第1の温度まで第1の期間加熱すること;ある量の所定の酸を該加熱混合物に添加し、これにより発熱反応を生じさせ、液化混合物を形成すること;所定量のアンモニアを該液化混合物に第2の圧力下で添加し、該混合物を第2の温度まで第2の期間加熱すること、ここで、添加されるアンモニアの量は、該有機物質の組成により決定される;ならびに該液化混合物を加工し、所定の含有量の窒素、リン酸分およびカリウムの1種類以上を有する肥料を形成することを含む、所定の含有量の窒素、リン酸分およびカリウムの1種類以上を有する肥料の製造方法に関する。本発明の方法は、場合により、さらに、該加工中に1種類以上の植物栄養素を添加することを含むものであってもよい。添加され得るかかる植物栄養素としては、限定されないが、尿素、硝酸アンモニウム、硫酸アンモニウム、リン酸一アンモニウム、リン酸二アンモニウム、尿素 硝酸アンモニウム、液体尿素、カリ、酸化鉄、可溶性鉄、キレート化鉄およびこの組合せのうちの1種類以上が挙げられる。該方法は、好ましくは、さらに、該加工中に1種類以上の硬化剤、例えば、酸化第二鉄、ミョウバン アタパルガイトクレイ、工業用糖蜜、リグニン、リグノスルホネート、尿素ホルムアルデヒド重合剤などおよびこの組合せを添加することを含む。
【0027】
本発明の別の実施形態は、バイオソリッドを臭気防除剤とブレンドする混合機;第1の反応槽または圧力槽(ここでは、該ブレンドバイオソリッドを酸と混合し、ある期間、第1の所定温度まで加熱および第1の所定圧力まで加圧し、液状物を形成する。);第2の反応槽または圧力槽(ここでは、該液状物をアンモニア供給源からのアンモニアと混合し、第2の期間、第2の所定温度まで加熱および第2の所定圧力まで加圧する。);ならびに造粒機(ここでは、該アンモニア添加された液状物を予備形成顆粒と混合し、加熱し、肥料の乾燥顆粒を形成する。)を備えている、肥料の製造のためのシステムに関する。好ましくは、アンモニア供給源は圧力下の液化またはガス状のアンモニアであり、第1および第2の反応槽または圧力槽の各々には攪拌器が内包されている。また、該システムに、分粒された肥料顆粒製品を選択するためのスクリーニング過程、ならびに貯蔵前に温度を下げるためおよび粉塵を防除するための1つ以上の冷却およびコーティング装置を含めてもよい。場合により、冷却器に、冷却中の肥料にオゾンを供給して嫌な臭気を排除するか、または少なくともかなり低減させるオゾン発生器を含めてもよい。また、好ましくは、システムは、バイオソリッドを該混合機に輸送するためのコンベアと、該ブレンドバイオソリッドを第1の反応槽または圧力槽に輸送するための別のコンベア;酸性化されたバイオソリッドを第1の反応槽または圧力槽から第2の反応槽または圧力槽に、アンモニアを第2の反応槽または圧力槽内に輸送し;該アンモニア添加された液状物を該造粒機に分散させる加圧配管系も備えている。好ましいシステムは、さらに、所定サイズの顆粒を選別するための1つ以上のスクリーン、ならびに分粒された顆粒を冷却および研磨するための回転式冷却器、ならびに造粒機からの粉塵を収集してリサイクルさせる防塵装置と水回収システム(これにより、加工中にバイオソリッドから抽出された水が回収されてリサイクルされる。)の両方を備えている。一部の特定の実施形態では、第1および/または第2の反応槽または圧力槽はパイプクロス型反応器であり得、または両方の反応槽または圧力槽がパイプクロス型反応器である。該方法は、連続過程として行ってもバッチ過程として行ってもよい。
【0028】
本発明の別の実施形態は、少なくとも10パーセントの固形分を有する有機物質を準備すること、;酸を該有機物質に第1の圧力および高温下で第1の期間添加し、液化混合物を形成すること;アンモニアを該液化混合物に第2の圧力および高温下で第2の期間添加すること;ならびに該液化混合物を加工して肥料を形成することを含む、製品の製造方法に関する。好ましくは、有機物質は植物または細菌系物質であり、また、好ましくは、植物または細菌系物質が藻類、細菌、真菌またはこの組合せである。好ましくは、有機物質中に毒性物質が存在しており、この毒性物質が本発明の方法によって加水分解されるか、または無毒性もしくは不活化状態になる。好ましくは、第1の圧力は20から60psigであり、高温は66C(150F)から127C(260F)であり、第1の期間は3分間から30分間である。また、好ましくは、第2の圧力および高温で第2の期間で、は、それぞれ、50から200psigおよび121C(250F)から199C(390F)、1分間から30分間である。好ましくは、製品は肥料である。
【0029】
本発明の別の実施形態は、本発明の方法によって製造される肥料に関する。好ましくは、本発明の肥料は、高速と低速の両方の窒素放出プロフィールを有し、肥料を適用すると、好ましくは10%から70%のパーセンテージの利用可能な窒素が土壌に放出され、第2の低速放出で示される約30%から90%の肥料の利用可能な窒素含有量が、週単位の期間から数ヶ月にわたって土壌中に放出されるようなものである。好ましくは、窒素放出は、生育中の作物または植物ニーズに適合するように時限的にする。
【0030】
本発明の他の実施形態および利点は、以下の説明の一部に示されており、一部において、この説明から自明となり得、本発明の実施から学習され得よう。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1A】本発明の一実施形態のバイオソリッド肥料プラントの流れ図である。
【
図1B】本発明の一実施形態のバイオソリッド肥料プラントの流れ図である。
【
図1C】本発明の一実施形態のバイオソリッド肥料プラントの流れ図である。
【
図2A】本発明の別の実施形態のバイオソリッド肥料プラントの流れ図である。
【
図2B】本発明の別の実施形態のバイオソリッド肥料プラントの流れ図である。
【
図2C】本発明の別の実施形態のバイオソリッド肥料プラントの流れ図である。
【
図3】硫酸アンモニウム修飾の過程の模式図である。
【
図4】本発明の一実施形態の有機修飾硫酸アンモニウム肥料の物理的および化学的特性である。
【
図5】週数に対する土壌中に放出された窒素のパーセントで示した、硫酸アンモニウム肥料を与えた植物の窒素放出曲線である。
【
図6】硫酸アンモニウム(AS)、本発明の有機修飾硫酸アンモニウム(VITAG)および慣用的なバイオマス(MILORGANITE)の、日数に対する土壌中に放出された窒素のパーセントで示した窒素放出曲線である。
【
図7】週数に対する土壌中に放出された窒素のパーセントで示した、硫酸アンモニウム、本発明の有機修飾硫酸アンモニウムおよびバイオソリッドの肥料を与えた植物の学究的窒素放出曲線である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
世界中のすべての国々および人口地域で有機物質の形態の廃棄物が生じる。有機物質という語句は、限定されないが、バイオソリッド、例えば、有機バイオソリッド、微生物含有バイオソリッド、都市バイオソリッドならびに熱乾燥バイオソリッドを包含しており、また、製薬および実験過程ならびに発酵による廃棄物、耕作および農業による廃棄物、腐朽したおよび消化された有機物質、収穫された植物および植物様物質、例えば、藻類、例えば、藍藻類、細菌、例えば、青緑色細菌、シアノバクテリア(例えば、藍色、赤褐色、黒色)、カビおよび真菌、工業廃棄物およびこの副産物、有機生成物の微生物的、化学的および酵素的消化物、植物性および動物性食品、食料品および食品副産物、動物の糞尿、消化された、および処理された動物の糞尿、再生肥料、ならびにこのあらゆる組合せも包含している。有機廃棄物の処分は、地域社会全体に大きな問題ならびに支出をもたらす。従来の処分方法は、埋設、海中埋設または焼却を伴うものである。これらの各選択肢では、地域社会ならびに地球を汚す受け入れ難い量の汚染が発生することにより問題が複合化される。低付加価値肥料となり得る製品をもたらし得る微生物および他の潜在的な汚染物質を不活化させるために熱処理を伴う新たな手法が開発された。このような手法は、エコロジー的には妥当であるが、主として、製品が、地域社会にとって従来の埋設および焼却主義をから切り替える商業的誘因がほとんどまたは全くないという低付加価値のものであり、安全な加工施設の創設を可能にする資金がないため、定着していない。
【0033】
驚くべきことに、高付加価値肥料が、有機物質、例えば限定されないが、原料バイオソリッドおよび半加工バイオソリッド、農産物材料ならびに工業廃棄物から効率的に製造され得ることが見出された。本発明の方法は、潜在的に有害なあらゆる微生物を破壊するだけでなく、多くのポリマー、例えば、バイオポリマーの形態(例えば、DNA、タンパク質、糖質、毒素、抗生物質、ホルモンなど)、複合材料の形態、さらにはプラスチックの形態を加水分解するものである。得られる肥料製品は高付加価値であり、また、肥料に有益で望ましい加水分解されたモノマー(例えば、アミノ酸、糖類など)を含有している。また、本発明の方法により、肥料の各成分の量、例えば限定されないが、窒素、リン、カリウム、硫黄、鉄および有機質の濃度が予め選択された肥料の作製が可能になる。
【0034】
本発明の一実施形態は肥料の製造方法に関する。本発明の一般的な方法の模式図を
図3に示す。該方法は、バイオソリッドを含むものであり得る有機物質または別の有機物質を準備することを含み、該有機物質に、場合により臭気防除剤(これ自体が最終肥料製品中の重要な植物栄養素として使用されるものであってもよい。)を添加し、該有機物質または出発物質の他の成分に由来して存在し得る臭気を低減または排除する。得られた混合物(これは、該方法の他の工程からリサイクルされて添加された水を含有している場合があり得る。)を充分に混合し、所定温度まで一定期間加熱すると、反応槽または加水分解槽内で起こる臨界酸/塩基反応が開始される。この加熱材料に、該有機物質と発熱を伴って反応して温度と圧力の両方を上昇させる酸を添加する。この期間中、好ましくは2から10分間、成分はほとんどまたは完全に液化される。この液化した加熱材料(場合により第2圧力槽に移され得る。)にアンモニアを添加する。このアンモニアは、好ましくは同様に液化もしくは気化されており同様に圧力下にあり、その後の混合物の酸成分との反応が温度と圧力をさらに上昇させる機能を果たす。アンモニア添加した液化バイオソリッドをこの条件下で短期間(好ましくは、2から10分間)維持し、次いで、好ましくは顆粒肥料に加工する。
【0035】
アンモニア添加反応は、これにより、すべてまたはほぼすべての酸が反応して余剰の酸がほとんどまたは全く残らなくなるまで完了させるのがよい。ほぼすべての酸の組合せにより、塩または塩融液(部分アンモニア添加ミックス)が生成される(例えば、硫酸では、生成される塩は硫酸アンモニウムである。)。好ましくは、アンモニア添加すると、融液に対する塩の比は約20/80、約25/75、約30/70、約35/65、約40/60、約45/55、約50/50、約55/45、約60/40、約65/35、約70/30、約75/25、および約80/20である。塩の形成は、混合物のpHの測定によってリアルタイムで測定され得る。好ましいpH値は6.2からpH7.0である。または、反応器内の酸混合物を部分アンモニア添加し、第2パグミル内または造粒過程でアンモニア添加を完了させることが好ましいときもある。
【0036】
本発明の利点の1つは、有機物質を液化させるため、該液状物が、必要に応じて配管を通して、好ましくは、任意の固形物、半固形物またはチキソトロピー物質と比較して圧力差を用いて、より容易に輸送され得ることである。また、液化有機物質は、造粒機内の受容体物質に対してより均一に適用され、これにより、より均一に形成された球形状の顆粒の形成が可能となり得る。バイオソリッドは、好ましくは完全に液化させたものであるが、典型的には大部分が液化されていれば充分である。好ましくは、該液状物は、特徴的な易流動性を示し、分散する傾向はほとんどまたは全くなく、非圧縮性が比較的高いものである。
【0037】
出発有機物質の粘度は、周囲温度で典型的には100,000cP超、典型的に150,000cPであり、加工施設における典型的な高温であっても有意に変化しない。比較目的のため、ほぼ室温では、糖蜜は約5,000から10,000cPの粘度を有し、蜂蜜は約2,000から10,000cPの粘度を有し、チョコレートシロップは約900から1,150cPの粘度を有し、オリーブ油は約81cPの粘度を有する。本発明による酸の添加および加熱により、有機物質の粘度は、約1,000から10,000cPの範囲まで、好ましくは4,000cP未満まで、より好ましくは3,000cP未満まで、より好ましくは2,000cP未満まで、より好ましくは1,000cP未満まで低下する。アンモニアの添加、およびこの結果の発熱反応によるさらなる温度上昇により、該粘度は、500から4,000cPの範囲まで、好ましくは2,000cP以下まで、より好ましくは1,000cP以下まで、より好ましくは750cP以下まで、より好ましくは500cP以下まで低下する。また、問題は、典型的にはバイオソリッドなどの有機物質中に通常存在している固形残屑に関することであるが、プラスチックおよび毛などの残屑は、かかる物質がすべて同様に加水分解されるため排除される。
【0038】
本発明の低粘度材料は、慣用的な材料と比べて輸送および加工に必要とされるエネルギーがかなり少ない。生物学的または有機系の固形物質は残留せず、このため、固形残屑の目詰まり、または一領域から別の領域への輸送が阻止され、これによりメンテナンスのためにシステムを停止させる必要性に一般的に随伴する問題および非効率性が排除される。本発明の場合以外では機器に対する磨耗および亀裂を増大させ、従って機器の寿命を短縮し得る固形物または半固形物は存在しない。さらに、慣用的な加工において閉塞を引き起こすことがよく知られている有機固形物質(例えば、プラスチックおよび毛など)は、完全に分解および加水分解されてこのモノマー成分になる。酸の反応により、存在し得る多くのポリマー(例えば、プラスチック、毛、および生物学的活性化合物(天然に存在するものであれ、人工的に生じたものであれ))が加水分解され、存在し得る多くのほぼすべての、好ましくはすべての高分子および微生物が分解および破壊される。これにより、加工作業者に対する安全性が増大し、定期的に必要とされ得るシステムのクリーニングまたはメンテナンス(必要な場合)がさらに単純化され、この効率が増大する。この加水分解により、他の従来の有機質含有肥料製品(バイオソリッドアルカリ固定化法で作製されたものなど)と比べて、得られる肥料製品の使用における安全性がさらに増大する。
【0039】
本発明の別の利点は、該方法が容易に被包され得るため、粉塵および臭気防除装置の必要性が最小限になることである。加工工程は閉鎖系で負圧下にあり、諸工程は、開放状態または環境に曝露されたエリアまたは施設環境では行われない。臭気防除装置は、好ましくは初期に添加されるが、場合により、該方法の任意の工程で容易なときに添加され得る。または、または他の臭気防除加工に付加的に、顆粒を形成および/または冷却時にオゾンに曝露してもよい。オゾンは肥料の嫌な臭気をかなり低減または排除する。従って、本発明は、大きな製造施設を地域社会からできるだけ遠く離れて建設し、これによりプラント稼動のために投入材料を長距離輸送することが必要とされる慣用的な肥料製造実務と比べて大きな改善となる。この問題のよい一例は、アーカンソー州ヘレナに存在するバイオソリッドの肥料への変換プラントであり、ここでは、米国特許第5,984,992号;同第6,159,263号;同第6,758,879号;および同第7,128,880号に教示された製造方法が実施され、はるばるニューヨーク市から輸送されたバイオソリッドが使用された。
【0040】
本発明の別の利点は、酸およびアンモニアを制御された様式で添加するため、肥料の最終成分を事前に決定できることである。最終製品中の窒素の厳密な量は、出発物質、例えば、バイオソリッド、酸、塩基、水および任意の他の成分の量に基づいて調節され得る。同様に、硫黄、鉄、リン酸分、カリウム、さらには有機物の厳密な量も同様に調節され得るか、または所望により特注肥料製品を作製する最終製品から除外され得る。施肥を必要とする多くの作物は、リン酸分、硫黄、カリウムまたは他の元素が多いことが知られた地域で生育する。慣用的な肥料の施肥は、必要ではあるが、典型的には汚染を悪化させる。本発明の方法によって作製される肥料では、かかる問題が解決され得るだけでなく、特定の型の土壌または選択された型の作物の特定ニーズに関連した使用にあつらえることができよう。また、本発明の方法により、加工中に肥料にさらなる成分を補給することが可能になる。
【0041】
本発明の別の利点は、連続加工によりオートメーション下で大規模で容易に行われることである。相当な保持期間が必要とされず、従って遅延がなく、このため、加工が開始から仕上げまで、一部の型の慣用的なバイオソリッド加工(堆肥化またはアルカリ固定化法の場合)で一般的な材料の数日間のインキュベーションを要する場合には必要となり得る中断なく継続される。また、該方法は特定量の物質に依存性でない。本発明の方法は、任意の有機物質量に拡大縮小が可能である。これは、少なくとも、ほとんどの都市領域は大きさが異なり、従って毎日生じるバイオソリッドなどの有機物の量が広く異なるため非常に好ましい。また、量も経時的に変更されることが予測される。さらに、各方法工程は、毎日および経時的に必要な変更の考慮を含めた完全なオートメーション下で行われ得る。
【0042】
本発明の別の利点は、バイオソリッドなどの有機物質を加工するための施設を処理プラントと併設することが可能なことである。このため、バイオソリッドが廃棄物水処理プラントから直接採取されて加工され、これにより、輸送および潜在的に有害な化合物の漏出の可能性が最小限となり得る。別の好ましい実施形態は、スクリューコンベアもしくはベルトコンベアまたはバイオソリッドポンプ輸送システムによって連結されるように廃棄物水処理プラントに充分近接して設置することである。または、別の好ましい実施形態は、廃棄物水プラントに隣接して設置することである。本発明の目標は、加工プラントをできるだけ廃棄物水プラントに近接して配置することである。従って、本発明では、該製造方法を行うのに必要な物理的機器が都市廃棄物水処理プラントなどのバイオソリッド供給源に隣接または近接して設置されることにより、輸送のコストが削減される。本発明の製造プラントにより、好ましくは隣接した貯蔵施設も可能になる。この場合も、隣接していることにより、輸送物流が簡素化または排除され、これにより製品の輸送コストならびにバイオソリッドなどの投入有機物の輸送コストが削減される。また、本発明の方法は、他の生産施設と相互接続され得るという利点を有する。該施設は、例えば、ナイロンまたは鉄鋼生産などの無関連の営利事業と関連しているものであってもよい。これらの2つの産業では、高温硫酸アンモニウムが製品製造の副産物として生成される。さらに、より一般的には、過剰の熱を発する(炉または窯の場合など)営利事業の近くに併設することにより、化石燃料(天然ガスなど)の必要性の代替の場合のように本発明により、または前記過剰の熱の利用による電気のコージェネレーションにより、この過剰の熱の使用が好都合に可能となり得る。本発明の加工施設をこのような型の立地に併設することにより、本発明の場合以外では望ましくない硫酸アンモニウムなどの副産物を運び去る必要がなく、本発明による肥料の製造に直接利用することができる。
【0043】
本発明の別の利点は、該方法では必要とされる水および電力(例えば、電気)の量、ならびに形成される廃棄物副産物の量が慣用的な加工と比べて最小限となるため、製造を、プラントが設置される具体的な地域社会の大きさのニーズに役立つような規模にできることである。このあつらえ設計により、より少量のバイオソリッド(例えば、1時間あたり3トン未満の脱水バイオソリッド)が加工され得るバイオソリッド加工/肥料製造プラント、またはより大型のプラント(例えば、1時間あたり10から12トンまで、もしくはこれ以上)に規模拡大することが可能になる。好ましい実施形態では、最適な規模は、バイオソリッドを25パーセントの固形分に標準化した場合、1時間あたり6から8トンである。1時間あたりに加工されるバイオソリッドの量は、バイオソリッドの固形分パーセントに依存する。バイオソリッドの含水量が増大するにつれて、1時間あたりに加工され得るバイオソリッドの量は比例的に増大する。この規模増減の特徴により、コストが削減され、互換性機器との標準化が可能となり、業務物流の効率が上がるとともに全体として不利益が減少する。
【0044】
本発明に従って加工され得る有機物質としては、限定されないがバイオソリッドが挙げられる。バイオソリッドの型としては、都市バイオソリッド、家庭下水、耕作および農業による廃棄物、動物の糞尿、消化された、および処理された動物の糞尿、リサイクルバイオソリッド肥料、有機バイオソリッド、微生物含有バイオソリッド、ならびに熱乾燥バイオソリッドが挙げられる。本発明の方法に従って加工され得る他の有機物質としては、限定されないが、製薬および実験過程ならびに発酵による廃棄物、工業有機廃棄物、微生物系物質、腐朽したおよび消化された有機物質、耕作および農業による廃棄物、収穫された植物材料、例えば、藻類、例えば、藍藻類、海草および他の水生植物ならびに水性有機堆積物、細菌、例えば、青緑色細菌およびシアノバクテリア(例えば、藍色、赤褐色、黒色)、ヘドロ、昆虫および昆虫バイオマス(例えば、身体の一部、糞尿)、カビおよび真菌、工業廃棄物およびこの副産物、有機生成物の微生物的、化学的および酵素的消化物、食品、食料品および食品副産物、ならびにこの組合せが挙げられる。慣用的なバイオソリッドに加え、ほとんどすべての有機物質、例えば、傷んだまたは腐った食料品、例えば限定されないが、肉、魚および農産物ならびにプラスチック、および炭素含有家庭ごみおよびリサイクル可能品が本発明の方法によって加工され得る。
【0045】
本発明の別の利点は、本発明の場合以外では廃棄が困難な有機物質、さらには特定の非有機物質を、本発明の場合以外では埋立地または海洋内の空間を占有する廃棄物となり得るものを有用な産物に変える方法としての本発明に従って加工できることである。非限定的な一例として、藻類は、美観目的のため、ならびにこの環境に生息している植物および動物の一般健康状態のために海面からすくい取られるか、または水域から収集される。多くの場合、このような藻類は、この環境から藻類によって吸収または代謝されて内部に濃縮された自然毒または毒性化合物で汚染されたものであり得る。本発明の方法に従って藻類を加工することにより、藻類は肥料に変換され得、重要なことには、毒素が破壊または不活化される。また、藻類または他の植物または細菌を意図的に汚染地域内または汚染地域上で生育させ、本発明による加工のために収穫してもよい。また、毒性汚染は濃縮の問題であるため、本発明の方法により生成される材料は、他の加工材料に添加することができ、ハザードが起こらないように充分に希釈されたものであり得る。この土地または水の再生方法は、収集され、本発明に従って加工され、無毒性または無害にされた生物体を有するさまざまな植物、細菌および昆虫により行われ得る。従って、本発明の方法は、被処理または未処理の土壌、腐植土および任意のほとんどのバイオマス、例えば、細胞成分、堆積有機物、ならびに生物材料に適用され得る。
【0046】
有機物質は、好ましくは、10から40パーセント、より好ましくは20から30パーセント、より好ましくは22から25パーセントの固形分まで脱水または水和される。また、具体的な有機物質の最適な固形分は経験的または実験的に決定され得る。本発明による加工のために受領される有機物質は、典型的には最適レベルよりも低い固形分を有するものである。好ましくは、不充分な固形分の有機物質は、70から95パーセント、好ましくは85から92パーセントの固形物濃度を有する「乾燥」有機物質とブレンド/混合することにより所望の濃度に調整され得る。「乾燥」有機物質は、第三者の供給元から入手され得るものであってもよく、入手可能な有機物質により熱乾燥によって生成され得るものであってもよい。熱乾燥過程は、加熱スクリューコンベア、ディスク乾燥機、回転式乾燥機、パドル混合機/乾燥機、流動床乾燥機および他の市販の方法/機器を包含している。この乾燥有機物質と不充分な固形物濃度の有機物質を混合槽内で混合し、経験的または実験的に決定される理想的な固形分にする。混合槽は、パグミル、混合スクリューコンベア、多軸混合機、リボンパドルブレンダー、ハイシェアミキサーまたは他の市販の高粘度スラリー混合機であり得る。好ましさは低いが、不充分な固形分の有機物質を、該物質を加熱し、所望の濃度が得られるように必要なだけ水分を除去することにより所望の濃度に調整してもよい。これも、上記のものと同じ熱乾燥機器で行われ得る。加工のために受領される有機物質は水和が必要なものであってもよく、必要な場合では、さらなる水は、好ましくは、加工の他の工程中に収集された水から添加される。このリサイクル水の使用は、本発明の効率性と有益な経済性の両方にさらに付加価値を与える。
【0047】
必要な場合は、採取過程で有機物質を、流動または移動を可能にするため、または向上させるために蒸気の圧入、水および/または熱によってコンディショニングしてもよい(例えば、チキソトロピーにする。)。このような初期工程において、初期臭気防除のため、および圧力槽内での反応のためのバイオソリッド調製のために、有機物質を酸化剤などの化学添加剤とブレンドしてもよい。例えば、臭気を最小限にするため、バイオソリッドに、黒リン酸または農業等級(grad)のリン酸が注入され得る。この例において、ここで添加したリン酸により、肥料製品中のリン酸分の最終濃度が変更される。この工程で製品に添加されるリン酸分の量は、0.5パーセントほどの少量であってもよく、6パーセントもの高量であってもよい。臭気の最小化に加え、リン酸は、製品肥料に価値のある栄養成分を付加する。
【0048】
好ましくは、臭気防除剤は、加工対象の初期の有機物質に添加されるが、1種類以上の臭気防除剤を加工中の任意の時点で、顆粒形成および冷却の際に添加してもよい。好ましい臭気防除剤としては、限定されないが、鉄酸カルシウム、鉄酸ナトリウム、鉄酸カリウム、硫酸第一鉄七水和物、ローゼン石、緑礬、塩化第二鉄、硫酸第一鉄、硫酸第一鉄一水和物、過酸化水素、および/またはオゾン、ならびにこの種々の他の塩、誘導体および組合せが挙げられる。臭気防除剤の量および型は、当業者によって経験的に決定され得るが、典型的な量は、該ミックスまたは顆粒の0.01重量パーセントから該ミックスまたは顆粒の6パーセントまでの範囲であり、好ましくは約0.05%、0.1%、0.25%、0.5%、0.75%、1.0%、1.5%、または2.0%である。
【0049】
有機物質、臭気防除剤および場合によってはリサイクル水が混合槽に送達され、ここでこれらが充分に混合され、ポンプ輸送または容易に輸送され得るチキソトロピーペーストが形成され得る。混合槽は、パグミル、混合スクリューコンベア、多軸混合機、リボンパドルブレンダー、ハイシェアミキサーまたは他の市販の高粘度スラリー混合機であり得る。パグミル、ブレンダーおよび混合機は、強力従動軸上に載置されたブレード形状のブレンド要素または可変的だが制御された速度で回転する軸を有する混合チャンバであり、これにより、ブレンド対象材料が、1秒間に多数回、分割、混合、逆混合および再分割され、信頼性のある粘稠度を有する均一で充分なブレンドが得られる。
【0050】
または、固形物濃度を達成する混合槽と、リサイクル水、リン酸、臭気防除剤または他の添加剤でのコンディショニングのための混合槽を、所望の混合エネルギーと時間が得られるのに充分なサイズの単一の混合機に併合してもよい。
【0051】
この混合物は、好ましくは間接加熱(加熱スクリューコンベア、パドル混合機もしくはディスク乾燥機など)、または直接加熱(水蒸気圧入など)によって、該方法の次の酸性化相での適正な反応に必要とされる温度まで加熱する。必要とされる温度は、使用される酸の型および濃度ならびに有機物質混合物の型および濃度によって決定される。混合物の加熱は、好ましくは、混合槽内での混合物の連続的な混合または攪拌および場合によっては槽自体の加熱を伴うものである。従って、該ミックスの所望の温度を達成するために必要とされる熱は、一部において槽の材質組成に応じて多くなる場合または少なくなる場合があり得る。好ましくは、所望の温度に達するのに必要とされる時間または混合物が長期間維持され得る時間に相当する保持期間、加熱を行う。好ましい期間(これは加熱時間を含む。)は、1から30分間、より好ましくは3から15分間、より好ましくは5から10分間(またはこれらの範囲の任意の組合せ)である。また、加熱時間は、加熱対象の混合物の量にも依存し得る。所望の温度に達するのにかかる時間にほぼ相当する加熱時間が好ましい。また、好ましさは低いが、混合槽または配管系内への蒸気または加熱ガスの直接注入によって加熱を行ってもよい。
【0052】
この加熱混合物に酸を、好ましい実施形態では、第1の圧力槽の供給口から添加すると発熱反応が起こり、これによりさらなる加熱が引き起こされる。酸は該混合物に、圧力槽内への直接注入によって添加してもよく、槽の供給口からの注入によって添加してもよい。圧力槽内で、混合物は攪拌または連続的に混合される。酸は非常に低いpH、好ましくはマイナス4.0のpHからプラス2.0のpHの範囲である。当業者にはわかるように、非常に強い酸の水性液では、水分子が少なすぎて酸が完全に解離しない。この結果、真のpHは実際の測定値よりもずっと低い。マイナスのpHは、水素イオンのモル濃度が1より大きい場合、pHの計算でモル濃度の対数がマイナスとなり得ることを意味する。使用される酸の好ましいpH値は、例えば、2.0以下のpH、1.0以下のpH、0.8以下のpH、マイナス1.0以下のpH、マイナス2.0以下のpHである。好ましい酸としては、限定されないが、塩酸、ホウ酸、次亜塩素酸、過塩素酸、炭酸、リン酸、硫酸、硝酸、フッ化水素酸、カルボン酸、ならびにこの誘導体、混合物および組合せが挙げられる。添加する酸の量および型は、当業者によって処理対象の有機物質の量および/または所望の結果(これは、限定されないが、所定温度もしくは圧力の達成または該混合物の液化のうちの1つ以上が挙げられる。)から決定される。一部においては、有機物質を液化させるため、慣用的なバイオソリッド加工施設に伴う典型的な問題である配管内へのケイ酸カルシウム、不溶性リン酸化合物または他の不溶性化合物の集積がほとんどまたは全くない。酸の添加によって発熱反応が引き起こされ、これにより容器が加熱されて圧力が増大する。反応開始時は雰囲気圧であるこの圧力は、実際には、通気のモニタリングまたは制御により酸性化の全過程を通して雰囲気圧に維持しても所望の圧力に維持してもよい。または、希釈反応の発熱による温度上昇に伴って圧力を増大させてもよい。かかる圧力は、通気の制御により、または通気なしで上限範囲60psigまで達し得る。
【0053】
混合物の温度は、好ましくは66C(150F)以上まで、例えば、82C(180F)から93C(200F)以上まで、より好ましくは104C(220F)、110C(230F)、116C(240F)、121C(250F)、127C(260F)、132C(270F)、137C(280F)、143C(290F)、149C(300F)、163C(325F)以上まで、または177C(350F)以上まで上げる。この酸性化は、酸性化中、槽内空気を解放することにより反応器内で加圧なしで行ってもよいが、好ましい実施形態では、酸性化ミックスの第2の槽への移送を助長するために、第1の槽または酸性化槽内の圧力を第2の槽で達する圧力より上に維持する。酸性化過程は3分間から30分間の保持時間、行い、好ましい時間は4分間から8分間である。
【0054】
その後のアンモニアベースの添加(好ましくは、第2圧力槽内)は、さらに該ミックスの温度に影響を及ぼし、好ましくは、温度を132C(270F)、例えば138C(280F)または143C(290F)以上まで、より好ましくは、149C(300F)以上まで、より好ましくは154C(310F)、160C(320F)、166C(330F)または171C(340F)以上まで、より好ましくは177C(350F)以上まで、例えば、182C(360F)、188C(370F)、191C(375F)、193C(380F)、199C(390F)、204C(400F)、210C(410F)、216C(420F)、221(430F)、227C(440F)または232C(450F)以上まで上昇させる。好ましくは、加熱は、所望の温度に達して反応終了が可能であるのに必要とされる時間に相当する保持期間、行う。好ましい反応期間(これには発熱による加熱時間が含まれる場合があり得る。)は1から30分間、より好ましくは3から15分間、より好ましくは5から10分間、またはこれらの範囲の任意の組合せである。また、反応時間は、反応対象の混合物の成分および/または構成および/または添加する酸の量および/または型にも依存し得る。反応は密閉容器槽内で行い、該容器槽のヘッドスペース内の圧力も増大させる。この場合も、圧力は、圧力解放弁により調節され得、好ましくは5psigから250psig、より好ましくは30psigから150psig、より好ましくは40から100psigに維持される。好ましい圧力としては、限定されないが、5、10、20、30、40、50、60、70、75、80、90、100、110、120、125、130、140、150、160、170、175、180、190、200、210、220、225、230、240および250psigが挙げられる。
【0055】
所望の時間、温度および圧力での酸の反応後、酸性化混合物は酸の圧力槽から排出され、第2圧力槽に移される。第2圧力槽では、アンモニアが該混合物に、第2圧力槽の供給口から、または第2圧力槽内に直接のいずれかで注入される。添加されるアンモニアの量および形態は、当業者によって処理対象の酸性化混合物または有機物質の量および所望の結果(これは、限定されないが、所定温度もしくは圧力の達成または該混合物の液化のうちの1つ以上が挙げられる。)から決定される。アンモニアの添加によって混合物の温度が増大して蒸気が発生し、これにより第2圧力槽内のヘッドスペース圧が増大する。この場合も、圧力は、圧力解放弁により調節され得、好ましくは50psigから200psig、より好ましくは75から150psig、より好ましくは100psigから130psig(またはこれらの範囲の任意の組合せ)に維持される。好ましくは、アンモニアの添加は、アンモニアを注入してアンモニア添加反応が完了するのに必要とされる時間に相当する保持期間、行う。好ましい期間は、1から30分間、より好ましくは3から15分間、より好ましくは5から10分間(またはこれらの範囲の任意の組合せ)である。また、アンモニアを注入してアンモニア添加反応が完了する時間は、存在させる酸性化混合物の量および/または添加するアンモニアの量および/または形態に依存し得る。この時点のpHは、好ましくは約1.5から約7.5、より好ましくは約6.0から約7.0である。
【0056】
バイオソリッドおよび他の形態の有機物質を用いる本発明の方法により、好ましくは取り扱いおよび作業が安全であり、また好ましくは、USEPA A級バイオソリッドの最低限の要件を満たす、および/または超える肥料が作製される。肥料製品は、好ましくは滅菌状態であり、生物学的および化学的汚染物質は少なくとも一部、好ましくは完全に加水分解されており、生物学的因子または生物体は、不活化点および/または破壊点まで変性されている。典型的な生物学的または化学的汚染物質としては、限定されないが、医薬化合物、抗生物質、ホルモン、ホルモン様分子、生物学的活性化合物、高分子、糖質、脂質、タンパク質、核酸、およびこの組合せのうちの1種類以上が挙げられる。
【0057】
本発明は、好ましくは、物質の従来のオートクレーブ処理でみられる、または該処理に伴うものを超えるストレス状態を作出する所定の保持期間にわたるストレスコンディショニングを含む。このオートクレーブ効果により、有機物質が破壊および/または不活化もしくは単純に滅菌される。有機物質中の微生物、例えば、細菌、ウイルス、真菌、寄生虫、寄生虫の卵、細菌および真菌の胞子ならびにこの組合せなども破壊および/または不活化される。また、本発明の方法は、好ましくは、タンパク質、核酸、脂質、脂肪、糖質およびこの組合せ、および/または存在し得る他の生物学的活性物質などの高分子が加水分解されるように設計される。
【0058】
該方法の工程中の任意の時点で、1種類以上の硬化剤が該混合物に添加され得る。好ましい硬化剤としては、限定されないが、酸化第二鉄、ミョウバン アタパルガイトクレイ、工業用糖蜜、リグニン、リグノスルホネート、尿素ホルムアルデヒド重合剤およびこの組合せが挙げられる。
【0059】
所望の時点(これは経験的または実験的に決定され得る。)で、該液状物は肥料に加工される。好ましくは、加工は、水分除去のための造粒機への移送および乾燥肥料顆粒の形成を伴うものである。60から88重量パーセントの(old)顆粒を内包し、顆粒を好ましくは熱により90パーセントより高い固形分まで、好ましくは98または99パーセントの固形分またはこれ以上まで乾燥させる造粒機内での加工が好ましい。好ましくは、顆粒から抽出された水を収集し、一部を該方法工程においてリサイクルさせ、残りを廃棄処理する。顆粒は、典型的には乾燥過程中、かなり高温であり、場合により、冷却室または冷却装置に移すことによって放冷してもよい。冷却中、オゾンを冷却器内に臭気防除手段として注入してもよい。注入されるオゾンの好ましい量は、冷却顆粒の重量の0.01%から5%、より好ましくは0.1%から2%、より好ましくは約0.5%から1%である。好ましくは、オゾンを冷却装置にスパージングによって導入する。
【0060】
乾燥して成形し、場合により冷却した後、顆粒を分粒し、0.5mmから4mmの顆粒径が好ましい。約2.8mmの標準肥料顆粒、特に約1mmの「ミニ」顆粒がより好ましい。
【0061】
1種類以上の市販の硬化剤が造粒機に添加され得る。好ましい硬化剤としては、限定されないが、リグノスルホネート、リグニン、糖蜜、またはこの組合せが挙げられる。4mmより大きい顆粒および0.5mm未満の顆粒を造粒機内にリサイクルさせる。所望のサイズの顆粒を1種類以上の市販の防塵剤でコーティングすることによりさらに加工する。好ましくは、4mmより大きい顆粒は破砕して0.5mm未満の顆粒と混合し、すべてを造粒機内でリサイクルさせる。
【0062】
本発明では、好ましくは、粉塵システムと臭気防除システムの両方を提供し、地域社会による製造プラントの許容を確実にし、USEPA基準を満たすこと、ならびに該プラントの工程空気からの価値のある窒素または他の潜在的および/または逸散性の植物栄養素の捕捉および組込みによって、該方法をより効率的にすることを助長させる。
【0063】
本発明の別の実施形態は本発明の方法によって製造される肥料である。本発明の好ましい一実施形態の有機修飾硫酸アンモニウム肥料の物理的および化学的特性を
図4に示す。バイオソリッドなどの有機物質による肥料は、粉末状であってもブロック状であってもよく、好ましくは所定サイズの顆粒の形態であり、研磨後、非研磨顆粒と比べて破砕に対して耐性である。さらに、好ましい顆粒は滑らかな外面を有し、くぼみまたは割れ目が少なく、円または楕円形状である。好ましくは、肥料に含有されている検出可能な未加水分解ポリマーはないか、または無視できる程度であり、好ましくは、有機混合物中のポリマー、例えば限定されないが、プラスチック、医薬化合物、抗生物質、ホルモン、ホルモン様分子、生物学的活性化合物、高分子、糖質、核酸、脂肪、脂質、タンパク質、および微生物は加水分解されている。加水分解ポリマーは該ポリマーのモノマーを構成しており、該モノマーは製品中に蓄積され、好ましくはアミノ酸である。
【0064】
本発明の方法により、好ましくは、従来の無機系肥料と対比して国内市場および国際市場において競争できる価値のある高窒素制御放出(例えば、低速放出または二元放出)型の市販肥料製品の作製に好適な乾燥度、硬度および化学品質のUSEPA A級肥料製品の顆粒またはペレットの作製がもたらされる。市販の高窒素肥料は、好ましくは完成肥料の8パーセント(乾燥重量)より多い窒素、より好ましくは完成肥料の少なくとも16パーセント(乾燥重量)の窒素を有する。A級という特性は、40C.F.R.§503に規定された都市バイオソリッド含有産物に対する米国環境保護庁のA級微生物学的基準を満たす完成肥料製品の微生物学的品質を示す。また、本発明の肥料は、ストレス状態および使用される保持時間に基づいてこの基準を満たしているか、またはこれを超えるものであり、従って、関連するUSEPAの病害虫昆虫の誘因基準(Vector Attraction Standards)を満たすこと(完成品において90パーセント以上の固形分)、完成肥料顆粒が最小限の含水量で最適化されて硬度特性を増大し、完成肥料の輸送に関して水分が排除されることが確実である。完成品のパーセントの固形分は、好ましくは92パーセントより多くの固形分、より好ましくは97パーセントより多くの固形分、より好ましくは99パーセントより多くの固形分である。
【0065】
本発明の方法に従って処理されたバイオソリッドは、典型的には、ヒ素、カドミウム、銅、鉛、水銀、モリブデン、ニッケル、セレンおよび/または亜鉛などの含有金属が低レベルである。低レベルとは、有害とみなされるものより低い、および都市バイオソリッド含有産物に関してUSEPAによって発表された金属に対する例外品質(「EQ」)基準より低いレベルである。従って、高分子(例えば、抗生物質などの個人用医薬品またはホルモンもしくはホルモン様物質)に関するUSEPA規制値および加水分解装置または圧力槽の加水分解条件を超えることにより、得られる肥料は、耕作、植物および動物における使用または周辺使用に安全であり、作業者による加工、取り扱い、流通および販売時の取り扱いが抜群に安全である。
【0066】
作製される肥料製品にはバイオソリッドと高含有量の望ましい窒素の両方が含有されているため、好ましい実施形態では、さまざまな特定の栄養素配合の肥料が得られ、このうち、以下のもの:16−0.5−0−18−3−15または16−0.5−2−17−3−14(窒素−リン−カリウム−硫黄−鉄−有機分)低速放出顆粒状肥料が典型的であり、これは、少なくとも99パーセント乾燥しており、米国環境保護庁(United States Environmental Protection Agency:USEPA)のA級要件および例外品質(EQ)基準を超えている。必要な時と場合において、16パーセントの制御放出有機窒素成分が根域における窒素の結合を補助する。例えば、アンモニウムイオン中の窒素は、バイオソリッドの成分に結合しているため、揮発(volatize)または根域より下の地下水中に喪失されるのではなく、根域中にゆっくり移動して植物に利用可能な状態で留まる。この結果、窒素は経時的に植物にゆっくり吸収され得る。
【0067】
肥料製品を望ましい元素成分含有量にあつらえてもよい。好ましくは、肥料は、6から20パーセント、より好ましくは8から18パーセントの窒素含有量、0から10パーセント、より好ましくは無しから5パーセントのリン酸分含有量、0から5パーセント、より好ましくは1から4パーセントのカリウム含有量、10から30パーセント、より好ましくは15から20パーセントの硫黄含有量、0から10パーセント、より好ましくは1から4パーセントの鉄含有量、および5から30パーセント、より好ましくは10から20パーセントの有機質含有量(またはこれらの範囲の任意の組合せ)を有するものである。
【0068】
肥料製品は窒素を、肥料の有機化合物および他の化学物質化合物に非共有結合されたアンモニウムイオンの形態で含有している。硫酸アンモニウム肥料とは異なり、結合型アンモニウムイオンは、適用時に土壌中にすべてが即時に放出されるわけではない。そうではなく、肥料の利用可能な窒素の約30から60%を表す大量窒素の土壌への即時放出がみられる。この高速放出は、典型的には1から2週間の期間にわたり、慣用的な硫酸アンモニウム肥料(典型的には、この利用可能な窒素の90%以上が土壌に約5から10日間で放出される。)より遅いが、慣用的な純粋バイオソリッド肥料の窒素放出と同等または若干速い。続く数日間から数週間にわたって、本発明の肥料の残りの窒素量が徐々に土壌中に放出される。日光、熱、水および/または土壌中の微生物が肥料に作用し、イオン結合をゆっくり分解して利用可能な窒素を植物の根に放出する。好ましくは、窒素放出はだいたい1週間あたり約1%から5%、より好ましくは1週間あたり約2%から4%である。少量の窒素が肥料中の化合物に共有結合されることがあり得、これにより植物に利用可能でないままとなる。好ましくは、この利用可能でない窒素の量は肥料製品の全窒素の5%以下、より好ましくは2%以下、より好ましくは1%以下である。この二元窒素放出プロフィールは慣用的な肥料では得られ得ない。
【0069】
本発明の二元放出肥料により、大量窒素が生育中または新生の植物(例えば、商用作物(例えば、果物、野菜、穀類、樹木))に供給され、次いで継続的な量が好ましくは生育期の全体または一部にわたって提供される肥料の単回適用が可能になる(例えば、
図7参照)。これにより、作物ごとに必要とされる肥料適用回数が最小限になり、適用支出においてかなりの節約がもたらされる。
【0070】
本発明の別の実施形態は、所定の含有量の窒素、リン酸分および/またはカリウムの1種類以上を有する肥料の製造方法に関する。有機物質の加工は本明細書に記載のようにして進められ、この場合、選択される酸は最終肥料製品に所望される型および量のものである。例えば、設定された量のリン酸を使用すると、設定された量のリン酸分が最終肥料製品において得られる。特定量の硫酸を使用することにより、特定量の硫黄が肥料中に保持される。酸の型と量を選択することにより、作製される肥料製品中の含有量を事前に選択することができる。好ましくは、肥料には、1種類以上の植物栄養素(加工の1つ以上の工程中に添加)を補給する。1種類以上の植物栄養素としては、限定されないが、尿素、硝酸アンモニウム、硫酸アンモニウム、リン酸一アンモニウム、リン酸二アンモニウム、尿素 硝酸アンモニウム、液体尿素、カリ、酸化鉄、可溶性鉄、キレート化鉄、マグネシウムなどの微量栄養素、マンガン、銅、亜鉛、モリブデンまたはホウ素、およびこの組合せが挙げられる。
【0071】
本発明の別の実施形態は肥料の製造のためのシステムに関する。この発明は、バイオソリッド含有有機成分を、場合により臭気防除剤とブレンドする混合機を備えている。次いで、混合物はこの混合機内または別の加熱槽内のいずれかで加熱される。混合物の加熱は、好ましくは、間接加熱(例えば、容器壁の加熱もしくは混合機の加熱)または直接加熱(例えば、蒸気もしくは加熱空気の注入)のいずれかによる熱付加中に連続的な混合または攪拌を伴うものである。次いで、この加熱混合物は第1圧力槽に移される。圧力槽は、好ましくは、コンディショニングされた酸性バイオソリッドペーストによる連続的な発熱反応を伴う激しい混合が可能な構成のものである。第1圧力槽には攪拌器/混合機が組み込まれている。また、該圧力槽内に、該槽に対して外部であっても内部であってもよい加熱要素もまた組み込んでもよい。酸を加熱バイオソリッドと第1圧力槽内で直接ブレンドしてもよく、好ましくは、酸と加熱バイオソリッドをT字型混合機内で合わせ、一緒に圧力槽に添加する。圧力槽内では、熱と圧力の蓄積が一定期間継続し、ペースト様バイオソリッドミックスの液状物が形成される。この液状ミックスを同じ圧力槽内でさらに処理してもよく、好ましくは、配管または導管を通して第2圧力槽に移される。このミックスは、好ましくは、バイオソリッド材料が導管内に残留する可能性が抑制または最小限となるように乱流で移す。また、好ましくは、酸性化した液状ミックスをT字型混合機内でアンモニア供給源からのアンモニア、好ましくは液体アンモニアと合わされ、一緒に強制的に第2圧力槽に注入される。好ましくは、該液状物ミックスは加圧ガスによって導管を強制通過させ、該ガスは、すべての該液状物ミックスが第2の槽に移されることが確実となるように該液状混合物の後からシステムに添加される。好ましくは、ガス(これは、空気であっても別のガス状化合物または混合物であってもよい。)は、第2の槽内の解放弁によってパージされる。第2圧力槽内では、酸性化して窒素価を高めた液状ミックスが第2の期間、第2の所定温度まで発熱する、および/または加熱され、第2の所定圧力まで加圧される。好ましくは、アンモニア供給源は、圧力下の液化および/または気化されたアンモニアである。また、第1および第2圧力槽の各々に攪拌器または混合物を継続的に混合する他の機構が内包されたシステムも好ましい。または、第1および第2圧力槽は同じであってもよい。アンモニア添加後、混合物はパグミルまたは造粒機に移され、ここで蒸気および水蒸気が放出され、アンモニア添加された液状物が予備形成顆粒と混合され(一般的に「リサイクル」と称する。)、新たな肥料顆粒が形成または成形される。次いで、この顆粒は回転式乾燥機または流動床乾燥機内で加熱され、肥料の乾燥顆粒が形成される。好ましい実施形態において、全反応過程は、閉じたループのコンピュータ制御によって制御され、該コンピュータ制御により、硫酸、アンモニア、植物栄養素、pH調整剤の添加および圧力制御によって発熱反応が連続的にモニタリングされ、調整される。好ましい制御機構は、この圧力槽内のバイオソリッド上部のヘッドスペースの圧力の調整によるものである。また、該システムには、好ましくは、バイオソリッドを混合機に輸送するためのコンベア(例えば、ポンプまたはスクリューコンベア、コンベアベルト)およびブレンドバイオソリッドを第1圧力槽に輸送するための別のポンプ;酸性化されたバイオソリッドを第1圧力槽から第2圧力槽に、アンモニアを第2圧力槽内に輸送し;アンモニア添加された液状物を造粒機に分散させる加圧配管系を含める。従って、全過程は、バイオソリッドの圧力槽の内外への連続的な流れを止める必要なく行われる。
【0072】
造粒機には、好ましくは、バイオソリッド肥料を1パーセント未満の含水量までさらに乾燥させる回転式乾燥機または流動床乾燥機が存在しているか、または組み込まれている。乾燥機から排出されたら、バイオソリッド肥料はサイズについてさらにスクリーニングされ、製品、標準サイズ以下の顆粒群およびオーバーサイズの顆粒群に分離される。標準サイズ以下の粒子は、リサイクルして第2パグミルの入り口に戻される。オーバーサイズの粒子はハンマーミルに送られ、ここで該粒子は破砕され、次いでリサイクルされる。スクリーニング過程を終えたら、バイオソリッド肥料顆粒は回転式冷却器によって加工され、ここでバイオソリッド肥料は冷却される。場合により、冷却器に、冷却中の肥料にオゾンを供給するオゾン発生器を含めてもよい。オゾンの存在下では、臭気原因物質が酸素およびバイオソリッド中に存在する考えられ得る他の分子と複合体形成し、嫌な臭気がかなり低減または排除される。肥料顆粒は最終の研磨スクリーンに流れ込み、標準サイズ以下の顆粒または冷却過程中に生成した粉塵が除去される。研磨スクリーンによる加工後、生成物はコーティングドラムを通過し、ここでダスティングを抑止するコーティング剤が添加される。次いで、バイオソリッド肥料は、ばら積み輸送またはその後の包装の準備が整った倉庫に送られる。または、顆粒を空気研磨システムに供してもよく、該システムは冷却過程で生成した熱気を乾燥段階連続的にリサイクルさせ、加工のための燃料使用および無駄な空気の低減をもたらす。スクリーンおよび機器から引き出された空気は粉塵収集器内で清浄にされ、熱交換器によって冷却され、供給空気として冷却器に再使用される。冷却器から排出された熱気は再度、粉塵収集器内で清浄にされる。この清浄熱気は供給空気として回転式乾燥機に使用される。また、該システムに、好ましくは、所定サイズの顆粒を選別するための1つ以上のスクリーンおよび分粒された顆粒を冷却および研磨するための回転式冷却器を内包させる。本発明のシステムは、好ましくは、造粒機からの粉塵を収集する防塵装置(例えば、バキュームおよびバグハウス)、また、水回収システムも備えており、これにより、加工中にバイオソリッドから抽出された水が回収されてリサイクルされ、システムが非常に効率的となる。
【0073】
好ましい実施形態では、工程空気は、逸散性の臭気物質(あれば)および特に気化した、またはガス状のアンモニアを除去するために酸洗浄する。捕捉されたアンモニア(アンモニウム塩として)は、反応槽または混合機に進入する前にバイオソリッドミックスに戻されて混合され、これによりシステム全体の効率が増大し、完成肥料中の最終窒素濃度が最大限になる。種々雑多な残留物、例えば、粉塵、非指定生成物または再生生成物および小さすぎるか標準サイズ以下であるかもしくはオーバーサイズ物質である乾燥肥料(これは破砕装置もしくはミル装置内で破砕され、または完成肥料組成物に添加され得る消費者に好まれるであろう他の添加剤(例えば、鉄)を含めてもよい。)は、圧力槽の下流または造粒機に直接配置される存在させてもよいパグミルまたは混合機に添加される。造粒過程中、ミックスの凝集を補助し、乾燥されたペレットまたは顆粒の硬度に寄与する硬化剤(1種類または複数種)が第2パグミルまたは造粒機に添加される。硬化剤(1種類または複数種)は、とりわけアタパルガイトクレイ、リグニン、工業用糖蜜およびミョウバン、またはこれらの硬化剤の当業者に知られた混合物を含む群から選択される。
【0074】
場合により消費者の要求に応じて、さらなる植物栄養素、例えば、カリまたは他の形態のカリウム、例えば、水酸化カリウムが好ましくはパグミルまたは造粒機に添加される。同じく添加され得る固形栄養素は、尿素、硝酸アンモニウム、リン酸一アンモニウム、リン酸二アンモニウム、塩化亜鉛および/またはカリを含む。また、この第2パグミルには必要とされる任意のさらなる鉄も添加される。鉄は、重要で価値のある植物栄養素を肥料ミックスに付与する。
【0075】
また、アンモニウム塩の形成を完了させるため、および該ミックスのpHを制御して完成顆粒の形成を助長するために、さらなるアンモニアをパグミル内および造粒機内に直接スパージングしてもよい。また、pHを調整するために使用される固形物は、主に、炭酸カルシウム、水酸化ナトリウム、酸化カルシウム、セメントキルン粉塵、石灰キルン粉塵、C級フライアッシュ、F級フライアッシュ、多段バーナー灰、ミョウバン、水処理由来のミョウバンバイオソリッドおよび木灰を含む群から選択されるアルカリ性薬剤であり得る。これらはスクリューコンベアにより、各化合物に特異的な速度で添加される。また、液状添加物としては、pH調整物質(酸、例えば、リン酸もしくは硫酸など)、または苛性溶液(例えば、水酸化ナトリウム)が挙げられる。これらはそれぞれの速度で、パグミル内に進入する注入リングにポンプ輸送される。
【0076】
本発明の肥料製品は、好ましくは5.0から7.0のpH、より好ましくはpH5.8からpH7.0、より好ましくはpH6.2からpH6.9を有するものである。ペレットまたは顆粒作製の場合のような成形のための加工の残りとしては、特に高容量処理量プラントのための標準肥料造粒技術が挙げられる。ペレットまたは顆粒作製は、特に、1日あたりの製品産生が25トン未満であるものとみなされる小規模処理量プラントでは、注入もしくは押出しの後、ペレットもしくは顆粒のミリングもしくは小球化を行うなどのより革新的な技術を伴うものであっても、造粒機もしくは造粒パグミルからの単純な排出を伴うものであってもよい。造粒機または造粒パグミルが使用される場合、いくらかのリサイクル物(乾燥種材料など、即ち、乾燥微粉および破砕器もしくはミルによって生じる微粉または肥料製品の指定外物質もしくは再生物質)を、パグミルおよび造粒機内に供給し、ミックス中に存在する水分のパーセントを、凝集または核形成が起こって顆粒の形成がもたらされ得るように調整することが好ましい。
【0077】
他の好ましい実施形態は、本明細書に開示した方法の調整を含む。この実施形態において、一連の方法においてペレット形成器が造粒機内の所定の場所に組み込まれる。ペレット形成器は、好ましい乾燥度までの乾燥工程を含むものであり得、または形成されたペレットを、次いで乾燥機、好ましくは流動床乾燥機に移して好ましい乾燥度を得てもよい。また、これらの他の実施形態に、pH、乾燥度、製品中の栄養素、形状、濃度などを制御して種々の植物(バラ、シャクナゲ、および任意の他の花、野菜、ハーブなど)に特異的な多量の肥料ならびに猫砂などの製品を作製するための調整を組み込んでもよい。また、調整は、製品が適用される地理的領域に応じて行われ得、例えば、この土地に固有に存在し得る、または存在しない栄養素が変更され得る。かかる変更の例としては、異なる量でのカルシウム、カリウムまたはリンの添加が挙げられる。
【0078】
最終乾燥のための通常の乾燥は、水平流動床乾燥機または回転式ドラム乾燥機を用いて行われる。乾燥されたペレットまたは顆粒(これは、92パーセントより多い固形分、好ましくは95パーセントより多い固形分、より好ましくは98パーセントより多い、さらにより好ましくは99パーセントより多い固形分である。)は、次いで、1つ以上のスクリーンを通して分粒される。指定サイズは消費者の要求に応じて異なり得るが、販売に好適な製品の範囲は0.5mmから4mmであり、市販用の通常サイズの肥料の範囲は2mmから3mmである。また、本発明を、ゴルフコース用途における使用に適した0.5mmから1.3mmの範囲の最小限のサイズの製品に製造してもよい。適正なサイズの物質は分離され、次いで冷却され、次いでコーティングされ、次いで装置内で、好ましくは回転式ドラム内で60C(140F)より下、好ましくは49C(120F)より下、より好ましくは43C(110F)より下まで冷却される。顆粒またはペレットの最適な冷却は回転式ドラム装置内で、周囲空気またはアンモニアエバポレーション冷却器からの冷却空気を用いて行われる。コーティングは、この目的のための特別なコーティング槽、典型的には回転式ドラムまたは混合機内で行われ得る。または、冷却およびコーティングを、物質が冷却され、コーティング剤と顆粒が混合される単一の槽内で行ってもよい。コーティングは、輸送、貯蔵および適用時の粉塵の生成を最小限にする除塵剤またはつや出し材を伴う。コーティングされた完成顆粒またはペレットは、次いで、完成された高窒素含有生物有機化学的強化無機アンモニウム肥料として、製造場所から発送されるまで貯蔵部に送られる。適正にコーティングされた乾燥ペレットまたは顆粒は、ダスティングならびに輸送、発送および適用時の取り扱いに抵抗性であるために5ポンドより大きい破砕抵抗性の硬度を有する。除塵剤コーティングまたはつや出し材は、多くの場合、コーティング装置内での適用のために溶融状態を維持するため高温、多くの場合71から105C(160から220F)が必要とされる。
【0079】
顆粒貯蔵施設または倉庫は(通常、顆粒を内包するビンまたはサイロが組み込まれている。)は、分解および破壊に至る顆粒の凝集を抑制するために乾燥状態でなければならない。完成品は、製造されると、動物または人間に有害な検出可能な量のバイアブル微生物(大腸菌または連鎖球菌など)を実質的に有しない滅菌された肥料になる。バイアブル微生物が実質的にないとは、肥料が微生物学的に安全であり、検出可能な量を有しないか、または検出可能な量が安全な取り扱いおよびバイオソリッド由来の微生物の使用の閾値より充分に下であることを意味する。肥料は製造中に滅菌状態にされるが、浮遊微生物もしくは動物に堆積された微生物による汚染または貯蔵もしくは使用中の他の汚染が予測され得る。いずれの場合も、肥料製品は乾燥状態であり、ほとんどの無機アンモニウム塩は、公衆衛生問題がもたらされ得る速度での微生物の増殖を支持しない。
【0080】
通常の操作中は、検査、修理または交換のために定期的なプラント機器の停止が必要である。これは、具体的な状況に応じて種々の度合いて行われる。一実施形態では、停止は、プラント制御プロセッサによって提供される自動コマンドシーケンスの場合のように自動的であり;別の実施形態では、停止は手動で行われる。
【0081】
1台の機器に対して該方法の限定的な停止が必要な場合は、反応器槽内へのバイオソリッドの流れが停止され得る。第1圧力槽の前のライン内の材料は有機混合物混合機(1つまたは)内にエバキュエーションされる。圧力槽および関連パイプ内の材料は、別の弁と、配管系と、造粒機内の「リサイクル」顆粒床または利用可能でない場合はかかる事象のために設けられた緊急貯蔵タンクシステムに対する空気圧とを用いてエバキュエーションされる。圧力槽内において、肥料ミックスが通常排出点より下まで減少すると、排出部の誘導弁が閉じて圧力槽の通常排出が封鎖される。次いで、圧力槽底部の誘導弁がシフトし、圧縮空気が圧力槽のヘッドスペースに進入することが可能になり、残りの物質が肥料ミックス戻りライン内に押し込まれる。さらなるクリーニングが必要な場合は、次いで、工程用水を圧力槽内に注入した後、圧縮空気でこの水をパージする。造粒機、乾燥機および後続のすべての機器の清掃は、これらを槽が空になるまで作動させることにより行われる。
【0082】
本発明の肥料は、8から18重量パーセント、好ましくは16重量パーセント(大きな商品評価を可能にする。)の目標窒素(N)含有量を増強する有意な量のリン酸分、硫黄および鉄を含む高窒素肥料要件のニーズに適合するように好ましく化学的に調整される。
【0083】
図1および2は本発明の実施形態の模式図を示し、この場合、これらの実施形態の方法では、さらなる植物栄養素、アンモニウム塩肥料および結合剤と合わせた脱水都市バイオソリッドを使用している。この例では、処理対象のバイオソリッドは、多くの場合「バイオソリッドケーク」と称される脱水バイオソリッドである。このバイオソリッドは製造施設に送達され、ここでバイオソリッドのコンディショニングの準備ができるまで貯蔵ビン内に貯蔵される。コンディショニングは、まず第1パグミル内で鉄または他の臭気防除用薬剤と激しく混合またはブレンドすることにより行われ、酸化剤も混合またはブレンドしてもよく、これにより、チキソトロピーバイオソリッドがポンプ輸送可能なミックス、ペーストまたはペースト様ミックスに変換される。鉄および/または酸化剤は、還元硫黄化合物およびバイオソリッド中に存在する他の臭気物質と反応する。リン酸をこの第1パグミルに添加した場合、バイオソリッド中に存在する臭気物質の修飾が補助され、最終製品中にみられる大部分のリン栄養素に寄与する。バイオソリッドが一連の機器を通って加工されるにつれて、さらなる植物栄養素が該ミックス中に注入され得る。この実施形態では、バイオソリッドは、第1反応槽にポンプ輸送される前にパグミルを通過中に加熱される。ここに示す好ましい実施形態では、2つの硫酸流(68パーセントから105パーセントまでの硫酸濃度範囲)を槽内に注入し、このとき該ミックスは酸性化され、液化が始まる。該ミックスは、第1圧力槽から排出されたら圧力下で第2圧力槽内に移され、ここで一次窒素注入反応が起こる。この図では、スパージャーによってアンモニア(または他の窒素供給源)をガスまたは液体として注入している。両槽内でのこの反応は、温度、圧力、保持時間、pHおよび窒素(これらはすべて、投入バイオソリッド材料および処理された乾燥バイオソリッドの所望の産出量に基づいて経験的に決定され得る。)が最適となるように注意深く制御される。圧力槽には複数の弁と、システムを自動化する機能を果たす制御部が含まれている。温度、圧力およびpHならびに栄養素レベルを制御するために添加剤を使用してもよい。圧力槽にポンプ輸送される窒素供給源は、無水または水性アンモニアなどの塩基を含む。バイオソリッドと硫酸アンモニウムおよびリン酸アンモニウムとのミックスを形成すると、これは、アンモニウムイオンがバイオソリッド由来の両性有機分子に電気的結合状態になるため分子的に一体化した状態になり、これにより最終肥料顆粒において低速放出または制御放出型窒素がもたらされる。同様に、この電気的結合は、該ミックス中に存在する硫酸分およびリン酸分と鉄分子との間にも生じ得、これによりこれらの栄養素分子も同様に低速放出または制御放出状態となる。このミックスは、圧力槽中を移動するにつれて、保持期間ストレス状態に維持される。保持期間はこの保持時間によって決定され、さらに、保持時間は本明細書に記載のヘッド部の圧力と容積に基づく。ストレス状態としては、好ましくは高温および/または高圧が挙げられる。高温は、一部または完全に成分の発熱反応によってもたらされ、これにより該ミックスの温度が上昇され得る。このような温度では、該ミックスから蒸気が発生する。この蒸気を、弁による制御放出下で圧力槽から排出させ、該ミックスの部分乾燥を行う。バイオソリッドが圧力槽内で受けるストレス状態および保持期間は、滅菌されており、またバイオソリッド由来の加水分解高分子が含有されたミックスの作製がもたらされるように制御される。また、ストレス状態および保持期間の制御により、存在している有機分子と形成されたアンモニウムイオンの融合(存在している窒素の自然な低速放出特性をもたらす。)、ならびにバイオソリッド中に存在している多くの高分子(タンパク質、プラスチックおよび他のポリマーなど)の変性およびまたは加水分解ももたらされる。かかる分子が生物学的に活性である場合、この変性および/または加水分解により該分子が低活性または不活性となり、これにより公共使用または曝露がより安全なミックスが得られる。必要な肥料特性および生物学的不活化を誘導するための保持時間は、圧力槽内へのバイオソリッドの連続的なポンプ輸送および流れによって制御される。古いプラントの従来のバッチ加工と対比して本発明のこの連続的な流れ加工により、本発明の高処理量が補助される。また、この連続的な流れにより、詰まりを除くための中断時間が必要とされる目詰まりに関連する該方法の問題が最小限となる。
【0084】
この新規な液状バイオソリッド混合物は、圧力槽から流れ出て、場合により、硬化剤(1種類または複数種)および場合によってはさらなる栄養素と混合され、肥料が所望のとおりに微調整される。該ミックスは、造粒または押出しによって顆粒(ペレットなど、または他の小型の構造体)にさらに処理される。顆粒は回転式乾燥機内で乾燥され、1つ以上のスクリーンを通過して、オーバーサイズの物質と標準サイズ以下の物質が適正サイズの物質から分離される。オーバーサイズの物質は破砕器またはミル内で破砕され得る。続いて、標準サイズ以下の物質と破砕されたオーバーサイズの物質はリサイクルされ、肥料ミックスの造粒が助長され得る。得られた適正サイズの顆粒は次いで、回転式冷却器内で乾燥され、分粒され、コーティングされ、冷却され、貯蔵される。成形過程に従来の造粒機を使用すると、気化アンモニアおよびリサイクル物添加によるアンモニア添加が起こり得る。該ミックスから蒸気として圧力槽から、ならびに後続の槽から蒸気および/または水蒸気として除かれた水分は、凝縮され、好ましくは廃棄物水処理プラント(WWTP)に戻され得るか、または処理されて、隣接する水源中または大気中に排出され得る。放出工程空気中のアンモニアの捕捉により保持された水は、工程用水格納槽に戻される。該方法の最適な臭気防除および本発明により得られる肥料の臭気の最適化のため、この工程用水は、25パーセントから50パーセントの液体過酸化水素で処理されてこの工程用水に付随する臭気化学物質の大部分が排除された後、続いて、バイオソリッドミックスに第1パグミルの直前で、または該ミル内で添加され得る。または、臭気のある工程用水をガス状オゾン(拡散器によって工程用水中で起泡させる。)で処理してもよく、これによっても、この水に付随する臭気物質の大部分が排除される。
【0085】
別の実施形態では、本明細書に記載の酸/塩基反応を行うために一連の反応槽を使用する。本発明の好ましい実施形態では、2反応器槽シーケンスが使用され得る。オプションの1つの実施形態では、酸反応のための一方の反応器槽での化合の後に、パイプクロス型反応器で行われるアンモニア添加がなされ得る。または、別の実施形態では、反応を、バイオソリッドミックスの酸性化のための第1パイプクロス型反応器、続いて圧力槽内でアンモニア添加を行うシーケンスで行ってもよい。また、酸性化反応を第1パイプクロス型反応器内で行った後、アンモニア添加反応を第2パイプクロス型反応器内で行う実施形態も記載される。
【0086】
本発明の別の実施形態は、第1パグミル内で行われる一部または完全なバイオソリッドミックスの酸性化を有するものであってもよい。一部または完全に酸性化されたバイオソリッドミックスは、次いで、第1反応槽内でのアンモニア添加によって処理され得る。該ミックスを一部酸性化した場合、酸/塩基反応をこの第1槽内で完了させてもよく、未完了のミックスを第2反応器槽(またはパイプクロス型反応器)に移して完了させてもよい。
【0087】
本発明の別の実施形態は、本明細書に記載の本発明の方法によって処理した有機物質からの製品の製造のためのシステムに関する。圧力、熱およびアンモニア処理の組合せにより、本発明の場合以外では汚染された状態の有機物質中に存在する毒素および他の有害な化合物が破壊または不活化される。得られる製品は、肥料もしくは他の栄養素もしくは植物および/または動物用の支持体として、または例えば建設もしくは生育場所創出(habitat creation)などの別の業界において使用され得る。
【0088】
以下の実施例に本発明の実施形態を例示するが、本発明の範囲を限定するものとみなすべきでない。
【実施例】
【0089】
[実施例1]
16パーセントの固形分を有する900グラムの原料バイオソリッドに、15グラムの工程用水、38.6グラムの硫酸鉄、および21.8グラムのリン酸を添加した。混合物を約1,250cPの粘度まで充分に混合し(10rpm)、次いで、攪拌型圧力槽内で約54C(130F)まで加熱し、通気して0psig(周囲)の雰囲気圧を維持した。411.4グラムの93パーセント硫酸をこの加熱混合物に添加し、5分間で最大温度に達するようにした。混合物の温度は約104C(220F)まで上昇し、槽を通気して雰囲気圧を0psigに維持した。粘度は、誘導された剪断速度に応じて760cPから3630cPの範囲であった。
【0090】
[実施例2]
23.5パーセントの固形分を有する730グラムの原料バイオソリッドに、56グラムの工程用水、45.9グラムの硫酸鉄、および25.9グラムのリン酸を添加した。混合物を攪拌型圧力槽内で54C(130F)まで加熱し、通気して0psigの雰囲気圧を維持した。490.1グラムの93パーセント硫酸をこの加熱混合物に添加し、5分間で温度および最大圧力に達するようにした。混合物の温度は約116C(241F)まで、および圧力は最大40psigまで上昇した。最大圧力時、165グラムのアンモニアを添加し、このアンモニア添加混合物を5分間で温度および最大圧力に達するようにすると、その後、温度は183C(362F)まで上昇し、圧力は111psigまで上昇した。粘度は、誘導された剪断速度に応じて約518から968cPであった。
【0091】
[実施例3]
6.7のpHおよび24.5パーセントの固形分を有する720グラムのバイオソリッドに、50グラムの工程用水および47.2グラムの硫酸鉄を添加した。混合物を充分に混合し、次いで、攪拌型圧力槽内で約54C(130F)および最大圧力26psigに達するまで加熱した。503.9グラムの93パーセント硫酸をこの加熱加圧混合物に添加した。混合物の温度は114C(238F)まで、および圧力は最大58psigまで上昇した。最大圧力で5分後、170グラムのアンモニアを添加し、このアンモニア添加混合物を5分間で温度および最大圧力に達するようにすると、この時間後、混合物の温度は182C(360F)まで、および圧力は109psigまで上昇した。次いで、この液化混合物を造粒機内に噴霧し、混合物全体を乾燥させた。造粒機内で得られた混合物には、約80重量パーセントのリサイクル肥料顆粒が含有されていた。顆粒を約2から4mmのサイズに分粒し、含有量について試験した。顆粒は、16(N)−2(P)−0(K)−175(S)−1(Fe)−15(Org)を含むものであることがわかった。
【0092】
[実施例4]
6.45のpHおよび23パーセントの固形分を有する720グラムのバイオソリッドに、100グラムの工程用水および146グラムの硫酸鉄を添加した。混合物を充分に混合し、次いで、攪拌型圧力槽内で約54C(130F)および最大圧力23psigに達するまで加熱した。406グラムの93パーセント硫酸をこの加熱加圧混合物に添加した。混合物の温度は111C(232F)まで、および圧力は最大34psigまで上昇した。最大圧力で5分間の後、166グラムのアンモニアを添加し、このアンモニア添加混合物を5分間で温度および最大圧力に達するようにすると、この時間後、混合物の温度は176C(348F)まで、および圧力は106psigまで上昇した。次いで、この液化混合物を造粒機内に噴霧し、混合物全体を乾燥させた。造粒機内で得られた混合物には、約80重量パーセントのリサイクル肥料顆粒が含有されていた。顆粒を約2から4mmのサイズに分粒し、含有量について試験した。顆粒は、16(N)−0(P)−0(K)−175(S)−3(Fe)−15(Org)を含むものであることがわかった。
【0093】
[実施例5]
6.54のpHおよび23パーセントの固形分を有する600グラムのバイオソリッドに、130グラムの工程用水および158.9グラムの硫酸鉄を添加した。混合物を充分に混合し、次いで、攪拌型圧力槽内で約54C(130F)および最大圧力21psigに達するまで加熱した。511.7グラムの93パーセント硫酸をこの加熱加圧混合物に添加した。混合物の温度は118C(244F)まで、および圧力は最大46psigまで上昇した。最大圧力で5分後、183グラムのアンモニアを添加し、このアンモニア添加混合物を5分間で温度および最大圧力に達するようにすると、この時間後、混合物の温度は175C(3347F)まで、および圧力は107psigまで上昇した。この液化混合物を造粒機内に噴霧し、混合物全体を乾燥させた。造粒機内で得られた混合物には、約80重量パーセントのリサイクル肥料顆粒が含有されていた。顆粒を約2から4mmのサイズに分粒し、含有量について試験した。顆粒を解析すると、16(N)−0(P)−2(K)−185(S)−3(Fe)−13(Org)を含むものであることがわかった。
【0094】
[実施例6]
本発明の有機修飾硫酸アンモニウムの窒素放出プロフィールを、対照として従来の純粋な硫酸アンモニウム肥料および純粋バイオソリッドと比較して測定する。まず、硫酸アンモニウムを滅菌した砂全体に実験室環境(周囲温度で、日光、水または土壌生物なし)において適用し、一定期間、砂に透過させる。
図5においてわかるように、純粋な硫酸アンモニウム肥料の窒素の約90%が1週間未満以内に砂の中に移動している。次に、窒素浸透を、純粋な硫酸アンモニウム(AS)、純粋バイオソリッド(MILORGANITE)および本発明の有機修飾硫酸アンモニウム(VITAG)間で比較する。
図6においてわかるように、ASの窒素の約90%は適用の約1週間以内に砂の中に放出される。これに対し、従来のバイオソリッドの窒素は約35%が放出され、これは2週間を超えて約70%まで増大し、この値で維持された。本発明の有機的増強硫酸アンモニウムでは、最初の1週間以内にこの窒素の約60%が放出され、2週間を超えて約70%まで増大した。
【0095】
また、これらの同じ3種類の肥料の物質について、通常の土壌における理論窒素放出プロフィールを調べる。土壌には、窒素含有分子を分解し、これによりさらなる窒素を土壌中に放出する微生物が含まれていると仮定する。
図7においてわかるように、この場合も、硫酸アンモニウムは最初の1週間以内にこの窒素含有量を放出する。純粋バイオソリッドでは、最初の2週間でこの窒素の約30%しか放出されず、これは26週間にわたって約90%まで徐々に増大する。しかしながら、本発明の方法に従って調製した有機修飾硫酸アンモニウムでは、2週間でこの窒素の60%未満しか放出されず、これは次の26週間で約90%まで徐々に増大した。従って、本発明の方法に従って調製した有機修飾硫酸アンモニウム肥料は、初期にこの窒素の半量を少し超える程度で放出し、残りの半量を数週間から数ヶ月の期間にわたってゆっくり放出する。この2段階窒素放出プロフィール(例えば、二元放出、2工程放出、高速/低速放出の併用)が本発明の肥料の特徴である。
【0096】
本発明の他の実施形態および使用は、本明細書および本明細書において開示した本発明の実施を考慮すると、当業者に自明となろう。本明細書に挙げた参考文献はすべて(例えば、刊行物、米国および外国の特許および特許出願はすべて)、引用により全体が具体的に組み込まれる。「〜を含む/備えている(「comprising」)」という用語は、どの状況で用いていても、「〜からなる(「consisting of」)」および「本質的に〜からなる(「consisting essentially of」)」という用語を包含しているものとする。本明細書および実施例は例示にすぎないとみなし、本発明の真の範囲および精神は以下の特許請求の範囲によって示されることを意図する。