(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6096251
(24)【登録日】2017年2月24日
(45)【発行日】2017年3月15日
(54)【発明の名称】溶鉄製造炉の補助冷却装置
(51)【国際特許分類】
C21B 7/10 20060101AFI20170306BHJP
F27D 1/12 20060101ALI20170306BHJP
【FI】
C21B7/10 305
C21B7/10 301
F27D1/12 A
【請求項の数】9
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-148238(P2015-148238)
(22)【出願日】2015年7月28日
(65)【公開番号】特開2016-117940(P2016-117940A)
(43)【公開日】2016年6月30日
【審査請求日】2015年7月28日
(31)【優先権主張番号】10-2014-0187412
(32)【優先日】2014年12月23日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】592000691
【氏名又は名称】ポスコ
【氏名又は名称原語表記】POSCO
(74)【代理人】
【識別番号】110000051
【氏名又は名称】特許業務法人共生国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金,正 イル
(72)【発明者】
【氏名】李,度 侖
(72)【発明者】
【氏名】崔,太 和
(72)【発明者】
【氏名】趙,明 鎬
【審査官】
池ノ谷 秀行
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭61−107090(JP,A)
【文献】
特開2004−315348(JP,A)
【文献】
特開昭63−190766(JP,A)
【文献】
特開昭52−032803(JP,A)
【文献】
特開昭57−019309(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C21B 7/00−7/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶鉄製造炉の鉄皮内部に一定の直径を有し、管形態に備えられた、既に損傷されているかまたは損傷が予想される前記鉄皮内部を冷却するための冷却水が循環するメイン冷却配管と、
前記メイン冷却配管の直径より小さい直径を有し、管形態に形成され前記メイン冷却配管の内部に挿入される補助冷却配管と、
前記メイン冷却配管と前記補助冷却配管の間に充填されるスチールボールと、
を含み、
前記メイン冷却配管と前記補助冷却配管の間に充填材が充填され、前記メイン冷却配管と前記補助冷却配管が接合されることを特徴とする溶鉄製造炉の補助冷却装置。
【請求項2】
前記補助冷却配管は、前記メイン冷却配管に容易に挿入できると共に前記メイン冷却配管の損傷部位に柔軟に接触することができるようにフレキシブル冷却配管からなることを特徴とする請求項1に記載の溶鉄製造炉の補助冷却装置。
【請求項3】
前記充填材は、100℃以上の高温で硬化する高温用接着剤を含むことを特徴とする請求項1に記載の溶鉄製造炉の補助冷却装置。
【請求項4】
前記充填材は、高温用接着剤以外に、充填材の耐久性および熱伝導性を向上するためのメタルファイバーまたはセラミックファイバーを含むことを特徴とする請求項3に記載の溶鉄製造炉の補助冷却装置。
【請求項5】
前記メタルファイバーの材料は、鉄と非鉄系の金属を共に含むことを特徴とする請求項4に記載の溶鉄製造炉の補助冷却装置。
【請求項6】
前記充填剤に配合される前記メタルファイバーの重量は、前記充填材重量の50%以内の比率を有することを特徴とする請求項4に記載の溶鉄製造炉の補助冷却装置。
【請求項7】
前記充填材は、高温用接着剤およびメタルファイバーまたはセラミックファイバー以外に、熱伝導性および耐摩耗性の向上、および経済性のためにメタルパウダーを含むことを特徴とする請求項4に記載の溶鉄製造炉の補助冷却装置。
【請求項8】
前記スチールボールは、一般鋼、高耐熱性および高耐摩耗性鋼とステンレススチールを含むことを特徴とする請求項4に記載の溶鉄製造炉の補助冷却装置。
【請求項9】
前記スチールボールは、前記メイン冷却配管と補助冷却配管の間にスチールボールを先に満たした後、前記充填材を圧入することを特徴とする請求項8に記載の溶鉄製造炉の補助冷却装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶鉄製造炉の補助冷却装置に係り、より詳しくは、溶鉄製造炉鉄皮に備えられた冷却配管(ライン)が損傷しているかまたは損傷が予想される冷却配管に、冷却機能を維持しながらも、修理して冷却機能を復旧したり冷却装置の寿命を延長することができる溶鉄製造炉の補助冷却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、鉄鉱石と含炭素材であるコークスを溶鉄製造炉に装入して下部に酸素を含む熱風を吹き込んで鉄鉱石を還元して鎔銑を製造する溶鉄製造炉において、溶鉄製造炉内部の高い温度が鉄皮に影響が及ばないように鉄皮内部に冷却装置が備えられている(例えば、特許文献1,2参照)。
図1〜3は従来の技術による冷却装置の概略的な構成図であり、
図1はステイブ冷却装置、
図2は冷却盤冷却装置、
図3はステイブ冷却装置の破損状態を示した。
このような内部の冷却装置は、
図1に示したとおり、鉄皮と平行に設けられた直六面体状の板状形態であり、内部には冷却配管を有するステイブ(Stave)冷却装置と、
図2に示したとおり、鉄皮と垂直に突出して内部に冷却配管がある冷却盤冷却装置に区分され、冷却配管には冷却水(水)を循環させて鉄皮内部の熱を冷却して鉄皮に伝達されないようにする。
【0003】
このような冷却装置は、多様な炉内の状況よって溶鉄製造炉内部の鉄鉱石とコークスのような固い装入物により摩耗される。摩耗が続けられると冷却配管が露出して炉内部に冷却水が流入するという問題が発生するため、摩耗されて冷却水が流出する時には冷却配管は閉鎖される。
図3に示したとおり、上記のように閉鎖された冷却配管3は、冷却機能を喪失して鉄皮1の内部温度が上昇する。冷却装置を構成する銅(Cu)や鋳鉄等の金属は、温度上昇時に強度や硬度がさらに下落するため、冷却装置の前面部に付着物が生成されず、摩耗はさらに加速化する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−47507号公報
【特許文献2】特開平9−272909号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、かかる問題を解決するためになされたものであって、その目的とするところは、溶鉄製造炉鉄皮に備えられた冷却配管(ライン)が損傷するかまたは損傷が予想される場合に、冷却機能を維持しながら、冷却配管を修理して冷却機能を復旧したり、冷却装置の寿命を延長することができる溶鉄製造炉の補助冷却装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、 溶鉄製造炉の鉄皮内部に一定の直径を有し、管形態に備えられた、
既に損傷されているかまたは損傷が予想される前記鉄皮内部を冷却するための冷却水が循環するメイン冷却配管と、
前記メイン冷却配管の直径より小さい直径を有し、管形態に形成され前記メイン冷却配管の内部に挿入される補助冷却配管と、
前記メイン冷却配管と前記補助冷却配管の間に充填されるスチールボールと、
を含み、
前記メイン冷却配管と前記補助冷却配管の間に充填材が充填され、前記メイン冷却配管と前記補助冷却配管が接合されることを特徴とする。
【0007】
補助冷却配管は、メイン冷却配管に容易に挿入されると共にメイン冷却配管の損傷部位に柔軟に接触することができるようにフレキシブル冷却配管からなることを特徴とする。
充填材は、100℃以上の高温で硬化する高温用接着剤を含むことができる。
充填材は、高温用接着剤以外に、充填材の耐久性および熱伝導性を向上するためのメタルファイバー(Metal Fiber)またはセラミックファイバー(ceramic fiber)を含むことが好ましい。
【0008】
メタルファイバーの材料は、鉄と非鉄系の金属を共に含むことができる。
メタルファイバーの配合中のメタルファイバーの重量は、充填材重量の50%以内の比率を有することを特徴とする。
充填材は、高温用接着剤およびメタルファイバーまたはセラミックファイバー以外に、熱伝導性および耐摩耗性の向上、および経済性のためにメタルパウダー(Metal Powder)を含むことができる。
【0010】
前記スチールボールは、一般鋼、高耐熱性および高耐摩耗性鋼とステンレススチールを含むことを特徴とする。
また、前記スチールボールは、
前記メイン冷却配管と補助冷却配管の間にスチールボールを先に満たした後、前記充填材を圧入することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、本発明の溶鉄製造炉の補助冷却装置は、溶鉄製造炉鉄皮に備えられた冷却配管(ライン)が損傷するかまたは損傷が予想される場合に、冷却機能を維持しながら、冷却配管を修理して冷却機能を復旧したり、冷却装置の寿命を延長することができる効果を有する。
本発明によれば、内部に新設された補助冷却配管と既存のメイン冷却配管の間に充填する充填材を、熱伝導性と耐摩耗性を有すると共に経済的に低廉な物質を混合して複合材料化したため、既存に比べて低廉であり、熱伝導性と耐摩耗性が確保される効果を有する。
本発明の補助冷却装置の冷却作用によって、一次的に冷却装置の前面部に溶鉄炉内部の装入物に含まれているアルカリ(Alkali)、亜鉛(Zn)などの低融点金属と微粉の石炭およびコークス、鉄鉱石などが結合して凝固層を形成することによって冷却装置の摩耗を防止し、このような凝固層が一時的に損失されても自体の高温耐摩耗性により摩耗を遅延させて冷却機能を維持することができる。
また、充填材にメタルファイバーが含まれているため、充填材のクラック発生時に互いに分解されて離れないように支持する役割を果たして充填材の耐久性も向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】従来の技術によるステイブ冷却装置を示した概略的な構成図である。
【
図2】従来の技術による冷却盤冷却装置を示した概略的な構成図であり、(a)は斜視図、(b)は断面図である。
【
図3】従来の技術によるステイブ冷却装置の破損状態を概略的に示した図面であり、(a)、(b)、(c)の順に破損が進行する。
【
図4】本発明の一実施形態に係る溶鉄製造炉の補助冷却装置の概略的な構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を基にして本発明の実施形態を詳しく説明する。
図4は、本発明の一実施形態に係る溶鉄製造炉の補助冷却装置の概略的な構成図である。
【0014】
図4に示したとおり、本発明の一実施形態に係る溶鉄製造炉の補助冷却装置は、溶鉄製造炉の鉄皮10内部に一定の直径を有する管形態に備えられ、鉄皮10内部を冷却するための冷却水が循環するメイン冷却配管100と、メイン冷却配管100の直径より小さい直径を有する管形態に形成され、既に損傷しているかまたは損傷が予想されるメイン冷却配管100を補修する時、メイン冷却配管100の内部に挿入される補助冷却配管200と、メイン冷却配管100と補助冷却配管200を接合させ、メイン冷却配管100と補助冷却配管200の間に充填される充填材300とを含む。
メイン冷却配管100は、溶鉄製造炉の鉄皮10内部に鉄皮10と平行にまたは鉄皮10と垂直に配置される。
【0015】
補助冷却配管200は、メイン冷却配管100に容易に挿入できると共にメイン冷却配管100の損傷部位に柔軟に接触することができるように柔軟な材質でできたフレキシブル(Flexible)冷却配管であることが好ましい。
また、メイン冷却配管100と補助冷却配管200の間には充填材300を圧入により充填し、硬化させた後、冷却水を循環させてメイン冷却ライン100を補修する。
使用される充填材は下記のような物質を含むことができる。
充填材300は、最低でも500℃以上の高温耐性および耐摩耗性、熱伝導性を有する物質を含むことが好ましい。
【0016】
充填材300は、補助冷却配管200とメイン冷却配管100を接合させるために100℃以上の高温で硬化する高温用接着剤を含むことが好ましい。
高温用接着剤は、施工を容易にするために、常温では流動性を有してメイン冷却配管100と補助冷却配管200の間に充填が容易に行えるようにし、100℃以上の高温では短時間で硬化が起こり、硬化時に気体状の蒸発がない特性を有する物質からなることが好ましい。
充填材300は、高温用接着剤以外に、充填材300のクラック発生時に互いに分離されて離れないように支持する役割を果たして充填材200の耐久性および熱伝導性を向上するためのメタルファイバー(Metal Fiber)、または補修材の結合力を強化するために高温で安定したセラミックファイバー(ceramic fiber)を含むことが好ましい。
【0017】
メタルファイバーの材料は、鉄又は非鉄系の金属のファイバーの何れでもよく、また、鉄と非鉄系の金属のファイバーを共に含むことができる。
充填材300に配合されるメタルファイバーの重量は、充填材300重量の50%以下の比率であることが好ましい。これはメタルファイバーの重量を充填材300重量の50%以上の比率になると強度が低下する虞があるためである。
また、充填材300は、高温用接着剤およびメタルファイバーまたはセラミックファイバー以外に、熱伝導性および耐摩耗性の向上、および経済性のためにメタルパウダー(Metal Powder)を含むことが好ましい。
充填材300は、高温用接着剤およびメタルファイバーまたはセラミックファイバー以外に、熱伝導性および耐摩耗性の向上、および経済性のためにスチールボール(Steel Ball)を含むことが好ましい。
ここで、スチールボールは、一般鋼、高耐熱性および高耐摩耗性鋼とステンレススチール(Stainless Steel)などの何れであってもよい。
【0018】
また、充填材300は、高温用接着剤、メタルファイバー、メタルパウダーまたはセラミックファイバー以外に、熱伝導性および耐摩耗性の向上、および経済性のためにスチールボールを含むことが好ましい。
スチールボールは、一般鋼、高耐熱性および高耐摩耗性鋼とステンレススチールからなる群から選択される1つ以上であることが好ましい。
スチールボールは、充填材300に予め混合してメイン冷却配管100と補助冷却配管200の間に圧入することもでき、メイン冷却配管100と補助冷却配管200の間にスチールボールを先に満たした後、充填材300を圧入することもできる。
【0019】
以下、
図4に基づき本発明の一実施形態に係る溶鉄製造炉の補助冷却装置の作動について説明する。
溶鉄製造炉の補助冷却装置では、補助冷却配管200がメイン冷却配管100の直径より小さい直径を有し、管形態に形成された、既に損傷しているかまたは損傷が予想されるメイン冷却配管100を補修する時、メイン冷却配管100の内部に挿入される。充填材300が、メイン冷却配管100と補助冷却配管200の間に充填され、メイン冷却配管100と補助冷却配管200を接合する。
即ち、冷却機能が損傷したり、または損傷の虞があるメイン冷却配管100において、その内部にメイン冷却配管100の直径より小さい直径を有する柔軟な補助冷却配管(Flexible Tube)200を備え、メイン冷却配管100と新たに挿入した補助冷却配管200の間に最低でも500℃以上の高温耐性および耐摩耗性、伝導性を有する物質でなる充填材300を充填する。
この時、充填材300中の高温用接着剤は、常温では流動性を有してメイン冷却配管100と補助冷却配管200の間に充填が容易に行われるようにし、100℃以上の高温では短時間内に硬化し、硬化時に気体状の蒸発がない特性を有して施工を容易にする。
【0020】
一般的な高温用接着剤は、セラミック(Ceramic)系接着剤であり、これらは熱伝導が低く、冷却水の熱伝達に問題が生じる虞がある。このため、冷却装置の内部に付着層などが形成されないこともあり、さらに価格が高いという問題がある。
本発明は、このような問題を解決するために、熱伝導性および耐摩耗性の向上、および経済性のために高温接着剤と多様な素材を複合して充填したものである。
上記目的のために、本発明は充填材300に含まれている高温用接着剤と共にメタルファイバーまたはセラミックファイバー、メタルパウダー、スチールボールなどの一つ以上混合して高温の耐摩耗性と熱伝導性向上および経済性を確保したものである。
【0021】
前述のとおり、本発明は内部に新設された補助冷却配管200と既存のメイン冷却配管100の間に充填材300を充填して熱伝導性と耐摩耗性を確保したものである。本発明の充填剤は、経済的に低廉な物質を混合して複合材料化したため、既存に比べて低廉であり、熱伝導性と耐摩耗性も確保される。本発明の充填剤は、一次的に冷却装置前面部に溶鉄炉内部の装入物に含まれているアルカリ(Alkali)、亜鉛(Zn)などの低融点金属と微粉の石炭およびコークス、鉄鉱石などと結合して凝固層を形成することによって、冷却装置の摩耗を防止し、このような凝固層が一時的に損失されても自体の高温耐摩耗性により摩耗を遅延させて冷却機能を維持することができる。
また、本発明の充填材300には、メタルファイバーまたはセラミックファイバーが含まれており、このメタルファイバーまたはセラミックファイバーは、充填材300のクラック発生時にファイバーが絡み合い充填剤が互いに離れないように支持する役割を果たして充填材300の耐久性を向上させることができる。
【符号の説明】
【0022】
1,10…鉄皮
3…冷却配管
100…メイン冷却配管
200…補助冷却配管
300…充填材