特許第6096266号(P6096266)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6096266
(24)【登録日】2017年2月24日
(45)【発行日】2017年3月15日
(54)【発明の名称】電力伝送装置
(51)【国際特許分類】
   H01F 38/14 20060101AFI20170306BHJP
   H01F 27/36 20060101ALI20170306BHJP
   H02J 50/10 20160101ALI20170306BHJP
【FI】
   H01F38/14
   H01F27/36 A
   H02J50/10
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-219604(P2015-219604)
(22)【出願日】2015年11月9日
(62)【分割の表示】特願2014-503365(P2014-503365)の分割
【原出願日】2012年3月7日
(65)【公開番号】特開2016-42593(P2016-42593A)
(43)【公開日】2016年3月31日
【審査請求日】2015年11月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005016
【氏名又は名称】パイオニア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104765
【弁理士】
【氏名又は名称】江上 達夫
(74)【代理人】
【識別番号】100107331
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 聡延
(72)【発明者】
【氏名】柴田 晃司
【審査官】 池田 安希子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−054424(JP,A)
【文献】 特開2009−254098(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/098412(WO,A1)
【文献】 特開平09−149502(JP,A)
【文献】 特開平10−208804(JP,A)
【文献】 特開2010−087353(JP,A)
【文献】 特表2010−530613(JP,A)
【文献】 特開2012−029418(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 38/14
H01F 27/36
H02J 50/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空間を隔てて対向する受電アンテナに向けて電磁波を放射する送電アンテナと、
前記送電アンテナの下方の少なくとも一部を覆う遮蔽部材を含んで構成され、前記送電アンテナの周囲の少なくとも一部を覆うことで前記電磁波の外部への漏洩を抑制する遮蔽部と、
を備え、
前記遮蔽部材は、前記電磁波の非放射時の少なくとも一部の期間に、前記下方の少なくとも一部を覆わない位置に移動する
ことを特徴とする電力伝送装置。
【請求項2】
前記遮蔽部材は、前記送電アンテナの送電面に垂直な方向に沿う方向に伸縮可能に構成されていることを特徴とする請求項1に記載の電力伝送装置。
【請求項3】
前記遮蔽部材は、前記下方の少なくとも一部を覆う位置と前記下方の少なくとも一部を覆わない位置とに、開閉可能に構成されていることを特徴とする請求項1に記載の電力伝送装置。
【請求項4】
前記送アンテナの送電面の前方に、前記送電面に対向するように配置され、非導電性部材により構成された非導電性部を更に備えることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の電力伝送装置。
【請求項5】
前記遮蔽部の少なくとも一部が前記受電アンテナを備える受電装置に接触したことを条件に、前記遮蔽部材が、前記下方の少なくとも一部を覆う位置をとるように、前記遮蔽部材の移動を制御する制御手段を更に備えることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の電力伝送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非接触で電力を供給可能な電力伝送装置の技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の装置として、例えば、電気自動車の後部に搭載された受電アンテナと水平対向するように配置される送電アンテナを備える非接触電力伝送装置が提案されている(非特許文献1参照)。
【0003】
或いは、軌道の一方の側に設けられた一次給電線から、該軌道上を移動するロボットに設けられた二次巻線に対して非接触で電力を供給する装置が提案されている。ここでは特に、外部からの異物の挿入を防止したり、電磁波の放射量を抑制したりするために、一次給電線と二次巻線とを取り囲むように側板が設けられていることが記載されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−319504号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】YOKOI, Yuiko, et al., ”DEVELOPMENT OF KW CLASS WIRELESS POWER TRANSMISSION SYSTEM FOR EV USING MAGNETIC RESONANT METHOD,” 1st International Electric Vehicle Technology Conference 2011, Society of Automotive Engineers of Japan, Inc., Pacifico Yokohama, Yokohama, Japan, May 17-19, 2011.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、非特許文献1に記載の技術では、電気自動車を操縦して、受電アンテナと送電アンテナとの間の距離を適切にすることが困難である可能性があるという技術的問題点がある。また、特許文献1に記載の技術は、電気自動車等の車両に適用することが極めて困難であるという技術的問題点がある。
【0007】
本発明は、例えば上記問題点に鑑みてなされたものであり、送電アンテナから放射される電磁波の外部への漏洩を抑制しつつ、異物が入り込むことを防止することができる電力伝送装置を提案することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の電力伝送装置は、上記課題を解決するために、空間を隔てて対向する受電アンテナに向けて電磁波を放射する送電アンテナと、前記送電アンテナの下方の少なくとも一部を覆う遮蔽部材を含んで構成され、前記送電アンテナの周囲の少なくとも一部を覆うことで前記電磁波の外部への漏洩を抑制する遮蔽部と、を備え、前記遮蔽部材は、前記電磁波の非放射時の少なくとも一部の期間に、前記下方の少なくとも一部を覆わない位置に移動する。
【0009】
本発明の電力伝送装置によれば、送電アンテナは、該送電アンテナと空間を隔てて対向する受電アンテナに向けて電磁波を放射する。これにより、送電アンテナ及び受電アンテナ間において非接触で電力伝送が行われる。
【0010】
遮蔽部は、送電アンテナの周囲の少なくとも一部を覆い、送電アンテナからの電磁波の外部への漏洩を抑制する。遮蔽部は、送電アンテナの下方の少なくとも一部を覆う遮蔽部材を有する。遮蔽部材は、電磁波の非放射時の少なくとも一部の期間に、送電アンテナの下方の少なくとも一部を覆わない位置に移動する。、遮部は、電磁波を遮蔽する限りにおいて、網状や格子状等であってもよい。
【0011】
ここで、本願発明者の研究によれば、以下の事項が判明している。即ち、電磁波の漏洩を抑制するために、少なくとも送電アンテナの周囲に、例えばアルミニウム等の金属により形成された筒状の覆いを設置する技術が提案されている。しかしながら、受電アンテナが存在しない場合には、該筒状の覆いの一方が開口しているため、該筒状の覆いの中に、例えば空き缶等の異物が入り込む可能性がある。ユーザが、該異物に気づかずに、電力伝送を開始した場合、該異物に起因して不具合が生じる可能性がある。
【0012】
しかるに本発明では、送電アンテナから電磁波が放射されている時には、遮蔽部により送電アンテナの周囲の少なくとも一部が覆われる。他方で、送電アンテナから電磁波が放射されていない時の少なくとも一部の期間に、送電アンテナの下方の少なくとも一部が遮蔽部により覆われない。このため、送電アンテナから電磁波が放射されていない時に、遮蔽部の中に異物が入り込んできたとしても、重力の影響により、送電アンテナの下方の少なくとも一部から、該入り込んできた異物が排出される。
【0013】
この結果、本発明の電力伝送装置によれば、送電アンテナからの電磁波の外部への漏洩を抑制しつつ、異物の残留を防止することができる。
【0014】
本発明の電力伝送装置の一態様では、前記遮蔽部材は、前記送電アンテナの送電面に垂直な方向に沿う方向に伸縮可能に構成されている。
【0015】
或いは、本発明の電力伝送装置の他の態様では、前記遮蔽部材は、前記下方の少なくとも一部を覆う位置と前記下方の少なくとも一部を覆わない位置とに、開閉可能に構成されている。
【0016】
このように構成すれば、当該電力伝送装置の小型化を図ることができると共に、異物が入り込むことを効果的に抑制することができる。
【0017】
本発明の電力伝送装置の他の態様では、当該電力伝送装置は、前記送アンテナの送電面の前方に、前記送電面に対向するように配置され、非導電性部材により構成された非導電性部を更に備える。
【0018】
このように構成すれば、異物が入り込むことを効果的に抑制することができ、実用上非常に有利である。
【0019】
本発明の電力伝送装置の他の態様では、前記遮蔽部の少なくとも一部が前記受電アンテナを備える受電装置に接触したことを条件に、前記遮蔽部材が、前記下方の少なくとも一部を覆う位置をとるように、前記遮蔽部材の移動を制御する制御手段を更に備える。
【0020】
この態様によれば、送電アンテナから電磁波が放射されるときに、送電アンテナからの電磁波の外部への漏洩を抑制することができる。また、送電アンテナから電磁波が放射されていないときに異物の残留を防止することができる。
【0023】
本発明の作用及び他の利得は次に説明する実施するための形態から明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】実施形態に係る電力伝送装置の構成を示すブロック図である。
図2】実施形態に係る送電アンテナの遮蔽部の構成を示す斜視図である。
図3】実施形態に係る送電制御処理を示すフローチャートである。
図4】実施形態の第1変形例に係る送電アンテナの遮蔽部の構成を示す斜視図である。
図5】実施形態の第2変形例に係る送電アンテナの遮蔽部の構成を示す斜視図である。
図6】実施形態の第3変形例に係る送電アンテナの遮蔽部の構成を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の電力伝送装置に係る実施形態について、図面に基づいて説明する。
【0026】
実施形態に係る電力伝送装置の構成について、図1を参照して説明する。図1は、実施形態に係る電力伝送装置の構成を示すブロック図である。
【0027】
図1において、電力伝送装置100は、制御・通信部101、送電アンテナ102、送電装置103、電源装置104、第1遮蔽部111及び第2遮蔽部112を備えて構成されている。
【0028】
他方、例えば電気自動車等である車両1に搭載された受電装置200は、制御・通信部201、受電アンテナ202、整流器203、コンバータ204及びバッテリ205を備えて構成されている。
【0029】
送電アンテナ102の送電面102aは、地面に垂直な方向に沿っている。受電アンテナ202の受電面も地面に垂直な方向に沿っており、送電アンテナ102及び受電アンテナ202間において電力の授受が行われる際には、送電アンテナ102及び受電アンテナン202は、水平対向に配置される。
【0030】
制御・通信部101及び制御・通信部201は、電力が送電される際に、例えば認証や、電力等に係る情報の送受信を、実施すると共に、受信した電力等に係る情報に基づいて、電力伝送装置100及び受電装置200を夫々制御する。
【0031】
尚、電力伝送装置100及び受電装置200間における電力伝送は、磁界共鳴方式により実施されることが望ましい。これは、磁界共鳴方式には、送電アンテナ102と受電アンテナ202とが正確に対向していない場合であっても、伝送効率の低下が比較的少ないという特徴があるからである。
【0032】
図1に示すように、受電アンテナ202が車両1の後部に配置されている場合、例えば車両1の積載重量等により車高が変化することに伴い、受電アンテナ202の高さ方向の位置が変化する。この場合に、送電アンテナ102と受電アンテナ202とを精度良く位置合わせしなければならないとすると、ユーザの負担が著しく大きくなる。しかるに、磁界共鳴方式を用いれば、位置合わせに係るユーザの負担を軽減することができ、実用上非常に有利である。
【0033】
第1遮蔽部111は、送電アンテナ102の下方の少なくとも一部を除いて、該送電アンテナ102の周囲を覆うと共に、電磁波(電磁界)を遮蔽する。他方、第2遮蔽部112は、電力の送電時に、送電アンテナ102の周囲のうち、第1遮蔽部111により覆われていない部分を少なくとも覆うと共に、電磁波を遮蔽する。つまり、送電アンテナ102の下方の少なくとも一部は、電力の送電時以外は、覆われていないこととなる(図2(b)参照)。
【0034】
ここで、例えば図2(a)に示す遮蔽部300のように、送電アンテナ102の周囲が常に覆われているとすると、外部から飛び込んできた異物(例えば空缶等の金属等)が、遮蔽部300の内部に留まり、ユーザが該異物に気付かずに電力の送電を開始してしまうと、例えば異物が発熱等することにより、電力伝送装置100に影響を及ぼす可能性がある。
【0035】
他方、本実施形態では、上述の如く、送電アンテナ102の下方の少なくとも一部は、電力の送電時以外は、覆われていないので、外部から飛び込んできた異物は、第1遮蔽部111の下方から落下することとなる。つまり、本実施形態に係る第1遮蔽部111及び第2遮蔽部112は、異物が遮蔽部の内部に留まることを防止することができる。この結果、異物に起因する不具合を防止することができる。
【0036】
尚、第1遮蔽部111及び第2遮蔽部112は、例えばアルミニウム等の金属材料により形成されていてもよいし、例えば絶縁材料により形成された覆いの内側に磁性体が貼り付けられることにより形成されてもよい。
【0037】
第1遮蔽部111の送電面102aに垂直な方向に沿う方向(図2における“X軸”方向)の長さは、電力の送電時に、送電アンテナ102及び受電アンテナ202間の伝送効率が所定値以上となるように設定されている。このように構成すれば、例えば車両1の後部が第1遮蔽部111の端部に接触するように、該車両1を駐車させるだけで、送電アンテナ102及び受電アンテナ202間の距離を適切な距離にすることができる。
【0038】
また、第1遮蔽部111と第2遮蔽部112とで形成される開口部(即ち、第1遮蔽部111及び第2遮蔽部112各々の車両1側の端部)の大きさを、送電アンテナ102の送電面102aの大きさよりも大きくすれば、位置合わせに係るユーザの負担を軽減することができ、実用上非常に有利である。
【0039】
次に、電力伝送装置100の制御・通信部101が実施する送電制御処理について、図3のフローチャートを参照して説明する。
【0040】
図3において、制御・通信部101は、第1遮蔽部111が受信部(つまり、車両1の後部等)に接触しているか否かを判定する(ステップS101)。尚、第1遮蔽部111が受信部に接触しているか否かは、例えば感圧センサ等により第1遮蔽部111に加わる圧力を検出すること等により判定すればよい。
【0041】
第1遮蔽部111が受信部に接触していないと判定された場合(ステップS101:No)、制御・通信部101は、ステップS101の処理を再度実施する。他方、第1遮蔽部111が受信部に接触していると判定された場合(ステップS101:Yes)、制御・通信部101は、第2遮蔽部112がスライドされたか否か(つまり、第2遮蔽部112により送電アンテナ102を覆ったか否か)を判定する(ステップS102)。
【0042】
第2遮蔽部112がスライドされていないと判定された場合(ステップS102:No)、制御・通信部101は、ステップS102の処理を再度実施する。他方、第2遮蔽部112がスライドされたと判定された場合(ステップS102:Yes)、制御・通信部101は、電力を送電するように、送電装置103等を制御する(ステップS103)。
【0043】
<第1変形例>
次に、実施形態の第1変形例について、図4を参照して説明する。図4は、実施形態の第1変形例に係る送電アンテナの遮蔽部の構成を示す斜視図である。
【0044】
第1変形例では、第2遮蔽部112が、電力伝送装置100の筐体に格納されており、電力の送電時に、図4に示すように、第2遮蔽部112が該筐体の外部にせり出すように構成されている。
【0045】
<第2変形例>
次に、実施形態の第2変形例について、図5を参照して説明する。図5は、実施形態の第2変形例に係る送電アンテナの遮蔽部の構成を示す斜視図である。
【0046】
第2変形例では、第1遮蔽部111が、第1の部分111aと、第2の部分111bとにより構成されている。そして、電力の送電時ではない時には、第2の部分111bが第1の部分111aに重なるようにスライドするように構成されている。尚、第2の部分111bは、スライド式に限らず、折りたたみ式であってもよい。
【0047】
<第3変形例>
次に、実施形態の第3変形例について、図6を参照して説明する。図6は、実施形態の第3変形例に係る送電アンテナの遮蔽部の構成を示す斜視図である。
【0048】
第3変形例では、電力伝送装置100は、送電アンテナ102の送電面102aに対向するように配置され、非導電性材料により構成された非導電性部113を更に備えて構成されている。このように構成すれば、外部からの異物の侵入を防止することができる。尚、この場合、第2遮蔽部112は、常に、送電アンテナ102を覆っていてよい。
【0049】
上述した実施形態では、遮蔽部が送電側に(即ち、電力電送装置100に)設けられている例を挙げたが、該遮蔽部は、受電装置200に設けられていてもよい。
【0050】
上述した実施形態では、本発明の電力電送装置が、例えば電気自動車等の車両1に搭載されたバッテリ205の充電装置として用いられた場合を一例として挙げたが、本発明の電力電送装置は、例えば、オーディオ・ビジュアル機器や家電製品等に搭載されるバッテリ等の充電装置等としても適用可能である。
【0051】
本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う電力伝送装置もまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0052】
1…車両、100…電力伝送装置、101、201…制御・通信部、102…送電アンテナ、103…送電装置、104…電源装置、111…第1遮蔽部、112…第2遮蔽部、113…非導電性部、200…受電装置、202…受電アンテナ、203…整流器、204…コンバータ、205…バッテリ
図1
図2
図3
図4
図5
図6