(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6096317
(24)【登録日】2017年2月24日
(45)【発行日】2017年3月15日
(54)【発明の名称】咬合器
(51)【国際特許分類】
A61C 19/045 20060101AFI20170306BHJP
【FI】
A61C19/045 100
【請求項の数】31
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-547070(P2015-547070)
(86)(22)【出願日】2013年12月17日
(65)【公表番号】特表2016-504083(P2016-504083A)
(43)【公表日】2016年2月12日
(86)【国際出願番号】EP2013076895
(87)【国際公開番号】WO2014095857
(87)【国際公開日】20140626
【審査請求日】2015年6月18日
(31)【優先権主張番号】12197441.4
(32)【優先日】2012年12月17日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】596032878
【氏名又は名称】イボクラール ビバデント アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100064012
【弁理士】
【氏名又は名称】浜田 治雄
(72)【発明者】
【氏名】バースケ,トーマス
(72)【発明者】
【氏名】フライ,クリスチャン
(72)【発明者】
【氏名】ツィンマーリング,フランク
(72)【発明者】
【氏名】ワッケ,ロニー
【審査官】
佐藤 智弥
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭56−8048(JP,A)
【文献】
特開2005−193028(JP,A)
【文献】
実開昭54−137294(JP,U)
【文献】
特表2003−520620(JP,A)
【文献】
独国特許発明第19702840(DE,C1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61C 19/045
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに結合された咬合フォーク接続部(34)と顎外ブラケット(12)を有していて、基準要素が、相隔てて配置された少なくとも2本の垂直脚部と少なくとも1本の水平脚部を備えるとともに瞳孔間ジョイント(24)を介して前記咬合フォーク接続部(34)と接続されてなる咬合器であり、前記基準要素が顎外ブラケット(12)として形成され、その顎外ブラケットが前記咬合フォーク接続部(34)に対して垂直にずれて延在し、
瞳孔間ジョイント(24)に加えてカンペルジョイント(40)を咬合器上に設け、ここで、瞳孔間ジョイント(24)及びカンペルジョイント(40)は、互いに独立して動作させられることが可能であり、前記二つのジョイント、すなわち瞳孔間ジョイント(24)及びカンペルジョイント(40)の二つのジョイント軸は、互いに横方向に延在し、
少なくとも1個のジョイントが角度計測装置(36,50)を備え、それによってジョイントと相互に結合されかつ相対して旋回可能な咬合器(10)の部材の角度を検出可能にすることを特徴とする咬合器。
【請求項2】
前記複数のジョイントの複数のジョイント軸は、互いに垂直に延在することを特徴とする請求項1記載の咬合器。
【請求項3】
前記二つのジョイントはそれぞれ角度計測装置(36,50)を備え、それによってジョイントと相互に結合されかつ相対して旋回可能な咬合器(10)の部材の角度を検出可能にすることを特徴とする咬合器。
【請求項4】
前記二つのジョイントはそれぞれ角度計測装置(36,50)を備え、それによってジョイントと相互に結合されかつ相対して旋回可能な咬合器(10)の部材の角度を読み取り可能にすることを特徴とする咬合器。
【請求項5】
顎外ブラケット(12)がその顎外ブラケットと固定的に結合されるとともに、その顎外ブラケット(12)を超えて上方に延在する垂直な指針(28)を備えることを特徴とする請求項1に記載の咬合器。
【請求項6】
咬合フォーク接続部(34)と顎外ブラケット(12)の間の垂直距離が患者の咬合平面とカンペル平面の間の距離に実質的に相当することを特徴とする請求項1に記載の咬合器。
【請求項7】
咬合フォーク接続部(34)上に印象材キャリアあるいは咬合フォークを選択的に収容するための交換接続部を配置することを特徴とする請求項1ないし6のいずれか一項に記載の咬合器。
【請求項8】
瞳孔間ジョイント(24)とカンペルジョイント(40)のジョイント軸が相互に横方向に延在することを特徴とする請求項1ないし7のいずれか一項に記載の咬合器。
【請求項9】
瞳孔間ジョイント(24)とカンペルジョイント(40)のジョイント軸が相互に直角に延在することを特徴とする請求項1ないし7のいずれか一項に記載の咬合器。
【請求項10】
カンペルジョイント(40)のジョイント軸が前記瞳孔間ジョイント(24)に対して直角に延在するように形成され、このカンペルジョイントは咬合フォーク接続部(34)と瞳孔間ジョイント(24)の間に延在することを特徴とする請求項1ないし9のいずれか一項に記載の咬合器。
【請求項11】
前記二つのジョイント(24,40)の間に、これら二つのジョイントを接続するための錐体(部材42)を配置することを特徴とする請求項1ないし10のいずれか一項に記載の咬合器。
【請求項12】
カンペルジョイント(40)がストッパを備え、そのストッパが前記錐体に対する咬合フォーク接続部(34)の振れを±30°未満の旋回角度に制限することを特徴とする請求項8または11に記載の咬合器。
【請求項13】
カンペルジョイント(40)がストッパを備え、そのストッパが前記錐体に対する咬合フォーク接続部(34)の振れを±20°未満の旋回角度に制限することを特徴とする請求項8または11に記載の咬合器。
【請求項14】
カンペルジョイント(40)がストッパを備え、そのストッパが前記錐体に対する咬合フォーク接続部(34)の振れを−17ないし+9°の旋回角度に制限することを特徴とする請求項8または11に記載の咬合器。
【請求項15】
少なくとも1個のジョイントが固定手段を備え、それによって使用者の選択に従って所与の旋回位置を固定可能であることを特徴とする請求項1ないし14のいずれか一項に記載の咬合器。
【請求項16】
前記固定手段はロックナット(46,39)であることを特徴とする請求項15に記載の咬合器。
【請求項17】
少なくとも1個のジョイントがスケールおよび指針を備え、それによって所与の回転位置の角度位置を読み取り可能であることを特徴とする請求項1ないし16のいずれか一項に記載の咬合器。
【請求項18】
両方のジョイントがスケールおよび指針を備え、それによって所与の回転位置の角度位置を読み取り可能であることを特徴とする請求項1ないし16のいずれか一項に記載の咬合器。
【請求項19】
瞳孔間ジョイント(24)が瞳孔間線に対する咬合平面の角度位置を調節しまた固定しながら検出することを可能にすることを特徴とする請求項1ないし18のいずれか一項に記載の咬合器。
【請求項20】
カンペルジョイント(40)がカンペル平面に対する咬合平面の角度位置を調節しまた固定しながら検出することを可能にすることを特徴とする請求項1ないし19のいずれか一項に記載の咬合器。
【請求項21】
顎外ブラケット(12)を垂直にずらして支承するために咬合フォーク接続部(34)上に少なくとも1個の垂直に突立する支持脚部(19,20)を形成することを特徴とする請求項1ないし20のいずれか一項に記載の咬合器。
【請求項22】
顎外ブラケット(12)を垂直にずらして支承するために咬合フォーク接続部(34)上に2個の垂直に突立する支持脚部(19,20)を形成することを特徴とする請求項1ないし20のいずれか一項に記載の咬合器。
【請求項23】
支持脚部が顎外ブラケット(12)を形成する金属あるいは板金帯材の部材であることを特徴とする請求項22に記載の咬合器。
【請求項24】
顎外ブラケット(12)と咬合フォークの間の垂直ずれが調節可能であることを特徴とする請求項1ないし20のいずれか一項に記載の咬合器。
【請求項25】
顎外ブラケット(12)と咬合フォークの間の垂直ずれが、中央値25mmで18mmないし31mmで調節可能であることを特徴とする請求項24に記載の咬合器。
【請求項26】
顎外ブラケット(12)が互いに対向して2回実質的に直角に湾曲しその位置に垂直に延在する支持脚部(19,20)が形成されることを特徴とする請求項1ないし24のいずれか一項に記載の咬合器。
【請求項27】
顎外ブラケット(12)が、垂直軸を有するジョイントを備え、それを介して前記顎外ブラケット(12)の側方脚部(14,16)が相互に旋回可能であることを特徴とする請求項1ないし26のいずれか一項に記載の咬合器。
【請求項28】
顎外ブラケット(12)が、それの前方/外側角部上に、垂直軸を有するジョイントを備え、それを介して前記顎外ブラケット(12)の側方脚部(14,16)が相互に旋回可能であることを特徴とする請求項27に記載の咬合器。
【請求項29】
顎外ブラケット(12)が少なくとも1個の基準要素を所与の位置に備え、それを介し対外計測によって患者に対する前記顎外ブラケットの位置を検出可能であることを特徴とする請求項1ないし28のいずれか一項に記載の咬合器。
【請求項30】
咬合器上に咬合器基準要素(97)を取り付け、それがスキャン装置および/またはデジタル咬合器における咬合器の併進動作上の位置の捕捉を可能にすることを特徴とする請求項1ないし29のいずれか一項に記載の咬合器。
【請求項31】
咬合フォーク接続部(34)と咬合フォークの中央脚部の間の接続領域内および/または印象材キャリアの受容部(84)上および/または印象材キャリア自体の上に咬合器基準要素(97)を取り付け、それがスキャン装置および/またはデジタル咬合器における咬合器の併進動作上の位置の捕捉を可能にすることを特徴とする請求項30に記載の咬合器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は請求項1前段に記載の咬合器に関する。
【背景技術】
【0002】
義歯を製造するために患者データを伝送するための装置は古くから知られている。例えば独国特許出願公開第3347830号A1明細書により咬合フォークを備えた装置が知られており、それによれば基準アーチがメモリを備えていてそれによって顆頭関節軸の水平方向のずれが判定可能となる。この解決方式は第5頁の記述から瞳孔間線に対して平行な咬合平面の延伸に基づくものである。
【0003】
しかしながら実際にここには小さな角度差が生じる可能性があり、従ってその角度差を考慮するものである瞳孔間ジョイントを挿入することが知られている。その種の解決方式の一例が独国特許出願公開第3032913号A1明細書によって開示されている。
【0004】
そこに設置されたジョイントによって顆頭軸に対して垂直に延在する水平軸周りで咬合フォークを調節することが可能になるが、その際角度位置の検出は設定されていない。
【0005】
その他にも多くの装置が提案されている。比較的近年からは米国特許第5154608号A1明細書が挙げられ、それによれば咬合分析のために機能するとともに例えば
図3ならびに関連の記述によって示されるように水平方向のずれを検出するための適宜なスケールを備えた装置が開示されている。
【0006】
しかしながら、歯科診療において今日なお咬合フォークと結合され咬合フォークセットと呼ばれる基準アーチが使用されており、その際の結合はジョイントを介するかあるいは一体的に形成することができ、そこで咬合フォークセットはしばしば短縮された長さを有する。前記咬合フォークは水平方向に延在する複数の板金片から形成される。顆頭関節に到達するまで板金片を必要に応じて曲げるか、あるいは例えば木材を使用して“延長”するかは、歯科医師あるいは歯科技工士の好みに合わせて設定される。この種の解決方式は低コストであるが、人間工学的および調節の精度の点で不満足である。
【0007】
いわゆるカンペル平面は鼻下点と耳珠を介して延在することが知られている。このカンペル平面は多くの場合に咬合平面と平行であると見られるが、精密に計測すれば患者ごとに異なるものである角度差が確認されることもあり得る。
【0008】
全歯欠損の患者の場合ワックステンプレートを使用して処置され、そのテンプレートは経験値として中央値に設定され、そのため咬合器を利用することができる。
【0009】
従来知られている咬合器による角度差の検出は、指針を有するスケールのように適宜な角度測定が具現化されていれば、顆頭関節方向に対して横断方向、すなわち瞳孔間ジョイントに相当する角度についてのみ可能となる。
【0010】
さらに、存在し得る通常値からの差を計算に入れたスケールを備えてなる咬合器用の補助装置が知られている。その際部分的に補助フレームも使用される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従って本発明の目的は、単純かつ容易に使用可能であるが多数の設定選択肢による誤操作を危惧することなく患者ごとの複数の特殊性を検出することができる請求項1前段に記載の咬合器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記の課題は、本発明に従って請求項1によって解決される。好適な追加構成が従属請求項によって定義される。
【0013】
本発明に係る咬合器の特徴によれば、この本発明に係る咬合器の具現化および適用を高コストなものにすることなく患者の個々の咬合平面を極めて正確かつ単純に検出することができる。顎外ブラケットの垂直摺動によってそれの末端が耳点および/または顆頭関節の方向を指し、従ってこの顎外ブラケットの設置は周知の短縮された構成に比べて単純化される。そのため顎外ブラケットの側方脚部の長さは7cmないし23cm、好適には大人用で約15cmとなる。この場合顎外ブラケットの端部が耳点を超えて突立しても危険が生じない。
【0014】
咬合平面と本発明に従って配置された顎外ブラケットの間の垂直方向のずれは20mmないし30mmの間で固定的に設定することが好適であり、中央値は25mmとなる。これは、咬合平面とカンペル平面の間の典型的なずれである。
【0015】
他方、前記の垂直のずれを調節可能にすることも可能であり、その際も設定の“ゼロ位置”は25mmとなり;調節スケールは例えば20mmと30mmの間の範囲で延在することができる。
【0016】
本発明によれば、咬合器内の中央下方で中間前方に形成された周知の瞳孔間ジョイントによって瞳孔間線と咬合平面との間の角度を判定、捕捉、および測定することができる。そのため、本発明によれば指針、棒、あるいは顎外ブラケットと固定的かつそれに対して正確に直角に延在するように結合されていて上方に垂直に延在するその他の任意の要素が好適に設けられる。前記の指針は患者の矢状面の中心点に向かって指向させることが好適である。
【0017】
そのため、例えば患者の鼻あるいは額上の適宜な点に予め水性フェルトペンでマークを付け、それに対して指針の照準を合わせることができる。
【0018】
本発明によれば、瞳孔間ジョイント上にスケールと組み合わされた測定指針が設けられ、それによって矢状面内に位置する水平軸周りにおける咬合平面と瞳孔間線との間の角度差の測定を可能にする。カンペル平面は通常瞳孔間線と平行して延在する。その際測定指針は咬合フォーク接続部上あるいは顎外ブラケット上(すなわち前記指針と連結)に取り付け、スケールを適宜な他の部位に取り付けることができる。スケールは角度表記で区分され、周知のように円形に延在することが好適である。
【0019】
従って本発明によれば、顎外ブラケットの長い“レバーアーム”の観点において前述した矢状面内の軸周りの角度ずれを既に従来よりも正確に測定することができ、その際任意の方式で勿論角度測定を実施することが可能で、例えば測定指針とスケールの組み合わせを使用するか、電子ノギスにおいて知られているようなデジタル表示器に該当するデジタル表示装置を使用するか、ひずみゲージを使用し従って遠隔測定を利用することができる。
【0020】
別の好適な実施形態によれば、咬合フォーク接続部の領域内にカンペルジョイントが設けられる。このカンペルジョイントの軸は前頭面内に存在し従って顆頭関節軸に対して平行に延在する。本発明によれば、カンペルジョイントによって咬合平面に対するカンペル平面の傾斜状態を検出かつ計測することができる。そのため前記のカンペルジョイントが互いに対向するジョイント部材上にそれぞれ取り付けられた計測指針とスケールを備える。従って、咬合フォーク接続部は顎外ブラケットに対して前記軸の周りで旋回可能であり、その軸周りの角度位置が検出可能になる。
【0021】
咬合フォーク接続部が測定のために咬合フォークを具備する。咬合フォークは患者の口内への挿入に際して咬合平面内に延在する。
【0022】
従って本発明に係る咬合器の使用に際してカンペル平面に対する咬合平面の傾斜状態を二次元で検出し得ることが好適であり、その際顎外ブラケットが基準要素として作用する。
【0023】
本発明に係る両方のジョイントのジョイント部材が相互に旋回可能であるが一度設定した旋回位置を静摩擦によって保持し得ることが理解される。それにより患者の口から咬合フォークを取り出す際に全てのジョイントが設定された状態に維持され、従って該当する測定指針とそれに対応するスケールによって角度数値を容易に読み取ることができる。
【0024】
それに代えて、各ジョイント部材の圧接力を相互に微調節するとともに固定を実施することを可能にするロックナットをジョイントが備えることもできる。
【0025】
咬合フォークに代えて咬合フォーク接続部上に印象材キャリアの受容部を設置することもでき、その場合直接的に印象によって測定を実施することもできる。印象材キャリアとしては印象用トレーを使用するか、あるいはイボクラール・ビバデント社製のセントリックトレーを使用することができる。
【0026】
本発明によれば、咬合器の部材を金属、好適には板金帯材から打ち抜き加工あるいは機械加工することが好適である。従って咬合器全体がさらに高圧蒸気滅菌可能になりその結果容易に殺菌することができる。
【0027】
ロックナットあるいは適宜なボルトによってジョイント部材を必要に応じて相互に分離して交換することもでき、それによって取扱いの容易性が向上する。
【0028】
交換可能な咬合フォークおよび/または印象材キャリアを有する咬合フォーク接続部によって個別の患者の多様な顎形態にも配慮することができる。また、顎外ブラケットがボルトによって咬合器上に固定されるため、必要に応じて異なったサイズを用意しておき使用することも可能である。
【0029】
本発明のその他の詳細、特徴、ならびに種々の利点は添付図面を参照しながら以下に記述する詳細な説明によって理解される。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】本発明に係る咬合器の第1の実施形態を概略的に示した立体図である。
【
図2】
図1の咬合器を別の角度で示した立体図である。
【
図3】本発明に係る咬合器の別の実施形態を示した(同様な)立体図である。
【
図4】
図3の咬合器を別の角度で示した立体図である。
【
図7】
図3の咬合器を別の方向から示した側面図である。
【
図10】本発明に係る咬合器のさらに別の実施形態を概略的に示した上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図1に示された咬合器10は、基準要素として略U字型に延在していて2本の側方脚部14,16と中央脚部18を有する顎外ブラケット12を備える。前記の側方脚部14および16は、約25°の角度で相互に拡がりながら延在する。
【0032】
図示されていない本発明に係る咬合器の一変更形態によれば、側方脚部14および16がいずれも中央脚部18に対して関節式に取り付けられる。これにかかるジョイントは極めて単純に達成することができ、例えば2つの孔を有していてその中に前記側方脚部と中央脚部の相互に向かい合った端部を保持し、それらの孔に相互に整列させて例えばリベット等の適宜な固定要素が挿通される。
【0033】
適宜なストッパを使用して調節性を任意の適宜な方式で制限することもでき、例えば中央脚部18と各側方脚部14あるいは16の間でそれぞれ45°ないし90°の角度範囲に制限することができる。
【0034】
顎外ブラケット12は例えば耐錆性の鋼材からなる金属ストライプの形式で形成される。前記の金属ストライプは図示された実施例において8mmの幅および1mmの厚みを有していて必要な調節性が存在する。
【0035】
他方、顎外ブラケット12とさらに必要であれば咬合器を硬質の樹脂から形成することができ、また必要であれば繊維強化樹脂から形成するか、または良好に殺菌可能な他の任意の適宜な材料から形成することもできる。
【0036】
顎外ブラケット12の中央脚部18は高低差部分20を有し、これも同様に鋼材帯からなるとともに基本的に四角形に構成される。従って、前記の高低差部分20によって顎外ブラケット20のための一種の枠が形成される。高低差部分20は2本の垂直脚部19および21を備える。図示された実施例においてはその位置で鋼材帯が垂直方向、すなわち直立方向に突立するU字形に湾曲し、そのU字形の側方脚部の末端の間にさらに別の鋼材帯26が溶接され、それが基本的に顎外ブラケット12の水平な中央脚部18の主要部分を形成する。
【0037】
前記の高低差部分は接続脚部22を備え、それの上に瞳孔間ジョイント24が取り付けられる。前記接続脚部22と前記の溶接された鋼材帯26の間に指針28が延在する。指針28は上方に向かって顕著に鋼材帯26を超えて延在する。
図1の描写において指針28は約4cmの長さのみを有するものであるが、必要に応じて指針の長さを大幅に延長し、例えば10cmとすることも可能であることが理解される。
【0038】
顎外ブラケット12の側方脚部14および16の高さに位置する鋼材帯26と接続脚部22との間の高低差は図示された実施例において25mmであるが;必要に応じて18mmないし32mmの間の別の値を適用することもできる。
【0039】
瞳孔間ジョイント24は、接続脚部22と結合されたジョイント部材30と咬合フォーク接続部32と結合されたジョイント部材34を備える。ジョイント部材30は
図1には図示されていない計測指針と結合され、またジョイント部材34はスケール36と結合されており、前記瞳孔間ジョイント24の計測指針がスケール36に沿って延在する。
【0040】
ロックナット39により、例えばこのロックナット39上に標記された“開け”および“締め”の回転方向に従ったジョイントの固定と解放が可能になる。
【0041】
図2において、咬合器10が
図1と同じ実施形態で背面から見た立体図として示されている。この図面ならびに以降の図面においても、同一の構成要素は同一の参照符号を付して示される。
【0042】
図2に示されているように、ジョイント部材30に対して計測指針38が割り当てられ回転ずれしないように結合される。また、スケール36はジョイント部材34と結合されるが、反対の組み合わせの構成を選択することも勿論可能である。
【0043】
本発明に係る極めて好適な構成形態によれば、咬合フォーク接続部32がさらに別のジョイント、すなわちカンペルジョイント40を備える。前記カンペルジョイント40は
錐体形状の第1の部材42と第2の部材44とから形成され、それらがロックナット46を介して相互にネジ固定される。ロックナット46によって部材42と46の相互間の摩擦力の調節が可能になる。
【0044】
この実施例において部材44が第2の計測指針48と結合され、また部材42は第2のスケール50と結合される。
【0045】
従ってスケール50上の計測指針48の位置を読み取ることによって軸が顆頭軸と平行に延在するカンペルジョイント40上の角度位置の捕捉が可能になる。
【0046】
咬合フォーク接続部34はさらに交換接続部82を備え、
図2の構成によればその中に印象材キャリア(例えば印象用トレー、セントリックトレー)のための受容部84が収容される。
【0047】
図3からは、咬合器10が受容部84に代えて咬合フォーク86を備えるようにも構成可能であることが理解される。そのため交換接続部82は、2本のボルト90および92(あるいは別の実施形態においては適宜なナット)を緩めて所要の接続部品を選択して適用しその後ボルト90および92を再び締め付けることを可能にする。ここで形成される接続面によって高さ位置と角度位置がそれぞれ正確に予設定され、従って咬合フォークの大きさが多様な場合でも咬合平面が常に正確に検出される。
【0048】
図4から、瞳孔間ジョイント24とカンペルジョイント40に対して同様なロックナット39と46を使用し得ることが理解される。
【0049】
図5には本発明に係る咬合器10の左方からの側面図が示されている。ジョイント部材30および32は円筒形状の部品として形成され従って瞳孔間ジョイント24の一部になっている。カンペルジョイント40の部材42も円筒形状の要素として形成されるが、部材44は金属ブロックとして形成されてその上面上に交換接続部82の接続面が形成される。
【0050】
図6には咬合器10の上面図が示されている。図示されているように、カンペルジョイント40上の接続性を考慮して交換接続部82の接続ピン96が非対称性に幾らかオフセットして形成される。瞳孔間ジョイント24が正確に矢状面98上に存在すべきであることが理解される。
【0051】
図7には、本発明に係る咬合器10の右方からの側面図が示されている。ここではスケール50と計測指針48が相互に対向する配置で極めて明確に図示されており;検出された角度位置が丁度0°を示している。ここで測定角度範囲は−15°ないし+15°であり、通常咬合平面とカンペル平面の間の相対位置関係は+15°あるいは−15°より顕著に小さな相異となる。
【0052】
カンペルジョイントの旋回動作性は、考えられる旋回角度を任意の適宜な方式で制限するストッパによって規制することができる。例えば、水平の中央位置に対して±30°の最大旋回角度を設定することができるが、最大旋回角度を±25°あるいはわずか20°とすることもできる。旋回角度はスケール50の範囲内の旋回を可能にすべきものとなり、スケールが例えば−7°ないし+9°のように小さな範囲で延在する場合、それに応じて適宜な旋回角度の制限を実施することができる。
【0053】
図8には、本発明に係る咬合器10の底面が示されている。ここでもカンペルジョイント40と瞳孔間ジョイント24の旋回軸が相互に垂直に延在することが理解される。
【0054】
計測指針38とスケール36の間の相対位置関係が
図9に明確に示されている。ここで表記された目盛範囲は−10°ないし+10°であるが、ここでも実用上実際に生じる値はこの範囲よりも顕著に小さいものとある。
【0055】
瞳孔間ジョイントに対しても、スケール36の目盛範囲よりも広範囲である数値に旋回範囲を制限するストッパを設けることができるが、それに従った規制は不要である。
【0056】
本発明の別の構成形態によれば、咬合フォーク接続部34と顎外ブラケット12の間の垂直距離が調節可能である。その調節可能性は簡便な方式で機械式に実現することができるが、その際両方の要素の相互に平行な誘導が好適である。これに対応する解決方式は、例えば建築分野において使用されるようなはさみリンク型ジョイントによって実現することができる。その際調節範囲は20mmないし30mmとすることができる。
【0057】
別の好適な構成形態によれば、顎外ブラケット12上、好適にはその側方脚部14および16上に基準要素が設けられる。その基準点を用いて例えば目視観測によって顎外ブラケットの位置、従ってすなわち咬合器の位置を例えば周知の立体鏡視方法に従って検出することができ、さらに患者に対しての咬合器の相対位置も検出することができる。
【0058】
別の好適な実施形態によれば、咬合フォーク接続部34上に唇マークを設ける。その理由は、全歯欠損の顎の場合にしばしば患者の上唇が内側に低没するためであり、これは補綴部材によって修復すべきものである。本発明に係る上唇マークあるいは唇マークによって唇位置を最適に調節するかあるいは予め測定することができ;後に咬合診断結果に基づいて製造すべき補綴部材によって唇位置が決定され、特に歯の水平位置および/またはより厚くあるいは突出を少なくして形成することができる歯の上方の歯科補綴部材の歯肉材の形状によって決定される。
【0059】
前記の唇マークは咬合フォークと固定的に結合して咬合フォーク接続部上に取り付けるか、または前記接続部に対して摺動可能に取り付けることができ、その際必要であれば位置検出可能にすることができる。
【0060】
図10により、装着された咬合フォークに対する咬合器の正確な位置設定を可能にする咬合器基準要素97をどのような方式で取り付け得るかが示されている。
【0061】
基準位置を判定するために追加的な補助手段として印象後の印象材を使用することもできる。咬合器基準要素を印象材キャリア上あるいは印象材自体の上に取り付けることによって、その印象材の位置、従って患者の顎と顎外ブラケット12との間の正確な関係を作成することができる。
【0062】
このために適した咬合器基準要素を使用しないと、患者の口腔に対する咬合器の相対位置が決定されなくなる危険性が生じる。
【0063】
従って本発明によれば、印象材キャリアもしくは咬合フォークと顎外ブラケット12との間の相対角度を判定し得るばかりでなく、咬合器基準要素97を介して患者の口に対する咬合器の位置姿勢も特にスキャンに際して判定し得ることが好適である。
【0064】
しかしながら、総義歯を製造するためには三次元スキャンが極めて好適である。
【0065】
咬合器基準要素97を咬合フォーク上あるいは咬合フォーク接続部上、または印象材キャリア上に取り付けることによって、極めて正確な基準設定が可能になり、何故ならば、咬合フォークのための1つの工具受容部のみが基準要素を支承し従ってその工具受容部に関してスキャンが実行される場合にホルダと咬合フォークの間の固定の不正確性がスキャン結果を誤らせる可能性があるためである。
【0066】
咬合器基準要素97は任意の適宜な方式で形成することができる。例えば誤認不可能なような二次元の指標を有することが好適であり、すなわち例えば対称な十字形等でないものとされる。
【0067】
好適な実施形態によれば追加的に解像度検出装置99が設けられ、それが微細な線から形成され、それの識別性によって、咬合器基準要素97に対する適正な焦点合わせが実施されているという宣言を立てることが可能になる。