(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
相互に向かい合って配置されるとともに、少なくとも一方が所定の移動方向に移動して相互の離間距離が変化する第1部材および第2部材を備えて、ワークの長さ方向が前記移動方向に平行する平行姿勢を、前記ワークの長さ方向が前記移動方向に直交する直交姿勢に変更するワーク姿勢変更装置であって、
前記第1部材は、前記第2部材と対向する第1対向面に、前記平行姿勢の前記ワークの後端を押動する押動部、および、前記直交姿勢の前記ワークの側面を支持する第1支持部を有し、
前記第2部材は、前記第1部材と対向する第2対向面に、
前記移動方向に対して傾斜配置され、押動される前記ワークの先端を案内して、前記ワークを前記平行姿勢から前記移動方向に対して傾斜した傾斜姿勢まで変更する傾斜案内部、および、
前記直交姿勢の前記ワークの側面を支持する第2支持部を有し、
前記傾斜案内部を挟んで平行配置され、前記ワークを姿勢変更可能に両側から挟む2つの側壁部をさらに備え、
前記押動部は、前記傾斜姿勢の前記ワークを押動して前記直交姿勢まで変更するワーク姿勢変更装置。
相互に向かい合って配置されるとともに、少なくとも一方が所定の移動方向に移動して相互の離間距離が変化する第1部材および第2部材を備えて、ワークの長さ方向が前記移動方向に平行する平行姿勢を、前記ワークの長さ方向が前記移動方向に直交する直交姿勢に変更するワーク姿勢変更装置であって、
前記第1部材は、前記第2部材と対向する第1対向面に、前記平行姿勢の前記ワークの後端を押動する押動部、および、前記直交姿勢の前記ワークの側面を支持する第1支持部を有し、
前記第2部材は、前記第1部材と対向する第2対向面に、
前記移動方向に対して傾斜配置され、押動される前記ワークの先端を案内して、前記ワークを前記平行姿勢から前記移動方向に対して傾斜した傾斜姿勢まで変更する傾斜案内部、および、
前記直交姿勢の前記ワークの側面を支持する第2支持部を有し、
前記傾斜案内部を挟んで平行配置され、前記ワークを姿勢変更可能に両側から挟む2つの側壁部、ならびに、
前記第1部材および前記第2部材の少なくとも一方に設けられ、前記傾斜姿勢の前記ワークの側面を押動または支持して前記直交姿勢まで変更するピン部材をさらに備えるワーク姿勢変更装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1、2の技術例は、いずれかの圧造工程部のパンチおよびダイスに代えて装備することができるので、汎用性に優れる。仮に、ワークの姿勢変更機能をワーク搬送装置に付与した場合、製造するワークの形状が変更されて姿勢変更機能が不要となったときに、ワーク搬送装置を大規模改修する必要が生じる。
【0007】
しかしながら、特許文献1には「部品はトラニオン状の構造の水平軸線の周りを回転する」という記載しかなく、部品ロータの構造および動作は明瞭でない。それでも、部品ロータの図面を見ると、複雑な構造であることが分かる。また、特許文献2の素材姿勢変更用のステーションも、構造が複雑である。加えて、素材姿勢変更用のステーションは、専用の駆動機構が必要となるため、汎用性が低下する。
【0008】
本発明は上記背景技術の問題点に鑑みてなされたものであり、簡易な構造でワークの姿勢を変更できるワーク姿勢変更装置、およびこのワーク姿勢変更装置を備える多工程圧造機を提供することを解決すべき課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のワーク姿勢変更装置は、相互に向かい合って配置されるとともに、少なくとも一方が所定の移動方向に移動して相互の離間距離が変化する第1部材および第2部材を備えて、ワークの長さ方向が前記移動方向に平行する平行姿勢を、前記ワークの長さ方向が前記移動方向に直交する直交姿勢に変更するワーク姿勢変更装置であって、前記第1部材は、前記第2部材と対向する第1対向面に、前記平行姿勢の
前記ワークの後端を押動する押動部、および、前記直交姿勢の
前記ワークの側面を支持する第1支持部を有し、前記第2部材は、前記第1部材と対向する第2対向面に、前記移動方向に対して傾斜配置され、押動される
前記ワークの先端を案内して、前記ワークを前記平行姿勢から前記移動方向に対して傾斜した傾斜姿
勢まで変更する傾斜案内部、および、前記直交姿勢の
前記ワークの側面を支持する第2支持部を有し、前記傾斜案内部を挟んで平行配置され、前記ワークを姿勢変更可能に両側から挟む2つの側壁部をさらに備え、
前記押動部は、前記傾斜姿勢の前記ワークを押動して前記直交姿勢まで変更する。
【0010】
また、本発明のワーク姿勢変更装置は、相互に向かい合って配置されるとともに、少なくとも一方が所定の移動方向に移動して相互の離間距離が変化する第1部材および第2部材を備えて、ワークの長さ方向が前記移動方向に平行する平行姿勢を、前記ワークの長さ方向が前記移動方向に直交する直交姿勢に変更するワーク姿勢変更装置であって、前記第1部材は、前記第2部材と対向する第1対向面に、前記平行姿勢の前記ワークの後端を押動する押動部、および、前記直交姿勢の前記ワークの側面を支持する第1支持部を有し、前記第2部材は、前記第1部材と対向する第2対向面に、前記移動方向に対して傾斜配置され、押動される前記ワークの先端を案内して、前記ワークを前記平行姿勢から前記移動方向に対して傾斜した傾斜姿勢まで変更する傾斜案内部、および、前記直交姿勢の前記ワークの側面を支持する第2支持部を有し、前記傾斜案内部を挟んで平行配置され、前記ワークを姿勢変更可能に両側から挟む2つの側壁部、ならびに、前記第1部材および前記第2部材の少なくとも一方に設けられ、前記傾斜姿勢の前記ワークの側面を押動または支持して前記直交姿勢まで変更するピン部材をさらに備えてもよい。
【0011】
さらに、前記2つの側壁部を含んで形成され、かつ、前記第2部材を収容しつつ前記第1部材に向かって開口する孔を有したケースをさらに備え、前記ワークは、前記孔の内部で姿勢が変更される、ことが好ましい。
【0012】
また、前記第2部材は、前記孔の内部を前記移動方向に移動可能であって、前記第1部材に近い位置で前記傾斜案内部が前記ワークの姿勢の変更を開始し、前記第1部材から遠い位置へと移動しながら前記ワークの姿勢の変更を継続し、前記第1部材から遠い位置で前記第2支持部が前記直交姿勢の
前記ワークの側面を支持する、ことが好ましい。
【0013】
さらに、前記第2部材は、前記第1部材に近い位置に移動して、前記直交姿勢の
前記ワークを前記孔から押し出す、ことが好ましい。
【0014】
さらに、前記ケースは、前記孔の下側から前記第1部材に向かって突出するように形成され、前記孔から押し出された前記直交姿勢の
前記ワークが載置されるワーク載置部を有する、ことが好ましい。
【0015】
また、前記第2部材は、前記第2対向面の下部に配置され、水平な
前記移動方向から下方に向けて傾斜する
前記傾斜案内部と、前記第2対向面の上部に配置された
前記第2支持部と、を有する、ことが好ましい。
【0016】
さらに、前記第1部材は、前記第1対向面の上下方向に延在する溝形状の
前記第1支持部を有し、溝形状の
前記第1支持部が前記押動部を兼ねる、ことが好ましい。
【0017】
また、前記第1部材は、前記第1対向面の中間高さに配置された
前記押動部と、前記第1対向面の前記押動部よりも下側に配置された
前記第1支持部と、前記第1対向面の前記押動部よりも上側に傾斜配置され、前記ワークが傾斜するにつれてその後端を徐々に上方に案内する傾斜案内補助部と、を有し、前記第1部材および前記第2部材の少なくとも一方は、前記移動方向に移動して前記ワークの側面を押動または支持するピン部材を有してもよい。
【0018】
さらに、前記ワークを掴んで前記第1部材と前記第2部材との間まで搬入し、前記押動部によって押動される
前記ワークを途中まで掴み続ける一対のフィンガをさらに備え、一対の
前記フィンガは、互いに向かい合う内側面に、前記移動方向の溝および前記移動方向に対して傾斜した傾斜方向の溝が重ねて形成されており、掴み続けている
前記ワークの前記平行姿勢から前記傾斜姿勢への変化を許容する、ことが好ましい。
【0019】
本発明の多工程圧造機は、軸線に沿って移動するパンチと、前記軸線を共通にするダイスとを備えた圧造工程部を複数もつ多工程圧造機であって、いずれかの圧造工程部の前記パンチおよび前記ダイスの一方に代えて前記第1部材を装備し、前記パンチおよび前記ダイスの他方に代えて前記第2部材および前記2つの側壁部を装備することにより、本発明のワーク姿勢変更装置を着脱可能に備える。
【発明の効果】
【0020】
本発明のワーク姿勢変更装置によれば、第1部材が移動方向に相対移動すると、押動部によって押動されるワークは、傾斜案内部に案内されて平行姿勢から傾斜姿勢
まで変化し、さらに押動されて直交姿勢へと自動的に変化する。このため、特許文献2の一対の回転体を90°回転させる専用の駆動機構は不要であり、第1部材および第2部材の少なくとも一方を移動方向に駆動する機構のみで足りる。したがって、簡易な構造でワークの姿勢を変更できるワーク姿勢変更装置を提供できる。
【0021】
また、第1部材および第2部材の少なくとも一方がピン部材を有する態様では、ピン部材の押動または支持により、
傾斜姿勢のワークが直交姿勢まで変更される。
【0022】
さらに、孔を有したケースを備える態様では、ワークは、孔の内部で姿勢が変更される。したがって、ワークの位置がずれてしまうおそれが無く、ワークの表面が傷つくリスクも低減される。
【0023】
また、第2部材が孔の内部を移動方向に移動可能な態様では、第2部材が第1部材から遠い位置へ移動することにより、ワークの姿勢変更が助長され、かつ確実に行われる。
【0024】
さらに、第2部材が直交姿勢のワークを孔から押し出す態様では、ワークの取り出しが容易になる。
【0025】
さらに、ケースがワーク載置部を有する態様では、ワーク載置部によってワークの落下のおそれが解消され、ワークが確実に取り出される。
【0026】
また、第2部材が下方に向けて傾斜する傾斜案内部を有する態様では、ワークの先端を下側に案内して、後端を上側にした起立姿勢に変更できる。
【0027】
さらに、第1部材が押動部を兼ねる溝形状の第1支持部を有する態様では、第1部材の構造を特に簡易化できる。
【0028】
また、第1部材が押動部、第1支持部、および傾斜案内補助部を有する態様では、ピン部材を併用することにより、ワークを起立姿勢に変更して保持できる。
【0029】
さらに、一対のフィンガの内側面に軸線方向および傾斜方向の溝が重ねて形成された態様では、一対のフィンガは、ワークの姿勢が変化する途中まで掴み続けることができる。したがって、ワークの落下のおそれが解消され、ワークの姿勢が確実に変更される。
【0030】
本発明の多工程圧造機によれば、いずれかの圧造工程部にワーク姿勢変更装置を着脱可能に備えることができる。このため、ワークの姿勢変更機能の要否に応じてワーク姿勢変更装置を着脱できるので、大規模改修の必要が無い。また、多工程圧造機に元々備えられている駆動機構を用いてワーク姿勢変更装置を駆動できる。したがって、ワーク姿勢変更装置の汎用性が高い。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明の実施形態の多工程圧造機9は、第1実施形態のワーク姿勢変更装置1を着脱可能に備える。
図1は、本発明の実施形態の多工程圧造機9の全体構成を模式的に示す平面図である。多工程圧造機9は、複数組のダイス93およびパンチ96を備えて、ワークに複数工程の成形加工を順次行う。パンチ96は、軸線AXに沿って移動し、ダイス93は、軸線AXを共通にする。多工程圧造機9は、他に基台91、ダイスブロック92、ラム94、パンチブロック95、主駆動源97などを備えている。
【0033】
図1の左右方向は、軸線AXが延びる軸線方向であり、ワーク姿勢変更装置1における移動方向と一致している。本実施形態では、5組のダイス93およびパンチ96により第1〜第5圧造工程部が構成されている。
図1の上側が上流の第1圧造工程部であり、下側が下流の第5圧造工程部となっている。本発明は、多工程圧造機9の工程数に関係なく実施できる。
【0034】
基台91は、各部を配設するための筐体であり、堅牢に形成されている。ダイスブロック92は、基台91に交換可能に取り付けられる。複数個のダイス93は、ダイスブロック92の前側(図中の左側)に交換可能に取り付けられる。各ダイス93の図中の左方向を向いた前側に、所定の加工型が形成されている。ラム94は、基台91に対して軸線方向(図中の左右方向)に往復動可能に保持されている。パンチブロック95は、ラム94の前側(図中の右側)に交換可能に取り付けられる。複数個のパンチ96は、パンチブロック95の前側(図中の右側)に交換可能に取り付けられる。各パンチ96の図中の右方向を向いた前側に、所定の加工型が形成されている。
【0035】
多工程圧造機9は、
図1に省略された線材切断供給装置を備えている。線材切断供給装置は、長尺線材から所定長さの棒状のワークを切り出して供給する。ワークの材質として、アルミや鉄、各種の合金などを例示できる。ワーク搬送装置8は、ダイスブロック92の上方からダイス93の前方にかけて配設される。ワーク搬送装置8は、ワークを掴む5対のフィンガを有する。最上流の一対のフィンガは、線材切断供給装置から第1圧造工程部へとワークを搬送する。2〜5番目の4対のフィンガは、上流側の圧造工程部から下流側の圧造工程部へと順番にワークを搬送する。多工程圧造機9は、他に、図略のキックアウト装置やトリミング装置を備えている。
【0036】
ラム94を往復駆動するために主駆動源97が設けられている。主駆動源97は、例えば、三相交流電源で動作する誘導モータまたは同期モータとすることができる。主駆動源97は、ワーク姿勢変更装置1やワーク搬送装置8、線材切断供給装置なども併せて駆動する。主駆動源97の駆動力は、フライホイール98および減速機構99を介して、ラム94を駆動するクランク軸9Aに入力されている。さらに、クランク軸9Aから分岐歯車対9Bを介して、サイド軸9Cに駆動力が分岐伝達されている。
【0037】
サイド軸9Cには、トランスファカム9Dが一体的に回転するように設けられている。トランスファカム9Dは、ワーク搬送装置8を駆動する。また、サイド軸9Cからトランスファドライブ9Eを経由した先に、5個のオープンクローズカム9Fが回転駆動されるように連結されている。オープンクローズカム9Fは、幅方向に等間隔で配置されており、各工程間の位置に対応している。オープンクローズカム9Fは、それぞれ一対のフィンガを開閉駆動する。
【0038】
さらに、サイド軸9Cには、カッタカム9Gが設けられるとともに、プッシャカム9H、フィードカム9J、フィードローラ9K、ダイス93と同数個のキックアウトカム9L、およびトリミングカム9Mが連結されている。カッタカム9G、プッシャカム9H、フィードカム9J、およびフィードローラ9Kは、線材切断供給装置を駆動する。キックアウトカム9Lは、図略のキックアウトピンを駆動して、成形加工されたワークをダイス93から突き出す。
【0039】
第1実施形態のワーク姿勢変更装置1の説明に移る。ワーク姿勢変更装置1は、
図2に示された部品Bを製造するときに、多工程圧造機9の第1圧造工程部に着脱可能に装備される。
図2は、多工程圧造機9にワーク姿勢変更装置1を装備して製造する部品Bを例示した斜視図である。部品Bは、棒状の軸部B1、および扁平に拡がった頭部B2からなる。この部品Bを製造するために、第1圧造工程部では、軸線AXの方向に延びる棒状のワークの平行姿勢を90°変更して直交姿勢とする。そして、第2圧造工程部以降で、直交方向AVからワークを打圧する。なお、ワーク姿勢変更装置1は、第2〜第5圧造工程部のいずれかに装備することもできる。
【0040】
図3は、第1実施形態のワーク姿勢変更装置1の構成を示した斜視図である。ワーク姿勢変更装置1は、第1部材2、第2部材3、ケース4、および一対のフィンガ5で構成される。
図3において、第2部材3は、ケース4に形成された孔41の内部に収容されていているので見えない。ワーク姿勢変更装置1は、第1圧造工程部のパンチ96に代えて第1部材2が装備され、ダイス93に代えて第2部材3およびケース4が装備される。また、一対のフィンガ5は、ワーク搬送装置8に交換可能に設けられる。
【0041】
図4は、第1部材2の側面断面図である。第1部材2は、パンチ96の外形形状と同様に、水平方向に延びる軸線AXを中心とする横向きの円柱形状に形成されている。第1部材2は、第2部材3と対向する側に、押動支持部材21を有する。押動支持部材21は、幅方向の厚みが棒状のワークの外径にほぼ等しく、高さがワークの長さよりも大きめの板材である。
【0042】
押動支持部材21は、第2部材3と対向する側に、第1対向面22を有する。第1対向面22の垂直方向に延在するように、溝形状の第1支持部23が刻設されている。第1支持部23は、ワークの側面の曲率に概ね一致した丸底の浅い溝形状とされており、ワークの側面に面接触する。第1支持部23は、ワークを押動する押動部を兼ねる。第1支持部23が軸線AXと交差する部分は、初期状態における押動部24となる。
【0043】
図5は、ケース4の側面断面図であり、第2部材3が見えている。ケース4は、ダイス93の外形形状と同様に、水平方向に延びる軸線AXを中心とする横向きの円柱形状に形成されている。ケース4は、第1部材2に向かって開口する孔41を有する。孔41は、幅方向の孔幅が棒状のワークの外径よりもわずかに大きく、上下方向の孔高さがワークの長さよりも大きめである。孔41は、押動支持部材21およびワークを収容できる広さを有する。孔41の左右の内側面は、ワークを姿勢変更可能に両側から挟む2つの側壁部42となっている。孔41の下側から第1部材2に向かって突出するように、ワーク載置部43が設けられている。
【0044】
第2部材3は、孔41の内部に収容されて、軸線方向に移動可能となっている。第2部材3は、幅方向の厚みが棒状のワークの外径にほぼ等しく、高さがワークの長さよりも大きめの板材である。第2部材3は、第1部材2と対向する側に、第2対向面31を有する。第2対向面31の下部は、水平な軸線AXから下方に向けて傾斜配置された傾斜案内部32となっている。傾斜案内部32は、下にいくほど第1部材2から離れる斜面形状とされ、傾斜角度を徐変させる曲面部を経て、下端がほぼ垂直に立っている。第2対向面31の上部は、垂直配置された第2支持部33となっている。
【0045】
さらに、第2部材3は、その下部寄りを貫くとともに、軸線方向に移動可能な第2ピン部材35を有する。第2ピン部材35は、キックアウトカム9Lを利用して、あるいはキックアウトカム9Lを別仕様品に交換して駆動される。一方、第2部材3は、キックアウトカム9Lを利用して、あるいは、別仕様のカムを追加して駆動される。後で詳述するように、第2部材3および第2ピン部材35は、相互に異なるタイミングで移動する。
【0046】
図6は、一対のフィンガ5の下部の正面図である。また、
図7は、一対のフィンガ5が水平姿勢のワークWを掴んだ状態の側面図であり、
図8は、一対のフィンガ5が傾斜姿勢のワークWを掴んだ状態の側面図である。一対のフィンガ5は、ワーク搬送装置8に設けられており、オープンクローズカム9Fによって開閉駆動される。一対のフィンガ5は、棒状のワークWを掴んで第1部材2と第2部材3との間まで搬入する。一対のフィンガ5は、互いに向かい合う内側面に、軸線方向の溝51、および軸線AXに対して傾斜した傾斜方向の溝52が重ねて形成されている。このため、一対のフィンガ5は、ワークWの長さ方向が軸線AXに平行する平行姿勢(
図7に破線で示す)から、傾斜姿勢(
図8に実線で示す)への変化を許容する。
【0047】
次に、第1実施形態のワーク姿勢変更装置1の動作について、動作順序を表す
図9〜
図13を参考にして説明する。
図9は、ワーク姿勢変更装置1にワークWが搬入された直後の初期状態を示す側面断面図である。
図10は、
図9の初期状態から第1部材2が移動して、ワークWの姿勢を変更する途中の状態を示す側面断面図である。
図11は、
図10の状態に続き第2部材3も移動して、ワークWの姿勢変更を継続している状態を示す側面断面図である。
図12は、ワークWが直交姿勢に保持された状態を示す側面断面図である。
図13は、直交姿勢のワークWが孔41から押し出された状態を示す側面断面図である。
【0048】
図9に示される初期状態において、第2部材3は、孔41内の第1部材2に近い位置へ移動している。第2支持部33は、ケース4の前面に並んでいる。また、第2ピン部材35は、孔41内の第1部材2から遠い位置へ移動している。第2ピン部材35の先端は、傾斜案内部32から引っ込んでいる。一対のフィンガ5によって搬入されたワークWは、押動部24と傾斜案内部32の間に平行姿勢で位置する。
【0049】
ここで、第1部材2が所定の移動方向である軸線方向に移動すると、第2部材3との離間距離が徐々に減少する。そして、離間距離が概ねワークWの長さまで減少すると、押動部24は、ワークWの後端を押動する。ワークWの先端は、傾斜案内部32に案内されて徐々に下方に向かう。これに伴い、ワークWにモーメント力が作用して、ワークWの後端は、溝形状の第1支持部23に沿い徐々に上昇する。したがって、押動部の位置も、初期状態から上昇する。
【0050】
ワークWは、平行姿勢から傾斜姿勢に変化し、さらに傾斜角度が徐々に増加してゆく。このとき、一対のフィンガ5は、姿勢を変更する途中のワークWを掴み続けることができる。したがって、ワークWの落下のおそれが解消され、ワークWの姿勢が確実に変更される。一対のフィンガ5は、第1部材2が接近してくると、ワークWを開放して上方に逃げる。これにより、
図10に示された状態となる。
【0051】
図10の状態に続き、第1部材2の移動と並行して、第2部材3も第1部材2から遠い位置へと移動し始める。これにより、ワークWの姿勢変更は、孔41の内部で継続される。さらに、第2部材3の移動により、ワークWの姿勢変更が助長され、かつ確実に行われて、
図11に示された状態となる。第2部材3の移動により、第2ピン部材35の先端は、傾斜案内部32から突出して傾斜姿勢のワークWの側面に接近する。その後、第2ピン部材35は、ワークWの側面に当接して支持するので、ワークWの姿勢変更が助長される。ワークWは、孔41の内部で側壁部42に挟まれた状態で姿勢が変更されるので、位置がずれてしまうおそれが無く、表面が傷つくリスクも低減される。
【0052】
第1部材2および第2部材3の移動が死点に達すると、
図12に示されたワークWの起立姿勢となる。このとき、第2ピン部材35の先端は、第2支持部33の真下に位置する。起立姿勢のワークWは、第1支持部23と、第2支持部33および第2ピン部材35とによって、その側面が挟まれ保持される。
【0053】
この後、第1部材2が死点から戻り始める。少し遅れて、第2部材3および第2ピン部材35は、同期して移動し始め、第1部材2に近い位置へ移動する。これにより、
図13に示された状態となる。図示されるように、起立姿勢のワークWは、その側面が第2部材3および第2ピン部材35によって押動され、孔41から押し出されてワーク載置部43に載置される。これにより、ワークWの取り出しが容易になる。また、ワーク載置部43によってワークWの落下のおそれが解消され、ワークWが確実に取り出される。ワーク載置部43上のワークWは、搬入時と異なる一対のフィンガによって、第2圧造工程部に搬送される。
【0054】
第1実施形態のワーク姿勢変更装置1は、相互に向かい合って配置されるとともに、少なくとも一方が所定の移動方向に移動して相互の離間距離が変化する第1部材2および第2部材3を備えて、ワークWの長さ方向が移動方向に平行する平行姿勢を、ワークWの長さ方向が移動方向に直交する直交姿勢に変更するワーク姿勢変更装置1であって、第1部材2は、第2部材3と対向する第1対向面22に、平行姿勢のワークWの後端を押動する押動部24、および、直交姿勢のワークWの側面を支持する第1支持部23を有し、第2部材3は、第1部材2と対向する第2対向面31に、移動方向に対して傾斜配置され、押動されるワークWの先端を案内して、ワークWを平行姿勢から移動方向に対して傾斜した傾斜姿勢を経て直交姿勢まで変更する傾斜案内部32、および、直交姿勢のワークWの側面を支持する第2支持部33を有し、傾斜案内部32を挟んで平行配置され、ワークWを姿勢変更可能に両側から挟む2つの側壁部42をさらに備えた。
【0055】
これによれば、第1部材2が移動方向に相対移動すると、押動部24によって押動されるワークWは、傾斜案内部32に案内されて平行姿勢から傾斜姿勢を経て直交姿勢へと自動的に変化する。このため、特許文献2の一対の回転体を90°回転させる専用の駆動機構は不要であり、第1部材2および第2部材3の少なくとも一方を移動方向に駆動する機構のみで足りる。したがって、簡易な構造でワークの姿勢を変更できるワーク姿勢変更装置1を提供できる。
【0056】
さらに、第2部材3は、移動方向に移動してワークWの側面を押動または支持する第2ピン部材35を有する。これによれば、第2ピン部材35の支持により、ワークWの姿勢変更が助長され、かつ確実に行われる。
【0057】
さらに、第1実施形態のワーク姿勢変更装置1は、2つの側壁部42を含んで形成され、かつ、第2部材3を収容しつつ第1部材2に向かって開口する孔41を有したケース4をさらに備え、ワークWは、孔41の内部で姿勢が変更される。これによれば、ワークWの位置がずれてしまうおそれが無く、ワークWの表面が傷つくリスクも低減される。
【0058】
また、第2部材3は、孔41の内部を移動方向に移動可能であって、第1部材2に近い位置で傾斜案内部32がワークWの姿勢の変更を開始し、第1部材2から遠い位置へと移動しながらワークWの姿勢の変更を継続し、第1部材2から遠い位置で第2支持部33が直交姿勢のワークWの側面を支持する。これによれば、第2部材3が第1部材2から遠い位置へ移動することにより、ワークWの姿勢変更が助長され、かつ確実に行われる。
【0059】
さらに、第2部材3は、第1部材2に近い位置に移動して、直交姿勢のワークWを孔41から押し出す。これによれば、ワークWの取り出しが容易になる。
【0060】
さらに、ケース4は、孔41の下側から第1部材2に向かって突出するように形成され、孔41から押し出された直交姿勢のワークWが載置されるワーク載置部43を有する。これによれば、ワーク載置部43によってワークWの落下のおそれが解消され、ワークWが確実に取り出される。
【0061】
また、第2部材3は、第2対向面31の下部に配置され、水平な移動方向から下方に向けて傾斜する傾斜案内部32と、第2対向面31の上部に配置された第2支持部33と、を有する。これによれば、ワークWの先端を下側に案内して、後端を上側にした起立姿勢に変更できる。
【0062】
さらに、第1部材2は、第1対向面22の上下方向に延在する溝形状の第1支持部23を有し、溝形状の第1支持部23が押動部24を兼ねる。これによれば、第1部材2の構造を特に簡易化できる。
【0063】
さらに、ワークWを掴んで第1部材2と第2部材3との間まで搬入し、押動部24によって押動されるワークWを途中まで掴み続ける一対のフィンガ5をさらに備え、一対のフィンガ5は、互いに向かい合う内側面に、移動方向の溝51および移動方向に対して傾斜した傾斜方向の溝52が重ねて形成されており、掴み続けているワークWの平行姿勢から傾斜姿勢への変化を許容する。
【0064】
これによれば、ワークWの落下のおそれが解消され、ワークWの姿勢が確実に変更される。仮に、移動方向の溝51のみを有するフィンガを用いることを想定すると、ワークWを開放するタイミングを早める必要が生じる。この場合、ワークWが落下したり、ワークWが想定外の姿勢変更を行って第1部材2とケース4との間に挟み込まれてしまったりするおそれが生じる。
【0065】
実施形態の多工程圧造機9は、軸線AXに沿って移動するパンチ96と、軸線AXを共通にするダイス93とを備えた圧造工程部を複数もつ多工程圧造機9であって、いずれかの圧造工程部のパンチ96に代えて第1部材2を装備し、ダイス93に代えて第2部材3および2つの側壁部42を装備することにより、ワーク姿勢変更装置1を着脱可能に備える。
【0066】
これによれば、ワークWの姿勢変更機能の要否に応じてワーク姿勢変更装置1を着脱できるので、大規模改修の必要が無い。また、多工程圧造機9に元々備えられている駆動機構を用いてワーク姿勢変更装置1を駆動できる。したがって、ワーク姿勢変更装置1の汎用性が高い。
【0067】
次に、第2実施形態のワーク姿勢変更装置1Aの構成について、第1実施形態と異なる点を主に説明する。第2実施形態のワーク姿勢変更装置1Aは、第2部材3、ケース4、および一対のフィンガ5が第1実施形態と同じであり、第1部材6の構造が第1実施形態と異なる。
【0068】
図14は、第2実施形態の第1部材6の側面断面図である。第1部材6は、パンチ96の外形形状と同様に、水平方向に延びる軸線AXを中心とする横向きの円柱形状に形成されている。第1部材6は、第2部材3と対向する側に、押動支持部材61を有する。押動支持部材61は、幅方向の厚みが棒状のワークの外径にほぼ等しく、高さがワークの長さよりも大きめの板材である。押動支持部材61は、第2部材3と対向する側に、第1対向面62を有する。
【0069】
第1対向面62の中間高さすなわち軸線AXの位置に、初期状態における押動部64が配置されている。押動部64よりも下側には、垂直方向に延在する第1支持部63が配置されている。押動部64よりも上側には、傾斜案内補助部65が配置されている。傾斜案内補助部65は、上にいくほど第2部材3から離れる斜面形状に形成されている。傾斜案内補助部65は、傾斜案内部32の作用でワークWが傾斜するにつれて、ワークWの後端を徐々に上方に案内する。これに伴い、押動部の位置も、初期状態から上昇する。
【0070】
さらに、第1部材6は、その上部寄りを貫くとともに、軸線方向に移動可能な第1ピン部材66を有する。第1ピン部材66は、例えば、カムを追加することで主駆動源97から駆動することができる。これによれば、第1部材6および第1ピン部材66は、相互に異なるタイミングで移動できる。初期状態において、第1ピン部材66の先端は、傾斜案内補助部65から引っ込んでいる。
【0071】
次に、第2実施形態のワーク姿勢変更装置1Aの動作について説明する。
図15は、第2実施形態のワーク姿勢変更装置1Aにおいて、ワークWが直交姿勢に保持される直前の状態を示す側面断面図である。第2実施形態の初期状態において、ワークWは、押動部64と傾斜案内部32の間に平行姿勢で位置する。ここで、押動部64がワークWの後端を押動すると、ワークWの先端は、傾斜案内部32に案内されて徐々に下方に案内される。これに伴い、ワークWにモーメント力が作用して、ワークWの後端は、押動部64から傾斜案内補助部65へ移動し、傾斜案内補助部65に沿って徐々に上方に案内される。これにより、ワークWは、平行姿勢から傾斜姿勢に変化し、傾斜角度が徐々に増加してゆく。
【0072】
第1実施形態と同様に、第2部材3が移動すると、ワークWは、孔41の内部で姿勢変化する。ワークWが起立姿勢に近付くと、第2ピン部材35の先端は、傾斜案内部32から突出し、第1ピン部材66は第2部材3に向かって移動する。これにより、第2ピン部材35および第1ピン部材66は、ワークWの側面を押動または支持する。ワークWは、その下部の側面が第1支持部63および第2ピン部材35に挟まれて保持され、その上部の側面が第2支持部33および第1ピン部材66に挟まれて保持される。この後、第1部材6が戻り始め、ワークWは、その側面が第2部材3および第2ピン部材35によって押動され、孔41から押し出される。
【0073】
第2実施形態のワーク姿勢変更装置1Aにおいて、第1部材6は、第1対向面62の中間高さに配置された押動部64と、第1対向面62の押動部64よりも下側に配置された第1支持部63と、第1対向面62の押動部64よりも上側に傾斜配置され、ワークWが傾斜するにつれてその後端を徐々に上方に案内する傾斜案内補助部65と、を有し、第1部材6は、移動方向に移動してワークWの側面を押動または支持する第1ピン部材66を有し、第2部材3は、移動方向に移動してワークWの側面を押動または支持する第2ピン部材35を有する。これによれば、第1ピン部材66および第2ピン部材35を併用することにより、ワークWを起立姿勢に変更して保持できる。
【0074】
なお、第1および第2実施形態のワーク姿勢変更装置1、1Aにおいて、平行姿勢のワークWの先端を下降させて起立姿勢に変化させるが、これに限定されない。例えば、第2部材3の上下を逆にして、ワークWの先端を上昇させ、後端を下降させて起立姿勢に変化させることができる。また例えば、ワークWの先端を右方に案内し、後端を左方に案内して、水平面内で姿勢変化させることもできる。また、実施形態の多工程圧造機9とは逆に、パンチ96に代えて第2部材3およびケース4が装備され、ダイス93に代えて第1部材2が装備されても、相対移動の関係が満足されるので、ワークの姿勢変更機能が実現される。
【0075】
また、傾斜案内部32および傾斜案内補助部65の実際の形状、すなわち具体的な傾斜角度や傾斜角度を徐変させる曲面部の有無などは、ワークWの寸法諸元や第1部材2および第2部材3の移動速度などを考慮して適宜変更できる。また、第2実施形態において、第1ピン部材66および第2ピン部材35の一方を省略することも可能である。本発明は、実施形態の構成に限定されるものではなく、上述した以外にも様々な応用や変形が可能である。
【解決手段】相互に向かい合って配置されるとともに少なくとも一方が所定の移動方向に移動する第1部材2および第2部材3を備えて、ワークWの移動方向に平行する平行姿勢を直交姿勢に変更するワーク姿勢変更装置1であって、第1部材2は、平行姿勢のワークWの後端を押動する押動部24、および、直交姿勢のワークWの側面を支持する第1支持部23を有し、第2部材3は、押動されるワークWの先端を案内して、ワークWを平行姿勢から傾斜姿勢を経て直交姿勢まで変更する傾斜案内部32、および、直交姿勢のワークWの側面を支持する第2支持部33を有し、傾斜案内部32を挟んで平行配置されワークWを姿勢変更可能に両側から挟む2つの側壁部42をさらに備えた。