特許第6096416号(P6096416)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6096416
(24)【登録日】2017年2月24日
(45)【発行日】2017年3月15日
(54)【発明の名称】包装袋の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B31B 70/20 20170101AFI20170306BHJP
   B31B 70/64 20170101ALI20170306BHJP
   B65D 33/00 20060101ALI20170306BHJP
【FI】
   B31B1/22 321
   B31B1/64 321
   B65D33/00 C
【請求項の数】2
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-53301(P2012-53301)
(22)【出願日】2012年3月9日
(65)【公開番号】特開2013-184450(P2013-184450A)
(43)【公開日】2013年9月19日
【審査請求日】2015年1月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】391003794
【氏名又は名称】押尾産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 正昭
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 隆之
【審査官】 西堀 宏之
(56)【参考文献】
【文献】 実開平01−138693(JP,U)
【文献】 特開平06−023873(JP,A)
【文献】 特開2006−044796(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3073049(JP,U)
【文献】 特開昭63−072529(JP,A)
【文献】 特開昭59−015057(JP,A)
【文献】 特開昭62−182067(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B31B 70/00−70/99
B65D 30/00−33/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
重ね合わされた熱可塑性樹脂製の樹脂シートを、互いに接着部で接着することにより袋状に形成する製袋工程と、
前記製袋工程で接着した接着部に、複数の切込みを形成することにより易開封部を形成する易開封部形成工程と、
前記易開封部形成工程で形成した易開封部を加熱する加熱工程と、
前記加熱工程後、前記樹脂シートの下流側に位置する包装袋の接着部と前記樹脂シートの上流側に位置する包装袋の接着部と間の裁断線に沿って裁断するようにして一個単位に切り離す裁断工程とを備え、
前記易開封部形成工程では、前記切込みが包装袋の端縁に対して裁断工程における裁断位置と裁断線とのずれ量を含めて離間するように前記切込みを形成するとともに、前記切込みを包装袋の上下方向に複数列に亘って並設し、上下方向に並設される複数列の切込みのうち第一列における切込みの左端が該第一列の上下方向にそれぞれ隣接する第二列における切込みの右端同士を結ぶ直線上に配置されるように前記切込みを形成するか、又は、前記第一列における切込みの左端が前記直線よりも左側に配置されるとともに前記第一列における切込みの右端が前記直線よりも右側に配置されるように前記切込みを形成することを特徴とする包装袋の製造方法。
【請求項2】
重ね合わされた熱可塑性樹脂製の樹脂シートを、互いに接着部で接着することにより袋状に形成する製袋工程と、
前記製袋工程で接着した接着部に、複数の切込みを形成することにより易開封部を形成する易開封部形成工程と、
前記易開封部形成工程で形成した易開封部を加熱する加熱工程と、
前記加熱工程後、前記樹脂シートの下流側に位置する包装袋の接着部と前記樹脂シートの上流側に位置する包装袋の接着部と間の裁断線に沿って裁断するようにして一個単位に切り離す裁断工程とを備え、
前記易開封部形成工程では、前記切込みが包装袋の端縁に対して裁断工程における裁断位置と裁断線とのずれ量を含めて離間するように前記切込みを形成するとともに、前記切込みを包装袋の上下方向に複数列に亘って並設し、上下方向に並設される複数列の切込みのうち第一列における切込みの右端が該第一列の上下方向にそれぞれ隣接する第二列における切込みの左端同士を結ぶ直線上に配置されるように前記切込みを形成するか、又は、前記第一列における切込みの右端が前記直線よりも右側に配置されるとともに前記第一列における切込みの左端が前記直線よりも左側に配置されるように前記切込みを形成することを特徴とする包装袋の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包装袋の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、袋状に形成された包装袋において、樹脂シートの接着部に複数の切込みを形成することによって開封性を向上させる技術が知られている。例えば、特許文献1の包装袋は、四角形状の2枚の樹脂シートが重ね合わされており、その四辺の接着部が互いに接着されて袋状に形成されている。そして、包装袋の接着部の一部の領域に樹脂シートを貫通する複数の切込みが形成されることにより、包装袋に易開封部が設けられている。
【0003】
特許文献1の包装袋において、易開封部の切込みは、樹脂シートの面方向に直線的に形成されており、樹脂シートの切除を伴う孔形状ではない。また、易開封部の切込みは、その長さが数mm以下で微細である。したがって、特許文献1の包装袋は、易開封部が目視しにくく目立たないため、例えば、包装袋の端縁の一部を切除して開封用のノッチを形成する場合に比較して、包装袋の外観を損ねにくいという点で好適である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平01−124559号公報。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1の包装袋においては、易開封部において樹脂シートが引き裂かれやすくなっているため、意図せず包装袋が開封されてしまうおそれがある。例えば、内容量が数百mlを超えるような重量のある包装袋に易開封部を設けた場合、包装袋を誤って落下させた際の衝撃は相当なものとなる。すると、その衝撃によって包装袋の樹脂シートが引き裂かれて易開封部の切込みが伸展し、包装袋が開封されてしまうことがある。このような問題点は、上述した例に限らず、易開封部が設けられた包装袋において衝撃が加われば、包装袋の大小や内容物の種類にかかわらず同様に発生し得る。
【0006】
本発明は、上記従来技術の問題点を鑑みてなされたものであり、その目的は、衝撃が加わった際に意図せずに開封されることが抑制された包装袋を製造することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するため、請求項1、2に記載の発明は、重ね合わされた熱可塑性樹脂製の樹脂シートを、互いに接着部で接着することにより袋状に形成する製袋工程と、前記製袋工程で接着した接着部に、複数の切込みを形成することにより易開封部を形成する易開封部形成工程と、前記易開封部形成工程で形成した易開封部を加熱する加熱工程と、前記加熱工程後、前記樹脂シートの下流側に位置する包装袋の接着部と前記樹脂シートの上流側に位置する包装袋の接着部と間の裁断線に沿って裁断するようにして一個単位に切り離す裁断工程とを備えたことを特徴とする包装袋の製造方法である。
【0008】
この構成によれば、加熱工程において易開封部が加熱されることから、易開封部の切込みの切断面同士が緩やかに熱溶着される。したがって、この製造方法で製造された包装袋は、包装袋の開封性が適度に調整されており、包装袋が過度に開封されやすいといったことがない。その結果、包装袋に衝撃が加わった際に意図せずに開封されることが抑制される。なお、切込みの切断面同士が熱溶着されているといえども、易開封部には切込み痕が残されている。そのため、上記製造方法で製造された包装袋は、易開封部を形成しない包装袋に比べれば開封性が向上している。
【0009】
また、請求項1、2に記載の発明は、前記易開封部形成工程では、前記切込みが包装袋の端縁に対して裁断工程における裁断位置と裁断線とのずれ量を含めて離間するように前記切込みを形成することを特徴とする。
【0010】
この構成によれば、包装袋の端縁から所定の範囲内は切込みが形成されていないため、包装袋の端縁から切込みまで樹脂シートを引き裂くには相応の力が必要となる。したがって、包装袋に衝撃が加わったとしても、包装袋の端縁を起点として樹脂シートが引き裂かれて包装袋が開封されてしまうことは抑制される。
【0011】
とくに、請求項に記載の発明は、前記切込みを包装袋の上下方向に複数列に亘って並設し、上下方向に並設される複数列の切込みのうち第一列における切込みの左端が該第一列の上下方向にそれぞれ隣接する第二列における切込みの右端同士を結ぶ直線上に配置されるように前記切込みを形成するか、又は、前記第一列における切込みの左端が前記直線よりも左側に配置されるとともに前記第一列における切込みの右端が前記直線よりも右側に配置されるように前記切込みを形成する。
とくに、請求項2に記載の発明は、前記切込みを包装袋の上下方向に複数列に亘って並設し、上下方向に並設される複数列の切込みのうち第一列における切込みの右端が該第一列の上下方向にそれぞれ隣接する第二列における切込みの左端同士を結ぶ直線上に配置されるように前記切込みを形成するか、又は、前記第一列における切込みの右端が前記直線よりも右側に配置されるとともに前記第一列における切込みの左端が前記直線よりも左側に配置されるように前記切込みを形成する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、衝撃が加わった際に意図せずに開封されることが抑制された包装袋を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】包装袋の分解斜視図。
図2】包装袋の正面図。
図3】易開封部の拡大図。
図4】シートの合流態様を示す説明図。
図5】製袋工程及び加熱工程の説明図。
図6】易開封部形成工程後の樹脂シートの拡大図。
図7】変更例における易開封部形成工程後の樹脂シートの拡大図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明を適用した位置実施形態を図1図6にしたがって説明する。
先ず、包装袋10を図1図3にしたがって説明する。
図1に示すように、包装袋10は、折り目が上方(図1において上側)を向くように二つ折りにされた底面シート11と、底面シート11を挟み込むように対向配置された一対の側面シート12とで構成されている。これら底面シート11及び一対の側面シート12は、いずれも一方の面が熱溶着性を有する熱可塑性樹脂により熱溶着層として形成され、他方の面が熱溶着性を有さない材料により非熱溶着層として形成されている。
【0016】
図1に示すように、底面シート11は、全体として四角形状に形成されている。底面シート11の幅方向両側の辺には、各辺に二つずつ半円形状の切欠き11aが形成されている。各辺の切欠き11aは、底面シート11が二つ折りされた状態で互いに重なり合う位置に形成されている。したがって、この切欠き11aが形成された部分では、底面シート11を介することなく一対の側面シート12が対向する。底面シート11は、二つ折りされた状態において、熱溶着層が一対の側面シート12と対向し、非熱溶着層同士が内側で対向するように配置されている。
【0017】
図1に示すように、一対の側面シート12は、それぞれ四角形状に形成されている。一対の側面シート12は、互いの熱溶着層が対向するように配置されている。
図2に示すように、底面シート11と各側面シート12とは、それぞれ底縁接着部21において熱溶着で接着されている。この底縁接着部21では、二つ折りにされた底面シート11及び一対の側面シート12により4枚のシートが重ね合わされた構成となっている。底縁接着部21は、正面視すると底側に向かって円弧状に凹んだ曲線と包装袋10の側縁及び底縁によって囲まれた領域となるように形成されている。なお、上述したとおり、底面シート11の切欠き11aが形成されている部分では底面シート11を介することなく一対の側面シート12が対向配置されている。したがって、この部分では、一対の側面シート12が直接的に接着されている。
【0018】
図2に示すように、一対の側面シート12は、その側縁同士が側縁接着部22において熱溶着で接着されている。側縁接着部22は、その延設方向(図2において上下方向)において同じ幅となるように直線状に形成されている。側縁接着部22は、底面シート11が挟み込まれていない上方では一対の側面シート12によって2枚のシートが重ね合わされた構成を成している。側縁接着部22は、底面シート11が挟み込まれている下方において底縁接着部21と重複しており、この重複部分では各側面シート12と底面シート11とが二度接着されている。また、この重複部分では、一対の側面シート12及び二つ折りされた底面シート11によって4枚のシートが重ね合わされた構成を成している。
【0019】
図2に示すように、一対の側面シート12は、その上縁同士が上縁接着部24において熱溶着で接着されている。上縁接着部24は、その延設方向(図2において左右方向)において同じ幅となるように直線状に形成されている。上縁接着部24は、その両端において側縁接着部22と重複しており、この重複部分では、一対の側面シート12が二度接着されている。
【0020】
図2に示すように、左右両側の側縁接着部22には、包装袋10の開封性を向上させるための易開封部23が設けられている。易開封部23は、上縁接着部24の下縁24aの高さ位置よりも下方となるように、その高さ位置が設定されている。また、易開封部23は、側縁接着部22の内縁22aに至らないように形成されている。なお、図2では、易開封部23を破線で区画して示している。
【0021】
図3に示すように、側縁接着部22の易開封部23には、接着された一対の側面シート12を貫通する複数の切込みを熱融着で接着することにより複数の切込み痕23aが形成されている。各切込み痕23aは、包装袋10の側端縁10aに直交する方向に延びるとともに、その長さL1が所定の長さに設定されている。長さL1としては、例えば0.5〜2mmに設定される。
【0022】
図3に示すように、易開封部23における切込み痕23aは、包装袋10の上下方向に5列に亘って並設配置されている。各列の切込み痕23aの離間長D1(列ピッチ)は、切込み痕23aの長さL1の1/2以上に設定されている。包装袋10の上下方向において最も上側の列を第1列とした場合、第1列、第3列及び第5列においては、同一直線状に二つの切込み痕23aが形成されている。これら二つの切込み痕23aの間隔L2は、切込み痕23aの長さL1と等しく設定されている。二つの切込み痕23aのうち包装袋10の側端縁10a側の切込み痕23aは、包装袋10の側端縁10aと離間するように形成されている。この離間長D2は、0.6mm以上1.2mm以下に設定されている。第2列及び第4列においては、同一直線状に一つの切込み痕23aが形成されている。第2列及び第4列の切込み痕23aの右端と第1列、第3列及び第5列における右側の切込み痕23aの左端とは、切込み痕23aの延設方向に直交する同一直線上に配置されている。また、第2列及び第4列の切込み痕23aの左端と第1列、第3列及び第5列における左側の切込み痕23aの右端とは、切込み痕23aの延設方向に直交する同一直線上に配置されている。したがって、切込み痕23aに直交する同一直線上には、第1列、第3列及び第5列の合計3つの切込み痕23aが存在しているか、第2列及び第4列の合計2つの切込み痕23aが存在しているかのいずれかである。
【0023】
次に、包装袋10の製造方法を図4図6にしたがって説明する。また、合わせて包装袋10の作用について説明する。
先ず、材料となる樹脂シートについて説明する。長尺状の底面用樹脂シート31は、一方の面が熱溶着性を有する熱可塑性樹脂により熱溶着層として形成され、他方の面が熱溶着性を有さない材料により非熱溶着層として形成されている。底面用樹脂シート31には、二つ折りにされていない状態の短手方向に並設された一対の円孔31aが所定間隔で配置されている。図4に示すように、これら一対の円孔31aは、底面用樹脂シート31を短手方向に二つ折りしたときに互いに対向するように配置されている。また、底面用樹脂シート31の一対の円孔31aは、底面用樹脂シート31の長手方向において所定間隔毎に形成されている。底面用樹脂シート31の長手方向に隣り合う円孔31aの中心点間の距離は、製造しようとする包装袋10の左右方向の幅と等しく設定されている。一対の長尺状の側面用樹脂シート32は、それぞれ一方の面が熱溶着性を有する熱可塑性樹脂により熱溶着層として形成され、他方の面が熱溶着性を有さない材料により非熱溶着層として形成されている。
【0024】
包装袋10を製造するにあたっては、先ず、図4に示すように、一対の側面用樹脂シート32を、互いの熱溶着層が対向するように配置する。また、底面用樹脂シート31を外側に熱溶着層が位置するように短手方向に二つ折りにし、折り目が上方を向くように一対の側面用樹脂シート32の間に配置する。そして、これら各シートを重ね合わせて合流させる。このとき、一対の側面用樹脂シート32を、それぞれ上縁同士及び下縁同士が一致するように重ね合わせる。また、各側面用樹脂シート32の下縁と二つ折り状態の底面用樹脂シート31の下縁とが一致するように重ね合わせる。
【0025】
図5に示すように、合流された底面用樹脂シート31及び一対の側面用樹脂シート32は、底縁接着工程において互いに熱溶着されて底縁接着部21が形成される。底縁接着工程では、一対の底縁シール用金型41で、重ね合わされた各シートを上下から挟み込んで底縁接着部21を形成する。このとき、底縁シール用金型41は、各シートにおける熱溶着層(熱可塑性樹脂)のガラス転移点以上の温度に加熱されている。なお、二つ折り状態の底面用樹脂シート31の内側面は非熱溶着層で構成されているため、二つ折り状態の底面用樹脂シート31の内側面が熱溶着されることはない。また、底面用樹脂シート31の円孔31aが形成されている部分においては、この円孔31aを介して一対の側面用樹脂シート32が互いに熱溶着される。
【0026】
次いで、図5に示すように、底面用樹脂シート31及び一対の側面用樹脂シート32は、側縁接着工程において互いに熱溶着されて側縁接着部22が形成される。側縁接着工程では、底縁接着工程と同様に、一対の側縁シール用金型42で重ね合わされた各シートを上下から挟み込んで側縁接着部22を形成する。側縁シール用金型42には、各シートの短手方向に延びる熱溶着凸部42aが各シートの長手方向に並ぶように一対突設されている。したがって、側縁接着工程では、包装袋10の左右両側の側縁接着部22が同時に形成されることになる。
【0027】
図5に示すように、側縁接着工程後の易開封部形成工程において、側面用樹脂シート32の側縁接着部22に易開封部23が形成される。易開封部形成工程では、切込み形成金型に設けられた複数の薄板状の刃部を、側面用樹脂シート32の側縁接着部22に貫通させることによって複数の切込み23bを形成する。切込み形成金型における刃部は、各シートの短手方向に5列に亘って並設配置されている。切込み形成金型は、各シートの短手方向において最も端側の列を第1列とした場合、第1列、第3列及び第5列においては同一直線状に四つの刃部が形成されており、第2列及び第4列においては同一直線状に二つの刃部が形成されている。また、第1列、第3列及び第5列においては、各シートの長手方向一方側から2番目の刃部と3番目の刃部との離間長が、製造しようとする包装袋10における切込み痕23aと包装袋10の側端縁10aとの離間長D2の2倍に設定されている。つまり、切込み形成金型には、易開封部23二箇所分の刃部が設けられている。したがって、図6に示すように、易開封部形成工程では、下流側(図6において左側)の包装袋10Lにおける右側の側縁接着部22の易開封部23(切込み23b)と、上流側(図6において右側)の包装袋10Rにおける左側の側縁接着部22の易開封部23(切込み23b)とが同一の切込み形成金型によって同時に形成される。そして、左側の包装袋10Lの易開封部23における第1列、第3列及び第5列の右側の切込み23bと、右側の包装袋10Rの易開封部23における第1列、第3列及び第5列の左側の切込み23bとが、離間長D2の2倍の離間長D3でもって形成される。
【0028】
図5に示すように、易開封部工程後、側面用樹脂シート32における易開封部23が加熱工程で加熱される。加熱工程では、上述した側縁接着工程における側縁シール用金型42と同一形状の側縁シール用金型42を用いて、側面用樹脂シート32における側縁接着部22を再度熱溶着することで易開封部23を加熱する。このとき、易開封部23が側面用樹脂シート32における熱溶着層のガラス転移点以上の温度に加熱されることから、側面用樹脂シート32における熱溶着層が軟化、溶融する。すると、易開封部23における切込み23bの切断面同士が緩やかに熱溶着されて切込み痕23aが形成される。なお、本実施形態においては、側面用樹脂シート32の一方の面が非熱溶着層であることから、この非熱溶着層は加熱工程において切込み23bの切断面同士が熱溶着されにくい。また、易開封部23における切込み23bの切断面同士を押し付けて熱溶着するわけではないため、側面用樹脂シート32の熱溶着層においても、切込み23bの切断面同士が完全に熱溶着されるわけではない。したがって、加熱工程を経て切込み痕23aが形成された易開封部23においても、易開封部23(切込み23b)を形成しない包装袋に比べれば、開封性の向上は図られている。
【0029】
図5に示すように、加熱工程後、底面用樹脂シート31及び側面用樹脂シート32が裁断工程で裁断されて、包装袋10一個単位ずつに切り離される。図6に示すように、裁断工程では、下流側の包装袋10Lにおける右側の側縁接着部22の易開封部23と、上流側の包装袋10Rにおける左側の側縁接着部22の易開封部23との間において、各シートの短手方向に延びる裁断線Cに沿って各シートを裁断する。このときの裁断線Cは、左側の包装袋10Lの易開封部23と右側の包装袋10Rの易開封部23とを等分し、かつ底面用樹脂シート31に形成された円孔31aのほぼ中心点を通過する位置に設定されている。
【0030】
図5に示すように、裁断工程において裁断された包装袋10は、充填工程において内容物が充填される。次いで、包装袋10は、上縁接着工程において側面用樹脂シート32(側面シート12)が互いに熱溶着されて上縁接着部24が形成される。上縁接着工程では、上述した底縁接着工程と同様に、一対の上縁シール用金型で、包装袋10を上下から挟み込んで上縁接着部24を形成する。なお、本実施形態においては、底縁接着工程、側縁接着工程、裁断工程、及び上縁接着工程が各シートを袋状に形成する製袋工程に相当する。
【0031】
本実施形態の包装袋10及びその製造方法によれば、次のような作用効果を奏することができる。
(1)上記実施形態では、加熱工程において易開封部23が加熱されることから、易開封部形成工程で形成された切込み23bの切断面同士が緩やかに熱溶着されて切込み痕23aが形成される。したがって、包装袋10においては、その開封性が適度に調整されており、包装袋10が過度に開封されやすいといったことがない。その結果、包装袋10に衝撃が加わった際に意図せずに包装袋10が開封されることが抑制される。
【0032】
(2)上記実施形態の包装袋10は、切込み23bの切断面同士が熱溶着されているといえども、易開封部23には切込み痕23aが残されている。そのため、包装袋10は、易開封部23を形成しない包装袋に比べれば開封性が向上している。
【0033】
(3)上記実施形態では、包装袋10の側端縁10aから離間長D2の範囲内には切込み痕23aが形成されていないため、包装袋10の側端縁から切込み痕23aまで側面シート12を引き裂くには相応の力が必要となる。したがって、包装袋10に衝撃が加わったとしても、包装袋10の側端縁10aを起点として側面シート12が引き裂かれて包装袋10が開封されてしまうことは抑制される。
【0034】
(4)上記実施形態の包装袋10においては各列の切込み痕23aが当該切込み痕23aの長さL1の1/2以上の離間長D1で配置されている。すなわち、包装袋10の上下方向において切込み痕23aの密度数が抑えられている。したがって、包装袋10に衝撃が加わった場合には、その衝撃力の大部分が易開封部23における切込み痕23aが形成されていない箇所(側縁接着部22)によって吸収される。そのため、切込み痕23aに過度に衝撃力が集中して作用し、切込み痕23aが伸展してしまうことが抑制される。また、仮に易開封部23の切込み痕23aが多少伸展したとしても、各列の切込み痕23aが相応に離間しており、伸展した切込み痕23aが他列の切込み痕23aに至ってしまうことが抑制できる。そのため、各列の切込み痕23aが順次連続するように側面シート12が引き裂かれて包装袋10が開封されてしまうことを抑制できる。
【0035】
(5)上記実施形態では、製袋工程において熱溶着で包装袋10に各接着部を形成しつつ、加熱工程においても熱溶着で包装袋10の易開封部23を加熱している。そのため、製袋工程における各接着工程を実行する装置構成と加熱工程を実行する装置構成との一部を共通化させることができる。このように装置構成の一部を共通化することは、包装袋10を製造する製造装置の設置コストの増加抑制や、製造装置の制御の簡便化につながり得る。
【0036】
(6)上記実施形態では、側縁接着工程と加熱工程とで同一形状の側縁シール用金型42を使用している。したがって、加熱工程を実行するために新たに金型を再設計する必要がない。また、例えば、側縁接着工程と加熱工程とで同一の側縁シール用金型42を使用するようにすれば、加熱工程を実行するにあたって金型を追加する必要もない。
【0037】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよく、また、以下の変更例を組み合わせて適用してもよい。
・ 包装袋10におけるシート構成は適宜変更できる。例えば、底面シート11を省略して平板状の包装袋としてもよいし、底面シート11に加えて、一対の側面シート12の間に二つ折り状態の上面シートを介在させて筒状の包装袋としてもよい。さらに、各シートの形状も適宜変更できる。例えば、上下方向において側面シート12の幅に変化を持たせてもよい。このように、包装袋10としては、樹脂シートが接着部で接着されて袋状を成すものであればどのような態様ものであっても構わない。
【0038】
・ 上記実施形態における底面シート11及び側面シート12の層構造を変更してもよい。例えば、非熱溶着層を省略して熱溶着層のみで各シートを構成してもよい。また、底面シート11及び側面シート12として3層以上の積層構造をなすシートを採用してもよい。なお、底面シート11及び側面シート12が少なくとも熱溶着層を有していれば、そのシートは熱可塑性樹脂製であるといえる。
【0039】
・ 易開封部23の形成位置は、上記実施形態のものに限らない。例えば、側縁接着部22の延設方向全体に易開封部23を形成してもよいし、上縁接着部24に易開封部23を形成してもよい。また、易開封部23における切込み痕23aの延設方向は、包装袋10の形状や易開封部23の形成位置に合わせて適宜変更できる。
【0040】
・ 易開封部23における切込み痕23aが包装袋10の側端縁10aと離間していなくともよい。例えば、側面シート12の厚みが相応に厚く、側面シート12が引き裂きにくいのであれば、切込み痕23aが包装袋10の側端縁10aと離間していなくとも、包装袋10が意図せず開封されるおそれは少ない。
【0041】
・ 上記実施形態では、切込み痕23aを5列に亘って形成したが、包装袋10の形状や易開封部23の大きさに応じて4列以下又は6列以上に変更してもよい。また、同様に、各列の切込み痕23aの離間長D1も、包装袋10の形状や易開封部23の大きさを考慮して切込み痕23aの長さL1の1/2未満に設定してもよい。
【0042】
・ 上記実施形態では、第2列及び第4列の切込み痕23aの右端と第1列、第3列及び第5列における右側の切込み痕23aの左端とを同一直線上に配置するようにしたが、これを変更してもよい。例えば、図3において、第2列及び第4列の切込み痕23aの右端が、第1列、第3列及び第5列における右側の切込み痕23aの左端を結ぶ直線よりも、右側に配置されていてもよい。この場合、切込み痕23aの延設方向に直交する直線上に第1列〜第5列の合計5つの切込み痕23aが存在する箇所が生じることになる。また、図3において、第2列及び第4列の切込み痕23aの右端が、第1列、第3列及び第5列における右側の切込み痕23aの左端を結ぶ直線よりも、左側に配置されていてもよい。この場合、切込み痕23aの延設方向に直交する直線上に切込み痕23aが存在しない箇所が生じることになる。
【0043】
・ 各列における切込み痕23aの数は、上記実施形態のものに限らない。例えば、第1列、第3列及び第5列における切込み痕23aの数は、1つでもよいし3つ以上でもよい。また、第1列、第3列及び第5列それぞれの切込み痕23aの数は、一致していなくともよい。同様に、第2列及び第4列における切込み痕23aの数は、2つ以上でもよいし、第2列及び第4列において一致していなくてもよい。
【0044】
・ 上記実施形態において、底縁接着工程、側縁接着工程及び上縁接着工程では、熱溶着で各シートを接着したが、接着剤で各シートを接着するようにしてもよい。なお、接着剤で各シートを接着する場合、加熱工程の加熱温度で変性しない材料を接着剤として使用することになる。
【0045】
・ 上記実施形態では、易開封部形成工程において、下流側の包装袋10Lにおける右側の側縁接着部22の易開封部23と、上流側の包装袋10Rにおける左側の側縁接着部22の易開封部23とを同時に形成したが、これを変更することもできる。例えば、包装袋10の左右両側の側縁接着部22の易開封部23を同時に形成してもよいし、易開封部23を一箇所ずつ形成するようにしてもよい。
【0046】
・ 上記実施形態の易開封部形成工程において、裁断工程における裁断位置のずれを考慮して離間長D3を設定することができる。具体的には、図7に示す変更例では、左側の包装袋10Lの易開封部23における第1列、第3列及び第5列の右側の切込み23bと、右側の包装袋10Rの易開封部23における第1列、第3列及び第5列の左側の切込み23bとの離間長が離間長D3に設定されている。この離間長D3は、包装袋10が製造された場合に、切込み痕23aと包装袋10の側端縁10aとが最小限確保すべき離間長Xの2倍と、裁断工程における裁断位置と裁断線Cとのずれ量Yとを加算した長さに設定されている。この変更例の場合、裁断工程において、裁断線Cに対する裁断位置のずれ量がずれ量Y以下であれば、そのずれを吸収することができる。そのため、製造された包装袋10においては、裁断線Cに対する裁断位置のずれ量がずれ量Y以下であれば、切込み痕23aと包装袋10の側端縁10aとは離間長X以上でもって離間する。特に、裁断位置が裁断線Cに対して最大でどの程度ずれるのかは、試験的、経験的に特定することができる。ずれ量Yを、この最大のずれ量以上の値に設定しておけば、切込み痕23aと包装袋10の側端縁10aとの離間長として、常に離間長X以上を確保することができる。したがって、この変更例によれば、仮に、裁断工程における裁断位置が裁断線Cに対してずれたとしても、包装袋10の易開封部23において切込み痕23aと包装袋10の側端縁10aとの離間長D2が過度に小さくなることはない。
【0047】
・ 易開封部形成工程の順序は、上記実施形態のものに限らない。易開封部23を側縁接着部22に形成する場合、易開封部形成工程を、側縁接着工程の後であれば、裁断工程の後や上縁接着工程の後に行ってもよい。また、加熱工程も、易開封部形成工程の直後に限らない。易開封部形成工程よりも後であればどのタイミングで加熱工程を行なってもよい。
【0048】
・ 加熱工程におけるシール用金型は、側縁接着工程における側縁シール用金型42と同一形状のものに限らず、易開封部23を挟み込んで加熱することができる形状であれば、その形状は問わない。例えば、側縁接着部22全体を挟み込むのではなく、易開封部23のみを挟み込むような形状のシール用金型を採用してもよい。また、上縁接着工程における上縁シール用金型の形状を、上縁接着部24だけでなく易開封部23も挟み込むような形状に変更し、上縁接着工程と加熱工程とが同時に行われるようにしてもよい。
【0049】
・ 加熱工程は、上記実施形態のものに限らず、易開封部23を側面用樹脂シート32における熱溶着層のガラス転移点以上の温度に加熱できるのであればどのような態様であっても構わない。例えば、電熱ヒータで易開封部23を加熱してもよいし、超音波を易開封部23に当て、その超音波による側面用樹脂シート32の内部摩擦によって易開封部23を加熱するようにしてもよい。
【0050】
上記実施形態及び変更例から把握できる技術的思想について記載する。
・ 製袋工程では、加熱された一対の金型で樹脂シートを挟み込むことにより樹脂シートの接着部を熱溶着で接着し、加熱工程では、加熱された一対の金型で樹脂シートを挟み込むことにより易開封部を加熱する。
【0051】
・ 前記易開封部形成工程では、最も包装袋の端縁側に位置する切込みと包装袋の端縁との離間長が0.6mm以上1.2mm以下となるように切込みを形成する。
【符号の説明】
【0052】
10…包装袋、10a…包装袋の側端縁、21…底縁接着部、22…側縁接着部、23…易開封部、23a…切込み痕、23b…切込み、24…上縁接着部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7