特許第6096417号(P6096417)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6096417
(24)【登録日】2017年2月24日
(45)【発行日】2017年3月15日
(54)【発明の名称】電動モータ
(51)【国際特許分類】
   H02K 13/00 20060101AFI20170306BHJP
   H02K 23/04 20060101ALI20170306BHJP
【FI】
   H02K13/00 P
   H02K23/04
   H02K13/00 T
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-76932(P2012-76932)
(22)【出願日】2012年3月29日
(65)【公開番号】特開2013-207994(P2013-207994A)
(43)【公開日】2013年10月7日
【審査請求日】2014年12月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000144027
【氏名又は名称】株式会社ミツバ
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100094400
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 三義
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(72)【発明者】
【氏名】時崎 哲平
(72)【発明者】
【氏名】川島 義親
【審査官】 服部 俊樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭59−216438(JP,A)
【文献】 実開平04−043376(JP,U)
【文献】 実開昭58−159882(JP,U)
【文献】 実公昭44−016091(JP,Y1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 13/00
H02K 23/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内周にマグネットが設けられたモータヨークと、前記モータヨークの内側に回転自在に配置され、コイルが接続されたコンミテータを有するアーマチュアと、前記アーマチュアのコンミテータに摺接するブラシを有するブラシ装置と、を備える電動モータであって、前記電動モータの前記ブラシ装置は、断面略コの字形状に形成され、前記ブラシを前記コンミテータに向けて直動自在に保持するブラシホルダと、前記ブラシを前記コンミテータに向けて付勢するバネと、前記ブラシホルダが取り付けられ、前記ブラシホルダとともに前記ブラシを前記コンミテータに向けて案内する樹脂より形成されたブラシホルダステーと、を有する電動モータにおいて、
前記ブラシは、ピグテールが配置固定される固定部と、前記固定部よりも前記コンミテータに近接する位置に配置され、前記固定部よりも前記コンミテータに対向する対向面の断面積が小さく設定された摺接部と、を備え、前記固定部は前記ブラシホルダにより前記コンミテータに向けて案内されるとともに、前記摺接部は前記ブラシホルダステーに一体形成された摺接部案内手段により案内され、
前記摺接部案内手段は、前記ブラシホルダステーにおいて軸方向に立設形成されるとともに前記ブラシホルダ内にて周方向に対向して配置された一対の突出部からなり、前記一対の突出部の双方の外壁は前記ブラシホルダに当接するとともに、双方の内壁は前記摺接部を案内し、
前記ブラシの前記固定部の周方向長さは、前記一対の突出部の双方の内壁の間隔よりも大きく形成されていることを特徴とする電動モータ。
【請求項2】
請求項1に記載された電動モータにおいて、
前記コンミテータはシリンダ形状に形成され、前記ブラシは前記コンミテータに対し径方向に直動自在に配置されていることを特徴とする電動モータ。
【請求項3】
請求項1に記載された電動モータにおいて、
前記コンミテータはディスク形状に形成され、前記ブラシは前記コンミテータに対し軸方向に直動自在に配置されることを特徴とする電動モータ。
【請求項4】
請求項3に記載された電動モータにおいて、
前記摺接部案内手段は、前記ブラシの摺接部の対向面の形状と略同形状にて前記ブラシホルダステーに形成された挿通孔より形成され、当該挿通孔により前記摺接部が案内されることを特徴とする電動モータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ブラシ装置を備える電動モータに関し、ブラシ装置に特徴を有する電動モータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、ブラシ装置を備える電動モータは、内周にマグネットが設けられたモータヨークと、モータヨークの内側に回転自在に配置されたアーマチュアと、アーマチュアに電流を供給するブラシ装置と、を備える。アーマチュアは、コイルが接続される複数のコンミテータ片を有するコンミテータを備え、ブラシ装置は、このコンミテータ片に摺接する少なくとも2以上のブラシを備える。
【0003】
上記のような電動モータにおけるコンミテータとブラシ装置の従来例を図12に示す。図12はマーマチュア軸の軸方向から見たコンミテータとブラシ装置の一部断面図であり、アーマチュアのアーマチュア軸311にコンミテータ313が外嵌され、このコンミテータ313を囲むようにブラシ装置320が配置されている。
【0004】
コンミテータ313は、アーマチュア軸311が挿入される円柱形状のコンミテータ本体313aと、コンミテータ本体313aの外壁に円周方向等ピッチに設けられた複数のコンミテータ片313bと、を備えている。また、ブラシ装置321は、略円盤形状のブラシホルダステー321と、ブラシホルダステー321に取り付けられているブラシホルダ324と、ブラシホルダ324内に配置されたブラシ322と、バネ325と、を備えている。
【0005】
ブラシ322は、ブラシホルダ324内にてコンミテータ313に向けて直動自在に保持されるとともに、バネ325によりコンミテータ313のコンミテータ片313bに向けて付勢され、付勢された状態にてコンミテータ片313bに摺接する。ここで、ブラシ322は、ピグテール323が配置固定される固定部340と、この固定部340よりもコンミテータ313に近接する位置に配置され、コンミテータ片313に摺接する摺接部341とから構成される。そして、ピグテール323によりブラシ322に電流の供給がなされる。
【0006】
ここで、電動モータの性能向上のため、コンミテータ312とブラシ322間の整流性を向上させることが一般に求められている。そして、整流性を向上させる手法として、コンミテータ313のセグメント数、すなわちコンミテータ片313bの数を多くすることにより、隣接するコンミテータ片(313b,313b)間のセグメント間電圧を下げる手法がある。図12は、セグメント間電圧を下げるためにコンミテータ片313bの数を「18」に設定したコンミテータ313が示されている。ここで、このようにコンミテータ片313bの数を多くした電動モータにおいても、モータ体格の小型化の要求があり、この小型化の要求のためコンミテータ313の外径も小さくする必要がある。そして、このように、コンミテータ313の外径を小さくした場合、各コンミテータ片313bの円弧長さ(a)は短く設定される。
【0007】
このように、コンミテータ片313bの円弧長さ(a)が短く設定されたときに、ブラシ322の摺接部341の円周方向長さ(b)がある程度の長さ(例えば、この円弧長さ(a)と同程度の長さ)に設定された場合、隣接するコンミテータ片(313b,313b)間をブラシ322が「短絡させてしまう時間」が「短絡させない時間」に近くなり、「短絡させてしまう時間」が相対的に長くなってしまうという問題がある。
【0008】
この問題を解決するために、例えば、特許文献1に示される電動モータは、ブラシにおいてピグテールが配置固定される固定部の形状に対し、コンミテータに摺接する摺接部の形状を異なる形に設定している。より具体的には、ブラシにおいて摺接部におけるコンミテータに対向する対向面の面積を固定部の対向面の面積よりも小さくなるように設定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2001−112218号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上記のようにブラシにおいて固定部と摺接部の対向面の形状を異なる形にした場合、ブラシをコンミテータに向けて安定して確実に案内することが困難となる。
【0011】
そこで、この発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、ブラシにおいてピグテールの固定部の対向面と摺接部の対向面の形状を異なる形にした電動モータにおいて、ブラシをコンミテータに向けて安定して確実に案内することを可能とする電動モータを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題を解決するために、請求項1に記載された電動モータは、内周にマグネットが設けられたモータヨークと、モータヨークの内側に回転自在に配置され、コイルが接続されたコンミテータを有するアーマチュアと、アーマチュアのコンミテータに摺接するブラシを有するブラシ装置と、を備える。そして、この電動モータのブラシ装置は、断面略コの字形状に形成され、ブラシをコンミテータに向けて直動自在に保持するブラシホルダと、ブラシをコンミテータに向けて付勢するバネと、ブラシホルダが取り付けられ、ブラシホルダとともにブラシをコンミテータに向けて案内する樹脂より形成されたブラシホルダステーと、を有する。そして、このような電動モータにおいて、ブラシは、ピグテールが配置固定される固定部と、固定部よりもコンミテータに近接する位置に配置され、固定部よりもコンミテータに対向する対向面の断面積が小さく設定された摺接部と、を備え、固定部はブラシホルダによりコンミテータに向けて案内されるとともに、摺接部はブラシホルダステーに一体形成された摺接部案内手段により案内される。摺接部案内手段は、ブラシホルダステーにおいて軸方向に立設形成されるとともにブラシホルダ内にて周方向に対向して配置された一対の突出部からなり、一対の突出部の双方の外壁は前記ブラシホルダに当接するとともに、双方の内壁は摺接部を案内する。ブラシの固定部の周方向長さは、一対の突出部の双方の内壁の間隔よりも大きく形成されている。
【0013】
また、請求項2に記載された電動モータは、請求項1に記載された電動モータにおいて、コンミテータはシリンダ形状に形成され、ブラシはコンミテータに対し径方向に直動自在に配置されていることを特徴とする。
また、請求項3に記載された電動モータは、請求項1に記載された電動モータにおいて、コンミテータはディスク形状に形成され、ブラシはコンミテータに対し軸方向に直動自在に配置されることを特徴とする。
【0014】
また、請求項に記載された電動モータは、請求項に記載された電動モータにおいて、接部案内手段は、ブラシの摺接部の対向面の形状と略同形状にてブラシホルダステーに形成された挿通孔より形成され、挿通孔により摺接部が案内されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明に電動モータよれば、ブラシにおいてピグテールの固定部の対向面と摺接部の対向
面の形状を異なる形にした電動モータにおいて、ブラシをコンミテータに向けて安定して確実に案内することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の第1の実施形態における減速機付電動モータの正面図である。
図2】本発明の第1の実施形態における電動モータに備わるアーマチュアおよびブラシ装置の斜視図である。
図3】本発明の第1の実施形態におけるブラシ装置の斜視図である。
図4】本発明の第1の実施形態におけるブラシの斜視図である。
図5図3において範囲Aにて囲まれた部分の展開斜視図である。
図6】本発明の第1の実施形態におけるブラシ装置の正面図である。
図7】本発明の第2の実施形態におけるブラシ装置の正面図である。
図8】本発明の第3の実施形態におけるブラシ装置の斜視図である。
図9図8において視点Fから見たブラシ装置の斜視図である。
図10】本発明の第3の実施形態におけるブラシの斜視図である。
図11図8において範囲Gにて囲まれた部分の展開斜視図である。
図12】従来例におけるコンミテータとブラシ装置の一部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(第1の実施形態)次に、この発明の第1の実施形態における減速機付電動モータについて図1および図2に基づき説明する。ここで、図1は本発明の第1の実施形態における減速機付電動モータの正面図であり、図2は本発明の第1の実施形態における電動モータに備わるアーマチュアおよびブラシ装置の斜視図である。
【0018】
図1に示すように減速機付電動モータ1は、電動モータ2と、電動モータ2が取り付けられ電動モータ2の回転出力を減速する減速機3と、を備える。ここで、減速機3は電動モータ2の回転を減速して減速された回転を出力する出力軸3aと、電動モータ4に電流を供給する電源カプラ(図示せず)が接続されるコネクタ4と、を備える。
【0019】
図1および図2に示すように、電動モータ2は、4つの磁極を形成する4つのマグネット6が内周面に設けられたモータヨーク5と、モータヨークの内側に回転自在に配置されたアーマチュア10と、アーマチュア10にコネクタ4からの電流を供給するブラシ装置20と、を備える。
【0020】
図2に示すように、アーマチュア10は、ウォーム(11a,11b)が形成されたアーマチュア軸11と、アーマチュア軸11に外嵌固定されたアーマチュアコア12と、アーマチュアコア12に巻装されたコイル14と、アーマチュアコア12に近接した位置にてアーマチュア軸11に外嵌固定されたコンミテータ13と、を備える。ここで、コンミテータ13は、アーマチュア軸11に挿入固定される円柱形状のコンミテータ本体13aと、コンミテータ本体13aの外壁に円周方向等ピッチに配置された複数のコンミテータ片13bと、を備え、コンミテータ片13bにコイル14が電気的に接続されている。なお、上記のようにコンミテータ13はシリンダ形状に形成され、本実施の形態ではコンミテータ片13bの数は「18」に設定されている。
【0021】
次に、本実施の形態のブラシ装置20について、図2から図6に基づき説明する。ここで、図3は本発明の第1の実施形態におけるブラシ装置の斜視図であり、図4は本発明の第1の実施形態におけるブラシの斜視図である。また、図5図3において範囲Aにて囲まれた部分の展開斜視図であり、図6は本発明の第1の実施形態におけるブラシ装置の正面図である。
【0022】
図2に示すように、ブラシ装置20はアーマチュア10のコンミテータ13を囲むように配置されている。図3に示すようにブラシ装置20は、樹脂より形成された略円盤形状のブラシホルダステー21と、ブラシホルダステー21に取り付けられたブラシホルダ(24a,24b,24c)と、ブラシホルダ(24a,24b,24c)内にてコンミテータ13に向けて直動自在に保持される3つのブラシ(22a,22b,22c)と、ブラシ(22a,22b,22c)をコンミテータ13に向けて付勢するバネ(25a,25b,25c)と、を主に備える。また、ブラシ装置20には、ノイズ対策用にチョークコイル(28,29)が設けられるとともに、熱によるフェールセーフ対策用にサーキットブレーカ(C/B)30が設けられている。
【0023】
ここで、ブラシ22は、正ブラシ22aと、負ブラシ22bと、高速ブラシ22cとから構成され、これらのブラシ(22a,22b,22c)がコンミテータ13のコンミテータ片13bに摺接するように配置されている。また、バネ(25a,25b,25c)はブラシホルダステー21に一体形成された支柱(26a,26b,26c)に取り付けられ、一端が押え部(27a,27b,27c)により保持されるとともに、他端がブラシ(22a,22b,22c)の後端部を押すように設定されている。
【0024】
次に、ブラシ22の形状について図4に基づき詳細に説明する。なお、3つのブラシ(22a,22b,22c)の形状はともにブラシ22と略同一の形状に設定されている。
【0025】
図4に示すように、ブラシ22は、ピグテール23が配置固定される固定部40と、固定部40と一体形成され固定部40よりもコンミテータ13に近接する位置に配置される摺接部41と、を備える。ここで、摺接部41および固定部40の形状は、コンミテータ13に対向する摺接部41および固定部40の対向面(M1,M2)の断面積(A1,A2)において、摺接部41の断面積A1が固定部40の断面積A2よりも小さい形状となっている。具体的には、摺接部41の対向面M1の周方向長さ(b1)は固定部40の対向面M2の周方向長さ(b2)よりも小さい値に設定されている。上記のように摺接部41および固定部40の形状が形成されることにより、ブラシ22はアーマチュア軸11の軸方向から見て略T字形状に構成されている。
【0026】
このように、ブラシ22において固定部40の周方向長さ(b2)をある程度以上の長さに設定することによりピグテール23を十分に固定保持することができる。そして、ブラシ22において摺接部41の周方向長さ(b1)を短く設定することにより、ブラシ22が隣接するコンミテータ片(13b,13b)間を「短絡させてしまう時間」を短くすることができ電動モータ2の性能を向上させることができる。
【0027】
次に、ブラシ(22a,22b,22c)をコンミテータ13に向けて案内する構造について、図5および図6に基づいて説明する。ブラシ(22a,22b,22c)は、断面略コの字形状のブラシホルダ(24a,24b,24c)とブラシホルダステー21により囲まれ、基本的にブラシ(22a,22b,22c)はブラシホルダ(24a,24b,24c)とブラシホルダステー21によりコンミテータ13に向けて案内される。そして、詳細には以下に説明する構造によりコンミテータ13に向けて案内される。
【0028】
図5および図6に示すように、ブラシホルダステー21には内周縁に3組の一対の突出部(摺接部案内手段)(31,32)(33,34)(35,36)が一体形成されている。一対の突出部(31,32)(33,34)(35,36)は、それぞれブラシホルダステー21から軸方向に立設形成されるともにブラシホルダ(24a,24b,24c)内にて周方向に対向して配置されている。
【0029】
そして、一対の突出部(31,32)(33,34)(35,36)の双方の外壁(31
a,32a)(33a,34a)(35a,36a)はブラシホルダ(24a,24b,24c)の内壁に当接して支持される。一方、一対の突出部(31,32)(33,34)(35,36)の双方の内壁(31b,32b)(33b,34b)(35b,36b)は、ブラシ(22a,22b,22c)の摺接部(41,41,41)を案内する。また、ブラシ(22a,22b,22c)の固定部(40,40,40)はブラシホルダ(24a,24b,24c)によりコンミテータ13に向けて案内される。
【0030】
このように、固定部40はブラシホルダ(24a,24b,24c)により案内されるとともに、固定部40よりも周方向長さが小さく設定されている摺接部41がブラシホルダステー21に設けられた一対の突出部(31,32)(33,34)(35,36)のより別個独立に案内されることで、ブラシ(22a,22b,22c)をコンミテータ13に向けて安定して確実に案内することが可能となる。
【0031】
また、摺接部案内手段をブラシホルダ(24a,24b,24c)ではなくブラシホルダステー21に設けていることにより、電動モータで一般的に使用されているブラシホルダを流用して使用することが可能である。
【0032】
さらに、ブラシ(22a,22b,22c)の摺接部(41,41,41)を一対の突出部(31,32)(33,34)(35,36)により周方向両側から保持案内することにより、アーマチュア10が正回転および逆回転したときのいずれの回転においても、確実にブラシ(22a,22b,22c)を案内することができる。
【0033】
(第2の実施形態)次に、本発明の第2の実施形態におけるブラシ装置120について図7に基づき説明する。図7は本発明の第2の実施形態におけるブラシ装置の正面図である。第2の実施形態のブラシ装置120は、第1の実施形態のブラシ装置20と異なり高速ブラシ122cのみ摺接部141cの周方向長さが短く設定され、高速ブラシ122cの案内においてのみ摺接部案内手段(135,136)が用いられている。以下、ブラシ装置120の構造を図7に基づき説明する。
【0034】
ブラシ装置120は、樹脂より形成された略円盤形状のブラシホルダステー121と、ブラシホルダステー121に取り付けられたブラシホルダ(124a,124b,124c)と、ブラシホルダ(124a,124b,124c)内にコンミテータ13に向けて直動自在に保持される3つのブラシ(122a,122b,122c)と、ブラシ(122a,122b,122c)をコンミテータ13に向けて付勢するバネ(125a,125b,125c)と、を主に備える。
【0035】
ここで、ブラシ122は、正ブラシ122aと、負ブラシ122bと、高速ブラシ122cとから構成され、これらのブラシ(122a,122b,122c)がコンミテータ13のコンミテータ片13bに摺接するように配置されている。また、バネ(125a,125b,125c)はブラシホルダステー121に一体形成された支柱(126a,126b,126c)に取り付けられ、一端が押え部(127a,127b,127c)により保持されるとともに、他端がブラシ(122a,122b,122c)の後端部を押すように設定されている。
【0036】
ブラシ122cは、ピグテール123が配置固定される固定部140cと、固定部141cと一体形成され、固定部141cよりもコンミテータ13に近接する位置に配置される摺接部141cと、を備える。ここで、摺接部141cおよび固定部140cの形状は、コンミテータ13に対向する摺接部141cおよび固定部140cの対向面の断面積において、摺接部141cの断面積が固定部140cの断面積よりも小さい形状となっている。具体的には、摺接部141cの対向面の周方向長さは固定部140cの対向面の周方向
長さよりも小さい値に設定されている。上記のように摺接部141cおよび固定部140cの形状が形成されることにより、ブラシ122cはアーマチュア軸11の軸方向から見て略T字形状に構成されている。ここで、正ブラシ122aおよび負ブラシ122bは、高速ブラシ122cと異なり、固定部と摺接部において対向面の形状を変化させた構造となっておらず、固定部と摺接部とは一連一体的に形成されている。
【0037】
次に、高速ブラシ122cをコンミテータ13に向けて案内する構造について説明する。ブラシ122cは、断面略コの字形状のブラシホルダ124cとブラシホルダステー121により囲まれ、基本的にブラシ122cはブラシホルダ124cとブラシホルダステー121によりコンミテータ13に向けて案内される。そして、詳細には以下に説明する構造によりコンミテータ13に向けて案内される。
【0038】
ブラシホルダステー121には内周縁に一組の一対の突出部(摺接部案内手段)(135,136)が一体形成されている。一対の突出部(135,136)は、それぞれブラシホルダステー121から軸方向に立設形成されるともにブラシホルダ124c内にて周方向に対向して配置されている。
【0039】
そして、一対の突出部(135,136)の双方の外壁(135a,136a)はブラシホルダ124cの内壁に当接して支持される。一方、一対の突出部(135,136)の双方の内壁(135b,136b)は、ブラシ122cの摺接部141cを案内する。また、ブラシ122cの固定部140cはブラシホルダ124cによりコンミテータ13に向けて案内される。ここで、正ブラシ122aおよび負ブラシ122bは、高速ブラシ122cと異なり、ブラシホルダ(124a,124b)とブラシホルダステー121によりコンミテータ13に向けて案内される。
【0040】
上記のように高速ブラシ122cの摺接部141cの周方向長さが短く設定することにより、高速ブラシ122cが互いに隣接するコンミテータ片(13b,13b)間を短絡する時間を短くすることができる。そのため、高速ブラシ122cより隣接するコンミテータ片(13b,13b)間を短絡することにより生じる電磁気的なアンバランスを低減させることができ、モータ作動時に生じる音・振動を低減させることができる。
【0041】
(第3の実施形態)次に、本発明の第3の実施形態におけるブラシ装置220について、図8から図11に基づき説明する。ここで、図8は本発明の第3の実施形態におけるブラシ装置の斜視図であり、図9図8において視点Fからみたブラシ装置の斜視図である。また、図10は本発明の第3の実施形態におけるブラシの斜視図であり、図11図8において範囲Gにて囲まれた部分の展開斜視図である。
【0042】
図8に示すように、第3の実施形態における電動モータに備わるコンミテータ213はディスク状の形成されている。すなわち、コンミテータ213は、円盤状のコンミテータ本体213aと、コンミテータ本体213aの端面に放射状に等ピッチに配置された複数のコンミテータ片213bと、を備える。そして、ブラシ装置220は、コンミテータ213のコンミテータ片213b側からコンミテータ213に当接するとともに、コンミテータ213に電流を供給する。
【0043】
そして、図8および図9に示すように、ブラシ装置220は、略円盤形状のブラシホルダステー221と、ブラシホルダステー221に取り付けられたブラシホルダ(224a,224b,224c)と、ブラシホルダ(224a,224b,224c)内にてコンミテータ213に向けて直動自在に保持される3つのブラシ(222a,222b,222c)と、ブラシ(222a,222b,222c)をコンミテータ213に向けて付勢するバネ(225a,225b,225c)と、を主に備える。また、ブラシ装置220に
は、ノイズ対策用にチョークコイル(228,229)が設けられるとともに、熱によるフェールセーフ対策用にC/B230が設けられている。
【0044】
ここで、ブラシ222は、正ブラシ222aと、負ブラシ222bと、高速ブラシ222cとから構成され、これらのブラシ(222a,222b,222c)がコンミテータ213のコンミテータ片213bに摺接するように配置されている。また、図11に示すように、バネ(225a,25b,25c)は、ブラシホルダ(224a,224b,224c)内に配置され一端がブラシホルダ(224a,224b,224c)により固定支持されるとともに、他端がブラシ(222a,222b,222c)の後端部を押すように設定されている。
【0045】
次に、ブラシ222の形状について図10に基づき詳細に説明する。なお、3つのブラシ(222a,222b,222c)の形状はともにブラシ222と略同一の形状に設定されている。
【0046】
図10に示すように、ブラシ222は、ピグテール223が配置固定される固定部240と、固定部240と一体形成され固定部240よりもコンミテータ213に近接する位置に配置される摺接部241と、を備える。ここで、摺接部241および固定部240の形状は、コンミテータ213に対向する摺接部241および固定部240の対向面(M3,M4)の断面積(A3,A4)において、摺接部241の断面積A3が固定部240の断面積A4よりも小さい形状となっている。具体的には、摺接部241の対向面M3は台形形状に形成され、摺接部241の対向面M3の周方向長さ(b3)は固定部240の対向面M4の周方向長さ(b4)よりも小さい値に設定されている。
【0047】
このように、ブラシ222において固定部240の周方向長さ(b4)をある程度以上の長さに設定することによりピグテール223を十分に固定保持することができる。そして、ブラシ222において摺接部241の周方向長さ(b3)を短く設定することにより、ブラシ222が隣接するコンミテータ片(213b,213b)間を「短絡させてしまう時間」を短くすることができ電動モータ性能を向上させることができる。
【0048】
次に、ブラシ(222a,222b,222c)をコンミテータ213に向けて案内する構造について、図9および図11に基づいて説明する。ブラシ(222a,222b,222c)は、断面略コの字形状のブラシホルダ(224a,224b,224c)に内包され、基本的にブラシ(222a,222b,222c)はブラシホルダ(224a,224b,224c)によりコンミテータ13に向けて案内される。そして、詳細には以下に説明する構造によりコンミテータ213に向けて案内される。
【0049】
図9および図1に示すように、ブラシホルダステー221にはそれぞれのブラシホルダ(224a,224b,224c)に対応する位置に挿通孔(摺接部案内手段)(h1,h2,h3)が形成されている。挿通孔(h1,h2,h3)は、それぞれブラシ(222a,222b,222c)の摺接部(241a,241b,241c)の対向面M3の形状と略同形状に形成されている。そして、この挿通孔(h1,h2,h3)にブラシ(222a,222b,222c)の摺接部(241a,241b,241c)は挿入されるとともに、挿通孔(h1,h2,h3)によりブラシ(222a,222b,222c)の摺接部(241a,241b,241c)は案内される。
【0050】
このように、固定部240はブラシホルダ(224a,224b,224c)により案内されるとともに、固定部240よりも周方向長さが小さく設定されている摺接部241がブラシホルダステー21に設けられた挿通孔(h1,h2,h3)により別個独立に案内されることで、ブラシ(222a,222b,222c)をコンミテータ13に向けて安
定して確実に案内することが可能となる。
【0051】
また、摺接部案内手段をブラシホルダ(224a,224b,224c)ではなくブラシホルダステー221に設けていることにより、電動モータで一般的に使用されているブラシホルダを流用して使用することが可能である。
【0052】
さらに、ブラシ(222a,222b,222c)の摺接部(241a,241b,241c)を略同形状の挿通孔(h1,h2,h3)により周方向両側から保持案内することにより、アーマチュアが正回転および逆回転したときのいずれの回転においても、確実にブラシ(222a,222b,222c)を案内することができる。
【0053】
なお、本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述の実施形態に種々の変更を加えたものを含む。
【符号の説明】
【0054】
1 減速機付電動モータ
2 電動モータ
3 減速機
5 モータヨーク
6 マグネット
10 アーマチュア
11 アーマチュア軸
13,213,313 コンミテータ
13a,213a,313a コンミテータ本体
13b,213b,313b コンミテータ片
14 コイル
20,120,220,320 ブラシ装置
21,121,221,321 ブラシホルダステー
22,122,222,322 ブラシ
22a,122a,222a 正ブラシ
22b,122b,222b 負ブラシ
22c,122c,222c 高速ブラシ
23,223,323,23a,123a,223a,23b,123b,223b,23c,123c,223cピグテール
24,124,324,24a,124a,224a,24b,124b,224b,24b,124b,224b ブラシホルダ
25a,125a,225a,25b,125b,225b,25c,125c,225c,325 バネ
26a,126a,26b,126b,26c,126c 支柱
27a,127a,27b,127b,27c,127c押え部
31,32,33,34,35,36,135,136 突出部(摺接部案内手段)
31a,32a,33a,34a,35a,36a,135a,136a 外壁
31b,32b,33b,34b,35b,36b,135b,136b 内壁
h1,h2,h3 挿通孔(摺接部案内手段)
M1,M2,M3,M4 対向面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12