(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6096420
(24)【登録日】2017年2月24日
(45)【発行日】2017年3月15日
(54)【発明の名称】ロックナット
(51)【国際特許分類】
F16B 41/00 20060101AFI20170306BHJP
F16B 31/02 20060101ALI20170306BHJP
F16B 37/00 20060101ALI20170306BHJP
F16B 39/12 20060101ALI20170306BHJP
【FI】
F16B41/00 P
F16B31/02 N
F16B37/00 Z
F16B39/12 Z
【請求項の数】6
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-100396(P2012-100396)
(22)【出願日】2012年4月9日
(65)【公開番号】特開2013-217486(P2013-217486A)
(43)【公開日】2013年10月24日
【審査請求日】2015年3月12日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】506296673
【氏名又は名称】田中 文吉
(73)【特許権者】
【識別番号】512109312
【氏名又は名称】田中 昌枝
(74)【代理人】
【識別番号】100093816
【弁理士】
【氏名又は名称】中川 邦雄
(72)【発明者】
【氏名】田中 文吉
【審査官】
保田 亨介
(56)【参考文献】
【文献】
特許第4194585(JP,B2)
【文献】
国際公開第2009/104767(WO,A1)
【文献】
特開昭52−003964(JP,A)
【文献】
特開2011−017352(JP,A)
【文献】
実開昭50−073766(JP,U)
【文献】
特公昭62−055007(JP,B2)
【文献】
実公昭48−025954(JP,Y1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B23/00−43/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボルトに螺合するネジ孔が軸方向中央に貫通され、外周に多角形部が形成された第一ナットと、前記ボルトに螺合するとともに前記第一ナットに装着される第二ナットで構成されるロックナットにおいて、
前記第一ナットは、前記ネジ孔外周であって前記多角形部を除く箇所に形成された筒状部と、前記筒状部の先方の外周に突出形成された突状部と、前記筒状部に形成された切込部とを備え、
前記第二ナットは、前記突状部が嵌入されるとともに前記突状部の外径より小さい径の円柱状の開孔部を備えてなり、
前記突状部が前記開孔部に嵌入、前記突状部が前記開孔部の内周面に接触し、前記筒状部の切込部が押圧、圧縮されることで、前記筒状部の先端の内周面(前記切込部を除く)が全周に渡り前記ボルトの外周面に接触し、前記ボルトへの前記筒状部の先端の内周面の全周からの均一な締結力が生じるとともに、
前記突状部が開孔部の内周面に接触、位置している間は前記締結力が保持されることを特徴とする
ロックナット。
【請求項2】
前記第二ナットは、前記ボルトに螺合するネジ孔が軸方向中央に貫通され、外周に多角形部が形成されており、軸方向中央に前記第一ナットの筒状部が嵌入される開孔部が形成されており、前記開孔部の先方に先尖状のテーパ部が形成され、前記テーパ部と前記突状部の先端のテーパ部が接触することで前記筒状部によって前記ボルトをより強く締め付ける請求項1記載のロックナット。
【請求項3】
ボルトに螺合するネジ孔が軸方向中央に貫通され、外周に多角形部が形成された第一ナットと、前記ボルトに螺合するとともに前記第一ナットに装着される第二ナットで構成されるロックナットにおいて、
前記第一ナットは、前記ネジ孔外周であって前記多角形部を除く箇所に形成された筒状部と、前記筒状部の外周に突出された係止用凸部と、前記筒状部に形成された切込部とを備え、
前記第二ナットは、前記係止用凸部が嵌入されるとともに前記係止用凸部の外径より小さい径の円柱状の開孔部と、前記開孔部に形成され前記係止用凸部が配置される係止用凹部とを備えてなり、
前記係止用凸部が前記係止用凹部から抜け、前記開孔部の内周面に接触し、前記筒状部の切込部が押圧、圧縮されることで、前記筒状部の先端の内周面(前記切込部を除く)が全周に渡り前記ボルトの外周面に接触し、前記ボルトへの前記筒状部の先端の内周面の全周からの均一な締結力が生じるとともに、
前記係止用凸部が開孔部の内周面に接触、位置している間は前記締結力が保持されることを特徴とする
ロックナット。
【請求項4】
前記第二ナットは、前記ボルトに螺合するネジ孔が軸方向中央に貫通され、外周に多角形部が形成されており、軸方向中央に前記第一ナットの係止用凸部が嵌入される開孔部が形成されており、前記開孔部の先方に先尖状のテーパ部が形成され、前記テーパ部と前記係止用凸部の先端のテーパ部が接触することで前記筒状部によって前記ボルトをより強く締め付ける請求項3記載のロックナット。
【請求項5】
前記第二ナットにも切込部を形成した請求項1〜4の何れか1項記載のロックナット。
【請求項6】
前記第一ナットに、防水用の座金を装着した請求項1〜5の何れか1項記載のロックナット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、簡単な構造で且つ操作を容易とし、ボルトに締結した際の締付効果を向上させるとともに、二つのナットを連結することができるロックナットに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、二つ以上の部材を結合するには、ボルトとナットが使用される。この際、部材の貫通孔にボルトを挿入させ、ボルトの先端よりナットを螺着させてナットを締め付ける結合させる。
【0003】
しかし、時間が経につれて、振動の発生や部材の変形によりナットが緩み、締付効力が低下するという問題が発生する。そのため、定期的に検査を行いナットの締付作業を実施しなければならなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
それらの課題を解決する従来技術として、的確な締め付けトルクでもってナットの締め付けを容易に且つ確実に行うことができ、かつ、締め付け後はいたずら等により容易に取り外すことのできないようにする取り外し防止機能を有するナット、並びに、緩み止め特殊ダブルナットがある(例えば特許文献1参照)。
上掲特許文献1の取り外し防止機能を有するナット、並びに、緩み止め特殊ダブルナットは、ネジ孔が軸方向に貫通して軸中央部に形成されたナット本体と、該ナット本体の軸方向上部に設けられた回転工具係合部と、ナット本体と回転工具係合部とを連結する連結部とを備えて一体成形され、回転工具係合部の軸中央部にネジ孔の径よりも大きな径を有する空洞を形成し、回転工具係合部に係合した回転工具により所定トルクを超える締め付けトルクで回転工具係合部を締結したときに連結部が破断して、これによりナット本体から回転工具係合部が分離されてなることを特徴とするものである。
【特許文献1】特開2007−40344号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上掲特許文献1の取り外し防止機能を有するナット、並びに、緩み止め特殊ダブルナットは、部品点数が多くなりコスト高に繋がるとともに、作業効率も低下するという問題が生じた。また、保管時においては、別々の部材を分解した状態で保管管理しなければならないという欠点があった。
【0006】
そこで本発明は上記の点に鑑み、簡単な構造で製造コストを削減するとともに、操作を容易とし、ボルトに締結した際の締付効果を向上させるとともに、二つの部材を連結させておくことができるロックナットを提供することにある。
【0007】
上記課題を解決するために本発明のロックナットは、ネジ孔が軸方向中央に貫通され、外周に多角形部が形成された第一ナットと、該第一ナットに装着される第二ナットで構成されるロックナットにおいて、前記第一ナットは、ネジ孔外周であって多角形部を除く箇所に形成された筒状部と、筒状部の先方に形成された突状部と、筒状部に形成された切込部とを備えることを特徴とする。
【0008】
また前記切込部は、
筒状部に少なくとも1箇所以上形成されている。
【0009】
また前記第二ナットは、ネジ孔が軸方向中央に貫通され、外周に多角形部が形成されており、軸方向中央に第一ナットの筒状部が嵌入される開孔部が形成されており、該開孔部の先方に先尖状のテーパ部が形成されている。
【0010】
また前記第二ナットに切込部を形成した。
【0011】
また第一ナットの筒状部に係止用凸部を形成した。
【0012】
また第二ナットの開孔部に、前記第一ナットの係止用凸部が配置される係止用凹部を形成した。
【0013】
さらに、前記第一ナットに防水用の座金を装着した。
【0014】
第一ナットは、ネジ孔外周であって多角形部を除く箇所に形成された筒状部と、筒状部の先方に形成された突状部と、筒状部に形成された切込部とを備え、第二ナットは、ネジ孔が軸方向中央に貫通され、外周に多角形部が形成されており、軸方向中央に第一ナットの筒状部が嵌入される開孔部が形成されており、該開孔部の先方に先尖状のテーパ部が形成されているため、ボルトに第二ナットおよび第一ナットを螺着させ、第二ナットの開孔部に第一ナットの筒状部を嵌入させることにより、第一ナットの突状部が第二ナットのテーパ部に締め付けられ、ボルトにロックされた状態で締結される。
【0015】
また第一ナットの筒状部と第二ナットの多角形部に切込部を形成することで、チャック式ナットのように、第一ナットと第二ナットの締め付け強度を一層高めることができる。
【0016】
さらに、第一ナットの筒状部に係止用凸部を形成し、第二ナットの開孔部に、前記第一ナットの係止用凸部が配置される係止用凹部を形成したことにより、第一ナットの筒状部を押圧することで、係止用凸部が係止用凹部に係止されて、第一ナットと第二ナットとが一体的に連結された状態に保持される。そのため、それぞれの部材を別々に保管する必要がなくなり利便性が向上される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明におけるロックナットの斜視図である。
【
図3】第二ナットに切込を設けたロックナットの斜視図である。
【
図4】他の好適例であるロックナットの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明のロックナットにおける実施の形態を図面に基づいて説明する。
本発明のロックナットは、簡単な構造で製造コストを削減するとともに、操作を容易とし、ボルトに締結した際の締付効果を向上させるとともに、二つの部材を連結させておくことができることを特徴とする。
【0019】
図示するロックナット1は、ネジ孔11が軸方向中央に貫通され、外周に多角形部12が形成された第一ナット10と、該第一ナット10に装着される第二ナット20で構成される。
【0020】
前記第一ナット10は、ネジ孔11外周であって多角形部12を除く箇所に形成された、内周にネジ孔11が螺刻された筒状部13と、筒状部13の先方に形成された突状部14と、筒状部13に形成された切込部15とを備える。
【0021】
前記切込部15は、多角形部12の基部より突状部14の先端までに形成されている。また前記切込部15は、筒状部13に少なくとも1箇所以上形成されている。特に、加工面や締め付け効果を考慮した場合、4箇所形成することが好ましい。
【0022】
また前記第二ナット20は、ネジ孔21が軸方向中央に貫通され、外周に多角形部22が形成されており、軸方向中央に第一ナット10の筒状部13が嵌入される開孔部23が形成されている。また前記開孔部23の先方には、先尖状のテーパ部24が形成されている。
【0023】
前記第一ナット10と前記第二ナット20とを上述の構造としたことにより、
図2の(a)に
一点鎖線で示すように、第二ナット20の
突状部14の外径より小さい内径の円柱状の開孔部23に第一ナット10の筒状部13を配置させ、第一ナット10をネジ込むことにより、(b)に示すように第一ナット10の筒状部13が第二ナット20の開孔部23に嵌入され
、筒状部13によるボルト30への締結力が生じる。
開孔部23の直線状の内周面23aに突状部14が接触、位置している間は前記締結力が保持される。さらに第一ナット10をネジ込むと、(c)に示すように、第一ナット10の突状部14が第二ナット20のテーパ部24により締め付けられ、切込部15が押圧、圧縮されてボルト30との締結力が向上し、第一ナット10と第二ナット20がロックされた状態となる。なお図中40は、ロックナット1により締結される被締結部材を示す。
【0024】
また他の好適例として、
図3に示すように、前記第二ナット20の多角形部22に切込部25を形成してもよい。切込部25は、開孔部23の上面よりネジ孔21の螺刻部近傍まで形成されている。また前記切込部25は、多角形部22に少なくとも一箇所、好ましくは4箇所形成することが好ましい。前記第二ナット20の多角形部22に切込部25を形成することで、前記第一ナット10を締め付けた際、第二ナット20が開口されて、第一ナット10と第二ナット20とのロック状態を好適におこなうことができる。
【0025】
また他の好適例として、
図4に示すように、本発明のロックナット1において、第一ナット10の筒状部13に係止用凸部16を形成し、第二ナット20の開孔部23に、前記第一ナット10の係止用凸部16が配置される係止用凹部26を形成することもできる。
【0026】
本発明のロックナット1を上述の構成としたことにより、第二ナット20の開孔部23に第一ナット10の筒状部13を押圧することで、第一ナット10の係止用凸部16が第二ナット20の係止用凹部26に嵌入される。そのため、第一ナット10と第二ナット20が一体的に連結された状態となり、保管や運搬時等の利便性が向上する。
【0027】
また
図5の(a)に
一点鎖線で示すように、第二ナット20の
係止用凸部16の外径より小さい内径の円柱状の開孔部23に第一ナット10の筒状部13を配置させ、第一ナット10をボルト30にネジ込むことにより、(b)に示すように第一ナット10の係止用凸部16が第二ナット20の係止用凹部26に配設することもできる。この状態でさらに第一ナット10をネジ込むと、(c)に示すように、第一ナット10の係止用凸部16が
係止用凹部26から抜け、第二ナット20の
開孔部23の内周面23aにより締め付けられ、切込部15が押圧、圧縮されて
、筒状部13によるボルト30への締結力が
生じ、第一ナット10と第二ナット20がロックされた状態となる。
開孔部23の直線状の内周面23aに係止用凸部16が接触、位置している間は前記締結力が保持される。さらに、テーパ部24と係止用凸部16の先端のテーパ部の接触することで筒状部でより強くボルト30を締め付ける。
【0028】
また他の好適例として前記第一ナット10に防水用の座金17を装着してもよい。座金17は樹脂ゴム等の防水性、柔軟性に優れた素材で形成されており、第一ナット10の筒状部13の基部に装着される。第一ナット10に座金17を装着することにより、切込部15から雨水等が内部に浸水することを防ぐことができる。
【0029】
上述の構成により、本発明のロックナットは、簡単な構造で製造コストを削減するとともに、操作を容易とし、ボルトに締結した際の締付効果を向上させるとともに、二つの部材を連結させておくことができる。
【符号の説明】
【0030】
1 ロックナット
10 第一ナット
11 ネジ孔
12 多角形部
13 筒状部
14 突状部
15 切込部
16 係止用凸部
17 座金
20 第二ナット
21 ネジ孔
22 多角形部
23 開孔部
23a 内周面
24 テーパ部
25 切込部
26 係止用凹部
30 ボルト
40 被締結部材