特許第6096421号(P6096421)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6096421
(24)【登録日】2017年2月24日
(45)【発行日】2017年3月15日
(54)【発明の名称】タッチスイッチの入力装置
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/044 20060101AFI20170306BHJP
   G06F 3/041 20060101ALI20170306BHJP
【FI】
   G06F3/044 120
   G06F3/041 512
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-105631(P2012-105631)
(22)【出願日】2012年5月7日
(65)【公開番号】特開2013-235313(P2013-235313A)
(43)【公開日】2013年11月21日
【審査請求日】2015年4月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】711007530
【氏名又は名称】高井 拓夫
(72)【発明者】
【氏名】高井 拓夫
【審査官】 塩屋 雅弘
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−273020(JP,A)
【文献】 特開平08−054983(JP,A)
【文献】 国際公開第2004/059343(WO,A1)
【文献】 特開2008−108534(JP,A)
【文献】 特開2010−020674(JP,A)
【文献】 特開2010−238642(JP,A)
【文献】 特開2009−076237(JP,A)
【文献】 特開2009−218876(JP,A)
【文献】 特開2009−272043(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F3/03−3/047
H01H36/00−36/02
H03K17/74−17/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
静電容量式のタッチスイッチの入力装置であって、
非導電性の特性を有する材料により形成された基材と、
導電性の材料により形成された一対のタッチスイッチ入力検出用電極と、該入力検出用電極が形成された非導電性の材料の積み重ね方向直下の位置に設けられ、前記検出用電極と電極形状が概合同の基準用電極と、
前記入力検出用電極と前記基準用電極の少なくとも各一方の電極各々にあらかじめ設定したインピーダンスを有する素子を介して高周波電圧を給電する共通の高周波発生部と、
前記検出用電極に給電した印加電圧を整流する第1の整流部と、
前記基準用電極に給電した印加電圧を整流する第2の整流部と、
前記第1の整流部の電位と前記第2の整流部の電位に電位差を付加する電位差部と、
該電位差部により電位差が付加された前記第1の整流部と前記第2の整流部の各出力電圧を比較して、電位の逆転によりタッチ入力信号を検出する比較部と、
該比較部の判定結果を出力する判定結果出力を備えたことを特徴とする、前記タッチスイッチの入力装置。
【請求項2】
検出用電極に給電した印加電圧と、基準用電極に給電した印加電圧をマイクロコンピュータから出力される時間差を有するタイミングに基づき同一の整流部に給電するゲート回路と、
該ゲート回路の切り替えタイミングに同期して前記検出用電極への印加電圧と、前記基準用電極への印加電圧とを交互にA/D変換し、前記マイクロコンピュータで前記検出用電極の印加電圧と基準用電極の印加電圧を随時保存した後、前記検出用電極の印加電圧と基準用電極の印加電圧を比較する比較部と、
該比較部の判定結果を出力する判定結果出力を備えたことを特徴とする、請求項1に記載のタッチスイッチの入力装置。
【請求項3】
検出用電極と基準用電極を1組以上備えたタッチスイッチを有する単独の機器に於いて、
前記検出用電極と基準用電極の各電極への印加電圧をマイクロコンピュータから出力される時間差を有するタイミングに基づき、1つ以上の整流部nに給電するゲート回路と、
該ゲート回路の切り替えタイミングに同期して前記各電極への印加電圧をA/D変換し、前記マイクロコンピュータで前記各電極への印加電圧を随時保存した後、前記1組毎の検出用電極の印加電圧と基準用電極の印加電圧を比較する比較部と、
該比較部の判定結果を出力する判定結果出力を備えたことを特徴とする、請求項1に記載のタッチスイッチの入力装置。
【請求項4】
検出用電極と基準用電極の電極形状の相違は、高周波電圧を各々給電する予め定められたインピーダンス素子及び、前記検出用電極と前記基準用電極に給電した印加電圧を整流部へ出力する出力素子の各端子と、前記検出用電極と前記基準用電極の各導体との接続部であり、該接続部は前記検出用電極と前記基準用電極のタッチスイッチ入力操作範囲内の各導体であって、且つ前記検出用電極と前記基準用電極の各導体への給電位置が、略同一であることを特徴とする、請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のタッチスイッチの入力装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電極間の静電容量の変化によって、操作者の操作を検知する静電容量型のタッチスイッチに関し、特に多岐にわたる使用環境に適したタッチスイッチの電極配置とその電気信号処理に関するものである。
【背景技術】
【0002】
導電性の電極間に高周波電圧を給電し、人体の指等が電極近傍に入ることで電極間の静電容量の増加によりタッチスイッチ検出回路のCR発振回路の周波数変化で検出を行うタッチスイッチが広く知られている。(特許文献1 特開平11−136116号広報、特許文献2 特開2008-42724号広報、特許文献3 特開2000-48694号広報)
【0003】
また、電極に給電する高周波発振回路の周波数を固定とし、人体の指等が電極近傍に入ることで電極間の静電容量増加に伴い、電極電流が増すことによるタッチスイッチ検出端子の印加電圧の変化で検出を行うタッチスイッチ方式も広く知られている。(特許文献4 特開2004-22356号広報)
【0004】
ところがこれらの静電容量方式では、操作者の指先等の誘電率による僅かの静電容量変化を用いるため、タッチスイッチ入力部を機器内に設置した後の静電容量の変化、あるいは周囲温度、湿度、またそれらの経時変化、更には電磁ノイズによる影響を受けやすく、タッチスイッチ入力有無判定の電気的レベルの閾値を初期状態で固定化を行うと、先述の不安定要因による誤判定を生じるため、操作者の意思による入力操作を正しく判定するための例が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−136116号広報
【特許文献2】特開2008-42724号広報
【特許文献3】特開2000-48694号広報
【特許文献4】特開2004-22356号広報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、タッチスイッチの入力装置に対する基本要求仕様は様々な使用環境や経時変化を予測した上で、操作者の操作とそれ以外の外乱要因の明確な判定を行い、一方で操作者のタッチスイッチ操作による僅かな静電容量変化を高感度で取り込む必要がある。
【0007】
本発明は、このような課題に鑑み考案されたもので、タッチスイッチ入力装置において周囲環境等が電気的に影響する要因を排除しながら、高感度なタッチスイッチの入力装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このため、本発明のタッチスイッチの入力装置は、静電容量式のタッチスイッチの入力装置であって、非導電性の特性を有する材料により形成された基材と、導電性の材料により形成された一対のタッチスイッチ入力検出用電極と、該入力検出用電極が形成された非導電性の材料の積み重ね方向直下の位置に設けられ、前記検出用電極と電極形状が概合同の基準用電極と、前記入力検出用電極と前記基準用電極の少なくとも各一方の電極各々にあらかじめ設定したインピーダンスを有する素子を介して高周波電圧を給電する共通の高周波発生部と、前記検出用電極に給電した印加電圧を整流する第1の整流部と、前記基準用電極に給電した印加電圧を整流する第2の整流部と、前記第1の整流部の電位と前記第2の整流部の電位に電位差を付加する電位差部と、該電位差部により電位差が付加された前記第1の整流部と前記第2の整流部の各出力電圧を比較して、電位の逆転によりタッチ入力信号を検出する比較部と、該比較部の判定結果を出力する判定結果出力を備えたことを特徴としている
【0009】
また、検出用電極に給電した印加電圧と、基準用電極に給電した印加電圧をマイクロコンピュータから出力される時間差を有するタイミングに基づき同一の整流部に給電するゲート回路と、該ゲート回路の切り替えタイミングに同期して前記検出用電極への印加電圧と、前記基準用電極への印加電圧とを交互にA/D変換し、前記マイクロコンピュータで前記検出用電極の印加電圧と基準用電極の印加電圧を随時保存した後、前記検出用電極の印加電圧と基準用電極の印加電圧を比較する比較部と、該比較部の判定結果を出力する判定結果出力を備えたことを特徴としている
【0010】
また、検出用電極と基準用電極を1組以上備えたタッチスイッチを有する単独の機器に於いて、前記検出用電極と基準用電極の各電極への印加電圧をマイクロコンピュータから出力される時間差を有するタイミングに基づき、1つ以上の整流部nに給電するゲート回路と、該ゲート回路の切り替えタイミングに同期して前記各電極への印加電圧をA/D変換し、前記マイクロコンピュータで前記各電極への印加電圧を随時保存した後、前記1組毎の検出用電極の印加電圧と基準用電極の印加電圧を比較し、その電位差に基づいてタッチ入力信号を比較した判定結果出力を備えたことを特徴としている(請求項3)。
【0011】
また、検出用電極と基準用電極の電極形状の相違は、高周波電圧を各々給電する予め定められたインピーダンス素子及び、前記検出用電極と前記基準用電極に給電した印加電圧を整流部へ出力する出力素子の各端子と、前記検出用電極と前記基準用電極の各導体との接続部であり、該接続部は前記検出用電極と前記基準用電極のタッチスイッチ入力操作範囲内の各導体であって、且つ前記検出用電極と前記基準用電極の各導体への給電位置が、略同一であることを特徴としている(請求項4)。
【発明の効果】
【0013】
本発明のタッチスイッチの入力装置によれば、非導電性の特性を有する材料により形成された基材をはさんで積み重ねて形成された概ね合同の検出用電極と基準用電極を設けているので、検出用電極と基準用電極の設置箇所、あるいは温度、湿度、電磁ノイズなどの周囲の使用条件、また経時変化等の不安定要因を検出用電極と基準用電極共にうけることにより、これらの影響の低減を図ることができる。(以上、請求項1)
【0014】
また、検出用電極と基準用電極への印加電圧整流回路を共用することで、各々整流回路を設けるより電気性能のバラツキと部品コストの低減を図ることが可能となる(以上、請求項2、請求項3)
【0015】
また、検出用電極と基準用電極への電気的接続において、高周波電圧の給電と、各電極の印加電圧を出力するための各素子を最短距離で接続することで不要な配線の浮遊容量を低減し、この結果、各電極は全体の静電容量に占める操作者の操作による静電容量変化の変化率を引き上げ、より感度の高い検出が可能となる(以上、請求項4)。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】請求項1に記載の、本発明のブロック図を示した説明図である。
図2】本発明を実施する際の最も簡潔な回路図を示す。
図3】比較部の入力電圧の遷移と判定結果出力を示す図である。
図4】本発明を実施するための最良の形態に係る電極の構成を示した図である。
図5】本発明を実施する際の各電極と、高周波電圧印加のインピーダンス素子及び整流回路への出力素子との接続例を示す図である。
図6】本発明に係る、操作者の操作を行う指と検出用電極及び基準用電極の各々の距離を示す図である。
図7】請求項2に記載の、本発明のブロック図を示した説明図である。
図8】請求項3に記載の、本発明のブロック図を示した説明図である。
図9】請求項4に記載の、高周波電圧給電のインピーダンス素子及び整流回路への出力素子との接続例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための最良の形態に係るタッチスイッチの入力装置について図面に基づいて説明する。このタッチスイッチの入力装置は、図1に示すように高周波発生部4と、高周波電圧を各電極へ給電するインピーダンス素子(5a,5b)、非導電性の基材2の、操作者の指11に近い側に設置する検出用電極1。更に検出用電極1と非導電性の基材2の直下に積み重ねられた基準用電極3が設けられており、検出用電極1に給電された印加電圧を整流する第1の整流部6と、基準用電極3に給電された印加電圧を整流する第2の整流部7と、操作者の指11による操作の無い非操作状態で比較部9の判定結果10が、非操作の電気的レベルとなるよう、予め第1の整流部6と第2の整流部7の各出力電圧に電位差を付加する電位差部8で構成されている。
【0019】
図2は本発明を実施するための簡略な回路図である。高周波発生部4は一例としてインバーターを用いたCR発振回路である。発振周波数は概ね100KHzから数MHzの広い範囲で設定すればよく、タッチスイッチの入力装置の用途、操作者の指11と検出用電極1との検出距離、検出用電極1及び基準用電極3の形状や寸法、非導電性の基材の誘電率、また第1の整流素子6や第2の整流素子7の定数により適宜決定すればよい。正確な発振周波数であったり、予め定められた高周波電圧等である必要は無く、タッチスイッチの入力装置の仕様に合わせ適宜に決定すればよい。
【0020】
以下、図2において、タッチスイッチの入力装置へ操作者の操作が行われない非操作時の動作の概要について述べる。
【0021】
高周波発生部4は所定の周波数で発振し、値の等しいインピーダンス素子(5a、5b)を介して検出用電極1と基準用電極3の各電極で構成された浮遊容量の給電点(5aa、5bb)へ給電される。(なお図2に記載の(11a、11b)は操作者の指による浮遊容量を図示するものであり、非操作時には存在しないため無視する。)ここで、検出用電極1と基準用電極3の各電極形状がほぼ等しく形成され、各電極がタッチスイッチの入力装置の同じ箇所の至近距離で形成されていれば、各電極の浮遊容量(1cap、3cap)もほぼ等しくなる。よって給電点(5aa、5bb)で観測される各印加電圧波形は、各インピーダンス素子(5a、5b)と検出用電極1と基準用電極3の各電極で構成された浮遊容量(1cap、3cap)との積分波形であり、各印加電圧の波形は概ね等しくなる。
【0022】
次に、図2に於いて検出用電極1への印加電圧を整流する第1の整流部6と、基準用電極3への印加電圧を整流する第2の整流部7は各々同じ値の素子で構成され、整流素子(6c、7c)で各々半端整流を行い、抵抗素子(6a、7a)と容量性素子(6d、7d)で各々平滑を行っている。この結果、第1の整流部6の出力6gと第2の整流部7の出力7gで各出力電圧がほぼ等しくなり、その結果、比較部9の判定結果10の電気的レベルを一律に固定することが困難となるため、予め第2の整流部7の出力7g側のみ電位差部8の抵抗素子8aを、出力7gとGNG間に設けることにより、非操作時には常に基準用電極3側の出力7gの電位が検出用電極1側より低くなるように設定している。
【0023】
図3は、比較部9の動作を示す図である。タッチスイッチの入力装置の非操作時において、比較素子9aの(+)側入力は(−)側入力より低い電圧が供給され、比較素子9aの出力には低レベル信号(以下、L信号と記す)が判定結果として出力され、この結果タッチスイッチの入力装置に対し操作者の操作が行われてない非操作時の判定結果出力10はL信号となる。
【0024】
次に、タッチスイッチの入力装置へ操作者の操作が行われた操作時の動作の概要について述べる。
【0025】
はじめに、図2の回路図において(11a、11b)はタッチスイッチの入力装置に対する操作者の指先11の浮遊容量を示し、検出用電極1に付加される操作者の指先11の浮遊容量が11a、基準用電極3に付加される操作者の指先11の浮遊容量が11bとし、この静電容量については次式で表される。
【数1】
【0026】
数式(数1)より、静電容量は誘電率と電極面積が一定であれば電極の間隔dに反比例することが理解できる。これにより、図6で示す通り、操作者の指11がタッチスイッチの入力装置に接近した場合の各距離は、検出用電極1のGND、1gndから操作者の指11を中継し給電点5aaにいたる距離は(1da+1db)であるのに対し、基準用電極3のGND、3gndから操作者の指11を中継し給電点5bbにいたる距離は(3da+3db)であることから、操作者の指11がタッチスイッチの入力装置に接近した場合の静電容量は、見かけ上の電極間隔が短い検出用電極1に付加される操作者の指先の浮遊容量11aが多く、見かけ上の電極間隔の長い基準用電極3に付加される操作者の指先の浮遊容量11bが少ないことが分かる。
【0027】
以上により、本発明のタッチスイッチの入力装置に操作者の指11が接近した場合、検出用電極1の容量1capに、図2の操作者の指の浮遊容量11aが付加され、基準用電極3の容量3capには、図2の操作者の指の浮遊容量11bが付加される。この時、検出用電極1側に付加される操作者の指の浮遊容量11aが基準用電極3に付加される操作者の指の浮遊容量11bより大きいため、高周波電圧を各電極に給電する各インピーダンス素子(5a、5b)の電流値は共に増加するが、基準用電極3側の高周波電流増加分より検出用電極1側に流れる高周波電流増加分の方が多くなり、インピーダンス素子5aによって給電される給電点5aaの高周波電圧の印加電圧は、インピーダンス素子5bによって給電される給電点5bbの高周波電圧の印加電圧より低くなる。
【0028】
この結果、第1の整流部6の出力電圧は第2の整流部7の出力電圧より低くなり、図3に示すとおり、操作者の操作により、比較素子9aの入力端子電圧は、+側入力端子と−側入力端子で反転し、比較素子9aの出力には高レベル信号(以下、H信号と記す)が判定結果として出力され、操作者の操作が行われたとする判定結果出力10はH信号となる。
【0029】
図4は本発明の実施において、導電性材料により形成された検出用電極1と、非導電性の基材2と、導電性の材料により形成された基準電極3を積み重ねた例を示す図である。
【0030】
図4は本発明の電極の構成を示した図である。操作者が入力操作入行う検出用電極1があり、その下に非導電性の基材2がある。非導電性の基材2の裏面に基準用電極3が積み重ねて形成され、各辺の頂点(3a、3b、3c、3d)は検出用電極1と基準用電極3との位置を合わせ積み重ねられていることを示している。なお、図中(GND)は回路におけるGND(接地)電極、6bは第1の整流部6への出力端子、7bは第2の整流部7のへ出力端子、5は高周波電圧の発振回路からの入力端子である。また、電極の形態について、くし型電極を用いて説明を行ったが、電極形状はこの形態に限るものではない。
【0031】
図5は、本発明を実施する際の各電極と、高周波電圧印加のインピーダンス素子及び整流回路への出力素子との接続例を示す図である。特に本発明の非導電性の基材2にプリント基板を用いた場合、検出用電極1の面と基準用電極3の面の電気的接続を図示するものであり、図中、検出用電極1の面の(3e、3g、3f)と基準用電極3の面の(3e、3g、3f)は重なり形成され、スルホール等で電気的に接続されていることを示している。
【0032】
図7は、請求項2に記載の、本発明のブロック図を示した説明図である。タッチスイッチの入力信号処理に於いてマイクロコンピュータ14を用いる例は多くある。その場合、検出用電極1と基準用電極3への印加電圧測定を、マイクロコンピュータにより制御されるゲート12で交互に切り替えることで、整流部は第3の整流部13のみで処理し、検出用電極1と基準用電極3の印加電圧の比較もマイクロコンピュータで行うことにより部品点数の削減と、信頼性の向上を図ることが可能である。
【0033】
図8は、請求項3に記載の、本発明のブロック図を示した説明図である。タッチスイッチの入力装置を用いた機器は同一筐体に於いて一つ以上のタッチスイッチを有し、入力信号処理に於いてマイクロコンピュータ14を用いる例は多くある。その場合、検出用電極1n=1から検出用電極1nと、基準用電極3n=1から基準用電極3nへの印加電圧測定を、マイクロコンピュータにより制御されるゲート12nで切り替えることで、整流部は第n=1の整流部13n=1から第nの整流部13nで処理し、検出用電極1n=1から検出用電極1nと、基準用電極3n=1から基準用電極3nへの印加電圧の比較もマイクロコンピュータで行うことにより部品点数の削減と、信頼性の向上を図ることが可能である。
【0034】
図9は、請求項4に記載の検出用電極1と基準用電極3の電極形状について示した図である。一例としてプリント基板の両面に検出用電極1と基準用電極3を各々配置し、インピーダンス素子(5a、5b)及び印加電圧を整流部へ出力する出力素子(6a、7a)を基準用電極3の面に実装した例について述べる。
【0035】
本発明によれば、検出用電極1と基準用電極3の電極形状が合同であれば、数式(数1)より、操作者の指11と検出用電極1、および基準用電極3との静電容量は各電極と操作者の指11の間隔に反比例することが理解でき、操作者の指11の検出用電極1と基準用電極3への接近を高感度で検出できる。更に、検出用電極1への給電点5aaと基準用電極3への給電点5bbを互いに隣接させ、検出用電極1と基準用電極3の電極形状の相違を抑えことにより、操作者の指11がタッチスイッチの垂直方向のみならず、上下左右のあらゆる方向から接近したと仮定しても、インピーダンス素子5aの給電点5aa、および第1の整流部6への出力素子6aと、インピーダンス素子5bの給電点5bb、および第2の整流部7への出力素子7aの各接続箇所と、操作者の指11の距離を概ね等しくできるので、各電極に印加する高周波の周波数を高めても分布定数回路としてバランスを保つことが可能であり、安定したタッチスイッチの操作検出が可能である。
【0036】
また、図9に於いて、検出用電極1の5aaと基準用電極3の5bbへ給電を行うインピーダンス素子(5a、5b)と、第1の整流部6への出力素子6aと、第2の整流部7への出力素子7aをそれぞれ接続する導体と各素子の電極側端子は、図9の切断線a−aの範囲内にあり、電極以外の浮遊容量を抑えたことを特徴としている。また、第1の整流部6への出力素子6aと、第2の整流部7への出力素子7aは抵抗素子であり、検出用電極1と基準用電極3の浮遊容量と、第1の整流部6と、第2の整流部7への配線に伴う浮遊容量の影響を受けない様、分離している。
【実施例】
【0037】
(実施例1)
以下、図1図2図3を参照して本発明の実施例1を説明する。
【0038】
例えば本発明を用いてモメンタリ動作(タッチスイッチを操作している間だけ動作状態を維持)のタッチスイッチの入力装置を構成するのであれば、図1のブロック図の構成で達成可能である。回路図は図2の通りであり、高周波発生部4のインバーターにはCMOS IC、74HC04が使用でき、発振周期Tは(数2)で求めることができる。例えば、発振周波数を130KHzとし、両面プリント基板で厚さ1.6mm、基板材質がCEM3、図4の各電極の大きさは約10×15mm、櫛形電極のピッチ0.254mmを形成し、インピーダンス素子(5a、5b)を適宜加減し、検出用電極1と基準用電極3に各々4Vp−pの程度の高周波電圧を印加すれば、第1の整流部6と第2の整流部7は同じ回路構成とし、整流素子(6c、7c)は小信号のスイッチングダイオードであり、各電極へ印加された高周波電圧を半端整流する、抵抗(6a、7a)と容量性素子(6e、7e)は平滑回路であり、高周波電圧の周波数130KHz以下を通過させるロウパスフィルターであればよい。抵抗(6a、7a)を整流素子(6c、7c)より電極側に配置したのは、各電極の容量と整流部の浮遊容量を分離する目的である。また抵抗(6d、7d)は平滑回路の放電用抵抗である。
【数2】
【0039】
なお、図2の第1の整流部6と第2の整流部7共に、二段目の平滑回路(6f、6h、7f、7h)を記載しているが、ノイズの影響が無ければ削除しても問題ない。
【0040】
以上により、本発明のタッチスイッチの入力装置を操作者が操作を行わない非操作時に於いて、図2の第1の整流部6の出力6g、および第2の整流部7の出力7gには3.1V程度の直流電位が出力されるが、比較部9において、この電位をこのまま判定を行うと、非操作時であっても若干の回路定数のバラつき等で出力6g、出力7gの電位の大小が一定せず、非操作時の判定結果10は、L信号かH信号に固定されない問題が生じる。そのため、電位差部8で電位差を付加する為の抵抗素子8aを設け、図3に表すとおり、非操作時の第2の整流部7の出力7gを第1の整流部6の出力6gより0.1V程度低くし、電位差比較素子9aの(+)端子を(−)端子より低い電位とすることにより、非操作時の判定結果出力10にL信号を出力している。
【0041】
次に、本発明のタッチスイッチの入力装置を操作者が操作を行う操作時に於いて、操作者の指11が接近した場合、検出用電極1の容量1capに、図2の操作者の指の浮遊容量11aが付加され、基準用電極3の容量3capには、図2の操作者の指の浮遊容量11bが付加される。この時、検出用電極1側に付加される操作者の指の浮遊容量11aが基準用電極3に付加される操作者の指の浮遊容量11bより大きいため、高周波電圧を各電極に給電する各インピーダンス素子(5a、5b)の電流値は共に増加するが、基準用電極3側の高周波電流増加分より検出用電極1側に流れる高周波電流増加分の方が多くなり、インピーダンス素子5aによって給電される給電点5aaの高周波電圧の印加電圧は、インピーダンス素子5bによって給電される給電点5bbの高周波電圧の印加電圧より低くなる。
【0042】
具体的には、操作時の第1の整流部6の出力6gの電位は0.2V程度低下し約2.9Vとなる。一方、第2の整流部7の出力7gの電位の低下は0.05V程度であり、約2.95Vとなる。このため、図3に示すとおり、操作時の比較素子9aの(+)端子と(−)端子の電位は非操作時の電位と逆転することにより、判定結果出力10にH信号を出力する。
【0043】
以上により、本発明のタッチスイッチの入力装置において、操作者が操作を行わない非操作時の判定結果出力10は、L信号であり、操作者が操作を行ったときの判定結果出力10は、H信号となる。及び操作者が本発明の入力装置から指11を遠ざけると、すぐさま判定結果出力10はL信号に戻ることにより、モメンタリ動作のタッチスイッチとして機能が達成される。
【0044】
本発明の実施例1において、高周波発生部1の高周波電圧波形は矩形波である必要は無く、三角波、のこぎり波等であってもよく、高調波の発生を伴わない基本波だけの正弦波が理想である。高周波発生部4の回路形態は図2に示したインバータに限定する必要は無く、汎用タイマーIC、OPアンプを用いた発振回路などあらゆる回路形態であってよい。また、連続的に高周波を発生する必要も無いため、消費電力を抑えるため間欠的に高周波電圧を出力してもよい。
【0045】
本発明のタッチスイッチの入力装置は、従来のタッチスイッチの一つの方式にある商用電源の変圧器が接地され、変圧器が接地された大地と、操作する機器の露出した電極と、操作者の人体間を微弱電流が流れることによりタッチスイッチの操作を受け付ける装置と異なり、装置の電源の接地が行われてない電池使用の機器でもタッチスイッチでの入力機能が有効である。よって、タッチスイッチの電極部表面が絶縁体あっても問題は無く、印刷の施された樹脂、ガラス等が検出用電極1の前面に設けられた機器にも設置可能なタッチスイッチの入力装置である。また、例えば多層基板の内層に検出用電極1を配置し、プリント基板の操作面側には電極が一切露出しない構造も可能であることから、人体から機器への静電気の耐性とデザイン性の向上、及びコストダウンを図る事が可能である。
【0046】
本発明の実施にあたり、電位差部8で電位差を付加する為の抵抗素子8aを設け、非操作時の比較部9の電位差比較素子9aの(+)端子を(−)端子より低い電位に設定することにより、非操作時の判定結果出力10にL信号を出力しているが、異なる方法としてインピーダンス素子(5a、5b)の定数設定、あるいは第1の整流部6、および第2の整流部7の抵抗素子(6a、7a、6d、7d)の定数設定などにより、別途に電位差部8で電位差を付加する為の抵抗素子8aを設けることなく、比較部9の電位差比較素子9aの(+)端子を(−)端子より低い電位に設定することも可能である。
【0047】
(実施例2)
先述のモメンタリ動作のタッチスイッチに於いて、判定結果出力10にラッチ機能を付加すればオルタネイト動作(タッチ操作毎にL信号とH信号出力を繰り返し、指をタッチスイッチから離しても、L信号、あるいはH信号状態を保持)のスイッチを構成可能である。例えば判定結果出力10にCMOS IC 74HC74(D−TYPE FLIP FLOP)を接続することでオルタネイト動作のタッチスイッチが達成可能である。
【0048】
(実施例3)
更に、本発明のタッチスイッチの入力装置を複数並べ、マイクロコンピューターを用いて制御を行えば、ラジオスイッチ(ラジオボタン)と言われる、複数のスイッチの一つだけが常に選択されるスイッチも構成可能である。
【産業上の利用可能性】
【0049】
以上のように、本発明にかかるタッチスイッチの入力装置によれば、機器へのタッチスイッチの設置箇所、あるいは温度、湿度、電磁ノイズなどの周囲の使用条件、また経時変化等の不安定要因に対し安定した入力操作を行うことが可能な入力装置を提供することができる。
【符号の説明】
【0050】
1 検出用電極
1cap 検出用電極の浮遊容量
1n=1 n=1番目の検出用電極
1n n番目の検出用電極
2 非導電性の基材
2n=1 n=1番目の非導電性の基材
2n n番目の非導電性の基材
3 基準用電極
3a 基準用電極と検出用電極の重なり位置3aを示す
3b 基準用電極と検出用電極の重なり位置3bを示す
3c 基準用電極と検出用電極の重なり位置3cを示す
3d 基準用電極と検出用電極の重なり位置3dを示す
3e 基準用電極と検出用電極のスルホール位置3eを示す
3f 基準用電極と検出用電極のスルホール位置3fを示す
3g 基準用電極と検出用電極のスルホール位置3gを示す
3cap 基準用電極の浮遊容量
3n=1 n=1番目の基準用電極
3n n番目の基準用電極
4 高周波発生部
5 インピーダンス素子の入力
5a 検出用電極インピーダンス素子
5aa 検出用電極への給電点
5an=1 n=1番目の検出用電極インピーダンス素子
5an n番目の検出用電極インピーダンス素子
5b 基準用電極インピーダンス素子
5bn=1 n=1番目の基準用電極インピーダンス素子
5bn n番目の基準用電極インピーダンス素子
5bb 基準用電極への給電点
6 第1の整流部
6a 検出用電極の出力素子
6b 第1の整流部6への出力端子
6c 第1の整流部の整流素子
6d 第1の整流部の放電抵抗
6e 第1の整流部の平滑用容量素子
6f 第2の整流部の二段目の平滑用抵抗素子
6g 第1の整流部の電圧出力点
6h 第1の整流部の二段目の平滑用容量素子
7 第2の整流部
7a 基準用電極の出力素子
7b 第2の整流部7への出力端子
7c 第2の整流部の整流素子
7d 第2の整流部の放電抵抗
7e 第2の整流部の平滑用容量素子
7f 第2の整流部の二段目の平滑用抵抗素子
7g 第2の整流部の出力点
7h 第2の整流部の二段目の平滑用容量素子
8 電位差部
8a 電位差を付加する為の抵抗素子
9 比較部
9a 電位差比較素子
10 判定結果出力
11 操作者の指
11a 検出用電極側での操作者の指の浮遊容量
11b 基準用電極側での操作者の指の浮遊容量
12 ゲート回路
12n n個の切り替え機能を有するゲート回路
13 第3の整流部
13n=1 第13n=1の整流部
13n 第13nの整流部
14 マイクロコンピュータ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9