(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
構造物の開口部を開閉する開閉体に対して前記開閉体よりも屋外側に設置されて前記構造物と前記開閉体とを一体に覆うシートを保持する開口部用防水シートの保持方法であって、
第一保持部材を前記開口部の幅方向に沿って延在するように床面に載置する手順と、
前記床面を覆う前記シートを間に挟んで、前記第一保持部材を前記床面側から、第二保持部材を前記床面側と反対側から互いに嵌め合わせる手順と、を備え、
前記第一保持部材は、前記第二保持部材と嵌め合わされる嵌合部と、前記嵌合部の軸方向に延在し、前記床面に対して前記嵌合部を支持する一対の支持部とを有し、
前記一対の支持部のうち、前記第一保持部材が前記開口部の幅方向に沿って延在するように配置されたときに前記開閉体に近い側に位置する第一支持部は、前記床面に向かうに従い前記開閉体に向かう傾斜を有し、前記開閉体から遠い側に位置する第二支持部は、前記床面に向かうに従い前記開閉体から離間する傾斜を有する
ことを特徴とする開口部用防水シートの保持方法。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下に、本発明の実施形態に係る開口部用防水シートの保持機構および開口部用防水シートの保持方法につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記の実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるものあるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0027】
[第1実施形態]
図1から
図6を参照して、第1実施形態について説明する。本実施形態は、開口部用防水シートの保持機構および開口部用防水シートの保持方法に関する。
図1は、本発明の第1実施形態に係る開口部用防水シートの保持機構を示す斜視図、
図2は、開口部の水平断面図、
図3は、第1実施形態に係る開口部用防水シートの保持機構を示す鉛直断面図、
図4は、第二保持部材の断面図、
図5は、保持部材の一例を示す図、
図6は、保持部材の他の一例を示す図である。
【0028】
建物等の構造物の外部開口部には、シャッターが付けられることが多い。例えば、洪水時に浸水しやすい地下駐車場の入口や、浸水すると商品が毀損されやすい店舗の入口等にもシャッターが付けられていることが多い。シャッターは、隙間が多い構造であるため、ゲリラ豪雨や洪水時にはシャッターの隙間を介した浸水によってこれらの施設が被害に遭う可能性がある。
【0029】
浸水対策として、シャッターとシャッターに隣接する構造物とを一体に覆う防水シートを設置することが検討されている。ここで、防水シートの止水性を高めるためには、防水シートと床面との間からの浸水を抑制できることが望ましい。
【0030】
本実施形態に係る開口部用防水シートの保持機構1−1は、シート10を保持する保持部材30を含んで構成されている。保持部材30は、第一保持部材40と、第一保持部材40と嵌め合わせ可能な第二保持部材50とを有する。保持部材30は、第一保持部材40が床面8側から、第二保持部材50が床面8側と反対側から、床面8を覆うシート10を間に挟んで互いに嵌め合わされる。第一保持部材40は、第二保持部材50と嵌め合わされた状態で床面8に載置される。
【0031】
本実施形態に係る開口部用防水シートの保持機構1−1によれば、水流等によってシート10と床面8との間に水が入り込むことや、シート10がめくれ上がることが抑制され、開口部2からの浸水が抑制される。
【0032】
図1に示すシート10は、構造物1の開口部2を閉塞し、屋外側から屋内側への水の浸入を抑制するものである。構造物1は、例えば、工場、倉庫、車庫、店舗、家屋等の建築構造物であり、開口部2を有している。開口部2は、構造物1の壁部等に形成されており、構造物1の屋外側と屋内側とを連通している。
【0033】
ここで、屋外側とは、相対的に構造物1の外部空間に近い側を示し、屋内側とは、相対的に構造物1の外部空間から遠い側を示す。言い換えると、屋外側とは、外部空間から構造物1に水が浸入する場合の上流側、すなわち先に水が到達する側である。開口部2は、例えば、構造物1の外部空間(屋外)と内部空間(屋内)とを連通するものとすることができる。本実施形態の開口部2は、構造物1の外殻をなす壁部3に形成されており、壁部3を貫通して構造物1の屋外と屋内とを連通している。なお、これに限らず、開口部2は、構造物1の内部を仕切る壁部に形成されたものであってもよい。
【0034】
シャッターカーテン4は、開口部2を開閉する開閉体である。シャッターカーテン4は、開閉方向、本実施形態では鉛直上下方向に移動する。シャッターカーテン4は、複数のスラット4aを開閉方向に連接して形成されたスラット連接体である。本実施形態では、開方向が上方向、閉方向が下方向となる。
【0035】
シャッターカーテン4は、ガイドレール5によって案内される。
図2に示すように、壁部3は、開口部2を形成する壁面3a,3bを有する。壁面3aと壁面3bとは開口部2の幅方向において互いに対向している。ガイドレール5は、壁面3a,3bにそれぞれ配置されており、幅方向において互いに対向している。シャッターカーテン4の幅方向の両端部は、それぞれガイドレール5の溝部5aに挿入されている。溝部5aは、開閉方向に延在しており、シャッターカーテン4を開閉方向に移動自在に案内する。
【0036】
図1に戻り、シート10は、開口部2に設置されるものであり、開口部2の鉛直方向下端側の領域を閉塞することが可能な幅および長さを有している。シート10の形状は、例えば、矩形である。シート10は、遮水性を有しており、開口部用防水シートとして機能することができる。また、シート10は、可撓性を有しており、伸縮可能であってもよい。シート10の素材は、例えば、樹脂、ゴム、表面を樹脂などでコーティングした布とすることができる。シート10は、水圧によるシャッターカーテン4等の開閉体の変形に追従できる素材で構成されることが好ましい。
【0037】
シート10の幅は、シャッターカーテン4の幅よりも大きい。また、シート10の幅は、開口部2の幅W、言い換えると壁面3aと壁面3bとの間の水平距離よりも大きいことが好ましい。シート10の開閉方向の長さは、対応すべき水深に基づいて定められている。すなわち、シャッターカーテン4の下端から鉛直方向上側に向けてどの範囲をシート10によって覆い防水するかに基づいてシート10の全長(開閉方向の長さ)が定められている。以下の説明では、シャッターカーテン4においてシート10によって覆われるべき部分を「所定部」(
図2の符号4b参照)と称する。所定部4bは、シャッターカーテン4の鉛直方向下端側の部分である。
【0038】
図2に示すように、保持部20は、シート10をシャッターカーテン4よりも屋外側の位置で構造物1に対して保持する。より詳しくは、保持部20は、シャッターカーテン4の所定部4bと、構造物1のうち所定部4bに隣接する部分とを一体に覆うことで開口部2の鉛直方向下端部を閉塞させるようにシート10を保持する。また、保持部20は、シート10の鉛直方向下端部が床面8に沿って屋外側に向けて延在するようにシート10を保持する。これにより、シート10は、シャッターカーテン4が有する隙間やシャッターカーテン4と構造物1との隙間を塞ぎ、屋内側への浸水を抑制することができる。
【0039】
図2に示すように、保持部20は、レール21およびビード22を有する。レール21は、壁面3a,3bにそれぞれ取り付けられている。なお、レール21は、ガイドレール5に対して固定されてもよい。レール21は、断面C字形状であり、互いに対向する面にスリットが形成されている。レール21は、開閉方向に延在しており、シャッターカーテン4の所定部4bに対応する範囲に配置されている。すなわち、レール21は、シャッターカーテン4の下端から所定部4bの上端までの範囲に対応して配されている。
【0040】
ビード22は、レール21内に挿入可能である。ビード22は、断面C字形状であり、C字の両端部が外側に向けて突出している。ビード22は、軽量でかつ可撓性を有する素材、例えば樹脂素材で形成されている。
【0041】
シート10の幅方向の両端には、それぞれジッパー11が配置されている。ジッパー11は、シート10の縁部に配置されており、シート10の長さ方向(開閉方向)に延在している。ジッパー11は、円柱形状であり、ビード22の中空部に挿入可能である。ビード22のスリット幅は、ジッパー11の外径よりも小さいため、ジッパー11がスリットを介してビード22から抜け出ることが規制される。
【0042】
シート10を開口部2に設置する場合、まずシート10のジッパー11がビード22の中空部に挿入される。次いで、ビード22がレール21に対して開閉方向に挿入される。シート10の幅は、開口部2の幅W(
図2参照)、言い換えると壁面3aと壁面3bとの距離よりも大きい。このため、シート10の両端部が保持部20によって保持された状態で、シート10はたるみを有している。つまり、保持部20は、シート10がたるみを有した状態でシート10を保持し、シート10が保持部20よりもシャッターカーテン4側に向けて撓んで所定部4bと接触することを許容する。
【0043】
なお、シート10を構造物1に対して保持する手段は、ビード22およびレール21によるものには限定されない。例えば、構造物1に設置されたレール21によって直接シート10が保持されてもよい。また、粘着式のテープや面ファスナー等によってシート10が構造物1に保持されてもよい。磁石等によってシート10が構造物1に保持されてもよい。
【0044】
シート10の開閉方向の長さは、シャッターカーテン4の所定部4bの開閉方向の長さよりも長い。従って、シート10が保持部20によって保持された状態で、シート10の鉛直方向下端部を床面8上に垂らし、床面8に沿わせることが可能である。シート10は、このシート10の鉛直方向下端部を床面8に沿って屋外側に向けて延在させた状態で設置される。言い換えると、シート10は、鉛直方向下端部が床面8と互いに対向し、かつ先端側へ向かうに従いシャッターカーテン4から離間するように配置される。本明細書では、シート10の鉛直方向下端部であって、シート10が保持部20によって保持された状態で床面8を覆う部分を「床面被覆部12」と記載する。また、シート10の幅方向の端部であって、壁面3a,3bを覆う部分を「壁面被覆部13」と記載する。
【0045】
洪水やゲリラ豪雨等によって屋外の水嵩が増すと、まず床面被覆部12が水に接する。このとき、床面8に床面被覆部12を載置しただけであると、床面被覆部12と床面8との間に水が浸入し、シート10の表裏に同一の水圧が掛かってシート10が床面に密着しない可能性がある。シート10が床面に密着しないと、水が床面8とシート10との隙間を通り抜けて止水性能が低下してしまう。これに対して、床面被覆部12の先端部に水の比重よりも大きいおもりを連続的に載置して水の浸入を抑制することが考えられる。しかしながら、激しい水流の時には、おもりがずれてしまい不連続部分が発生する可能性がある。ずれを抑制するためにシート10を袋状にし、おもりを固定することが考えられるが、この場合袋部に空気が残って浮力が発生する問題がある。
【0046】
本実施形態に係る開口部用防水シートの保持機構1−1は、第一保持部材40と第二保持部材50とが床面被覆部12を間に挟んで互いに嵌め合わされ、第一保持部材40が床面8に載置される。これにより、保持部材30がシート10に対してずれることが抑制される。
【0047】
図3に示すように、第一保持部材40と第二保持部材50とは嵌め合わせ可能である。保持部材30は、第一保持部材40が床面8側から、第二保持部材50が床面側と反対側から、床面被覆部12を間に挟んで互いに嵌め合わされる。保持部材30は、床面被覆部12を間に挟んで保持部材40,50が嵌め合わされた状態で、第一保持部材40が床面8に載置される。第一保持部材40が床面8に載置された後で床面被覆部12を間に挟んで第二保持部材50が嵌め合わされても、床面被覆部12を間に挟んで第一保持部材40と第二保持部材50とが嵌め合わされた後で第一保持部材40が床面8に載置されてもよい。
【0048】
第一保持部材40は、嵌合部41と、一対の支持部42,43とを有する。嵌合部41は、第二保持部材50と嵌め合わされる部分である。嵌合部41の外周面は、第一保持部材40が第二保持部材50と互いに嵌め合わされたときに第二保持部材50と対向する面であり、その断面形状は円弧である。本実施形態では、嵌合部41は、略円筒形状であり、断面円形の貫通孔41bが軸方向(長手方向)に形成されている。嵌合部41の外周面において、第二保持部材50と嵌め合わされた状態で第二保持部材50と対向する部分41aの中心角θは、180度よりも大きい。嵌合部41に対するシート10の巻き付け角は、上記中心角θに対応している。本明細書において、床面被覆部12を間に挟んで第一保持部材40と第二保持部材50とが嵌め合わされた状態を「保持嵌合状態」と称する。
【0049】
一対の支持部42,43は、嵌合部41の外周面から径方向外側に向けて突出している。第一支持部42は、保持嵌合状態で第二保持部材50と対向する部分41aの周方向の一方の端部から突出しており、第二支持部43は、他方の端部から突出している。第一支持部42と第二支持部43とのなす角度αは、180度よりも小さい。支持部42,43は、嵌合部41の軸方向の一端から他端まで軸方向に延在している。各支持部42,43は、板状に形成されており、基端側が嵌合部41と接続されている。各支持部42,43は、基端側から先端側へ向かうに従い板厚が小さくなるテーパ形状をなしている。支持部42,43は、それぞれの先端部が床面8に接するように載置されて、床面8に対して嵌合部41を支持する。支持部42,43は、嵌合部41を床面8から離間させた状態で支持することができる。
【0050】
一対の支持部42,43は、基端側から先端側へ向かうに従って互いに離間するように形成されている。従って、一対の支持部42,43のそれぞれの先端部が床面8に接するように、かつ開口部2の幅方向に沿って嵌合部41が延在するように第一保持部材40が載置されると、一方の支持部42がシャッターカーテン4に近い側に位置し、他方の支持部43がシャッターカーテン4から遠い側に位置することとなる。ここでは、シャッターカーテン4に近い側に位置する支持部42を「第一支持部42」と称し、シャッターカーテン4から遠い側に位置する支持部43を「第二支持部43」と称する。
【0051】
第一保持部材40が開口部2の幅方向に沿って延在するように床面8に載置されたときに、第一支持部42は、床面8へ向かうに従いシャッターカーテン4に向かう傾斜を有し、第二支持部43は、床面8へ向かうに従いシャッターカーテン4から離間する傾斜を有する。支持部42,43と床面8との間には、断面三角形状の空間部23が形成される。
【0052】
第二保持部材50は、床面被覆部12を間に挟んで第一保持部材40の嵌合部41と嵌め合わされる。本実施形態に係る第二保持部材50は、断面C字あるいはΩ字形状の部材である。第二保持部材50の内周面は、保持嵌合状態で第一保持部材40の外周面と対向する面であり、その断面形状は円弧である。第一保持部材40の外周面および第二保持部材50の内周面がそれぞれ断面円弧形状であることにより、第一保持部材40と第二保持部材50とを容易に着脱することができる。また、シート10と保持部材40,50との隙間の発生が抑制される。
【0053】
図4に示すように、第二保持部材50の内部内々寸法L1は、第二保持部材50の開口部内々寸法L2よりも大きい。内々寸法は、
図4に示す第二保持部材50の軸方向と直交する断面で示される寸法である。内々寸法は、一方の押圧部51と他方の押圧部51とを結ぶ方向における第二保持部材50の内周面間の距離である。第二保持部材50は、押圧部51,51間に形成された開口部を有しており、開口部の近傍は、開口部から奥部へ向かうに従い内々寸法が大きくなるように形成されている。従って、第二保持部材50は、第一保持部材40と嵌合し、第一保持部材40との間にシート10を保持することができる。
【0054】
なお、第一保持部材40および第二保持部材50の断面形状は、
図3に例示したものには限定されない。例えば、第一保持部材40の嵌合部41の断面形状は、多角形、一例として
図5に示すような矩形であってもよい。これに対応する第二保持部材50の断面形状は、多角形の一部に開口部を設けたもの、例えば、
図5に示すように矩形の一辺に開口部を設けたものとすることができる。また、第一保持部材40の嵌合部41の断面形状は、一部を円弧形状としたもの、例えば、
図6に示すように、平行な2本の直線部の端部同士を円弧で接続した形状であってもよい。これに対応する第二保持部材50の断面形状は、第一保持部材40の断面形状と同様の形状に対して開口部を設けたものとすることができる。また、第一保持部材40の嵌合部41の断面形状は、真円以外の円形、例えば楕円形状とされてもよい。これに対応する第二保持部材50の断面形状は、円形の一部に開口部を設けたもの、例えば、楕円の一部に開口部を設けたものとすることができる。
【0055】
第二保持部材50は、弾性変形可能な素材で構成され、かつ可撓性を有していることが望ましい。第一保持部材40の嵌合部41の外周面の直径と、第二保持部材50の内周面の直径とは略等しい。これにより、床面被覆部12を間に挟んで第一保持部材40と第二保持部材50とが嵌め合わされたときに、第一保持部材40や第二保持部材50と床面被覆部12との間に隙間が生じることが抑制される。
【0056】
第二保持部材50は、押圧部51を有する。押圧部51は、断面視における第二保持部材50の周方向の両端部に形成されており、断面略円形の円柱状の部分である。押圧部51は、保持嵌合状態でシート10を各支持部42,43に向けて押圧する。
【0057】
保持部材30は、保持嵌合状態で、嵌合部41が開口部2の幅方向に沿って延在するように、かつ支持部42,43が床面8に対して嵌合部41を支持するように床面8に配置される。言い換えると、保持部材30は、軸線方向が開口部2の幅方向と平行となるように設置される。このときに、床面被覆部12が第二支持部43の少なくとも一部を覆っていることが好ましい。また、床面被覆部12の先端の縁部が、第二支持部43の先端よりも屋外側に位置し、床面8に接触するようにされてもよい。このようにすれば、床面被覆部12と床面8との間に水が浸入することが抑制される。また、第一保持部材40が開口部2の幅方向に沿って延在することで、開口部2に向かう水の流れを第一保持部材40によって抑制することができる。例えば、水位が低いときにシート10と床面8との間に浸入した水の流れを第一保持部材40によって弱めあるいは止めることができる。
【0058】
本実施形態では、
図1に示すように、複数の第一保持部材40が開口部2の幅方向に連続して設置される。このときに、隣接する第一保持部材40の隙間を小さくすることで、止水効果を高めることができる。例えば、隣接する第一保持部材40の端部同士を接触させるように設置することが好ましい。また、第一保持部材40の長さを適切に定めることで、施工性を向上させることができる。例えば、一組の第一保持部材40と第二保持部材50とで床面被覆部12の全体を保持しようとすると、第一保持部材40や第二保持部材50の長さが大きくなり、取扱性が低下したり、収納性が低下したりする。これに対して、第一保持部材40や第二保持部材50を適切な長さ、例えば50cm程度の長さとすると、取扱や収納が容易となる。
【0059】
図3に示すように、第二支持部43は、床面8に向かうに従い屋外側へ向かうように傾斜している。従って、矢印Y1に示す屋内側へ向かう水流を受けると、第二支持部43には床面8に向かう押圧力が作用して第二支持部43と床面8との密着性が増す。これにより、水流Y1によって保持部材30がずれたり浮き上がったりすることが抑制される。
【0060】
また、第一支持部42および第二支持部43は、樹脂等の素材で形成されており、弾性変形可能であり、床面8の凹凸に応じて変形することができる。各支持部42,43は、床面8に向かう押圧力により変形可能である。保持嵌合状態では、第二保持部材50およびシート10の重量により、第一保持部材40に対して床面8に向かう押圧力が作用する。各支持部42,43は、少なくともこの押圧力によって変形可能であることが好ましい。また、各支持部42,43は、第一保持部材40の自重によって変形可能であってもよい。
【0061】
各支持部42,43が変形可能であることにより、各支持部42,43の先端部と床面8との間に隙間が発生することが抑制される。よって、各支持部42,43と床面8との間から屋内側に水が浸入することが抑制される。また、各支持部42,43には、突起44が形成されている。突起44は、各支持部42,43における床面8と対向する面に配置されており、各支持部42,43の一端から他端まで嵌合部41の軸方向に延在している。突起44は、各支持部42,43に対して複数形成されており、かつ互いに平行である。なお、突起44は、第一支持部42あるいは第二支持部43のいずれか一方に設けられてもよい。
【0062】
突起44は、各支持部42,43の先端部に配置されており、例えば、第一保持部材40が床面8上に載置されたときに少なくとも一つの突起44が床面8に接触するように配置されている。突起44を有することで、各支持部42,43と床面8との密着性が増す。突起44は、床面8の凹凸に応じて変形し、床面8との隙間の発生を抑制することができる。また、突起44によって嵌合部41を支持することで、支持部42,43における床面8との接触部の面圧が増し、床面8との密着性が増す。
【0063】
水圧等によって保持部材30に対して床面8に向かう押圧力が作用すると、各支持部42,43が床面8に向けて凸に湾曲するように変形する。これにより、既に床面8と接触していた突起44の面圧が増す。また、それまで床面8から離間していた突起44が新たに床面8と接触することができる。従って、床面8に向かう押圧力に応じて、床面8と各支持部42,43との密着性が増す。床面8に向かう押圧力によって各支持部42,43が変形すると、空間部23の空気が端部から外部空間に排出され、空間部23の容積が減少する。
【0064】
また、各支持部42,43における床面8側と反対側の面には、突起45が形成されている。突起45は、各支持部42,43の一端から他端まで嵌合部41の軸方向に延在している。突起45は、各支持部42,43に対して複数形成されており、かつ互いに平行である。なお、突起45は、第一支持部42あるいは第二支持部43のいずれか一方に設けられてもよい。
【0065】
本実施形態の突起45は、各支持部42,43の基端側に配置されている。突起45を有することで、各支持部42,43とシート10との密着性が増す。突起45は、床面被覆部12が不規則に撓んだ場合やしわが生じた場合に床面被覆部12の形状に応じて変形可能であり、第一保持部材40とシート10との隙間の発生を抑制することができる。なお、第二保持部材50の押圧部51によって床面被覆部12が突起45に向けて押圧されるようにしてもよい。
【0066】
複数の第一保持部材40を開口部2の幅方向に連続して配置する場合、複数の第一保持部材40に対して一つの第二保持部材50が嵌め合わされてもよい。本実施形態では、
図1に示すように、開口部2の幅方向において隣接する2つの第一保持部材40に対して、一つの第二保持部材50が嵌め合わされる。これにより、隣接する2つの第一保持部材40が第二保持部材50を介して直線状に連結される。二つの第一保持部材40が隙間をあけて配置されている場合であっても、隙間部分のシート10が第二保持部材50によって押さえられ、床面8からの浮き上がりが抑制される。よって、シート10と床面8との隙間を小さなものとして開口部2からの浸水を抑制することができる。また、複数の第一保持部材40が互いに連結されることで、水流によって保持部材30が移動してしまうことが抑制される。
【0067】
第二保持部材50によって複数の第一保持部材40を連結することに代えて、あるいは加えて、他の部材によって複数の第一保持部材40が連結されてもよい。例えば、第一保持部材40の貫通孔41bに対して断面円柱形状等の棒状の部材を差し込むことにより、複数の第一保持部材40が互いに連結されてもよい。
【0068】
本実施形態に開示された開口部用防水シートの保持方法は、構造物1の開口部2を開閉する開閉体に対して開閉体よりも屋外側に設置されて構造物1と開閉体とを一体に覆うシート10を保持する開口部用防水シートの保持方法であって、次の2つの手順を含んでいる。
【0069】
手順の1つは、第一保持部材40を床面8に載置する手順であり、他の手順は、床面8を覆うシート10を間に挟んで、第一保持部材40を床面8側から、第二保持部材50を床面8側と反対側から互いに嵌め合わせる手順である。2つの手順は、いずれを先に実行してもよく、また並行して実行されてもよい。
【0070】
なお、シート10および開口部用防水シートの保持機構1−1を適用可能な開閉体としては、スラット以外に、パイプ、パネルやシート状物、ネット状物を開閉方向へ単数もしくは複数連接してなる態様、あるいはスラット、パネル、パイプ、シート状物、ネット状物等を適宜に組み合わせてなる態様のものが挙げられる。
【0071】
本実施形態に係るシート10は、シャッターカーテン4と、床面8と、壁面3a,3bとを一体に覆うものであったが、シート10は、少なくともシャッターカーテン4と床面8とを一体に覆うものであればよい。例えば、シャッターカーテン4と床面8とを覆うシート10とは別に、シャッターカーテン4と壁面3a,3bとを一体に覆うシートが設置されてもよい。
【0072】
[第1実施形態の第1変形例]
第1実施形態の第1変形例について説明する。
図7は、第1実施形態の第1変形例に係る開口部用防水シートの保持機構1−2を示す鉛直断面図である。本変形例に係る保持部材30において、上記第1実施形態の保持部材30と異なる点は、第二保持部材50が床面被覆部12を床面8に向けて押圧する押圧部52を有する点である。
【0073】
図7に示すように、押圧部52は、断面視における第二保持部材50の周方向の端部に形成されており、径方向の外側に向けて突出している。押圧部52は、板状に形成されており、第二保持部材50の一端から他端まで軸方向に設けられている。第二保持部材50は、押圧部52と第二支持部43とが床面被覆部12を間に挟んで対向するように、第一保持部材40に対して嵌め合わされる。保持部材30が保持嵌合状態で床面8に載置されたときに、押圧部52の先端部が床面被覆部12を床面8に向けて押圧する。これにより、床面被覆部12のめくれ上がりや床面被覆部12と床面8との隙間の発生が抑制される。
【0074】
なお、押圧部52は、床面被覆部12を床面8に向けて押圧することに代えて、床面被覆部12を第二支持部43に向けて押圧するようにしてもよい。例えば、押圧部52の先端部が、床面被覆部12を第二支持部43の先端部に向けて押圧するようにしてもよい。このようにすれば、第二支持部43と床面被覆部12との密着性を高めることが可能である。また、開口部2の幅方向に沿って第一保持部材40を互いに隙間をあけて配置した場合であっても、その隙間部分における床面被覆部12と床面8との隙間の発生を抑制することができる。
【0075】
[第2実施形態]
図8および
図9を参照して、第2実施形態について説明する。第2実施形態については、上記第1実施形態で説明したものと同様の機能を有する構成要素には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
図8は、第2実施形態に係る開口部用防水シートの保持機構2−1を示す斜視図、
図9は、第2実施形態に係る開口部用防水シートの保持機構2−1を示す鉛直断面図である。第2実施形態に係る開口部用防水シートの保持機構2−1において、上記第1実施形態の開口部用防水シートの保持機構1−1と異なる点は、壁部3に対してシート10を保持する保持部材60を有する点である。
【0076】
従来、シート10を壁面3a,3bに固定する際に、固い部材で壁面3a,3bとの間にシート10を挟みながら固定する方法が一般的であった。こうした方法では、ネジ等による固定と、シート10の挟み込みとを同時に行うため、複雑な作業が必要となる。また、ネジ穴がシート10を貫通するため、その部分からの水漏れが発生するという問題がある。
【0077】
図8に示すように、本実施形態に係る保持部材60は、構造物1の壁面3b(3a)に設置される第三保持部材70と、壁面3b(3a)を覆うシート10を挟んで第三保持部材70と嵌め合わされる第四保持部材80とを有する。本実施形態に係る開口部用防水シートの保持機構2−1によれば、第三保持部材70を壁面3a,3bに取り付ける作業と、シート10を固定する作業とが独立している。このため、シート10にしわが発生しにくく、またネジ孔等の漏水部分が生じない。
【0078】
本実施形態に係る第三保持部材70は、円筒形状のパイプ状の部材である。第三保持部材70は、シート10を開口部2に設置する前に、予め壁面3a,3bに固定される。第三保持部材70は、例えば、金属製や樹脂製のものであり、ビス等の固定部材によって壁面3a,3bに対して固定される。第三保持部材70は、床面8から所定の高さ位置まで開閉方向に延在するように設置される。第三保持部材70の長さは、例えば、シャッターカーテン4の所定部4bの開閉方向の長さに応じて定められている。
【0079】
シート10は、壁面被覆部13が第三保持部材70と壁面3a,3bとを一体に覆うように開口部2に設置される。第四保持部材80は、第三保持部材70との間に壁面被覆部13を挟んで第三保持部材70と嵌め合わされる。壁面被覆部13を第三保持部材70に向けて押し付けながら第四保持部材80を嵌め合わせることで、壁面被覆部13がしわになりにくいという利点がある。また、断面C字あるいはΩ字形状の第四保持部材80の弾性変形にて壁面被覆部13を挟むため、巻き付け角度が向上し、強固な固定となる。第三保持部材70と第四保持部材80とは着脱自在であるため、何度も繰り返して使用することができ、かつ調整も容易である。またシート10の取り付け時にネジ止め等の作業が不要であり、迅速な作業となる。
【0080】
図9は、第三保持部材70と第四保持部材80とが壁面被覆部13を間に挟んで嵌め合わされた保持嵌合状態の保持部材60を示す断面図である。本実施形態に係る第四保持部材80は、断面C字あるいはΩ字形状の部材である。第四保持部材80は、例えば、上記第1実施形態の第二保持部材50と同様の素材で形成され、同様の変形性を有するものである。第三保持部材70の外周面の直径と、第四保持部材80の内周面の直径とは等しい。これにより、壁面被覆部13を間に挟んで第三保持部材70と第四保持部材80とが嵌め合わされたときに、第三保持部材70や第四保持部材80と壁面被覆部13との間に隙間が生じることが抑制される。
【0081】
第四保持部材80は、押圧部81を有する。押圧部81は、断面視における第四保持部材80の周方向の両端部に形成されている。押圧部81は、保持嵌合状態で壁面被覆部13を壁面3a,3bに向けて押圧する。
【0082】
一つの第三保持部材70に対して一つの第四保持部材80が組み合わされても、複数の第四保持部材80が組み合わされてもよい。一つの第三保持部材70に対して一つの第四保持部材80が嵌め合わされるときには、第三保持部材70と第四保持部材80とが同じ長さであることが好ましい。
【0083】
なお、壁面3a,3bに対する第三保持部材70の固定方法は、ビスによるものに限らず、両面テープや接着剤等によるものでもよい。
【0084】
[第2実施形態の第1変形例]
第2実施形態の第1変形例について説明する。
図10は、第2実施形態の第1変形例に係る開口部用防水シートの保持機構を示す斜視図である。本変形例では、床面8と壁面3a,3bとが交わる隅部9において第五保持部材90によってシート10が保持される。
【0085】
第五保持部材90は、床面8に載置された第一保持部材40と、壁面3a,3bに設置された第三保持部材70とを互いに接続することができる。第五保持部材90は、第一保持部材40および第三保持部材70とそれぞれ嵌め合わせることが可能である。第五保持部材90を設置する場合、第一保持部材40の嵌合部41の外径と、第三保持部材70の外径とを統一することが好ましい。第五保持部材90は、可撓性を有しており、床面8と壁面3a,3bとがなす隅部9に沿って折り曲げ可能である。これによって、折り曲げ部分よりも一端側を床面8に沿って延在させ、他端側を壁面3a,3bに沿って延在させることが可能である。
【0086】
第五保持部材90の一端側を床面被覆部12を挟んで第一保持部材40に嵌め合わせ、他端側を壁面被覆部13を挟んで第三保持部材70に嵌め合わせることができる。これにより、第五保持部材90を介して第一保持部材40と第三保持部材70とを接続することができる。このようにすれば、隅部9とシート10との隙間を低減し、隅部9からの浸水を抑制することができる。
【0087】
また、第五保持部材90によって、第一保持部材40から押し出される空気を第三保持部材70に逃がすことができる。例えば、第一保持部材40の空間部23から水圧によって空気が押し出された場合に、その空気は第五保持部材90を介して第三保持部材70の円筒形状の管部に送られ、外部に放出される。このように空気の逃げ道を確保することで、第一保持部材40と床面8との密着性を向上させることができる。
【0088】
なお、第五保持部材90は、隅部9において床面8と壁面3a,3bとがなす角度に応じて予め屈曲した形状のものであってもよい。
【0089】
[第3実施形態]
図11を参照して、第3実施形態について説明する。第3実施形態については、上記各実施形態で説明したものと同様の機能を有する構成要素には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
図11は、第3実施形態に係る開口部用防水シートの保持機構3−1を示す斜視図である。本実施形態に係る開口部用防水シートの保持機構3−1では、壁面とフラットなシャッターカーテン4に対して設置されるシート10を適切に保持し、浸水を抑制することができる。
【0090】
図11に示すシャッターカーテン4は、屋外側を向く壁面3cに対してシャッターカーテン4がほぼ同一平面上に配置されるフラットタイプのものである。こうしたシャッターカーテン4の場合、
図8に示すような入り隅納まりのシャッターカーテン4の場合と異なり、開口部2の幅方向において互いに対向する壁面3a,3bに第三保持部材70を設置することができないことがある。これに対して、屋外側を向く壁面3cに第三保持部材70を設置することが考えられる。この場合、床面8に設置する保持部材と壁面3cに設置する保持部材とを連結するためには、床面8用の保持部材を屈曲させることが望ましい。
【0091】
本実施形態に係る床面8用の保持部材130は、屈曲部100を有する。保持部材130は、屈曲部100を有することにより、シート10の縁部を適切に保持し、浸水を抑制することができる。保持部材130は、屈曲部100を利用して、シャッターカーテン4を囲むようにして配置可能である。屈曲部100は、例えば、上記第1実施形態に係る第一保持部材40を予め屈曲させた形状とし、これに第二保持部材50を嵌め合わせることで実現可能である。第二保持部材50は、第一保持部材40と同様に予め屈曲させておくようにしても、第一保持部材40に合わせて屈曲可能な可撓性のものとしてもよい。
【0092】
なお、第一保持部材40は、上記第1実施形態のように床面8に載置されるものに代えて、予め床面8に固定されるものとされてもよい。床面8に固定される第一保持部材40は、例えば、上記第2実施形態の第三保持部材70と同様のパイプ状のものであってもよい。
【0093】
上記の各実施形態および変形例に開示された開口部用防水シートの保持機構1−1,1−2,2−1,3−1および開口部用防水シートの保持方法によれば、開閉体によって開閉される開口部からの浸水を抑制することができる。また、上記の各実施形態および変形例に開示された開口部用防水シートの保持機構1−1,1−2,2−1,3−1の少なくとも一つとシート10とを有する開口部の防水装置によれば、開閉体によって開閉される開口部からの浸水を抑制することができる。
【0094】
上記の各実施形態および変形例に開示された内容は、適宜組み合わせて実行することができる。