特許第6096439号(P6096439)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6096439
(24)【登録日】2017年2月24日
(45)【発行日】2017年3月15日
(54)【発明の名称】成長ホルモン分泌促進剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 36/63 20060101AFI20170306BHJP
   A61P 5/06 20060101ALI20170306BHJP
   A23L 33/105 20160101ALI20170306BHJP
【FI】
   A61K36/63
   A61P5/06
   A23L33/105
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-191760(P2012-191760)
(22)【出願日】2012年8月31日
(65)【公開番号】特開2014-47168(P2014-47168A)
(43)【公開日】2014年3月17日
【審査請求日】2015年6月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006769
【氏名又は名称】ライオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鎌田 育子
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 究
(72)【発明者】
【氏名】五木田 智夫
【審査官】 鳥居 福代
(56)【参考文献】
【文献】 特表2011−503009(JP,A)
【文献】 特開2010−064992(JP,A)
【文献】 特開2007−131541(JP,A)
【文献】 特開2006−347946(JP,A)
【文献】 特開2004−269361(JP,A)
【文献】 本郷利憲 ほか監修,標準生理学,株式会社 医学書院,2005年,第6版,p.882-888「成長ホルモン」
【文献】 小児保健研究,2005年,第64巻, 第6号,p.779-784
【文献】 Geriatric Medicine,2004年,Vol.42, No.9,p.1127-1131
【文献】 日本臨床 ,2008年,第66巻, 増刊号2,p.261-270
【文献】 Acta Biol. Med. Exp.,1989年,Vol.14, No.1,p.17-29
【文献】 Fitoterapia,2007年,Vol.78, No.2,p.85-106
【文献】 Phytomedicine,2011年,Vol.18, No.6,p.479-485
【文献】 アディポサイエンス,2008年,Vol.5, No.2,p.151-159
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 36/00−36/9068
A23L 33/105
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セイヨウトネリコまたはセイヨウトネリコエキスを有効成分として含有する成長ホルモン分泌促進剤。
【請求項2】
セイヨウトネリコエキスが、セイヨウトネリコの種子の抽出エキスである請求項に記載の成長ホルモン分泌促進剤。
【請求項3】
請求項1または2に記載の成長ホルモン分泌促進剤を含有する成長ホルモン分泌促進組成物
【請求項4】
請求項1または2に記載の成長ホルモン分泌促進剤、若しくは請求項3に記載の成長ホルモン分泌促進組成物を含有する、成長ホルモン分泌促進用食品用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成長ホルモン分泌促進剤に関する。詳しくは、トネリコ属植物またはその抽出エキスを有効成分として含有する成長ホルモン分泌促進剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
成長ホルモン(以下、GHと略記する場合もある)は、脳下垂体から分泌され、骨代謝やタンパク質、糖、脂肪、電解質代謝に関与している。成長ホルモン分泌の不全は、小児期においては発育障害につながり、成人期では種々の代謝異常や心血管障害の危険因子にもなる。また、健常者であっても、加齢に伴って成長ホルモンの分泌はより低下し、高齢者においては若年者に比べて相対的に成長ホルモン分泌不全の状態にあることが知られており、それが高齢者の生活の質の低下をもたらしているとの指摘もある。
【0003】
上記各年代における成長ホルモン分泌不全に対し、成長ホルモンそのものを投与することにより、小児期では発育障害の改善や、成人期では代謝異常などの危険因子の軽減、さらに高齢者では生活の質が向上するなどの効果が得られることが知見されている。しかし、成長ホルモンそのものを投与する方法は、投与量の制御などを厳格に実行する必要があり、医療専門家のコントロールが必要である。また、成長ホルモンはペプチドであることから経口投与ができないため、成長ホルモン投与には、注射による投与が必要となり、投与が侵襲的となる問題点もある。
【0004】
これに対して、生体に投与することにより生体内の成長ホルモンの分泌を促進する作用を有する物質があり、これらの成長ホルモン分泌促進物質には経口投与可能なものがある。この点を考慮して、成長ホルモンそのものを投与する代わりに、経口投与可能な成長ホルモン分泌促進物質を用いて、体内の成長ホルモンの分泌促進を図る方法が提案されている。この成長ホルモン分泌促進物質の投与による生体内の成長ホルモンの分泌促進は、成長ホルモンそのものを直接生体に投与するものではないため、作用が穏やかであり、より安全な成長ホルモン分泌不全対応策であると考えられている。
【0005】
かかる経口投与可能な成長ホルモン分泌促進物質として、食物繊維等のプレバイオティクスや有胞子乳酸菌等のプロバイオティクス(特許文献1:特開2007−131541号公報)、大豆蛋白由来ペプチド(特許文献2:特開2006−347946号公報)、乳酸菌発酵で得られるγ−アミノ酪酸(特許文献3:特開2004−269361号公報)などが提案されている。
【0006】
しかしながら、これら従来の成長ホルモン分泌促進物質の効果は満足されるものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−131541号公報
【特許文献2】特開2006−347946号公報
【特許文献3】特開2004−269361号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、成長ホルモン分泌促進効果に優れ、かつ経口投与可能な成長ホルモン分泌促進剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、トネリコ属植物またはその抽出エキスが成長ホルモンの分泌を効果的に促進することを知見した。
本発明は、上記知見に基づいてなされたものであり、下記構成を採用した成長ホルモン分泌促進剤を提供する。
[1].トネリコ属植物またはその抽出エキスを有効成分として含有する成長ホルモン分泌促進剤。
[2] トネリコ属植物がセイヨウトネリコである上記[1]に記載の成長ホルモン分泌促進剤。
[3] トネリコ属植物の抽出エキスがセイヨウトネリコエキスである上記[1]に記載の成長ホルモン分泌促進剤。
[4] セイヨウトネリコエキスが、セイヨウトネリコの種子の抽出エキスである上記[3]に記載の成長ホルモン分泌促進剤。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、経口投与可能で成長ホルモン分泌促進効果に優れた成長ホルモン分泌促進剤を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の成長ホルモン分泌促進剤は、トネリコ属植物またはトネリコ属植物の抽出エキスを有効成分とする。トネリコ属植物とはトネリコ属の植物体の一部または全部を意味し、トネリコ属植物の抽出エキスとは、トネリコ属植物から抽出されるエキスを意味する。本発明においては、有効成分として、トネリコ属植物、およびトネリコ属植物の抽出エキスのいずれか、或いはこれらを組み合わせて使用することができるが、投与の容易さおよび製剤化の容易さの面から、トネリコ属植物の抽出エキスを有効成分とすることが好ましい。
【0012】
トネリコ属(Fraxinus属)植物は、モクセイ科(Oleaceae)の双子葉植物である。トネリコ属植物には、落葉および常緑のもの、高木および低木のものがあり、本発明ではいずれも使用できる。トネリコ属植物は例えば北半球(例えばヨーロッパ、東アジア、西アジア、北米および地中海地方)に分布しているが、これ以外の地域に分布するものであってもよいし、また、天然に生息するものでも人工的に栽培されたものであってもよい。トネリコ属植物の例としては、アメリカトネリコ(F.americana L.)、シナトネリコ(F.chinensis Roxb.)、セイヨウトネリコ(F.excelsior L.、慣用名Common AshまたはEuropean Ash)、シマトネリコ(F.griffithii C.B.Clarke)、トネリコ(F.japonica Bl.)、ヒメトネリコ(F.bungeana DC.)ケアオダモ(F.lanuginosa Koidz.)、ヤチダモ(F.mandshurica Rupr.var. japonica Maxim.)、マンナノキ(F.ornus L.)、シオジ(F.spaethiana Lingelsh.)、マルバアオダモ(F.sieboldiana Bl.)、ニグラトネリコ(F.nigra Marsh.)およびF.paxiana Lingelsh.などがある。このうち、セイヨウトネリコ(Fraxinus excelsior L.)が好ましい。セイヨウトネリコは、花序を側生する落葉高木の植物である。セイヨウトネリコは主にヨーロッパから西アジアに分布しているが、これ以外に分布するものであってもよいし、また、天然に生息するものでも人工的に栽培されたものであってもよい。
【0013】
本発明の有効成分としてのトネリコ属植物は、トネリコ属植物の植物体の一部および全部のいずれであってもよく、トネリコ属植物の種子が好ましい。また、植物体の一部および全部をそのまま用いてもよく、それらに濃縮、乾燥、粉砕などの加工を施したものであってもよい。投与の容易さおよび製剤化の容易さからは、乾燥および粉砕後の粉末であることが好ましい。トネリコ属植物の形態は特に限定されず、粉末、ペーストであってもよい。トネリコ属植物は1種を用いてもよいし、植物種または植物体の部位の異なる2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0014】
トネリコ属植物の抽出エキスは、トネリコ属植物(植物体の全部または一部)から抽出溶媒を用いて抽出できる。トネリコ属植物の抽出部位は特に限定されず、植物体の全部であってもよいし、一部(例えば葉、樹皮、木部、種子、花)であってもよいが、種子であることが好ましい。抽出溶媒としては例えば、水、有機溶媒(例えば、アルコール、アセトンなどから選ばれる1種の溶媒、または2種以上の混合溶媒)、水および有機溶媒の混合液を使用できる。中でも水、水とアルコールとの混合液、およびアルコールが好ましい。アルコールとしては、エタノール、メタノールが好ましい。抽出時間および温度は、トネリコ属植物の抽出部位、溶媒の種類などによって適宜定めることができる。抽出時間は、約2時間〜約24時間が好ましい。抽出温度は20℃〜100℃が好ましく、50℃〜70℃がより好ましい。トネリコ属植物の抽出エキスは、トネリコ属植物から抽出された粗抽出エキスであってもよいし、粗抽出エキスに濃縮、乾燥、粉砕などの加工を施したものであってもよい。さらに、分配法による処理、精製処理(例えば、イオン交換樹脂、カラムなどを利用して吸着処理後、溶媒による溶出、その後必要によりさらに濃縮処理)により不純物を除去したものも使用することができる。
【0015】
トネリコ属植物の抽出エキスの形態は特に限定されず、粉末、ペーストであってもよい。トネリコ属植物の抽出エキスは1種を用いてもよいし、抽出条件などの異なる2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0016】
本発明における有効成分は、セイヨウトネリコの種子またはその抽出エキスであることが好ましく、セイヨウトネリコの種子の抽出エキスであることが好ましい。
トネリコ属植物の抽出エキスは市販されており、市販品を用いることができる。セイヨウトネリコの抽出エキスの市販品としては例えば、「fraxipure(商品名)」(NATUREX社)などが挙げられる。
【0017】
(本発明の成長ホルモン分泌促進剤による、その有効成分であるトネリコ属植物またはその抽出エキスの投与量)
本発明の成長ホルモン分泌促進剤による、その有効成分であるトネリコ属植物またはその抽出エキスの投与量は、本発明の効果を損なわない限り特に制限は無く、また適応される被投与生体の年齢、状態などの種々の要因により適宜変えることができる。しかし、被投与生体に成長ホルモン分泌過剰などの問題がない場合では、目的の効果を得る投与量としては、有効成分がトネリコ属植物である場合、セイヨウトネリコを例に取ると、通常1日0.045g〜18gであり、0.2g〜13.5gが好ましく、0.45g〜9gがより好ましい。有効成分がトネリコ属植物抽出エキスである場合、セイヨウトネリコエキスを例に取ると、通常1日10mg〜4000mg(固形分として)であり、50mg〜3000mgが好ましく、100mg〜2000mgがより好ましい。なお、固形分は、乾燥減量試験法(例えば、赤外線水分計にて105℃で恒量になるまで測定)により得られる値である。
【0018】
(本発明の成長ホルモン分泌促進剤の最終製品への使用)
本発明の成長ホルモン分泌促進剤は、有効成分として成長ホルモン分泌促進作用を有するトネリコ属植物またはその抽出エキスを含有しており、このトネリコ属植物(セイヨウトネリコなど)は、従来より強壮、慢性リウマチ、足指の通風の治療用、または漢方薬として、一部地域(モロッコの南東地域など)では食品としても利用されている。したがって、トネリコ属植物またはトネリコ属植物の抽出エキスを有効成分とする本発明の成長ホルモン分泌促進剤は、生体に対し安全であり、かつ効果的に成長ホルモン分泌を促進させることができる。これらの事実から、本発明の成長ホルモン分泌促進剤は、そのままの形態で、あるいは、飲食品、医薬品、医薬部外品等の最終製品に添加して、生体に投与することができ、投与によって生体の成長ホルモン分泌不全を改善することができる。適用する最終製品としては、特に、健康食品などの機能性食品が有用である。
本発明の成長ホルモン分泌促進剤は、トネリコ属植物またはトネリコ属植物の抽出エキスを有効成分としていればよく、トネリコ属植物およびトネリコ属植物の抽出エキス以外の成分を有していてもよい。その他の成分の一例としては、主に貯蔵および流通における安定性を確保する成分(例えば保存安定剤など)が挙げられる。その他、目的の最終製品(例えば、飲食品、医薬品、医薬部外品など)を構成する諸成分から選ばれる1または2以上の種類の成分(好ましくは1〜3種類程度、より好ましくは1種類程度)を予め含有しておくことも可能である。
【0019】
本発明の成長ホルモン分泌促進剤は、トネリコ属植物またはトネリコ属植物の抽出エキス以外の成分と組み合わせて成長ホルモン分泌促進組成物としてもよい。
【0020】
本発明の成長ホルモン分泌促進組成物に含まれる、トネリコ属植物およびトネリコ属植物の抽出エキス以外の成分は、本発明の目的を損なわない限り、特に限定されない。例えば、賦形剤、崩壊剤、結合剤、滑沢剤、コーティング剤、着色剤、発色剤、矯味剤、着香剤、酸化防止剤、防腐剤、呈味剤、酸味剤、甘味剤、強化剤、ビタミン剤、膨張剤、増粘剤、界面活性剤などの中から、成長ホルモン分泌促進効果、製剤に必要な諸特性(例えば、製剤安定性)を損なわないものであって、最終製品の剤形に応じたものを1種または2種以上選択することができる。また、トネリコ属植物およびトネリコ属植物の抽出エキス以外の成分は、トネリコ属植物およびトネリコ属植物の抽出エキス以外の、成長ホルモン分泌促進効果を有する成分であってもよい。
【0021】
本発明の成長ホルモン分泌促進組成物の投与量は、上記本発明の成長ホルモン分泌促進剤の投与量の説明中で示した、トネリコ属植物およびトネリコ属植物の抽出エキスの量の範囲となるように調整すればよい。
【0022】
本発明の成長ホルモン分泌促進組成物は、そのままの形態で、最終製品(例えば、飲食品、医薬品、医薬部外品など)として用いることができる。また、飲食品用の添加剤、医薬用の添加剤、医薬部外品用の添加剤として用いることができる。これにより、飲食品、医薬品、医薬部外品に、成長ホルモン分泌促進効果を付与することができる。
【0023】
(本発明の成長ホルモン分泌促進剤の投与形態)
本発明の成長ホルモン分泌促進剤および成長ホルモン分泌促進組成物の投与形態としては、それ自体を直接投与することも可能であるが、通常、上述の最終製品に添加して得られた最終製品を生体に投与する。
【0024】
本発明の成長ホルモン分泌促進剤および成長ホルモン分泌促進組成物をそのままで投与する場合や、医薬品に添加した形態で投与する場合の投与形態としては、経口投与(口腔内投与、舌下投与など)、非経口投与(静脈内投与、筋肉内投与、皮下投与、経皮投与、経鼻投与、経肺投与など)などが可能であり、特に限定されないが、生体への侵襲がない経口投与が好ましい。
【0025】
また、本発明の成長ホルモン分泌促進剤および成長ホルモン分泌促進組成物を飲食品に添加して使用する場合の投与形態は、通常、経口投与となる。
また、本発明の成長ホルモン分泌促進剤および成長ホルモン分泌促進組成物それ自体を投与する際の剤形、あるいは最終製品に添加して投与する際の最終製品の剤形についても、特に限定はない。経口投与する場合の剤形としては、錠剤、カプセル剤、粉末剤、ソフトカプセル、粉末飲料、粉末スープ、液体飲料、液体スープ、その他の通常の各種飲食品形態などの各種形態の剤形が可能である。
【実施例】
【0026】
以下に実施例を用いて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定
されるものではない。
(実施例)
本実施例では、本発明に係る成長ホルモン分泌促進剤のサンプルとして、セイヨウトネリコエキスを配合したカプセル(2カプセル中のセイヨウトネリコエキスとして500mg含有)を用意した。また、比較例のサンプルとして、セイヨウトネリコエキスを含まないプラセボのカプセルを用意した。
本発明に係る成長ホルモン分泌促進剤の実施例サンプル、及び比較例サンプルの各組成の詳細は、以下の(表1)に示すとおりであった。
セイヨウトネリコエキス(実施例のサンプル)は、NATUREX社製の「fraxipure(商品名)」を用いた。コントロールとしては、結晶セルロース(比較例のサンプル)を用いた。
【0027】
【表1】
【0028】
(成長ホルモン分泌促進効果の評価)
成人男女11名をパネラーにして、これら11名のパネラーに上記実施例サンプルを就寝1時間前に摂取してもらい、翌朝一番尿の尿中の成長ホルモン量を測定した。また、同様にして、同じパネラー11名に比較例サンプルを就寝1時間前に摂取してもらい、翌朝一番尿の尿中の成長ホルモン量を測定した。各サンプルの投与及び測定の実施回数は、パネラー各一人につきそれぞれ4回とした。なお、各パネラーの平均睡眠時間は、6.5時間であり、最も睡眠時間の短いパネラーの睡眠時間と最も睡眠時間が長いパネラーの睡眠時間の差は、2時間であり、大差はなかった。
【0029】
成長ホルモン分泌促進効果の評価は、上記尿中の成長ホルモン(GH)量の増加の程度により評価した。
(尿中のGH量の増加と体内のGH分泌 量の増加との相関関係)
生体内のGH量に関しては、早朝第1尿中のGH量が夜間入眠後の3時間の血中GH量とよく相関するので、早朝第1尿中のGH量測定が採血によるGH量測定の代替測定に用い得ることが報告されている(尿中成長ホルモン測定の臨床的意義、Yasuko Itagane et al.,小児科、金原出版(株) 、1989, vol.80, N0.6, p629-636)。
(尿中のGH量測定)
尿中のGH量測定は、化学発光酵素免疫測定法(CLEIA法)を用い、外部臨床検査会社((株)エスアールエル社)に依頼して測定した。CLEIA法は、非特許文献(安達ら,ホルモンと臨床,(有)医学の世界社,1997年発行、Vol.45,p.223-235)にも記載されている。この記載にもあるように、CLEIA法は、尿中のGHとマイクロプレートのウェルに固相化した抗GHマウスモノクロナール抗体とを反応させ、さらにビオチン化抗GH抗体を反応させ、ここにペルオキシダーゼ標識ストレプトアビジンを加え、さらに過酸化水素とルミノールを加えると、GH量に応じた強度の発光を生じるので、この発光強度を測定し、検量線より尿中のGH量を定量する方法である。この実施例での評価では、同時に尿中のクレアチニン濃度を測定し、クレアチニン補正したGH量とした。
【0030】
上記においても述べたが、実施例サンプル(セイヨウトネリコエキスカプセル)の摂取、比較例サンプル(プラセボカプセル)の摂取は、共に、パネラー一人につきそれぞれ繰り返し4回実施した。個々人により尿中のGH量が異なることから、4回ずつの尿中のGH量(pg/mg・Cr)の平均値を算出し、パネラーごとのプラセボ摂取に対する尿中のGH量変化率(%)を下式(1)により算出した。
【0031】

パネラー一人の尿中GH量変化率(%)=(セイヨウトネリコエキス摂取後の尿中GH量平均値)/(プラセボ摂取後の尿中GH量平均値)×100 ・・・(1)

上述のようにして得られた、プラセボ摂取に対するセイヨウトネリコエキスカプセルの摂取による尿中GH量変化率の11名の平均値は、150.0%であった。
【0032】
以上から、セイヨウトネリコエキスの摂取により生体のGH分泌が効果的に促進されることが、確認できた。
【0033】
本発明の成長ホルモン分泌促進剤を用いた各種組成物(最終製品)の処方例を以下に示す。
(処方例1:錠剤(1))
セイヨウトネリコエキス10mg、乳糖60mg、結晶セルロース80mg、カルボキシメチルセルロース−Ca5mg、ショ糖脂肪酸エステル5mgを常法どおり打錠し錠剤を製造した。
(処方例2:錠剤(2))
セイヨウトネリコエキス250mg、結晶セルロース40mg、カルボキシメチルセルロース−Ca5mg、ショ糖脂肪酸エステル5mgを常法どおり打錠し錠剤を製造した。
(処方例3:錠剤(3))
以下の原料を用いて、常法により錠剤を製造した。
【0034】
造粒品(108mg)、セイヨウトネリコエキス(20mg)、ソルビトール(110mg)、部分α化でんぷん(15mg)、リン酸マグネシウム(75mg)、ステアリン酸カルシウム(3mg)、メントール粒子(40mg)、アスパルテーム(5mg)。
【0035】
上記造粒品は、エリスリトール(1935g)およびコーンスターチ(300g)に、ヒドロキシプロピルセルロース6質量%水溶液(4000g)を加えることにより、製造した。造粒品の平均粒径は290μmであった。
(処方例4:ソフトカプセル)
以下の原料を用いて、常法によりソフトカプセルを製造した。
【0036】
まず、以下の原料を混合して内容物を調製した:セイヨウトネリコエキス(20mg)、植物油脂(110mg)、グリセリン脂肪酸エステル(10mg)、蜜蝋(10mg)
上記内容物と、豚ゼラチンとを用いてソフトカプセルを製造した。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明によれば、経口投与可能で成長ホルモン分泌促進効果に優れた成長ホルモン分泌促進剤を提供することができる。