(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明を実施するための形態を給水装置の実施例について、
図1〜
図17を用いて説明する。
【0019】
図1は、本発明実施例の給水装置の配管系統図でポンプ2台を例に示している。1台でも3台以上でも良い。1は水源である受水槽であり、水源は水道の配水管であってもよい。2は受水槽の水位検出手段であり、受水槽1内に設置した複数のレベルE1〜E5を検出する。1aは受水槽1に水道水を注入する例えばボールタップ、3−1、3−2は吸込み管、4−1〜4−4は仕切り弁、5−1はモータ6−1によって駆動され、吸込み管3−1を介して吸込み側の水を需要側へ送水するポンプ(ここでは1号機と呼ぶ)である。同様に5−2はモータ6−2によって駆動され、吸込み管3−2を介して吸込み側の水を需要側へ送水するポンプ(ここでは2号機と呼ぶ)である。
【0020】
8−1、8−2は逆止め弁、9は給水管、10は前記給水管に取り付けられた内部に空気を有する圧力タンク、11(SW)は給水管9に備わり、ここの圧力を検出して圧力信号を発する圧力検出手段(圧力センサ)である。7−1及び7−2は前記逆止め弁8−1及び8−2の上流側に位置して給水管9の途中に設置された1号機側及び2号機側流量スイッチであり、過少水量使用状態となると第1の接点を閉じる。また、流量スイッチ7−1及び7−2は、2台目の始動流量又は停止流量となった時に第2の接点を閉じる。この流量スイッチは適宜必要に応じて使用される。12は前記圧力検出手段及び流量スイッチ等の信号を取り込み前記モータ6−1、6−2に運転指令信号出力する制御装置である。尚、モータ6−1,6−2は商用電源で直接駆動する定速モータでも、インバータ等駆動する可変速モータであっても良い。
【0021】
図2は定速モータで駆動するポンプ2台を運転した場合を例にした運転特性図であり、横軸に使用水量、縦軸に全揚程を示す。曲線Aはポンプ1台運転時のQ−H性能曲線、曲線Bはポンプ2台並列運転時の合成したQ−H性能曲線(圧力ヘッドを変えずに流量を2倍にして合成したもの)、本例では、同一ポンプ性能を有するポンプを2台並列運転した場合で示したが、性能が異なっても良い。
【0022】
ここで、Ponはポンプの始動圧力ヘッドであり、2台目以降の始動指令を発する場合には同時始動を避けるために所定時間の確認時間を設けている。即ち、1台目のポンプは始動圧力Pon以下で始動し、2台目のポンプは始動圧力Pon以下となったら所定時間後に再度、Pon以下か確認し、真であれば2台目のポンプを始動させ、否であれば始動させず現状の運転状態を維持する。2台並列運転の状態から使用水量が減少しQ1未満となると、圧力センサの検出した給水圧力がPB以上となっているか所定時間で確認し、真であれば、先行した可変速ポンプ5−1を停止させ、5−2の1台運転に減台となる。更に、使用水量が減少し、過少水量Qmin以下となると、流量スイッチ7−2(5−1の場合は7−1)が動作し、所定時間経過後にポンプは停止し全停止となる。水の使用により、次に運転するポンプは、停止したポンプではなく、待機中の別のポンプとなり交互運転する。
【0023】
3台目以降の始動については前述で明らかなので説明を省く。又、POFFはポンプの停止圧力ヘッドであり、2台目以降の停止指令を発する場合には、同時停止を避けるために所定時間の確認時間を設けている。この停止確認時間も、始動の場合と同じなので説明を省く。
【0024】
更に、Q1はポンプ1台始動時の水量、Q3はポンプ2台始動時の水量、Q2はポンプ1台停止時の水量、Q4はポンプ2台停止時(2台から1台に減台)の水量、Qminは流量スイッチによってポンプを停止する際の停止流量を示す。
【0025】
図3は可変速モータで駆動するポンプ2台並を列運転した場合を例にした運転特性図であり、
図2と同じ記号で示すものは同じであるから説明を省く。
【0026】
Fは、
図1の給水系に最大水量を流した時の配管抵抗であり、給水圧力を所定圧力(例えば推定末端圧力一定制御)に制御する際の目標となる。本実施例では直線近似している。曲線Aは例えばインバータ周波数f0で運転した時のポンプ1台運転時のQ−H性能曲線、同様に曲線C,D、Eはそれぞれインバータ周波数f1、f2、f3で運転した時のポンプ1台運転時のQ−H性能曲線、曲線Bはインバータ周波数f0で運転した時のポンプ2台並列運転時のQ−H性能曲線(1台運転のQ−H曲線Aの全揚程を一定にして水量を2倍にして合成した曲線)である。
【0027】
曲線Gは前記したように、目標である抵抗F上に給水圧力が収斂するように圧力制御する際に、1台目のポンプを周波数f0で運転し、2台目のポンプを周波数f4で運転して前記抵抗F上のPBで交わるようにしたものである。曲線Bは周波数f0でポンプ2台並列運転時の合成したQ−H性能曲線である。ここで、PAは下限側目標圧力(始動圧力Ponと等しくてもよい)、PBは中間の目標圧力、PCは上限の目標圧力である。又、周波数f3は下限側目標圧力PAを与える周波数、同様にf1、f2は中間の目標圧力を与える周波数、f0は上限目標圧力PCをそれぞれ与える周波数であり、これらの値により座標を形成する。そして、目標であるFはこれらの座標を通る直線で近似される。
【0028】
ここで、可変速ポンプの作動について説明する。説明の便宜上、全ポンプは停止しているものとして説明を進める。需要側の水の使用により給水圧力が低下し、圧力センサの検出した圧力が、始動圧力Pon(実施例ではPAとしているが異なっても良い)以下になると、可変速ポンプは5−1又は5−2が始動する。通常は1号機である5−1が先に始動する。始動後は、使用水量Qmin〜Q1の間はポンプ1台運転で抵抗F上に沿うよう推定末端圧力一定制御を行う。
【0029】
使用水量の増大によりQ1を越えると、周波数がf0となり圧力センサの検出した給水圧力がPB以下となっているか所定時間で確認し、真であれば、可変速ポンプ5−2を始動させて2台並列運転となる。否の場合は、真となるまで前述の1台運転を続ける。2台並列運転後は、使用水量Q1〜Q3の間はポンプ2台並列運転で抵抗F上に沿うよう推定末端圧力一定制御を行う。
【0030】
2台並列運転の状態から使用水量が減少してQ1未満となると、周波数をf3として圧力センサの検出した給水圧力がPB以上となっているか所定時間で確認し、真であれば、先行した可変速ポンプ5−1を停止させ、5−2の1台運転に減台となる。更に、使用水量が減少し、過少水量Qmin以下となると流量スイッチ7−2(5−1の場合は7−1)が動作し、所定時間経過後にポンプは停止し全停止となる。その後の水の使用により、次にポンプが運転されるときは、最後に停止したポンプではなく、停止して待機中の別のポンプとなり、交互運転がなされる。
【0031】
なお、前記所定時間とは、ポンプの始動頻度の抑制とポンプ無駄運転を解消を図った所定時間であり、詳細は後で述べる。更に、ここで言う推定末端圧力一定制御とは、前記したように抵抗Fを目標圧力とし、圧力センサの検出した給水圧力がこれに沿うようインバータを周波数制御してポンプの回転数を制御することである。3台以上のポンプの作動については、前述から明らかなので説明を省く。
【0032】
図4は、本発明実施例の定速モータで駆動するポンプ2台を並列運転した場合の制御回路図で、主に制御装置12の内部を示している。同図において、R、S、Tは電源、ELBは漏電遮断器であり、これ以降の系統の漏電保護を行う。R,Sは制御電源、52P1aは1号機ポンプモータIM用の開閉器の主回路接点、52P2aは2号機ポンプモータIM用の開閉器の主回路接点であり、後で述べる制御部CUからの開閉指令信号により、そのコイル52P1,52P2が励磁されることによって開閉する。49P1は1号機ポンプモータ用サーマルリレー熱動素子部、49P2は2号機ポンプモータ用サーマルリレー熱動素子部であり、過負荷によってこれらが動作することによって、その接点49P1b、49P2bを開き過負荷からそれぞれ1号機ポンプモータ、2号機ポンプモータを保護する。
【0033】
FUは制御回路の短絡保護用のヒューズ、SSは入、切スイッチ、TRは制御部CUの低電圧電源を作るためのトランスである。CUはCPU(中央演算部)、メモリM、設定表示部OP、安定化電源Z、入出力回路部I/O1〜I/O3、アナログ入力回路部D/A、入出力端子TB1〜TB6を備える制御部であり、プリント基板等で構成される。
【0034】
上記設定表示部OPは、設定部(サイクル時間設定部)17と表示部18を備え、サイクル時間設定部17では、運転モード選択、運転台数の入力、ポンプ始動頻度(回/h)の入力に基いて、サイクル時間を設定し、設定されたサイクル時間はメモリMに記憶される。
【0035】
11は圧力検出手段であり、その検出信号は入力端子TB4、アナログ入力回路部I/O3を介してCPUに取り込まれる。7−1、7−2は流量スイッチであり、これらの開閉信号は入力端子TB5,TB6を介してCPUに取り込まれる。これらの圧力信号及び流量スイッチの開閉信号はCPUを介して記憶部Mに保存される。2は受水槽1の水位検出手段であり、前述同様に水位信号を入力端子TB2、入出力回路部I/O2を介してCPUに取り込み記憶部Mに記憶する。
【0036】
図5は本発明実施例の可変速モータで駆動するポンプ2台を並列運転した場合の制御回路図である。
図4と同じ記号で示したものは同じものであるから説明を省く。同図において、ELB1、ELB2は前述した漏電遮断器ELBと同じ機能を持ち、それぞれモータ6−1,6−2駆動系の漏電遮断器である。INV1、INV2はそれぞれモータ6−1、6−2を可変速駆動するインバータであり、表示部及び設定部を有するコンソールCONS1、CONS2を備える。
【0037】
可変速モータ6−1駆動系のインバータINV1は、制御部CUからの指令によりこれのモータ開閉器52P1が励磁されてその接点52P1aを閉じ、周波数指令信号f10が出力された時に運転を始める。さらに、このときの到達信号f20を前記制御部CUに返す。尚、この到達信号f20を省略して指令信号f10と共用してもよい。可変速モータ6−2駆動系のインバータINVの動作についても、6−1の可変速駆動系と同じなので説明を省く。
【0038】
次に、以上で述べたことを制御部CUでどのように処理するかについて、タイムチャートの
図6、
図7、
図8、
図9、サイクル時間説明図の
図10、フローチャートの
図11、
図12、
図13、
図14、メモリマップ
図15により詳細に説明する。尚、CPUの処理はプログラム(メモリに記憶されている)によって処理実行される。このプログラムの処理実行内容を示したものが、フローチャートである。
【0039】
実施例の詳細を説明する前に、説明の便宜上、先ずポンプの始動頻度について説明しておく。即ち、ポンプモータの寿命等を考慮してポンプの始動頻度を1時間当たり12回程度としている。よって、実施例ではこれを12回として説明を進める。ここで、ポンプの運転時間と停止時間を合計した時間をサイクル時間と定義する。始動頻度12回としたときの設定されるサイクル時間(設計値)は、ポンプ1台運転の場合は5分(60分/12回)、ポンプ2台を交互運転する場合は2.5分(5分/2台)、ポンプ3台を交互又はロータリー運転する場合は1.7分(5分/3台)となる。ポンプ4台以上の場合は、既に自明なので説明を省く。設定されるサイクル時間の詳細は
図10の通りとなる。
【0040】
一般的に小形給水装置は小形とするために、10L程度の極小容量の圧力タンクを備えている。このため、前記した始動圧力で始動し停止圧力又は停止流量で停止するという運転方案だけでは、始動・停止が頻発して前記したサイクル時間を確保することが出来ない。そこで、ポンプ停止条件が成立していても、タイマに可変設定された強制運転時間に基づき、引続きポンプを強制運転するものである。しかし、始動・停止の頻発を防止するためサイクル時間を長くすると、強制運転の時間が長くなるので、無駄な運転も増加し電力を無駄に消費することとなる。
【0041】
これを解消するために、本発明実施例では、始動条件の成立によって運転し、停止条件が成立するまでの実運転時間と、タイマによる強制運転時間と、ポンプ停止時間との合計が予め決めたサイクル時間となるよう制御している。以下この実施例について説明する。
【0042】
図6は、実施例1を説明したタイムチャートである。タイムチャートにおいて、t0はサイクル時間、t10、t20は強制時間を含む強制運転時間、t12、t22は停止時間、t11、t21は強制時間を含まない運転時間で、全て記憶部Mに記憶されている。圧力検出手段11は給水管9の圧力ヘッドを検出し、この圧力ヘッドは前述したように記憶部Mに記憶される。さらに記憶部Mには、始動圧力ヘッドPon、停止圧力ヘッドPOFF等のパラメータが記憶されている。圧力検出手段11で検出された給水管9の圧力ヘッドは、CPUによって記憶部Mのパラメータと比較処理される。この比較により、例えば、
図6の時刻(1)において、圧力ヘッドが記憶部Mの始動圧力ヘッドPon以下となったとする。
【0043】
この結果、
図6の時刻(1)で1号機ポンプ(ここでは、1号機を先行ポンプとする。)が始動する。即ち、CPUは、出力回路部I/O1、出力端子TB1を介して開閉器のコイル52P1又は52P2、あるいは両方にON信号を出力する。可変速モータ駆動によるポンプの場合、CPUは、同時に出力端子TB3を介して速度指令信号f10、又はf30をインバータINV1、INV2に対して出力する。以下、定速ポンプも可変速ポンプも始動頻度の抑制及び無駄運転の解消は同様なので、インバータへの出力等は省略し、共通内容のみ説明する。
【0044】
同様に、時刻(2)において、圧力検出手段11が停止圧力POFFを検出したとすると、CPUはポンプ始動頻度を抑制するため、停止圧力POFFを検出しても停止しないように制御を行う。即ち、CPUは、サイクル時間t0から直前の1号機ポンプの停止時間t12を減じる演算を行い、強制運転時間t10を求めて記憶部Mに記憶する。そしてCPUは、このt10が正となるので、時刻(1)からt10の期間だけ運転を継続する指令を与える。従って、運転が時刻(2)で停止することなく継続され、t10期間後に停止する。このとき、無駄な運転時間はt10−t11(t11:強制運転を加えない運転時間)すなわち、強制運転時間t10と強制運転を加えない運転時間の差の時間となる。
【0045】
さらに、時刻(3)において、前述と同様に始動条件が成立すると、今度は2号機ポンプが始動する。そして、サイクル時間t0から2号機ポンプの直前の停止時間t22を減じる演算をCPUで行い、強制運転時間t20を求める。この場合、直前の停止時間t22がサイクル時間t0に対して大きく(t22>=t0)、演算結果が負となるので、t20=0として制御を行う。よって、強制運転時間t22を0として、強制運転を加えない時間t21の運転後の時刻(4)で、停止条件が成立するとそのまま停止し、無駄運転時間が0となる。
【0046】
すなわち、2号機ポンプについては、設定されたサイクル時間t0から2号機ポンプの運転直前の停止時間t22を減じるとその値が負になるので、強制運転時間を0(ゼロ)としている。
【0047】
上記のように本実施例によれば、各号機のポンプがサイクル時間(設計値)内に運転と停止が行えるので、ポンプの始動頻度を予め定めた所定値内することができ、無駄運転時間も少なくすることができる。
【0048】
タイムチャートの
図7は、実施例2を説明したものである。
図6の例では、特定のポンプ、即ち、追従した2号機のみが無駄運転をせず運転時間が短い運転状態となり、運転負担の均一化を阻害している。よって、実施例2はこれの改善を図ったものである。即ち、直前のポンプ停止時間を自己機の停止時間から測定するのではなく、他機の停止から自己機が始動するまでの時間としたものである。
【0049】
図7の時刻(3)において、始動条件が成立し2号機ポンプが始動している。ここで、2号機ポンプの停止時間t22を、他機である1号機ポンプの停止から、自己機(2号機)の始動までの時間とし、CPUでサイクル時間t0からt22を減じる演算を行って強制運転時間t20を求め記憶部Mに記憶される。したがって、時刻(4)において、停止条件が成立しているが停止せず、強制運転時間t20の計時が終了した時刻(5)で停止する(停止条件が成立し、且つ、強制運転時間の計時終了後)。
【0050】
実施例2は、各号機ポンプのサイクル時間内での運転、停止の時間が偏らずに行えるので、ポンプの始動頻度の予め設定した値に抑えることと、運転負担の均一化、およびポンプの無駄な運転の解消を図ることができる。
【0051】
しかし、無駄運転の解消という点では
図6の実施例1よりは劣る。これを改善するには、
図6と
図7を組み合わせれば良い(実施例3)。
【0052】
即ち、実施例3は、直前のポンプの停止時間の測定を、奇数回は他機の停止から自己機が始動するまでの時間、偶数回は自己機の停止から自己機の始動までの時間とし、強制運転時間0(ゼロ)の制御が特定ポンプに偏らなくしたものである。具体的には、
図7において、1号機の2回目(偶数回)の始動の際、停止時間を自己機の停止(1回目の停止)から自己機の始動するまでの時間を計測し、これをt12とする。結果として、サイクル時間がt0+t12(
図7そのままのt12)となる。よって、t0<t12となり、t0−t12の値が負となるので、強制運転時間t10は0(ゼロ)となる。2号機も明らかなので説明を省く。
【0053】
タイムチャートの
図8は、実施例4を説明したものである。これは、数サイクルから構成される区間1を設け、区間1内で始動頻度を所定値に合わせるようにしたものである。同図は、ポンプ2台の例で示している。即ち、始動頻度を12回/時間とした場合、1サイクル時間(運転+停止時間)は2.5分(60/(12×2))である。これの3サイクル分を区間1としているから、区間1の合計時間は7.5分である。1号機について述べれば、サイクルC11、C12では強制運転せず(強制運転時間を0として通常運転のみ)、最後のサイクルC13で始動頻度を所定値に合わせるために強制運転させるように構成する。ここで、強制運転時間t10は、CPUで3t0−(C11+C12+t12)により求める。t12は、最後のC13サイクルで始動する直前の自己機の停止時間である。
【0054】
具体的には、3t0を7.5分、C11及びC12を2分、t12を12秒とすれば、t10は3.3分となる。従って、最後のC13サイクルで3.3分間の強制運転をすることになる。2号機については、明らかなので説明を省く。このようにすると、無駄運転時間は最後のサイクルC13で生じるのみで、最小にすることが出来る。
【0055】
タイムチャートの
図9は、実施例5を説明したものである。これは、
図8の最後のサイクルに強制運転時間が、強制運転しない他のサイクルより極端に長くなるのを改善したものである。即ち、サイクルのC11、C21では、強制運転時間を設けず、C12、C13、C22、C23(図示を省略)で強制運転時間を分散して設け、最後のサイクルにのみ設けるのを避けるようにしたものである。又、停止時間は、自己機の停止から自己機の始動までの時間を測定する例で示している。
【0056】
具体的には、1号機の2回目のサイクルC12において、強制運転時間t10をサイクル時間(2サイクル分の2t0)から、これ以前のサイクル時間C11と停止時間t12を減じて、t10=2t0−(C11+t12)として求める。ここで、t0を2.5分、停止時間t22を12秒、C11を1.2分(t12が12秒、t20‘が1分)とすると、t10は1.1分となり、このサイクルでの強制運転時間が1.1分となる。2号機は2回目のサイクルは1号機と同じであるから説明を省く。又、1号機、2号機の3サイクル目は
図8と同じなので説明を省く。
【0057】
図10について説明する。
図10の運転モードは設定部17により設定され、その内容が記憶部Mに記憶される。運転モードは設定部17により選択が可能であり、ポンプが1台の場合は単独自動運転であり、始動頻度を12回/時間とすると、これを満足するサイクル時間は5分(60/12)である。ポンプが2台の場合、運転モードは、単独運転、交互運転、並列運転を選択することができる。単独運転は前記と同じなので説明を省く。交互運転及び並列運転は、2台のポンプ交互に切り替えるので、サイクル時間は2.5分(60/(12×2))となる。ポンプが3台以上の場合、図示から明らかなので説明を省略する。
【0058】
フローチャートの
図11は、定速ポンプ2台の動作を説明するフロー図であり、機器構成は前述した
図1、
図2、
図4に対応している。110ステップにおいて、初期設定を実行し、特に、t10(1号強制運転時間)、t11(1号機運転時間、タイムチャートのt11のデータが入る)、t20(2号強制運転時間)、t21(2号機運転時間、タイムチャートのt21のデータが入る)のフラグをリセットし、t12(1号停止時間)、t22(2号停止時間)のフラグをセットしておく。なお、サイクル時間t0は、
図10に示すポンプ台数と運転モードにより設定され、記憶部Mに記憶されている。本実施例はポンプ2台交互運転の例であり、t0=2.5分となっている。
【0059】
112ステップで割り込みが許可されると、
図13に示している割り込み処理(A)(B)が順番に実行される。ここでは、要点のみ説明する。即ち、
図13の処理(A)において、
図4、
図5に示すコンソール(表示および操作部)OPの設定部17のキースイッチ(例えばパラメータ設定用)が押される都度、151,153、155ステップの順に処理が進み、
図15に示す各パラメータが設定される。156ステップでは初期設定で説明したものと同じサイクル時間t0が設定され、157,158ステップで記憶部Mに保存される。このようにすれば、適宜、パラメータの設定変更が可能となる。160ステップでは割り込み処理より割り込み前の処理部位へ戻る処理が実行される。
【0060】
同様に処理(B)において、163ステップでは、前記したt11、t12、t21、t22のタイマ計時処理を実行する。これは、後で詳細に述べるが、メーン処理(例えば
図11、
図12)でタイマ計時フラグをセット(イネーブルとする)することで、計時処理が開始される。164ステップでは、圧力センサ、流量スイッチ、インバータ周波数等のデータ及び信号を検出し、記憶部Mの(ネーム)AN0、AN1、FLSW1、FLSW2、に記憶される。(詳細はメモリマップ
図15による)165ステップでは、割り込み処理より割り込み前の処理部位へ戻る処理が実行される。
【0061】
これらの割り込み処理(A)(B)は例えば100ms毎に定期に実行される。メーン処理の113ステップに戻ると、ここでは記憶部Mからt0が読みだされる。
【0062】
そして、114ステップでは先行機ポンプの始動条件が成立しているか否かの判定を真となるまで実行する。始動条件が成立すると次の115ステップへ進み、次発機が1号機か2号機か判定する。次発機が1号機とすれば、116ステップ以降へ処理が進む。2号機の場合は、1号機の説明で明らかなので図示及び説明を省いている。
【0063】
116ステップでは1号機の始動処理を実行する。117ステップではタイマt11(1号機の運転時間の計測)フラグをセットし計時処理を開始する。具体的には前述した
図13(B)の163ステップの処理がなされる。118ステップでは、タイマt12(1号機直前停止時間の計測)の計時を満了し、記憶部Mに記憶しておく。このタイマt12の計時開始は前述した110ステップ、即ち電源投入(電源ON)時である。停止時間の計時開始は、初回は電源投入時、初回以外は後で述べるがポンプ停止からである。(125ステップ参照)
以上の前処理の後、119〜121ステップで始動頻度抑制及び無駄運転を押さえるためのポンプ強制運転時間の演算、設定処理を実行する。即ち、119ステップでサイクル時間t0(ここでは2.5分に設定されている)と直前の停止時間t12とを比較する。この結果、t0<=t12であれば120ステップで強制運転時間t10に0が設定される。t0>t12であれば121ステップでt10=t0−t12の演算処理を実行する。具体的には、サイクル時間t0より直前の停止時間t12を減じて、これを強制運転時間とする。又、119ステップにおいて、t0−t12の直接演算を実行し、負のフラグが立ったら、120ステップでt10を0にし、そうでなければ121ステップで演算した結果をt10に保存する別の処理としても良い。
【0064】
これらの処理の後、122ステップで使用水量が少なく停止条件が成立しているかどうかの判定を続行する。即ち、流量スイッチFLSW1がon(例えば10L/min以下でon、15L/min以上でoff)しているか判定する。判定の結果、NOであれば、追従機運転処理へ進む。YESであれば、次の123ステップで強制運転時間t10と実際の運転時間t11とを比較する。比較した結果、t11<t10であれば、追従機運転処理へ進む。t11=>t10となり、実際の運転時間t11が強制運転時間t10以上となったら、次の124ステップで停止処理を実行する。
【0065】
この後、125ステップへ進み、ここでタイマt11(実際の運転時間)の計時値及びこれのフラグをリセットし、タイマt12(直前の停止時間)の計時値をセットし、これのフラグをセットし停止時間計時を開始する。126ステップでは交互切替処理(次発機を休止ポンプに入れ替える処理、この場合1号機から2号機に切り替える)を実行して、114ステップへ戻り処理を続ける。
【0066】
前記した追従機運転処理とは、図示を省略しているが、
図2で説明した並列運転導入処理(1台運転から2台並列運転へ)、並列解除処理(2台運転から1台運転へ)を言う。並列運転導入条件が成立しなかった場合は、122ステップへ戻り、停止条件が成立するまで1台運転を続ける。更に、122ステップでは停止条件を流量スイッチとしたが、圧力センサによる給水圧力を検出し、
図2に示す停止圧力POFF以上となったか判定する方法でも良い。
【0067】
フローチャートの
図12は、可変速ポンプ2台の動作を説明する図であり、機器構成は前述した
図1、
図3、
図5に対応している。本図の最初のステップは
図11の110〜121ステップと同じであるから説明を省く。130〜133、140、141ステップの処理は
図3で説明した推定末端圧力一定制御処理である。
【0068】
130ステップで目標圧力H0(ここでは、説明の便宜上H0を使用、例えば、
図3に示す抵抗Fが前述した3座標(PA、f3)、(PB、f0とPB、f4)、(PC、f0×2)から直線近似した演算式が目標であり、現在周波数をこの演算式に代入すると目標値が求まる。この目標値がH0、初期値はPAであり初期設定により予め設定されている。)を記憶部より読み出し、131ステップで圧力センサの検出したデータH(ここでは、説明の便宜上Hとしているが、記憶部にはAN0として記憶されている。)を読み出し、132ステップで前記両者を比較する。比較した結果、次のように処理する。
H0+α<H ならば、133ステップで減速処理。
H0−α<=H<=H0+α ならば、140ステップで目標圧力更新処理(前述のように現在周波数を演算式に代入)。
H0−α>H ならば、141ステップで増速処理。
ここで、αは不感滞であり通常は1〜2mである。
【0069】
減速処理を実行した後、134ステップでインバータ周波数が最低周波数fmin以下か判定する。YESであれば、135、136ステップで停止条件が成立したか判定し、停止条件が成立していれば137ステップで停止処理を実行する。これらの処理は
図11の122〜124ステップの処理と同じなので詳細説明を省く。
【0070】
以上の説明は、実施例全般と実施例の1〜5について説明したものである。実施例6について説明する。これは、入力されたポンプ台数(台)、ポンプ始動頻度(回/h)に基づいてサイクル時間を自動的に求めるようにしたものである。具体的には、
図14に示す処理をメーン処理の110ステップの初期設定、割り込み処理の155ステップで実行すればよい。ここで、ポンプ台数n1、始動頻度n2、運転モードMODEは予め記憶部Mに記憶されている。運転可能台数n3は変数である。
【0071】
170、171、172ステップでそれぞれポンプ台数n1、始動頻度n2、運転モードMODEをそれぞれ記憶部Mより読み出す。説明の便宜上、前述の例に合わせ、ポンプの台数n1は2台、始動頻度n2は12回/時間、運転モードMODOは交互Bとする(
図10参照)。173ステップにおいて、n1が1か判定する、n1は2であるから、177、178ステップへと処理が進む。178ステップでMODEがA(単独)か判定する。MODEはBなので、180,181ステップへと進む。181ステップで運転可能台数n3に2(運転間可能台数は2台である)を設定する。この後、175ステップへ進みここで、サイクル時間t0をt0=60/(n2Xn3)と演算処理して求める。結果は2.5分(60/(12X2))となる。
【0072】
実施例4について更に詳細に説明する。これは、設定されたサイクル時間を適宜整数倍に区切り、この区間内で最後のサイクルまでは前記強制運転時間を0とし、最後のサイクルの前記強制運転時間を区間内全サイクル時間から、その最後のサイクル前までの全サイクル時間と最後のサイクルのポンプ運転直前の停止時間を減じて、その値が負の場合は0を、その値が正の場合はその正の値を、前記強制運転時間とするようにしたものである(
図8参照)。
【0073】
具体的に
図16により説明する。ここでは、区間サイクル定数Kを用いる。そして、メーン処理の119〜121ステップの処理に代えて次に示す処理を実行する。区間サイクル定数Kを1回目の始動はK=1、2回目の始動はK=2、3回目の始動はK=3と設定する。これは、変数として記憶部に記憶される。この実施例は区間を3サイクルに区切った例で示したが、1区間のサイクル数を適宜増やしても良く同様に実施できる。
【0074】
以上の設定が終わったら、
図16の処理(例えばサブルーチンとしてプログラムを作成。)を読み出す。180ステップで、区間サイクル定数Kを読み出し、181ステップでKが1であるか判定する。1回目の始動は、K=1(
図8のC11)であるから182ステップへ進みここで強制運転時間t10を0に設定する。2回目の始動は1回目の始動と同じなので説明を省く。3回目の始動は、K=3(の
図8のC13)であり、184、185ステップでt10=3t0−(C11+C12+t12)の演算を実行して、強制運転時間t10を設定する。結果は、たとえば強制運転時間t10は2.5分(7.5−(1.2+2.4+1.4)である。本実施例では、1号機について説明したが、2号機の場合は182ステップの記号がt20となり、185ステップの演算式がt20=3t0−(C21+C22+t22)となるだけで処理内容は同様である。
【0075】
実施例5について更に詳細に説明する。これは、設定されたサイクル時間を適宜整数倍に区切り、この区間内で、最初のサイクルは前記強制運転時間を0とし、次のサイクルからは、前記強制運転時間を区間内のこのサイクル時間の全時間から、そのサイクル前までの全サイクル時間とそのサイクルのポンプ運転直前の停止時間を減じて、その値が負の場合は0を、その値が正の場合はその値を、前記強制運転時間とするようにしたものである(
図9参照)。
【0076】
具体的に
図17により説明する。ここでは、区間サイクル定数Kを用いる。そして、メーン処理の119〜121ステップの処理に代えて次に示す処理を実行する。区間サイクル定数Kの設定は、前述の
図16と同じなので説明を省く。又、1回目の始動時強制運転時間t10は0であり
図16と同じなので説明を省く。2回目の始動は、K=2(の
図9のC12)であり、190〜194ステップの処理でt10=2t0−(C11+t12)の演算を実行して強制運転時間t10を設定する。
【0077】
実施例6について説明する。これは、強制タイマによる運転中に、使用水量が若干増えて流量スイッチが、非過少水量状態を検出し、この後で前記強制タイマが満了しても引続き運転を継続するようにしたものである。具体的にはメーン処理123と124ステップの間に122ステップの流量スイッチのON,OFF判定処理を追加すれば良い。強制運転時間の満了後、再度流量スイッチ判定処理を実行し、非過少水量状態であれば122ステップ戻し運転を継続し、過少水量状態であれば124ステップへ進み停止する。使用水量の実態に合わせて運転を継続することができる。
【0078】
実施例7について説明する。これは、ポンプが故障した場合、あるいは運転モードが変更となった場合、これの故障台数あるいはモード変更情報に応じて自動演算して、ポンプサイクル時間を設定するようにしたものである。具体的には、先ず、記憶部に故障台数を設定する変数、例えばNGPを設けておき、割り込み処理
図13の162ステップの処理を実行して故障台数を検索してNGPに設定記憶しておく。
図14に示すサイクル時間設定処理において、各174、179、181、184ステップの後で、運転可能台数n3からNGPの値を減じて、それを運転可能台数n3とし、次のステップのサイクル時間を求める処理に進めば良い。ポンプが故障した場合、あるいは運転モードが変更となった場合でも、自動演算により対応することができる。