特許第6096468号(P6096468)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6096468金属ナノ粒子を含有する電気伝導性ペースト組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6096468
(24)【登録日】2017年2月24日
(45)【発行日】2017年3月15日
(54)【発明の名称】金属ナノ粒子を含有する電気伝導性ペースト組成物
(51)【国際特許分類】
   H01B 1/22 20060101AFI20170306BHJP
   H01L 51/46 20060101ALI20170306BHJP
   H01B 13/00 20060101ALI20170306BHJP
【FI】
   H01B1/22 A
   H01L31/04 140
   H01B13/00 503C
【請求項の数】18
【外国語出願】
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2012-236067(P2012-236067)
(22)【出願日】2012年10月25日
(65)【公開番号】特開2013-127949(P2013-127949A)
(43)【公開日】2013年6月27日
【審査請求日】2015年7月30日
(31)【優先権主張番号】61/550,998
(32)【優先日】2011年10月25日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】512127176
【氏名又は名称】ヘレウス プレシャス メタルズ ノース アメリカ コンショホーケン エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】チェン チーロン
(72)【発明者】
【氏名】チャン ウェイミン
(72)【発明者】
【氏名】グオ トレイシー
【審査官】 神野 将志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−181680(JP,A)
【文献】 特表2010−526414(JP,A)
【文献】 特開2011−171274(JP,A)
【文献】 特開平11−120821(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/060341(WO,A1)
【文献】 国際公開第2011/122652(WO,A1)
【文献】 国際公開第2008/078374(WO,A1)
【文献】 特表2011−519150(JP,A)
【文献】 特開2007−294677(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 1/22
H01B 13/00
H01L 51/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気伝導性ペースト組成物であって、
(a)銀粒子と、
(b)ガラスフリットと、
(c)5nm〜2μmの粒径を有する、ニッケル−チタン合金粒子と、
(d)有機媒体と
を含む、電気伝導性ペースト組成物。
【請求項2】
〜95%の銀粒子、0.5〜6%のガラスフリット、0.05〜20重量%のニッケル−チタン合金粒子、および5〜30%の有機媒体を含み、すべての百分率は、前記組成物の総重量に基づく重量百分率である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記ニッケル−チタン合金粒子は20nm〜800nmの粒径を有する、請求項1または請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記ニッケル−チタン合金粒子は20nm〜500nmの粒径を有する、請求項1から請求項のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
前記ニッケル−チタン合金粒子は、前記組成物の総重量に基づき、0.05〜20重量%の量で前記組成物の中に存在する、請求項1から請求項のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
前記ニッケル−チタン合金粒子は、0.05〜10.0重量%の量で存在する、請求項1から請求項のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
前記ニッケル−チタン合金粒子は、0.05〜5.0重量%の量で存在する、請求項1から請求項のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
.1〜3.0重量%の量で、Al、ZnO、LiO、AgO、AgO、MoO、TiO、TeO、CoO、Co、Bi、CeO、CeF、SiO、MgO、PbO、ZrO、HfO、In、SnO、P、Ta、B、AgPO、LiCoO、LiNiO、Ni(PO、NiO、またはリン酸リチウムからなる群から選択される少なくとも1つの添加剤をさらに含む、請求項1から請求項のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項9】
電気伝導性ペースト組成物を基板に付与することと、前記ペーストを焼成して電極を形成することとによって形成される太陽電池電極であって、前記電気伝導性ペースト組成物は、
(a)銀粒子と、
(b)ガラスフリットと、
(c)5nm〜2μmの粒径を有する、ニッケル−チタン合金粒子と、
(d)有機媒体と
を含む、太陽電池電極。
【請求項10】
前記ニッケル−チタン合金粒子は20nm〜800nmの粒径を有する、請求項に記載の太陽電池電極。
【請求項11】
前記ニッケル−チタン合金粒子は20nm〜500nmの粒径を有する、請求項9または請求項10に記載の太陽電池電極。
【請求項12】
前記ニッケル−チタン合金粒子は、前記組成物の総重量に基づき、0.05〜20重量%の量で前記組成物の中に存在する、請求項から請求項11のいずれか1項に記載の太陽電池電極。
【請求項13】
前記ニッケル−チタン合金粒子は、0.05〜10.0重量%の量で存在する、請求項から請求項12のいずれか1項に記載の太陽電池電極。
【請求項14】
前記ニッケル−チタン合金粒子は、0.05〜5.0重量%の量で存在する、請求項から請求項13のいずれか1項に記載の太陽電池電極。
【請求項15】
前記電気伝導性ペースト組成物は、0.1〜3.0重量%の量で、Al、ZnO、LiO、AgO、AgO、MoO、TiO、TeO、CoO、Co、Bi、CeO、CeF、SiO、MgO、PbO、ZrO、HfO、In、SnO、P、Ta、B、AgPO、LiCoO、LiNiO、Ni(PO、NiO、またはリン酸リチウムからなる群から選択される少なくとも1つの添加剤をさらに含む、請求項から請求項14のいずれか1項に記載の太陽電池電極。
【請求項16】
第1の電気伝導性ペースト組成物の第1の層を基板に付与することと、前記ペーストを乾燥することと、第2の電気伝導性ペースト組成物の第2の層を前記第1の層に付与することと、前記2つの層を焼成して電極を形成することとによって形成される太陽電池電極であって、前記第1の電気伝導性ペースト組成物は、
(a)銀粒子と、
(b)ガラスフリットと、
(c)5nm〜2μmの粒径を有する、ニッケル−チタン合金粒子と、
(d)有機媒体と
を含み、前記第2の電気伝導性ペーストは、前記第1の電気伝導性ペーストと同じであるかまたは前記第1の電気伝導性ペーストとは異なる、太陽電池電極。
【請求項17】
太陽電池電極を形成する方法であって、第1の電気伝導性ペースト組成物の層を基板に付与することと、前記ペーストを焼成して前記電極を形成することとを含み、前記第1の電気伝導性ペースト組成物は、
(a)銀粒子と、
(b)ガラスフリットと、
(c)5nm〜2μmの粒径を有する、ニッケル−チタン合金粒子と、
(d)有機媒体と
を含む、方法。
【請求項18】
前記第1の電気伝導性ペースト組成物の前記層の上に、第2の電気伝導性ペースト組成物の層を形成することをさらに含む、請求項17に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2011年10月25日出願の米国仮出願第61/550,998号に基づく優先権を主張する。この仮出願の開示は、参照によりその全体を本願明細書に援用したものとする。
【0002】
本発明は、金属ナノ粒子を含有する電気伝導性ペースト組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
太陽電池は、光起電効果を使用して光のエネルギーを電気に変換するデバイスである。太陽の力は持続可能でありかつ非汚染性の副生成物しか生成しないので、太陽の力は魅力的な環境に優しいエネルギー源である。従って、現在、非常に多くの研究が、低い材料コストおよび製造原価を維持しつつ、効率を高めた太陽電池を開発することに向けられている。光が太陽電池に当たると、入射光の一部分は表面によって反射され、残りは太陽電池へと透過する。透過光の光子は、ケイ素などの半導性物質から通常作製される太陽電池によって吸収される。吸収された光子のエネルギーによって、半導性物質の原子からその半導性物質の電子がたたき出され、電子−正孔対を発生する。次いでこれらの電子−正孔対は、p−n接合によって分離され、ソーラーセル表面上に付与されている導電性電極によって集められる。
【0004】
最も一般的な太陽電池は、ケイ素から作製される太陽電池である。具体的には、p−n接合は、2つの電気接点層または電極と接続された、n型拡散層をp型シリコン基板上へと付与することによりケイ素から作製される。p型半導体では、フリーの電荷担体(正孔)の数を増やすために、ドーパント原子が半導体に加えられる。実質的に、このドーピング物質は、弱く結合された外側の電子を半導体原子から取り去る。p型半導体の1つの例は、ホウ素またはアルミニウムのドーパントを含むケイ素である。太陽電池は、n型半導体からも作製することができる。n型半導体では、ドーパント原子は、過剰な電子をホスト基板に提供し、過剰の陰性の電子電荷担体を作り出す。n型半導体の1つの例は、リンドーパントを含むケイ素である。太陽電池による太陽光の反射を最小にするために、窒化ケイ素などの反射防止コーティングが、n型拡散層に付与されて、太陽電池へと届く光の量が増やされる。
【0005】
シリコン太陽電池は、典型的には、その前面および背面の両方に付与された電気伝導性ペーストを有する。金属化(メタライゼーション)プロセスの一部として、裏面接点は、典型的には、裏面の銀ペーストまたは銀/アルミニウムペーストをスクリーン印刷することなどにより、最初にシリコン基板に付与され、はんだ付けパッドが形成される。次に、アルミニウムペーストが、基板の裏面全体に付与され、裏面電界(背面電界)(BSF)が形成され、そして次いでこのセルは乾燥される。次に、異なるタイプの電気伝導性ペーストを使用して、金属接点が前面反射防止層の上にスクリーン印刷され、前面電極としての役割を果たしてもよい。光が入るセルの正面または前面の上のこの電気接点層は、典型的には、完全な層ではなく、「フィンガーライン(finger line)」および「バスバー(母線)」から構成される格子パターンで存在する。なぜなら、金属格子材料は、典型的には、光に対して透明ではないからである。印刷された前面および裏面のペーストを有するシリコン基板は、次いで、およそ700〜795℃の温度で焼成される。焼成後、この前面ペーストは、反射防止層を貫通して腐食させ、金属格子と半導体との間の電気接点を形成し、この金属ペーストを金属電極へと変換する。裏面では、アルミニウムがシリコン基板の中へと拡散し、BSFを作り出すドーパントとして作用する。得られた金属電極は、ソーラーパネルに接続されている太陽電池へおよびその太陽電池から電気が流れることを可能にする。
【0006】
パネルを組み立てるために、複数の太陽電池が直列に、および/または並列に接続され、最初のセルおよび最後のセルの電極の末端は、好ましくは、出力用のワイヤに接続される。太陽電池は、典型的には、シリコンゴムまたはエチレン酢酸ビニルなどの透明な熱可塑性樹脂の中に封入されたている。封入用の透明な熱可塑性樹脂の前面にガラスの透明なシートが置かれる。裏面保護材料、例えば、良好な機械的特性および良好な耐候性を有するポリフッ化ビニルのフィルムで覆われたポリエチレンテレフタレートのシートが、封入用熱可塑性樹脂の下に置かれる。これらの層状材料は、空気を除去するために、適切な真空炉の中で加熱され、次いで加熱および圧縮により一体物へと統合されてもよい。さらには、太陽電池は、典型的には、屋外に長時間置かれるので、太陽電池の周囲を、アルミニウムなどからなるフレーム材料で覆うことが望ましい。
【0007】
典型的な銀電気伝導性ペーストは、金属粒子、ガラスフリットおよび有機媒体を含有する。これらの構成成分は、得られる太陽電池の理論的な潜在力を最大活用するために、慎重に選択される必要がある。例えば、電荷担体が界面およびフィンガーラインを通ってバスバーへと流れることができるように、金属ペーストとシリコン表面との間、および金属粒子同士の接触を最小にすることが望ましい。組成物の中のガラス粒子は、反射防止コーティング層を貫通して腐食させ、金属とP+型Siとの間に接点を構築することを助ける。他方で、このガラスは、焼成後にp−n接合をシャント(短絡)させるほどに侵襲的であってはならない。従って、目標は、向上した効率を成し遂げるようにp−n接合を無傷に保ちつつ、接触抵抗を最小にすることである。公知の組成物は、金属層とシリコンウェーハとの界面のガラスの絶縁効果に起因する高い接触抵抗、および接触領域における高い再結合などの他の短所を有する。従って、ペーストと下に存在するシリコン基板との間の接触を改善するペーストが必要とされている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の1つの実施形態に係る電気伝導性ペースト組成物は、
(a)銀粒子と、
(b)ガラスフリットと、
(c)電気伝導性の金属、金属合金、および/または金属ケイ化物のナノ粒子であって、このナノ粒子は、約5nm〜約2ミクロン(2μm)の粒径を有する、ナノ粒子と、
(d)有機媒体と
を含む。
【0009】
別の実施形態によれば、当該ナノ粒子は、ニッケル、クロム、コバルト、チタン、ならびにこれらの合金、ケイ化物、および混合物からなる群から選択される少なくとも1つを含む。
【0010】
さらに別の実施形態によれば、当該電気伝導性ペーストは、約40〜約95%の銀粒子、約0.5〜約6%のガラスフリット、約0.05〜20重量%の金属ナノ粒子、および約5〜約30%の有機媒体を含み、すべての百分率は、当該組成物の総重量に基づく重量百分率である。
【0011】
別の実施形態によれば、当該ナノ粒子は約20nm〜約800nmの粒径を有する。より好ましくは、このナノ粒子は約20nm〜約500nmの粒径を有する。
【0012】
別の実施形態によれば、当該ナノ粒子は約0.05〜10.0重量%の量で存在する。より好ましくは、このナノ粒子は、約0.05〜5.0重量%の量で存在する。
【0013】
さらに別の実施形態によれば、当該電気伝導性ペーストは、約0.1〜3.0重量%の量の、Al、ZnO、LiO、AgO、AgO、MoO、TiO、TeO、CoO、Co、Bi、CeO、CeF、SiO、MgO、PbO、ZrO、HfO、In、SnO、P、Ta、B、AgPO、LiCoO、LiNiO、Ni(PO、NiO、またはリン酸リチウムからなる群から選択される少なくとも1つの添加剤をさらに含む。
【0014】
本発明の第1の実施形態に係る太陽電池電極は、電気伝導性ペースト組成物を基板に付与することと、このペーストを焼成して電極を形成することにより形成され、当該電気伝導性ペースト組成物は、
(a)銀粒子と、
(b)ガラスフリットと、
(c)電気伝導性の金属、金属合金、および/または金属ケイ化物のナノ粒子であって、このナノ粒子は、約5nm〜約2ミクロン(2μm)の粒径を有する、ナノ粒子と、
(d)有機媒体と、
を含む。
【0015】
別の実施形態によれば、当該ナノ粒子は、ニッケル、クロム、コバルト、チタン、ならびにこれらの合金、ケイ化物、および混合物からなる群から選択される少なくとも1つである。
【0016】
別の実施形態によれば、当該ナノ粒子は約20nm〜約800nmの粒径を有する。より好ましくは、このナノ粒子は約20nm〜約500nmの粒径を有する。
【0017】
別の実施形態によれば、当該ナノ粒子は、当該組成物の総重量に基づき、約0.05〜約20重量%の量でこの組成物の中に存在する。より好ましくは、このナノ粒子は、約0.05〜10.0重量%の量で存在する。最も好ましくは、このナノ粒子は、約0.05〜5.0重量%の量で存在する。
【0018】
さらに別の実施形態によれば、当該電気伝導性ペースト組成物は、約0.1〜3.0重量%の量で、Al2O3、ZnO、Li2O、Ag2O、AgO、MoO3、TiO2、TeO2、CoO、Co2O3、Bi2O3、CeO2、CeF4、SiO2、MgO、PbO、ZrO2、HfO2、In2O3、SnO2、P2O5、Ta2O5、B2O3、Ag3PO4、LiCoO2、LiNiO2、Ni3(PO4)2、NiO、またはリン酸リチウムからなる群から選択される少なくとも1つの添加剤をさらに含む。
【0019】
本発明の第2の実施形態に係る太陽電池電極は、第1の電気伝導性ペースト組成物の第1の層を基板に付与することと、このペーストを乾燥することと、第2の電気伝導性ペースト組成物の第2の層を第1の層に付与することと、これら2つの層を焼成して電極を形成することとにより形成され、この第1の電気伝導性ペースト組成物は、
(a)銀粒子と、
(b)ガラスフリットと、
(c)電気伝導性の金属、金属合金、および/または金属ケイ化物のナノ粒子であって、このナノ粒子は、約5nm〜約2ミクロン(2μm)の粒径を有する、ナノ粒子と、
(d)有機媒体と
を含み、この第2の電気伝導性ペーストは、第1の層のペーストと同じであってもよいし第1の層のペーストとは異なっていてもよく、ガラスフリットまたは有機媒体を含有してもよいし含有しなくてもよいが、電気伝導性の粒子を含有し、そして好ましくは、第1の層のペーストよりも高い電気伝導率をもたらす。
【0020】
当該太陽電池電極の別の実施形態によれば、当該ナノ粒子は、ニッケル、クロム、コバルト、チタン、ならびにこれらの合金、ケイ化物、および混合物からなる群から選択される少なくとも1つである。
【0021】
本発明の1つの実施形態に係る太陽電池電極を形成する方法は、第1の電気伝導性ペースト組成物の層を基板に付与することと、このペーストを焼成して電極を形成することとを含み、この第1の電気伝導性ペースト組成物は、
(a)銀粒子と、
(b)ガラスフリットと、
(c)電気伝導性の金属、金属合金、および/または金属ケイ化物のナノ粒子であって、このナノ粒子は、約5nm〜約2ミクロン(2μm)の粒径を有する、ナノ粒子と、
(d)有機媒体と、
を含む。
【0022】
太陽電池電極を形成する方法のさらに別の実施形態によれば、当該ナノ粒子は、ニッケル、クロム、コバルト、チタン、ならびにこれらの合金、ケイ化物、および混合物からなる群から選択される少なくとも1つである。
【0023】
さらに別の実施形態によれば、当該方法は、第1の電気伝導性ペースト組成物の層の上に、第2の電気伝導性ペースト組成物の層を形成することをさらに含む。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明に係る電気伝導性ペースト組成物は、以下の4つの必須の構成成分を含む:銀粒子、ガラスフリット、少なくとも1つの金属/金属合金/金属ケイ化物のナノ微粒子添加剤、および有機媒体。この金属ナノ微粒子添加剤は、ニッケル、クロム、チタン、コバルト、またはこれらの合金、ケイ化物、もしくは混合物を含有してもよいが、これらに限定されない。以下により詳細に記載されるとおり、このような添加剤は、焼成後の基板に、低下した接触抵抗、および向上された効率を与える。好ましい実施形態は、ニッケル−チタン合金ナノ粒子を含む。このようなペーストは、太陽電池または他のシリコン半導体デバイスにおいて電気接点層または電極を形成するために使用されてもよいが、このような応用例に限定されるわけではない。特に、当該ペーストは、太陽電池の前面または太陽電池もしくは他のシリコン半導体デバイスの裏面に付与されてもよい。
【0025】
銀粒子
当該銀粒子は、当該電気伝導性ペースト組成物の中の電気伝導性金属として機能する。この銀は、銀金属、1以上の銀誘導体、またはそれらの混合物として存在してもよい。好適な銀誘導体としては、例えば、銀合金ならびに/または銀ハロゲン化物(例えば、塩化銀)、硝酸銀、酢酸銀、トリフルオロ酢酸銀、オルトリン酸銀、およびこれらの組み合わせなどの銀塩が挙げられる。銀の代わりにまたは銀に加えて、他の電気伝導性金属、例えば金、銅、ニッケル、パラジウムおよび/または白金(これらに限定されない)を利用することも、本発明の範囲内にある。あるいは、これらの金属の合金も、電気伝導性金属として利用してよい。
【0026】
この銀粒子は、粉末または薄片形態で、例えば約0.3〜約10ミクロン(約0.3〜約10μm)の平均粒径を有する粉末として当該組成物に含まれてもよい。本願明細書中に特段の記載がない限り、本願明細書中に記載されるすべての粒径は、レーザー回折によって測定されるd50粒径である。当業者には十分理解されるとおり、d50直径は、個々の粒子の半分(重量による)が特定された直径よりも小さいというサイズを表す。このような直径は、この金属粒子に、スクリーン印刷または同等の技術によって太陽電池を形成するときの好適な焼結挙動および反射防止層の上での当該電気伝導性ペーストの広がり、ならびに得られた太陽電池の適切な接点形成および電気伝導率をもたらす。
【0027】
当該組成物の金属の伝導性部分は、約0.3〜10ミクロン(約0.3〜10μm)のd50を有する単分散の銀粉末、約0.3〜10ミクロン(約0.3〜10μm)のd50を有する異なる単分散の銀粉末の混合物、または約0.3〜10ミクロン(約0.3〜10μm)の種々のサイズ濃度ピークを有する、二峰分散の、多分散の粉末を含有してもよいが、これらに限定されない。この銀粒子は、好ましくは、当該組成物の総重量に基づき約40〜約95重量%、より好ましくは約70〜90重量%の量で当該組成物の中に存在する。
【0028】
ガラスフリット
このガラスフリット(ガラス粒子)は、当該電気伝導性ペースト組成物中の無機結合剤として機能し、焼成の間に基板の上へ金属成分を堆積させるための輸送媒体として作用する。このガラス系は、シリコン界面上での金属の結晶化(これは、直接の接点を作り出す)およびガラス内の金属の微結晶サイズ(これは、当該ガラスのトンネル電気伝導率の源である)を制御するために重要である。このガラスは、基板の中への金属の結晶化の浸透の深さを制御するためにも重要である。この浸透の深さは、適正に制御されなければp−n接合の短絡を生じる可能性がある。
【0029】
ガラスが当該ペースト組成物に所望の特性を与えることができる限り、特定のタイプのガラスが重要というわけではなく、鉛含有ガラスおよび鉛不含ガラスの両方が適切である。好ましいガラスとしては、ホウケイ酸鉛およびホウケイ酸ビスマスが挙げられるが、他の無鉛のガラス、例えばホウケイ酸亜鉛、も適切であろう。また、鉛系のガラスフリットとしては、ハロゲン化鉛、鉛カルコゲニド、炭酸鉛、硫酸鉛、リン酸鉛、硝酸鉛および有機金属の鉛化合物の塩、または熱分解の間に鉛の酸化物もしくは塩を形成することができる化合物を挙げてもよいが、これらに限定されない。また、無鉛のガラスフリットとしては、ケイ素、ホウ素、アルミニウム、ビスマス、リチウム、ナトリウム、マグネシウム、亜鉛、チタンもしくはジルコニウムの酸化物または化合物を挙げてもよいが、これらに限定されない。
【0030】
当該ガラス粒子は、好ましくは、約0.1〜約10ミクロン(約0.1〜約10μm)、より好ましくは約5ミクロン(5μm)未満の粒径を有し、好ましくは、当該ペースト組成物の総重量に基づき約0.5〜約10重量%、より好ましくは約6重量%未満の量で当該組成物の中に含有される。このような量は、当該組成物に適切な接着強度および焼結特性をもたらす。
【0031】
このガラスは、その特性をさらに調整する1以上の添加剤を任意に含んでもよい。例示的なガラス添加剤としては、Al、ZnO、LiO、AgO、AgO、MoO、TiO、TeO、CoO、Co、Bi、CeO、CeF、SiO、MgO、PbO、ZrO、HfO、In、SnO、P、Ta、B、AgPO、LiCoO、LiNiO、Ni(PO、NiO、リン酸リチウムなどが挙げられるが、これらに限定されない。選択されたガラスフリット添加剤の含有量は、全ペーストの約0.1重量%〜10重量%、より好ましくは約0.1重量%〜3重量%の各成分であってもよく、そして全フリット添加剤は、好ましくは、約0.1重量%〜10重量%、より好ましくは約0.1重量%〜5重量%である。
【0032】
有機媒体
具体的な有機媒体または結合剤は限定されず、当該技術分野で公知の有機媒体またはこの種の応用例のために開発されるべき有機媒体であってもよい。例えば、好ましい有機媒体は、樹脂、溶媒、ならびに調整剤、例えば結合剤としてのエチルセルロースおよび溶媒としてのテルピネオールを含有する。他の結合剤としてはフェノール樹脂を挙げてもよいが、これに限定されない。他の溶媒としては、カルビトール、ヘキシルカルビトール、テキサノール、ブチルカルビトール、ブチルカルビトールアセテート、またはアジピン酸ジメチルまたはグリコールエーテルを挙げてもよいが、これらに限定されない。この有機媒体として、界面活性剤および当業者に公知のチキソトロピー剤も挙げてもよい。界面活性剤としては、ポリエチレンオキシド、ポリエチレングリコール、ベンゾトリアゾール、ポリ(エチレングリコール)酢酸、ラウリン酸、オレイン酸、カプリン酸、ミリスチン酸、リノール酸、ステアリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸塩、パルミチン酸塩、およびこれらの混合物を挙げてもよいが、これらに限定されない。当業者に公知のチキソトロピー剤としては、ゲル、およびヒマシ油のような天然物質から誘導されるものなどの有機物が挙げられる。市販のチキソトロピー剤も使用してよい。この有機媒体は、好ましくは、当該組成物の総重量に基づき約5〜約30重量%、より好ましくは約20重量%未満の量で当該電気伝導性ペースト組成物の中に存在する。
【0033】
金属ナノ微粒子添加剤
本発明に係るナノ微粒子添加剤は、ニッケル、クロム、コバルト、チタン、コバルト、ニッケル、クロム、およびチタンの合金、これらの元素のケイ化物、ならびにこれらの混合物など(これらに限定されない)の電気伝導性のナノサイズの金属粒子を含む。この金属または合金のナノ粒子は、好ましくは、約5nm〜約2ミクロン(2μm)、より好ましくは約20〜約800nm、最も好ましくは約20〜約500nmの直径を有する。このナノ粒子(ナノ粉末)は、公知の技法(例えば、Kim,Soon−Gilら、「Colloids and film disposition of Ni nanoparticles for base metal electrode applications」、Colloids and Surfaces A: Physiochem.Eng.Aspects、第337巻、96−101頁(2009年)を参照)によって調製してもよいし、またはそれらは、いくつかの供給源、例えばアメリカン・エレメンツ(American Elements)、アプライド・ナノテク・ホールディングス(Applied Nanotech Holdings,Inc.)およびユーエス・リサーチ・ナノマテリアルズ(U.S.Research Nanomaterials,Inc.)から市販されている。
【0034】
このナノ粒子は、好ましくは、約0.05%〜約20重量%、より好ましくは約0.05%〜約10重量%、最も好ましくは約0.05〜約5重量%の量で、当該電気伝導性ペースト組成物の中に含有される。すべての重量は、当該ペースト組成物の総重量に基づく。この金属ナノ粒子は、例えば、金属粉末、合金粉末、より低原子価の金属ケイ化物粉末、例えばNiSi、CrSi、およびこれらの混合物の形態で加えられてもよい。この添加剤を粉末形態で含めること、または液体媒質の中に懸濁させることは本発明の範囲内にある。特定の実施形態では、この金属ナノ粒子は、当該伝導性のペーストで使用される溶媒と同じか、または当該伝導性のペーストで使用される溶媒と混和性である溶媒の中に懸濁される。
【0035】
これらの選択された金属ナノ粒子は、ケイ素との反応後のより低い接触抵抗の金属ケイ素化合物、または反射防止のコーティングSiとの反応後の金属窒化物の形成を通してシリコン基板との接触抵抗を低下させて、得られた太陽電池の効率を向上させるために、当該ペースト組成物の中に含まれる。低接触抵抗の金属ケイ素化合物を形成することができる金属元素は、この選択された金属が、通常の急速熱処理(rapid thermal processing、RTP)メタライゼーション加工の条件下で当該太陽電池に有害ではないであろうという条件のもとで、本願のために使用される。選択された金属、合金粒子、または金属ケイ化物は、通常のペースト製造プロセス(せん断混合、三本ロール練りなど)下で化学的に安定でなければならない。こうして、適正な焼成プロセスの後、低接触抵抗の金属ケイ化物または窒化物を形成することができ、向上した効率(増大した曲線因子および低下した接触抵抗)を呈する太陽電池を得ることができる。
【0036】
電気伝導性ペースト組成物の中にさらなる添加剤を含むことも本発明の範囲内にある。例えば、上記のガラス添加剤に加えて、単独でまたは組み合わせて、増粘剤(粘着性付与剤)、安定剤、分散剤など、化合物を含むことが望ましい場合がある。このような構成成分は当該技術分野で周知である。含まれる場合、このような構成成分の量は、所望される電気伝導性ペーストの特性に応じて、日常的な実験によって決定されてもよい。
【0037】
当該電気伝導性ペースト組成物は、当該技術分野で公知のペースト組成物または開発されるべきペースト組成物を調製するためのいずれの方法によって調製されてもよく、調製方法は限定されない。分散された均一なペーストを作製するために、ペースト構成成分は、例えば混合機を用いて混合され、次に、例えば三本ロール練り機に通されてもよい。
【0038】
このようなペーストは、次に、このペーストを基板の上の反射防止層に、例えばスクリーン印刷によって付与し、次いで焼成してシリコン基板の上に電極(電気接点)を形成することにより、太陽電池を形成するために利用されてもよい。このような製作方法は当該技術分野で周知であり、例えば欧州特許出願公開第1 713 093号明細書に記載されている。単結晶または多結晶シリコン基板を利用することは本発明の範囲内である。本発明の電気伝導性ペーストを用いて調製される種々の基板を使用する太陽電池は、従来の銀ペーストを使用して調製される同等のセルよりも、低下した接触抵抗およびより高い変換効率を呈する。より高い面積抵抗を持つ太陽電池は、本発明の電気伝導性ペーストを使用すると、より顕著な効率の上昇を呈するということが見出された。印刷されたフィンガーラインを持つ太陽電池は、細線フィンガー接触抵抗が接点の抵抗率によって著しく影響を受けるときに、本発明の電気伝導性ペーストを使用してより顕著な効率の上昇を示すということも見出された。
【0039】
産業によって採用されてきた技術である、二重印刷(ダブルプリンティング)を使用して、電気伝導性ペーストの2つの層を含有する太陽電池を製造することも本発明の範囲内である。基板に付与される第1の層は、金属、合金、および/またはケイ化物のナノ粒子を含有する本発明の電気伝導性ペーストを含む。第1の層の上へと付与される第2の層は、第1の層のペーストと同じであってもよいし第1の層のペーストとは異なっていてもよい。この第2の層のペーストは、金属ナノ粒子も任意に含有してもよいが、ガラスフリットおよび/または有機媒体が省かれてもよい。好ましい実施形態では、第2の層のペーストは、第1の層を構成する本発明のペーストよりも高い電気伝導率のペーストである。第1の層はシード層として機能して、基板に対する接触抵抗を低下させる可能性があるのに対し、第2の層は、ライン電気伝導率を上昇させるように配合されてもよいことが見出された。このような二層太陽電池は低接触抵抗および低ライン抵抗の両方を呈するので、それらは魅力的である。
【0040】
本発明は、これより、以下の非限定的な実施例と合わせて説明される。
【実施例】
【0041】
実施例1:70Ω/□ 多結晶シリコンウェーハを使用する太陽電池の調製
ヘレウス・マテリアルズ・テクノロジー・エルエルシー(Heraeus Materials Technology LLC)(ペンシルベニア州、ウエスト・コンショホッケン(W.Conshohocken))から市販されている市販の銀伝導性ペースト、SOL9235H、の構成成分(銀粉末、ガラスフリット、ガラス添加剤、および有機物)、約0.05〜5重量%のニッケルナノ粒子(この範囲の中の異なる百分率のNiを有する3つのペースト)、ならびにAl、ZnO、LiO、AgO、AgO、MoO、TiO、TeO、CoO、Co、Bi、CeO、CeF、SiO、MgO、PbO、ZrO、HfO、In、SnO、P、Ta、B、AgPO、LiCoO、LiNiO、Ni(PO、NiO、またはリン酸リチウムから選択される少なくとも1つのガラス添加剤を合わせることにより、電気伝導性ペースト(ペースト1)を調製する。このニッケルは、20nm〜500nmのd50を有する粉末として利用する。このニッケルの重量%は、得られるペーストの総重量に基づく。
【0042】
ペースト1の1つの例示的なペーストは、約85重量%の銀粒子、約4〜5重量%のガラスフリット、約8重量%の有機媒体、約2重量%のガラス添加剤、および約0.5重量%のニッケルナノ粒子を含む(「ペースト1A」と呼ぶ)。ペースト1を構成する他の2つの例示的なペーストは、同量の銀粒子、ガラスフリット、有機媒体およびガラス添加剤を含むが、1つは、約0.2重量%のニッケルナノ粒子を含むのに対して、他方は、約0.7重量%のニッケルナノ粒子を含む。
【0043】
太陽電池を以下のようにして調製する:70Ω/□(mc)の面積抵抗を有する簡単にメタライゼーションできる(ready−to−be metalized)P型多結晶(mc)ソーラーウェーハの裏側に、アルミニウムペースト(RuXing 8252X)を印刷し、175℃で乾燥する。ペースト1Aを、ウェーハの前面に付与し、印刷し、150℃で乾燥する。次いでセルを、Despatch Ultra Flexオーブンの中で、700℃を超える温度で3.5秒間同時焼成する。3つの同一の6インチ(約15.2cm)の太陽電池を、上記3つの試料のペーストからこのようにして調製する。加えて、3つの同一の対照太陽電池(対照セルI)を、ニッケル添加剤を含まない市販のペーストを使用して、同じタイプの多結晶ソーラーウェーハ上に調製する。
【0044】
得られた太陽電池を、I−Vテスターを使用して試験する。I−Vテスターの中のXeアーク灯を、既知の強度を持つ太陽光を使用して模擬するように設定し、太陽電池の前面を照射して、I−V曲線を生成させる。この曲線を使用して、短絡電流密度(Jsc)、短絡電流(Isc)、開回路電圧(Voc)、曲線因子(FF)、シャント抵抗(並列抵抗)(Rsh)、直列抵抗(Rs)、およびEta(効率)を含めた、電気性能の比較を与えるいくつかのパラメータを決定する。
【0045】
ペースト1Aを使用して調製した3つのセルおよび3つの対照セルIについての平均の電気性能データを比較する。すべての測定値を対照セルの平均値に対して正規化した。そしてそれらを表1に示す。当該ニッケルナノ粒子含有ペーストは、対照ペーストよりも、曲線因子の顕著な向上および向上した効率を与えることがわかる。
【0046】
【表1】
【0047】
実施例2:100Ω/□ 多結晶シリコンウェーハを使用する太陽電池の調製
ヘレウス・マテリアルズ・テクノロジー・エルエルシー(ペンシルベニア州、ウエスト・コンショホッケン)から市販されている市販の銀伝導性ペースト、SOL9273MA、の構成成分(銀粉末、ガラス、ガラス添加剤、および有機物)、0.05〜5.0重量%のニッケルナノ粒子(この範囲の中の異なる百分率のNiを有する3つのペースト)、ならびにAl、ZnO、LiO、AgO、AgO、MoO、TiO、TeO、CoO、Co、Bi、CeO、CeF、SiO、MgO、PbO、ZrO、HfO、In、SnO、P、Ta、B、AgPO、LiCoO、LiNiO、Ni(PO、NiO、またはリン酸リチウムから選択される少なくとも1つのガラス添加剤を合わせることにより、電気伝導性ペースト(ペースト2)を調製する。このニッケルは、20nm〜500nmのd50を有する粉末として利用する。このニッケルの重量%は、得られるペーストの総重量に基づく。
【0048】
ペースト2の1つの例示的なペーストは、約85重量%の銀粒子、約4〜5重量%のガラスフリット、約8重量%の有機媒体、約2重量%のガラス添加剤、および約0.2重量%のニッケルナノ粒子を含む(「ペースト2A」と呼ぶ)。ペースト2を構成する他の2つの例示的なペーストは、同量の銀粒子、ガラスフリット、有機媒体およびガラス添加剤を含むが、1つは、約0.2重量%のニッケルナノ粒子を含むのに対して、他方は、約0.7重量%のニッケルナノ粒子を含む。
【0049】
太陽電池を以下のようにして調製する:100Ω/□(mc)の面積抵抗を有する簡単にメタライゼーションできるP型多結晶(mc)ソーラーウェーハの裏側に、アルミニウムペースト(Monocrystal 1208D)を印刷し、175℃で乾燥する。ペースト2Aを、ウェーハの前面に付与し、印刷し、150℃で乾燥する。次いでセルを、Despatch Ultra flex加熱炉の中で、700℃を超える温度で3.8秒間同時焼成する。3つの同一の太陽電池を、上記3つの試料のペースト2Aからこのようにして調製する。加えて、3つの同一の対照太陽電池(対照セルII)を、ニッケル添加剤を含まない市販のペーストを使用して、同じタイプの多結晶ソーラーウェーハ上に調製する。
【0050】
得られた太陽電池を、I−Vテスターを使用して、実施例1に記載したようにして試験し、同じパラメータを記録する。加えて、TLM法を使用して接触抵抗(ρ)(Ωcm単位で表される)を測定する。
【0051】
ペースト2Aを使用して調製した3つのセル、および3つの対照セルIIについての平均の電気性能データを比較する。すべての測定値を対照セルの平均値に対して正規化した。そしてそれらを表2に示す。当該ニッケルナノ粒子含有ペーストは、対照ペーストよりも、曲線因子およびEtaの顕著な向上、およびより低い接触抵抗を与えることがわかる。
【0052】
【表2】
【0053】
実施例3:80Ω/□ 単結晶シリコンウェーハを使用する太陽電池の調製
ヘレウス・マテリアルズ・テクノロジー・エルエルシー(ペンシルベニア州、ウエスト・コンショホッケン)から市販されている市販の銀伝導性ペースト、SOL9235H、5nm〜300nmの粒径d50を有するニッケルナノ粒子、ならびにAl、ZnO、LiO、AgO、AgO、MoO、TiO、TeO、CoO、Co、Bi、CeO、CeF、SiO、MgO、PbO、ZrO、HfO、In、SnO、P、Ta、B、AgPO、LiCoO、LiNiO、Ni(PO、NiO、またはリン酸リチウムから選択される少なくとも1つのガラス添加剤を合わせることにより、電気伝導性ペースト(ペースト3)を調製する。このニッケルを上記ペーストと混合し、三本ロール練り機にかけた。ペースト3は、得られるペーストの総重量に基づき、0.1%〜3.0%のニッケルを含有する(この範囲内の異なる百分率のNiを有する3つのペースト)。
【0054】
例示的なペースト3Aは、約85重量%の銀粒子、約4〜5重量%のガラスフリット、約8重量%の有機媒体、約2重量%のガラス添加剤、および約0.5重量%のニッケルナノ粒子を含む。例示的なペースト3Bは、同量の銀粒子、ガラスフリット、有機媒体、およびガラス添加剤を含むが、約0.2重量%のニッケルナノ粒子を含む。例示的なペースト3Cは、同量の銀粒子、ガラスフリット、有機媒体、およびガラス添加剤を含むが、約0.7重量%のニッケルナノ粒子を含む。
【0055】
太陽電池を以下のようにして調製する:80Ω/□の面積抵抗を有する簡単にメタライゼーションできるP型単結晶ソーラーウェーハの裏側に、アルミニウムペースト(Monocrystal 1208D)を印刷し、175℃で乾燥する。ペースト3A〜3Cを、各々、ウェーハの前面に付与し、印刷し、150℃で乾燥する。次いでセルを、Despatch Ultra flex加熱炉の中で、700℃を超える温度で3.5秒間同時焼成する。ペースト3A〜3Cの各々を使用して3つの同一の太陽電池を調製する。3つのさらなる太陽電池を、対照(対照セルIII)として、ニッケルを含まない市販のペーストを使用して、単結晶ソーラーウェーハ上に調製する。
【0056】
得られた太陽電池を、I−Vテスターを使用して、実施例1に記載したようにして試験する。ペースト3A〜3Cを使用して調製したセル、および3つの対照セルIIIについての平均の電気性能データを比較する。すべての測定値を対照セルの平均値に対して正規化した。そしてそれらを表3に示す。ペースト3Aおよびペースト3Cと比べて最も少ない量のニッケルナノ粒子を有するペースト3Bが、顕著な曲線因子の向上および対照ペーストよりも良好な直列抵抗および効率を与えることがわかる。
【0057】
【表3】
【0058】
実施例4:80Ω/□ 単結晶シリコンウェーハを使用する二層太陽電池の調製
ヘレウス・マテリアルズ・テクノロジー・エルエルシー(ペンシルベニア州、ウエスト・コンショホッケン)から市販されている市販の銀伝導性ペースト、SOL9273MA、の構成成分(銀粉末、ガラス、ガラス添加剤、および有機物)、0.05〜5.0重量%の、20〜500nmの粒径d50を有するニッケルナノ粒子(この範囲の中の異なる百分率を有する3つの試料)、ならびに0.1〜2.0%の、Al、ZnO、LiO、AgO、AgO、MoO、TiO、TeO、CoO、Co、Bi、CeO、CeF、SiO、MgO、PbO、ZrO、HfO、In、SnO、P、Ta、B、AgPO、LiCoO、LiNiO、Ni(PO、NiO、またはリン酸リチウムから選択される少なくとも1つのガラス添加剤を合わせることにより、電気伝導性ペースト(ペースト4)を調製する。すべての重量%は、得られるペーストの総重量に基づく。
【0059】
ペースト4の1つの例示的なペーストは、約85重量%の銀粒子、約4〜5重量%のガラスフリット、約8重量%の有機媒体、約0.1〜2重量%のガラス添加剤、および約0.5重量%のニッケルナノ粒子を含む(「ペースト4A」と呼ぶ)。ペースト4を構成する他の2つの例示的なペーストは、同量の銀粒子、ガラスフリット、有機媒体およびガラス添加剤を含むが、1つは、約0.2重量%のニッケルナノ粒子を含むのに対して、他方は、約0.7重量%のニッケルナノ粒子を含む。
【0060】
太陽電池を以下のようにして調製する:70Ω/□の面積抵抗を有する簡単にメタライゼーションできるP型単結晶(sc)ソーラーウェーハの裏側に、アルミニウムペースト(RuXing 8252X)を印刷し、175℃で乾燥する。ペースト4Aの第1の層をこのウェーハの前面に付与し、印刷し、150℃で乾燥する。市販の銀ペーストSOL9273(ヘレウス・マテリアルズ・テクノロジー(Heraeus Materials Technology)から市販されている)の第2の層を、ペースト6の層の上(部)に付与し、印刷し、150℃で乾燥する。実施例はHeraeus SOL9273の使用に限定されず、いずれの銀伝導性ペーストを第2の層として使用してもよい。次いでセルを、Despatch Ultra flex加熱炉の中で、700℃を超える温度で3.6秒間同時焼成する。3つの同一の太陽電池をこのようにして調製する。
【0061】
加えて、市販の銀ペーストの2つの層、SOL9411の第1の層およびSOL9273の第2の層(両方とも、ヘレウス・マテリアルズ・テクノロジーから市販されている)、を、同じタイプの単結晶ソーラーウェーハ上で使用して3つの同一の対照太陽電池(対照セルIV)を調製する。
【0062】
得られた太陽電池を、I−Vテスターを使用して、実施例1に記載したようにして試験し、同じパラメータを記録する。加えて、実施例2に記載したように、TLM法を使用して接触抵抗(ρ)を測定する。
【0063】
ペースト4Aを使用して調製した3つのセル、および3つの対照セルIVについての平均の電気性能データを比較する。すべての測定値を対照セルの平均値に対して正規化した。そしてそれらを表4に示す。当該ニッケルナノ粒子含有ペーストは、対照ペーストよりも、曲線因子の顕著な向上および接触抵抗の顕著な低下をもたらす。
【0064】
【表4】
【0065】
実施例5:65Ω/□ 多結晶シリコンウェーハ上での、銀ペーストの中にNi合金を含む、および含まない太陽電池の調製
ヘレウス・マテリアルズ・テクノロジー・エルエルシー(ペンシルベニア州、ウエスト・コンショホッケン)から市販されている市販の銀伝導性ペースト、SOL9273MA、の構成成分(銀粉末、ガラス、ガラス添加剤、および有機物)、0.05〜5.0重量%の、500nm未満の粒径d50を有するニッケル合金(この範囲の中の異なる百分率を有する10個の試料)、ならびに0.1〜2.0%の、Al、ZnO、LiO、AgO、AgO、MoO、TiO、TeO、CoO、Co、Bi、CeO、CeF、SiO、MgO、PbO、ZrO、HfO、In、SnO、P、Ta、B、AgPO、LiCoO、LiNiO、Ni(PO、NiO、またはリン酸リチウムから選択される少なくとも1つのガラス添加剤を合わせることにより、電気伝導性ペースト(ペースト5)を調製する。すべての重量%は、得られるペーストの総重量に基づく。
【0066】
太陽電池を以下のようにして調製する:65Ω/□の面積抵抗を有する簡単にメタライゼーションできるP型多結晶(sc)ソーラーウェーハの裏側に、アルミニウムペースト(RuXing 8204)を印刷し、175℃で乾燥する。ペースト5をウェーハの前面に付与し、印刷し、150℃で乾燥する。次いでセルを、Despatch CDF加熱炉の中で、700℃を超える温度で3.6秒間同時焼成する。10個の同一の太陽電池をこのようにして調製する。
【0067】
加えて、10個の同一の対照太陽電池(対照セルV)を、ニッケル添加剤を含まない市販のペーストSOL9411を使用して、同じタイプの多結晶ソーラーウェーハ上に調製する。
【0068】
得られた太陽電池を、I−Vテスターを使用して、実施例1に記載したようにして試験し、同じパラメータを記録する。加えて、実施例2に記載したように、TLM法を使用して接触抵抗(ρ)を測定する。
【0069】
ペースト5を使用して調製した10個のセル、および10個の対照セルVについての平均の電気性能データを比較する。当該ニッケル合金ナノ粒子含有ペーストは、対照ペーストよりも、曲線因子および効率の顕著な向上および接触抵抗の顕著な低下をもたらす。
【0070】
実施例6:80Ω/□ 多結晶シリコンウェーハ上での、銀ペーストの中にNiおよびNi合金を含む、および含まない太陽電池の調製
ヘレウス・マテリアルズ・テクノロジー・エルエルシー(ペンシルベニア州、ウエスト・コンショホッケン)から市販されている市販の銀伝導性ペースト、SOL9273MA、の構成成分(銀粉末、ガラス、ガラス添加剤、および有機物)、0.05〜5.0重量%の、5%〜95%のニッケルを含有するニッケルおよびニッケル合金ナノ粒子混合物、ならびに5%〜95%のニッケル合金、ならびに0.1〜2.0%の、Al、ZnO、LiO、AgO、AgO、MoO、TiO、TeO、CoO、Co、Bi、CeO、CeF、SiO、MgO、PbO、ZrO、HfO、In、SnO、P、Ta、B、AgPO、LiCoO、LiNiO、Ni(PO、NiO、またはリン酸リチウムから選択される少なくとも1つのガラス添加剤(これらの範囲の中の異なる百分率を有する各ペーストの10個の試料)を合わせることにより、2つの電気伝導性ペースト(ペースト6および7)を調製する。このニッケルおよびニッケル合金ナノ粒子は、20nm〜500nmの粒径d50を有する。
【0071】
太陽電池を以下のようにして調製する:80Ω/□の面積抵抗を有する簡単にメタライゼーションできるP型多結晶(sc)ソーラーウェーハの裏側に、アルミニウムペースト(RuXing 8204)を印刷し、175℃で乾燥する。ペースト6またはペースト7をウェーハの前面に付与し、印刷し、150℃で乾燥する。次いでセルを、Despatch CDF加熱炉の中で、700℃を超える温度で3.6秒間同時焼成する。ペースト6を含有する10個の同一の太陽電池およびペースト7を含有する10個の同一の太陽電池をこのようにして調製する。
【0072】
加えて、10個の同一の対照太陽電池(対照セルVI)を、市販の銀ペーストSOL9273を使用して、調製する。得られた太陽電池を、I−Vテスターを使用して、実施例1に記載したようにして試験し、同じパラメータを記録する。加えて、実施例2に記載したように、TLMを使用して接触抵抗(ρ)を測定する。
【0073】
ペースト6およびペースト7を使用して調製した20個のセルおよび10個の対照セルVIについての平均の電気性能データを比較する。ニッケルおよびニッケル合金含有ペーストは、曲線因子の顕著な向上および顕著な効率の上昇をもたらす。
【0074】
実施例7:ニッケル−チタンナノ粒子を含む銀ペーストを有する多結晶シリコン太陽電池
ニッケル−チタンナノ粒子添加剤を電気伝導性ペーストの中に含める効果を確認するために、電気伝導性ペースト(ペースト8)を調製した。このペーストは、約85重量%の銀粒子、約4重量%のガラスフリット、約9重量%の有機媒体および約0.8重量%のNiTiナノ粒子を含んでいた。加えて、このペーストは、約0.1〜2重量%の、Al、ZnO、LiO、AgO、AgO、MoO、TiO、TeO、CoO、Co、Bi、CeO、CeF、SiO、MgO、PbO、ZrO、HfO、In、SnO、P、Ta、B、AgPO、LiCoO、LiNiO、Ni(PO、NiO、またはリン酸リチウムから選択される少なくとも1つのガラス添加剤を含む。このNiTiナノ粒子成分は、およそ50%のニッケルおよび50%のチタンを含む。このNiTiナノ粒子は、20nm〜500nmのd50を有する粉末として利用する。
【0075】
太陽電池を以下のようにして調製する:70Ω/□の面積抵抗を有するP型多結晶(mc)ソーラーウェーハ(156mm)の裏側に、アルミニウムペースト(RuXing 8204)を印刷し、175℃で乾燥する。メッシュ290、ワイヤ厚さ20ミクロン(20μm)、EOM 18ミクロン(18μm)、フィンガーライン幅60ミクロン(60μm)の特徴を有するスクリーンを使用して、150mm/sの速度でペースト8をウェーハの前面にスクリーン印刷し、フィンガーラインを形成する。印刷したウェーハを、次いで、150℃で乾燥した。次いでこのセルを、700℃を超える温度でおよそ3〜4秒間焼成する。
【0076】
得られた太陽電池を、I−Vテスターを使用して試験する。I−Vテスターの中のXeアーク灯を、既知の強度を持つ太陽光を使用して模擬するように設定し、太陽電池の前面(部)を照射して、I−V曲線を生成させる。この曲線を使用して、太陽電池効率(NCell)、短絡電流(Isc)、開回路電圧(Voc)、曲線因子(FF)、逆方向飽和電流(Irev2)、シャント抵抗(Rsh)、直列抵抗(Rs)、前面グリッド抵抗(front grid resistance)(Rfront)および接触抵抗(Rc)を含めた、電気性能の比較を与えるいくつかのパラメータを決定する。
【0077】
ペースト8から印刷した4つのフィンガーラインの電気性能データを一緒にし、平均を算出した。結果を表5に示す。このペーストは、低直列抵抗および許容できる曲線因子を成し遂げた。
【0078】
【表5】
【0079】
実施例8:より少ない量のニッケル−チタンナノ粒子を含む銀ペーストを有する多結晶シリコン太陽電池
電気伝導性ペーストの中に(実施例7と比べて)より少ない量のニッケル−チタンナノ粒子を含めることの効果を確認するために、2つの電気伝導性ペースト(ペースト9および10)を調製した。これらのペーストは、約85重量%の銀粒子、約5重量%のガラスフリット、約8重量%の有機媒体、および約0.1〜2重量%の、Al、ZnO、LiO、AgO、AgO、MoO、TiO、TeO、CoO、Co、Bi、CeO、CeF、SiO、MgO、PbO、ZrO、HfO、In、SnO、P、Ta、B、AgPO、LiCoO、LiNiO、Ni(PO、NiO、またはリン酸リチウムから選択される少なくとも1つのガラス添加剤を含んでいた。ペースト9は約0.24重量%のNiTiナノ粒子をも含んでおり、ペースト10は、約0.20重量%のNiTiナノ粒子を含んでいた。このNiTiナノ粒子成分は、約50%のニッケルおよび約50%のチタンを含んでいた。このNiTiナノ粒子は、20nm〜500nmのd50を有する粉末として利用した。
【0080】
80Ω/□の面積抵抗を有するP型多結晶(mc)ソーラーウェーハ(156mm)の上にペースト9を印刷したことを除いて、実施例7に示したものと同じパラメータに従って、太陽電池(ペースト9および10の各々を含む)を調製した。
【0081】
次いで、得られた太陽電池を、I−Vテスターを使用して試験した。I−Vテスターの中のXeアーク灯を、既知の強度を持つ太陽光を使用して模擬するように設定し、太陽電池の前面を照射して、I−V曲線を生成させる。この曲線を使用して、太陽電池効率(NCell)、短絡電流(Isc)、開回路電圧(Voc)、曲線因子(FF)、逆方向飽和電流(Irev2)、シャント抵抗(Rsh)、直列抵抗(Rs)、前面グリッド抵抗(Rfront)および接触抵抗(Rc)を含めた、電気性能の比較を与えるいくつかのパラメータを決定する。
【0082】
ペースト9およびペースト10から印刷した4つのフィンガーラインの電気性能データを一緒にし、平均を算出した。結果を表6に示す。これらのペーストは、優れた効率、曲線因子および開回路電圧を成し遂げた。
【0083】
【表6】
【0084】
上記の実施形態の幅広い創意工夫に富む技術思想から逸脱せず、上記の実施形態に変更を加えることができるということは、当業者にはわかるであろう。それゆえ、本発明は、開示された特定の実施形態に限定されるものではなく、添付の特許請求の範囲によって定められる本発明の趣旨および範囲に含まれる改変を包含することが意図されているということが理解される。