(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6096471
(24)【登録日】2017年2月24日
(45)【発行日】2017年3月15日
(54)【発明の名称】再放送制御装置
(51)【国際特許分類】
H04B 7/015 20060101AFI20170306BHJP
H04N 5/38 20060101ALI20170306BHJP
H04H 20/02 20080101ALI20170306BHJP
H04H 20/59 20080101ALI20170306BHJP
H04B 7/15 20060101ALI20170306BHJP
【FI】
H04B7/015
H04N5/38
H04H20/02
H04H20/59
H04B7/15
【請求項の数】6
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2012-240935(P2012-240935)
(22)【出願日】2012年10月31日
(65)【公開番号】特開2014-93548(P2014-93548A)
(43)【公開日】2014年5月19日
【審査請求日】2015年10月22日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004330
【氏名又は名称】日本無線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100119677
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100115794
【弁理士】
【氏名又は名称】今下 勝博
(72)【発明者】
【氏名】柴田 孝基
(72)【発明者】
【氏名】小野 芳人
【審査官】
川口 貴裕
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−093344(JP,A)
【文献】
特開平06−140875(JP,A)
【文献】
特開平06−054394(JP,A)
【文献】
特開平07−075064(JP,A)
【文献】
特開2001−189676(JP,A)
【文献】
特開2006−222789(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/005 − 7/015
H04B 3/00 − 3/44
H04B 3/50 − 3/60
H04B 1/76
H04B 7/14 − 7/22
H04H 20/00 − 20/95
H04N 5/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
放送波の再放送と前記放送波に代わる割り込み放送波の送信とを行う再放送装置と、前記再放送に応じた前記再放送装置への回り込みを抑圧する回り込みキャンセラとを制御する再放送制御装置であって、
前記割り込み放送波の送信が終了した時点から前記回り込みを抑圧するフィルタリングの過渡応答に要する時間以上に亘って、前記放送波の再放送の開始を保留する制御手段を備えた
ことを特徴とする再放送制御装置。
【請求項2】
放送波の再放送と前記放送波に代わる割り込み放送波の送信とを行う再放送装置と、前記再放送に応じた前記再放送装置への回り込みを抑圧する回り込みキャンセラとを制御する再放送制御装置であって、
前記割り込み放送波の送信が開始される時点で前記回り込みを抑制するフィルタリングに適用される係数を保持する係数保持手段と、
前記放送波の再放送が再開される時点で前記保持された係数を前記フィルタリングに適用する係数引き継ぎ手段と
を備えたことを特徴とする再放送制御装置。
【請求項3】
放送波の再放送と前記放送波に代わる割り込み放送波の送信とを行う再放送装置と、前記再放送に応じた前記再放送装置への回り込みを抑圧する回り込みキャンセラとを制御する再放送制御装置であって、
前記割り込み放送波が送信される期間に亘って、前記回り込みを抑制するフィルタリングを規制する制御手段を備えた
ことを特徴とする再放送制御装置。
【請求項4】
放送波の再放送と前記放送波に代わる割り込み放送波の送信とを行う再放送装置と、前記再放送に応じた前記再放送装置への回り込みを抑圧する回り込みキャンセラとを制御する再放送制御装置であって、
前記割り込み放送波が送信される期間に亘って、前記回り込みキャンセラの稼働を規制する制御手段を備えた
ことを特徴とする再放送制御装置。
【請求項5】
放送波の再放送と前記放送波に代わる割り込み放送波の送信とを行う再放送装置と、前記再放送に応じた前記再放送装置への回り込みを抑圧する回り込みキャンセラとを制御する再放送制御装置であって、
前記割り込み放送波が送信される期間に亘って、前記再放送の対象となる放送波の受信を規制し、前記割り込み放送波の送信が終了した後における前記放送波の再放送の再開にあたり、前記回り込みキャンセラのフィルタリングに適用される係数を初期値に設定する制御手段を備えた
ことを特徴とする再放送制御装置。
【請求項6】
放送波の再放送と前記放送波に代わる割り込み放送波の送信とを行う再放送装置と、前記再放送に応じた前記再放送装置への回り込みを抑圧する回り込みキャンセラとを制御する再放送制御装置であって、
前記割り込み放送波が送信される期間に亘って、前記回り込みを抑制するフィルタリングに適用される係数を初期値に設定する制御手段を備えた
ことを特徴とする再放送制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放送波の再放送とその放送波に代わる割り込み放送波の送信とを行う再放送装置と、この再放送装置に対する再放送波の回り込みを抑圧する回り込みキャンセラとの何れかの稼働を支援する再放送支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
AM方式のラジオ放送波をトンネル等の内部に再送信する中継装置には、再送信された放送波の回り込みを抑圧する回り込みキャンセラが搭載される。
図7は、回り込みキャンセラが搭載された中継装置の構成例を示す図である。
【0003】
図において、放送局からアンテナ41に到来した放送波は、局部発振器42が生成する局発信号(周波数=fLr)に基づいて周波数変換器43が行う周波数変換の下で、ベースバンド信号に変換される。このようなベースバンド信号は、後述する回り込み経路の伝送路推定の下でその回り込み経路の遅延時間,振幅比,および位相に基づいて生成した逆位相波を用いた回り込み波の除去や抑圧が加算器44によって施される。
【0004】
周波数オフセット付加部45は、制御部46の配下で乗算器47と連係することにより、電波法で既定されている再放送波の周波数許容偏差の確保に必要な周波数オフセットを付加する。さらに、周波数変換器49は、局部発振器48によって生成された局発信号に基づいて行う周波数変換の下で所望の周波数の再放送波を生成し、アンテナ50からトンネル等の内部に放射する。
【0005】
一方、制御部46は、以下の処理を行う。
(1) 配下の周波数オフセット付加部45によって生成される周波数オフセット量の周波数を所定のインターバルで2通りの周波数Δf2、(Δf2+k)に切り替え、これらの周波数の周波数オフセット量に応じて個別に得られるベースバンド信号を示す式の対からなる連立方程式の解として、回り込み経路の伝送路推定を行う。
【0006】
(2) このような伝送路推定の結果として得られた上記回り込み経路の遅延時間、振幅比、および位相より回り込み波が相殺されるタップ係数をトランスバーサルフィルタ51に設定する。
【0007】
トランスバーサルフィルタ51は、アンテナ50に給電されるべき再放送波の一部に上記係数に基づく濾波処理を施すことによって、既述の回り込み経路で生じる歪みと逆位相の帰還信号を生成する。
加算器44は、上記ベースバンド信号にこのような帰還信号を加算することによって、回り込みの相殺を図る。以下、このようにして再送信波の回り込みのキャンセルが図られる期間については、「再送信期間」という。
【0008】
また、緊急時等における割り込み放送は、周波数変換器49に代わる送信機53の出力にスイッチ52を介してアンテナ50の給電点が接続されることにより、その送信機53によって行われる。
なお、割り込み放送が行われている期間(以下、「割り込み放送期間」という。)には、送信機53によって生成される割り込み放送波と通常の再放送波との占有帯域が同じであっても、その割り込み放送波は、再送信波とは無相関である。したがって、このような期間には、トランスバーサルフィルタ51には、制御部46の配下で、再送信波の回り込みをキャンセルするために設定される係数とは無相関な係数が設定され続ける。
【0009】
なお、本発明に関連性がある先行技術としては、以下に列記する特許文献1〜3と非特許文献1とがある。
【0010】
(1) 「ディジタル・オーディオ放送を受信するディジタル・オーディオ受信機と、アナログ・オーディオ放送を受信するラジオ・データ・システム受信機と、前記ディジタル・オーディオ受信機および前記ラジオ・データ・システム受信機からの放送を切り替える音声切替部と、前記音声切替部で切り替えられた音声を出力する音声出力部と、前記ディジタル・オーディオ受信機および前記ラジオ・データ・システム受信機からの割り込み情報を制御するマイコン制御部と、前記マイコン制御部にプログラム制御を実行させるための入力機器部と、前記マイコン制御部を介し、前記受信した放送および前記割り込み情報を表示するための表示部とを有する」ことにより、「DAB受信機およびRDS受信機を備えた放送受信機において、ユーザが希望する割り込み情報を聴取する機会を増やすことのできる」点に特徴がある放送受信機…特許文献1
【0011】
(2) 「デジタル音声放送または多重FM放送が受信可能であるとともに前記デジタル音声放送または前記多重FM放送における割り込み放送の開始を検知して自動的に前記割り込み放送の受信・再生を行う割り込み動作を開始させ、前記割り込み放送の終了を検知すると前記割り込み動作を解除させるように制御を行う制御手段を備えるラジオ受信機において、入力された音声信号をリアルタイムに話速変換処理して出力する話速変換装置を設けるとともに、前記制御手段は、割り込み放送の開始を検知して割り込み動作を開始させた場合に、前記話速変換装置を自動的に起動させて音声入力された前記割り込み放送の話速を遅延させて出力する話速変換処理を行わせ、前記割り込み放送の終了を検知すると自動的に前記話速変換処理を停止させるように前記話速変換装置を制御する割り込み放送の話速自動変換機能を備える」ことにより、「デジタル音声放送または多重FM放送における割り込み放送の開始、終了を検知して、自動的にその番組のアナウンスの話速を老齢者にも聴き取りやすい緩い速度に変換して出力する」点に特徴があるラジオ受信機…特許文献2
【0012】
(3) 「緊急告知FMラジオにおいて、無線FM放送を受信する無線放送受信手段と、CATVネットワークからFM放送を受信するネットワーク受信手段と、前記FM放送に含まれる所定のDTMF(ダイアルトーン・マルチフレケンシー)信号を検出する検出手段と、前記検出手段から検出信号が与えられると前記ラジオの電源がオフの場合であってもオンとして大音量の出力を生じる音声出力手段とをそなえる」ことにより、「コミュニティFM放送を利用する」点に特徴がある緊急告知FMラジオ…特許文献3
【0013】
(4) 『警報電文内で示される「強い揺れが推定される地域」に自局の位置が含まれているかどうかを判別して割り込み放送を行う』ことにより、「高速道路上のドライバーによる過剰反応に起因する二次的な自己や災害の可能性を下げる」点に特徴があるコミュニティ放送局向け緊急地震速報システム…非特許文献1
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2001−156661号公報
【特許文献2】特開2006−101425号公報
【特許文献3】実用新案登録 第3118188号公報
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】放送技術2009年2月号 ページ95〜105、「ラジオ放送局向け緊急地震速報システムの開発と運用」 神谷剣治他著
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
ところで、このような従来例では、割り込み放送が終了して通常の再送信が開始される時点に続く所定の期間には、トランスバーサルフィルタ51の係数は、制御部46の配下で行われるフィードバック制御により既述の回り込みがキャンセルされる方向で更新される。
【0017】
しかし、トランスバーサルフィルタ51は、その内部に、先行する割り込み放送中に入力された割り込み放送波の成分が所定の期間(トランスバーサルフィルタ51のタップ数に比例する。)に亘って残存するために、過渡的に発振状態に陥り、あるいは回り込みのキャンセルを定常的に行える状態に落ち着くまで長時間を要する可能性が高かった。
【0018】
本発明は、割り込み放送の終了後における放送波の再送信の再開に際して、再送信波の回り込みのキャンセルを確度高く安定に実現できる再放送支援装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
請求項1に記載の発明では、放送波の再放送と前記放送波に代わる割り込み放送波の送信とを行う再放送装置と、前記再放送に応じた前記再放送装置への回り込みを抑圧する回り込みキャンセラとの何れかの稼働を支援する再放送支援装置において、前記割り込み放送波の送信が終了した時点から前記回り込みを抑圧するフィルタリングの過渡応答に要する時間以上に亘って、前記放送波の再放送の開始を保留する。
【0020】
すなわち、割り込み放送波の送信が終了した後には、放送波は、このような割り込み放送波が回り込み波に該当しないにもかかわらず稼働し続けていたフィルタの応答が過渡的に収まる時間が経過するまで、再放送の対象とはならない。
【0021】
請求項2に記載の発明では、放送波の再放送と前記放送波に代わる割り込み放送波の送信とを行う再放送装置と、前記再放送に応じた前記再放送装置への回り込みを抑圧する回り込みキャンセラとの何れかの稼働を支援する再放送支援装置において、係数保持手段は、前記割り込み放送波の送信が開始される時点で前記回り込みを抑制するフィルタリングに適用される係数を保持する。係数引き継ぎ手段は、前記放送波の再放送が再開される時点で前記保持された係数を前記フィルタリングに適用する。
【0022】
すなわち、割り込み放送波の送信が終了した後には、回り込みを抑制するフィルタは、先行して行われていた放送波の再放送波が終了した時点の状態に速やかに復帰し、かつ後続する放送波の再放送の再開に適応して稼働することができる。
【0023】
請求項3に記載の発明では、放送波の再放送と前記放送波に代わる割り込み放送波の送信とを行う再放送装置と、前記再放送に応じた前記再放送装置への回り込みを抑圧する回り込みキャンセラとの何れかの稼働を支援する再放送支援装置において、制御手段は、前記割り込み放送波が送信される期間に亘って、前記回り込みを抑制するフィルタリングを規制する。
【0024】
すなわち、割り込み放送波の送信が終了した後における放送波の再放送の再開は、回り込みを抑制するフィルタの状態が初期化された状態で開始される。
【0025】
請求項4に記載の発明では、放送波の再放送と前記放送波に代わる割り込み放送波の送信とを行う再放送装置と、前記再放送に応じた前記再放送装置への回り込みを抑圧する回り込みキャンセラとの何れかの稼働を支援する再放送支援装置において、制御手段は、前記割り込み放送波が送信される期間に亘って、前記回り込みキャンセラの稼働を規制する。
【0026】
すなわち、割り込み放送波の送信が終了した後における放送波の再放送の再開は、回り込みキャンセラの状態が初期化された状態で開始される。
【0027】
請求項5に記載の発明では、放送波の再放送と前記放送波に代わる割り込み放送波の送信とを行う再放送装置と、前記再放送に応じた前記再放送装置への回り込みを抑圧する回り込みキャンセラとの何れかの稼働を支援する再放送支援装置において、制御手段は、前記割り込み放送波が送信される期間に亘って、前記再放送の対象となる放送波の受信を規制する。
【0028】
すなわち、割り込み放送波の送信が終了した後における放送波の再放送の再開は、回り込みキャンセラの状態が初期化された状態で開始される。
【0029】
請求項6に記載の発明では、放送波の再放送と前記放送波に代わる割り込み放送波の送信とを行う再放送装置と、前記再放送に応じた前記再放送装置への回り込みを抑圧する回り込みキャンセラとの何れかの稼働を支援する再放送支援装置において、制御手段は、前記割り込み放送波が送信される期間に亘って、前記回り込みを抑制するフィルタリングに適用される係数を初期値に設定する。
【0030】
すなわち、割り込み放送波の送信が終了した後における放送波の再放送の再開は、回り込みキャンセラの状態が初期化された状態で開始される。
【0031】
請求項7に記載の発明では、放送波の再放送と前記放送波に代わる割り込み放送波の送信とを行う再放送装置と、前記再放送に応じた前記再放送装置への回り込みを抑圧する回り込みキャンセラとの何れかの稼働を支援する再放送支援装置において、前記回り込みキャンセラによって推定された前記回り込みの成分のレベルが所定の閾値を下回る期間に亘って、前記回り込みを抑制するフィルタリングを規制する。
【0032】
すなわち、回り込みキャンセラによって推定された回り込みの成分のレベルが所定の閾値を超える契機として割り込み放送波の送信が終了が判別され、このような送信が終了した後における放送波の再放送の再開は、回り込みを抑制するフィルタの状態が初期化された状態で開始される。
【0033】
請求項8に記載の発明では、放送波の再放送と前記放送波に代わる割り込み放送波の送信とを行う再放送装置と、前記再放送に応じた前記再放送装置への回り込みを抑圧する回り込みキャンセラとの何れかの稼働を支援する再放送支援装置において、制御手段は、前記回り込みキャンセラによって推定された前記回り込みの成分のレベルが所定の閾値を下回る期間に亘って、前記回り込みキャンセラの稼働を規制する。
【0034】
すなわち、回り込みキャンセラによって推定された回り込みの成分のレベルが所定の閾値を超える契機として割り込み放送波の送信が終了が判別され、このような送信が終了した後における放送波の再放送の再開は、回り込みキャンセラの状態が初期化された状態で開始される。
【0035】
請求項9に記載の発明では、放送波の再放送と前記放送波に代わる割り込み放送波の送信とを行う再放送装置と、前記再放送に応じた前記再放送装置への回り込みを抑圧する回り込みキャンセラとの何れかの稼働を支援する再放送支援装置において、制御手段は、前記回り込みキャンセラによって推定された前記回り込みの成分のレベルが所定の閾値を下回る期間に亘って、前記再放送の対象となる放送波の受信を規制する。
【0036】
すなわち、回り込みキャンセラによって推定された回り込みの成分のレベルが所定の閾値を超える契機として割り込み放送波の送信が終了が判別され、このような送信が終了した後における放送波の再放送の再開は、回り込みキャンセラの状態が初期化された状態で開始される。
【0037】
請求項10に記載の発明では、放送波の再放送と前記放送波に代わる割り込み放送波の送信とを行う再放送装置と、前記再放送に応じた前記再放送装置への回り込みを抑圧する回り込みキャンセラとの何れかの稼働を支援する再放送支援装置において、制御手段は、前記回り込みキャンセラによって推定された前記回り込みの成分のレベルが所定の閾値を下回る期間に亘って、前記回り込みを抑制するフィルタリングに適用される係数を初期値に設定する。
【0038】
すなわち、回り込みキャンセラによって推定された回り込みの成分のレベルが所定の閾値を超える契機として割り込み放送波の送信が終了が判別され、このような送信が終了した後における放送波の再放送の再開は、回り込みキャンセラの状態が初期化された状態で開始される。
【発明の効果】
【0039】
本発明によれば、割り込み放送の終了後には、回り込みを抑圧するために備えられているフィルタの過渡応答に起因する伝送品質の低下を伴うことなく、放送波の再放送が再開される。
【0040】
また、本発明では、割り込み放送の終了後には、回り込みを抑圧するために備えられているフィルタの過渡応答が長時間に亘る場合であっても、その過渡応答が収束する時間に亘る待機を経ることなく速やかに、かつ伝送品質の低下を伴うことなく、放送波の再放送が再開される。
【0041】
さらに、本発明では、割り込み放送の終了後には、回り込みキャンセラの過渡応答が長時間に亘る場合であっても、その過渡応答が収束する時間に亘る待機を経ることなく速やかに、かつ伝送品質の低下を伴うことなく、放送波の再放送が再開される。
【0042】
したがって、本発明が適用された再放送系は、多様な方式および特性の回り込みキャンセラの適用が可能となり、かつ再放送される放送波だけではなく、割り込み放送波の何れも、高い伝送品質で確度高く安定に応答し、多様な契機や頻度で行われるべき割り込み放送に対する柔軟な適応が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【
図2】本発明の第一の実施形態における制御部の動作フローチャートである。
【
図4】本発明の第二の実施形態における制御部の動作フローチャートである。
【
図6】本発明の第三の実施形態における制御部の動作フローチャートである。
【
図7】回り込みキャンセラが搭載された中継装置の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態について詳細に説明する。
〔第一の実施形態〕
図1は、本発明の第一の実施形態を示す図である。
図において、
図7に示すものと機能および構成が同じものについては、同じ符号を付与し、ここでは、その説明を省略する。
【0045】
本実施形態と
図7に示す従来例との構成の相違点は、以下の点にある。
(1) 制御部46に代えて制御部11が備えられる。
(2) 送信機53に代えて送信機12が備えられる。
(3) 送信機12の制御端子に制御部11の対応する出力ポートが接続された点にある。
【0046】
なお、上記制御部11および送信機12の基本的な機能については、それぞれ
図7に示す制御部46および送信機53の機能と同じであるので、ここでは、その説明を省略する。
図2は、本発明の第一の実施形態における制御部の動作フローチャートである。
以下、
図1および
図2を参照して本実施形態の動作を説明する。
本発明の特徴は、本実施形態では、制御部11によって以下の処理が行われる点にある。
【0047】
(1) 「再送信期間」の定常状態には、送信機12の稼働、またはその送信機12による割り込み放送波の生成を規制し(
図2ステップS1)、かつスイッチ52の接点を主導的に制御することにより、アンテナ50の給電点に周波数変換器49の出力を接続する(
図2ステップS2)。
【0048】
(2) 「割り込み放送期間」には、送信機12の稼働の規制、またはその送信機12による割り込み放送波の生成の規制を解除し(
図2ステップS3)、かつスイッチ52の接点を主導的に制御することにより、アンテナ50の給電点に送信機12の出力を接続する(
図2ステップS4)。
【0049】
(3) 「割り込み放送期間」から「再送信期間」に移行した直後には、以下の処理を行う。
(3-1) 送信機12の稼働の規制、またはその送信機12による割り込み放送波の生成を規制する(
図2ステップS5)。
【0050】
(3-2) スイッチ52の接点を主導的に制御することにより、既定の長さ(トランスバーサルフィルタ51の段数に比例し、そのトランスバーサルフィルタ51が制御部11の配下で定常状態に移行するために要する時間)の期間に亘って、アンテナ50の給電点を送信機12の出力に接続したまま待機する(
図2ステップS6)。
【0051】
(3-3) このような期間が経過した時点で、アンテナ50の給電点に周波数変換器49の出力を接続する(
図2ステップS7)。
【0052】
すなわち、「割り込み放送期間」から「再送信期間」に移行した直後には、上記期間に亘って放送波の再送信と割り込み放送波の送信との何れもが行われない。
【0053】
このように本実施形態によれば、割り込み放送波の送信が終了した後における放送波の再送信は、トランスバーサルフィルタ51がその割り込み放送波の成分が残存する状態から脱却した後に、開始される。
【0054】
したがって、割り込み放送の終了後における放送波の再送信は、回り込みキャンセラーが過渡的に好ましくない応答をすることなく、確度高く安定に再開される。
【0055】
〔第二の実施形態〕
図3は、本発明の第二の実施形態を示す図である。
図において、
図7に示すものと機能および構成が同じものについては、同じ符号を付与し、ここでは、その説明を省略する。
【0056】
本実施形態と
図7に示す従来例との構成の相違点は、制御部46に代えて制御部21が備えられた点にある。
なお、上記制御部21の基本的な機能については、それぞれ
図7に示す制御部46の機能と同じであるので、ここでは、その説明を省略する。
【0057】
図4は、本発明の第二の実施形態における制御部の動作フローチャートである。
以下、
図3および
図4を参照して本実施形態の動作を説明する。
本発明の特徴は、本実施形態では、制御部21によって以下の処理が行われる点にある。
【0058】
(1) 「再送信期間」の定常状態には、従来例と同様に、トランスバーサルフィルタ51に設定されるべき係数を求めて更新し、その係数の最新の値を主記憶の所定の記憶領域に格納して保持する(
図4ステップS1)。
【0059】
(2) 「再送信期間」から「割り込み放送期間」に移行した後には、トランスバーサルフィルタ51に設定されるべき係数を更新しても、その係数を保持する処理を省略する(
図4ステップS2)。
【0060】
(3) 「割り込み放送期間」から「再送信期間」に移行した時点では、先行する「再送信期間」に上記記憶領域に保持されていた最新の係数を読み出し、その係数をトランスバーサルフィルタ51に初期値として設定し(
図4ステップS3)、さらに、従来例と同様に、トランスバーサルフィルタ51に設定されるべき係数を求めて更新し、その係数の最新の値を主記憶の所定の記憶領域に格納して保持する(
図4ステップS4)。
【0061】
すなわち、「割り込み放送期間」から「再送信期間」に移行した時点では、トランスバーサルフィルタ51は、その「割り込み放送期間」に先行する「再送信期間」に設定されていた最新の係数が初期値として適用されることにより、回り込みキャンセルに必要な濾波処理を続行できる。
【0062】
このように本実施形態によれば、割り込み放送波の送信が終了した後における放送波の再送信は、トランスバーサルフィルタ51が速やかに定常状態に収束可能な条件で開始される。
【0063】
したがって、割り込み放送の終了後における放送波の再送信は、回り込みキャンセラーが過渡的に好ましくない応答をすることなく、確度高く安定に再開される。
【0064】
〔第三の実施形態〕
図5は、本発明の第三の実施形態を示す図である。
図において、
図7に示すものと機能および構成が同じものについては、同じ符号を付与し、ここでは、その説明を省略する。
本実施形態と
図7に示す従来例との構成の相違点は、以下の点にある。
【0065】
(1) 制御部46に代えて制御部31が備えられる。
(2) スイッチ52に代えてスイッチ32が備えられる。
(3) 周波数変換器43、47、49、加算器44、局部発振器42、48、スイッチ32の全てまたは一部が制御端子を有し、これらの制御端子には制御部31の対応する出力ポートが接続される。
【0066】
なお、上記制御部31の基本的な機能については、
図7に示す制御部46の機能と同じであるので、ここでは、その説明を省略する。
【0067】
図6は、本発明の第三の実施形態における制御部の動作フローチャートである。
以下、
図5および
図6を参照して本実施形態の動作を説明する。
本発明の特徴は、本実施形態では、制御部31によって以下の処理が行われる点にある。
【0068】
(1) 「再送信期間」の定常状態には、従来例と同様に、トランスバーサルフィルタ51に設定されるべき係数を求めて更新し、その係数の最新の値を主記憶の所定の記憶領域に格納して保持する(
図6ステップS1)。
【0069】
(2) 「割り込み放送期間」には、周波数変換器43、47、49、加算器44、局部発振器42、48、スイッチ32、トランスバーサルフィルタ51、周波数オフセット付加部45の全てまたは一部の動作を規制することにより、以下に列記する項目の全てまたは一部を制止させる(
図6ステップS2)。
【0070】
(2-1) トランスバーサルフィルタ51によって行われる濾波処理
(2-2) トランスバーサルフィルタ51および加算器44の連係によって行われる回り込みキャンセル
【0071】
(2−3)アンテナ41に到来した放送波の受信(周波数変換器43によって行われる周波数変換が含まれてもよい。)
(2−4)トランスバーサルフィルタ51に設定される係数の更新
(トランスバーサルフィルタ51に設定される係数の更新の制止は、既定の初期値へのプリセットおよび固定
に相当する。)
【0072】
(3) 「割り込み放送期間」から「再送信期間」に移行した時点には、上記項目の全ての制止を解除する(
図6ステップS3)。
【0073】
すなわち、「割り込み放送期間」から「再送信期間」に移行した時点では、トランスバーサルフィルタ51は、その「割り込み放送期間」に制止されていた項目の組み合わせに応じて、さらに先行する「再送信期間」に設定されていた状態を引き継ぐことなく回り込みキャンセルに必要な濾波処理を続行できる。
【0074】
このように本実施形態によれば、割り込み放送が終了した後における放送波の再送信は、トランスバーサルフィルタ51が速やかに定常状態に収束可能な条件下で開始される。
【0075】
したがって、割り込み放送の終了後における放送波の再送信は、回り込みキャンセラーが過渡的に好ましくない応答をすることなく、確度高く安定に再開される。
【0076】
なお、本実施形態では、上記項目の制止が「割り込み放送期間」に行われている。
しかし、このような期間は、「割り込み放送期間」に限定されず、例えば、トランスバーサルフィルタ51の係数を更新するために行う処理の過程で制御部31によって推定された回り込み波のレベルが所定の閾値を下回る期間に設定されてもよい。
【0077】
また、上述した各実施形態では、所望の精度や応答性で回り込みキャンセルを実現できるならば、トランスバーサルフィルタ51は、IIRフィルタその他の如何なる方式のフィルタで代替されてもよい。
【0078】
さらに、上述した各実施形態では、本発明は、親局から到来した放送波の搬送波周波数に意図的に既知の周波数オフセット(電波法上の規格における周波数の許容偏差内)を付加して再送信する中継装置に適用されている。
【0079】
しかし、本発明は、このような中継装置に限定されず、回り込みキャンセルを実現する装置に適用されてもよく、あるいはこのような装置に組み込み可能に構成された別体の装置として構成されてもよい。
【0080】
また、本発明は、AM方式のラジオ放送に限定されず、例えば、セグメント単位で再放送波と割り込み放送波との切り替えが行われるディジタル方式の放送系にも同様に適用可能である。
【0081】
また、本発明は、上述した実施形態に限定されず、本発明の範囲において多様な実施形態の構成が可能であり、構成要素の全てまたは一部に如何なる改良が施されてもよい。
【符号の説明】
【0082】
11,31,46 制御部
12 送信機
32,52 スイッチ
41,50 アンテナ
42,48 局部発振器
43,47,49 周波数変換器
44 加算器
45 周波数オフセット付加部
51 トランスバーサルフィルタ