【実施例1】
【0009】
図1〜3は、実施例1の圧縮機Aの外観図である。圧縮機Aは、2つのクランクケース20a、20b、クランクケース20a、20bにそれぞれ連結された2つのシリンダ12a、12b、2つのシリンダ12a、12bにそれぞれ連結されたシリンダヘッド15a、15b、クランクケース20a、20bの間で保持されたモータM等を含む。シリンダヘッド15a、15bの内部は、それぞれパイプD1、D2により連結されている。シリンダヘッド15aにはノズルE1、E2が設けられている。
【0010】
図4は、
図3のA−A断面図である。モータMの回転軸42の一端(第1端部)は、クランクケース20a内に貫通して、バランサBaを介してピストンPaが連結されている。回転軸42の他端(第2端部)は、クランクケース20b内に貫通してバランサBbを介してピストンPbが連結されている。ピストンPa、Pbは、それぞれクランクケース20a、20b内に収納されている。ピストンPa、Pbの回転角度位相は180度ずれている。モータMが回転することにより、ピストンPa、Pbの先端部がそれぞれシリンダ12a、12b内を摺動してシリンダ12a、12b内のそれぞれのチャンバ13a、13bの容積が増減する。これにより、ノズルE1を介してシリンダヘッド15a、15b内に空気が吸引されてシリンダ12a、12bのチャンバ13a、13b内でピストンPa、Pbにより圧縮されてノズルE2を介して空気が排出される。その際、パイプD1、D2はシリンダヘッド15a、15b間の空気の送出に用いられる。対象製品をノズルE2側に取付けることにより圧縮機Aは圧縮機として機能するが、対象製品をノズルE1側に取付けることにより圧縮機Aは真空機として機能する。
【0011】
モータMについて説明する。モータMは、コイル30、ロータ40、ステータ50、プリント基板PB等を有している。ステータ50は、環状であり金属製である。ステータ50は、クランクケース20a、20bに挟まれて保持されている。ステータ50には、複数のコイル30が巻回されている。ロータ40は、ロータ鉄心44、永久磁石46及び回転軸42からなる。コイル30は、プリント基板PBと電気的に接続されている。
【0012】
プリント基板PBは、剛性を有した絶縁性の基板上に導電パターンが形成されたものであるが、これに限定されず可撓性を有したフレキシブル基板であってもよい。プリント基板PBには、ロータ40の位置を検出可能な磁気センサが実装されているが、例えば、コイル30に電力を供給するための電源コネクタや信号コネクタク、その他の電子部品が実装されていてもよい。また、電子部品は、コイル30の通電状態を制御するためのFET等の出力トランジスタ(スイッチング素子)やコンデンサ等であってもよい。コイル30が通電されることにより、ステータ50が励磁される。プリント基板PBは、クランクケース20b側に配置されている。
【0013】
回転軸42には、ロータ鉄心44が固定され、ロータ鉄心44の外周には、1つまたは複数の永久磁石46が固定されている。回転軸42は、クランクケース20a、20b内に貫通して両端部を軸受に回転可能に支持されている。永久磁石46は、ステータ50の内周面と対向している。コイル30が通電されることにより、ステータ50が励磁される。従って、永久磁石46とステータ50との間に磁気的吸引力、反発力が作用する。この磁力の作用により、ロータ40はステータ50に対して回転する。モータMはステータ50の内側に配置されたロータ40が回転するインナーロータ型のモータである。
【0014】
回転軸42の一端側にはファンFが固定されている。ファンFはクランクケース20a側に配置されている。具体的には、圧入、嵌合または接着によりファンFが回転軸42に固定されているが、固定の方法はこれに限定されない。モータMが回転することによりファンFも回転してモータMを直接冷却することができる。これによりモータMの内部、例えばコイル30の放熱を促進することができる。また、ファンFが回転することによりファンF周辺に空気が流れるため、クランクケース20a側にも空気が流れる。これにより、ピストンPaの摺動や空気の断熱圧縮等に起因して加熱するクランクケース20aをも冷却できる。また、ファンFにより、ステータ50と永久磁石46との隙間を通過してクランクケース20b側にも空気が流れる。これにより、クランクケース20b側も冷却することができる。
【0015】
クランクケース20a、20bについて説明する。クランクケース20a、20bは、形状、大きさ、材質が同じである。従って、クランクケース20aについて説明する。クランクケース20aは、回転軸42の軸心方向に並んだ、略円筒状の筒部21a、包囲部23aを含む。筒部21a、包囲部23aは、回転軸42の周囲を包囲する形状である。回転軸42の軸心方向に直交する方向での筒部21aの大きさは、包囲部23aよりも小さい。即ち、筒部21aの径は、包囲部23aの径よりも小さい。
図4に示すように、筒部21aの一部は、包囲部23aの内側に位置している。筒部21aはピストンPaを収納している。包囲部23aは、モータMの一部を包囲している。クランクケース20aには、筒部21aからは筒部21aの径方向に延びた筒部28aが設けられている。筒部28aにシリンダ12aが連結されている。シリンダ12aを挟むようにしてネジS2により筒部28aとシリンダヘッド15aとが固定されている。クランクケース20bについても同様である。
【0016】
クランクケース20aは、回転軸42の一端が貫通した内側壁部22a、内側壁部22aと対向する部分に取付けられたカバーCVaを含む。内側壁部22aは、包囲部23a内に位置している。筒部21aは、内側壁部22aと対向する外側部分に開口が形成されており、カバーCVaはこの開口に取付けられている。カバーCVaは、内側壁部22aと対向する外側壁部の一例である。筒部21a、内側壁部22a、カバーCVaによりクランク室が画定されている。クランク室には、ピストンPaと回転軸42とを接続する部分、即ち、ピストンPaの根元部、バランサBa、回転軸42の一端が収納される。同様に、回転軸42の他端が貫通した内側壁部22b、内側壁部22bと対向する部分に取付けられたカバーCVbを含む。筒部21b、内側壁部22b、カバーCVbにより、ピストンPbの根元部、バランサBb、回転軸42の他端を収納したクランク室が画定される。
【0017】
図1〜3に示すように、包囲部23aには回転軸42周方向に複数の開口部24aが設けられている。開口部24aからはファンFが露出している。これにより、ファンFの回転に伴って包囲部23aからの空気の出入りを確保できると共にモータMの放熱が促進される。同様に、包囲部23bにも複数の開口部24bが設けられている。開口部24bからはプリント基板PBが露出している。これにより、ファンFの回転に伴って包囲部23bからの空気の出入りを確保できると共にモータMの放熱が促進される。また、前述したように筒部21aの径は、包囲部23aの径よりも小さいため、回転軸42軸方向からのファンFへの空気の出入りを確保することができる。また、複数の開口部24a、24bが設けられているので、クランクケース20a、20bを軽量化でき、クランクケース20a、20bの材料費を削減でき、製造コストも抑制されている。
【0018】
図1〜3に示すように、クランクケース20a、20bは、モータMを挟むようにして複数のネジS1により固定されている。包囲部23a、23bの間からは、ステータ50の外周部が露出している。これにより、ステータ50の外周部を完全に覆う場合と比較して、クランクケース20a、20bの大型化を抑制でき、製造コストが低減されている。また、モータMを覆うクランクケース20a、20b以外の部品も設けられていないため、部品点数も削減されている。また、ステータ50が外部に露出することにより、コイル30から熱を受けたステータ50の放熱を促進できる。また、回転軸42方向に長い、出力の大きなモータに変更することも容易である。
【0019】
図5A、5Bは、それぞれ
図4の円X、Yで囲った部分の拡大図である。包囲部23aの内側には、内周面23a4、内周面23a4よりも内径が大きい内周端面23a5、が形成されている。内周面23a4、内終端面23a5とにより、包囲部23aの内側に周方向にわたって段部が形成される。同様に、包囲部23bにも、内周面23b4、内周端面23b5が形成されている。この段部がモータMのステータ50の縁に係合している。これにより、ステータ50を基準として、クランクケース20a、20bの径方向での位置が規定される。即ち、モータMのステータ50がクランクケース20a、20bの位置決め部材として機能している。このため、少ない部品点数でクランクケース20a、20b間の位置精度を確保できる。
【0020】
クランクケース20a、20bは、形状、大きさが同一である。このため、ステータ50とクランクケース20aとの間にファンFを配置し、ステータ50とクランクケース20bとの間にプリント基板PBを配置することにより、デッドスペースが生じることを防いでいる。
【0021】
また、上述したように、筒部21aは包囲部23aよりも径方向に小さい。筒部21b、包囲部23bについても同様である。これにより、大きなモータMを採用して出力を確保しつつ、クランクケース20a、20bが小型化され製造コストも抑制されている。
【0022】
上述したようにピストンPaと回転軸42との接続部分は、筒部21a、内側壁部22a、カバーCVaにより包囲されている。このため、ピストンPaの駆動音等が外部に漏れることが抑制されている。ピストンPbと回転軸42との接続部分も、筒部21b、内側壁部22b、カバーCVbにより包囲され、ピストンPbの駆動音等が外部に漏れることが抑制されている。
【0023】
開口部24aから露出した筒部21aの一部分には孔25aが設けられている。孔25aは、バランサBaと回転軸42とを固定しているネジへドライバによりアクセスするための孔である。孔25aが開口部24aから露出した筒部21aの部分に設けられているので、バランサBaと回転軸42とを固定しているネジへ容易にアクセスできる。尚、孔25aには、取外し可能なゴム製の蓋がされている。また、孔25aはネジが切ってあってもよく、その場合ゴム製の蓋の代わりにネジを締めることで蓋にしてもよい。
【0024】
また、ファンFは合成樹脂製であるため、安価に製造できる。
【0025】
上記実施例では、ノズルE1を介してシリンダヘッド15a、シリンダ12a内に空気が導入されるがこのような構成に限定されない。例えば、内側壁部22aや、包囲部23aに囲まれている筒部21aの一部分に孔を設けてこの孔を介してクランクケース20a内に空気を導入し、ピストンPaの先端部に開口を設けてこの開口を開閉する逆止弁を設けてシリンダ12a、シリンダヘッド15a内に空気を導入するようにしてもよい。この際、空気を排出するノズルはノズルE1とノズルE2のどちらか一つあればよい。また、孔25aに蓋をしないでそこからクランクケース20a内に空気を導入してもよい。
【0026】
上記実施例においては、クランクケース20bとステータ50との間にプリント基板PBが配置されるがこのような構成に限定されない。例えば、回転軸42の他端に前述したファンFとは異なるファンを固定し、クランクケース20bとステータ50との間にこのファンを配置してもよい。また、クランクケース20aとステータ50との間に、プリント基板に加えて更にファンを配置してもよい。また、プリント基板PBはクランクケース20aまたはクランクケース20bとステータ50の間に配置せずに別の場所に配置してもよいし、モータMがセンサレス駆動の場合はプリント基板が無くてもよい。
【0027】
以上本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、変形・変更が可能である。