特許第6096477号(P6096477)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6096477-蒸し菓子 図000002
  • 特許6096477-蒸し菓子 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6096477
(24)【登録日】2017年2月24日
(45)【発行日】2017年3月15日
(54)【発明の名称】蒸し菓子
(51)【国際特許分類】
   A23G 3/34 20060101AFI20170306BHJP
   A23G 1/00 20060101ALI20170306BHJP
   A23G 1/30 20060101ALI20170306BHJP
【FI】
   A23G3/00 105
   A23G1/00
【請求項の数】5
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2012-250563(P2012-250563)
(22)【出願日】2012年11月14日
(65)【公開番号】特開2014-97015(P2014-97015A)
(43)【公開日】2014年5月29日
【審査請求日】2015年11月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000165284
【氏名又は名称】月島食品工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100093816
【弁理士】
【氏名又は名称】中川 邦雄
(72)【発明者】
【氏名】佐野 由美子
(72)【発明者】
【氏名】大友 さつき
【審査官】 川合 理恵
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−004604(JP,A)
【文献】 特開2006−109762(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3059288(JP,U)
【文献】 特開2011−217640(JP,A)
【文献】 チーズ蒸しパンを使って簡単・おいしいバレンタインチョコ、[online]、2011年2月09日、[2016年8月23日検索]、インターネット<URL:http://klastyling.com/archives/39652607.html>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23G 1/00−9/52
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
日経テレコン
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸し菓子生地の上部表面に、乳糖を30重量%以上含む乳糖組成物を振りかけて、蒸気で蒸してなることを特徴とする蒸し菓子の製造方法
【請求項2】
前記乳糖組成物が、上限を30重量%とする油脂を含む粉状の混合物であることを特徴とする請求項1に記載の蒸し菓子の製造方法
【請求項3】
前記混合物が、チョコレートであることを特徴とする請求項2に記載の蒸し菓子の製造方法
【請求項4】
前記乳糖組成物が、粉末油脂であることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の蒸し菓子の製造方法
【請求項5】
前記乳糖組成物における乳糖の混合比率が、70重量%以上であることを特徴とする請求項1〜請求項4の何れか1項に記載の蒸し菓子の製造方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸し菓子の表面の外観及び食感の改変に関する発明である。
【背景技術】
【0002】
ここで、蒸し菓子とは、穀粉、卵原料、乳原料等を混合してなる生地を、必要に応じて容器などに入れ、蒸気で加熱して得られる食品である。例えば、蒸しケーキ、蒸しパン、中華まん、蒸し饅頭などがある。
【0003】
蒸し菓子の生地改良の試みは種々あるが、例えば特許文献1、それらの表面は、蒸気で湿り、放冷してもしっとりとしているものが一般的で、蒸し菓子の表面の食感を変化させるものは知られていない。
【0004】
例えば、粉糖、粒チョコを加熱終了後に表面にふりかけ、のせること、または溶解したチョコレートを蒸し菓子の表面にコーティングすることなどが、蒸し菓子の種類によっては希にある。
【0005】
そして、蒸し菓子生地を蒸した後に、粉糖をふりかけた場合、何れの蒸し菓子も、一般的にオーブンで焼成されるパン及び菓子に比べて、生地水分は極めて高く、湿潤し、ベトベトした食感になるため、蒸し菓子では普通行われていない。
【0006】
粉糖を菓子へふりかけるのは、外観の良さ、甘さの観点から好まれる場合もあるが、喫食するとき、粉糖が辺りに飛散し、粉糖のふりかけを好まない消費者も多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平02−131544号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明は、蒸し菓子ではあまり考慮されない蒸し菓子表面の外観及び食感を変化させた蒸し菓子を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明は、
(1)
蒸し菓子生地の上部表面に、乳糖を30重量%以上含む乳糖組成物を振りかけて、蒸気で蒸してなることを特徴とする蒸し菓子の製造方法の構成とした。
(2)
前記乳糖組成物が、上限を30重量%とする油脂を含む粉状の混合物であることを特徴とする(1)に記載の蒸し菓子の製造方法の構成とした。
(3)
前記混合物が、チョコレートであることを特徴とする(2)に記載の蒸し菓子の製造方法の構成とした。
(4)
前記乳糖組成物が、粉末油脂であることを特徴とする(2)又は(3)に記載の蒸し菓子の製造方法の構成とした。
(5)
前記乳糖組成物における乳糖の混合比率が、70重量%以上であることを特徴とする(1)〜(4)の何れかに記載の蒸し菓子の製造方法の構成とした。
【0010】
ここで、「乳糖組成物」とは、乳糖そのものであっても、油脂との混合物、例えばチョコレートを粉状にしたもの、乳糖を混ぜた油脂を粉末化したもの(粉末油脂)であってもよい。粉末油脂は、従来からケーキミックス、粉末ショートニング、粉末コーヒーホワイトナー等多くの食品が開発されている。
【0011】
粉末油脂の製造方法としては、タンパク質、デンプン、デキストリン、乳化剤、増粘多糖質等の水溶性原料に油性原料を乳化させ、噴霧乾燥法により粉末化する方法が一般的である。本発明においても、常法にしたがって、粉末油脂化すればよい。
【0012】
チョコレートのような油脂混合物の場合には、「粉状」とは、混合物を細かく粉砕した状態のもの、薄片化したもの、薄片化したものをさらに粉砕した粉状のもの、さらに溶解混合物を霧状に噴霧して固化したもの、チョコレート溶解物を粉末化したもの、それらを篩にかけ粒径を揃えたものなども含む。
【0013】
乳糖と他の素材を混合する場合には、乳糖の混合比率は乳糖組成物において、30重量%以上、好ましくは50重量%以上、より好ましくは70重量%以上である。乳糖組成物における乳糖が、30重量%より少ないと、蒸し菓子の生地に乳糖組成物をふりかけて蒸しても蒸し菓子カリッとした食感を示しづらい。
【0014】
乳糖と油脂を混合、混在させた乳糖組成物では、蒸し菓子生地の表面で蒸されたとき、油脂が溶解し、乳糖をコーティングし、乳糖の蒸し菓子生地への溶解を抑制するとともに、蒸し後の熱による水分の蒸発で乳糖の再結晶をおこさせ、蒸し上がった蒸し菓子の表面にカリッとした食感の被膜を形成する。
【0015】
このような食感は、蒸し上がった後、さらには冷却後に乳糖を振りかけることによっては形成されない食感である。乳糖の水に対する溶解度が、グルコースの1/5程度、ショ糖1/10程度であることも、蒸す前の蒸し菓子生地の表面に乳糖組成物を振りかけても蒸し菓子の表面にカリッとした被膜を形成することができる要因であると考える。
【0016】
「油脂」は、一般に食用に供される油脂が使用でき、特に常温において固形脂で、体温以下の融点の油脂が望ましい。乳糖組成物において、油脂を添加する場合には、50重量%以下、好ましくは、30重量%以下、より好ましくは10重量%以下である。50重量%より多いと油脂特有の体温による溶解感が強くなり、カリッとした食感を示しづらい。
【0017】
乳糖組成物に添加される「他の素材」としては、上記例示した他には、糖類、タンパク質、食品添加物が例示できる。糖類としては水への溶解度の低い糖、溶解度が高い場合には、蒸し後のカリッとした食感に影響を与えない程度添加することができる。さらに、タンパク質は、卵白、乳タンパク質、大豆等食物由来のタンパク質などが使用できる。
【0018】
食品添加物としては、所望の風味、色彩を得られるよう着色料、香料を添加してもよいし、その他、保存料、甘味料、増粘剤、乳化剤なども、求める物性、風味に応じて添加することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明は、上記構成であるので、蒸し菓子の表面に特徴的な外観(まだら模様の硬質の被膜)を付与するだけでなく、カリッとした食感的な変化も付与することができる。より具体的には、乳糖組成物を蒸し菓子生地の表面にふって蒸しても、表面がカリッとした食感を呈するとともに、生地を焼成してつくる、まるでブッセ(焼き菓子)のような表面模様を形成する。そして、焼成されパサパサした食感のブッセとは異なり、蒸し菓子本体は、蒸し加熱であるため蒸しケーキのようなソフトでしっとりとした食感になる。
【0020】
即ち、乳糖組成物とともに蒸された本発明である蒸し菓子は、従来の蒸し菓子にはない、ブッセのような表面模様を備えるとともに、カリッとした新規食感を呈する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明である蒸し菓子の一例の写真である。
図2】本発明である蒸し菓子の配合組成の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【実施例1】
【0023】
図1に、本発明である蒸し菓子の一例を示した。形状は焼き菓子、ブッセに似せたものである。表面(主に、破線内)には、乳糖組成物の被膜(乳糖被膜)がまだら模様に形成されている。乳糖組成物の振りかける量により、被膜模様は、全体に被膜状に、まだら模様、或いは点在させることができる。
【0024】
図1の蒸し菓子は、スポンジ生地を型紙に薄めに充填して、スポンジ生地表面に乳糖組成物を振りかけ、蒸した蒸し菓子2つを用いて作られたもので、一方の蒸し菓子の底面にホイップクリームを塗布し、さらにイチゴジャムを載せ、もう一方の蒸し菓子の底面でサンドして、ブッセ風の形状にしたものである。写真中央の蒸し菓子の左右上部に位置するものが垂直方向にカットした蒸し菓子の断面である。
【0025】
図2に、図1の蒸し菓子の乳糖組成物の組成(A)、スポンジ生地の組成(B)を示した。スポンジ生地は、蒸し菓子用の生地であれば特に限定されるものではない。同様に、乳糖組成物も図2に限定されるものではない。
【0026】
以下、図1の蒸し菓子の製造方法について詳細に説明する。
【0027】
・乳糖組成物の調整
図2(A)に示す乳糖組成物の原材料から固形混合物を調整する。先ずチョコレート製造の常法にしたがって、即ち、溶解、混合、ロール掛け、成形、冷却固化して混合物を調整する。そして、固化した乳糖組成物を削り薄片化した後、粉砕して、粉状にし、篩に掛け、一定の粒径の粉末に揃えて、乳糖組成物を得た。なお、上記組成を水相に分散し、乳化してO/W乳化物とし、噴霧乾燥して、粉末油脂化してもよい。
【0028】
・スポンジ生地の調整
図2のaとbの一部を容器に投入し、撹拌、混合する。残りのbを加えて撹拌する。一般的なケーキ生地撹拌機で、低速30秒、中高速2〜3分撹拌して、混合物の比重を0.3程度にする。cを篩でふるいながら容器に加え撹拌する。最終スポンジ生地の比重は、0.45程度にした。
【0029】
・蒸し
上記スポンジ生地25gを型紙に絞り、その表面に乳糖組成物(A)を約2g振りかけた。その後、蒸し器で、93℃〜95℃、約9分蒸した。
【0030】
・デコレーション
蒸し上がったスポンジケーキの底面に、生クリーム、イチゴジャムを塗布して、同様にして作製された別のスポンジケーキの底面で、それらフィリングをサンドして、図1の蒸し菓子が完成する。
図2
図1