(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
軸廻りの回転によって畦の法面を整形することが可能な法面整畦部と、前記法面整畦部の軸先端方向側に連結されて前記法面整畦部とともに回転し前記畦の上面を整形することが可能な上面整畦部とを備えた整畦体であって、
前記上面整畦部は、筒状に形成された筒状部材と、該筒状部材の外周面に取り付けられる複数の羽根板とを備え、
前記羽根板は、
前記筒状部材に形成された被係合部と係合することが可能な係合部を有し、
前記係合部を前記被係合部に係合させることによって、少なくとも前記筒状部材に対する前記軸先端方向への移動が規制され、かつ径方向および周方向の少なくとも一方への移動をも規制することを特徴とする整畦体。
前記羽根板は、前記筒状部材を介して前記法面整畦部に取り付けられた状態で、該法面整畦部に当接することが可能な当接部を有することを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の整畦体。
【背景技術】
【0002】
従来から、畦を整形する畦塗り機においては、旧畦(元畦)を切り崩して土盛りを行う前処理部と、この前処理部により盛られた土を回転しながら締め固めて新畦を整形する整畦体とを備えたものが一般的である。
【0003】
また、このような整畦体として、畦の法面を整形する円錐台形状の法面整畦部と、この法面整畦部の頂部側に連結され畦の上面を整形する筒状部材とが設けられたものが広く知られている。
【0004】
近年、このような畦塗り機として、筒状部材の外周面に、周方向に所定の間隔をおいて可撓弾性を有する羽根板を複数配設する技術が知られている。
【0005】
このような技術によれば、整畦体が回転すると、畦の上面が、羽根板の筒状部材に固定されていない部分(羽根板の弾性変形)によって徐々に締圧された後、羽根板の筒状部材に固定されている部分によって強く締圧されるため、圃場の土質条件(例えば、水分の多い湿田や水分の少ない乾田)に拘わらず、より仕上がりのよい堅牢な新畦を整形することが可能となる。
【0006】
ここで、一般に、羽根板は、合成樹脂(例えば、ナイロン樹脂や塩化ビニル樹脂)や鋼板(例えば、バネ鋼板)など、比較的強度の弱い部材によって形成されているため、整畦作業を行っていくうちに、摩耗により損傷が生じてしまうことが少なくない。このような場合、損傷した羽根板を新たな羽根板に交換する必要があるが、このような交換は、手間と労力を要し、その作業が煩雑であるといった問題があった。
【0007】
そこで、例えば、長穴状の挿通孔が形成された筒状部材と、挿通孔が形成された羽根板と、筒状部材の挿通孔および羽根板の挿通孔のそれぞれに挿通することが可能な係合部が形成された取付部材と、筒状部材に取り付けられた補剛板に取付部材を固定するためのボルトとを備えた畦塗り機が提案されている(特許文献1参照)。
【0008】
このような畦塗り機における、筒状部材への羽根板の取り付けは、まず、筒状部材の挿通孔および羽根板の挿通孔のそれぞれに取付部材の係合部を挿通し、次に、これら挿通孔と係合部を係合させるため、取付部材を法面整畦部側へ向けて移動させ、その後、法面整畦部側と反対側(以下、「軸先端方向」と称す)への羽根板の移動を規制するため、取付部材をボルト締めによって筒状部材(補剛板)に固定することにより行われる。
【0009】
また、上記特許文献1に記載の畦塗り機の他、例えば、長穴状のベース側孔が形成されたベース部材(以下、「筒状部材」と称す)と、長穴状の板側孔が形成された畦上面形成板(以下、「羽根板」と称す)と、ベース側孔および板側孔のそれぞれに挿通することが可能な係合部が形成された挟持部材と、畦上面形成板および挟持部材の軸方向への移動を規制するストッパ部材と、ストッパ部材を筒状部材に固定するためのストッパ取付ボルトとを備えた畦塗り機も提案されている(特許文献2参照)。
【0010】
このような畦塗り機における、筒状部材への羽根板の取り付けは、まず、筒状部材のベース側孔および羽根板の板側孔のそれぞれに挟持部材の係合部を挿通し、次に、ベース側孔および板側孔と係合部を係合させるため、挟持部材を畦側面形成体(法面形成部)側へ向けて移動させ、その後、畦側面形成体側と反対側への筒状部材および羽根板の移動を規制するため、ストッパ部材をボルト締めによって筒状部材に固定することにより行われる。
【0011】
上記特許文献1および特許文献2に記載の畦塗り機によれば、羽根板(畦上面形成体)を筒状部材(ベース部材)に対してある程度簡便に取り付けることが可能である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、特許文献1および特許文献2に記載の畦塗り機は、上述したように、いずれも、取付部材(特許文献1)や挟持部材(特許文献2)に形成された係合部を、羽根板および筒状部材のそれぞれに形成された孔に挿通して係合させるほか、取付部材(特許文献1)やストッパ部材(特許文献2)をボルトによって筒状部材に固定することにより、はじめて、筒状部材に対する羽根板の移動が規制(羽根板が筒状部材に固定)されるようになっている。
すなわち、これら特許文献1および特許文献2に記載の畦塗り機は、羽根板を筒状部材に固定するための構造が比較的複雑なものといえる。
【0014】
ここで、部材同士を結合する技術分野において、構造が複雑になるのに従って、部材の取付強度(固定強度)が向上していくのが一般的である。
【0015】
しかしながら、特許文献1および特許文献2に記載の畦塗り機では、上述したように、構造が比較的複雑であるにも拘わらず、整畦作業中に、羽根板に対して軸先端方向へ向かう力が作用した場合、取付部材(特許文献1)やストッパ部材(特許文献2)を固定するボルトに応力が集中しやすく、場合によっては、取付部材やストッパ部材が筒状部材から離脱してしまうおそれがあった。かかる場合、特許文献1および特許文献2に記載の畦塗り機では、上記ボルト以外に羽根板の軸先端方向への移動を規制する処置が何ら施されていないため、いとも簡単に、羽根板が筒状部材から外れてしまうといった問題が生じる。
【0016】
また、特許文献1および特許文献2に記載の畦塗り機は、いずれも、取付部材(特許文献1)や挟持部材(特許文献2)によって羽根板を筒状部材に仮固定した後、さらに、これら取付部材や挟持部材を筒状部材に固定するため、レンチ等の治具を用いてボルト締めしなければならないように構成されている。
【0017】
このため、特許文献1および特許文献2に記載の畦塗り機では、羽根板の交換を簡便に行うといった面において、不十分であるといった問題があった。
【0018】
しかも、特許文献1および特許文献2に記載の畦塗り機では、羽根板や筒状部材の他、ボルトや取付部材等といった別部材を用意する必要があり、部品点数が多くなる(コスト高になる)といった問題もあった。
【0019】
本発明は、上記不都合を解決するためになされたものであり、その目的は、構造の複雑化を伴うことなく、筒状部材に対する羽根板の軸先端方向への移動を規制することが可能な整畦体および整畦体を備えた畦塗り機を提供することにある。
【0020】
また、本発明の他の目的は、部品点数の増加および構造の複雑化を伴うことなく、羽根板の交換作業をより簡便に行うことが可能な畦塗り機等に用いられる整畦体および整畦体を備えた畦塗り機を提供することにもある。
【課題を解決するための手段】
【0021】
前記課題は、本発明に係る整畦体によれば、軸廻りの回転によって畦の法面を整形することが可能な法面整畦部と、前記法面整畦部の軸先端方向側に連結されて前記法面整畦部とともに回転し前記畦の上面を整形することが可能な上面整畦部とを備えた整畦体であって、前記上面整畦部は、筒状に形成された筒状部材と、該筒状部材の外周面に取り付けられる複数の羽根板とを備え、前記羽根板は、前記筒状部材に形成された被係合部と係合することが可能な係合部を有し、前記係合部を前記被係合部に係合させることによって、少なくとも前記筒状部材に対する前記軸先端方向への移動が規制されることにより解決される。
【0022】
また、前記課題は、本発明に係る畦塗り機によれば、上記整畦体を備えることにより解決される。
【0023】
上記構成では、羽根板の係合部と、筒状部材の被係合部とを係合させることによって、筒状部材に対する羽根板の軸先端方向側への移動が少なくとも規制されるようになっている。このため、簡単な構成でありながらも、羽根板による整畦作業中に、羽根板に対して軸先端方向へ向かう力が作用した場合でも、不用意に羽根板が筒状部材から外れてしまうことを十分に抑制することができる。
【0024】
また、上記構成では、係合部と被係合部とを係合させた状態で、筒状部材に対する羽根板の軸先端方向への移動が規制されるだけでなく、筒状部材の周方向や径方向の移動もが規制されるように構成すれば(請求項2〜請求項4)、あとは、筒状部材に対する羽根板の軸先端方向とは反対方向(以下、「反軸先端方向」と称す)側への移動が規制されるような処置を施せば、羽根板を筒状部材に固定することが可能となる。
【0025】
このような処置として、例えば、羽根板に、筒状部材に形成された第2被係合部と係合させた状態で筒状部材に対する反軸先端方向への移動を規制する第2係合部を追加的に設けることが考えられる(請求項5および請求項6)。
【0026】
このように構成した場合、係合部と第2係合部とを、それぞれ被係合部と第2被係合部とに係合させれば、羽根板を筒状部材に固定することができる一方、係合部および被係合部の係合状態と、第2係合部および第2被係合部の係合状態とを、それぞれ解除することによって、羽根板を筒状部材から取り外すことが可能である。
【0027】
すなわち、このような構成では、羽根板と、筒状部材とのそれぞれに、係合部および第2係合部と、被係合部および第2係合部とを設けるといった簡単な構成により、羽根板の交換作業を極めて簡便に行うことが可能である。また、上記構成では、筒状部材に対して羽根板を固定するのに際し、これら羽根板および筒状部材以外の部品を用いることがないため、部品点数の削減を図ることができる。
【0028】
また、羽根板が取り付けられた筒状部材を法面整畦体に固定した状態において、当該羽根板が法面整畦体に当接するように構成すれば、既存のもの(法面整畦体)を利用して、羽根板の反軸先端方向側への移動を規制することが可能である(請求項7)。
【0029】
また、このような場合、仮に、上述した第2係合部および第2被係合部の損傷・変形等によって、当該第2係合部および第2被係合部による、反軸先端方向側への羽根板の移動を規制する機能が低下した場合であっても、当該反軸先端方向への羽根板の移動を規制することが可能である。
【0030】
以上のような、羽根板の反軸先端方向への移動を規制する処置を施せば、レンチ等の治具を用いなくても、羽根板の交換作業を極めて簡便に行うことができる。また、羽根板を筒状部材に固定するのに際し、これら羽根板および筒状部材以外の部品を用いないように構成することも可能なため、かかる場合、部品点数の削減を図ることが可能である。
【発明の効果】
【0031】
このように、本発明に係る整畦体または畦塗り機によれば、簡単な構成により、筒状部材に対する軸先端方向への羽根板の移動を規制することができる。
また、本発明に係る整畦体または畦塗り機によれば、部品点数の増加および構造の複雑化を伴うことなく、羽根板の交換作業をより簡便に行うことが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の一実施形態を、図面に基づいて説明する。
図1は本実施形態に係る畦塗り機の平面図、
図2は上面整畦部を法面整畦部に組み付ける組付状態を示す分解斜視図、
図3は羽根板を筒状部材に組み付ける組付状態を示す分解斜視図、
図4は羽根板の斜視図、
図5は羽根板を筒状部材に組み付けた状態における上面整畦部の断面図である。なお、以下の説明における前方は走行機体の前進方向を、後方は走行機体の後進方向を示し、左右方向は走行機体が前方を向いた状態での左右方向を意味する。
【0034】
図1に示すように、本実施形態に係る畦塗り機1は、走行機体としてのトラクタ90の後部に連結される、いわゆるオフセット作業機である。この畦塗り機1は、トラクタ90の前進走行に伴い、圃場の畦Rに沿って前方へ移動しながら畦塗り作業(畦修復作業)をするように構成されている。
【0035】
畦塗り機1は、フロントフレーム10と、オフセットアーム20と、作業部30とを備えている。
【0036】
フロントフレーム10は、トラクタ90の後部に装着された三点リンク機構91に連結されている。なお、トラクタ90とフロントフレーム10との間には、ユニバーサルジョイント(図示省略)が介装されており、トラクタ90からの駆動力は、このユニバーサルジョイントを介して、フロントフレーム10、オフセットアーム20、作業部30へと順次伝達されるように構成されている。
【0037】
オフセットアーム20は、フロントフレーム10と作業部30とを連結するものであり、その前端部がフロントフレーム10の左右方向中央部に回動自在に連結されている。このフロントフレーム10とオフセットアーム20との間には、伸縮シリンダ21が設けられ、この伸縮シリンダが伸縮移動をすることにより、オフセットアーム20が左右方向に移動されるようになっている。
【0038】
作業部30は、前処理部31と、前処理部31の後方側に配置される整畦体40とを備えている。
【0039】
前処理部31は、前後方向に延びる回転軸に複数の耕耘爪を有する前処理ロータ(図示省略)を備えている。この前処理部31は、旧畦(元畦)の一部を切り崩して土盛りを行うようになっている。
【0040】
図2に示すように、整畦体40は、円錐台形状の法面整畦部41と、法面整畦部41に取り付けられる上面整畦部50とを備えている。法面整畦部41は、トラクタ90(
図1参照)からの駆動力によって回転する回転駆動軸32に連結され、回転駆動軸32とともに回転しながら前処理部31によって盛られた土を締め固めて畦側面(法面)を形成するものである。一方、上面整畦部50は、法面整畦部41とともに回転しながら前処理部31によって盛られた土を締め固めて畦R上面を形成するものである(
図1参照)。なお、上記法面整畦部41と、上面整畦部50とが、それぞれ特許請求の範囲に記載の「法面整畦部」と、「上面整畦部」とに該当する。
【0041】
法面整畦部41は、ベース部材42と、ベース部材42に取り付けられる複数の法面形成板45とを備えている。
【0042】
ベース部材42には、その頂部43の回転中心線Xが通る位置に、回転駆動軸32の先端部を固定する固定部43aが設けられている。この回転駆動軸32の先端部は、ベース部材42の内周面側から挿入され、固定部43aにおいてねじ接合等によって固定されるようになっている。
【0043】
また、ベース部材42の頂部43には、その所定位置に、上面整畦部50を固定するための上面整畦部取付用孔43bが複数(本実施形態では2個)形成されている。この上面整畦部取付用孔43bの内周面には、上面整畦部50取付用のボルト70に形成された外ねじと螺合することが可能な内ねじが形成されている。
【0044】
法面形成板45は、例えば、金属性の部材からなり、略扇形状に形成されている。この法面形成板45は、ベース部材42の外周端部にボルトや溶接等によって固定され、隣接する法面形成板45の一部と重なるように、ベース部材42の外周方向に沿って所定の間隔をあけて配設されている。
【0045】
図2および
図3に示すように、上面整畦部50は、法面整畦部41に連結される筒状部材51と、筒状部材51の外周面に脱着可能に取り付けられる複数の羽根板61とを備えている。なお、上記筒状部材51と、羽根板61とが、それぞれ、特許請求の範囲に記載の「筒状部材」と、「羽根板」とに該当する。
【0046】
まず、筒状部材51について
図2、
図3および
図5を参照して説明する。
図2および
図3に示すように、筒状部材51は、中空筒状の筒状部材本体部52と、筒状部材本体部52の端部に取り付けられるプレート部56とを備え、これらは溶接等により一体的に形成されている。
【0047】
筒状部材本体部52は、断面多角状(本実施形態では正8角形)に形成され、例えば、金属板を折り曲げ加工等することにより成形されている。このような形状を有する筒状部材本体部52の外周面は、複数の稜線部52aと、隣接する稜線部52aの間に位置する平面部52bとを有している。なお、本実施形態では、筒状部材本体部52の断面形状を多角状に形成したが、円形状に形成することも可能である。
【0048】
平面部52bは、後述する羽根板61の第1爪部63と係合することが可能な第1孔部53と、後述する羽根板61の第2爪部64と係合することが可能な第2孔部54と、後述する羽根板61のロック部65と係合することが可能なロック孔部55とを有している。なお、上記第2孔部54と、ロック孔部55と、第2爪部64と、ロック部65とが、それぞれ、特許請求の範囲に記載の「被係合部」と、「第2被係合部」と、「係合部」と、「第2係合部」とに該当する。
【0049】
第1孔部53は、回転駆動軸32の軸方向(以下、単に「軸方向」と称す)に沿って長穴状に複数形成されている。
図3および
図4に示すように、第1孔部53の筒状部材51における周方向(以下、単に「周方向」と称す)の幅は、羽根板61の第1爪部63の板厚W1よりも僅かに広く形成されている。一方、第1孔部53の軸方向の幅は、第1爪部63の軸方向の幅W2と、後述する、第2爪部64の屈曲片部64bの軸方向の幅W3との合計値(W2+W3)よりも僅かに広くなるように設定されている。
【0050】
第2孔部54は、略矩形状に形成され、軸方向に沿って複数形成されている。
第2孔部54の周方向の幅は、第2爪部64の周方向の幅W5よりも僅かに広く形成されている。
第2孔部54の軸方向の幅は、後述する、第2爪部64の軸方向の幅(屈曲片部64bの軸方向の幅W3+起立片部64aの軸方向の幅W4)よりも僅かに広くなるように設定されている。
【0051】
ロック孔部55は、後述する、羽根板61のロック部65を、筒状部材51の径方向(以下、単に「径方向」と称す)に貫通することが可能な形状に形成されている。
【0052】
なお、筒状部材本体部52の内周面には、その回転駆動軸32の先端部側の方向(以下、「軸先端方向」と称す)とは反対方向(以下、「反軸先端方向」と称す)側の端部に、筒状部材本体部52の剛性等を確保するための環状のリブ57(
図5参照)が周方向に沿って設けられている。
【0053】
プレート部56は、略円形板形状を有し、例えば、金属板を円形状に打ち抜き加工等することにより形成されている。このプレート部56の外形寸法は、筒状部材本体部52の径方向の幅よりも大きく形成されている。
【0054】
このように形成されたプレート部56は、筒状部材本体部52の軸先端方向の端部に溶接等により固定されている。プレート部56は、筒状部材本体部52に固定された状態で、その径方向の端部56aが、筒状部材本体部52の端部から径方向外側へ向けて突出するように配置されている(
図5参照)。
【0055】
また、プレート部56には、その所定位置に、ボルト70を挿通することが可能な法面整畦部取付用孔56bが複数(本実施形態では2個)形成されている。
【0056】
次に、羽根板61について
図2〜
図5を参照して説明する。
羽根板61は、弾性変形することが可能な部材、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル等の剛性樹脂や鋼板等の金属材料からなり、筒状部材51の平面部52bに対して着脱自在に取り付けられている。
【0057】
図2〜
図4に示すように、羽根板61は、筒状部材51の平面部52bに取り付けられる筒状部材取付部62と、筒状部材取付部62のうち、上面整畦部50の回転方向(以下、単に「回転方向」と称す)とは反対方向(以下、「反回転方向」と称す)側の一端部(図示省略)から連続して(反回転方向へ向けて)延設される回転方向延設部66と、回転方向延設部66の反軸先端方向側の端部から連続して(反軸先端方向へ向けて)延設される軸方向延設部67とを備えている。なお、上記軸方向延設部67が特許請求の範囲に記載の「当接部」に該当する。
【0058】
図3および
図4に示すように、筒状部材取付部62は、略平面板状に形成され、羽根板61を筒状部材51に取り付けた状態で筒状部材51の平面部52bに当接する当接面62aを有している。この当接面62aには、第1爪部63と、第2爪部64と、ロック部65とが形成されている。
【0059】
第1爪部63は、軸方向に沿って所定の間隔をおいて複数(本実施形態では2個)形成されている。この第1爪部63は、当接面62aの回転方向側の他端部62bから筒状部材51側へ向けて起立する起立片部63aと、起立片部63aの起立方向の端部から屈曲して回転方向へ向けて延びる屈曲片部63bとを備えている。
【0060】
屈曲片部63bの屈曲位置から当接面62aまでの距離L1は、筒状部材本体部52の板厚よりも若干大きく設定されている。
また、一方の第1爪部63の軸先端方向側の端部から他方の第1爪部63の軸先端方向側の端部までの距離L2は、筒状部材51の一方の第1孔部53の軸先端方向側の開口縁部から他方の第1孔部53の軸先端方向側の開口縁部までの距離とほぼ等しくなるように設定されている。
【0061】
第2爪部64は、軸方向に沿って所定の間隔をおいて複数(本実施形態では2個)形成され、当接面62aの他端部62bから反回転方向に所定距離離間した位置(当接面62aの一端部側)に配設されている。
【0062】
第2爪部64は、当接面62aから筒状部材51側へ向けて起立する起立片部64aと、起立片部64aの起立方向の端部から屈曲して軸先端方向へ延びる屈曲片部64bとを備えている。
【0063】
なお、屈曲片部64bと当接面62aとの間の距離L3は、筒状部材本体部52の板厚よりも若干大きく設定されている。また、一方の屈曲片部64bの軸先端方向側の端部から他方の屈曲片部64bの軸先端方向側の端部までの距離L4は、筒状部材51の一方の第2孔部54の軸先端方向の開口縁部から他方の第2孔部54の軸先端方向の開口縁部までの距離とほぼ等しくなるように設定している。
【0064】
ここで、第1爪部63および第2爪部64と、第1孔部53および第2孔部54との位置関係について説明する。
第2爪部64,64は、第1爪部63,63の軸先端方向側の側面を、それぞれ、第1孔部53,53の軸先端方向側の開口縁部に当接(または近接)させた状態で、第2孔部54,54のそれぞれに挿通することが可能な位置に形成されている。
【0065】
また、第1爪部63,63の軸先端方向側の側面は、第2爪部64,64の起立片部64aを、それぞれ、第2孔部54,54の軸先端方向側の開口縁部に当接(または近接)させた状態で、第1孔部53,53の軸先端方向側の開口縁部に当接または近接する位置となるように形成されている。
【0066】
なお、
図3および
図4に示すように、筒状部材取付部62の当接面62aには、その屈曲片部64bと対向する位置に、開口部62cを形成することも可能である。詳しくは後述するが、このように構成すれば、第2爪部64を筒状部材51の第2孔部54に挿入し、羽根板61を軸先端方向へスライド移動した際、開口部62cを介して、第2爪部64と第2孔部54との係合状態を確認することが可能となる。
【0067】
ロック部65は、筒状部材取付部62の当接面から筒状部材51側へ向けて突出して設けられ、当該突出方向側(筒状部材51側)から視た場合における形状が矩形状に形成されている。ロック部65は、その反軸先端方向側から軸先端方向側へ向けて下り傾斜したテーパ面(傾斜面)65aを有している。
【0068】
また、ロック部65は、第2爪部64,64の起立片部64aを、それぞれ、第2孔部54,54の軸先端方向側の開口縁部に当接(または近接)させた状態で、ロック孔部55に挿通することが可能な位置に形成されている。
【0069】
回転方向延設部66は、筒状部材51側の周方向に沿って湾曲する湾曲状に形成されている。また、回転方向延設部66は、複数の羽根板61を筒状部材51に固定した状態で、隣接する羽根板61から所定距離離間した位置に配置されるようになっている。
【0070】
軸方向延設部67は、回転方向延設部66の反軸回転方向側の端部から径方向外側へ向けて湾曲する湾曲形状を有している。この軸方向延設部67は、筒状部材51、羽根板61および法面整畦部41をそれぞれ組み付けた状態で、法面形成板45に当接するようになっている(
図2参照)。
【0071】
次に、羽根板61の筒状部材51への固定方法について
図3〜
図5を参照して説明する。
【0072】
図3および
図4に示すように、羽根板61の筒状部材51への固定は、まず、羽根板61に形成された第1爪部63,63の屈曲片部63b,63bのそれぞれを、筒状部材51の第1孔部53,53に挿通することから始まる。
【0073】
具体的に、第1爪部63,63を第1孔部53,53の軸先端方向側に位置させた状態で、第1爪部63,63の起立片部63a,63aが、第1孔部53,53の開口縁部に当接するまで、第1爪部63,63を第1孔部53,53に挿通する。
【0074】
次に、第1孔部53,53および第1爪部63,63を回転中心として、羽根板61の回転方向延設部66側(反回転方向側)を筒状部材51へ向けて回転移動させ、第2爪部64,64のそれぞれを第2孔部54,54に挿通する。
【0075】
その後、第2爪部64,64のそれぞれを第2孔部54,54に挿通した後、羽根板61を軸先端方向へ向けてスライド移動させる。このようにして、羽根板61をスライド移動させると、第2爪部64,64が、徐々に、第2孔部54,54の開口縁部に隣接する平面部52bを挟持していくとともに、ロック部65が、平面部52bのうちロック孔部55の開口縁部に隣接する部分と接しながら、ロック孔部55上を移動することとなる。この際、羽根板61は、その軸方向延設部67側が、筒状部材51の径方向外側へ向けて若干弾性変形することとなる。
【0076】
そして、羽根板61をさらに軸先端方向へ向けてスライド移動させて、ロック部65がロック孔部55と整合する位置に達すると、弾性変形していた羽根板61の復帰(羽根板61の軸方向延設部67側が筒状部材51の径方向内側へ向けて変形すること)により、ロック部65は、ロック孔部55に貫通して係合することとなる。
【0077】
これにより、羽根板61は、筒状部材51に対して固定されることとなる。
【0078】
図5に示すように、羽根板61を筒状部材51に固定した状態では、第1爪部63,63の軸先端方向側が、それぞれ、第1孔部53,53の軸先端方向側の開口縁部に当接または近接して配置されるとともに、第2爪部64,64の起立片部64a,64aの軸先端方向側の側面が、それぞれ、第2孔部54,54の軸先端方向側の開口縁部に当接または近接して配置されるようになっている。
【0079】
このため、本実施形態において、筒状部材51に対する羽根板61の軸先端方向への移動は、主に、第1孔部53の軸先端方向側の開口縁部と第1爪部63の起立片部63aの軸先端方向側の側面との当接、および、第2孔部54の軸先端方向側の開口縁部と第2爪部64の起立片部64aの軸先端方向側の側面との当接によって規制されるようになっている。
【0080】
また、本実施形態では、羽根板61を筒状部材51に固定した状態で、羽根板61(筒状部材取付部62)の軸先端方向側の端部が、筒状部材51のプレート部56の端部56aに近接(または当接)した位置に配置されるようになっている。
【0081】
このため、本実施形態では。例えば、第1爪部63の起立片部63aの軸先端方向側や、第2爪部64の起立片部64aの軸先端方向側が摩耗により擦り減り、第1爪部63や第2爪部64による軸先端方向への羽根板61の移動を規制する機能が低下した場合であっても、羽根板61の軸先端方向側の端部がプレート部56の端部56aに接触することとなるため、この点からも、羽根板61の軸先端方向への移動を規制することが可能となっている。
【0082】
一方、筒状部材51に対する羽根板61の反軸先端方向への移動は、主に、ロック孔部55の反軸先端方向側の開口縁部とロック部65の反軸先端方向側の側面との当接によって規制されることとなる。
【0083】
なお、詳しくは後述するが、筒状部材51、羽根板61および法面整畦部41をそれぞれ組み付けた状態では、羽根板61の軸方向延設部67が、法面整畦部41の法面形成板45に当接するように構成されている。このため、本実施形態では、例えば、ロック部65の反軸先端方向側の側面が摩耗により擦り減り、ロック部65による反軸先端方向への羽根板61の移動を規制する機能が低下した場合であっても、軸方向延設部67と法面形成板45との当接により、羽根板61の反軸先端方向への移動を規制することが可能となっている。
【0084】
また、筒状部材51に対する羽根板61の回転方向(反回転方向)への移動は、第1孔部53の回転方向(反回転方向)側の開口縁部と第1爪部63の起立片部63aの回転方向(反回転方向)側の側面との当接、第2孔部54の回転方向(反回転方向)側の開口縁部と第2爪部64の起立片部64aの回転方向(反回転方向)側の側面との当接、および、ロック孔部55の回転方向(反回転方向)側の開口縁部とロック部65の回転方向(反回転方向)側の側面との当接によって規制されることとなる。
【0085】
さらに、羽根板61の反軸先端方向側(軸方向延設部67側)に径方向外側へ向かう力S1(
図2参照)が作用した場合、その力S1は、主に、反軸先端方向側に位置する第1爪部63および第2爪部64によって受け止めることが可能である。一方、羽根板61の反軸先端方向側に径方向内側へ向かう力S2(
図2参照)が作用した場合、その力S2は、主に、羽根板61の軸方向延設部67と法面整畦部41の法面形成板45との当接によって受け止めることが可能であるが、その他、軸先端方向側に位置する第1爪部63および第2爪部64によっても受け止めることが可能となっている。
【0086】
次に、このようにして固定された羽根板61の筒状部材51からの取り外し方法について
図3〜
図5を参照して説明する。
【0087】
図3および
図4に示すように、羽根板61の筒状部材51からの取り外しは、まず、羽根板61の軸方向延設部67側(反軸先端方向側)を径方向外側へ向けて移動させて、ロック孔部55とロック部65との係合状態を解除することから始まる。
【0088】
次に、ロック孔部55とロック部65との係合状態が解除された状態で、羽根板61を反軸先端方向へ移動させて、第2孔部54の開口縁部と第2爪部64との係合状態を解除する。
【0089】
その後、第1孔部53,53および第1爪部63,63を回転中心として、羽根板61の回転方向延設部66側(反回転方向側)を筒状部材51から離間させる方向へ回転移動させ、第1爪部63,63を第1孔部53,53から抜き取る。これにより、羽根板61を筒状部材51から取り外すことが可能となっている。
【0090】
次に、羽根板61が固定された筒状部材51の法面整畦部41への固定方法について
図2を参照して説明する。
【0091】
図2に示すように、羽根板61が取り付けられた筒状部材51の法面整畦部41への固定は、筒状部材51のプレート部56に形成された法面整畦部取付用孔56bにボルト70を挿通し、この挿通したボルト70を、法面整畦部41の上面整畦部取付用孔43bに螺合させて、レンチ等の治具によって締め込むことによって行うようになっている。
【0092】
このように、本実施形態によれば、羽根板61の筒状部材51への固定は、羽根板61の第1爪部63と、第2爪部64と、ロック部65とを、それぞれ、筒状部材51の第1孔部53と、第2孔部54と、ロック孔部55とに係合させることによって行うことができる。一方、羽根板61の筒状部材51からの取り外しは、ロック部65とロック孔部55との係合状態を解除した後、第2爪部64と第2孔部54との係合状態、および、第1爪部63と第1孔部53との係合状態をそれぞれ解除することによって行うことができるようになっている。
【0093】
従って、本実施形態によれば、羽根板61と筒状部材51とのそれぞれに、第1爪部63、第2爪部64およびロック部65と、第1孔部53、第2孔部54およびロック孔部55とを設けるといった簡単な構成により、レンチ等の治具を用いることなく、羽根板61の交換作業を極めて簡便に行うことが可能である。また、本実施形態では、筒状部材51に対して羽根板61を固定するのに際し、これら筒状部材51および羽根板61以外の部品を用いることがないため、部品点数の削減を図ることができる。
【0094】
本実施形態において、第1孔部53と第1爪部63、第2孔部54と第2爪部64、ロック孔部55とロック部65が、それぞれ係合した状態では、筒状部材51に対する羽根板61の、軸方向(軸先端方向および反軸先端方向)への移動のみならず、筒状部材51の径方向および周方向(回転方向および反回転方向)への移動が規制されるように構成されている。このため、羽根板61による整畦作業中に、羽根板61に対して様々な方向から力が作用した場合でも、羽根板61が不用意に筒状部材51から外れてしまうことを防止することができる。
【0095】
また、本実施形態では、筒状部材51、羽根板61およびを法面整畦部41をそれぞれ組み付けた状態で、羽根板61の軸方向延設部67が法面整畦部41の法面形成板45に当接するように構成されている。このため、仮に、第1孔部53、第2孔部54、ロック孔部55、第1爪部63、第2爪部64およびロック部65の損傷・変形等によって、これら第1孔部53等による、軸先端方向への羽根板61の移動を規制する機能が低下した場合であっても、法面整畦部41に対する羽根板61の反軸先端方向への移動を規制することが可能である。
【0096】
なお、本実施形態では、係合部としての第1爪部63(第2爪部64)と、被係合部としての第1孔部53(第2孔部54)とを、それぞれ、2個ずつ設けたが、例えば、1個ずつでもよく、また、3個以上ずつであってもよい。この際、第1爪部63(第1孔部53)と第2爪部64(第2孔部54)との個数は同数である必要はなく、異ならせることも可能である。
【0097】
また、本実施形態では、第1爪部63と第2爪部64といったように、2種類の係合部を設けたが、3種類以上の係合部を設けてもよく、また、いずれか一方を省略することも可能である。
【0098】
例えば、
図6に示すように、第1爪部63,63(
図3参照)に代えて、第2爪部64,64と同じ形状の第2爪部64´,64´を設けるように構成してもよい。このように構成した場合、筒状部材51´には、変更した第2爪部64´,64´に対応する第2孔部54´,54´を形成すればよい。
【0099】
このような構成によれば、筒状部材51´への羽根板61´の固定は、羽根板61´のに形成された各第2爪部64,64´を、それぞれ、筒状部材51´の第2孔部54,54´に挿通し、そのまま、羽根板61´を軸先端方向へ移動させることにより行うことが可能である。
【0100】
また、本実施形態では、第2係合部としてのロック部65と、第2被係合部としてのロック孔部55とを、それぞれ、1個ずつ設けたが、2個以上ずつ設けることも可能である。この際、本実施形態の第1爪部63および第2爪部64のように、異なる形状の係合部を、第2係合部として設けることも可能である。
【0101】
さらに、本実施形態では、羽根板61に、筒状部材51側へ向けて突出する係合部(第1爪部63、第2爪部64およびロック部65)を設けたが、これに限られず、筒状部材51に、羽根板61側へ向けて突出する係合部を設けるように構成することも可能である。このように構成した際、羽根板61側には、上述したような、第1孔部53、第2孔部54、ロック孔部55を形成すればよい。
【0102】
また、上記突出する係合部のうち、その一部(例えば、ロック部65)を羽根板61側に、その他(例えば、第1爪部63および第2爪部64)を筒状部材51側に設けることも可能である。
【0103】
さらに、本実施形態では、筒状部材51、羽根板61および法面整畦部41をそれぞれ組み付けた状態で、羽根板61の軸方向延設部67が法面整畦部41の法面形成板45に当接するように構成したが、これに限られず、若干の隙間が形成されるように構成することも可能である。
【0104】
このように構成しても、上面整畦部50によって畦の上面を整形すれば、軸方向延設部67は径方向内側へ向けて移動し、法面形成板45と当接することとなるため、この状態において、羽根板61の反軸先端方向側への移動を規制することが可能だからである。
【0105】
また、本実施形態では、羽根板61の反軸先端方向側への移動を規制する処置として、筒状部材51と羽根板61とに、それぞれ、ロック孔部55とロック部65とを形成するとともに、羽根板61、筒状部材51および法面整畦部41のそれぞれを組み付けた状態で羽根板61が法面整畦部41に当接するように構成したが、いずれか一方を省略することも可能である。
【0106】
以上、本発明者によってなされた発明を適用した実施形態について説明したが、この実施形態による本発明の開示の一部をなす論述および図面により、本発明は限定されることはない。すなわち、この実施形態に基づいて当業者等によりなされる他の実施形態、実施例および運用技術等は全て本考案の範疇に含まれることは勿論であることを付け加えておく。