(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0008】
(第1の実施の形態)
次に第1の実施の形態のコンクリートの品質管理装置100について
図1〜
図4を参照して説明する。
図1に示すように、本実施の形態では、コンクリートの品質管理装置100は、硬化度測定装置10Aと、管理装置50とを含んで構成されている。
硬化度測定装置10Aは、施工現場に打設されたコンクリートの硬化度を測定して硬化度データを生成し、施工現場のうち硬化度の測定がなされた場所を特定する位置データを取得し、硬化度を測定した測定時刻を示す時刻データを取得し、硬化度データと位置データと時刻データとを対応付けた測定情報を生成するものである。
【0009】
図2、
図3に示すように、硬化度測定装置10Aは、ハンドル12と、軸部材14と、貫入針16と、筺体18と、ロードセル20と、制御部22と、入力部24と、表示部26と、測位部28と、計時部30と、通信部32などを含んで構成されている。
ハンドル12は、手で把持される部分であり、本実施の形態では、左右の手で把持するに足る太さと長さとを有する棒状の部材で構成されている。
軸部材14は、ハンドル12の中央から突設され、軸部材14は、中実状であってもよく、中空状であってもよい。
【0010】
貫入針16は、軸部材14の先端に設けられコンクリートに貫入される部分である。
貫入針16は、予め定められた断面積を有する均一な円形断面を呈し、先端が平坦面となっている。
本実施の形態では、貫入針16は、断面積が異なるものが複数設けられ、軸部材14の先端は、複数の貫入針16に着脱可能である。
軸部材14の先端と貫入針16とを着脱可能にする構造は、例えば、軸部材14の先端に雄ねじを設け、貫入針16に前記雄ねじに螺合する雌ねじを設けるなど、従来公知の様々な構造が採用可能である。
【0011】
筺体18は、軸部材14のハンドル12寄りの箇所に介設されている。したがって、軸部材14は、ハンドル12側の部分1402と、貫入針16側の部分1404とが分断されると共に、それらの部分1402、1404は筺体18により同軸上に結合されている。
筺体18は、ロードセル20、制御部22、入力部24、表示部26、測位部28、計時部30、通信部32を収容している。また、筺体18には、硬化度測定装置10Aの電源をオン、オフする電源スイッチ34(
図3)が設けられている。
【0012】
ロードセル20は、貫入針16が受ける荷重を軸部材14の部分1404を介して検出するものである。
ロードセル20として、磁歪式、静電容量型、ひずみゲージ式など従来公知の様々なものが使用可能である。
【0013】
制御部22は、CPU、制御プログラム等を格納・記憶するROM、制御プログラムの作動領域としてのRAM、各種データを書き換え可能に保持するEEPROM、周辺回路等とのインターフェースをとるインターフェース部などを含んで構成される。
制御部22は、前記の制御プログラムを実行することにより、貫入抵抗算出手段22Aと、測定情報生成手段22Bとして機能する。
貫入抵抗算出手段22Aは、ロードセル20で検出された荷重を貫入針16の断面積で除した貫入抵抗K(N/mm
2)を施工現場に打設されたコンクリートの硬化度データとして算出するものである。
なお、本実施の形態では、硬化度データとして貫入抵抗Kを用いる場合について説明するが、硬化度データは、コンクリートの硬化度合いを示すものであればよく、貫入抵抗Kに限定されるものではない。
測定情報生成手段22Bは、貫入抵抗算出手段22Aで算出された硬化度データと、後述する測位部28で生成された位置データと、後述する計時部30で生成された時刻データとを対応付けた測定情報を生成するものである。
なお、本実施の形態では、ハンドル12、軸部材14、貫入針16、ロードセル20、貫入抵抗算出手段22A、入力部24によって、施工現場に打設されたコンクリートの硬化度を測定して硬化度データを生成する硬化度データ生成手段が構成されている。
【0014】
入力部24は、測定の開始を制御部22に指示する測定開始キー2402、貫入針16の断面積を入力して制御部22に設定するための置数キー2404、置数キー2404によって入力された数値を決定するための決定キー2406などを含んで構成されている。
なお、制御部22は、置数キー2404の操作により入力された数値を表示部26に表示するように構成されており、置数キー2404は、1つのキーを押圧する毎に入力される数値がインクリメントされるような形態のものであっても、あるいは、0〜9の数値を直接入力するテンキーで構成されるものであってもよい。
【0015】
表示部26は、表示手段を構成するものであり、貫入抵抗算出手段22Aで算出された貫入抵抗を表示するものである。表示部26としては、数字や文字、記号などを表示できるものであればよく、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイなど従来公知の様々な表示器が使用可能である。
【0016】
測位部28は、施工現場のうち硬化度の測定がなされた場所を特定する位置データを取得する位置データ取得手段を構成するものである。
本実施の形態では、測位部28は、GPS衛星などの測位衛星から受信した測位信号に基いて測位を行なって位置データを取得する測位装置によって構成されている。
【0017】
計時部30は、硬化度を測定した測定時刻を示す時刻データを取得する時刻データ取得手段を構成するものである。
計時部30は、時刻データを生成するタイマであってもよいし、あるいは、測位部28で受信された測位信号から時刻データを生成するものであってもよい。
【0018】
通信部32は、通信手段を構成するものであり、測定情報生成手段22Bで生成された測定情報を通信回線36を介して管理装置50に送信するものである。
本実施の形態では、通信部32は、無線LAN3602を介して中継器38に接続され、中継器38から無線LANを介して管理装置50に接続されている。なお、中継器38は、データの送受信を行なうことに加えて、データの蓄積、データの処理を行なうサーバの機能を有するものとしてもよい。
したがって、本実施の形態では、通信回線36は、無線LAN3602、中継器38を含むものである。
なお、通信回線36は、上記構成に限定されるものではなく、インターネット、専用回線、公衆回線など従来公知の様々な通信回線を組み合わせて構成することができる。
【0019】
次に、管理装置50について説明する。
管理装置50は、通信回線36を介して硬化度測定装置10Aと通信可能に構成されている。
管理装置50は、例えば、タブレット型コンピュータやパーソナルコンピュータなどの端末装置52によって構成することができる。
管理装置50は、通信部54と、制御部56と、表示部58とを含んで構成されている。
通信部54は、通信回線36を介して硬化度測定装置10Aから測定情報を受信するものである。
制御部56は、CPU、制御プログラム等を格納・記憶するROM、制御プログラムの作動領域としてのRAM、各種データを書き換え可能に保持するEEPROM、周辺回路等とのインターフェースをとるインターフェース部などを含んで構成される。
表示部58は、文字、記号、画像などを表示するものである。
【0020】
制御部56は、CPUが制御プログラムを実行することにより管理情報生成手段56A、硬化度判定手段56Bとして機能する。
管理情報生成手段56Aは、測定情報に基いて硬化度データと位置データと時刻データとを互いに関連付けて表現する管理情報を生成するものである。
管理情報は、施工現場の平面図を表す平面図データと、位置データに基いて平面図データに対応付けられた硬化度データと、位置データに基いて平面図データに対応付けられた時刻データとを含む。
【0021】
硬化度判定手段56Bは、通信回線36を介して受信した測定情報に含まれる硬化度データが予め定められた警報閾値を超過したか否かを判定し、警報閾値を超過したと判定されたときに、通信部54を介して警告灯60(
図1)に対して点灯、あるいは、点滅する動作の実行を指示する命令を送信するものである。
なお、警告灯60は、無線LAN3602、中継器38を介して通信部54と通信可能に構成され、受信した命令に応じて動作を実行するように構成されている。
本実施の形態では、警報閾値は、コールドジョイントを防止できる硬化度を表す貫入抵抗Kの閾値となる。
また、本実施の形態では、硬化度判定手段56Bおよび警告灯60によって警報手段が構成されている。
なお、本実施の形態では、警報手段が警告灯60を点灯あるいは点滅させる場合について説明したが、警告灯60に代えて通信回線36に接続されたブザーを設けておき、硬化度判定手段56Bが警報閾値を超過したと判定したときに、通信部54を介して通信回線36に接続された警告灯60に対して鳴動動作の実行を指示するようにしてもよい。この場合、硬化度判定手段56Bおよびブザーによって警報手段が構成されることになる。
【0022】
本実施の形態では、表示部58は、管理情報生成手段56Aから供給される管理情報を表示する表示手段を構成する。
図5に示すように、表示部58は、平面図データに基いて表示される平面
図Mの画像上に、硬化度データを示すアイコンICと数字で示された時刻データTDを重ね合わせて表示することで管理情報を表示する。
本実施の形態では、長方形状を呈する平面
図Mの画像上に、位置データに対応する箇所に硬化度データを示すアイコンICが表示され、アイコンに隣接して時刻データTDが表示されている。
硬化度データの大小は、アイコンICの色、形状、大きさの少なくとも1つを変化させることで表現される。
本実施の形態では、貫入抵抗Kの範囲を以下の3段階に区分して各段階に対応してアイコンICの色を異ならせている。なお、
図5においては、アイコンICの色の違いをハッチングの種類を異ならせて表現している。
1)貫入抵抗K<0.01(N/mm
2):青色
2)0.01(N/mm
2)≦貫入抵抗K≦0.1(N/mm
2):黄色
3)0.1(N/mm
2)<貫入抵抗K:赤色
また、各アイコンICに隣接して時刻データTDが数値で表示されている。
なお、時刻データTDの下方に表示されている「h1m」は、重ね打ちされたコンクリートの最下層の下面から現時点のコンクリートの上面の高さを示している。この高さを示す数値は、例えば、管理装置50から入力することで表示される。
【0023】
次に本実施の形態のコンクリート品質管理装置50の使用方法について説明する。
作業者は、硬化度測定装置10Aを用いて施工現場でコンクリートの硬化度の測定を行なう。
すなわち、予め、施工現場で打設されたコンクリートの性状に応じて適切な断面積を有する貫入針16を軸部材14の先端に装着する。
そして、装着した貫入針16の断面積を置数キー2404、決定キー2406を操作することにより制御部22に設定しておく。
次に、測定開始キー2402を操作したのち、ハンドル12を把持して打設されたコンクリートの表面に貫入針16を垂直に当て付け、ハンドル12を鉛直下方に押し下げて貫入針16をコンクリート内部に貫入させる。
これにより貫入針16が荷重を受け、その荷重がロードセル20で検出される。
貫入抵抗算出手段22Aは、ロードセル20から供給された検出信号から荷重を求めると共に、荷重を前記設定された貫入針16の断面積で除した貫入抵抗K(N/mm
2)を算出する。
ロードセル20によって検出される荷重は、貫入針16がコンクリート内で移動している間変動するが、貫入抵抗算出手段22Aは、例えば、検出された荷重の最大値を用いて貫入抵抗Kを算出する。
制御部22は、貫入抵抗算出手段22Aで算出された貫入抵抗Kを表示部5826に表示させる。
【0024】
一方、測位部28は、硬化度の測定がなされた場所を特定する位置データを取得し、計時部30は、硬化度を測定した測定時刻を示す時刻データを取得する。
測定情報生成手段22Bは、硬化度データとしての貫入抵抗Kと、位置データと、時刻データとを対応付けた測定情報を生成する。
通信部32は、測定情報を通信回線36に送信する。
このような一連の測定操作が終了したならば、次の測定箇所に移動して同様の測定を繰り返して行なう。
本実施の形態では、
図5に示すように、20箇所について測定操作を行なう。
【0025】
管理装置50は、硬化度測定装置10Aから通信回線36を介して測定情報を受信する毎、管理情報生成手段56Aにより管理情報を生成し、表示部58に管理情報を表示する。
また、硬化度判定手段56Bは、測定情報に含まれる硬化度データが警報閾値を超過したと判定されたときに、通信部54を介して通信回線36に接続された警告灯60に対して点灯、あるいは、点滅する動作の実行を指示する。
【0026】
以上説明したように本実施の形態によれば、施工現場に打設されたコンクリートの硬化度を測定した硬化度データと、硬化度の測定がなされた場所を特定する位置データと、硬化度を測定した測定時刻を示す時刻データとを対応付けた測定情報を生成し、測定情報に基いて硬化度データと位置データと時刻データとを互いに関連付けて表現する管理情報を生成して表示するようにした。
したがって、広い面積の施工現場であっても大掛かりな事前の準備を行なうことなくコンクリートの硬化度をきめ細かく把握することができ、コンクリートの打設に関わる管理を容易に行なう上で有利となる。
特に大規模な埋立地にコンクリートを打設するような場合においては、事前の準備が不要となるため、コンクリートの打設に関わる管理の合理化を図る上で極めて有利となる。
【0027】
また、管理情報は、施工現場の平面図を表す平面図データと、位置データに基いて平面図データに対応付けられた硬化度データと、位置データに基いて平面図データに対応付けられた時刻データとを含むので、これら平面図データ、硬化度データ、時刻データを把握する上で有利となる。
【0028】
また、平面図データに基いて表示される平面
図Mの画像上に、硬化度データを示すアイコンICと時刻データTDとを重ね合わせて表示させるので、管理情報を一目で把握する上で有利となる。
【0029】
また、アイコンICの色、形状、大きさの少なくとも1つを変化させることで硬化度データの大小を表現するようにしたので、硬化度データの大小を一目で把握する上で有利となる。
【0030】
また、警報手段によって、硬化度データが予め定められた警報閾値を超過したと判定されたときに警報を発生するようにしたので、打設作業のコールドジョイントの予防を図る上で有利となる。
【0031】
また、位置データ取得手段は、測位衛星から受信した測位信号に基いて測位を行なって位置データを取得する測位部28によって構成されているので、作業者が特別な操作や作業を行なうことなく位置データの取得を容易に行なう上で有利となる。
【0032】
なお、位置データ取得手段は、本実施の形態のものに限定されず、以下の様な位置データ取得手段を用いることができる。
1)位置データ取得手段を、硬化度測定手段による硬化度の測定がなされた場所に設置されるターゲットと、ターゲットを追尾することで位置データを取得するトータルステーションとを含んで構成する。
この場合、例えば、ターゲットは、硬化度測定装置10Aのハンドル12の上部にブラケットを介して取着する。また、トータルステーションは、施工現場の全体にわたってターゲットを追尾できる箇所に設置する。
2)位置データとして、施工現場において予め区画された複数の範囲に割り当てられた識別データを用いる。
識別データは、例えば、施工現場に対して互いに直交するX軸とY軸との直交座標を設定し、各範囲に対してXYの座標点で表現される識別データを割り当てる。
位置データ取得手段を、識別データを手入力によって入力する入力装置によって構成する。
このような変形例1)、2)によれば、測位衛星を用いた測位が困難な環境であっても位置データの取得が可能となる。
【0033】
また、本実施の形態では、硬化度データ生成手段が手動によってコンクリートの貫入抵抗Kを測定するものである場合について説明したが、硬化度データ生成手段は、施工現場に打設されたコンクリートの硬化度を測定して硬化度データを生成することができればよく、以下のように硬化度を測定してもよい。
1)硬化度測定装置10Aからハンドル12を取り外し、軸部材14のハンドル12側の部分1402を重機のアームの先端に取着する。
アームの操作により貫入針16をコンクリートに貫入させることで硬化度データを測定する。
2)硬化度測定装置10Aからハンドル12を取り外し、軸部材14のハンドル12側の部分1402をコンクリートの締め固めを行なうバイブレータに取り付け、貫入針16をコンクリートに貫入させることで硬化度データを測定する。
【0034】
また、本実施の形態では、貫入抵抗算出手段22Aが硬化度測定装置10Aに設けられている場合について説明した。
しかしながら、貫入抵抗算出手段22Aは、管理装置50、あるいは、サーバ機能を有する中継器38に設けても良い。
この場合は、硬化度測定装置10Aにおいてロードセルで検出された荷重データを通信部54を介して管理装置50の貫入抵抗算出手段22A、あるいは、中継器38の貫入抵抗算出手段22Aに供給するようにすればよい。
【0035】
また、本実施の形態では、時刻データ取得手段(計時部30)、測定情報生成手段22Bが硬化度測定装置10Aに設けられている場合について説明したが、時刻データ取得手段、測定情報生成手段22Bは、管理装置50、あるいは、サーバ機能を有する中継器38に設けてもよい。この場合、測定情報生成手段22Bは、通信回線36を介して硬化度データ、位置データを受信した時点で、時刻データ取得手段で取得した時刻データを関連付けて測定データを生成すればよい。
【0036】
次に、施工現場にコンクリートが打設されてからの時間経過(注水されてからの時間経過)に伴う貫入抵抗Kの変化とコールドジョイントとの関係について説明する。
図6はコンクリートを打設してからの経過時間Tと貫入抵抗Kとの関係を示す線図であり、性状が異なる2種類のコンクリートA、Bを比較している。なお、
図6は4月に行った測定結果を示す。
JIS1147(コンクリートの凝結時間試験方法)では、コンクリートの貫入抵抗Kが3.5(N/mm
2)の時点を始発時間、コンクリートの貫入抵抗Kが28.0(N/mm
2)の時点を終結時間と規定している。
図6から明らかなように、性状が異なるコンクリートA、Bにおいてそれぞれ始発時間、終結時間が異なっている。
図7は、
図6のうち始発時間までの部分を拡大して示した線図である。
図8は、経過時間Tと貫入抵抗Kとの関係を示す線図であり、
図6と同様の測定を8月に行ったものであり、
図7と同様に始発時間までの部分を拡大して示している。
図7、
図8を比較してわかるように、気温が高い
図8の方が気温が低い
図7に比較してコンクリートA、Bの双方の始発時間が大きく短縮されている。
【0037】
ところで、始発時間における貫入抵抗K=3.5(N/mm
2)の状態のコンクリートは硬化度が高すぎるため、コールドジョイントを防止する上で不利である。
したがって、硬化度がより低い時点で、すなわち、貫入抵抗Kが3.5(N/mm
2)よりも低い時点でコンクリートを打設しなくてはならない。
ここで、コールドジョイントを防止できる硬化度を表す貫入抵抗Kの閾値、すなわちコールドジョイントを予防するための貫入抵抗Kの閾値を、
図7、
図8に示すように、例えば1(N/mm
2)と規定する。
この場合、硬化度測定装置10Aによって測定した貫入抵抗Kが上記の閾値を超える前の時点でコンクリートを打設することによってコールドジョイントの発生を予防できる。
したがって、警報手段の警報閾値として、上記の閾値以下の閾値を設定しておけば、警報手段によって警報が発せられた時点でコンクリートの打設を実施することにより、コールドジョイントの予防を図る上で有利となる。
【0038】
(第2の実施の形態)
次に第2の実施の形態について説明する。
第1の実施の形態における硬化度測定装置10Aは、コンクリートの貫入抵抗Kを測定し硬化度データとして生成するものであった。
この場合、貫入抵抗Kを算出する際、貫入針16をコンクリートに貫入する際の貫入速度Vが貫入針16が受ける荷重に影響を与える。
すなわち、検出される荷重のばらつきを抑制する上で、貫入速度Vが予め定められた基準速度V0に維持されていることが好ましい。
貫入速度Vが基準速度V0よりも速いと荷重が大きめに検出され、反対に貫入速度Vが基準速度V0よりも遅いと荷重が小さめに検出される。
しかしながら、作業員が手作業で硬化度測定装置10Aの操作を行なうことから、貫入速度Vを基準速度V0に正確に維持することは難しい。
そこで、第2の実施の形態の硬化度測定装置10Bでは、貫入針16をコンクリートに貫入する際の貫入速度Vに基いて貫入抵抗Kを補正するようにしたものである。
したがって、コンクリートの品質管理装置100の全体構成は、
図1に示すものと同様であり、管理装置50については第1の実施の形態と変わらないためその説明を省略する。また、以下の実施の形態では、第1の実施の形態と同様の部分については同一の符号を付して説明を省略する。
【0039】
図9、
図10に示すように、第2の実施の形態における硬化度測定装置10Bが第1の実施の形態と異なるのは、距離センサ40と、ブザー42と、貫入速度算出手段22Cと、貫入抵抗補正手段22Dと、速度判定手段22Eとが設けられている点である。なお、貫入速度算出手段22と、貫入抵抗補正手段22D、速度判定手段22Eは、制御部22が前記の制御プログラムを実行することにより実現されるものである。
距離センサ40は、この距離センサ40とコンクリートCの表面との距離を検出して制御部22に供給するものである。
本実施の形態では、距離センサ40は、筺体18に設けられ、レーザ光をコンクリートCの表面に照射すると共に、コンクリートCの表面で反射されたレーザ光を受光することにより距離を検出する。なお、距離センサ40としては、超音波やレーダを用いたものなど従来公知の様々な距離センサ40が使用可能である。
ブザーは、筺体18に設けられ、速度判定手段22Eの判定結果に基づいて鳴動されるものである。
【0040】
貫入速度算出手段22Cは、距離センサ40で検出された距離の単位時間当たりの変化量に基いて貫入針16のコンクリートCへの貫入速度Vを算出するものである。
本実施の形態では、距離センサ40と貫入速度算出手段22Cとによって貫入針16がコンクリートCに貫入されたときの貫入速度Vを検出する貫入速度検出手段が構成されている。
【0041】
また、貫入抵抗補正手段22Dは、貫入抵抗算出手段22Aが算出した貫入抵抗Kを、前記の貫入速度検出手段で検出された貫入速度Vに基いて補正するものである。
貫入抵抗補正手段22Dによる貫入抵抗Kの補正は、例えば以下のようにして行なう。
すなわち、測定対象となるコンクリートにおいて、基準速度V0で測定した貫入抵抗Kを基準貫入抵抗K0とする。
次に、基準速度V0よりも大きい貫入速度Vで、あるいは、貫入速度Vよりも小さい貫入速度Vで、貫入抵抗Kをそれぞれ測定する。このとき、基準貫入抵抗K0と、基準速度V0と異なる貫入速度Vで測定された貫入抵抗Kとに基いてK0=α・Kとなる補正係数αを求める。
貫入速度Vを様々に異ならせて補正係数αを実測し、その実測結果に基いて補正係数αを例えば貫入速度Vの関数として表した補正式(相関式)を求める。
そして、貫入抵抗補正手段22Dは、上記補正式に基いて、貫入抵抗算出手段22Aが算出した貫入抵抗Kを前記の貫入速度検出手段で検出された貫入速度Vに基いて補正する。
【0042】
速度判定手段22Eは、検出された貫入速度Vの単位時間当たりの変化率(加速度)が予め定められた閾値を超過したか否かを判定し、超過したと判定したときにブザー42を鳴動させるものである。
本実施の形態では、速度判定手段22Eとブザー42とによって、貫入速度検出手段で検出された貫入速度Vの変化率が予め定められた閾値を超過したときに測定異常であると判定し、測定異常を示す警報を発する警報手段が構成されている。
上記閾値は、貫入針16がコンクリートC中の骨材(砂利)などの障害物にぶつかることで急激に貫入速度Vが低下したときの貫入速度Vの変化率(負の加速度)に基いて設定される。
【0043】
なお、第2の実施の形態では、ハンドル12、軸部材14、貫入針16、ロードセル20、貫入抵抗算出手段22A、貫入速度算出手段22C、貫入抵抗補正手段22D、入力部24によって、硬化度データ生成手段が構成されている。
【0044】
第2の実施の形態によれば、第1の実施の形態と同様の効果が奏されることは無論のこと、貫入抵抗算出手段22Aが算出した貫入抵抗Kを貫入速度検出手段で検出された貫入速度Vに基いて補正するようにしたので、貫入速度Vの大きさによらず貫入抵抗Kを正確に測定する上で有利となる。
また、警報手段が、貫入速度検出手段で検出された貫入速度Vの変化率が予め定められた閾値を超過したときに測定異常であると判定し、測定異常を示す警報を発するようにしたので、貫入針16が骨材などの障害物にぶつかって正常な貫入抵抗Kの測定ができないことを作業者に知らせることができる。したがって、作業者は、測定場所を変更するなどして改めて測定をやり直すことができ、貫入抵抗Kを正確に測定する上で有利となる。
なお、本実施の形態では、警報手段がブザー42を鳴動させる場合について説明したが、表示部26に「測定異常です。測定場所を変えて測定してください。」といったような警告メッセージを表示するようにしてもよい。あるいは、筺体18に警告ランプを設けておき、警告ランプを点灯あるいは点滅するようにしてもよい。
【0045】
また、第2の実施の形態においても第1の実施の形態と同様に、硬化度データ生成手段が手動によってコンクリートの貫入抵抗Kを測定するものである場合について説明した。
しかしながら、先に説明した第1の実施の形態の変形例と同様に、硬化度測定装置10からハンドル12を取り外し、軸部材14のハンドル12側の部分1402を重機のアームの先端に取着し、アームの操作により貫入針16をコンクリートに貫入させることで硬化度データを測定してもよい。あるいは、軸部材14のハンドル12側の部分1402をコンクリートの締め固めを行なうバイブレータに取り付け、貫入針16をコンクリートに貫入させることで硬化度データを測定してもよい。
このような場合は、重機あるいはバイブレータを用いて貫入針16をコンクリートに貫入させることから、手作業に比較して貫入速度Vを一定に維持することがより難しい。
しかしながら、第2の実施の形態のように、貫入抵抗補正手段22Dにより貫入抵抗Kを貫入速度Vに基いて補正すると、重機あるいはバイブレータを用いた貫入抵抗Kを測定を行なう場合であっても、貫入抵抗Kを正確に測定する上で有利となる。