(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6096521
(24)【登録日】2017年2月24日
(45)【発行日】2017年3月15日
(54)【発明の名称】フローティングナットおよびフローティングボルト
(51)【国際特許分類】
F16B 37/04 20060101AFI20170306BHJP
F16B 37/14 20060101ALI20170306BHJP
【FI】
F16B37/04 J
F16B37/14 G
【請求項の数】12
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-17631(P2013-17631)
(22)【出願日】2013年1月31日
(65)【公開番号】特開2014-149030(P2014-149030A)
(43)【公開日】2014年8月21日
【審査請求日】2016年1月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】391002052
【氏名又は名称】日本ドライブイット株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082843
【弁理士】
【氏名又は名称】窪田 卓美
(72)【発明者】
【氏名】石井 一義
【審査官】
鎌田 哲生
(56)【参考文献】
【文献】
特開2005−188745(JP,A)
【文献】
特開2011−140978(JP,A)
【文献】
特開2004−257119(JP,A)
【文献】
特表2005−528560(JP,A)
【文献】
特開2010−107047(JP,A)
【文献】
特開2010−151287(JP,A)
【文献】
国際公開第2012/171526(WO,A1)
【文献】
特開2011−094783(JP,A)
【文献】
実開昭60−169416(JP,U)
【文献】
実開昭57−182623(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B 23/00−43/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心部に開口(1)を有し、表面側または裏面側の幅方向両側に一対の側壁部(2)が立ち上げられ、その端部が被取付部材に固定される第1プレート(3)と、
第1プレート(3)の裏面側または表面側に板バネ(4)を介してスライド自在に接触する第2プレート(5)と、
第2プレート(5)の中心部に突設固定され、その軸線上に内ネジ(6)が形成され、その突設部の外直径が前記第1プレート(3)の前記開口(1)の直径より小径の軸部(7)と、
第1プレート(3)の表面側または裏面側に接触し、前記軸部(7)に固定される第3プレート(8)と、を具備し、
前記板バネ(4)は第2プレート(5)が第1プレート(3)から離反する方向に付勢され、
第1プレート(3)の前記一対の側壁(2)は、第3プレート(8)または第2プレート(5)の端が第1プレート(3)より外側にはみ出るのを規制することを特徴とするフローティングナット。
【請求項2】
中心部に開口(1)を有し、表面側または裏面側の幅方向両側に一対の側壁部(2)が立ち上げられた第1プレート(3)と、
第1プレート(3)の裏面側または表面側に板バネ(4)を介して接触する第2プレート(5)と、
第2プレート(5)の中心部に突設固定され、その外周に外ネジが形成され、その突設部の外直径が前記第1プレート(3)の前記開口(1)の直径より小径の軸部(7)と、
第1プレート(3)の表面側または裏面側に接触し、前記軸部(7)に固定される第3プレート(8)と、を具備し、
前記板バネ(4)は第2プレート(5)が第1プレート(3)から離反する方向に付勢され、
第1プレート(3)の前記一対の側壁(2)は、第3プレート(8)または第2プレート(5)の端が第1プレート(3)より外側にはみ出るのを規制することを特徴とするフローティングボルト。
【請求項3】
請求項1に記載のフローティングナットにおいて、
第2プレート(5)および第3プレート(8)は、略同一の平面を有すると共に、それぞれ平行二面(5a)(8a)を有し、両プレート(5)(8)の各平行二面(5a)(8a)が互いに平行に位置して夫々が前記軸部(7)に固定されたフローティングナット。
【請求項4】
請求項3に記載のフローティングナットにおいて、
前記板バネ(4)は、その両側が第2プレート(5)または第3プレート(8)の側に立ち上げられた一対のバネ側壁(4a)を有し、その一対のバネ側壁(4a)に第2プレート(5)または第3プレート(8)の前記平行二面(5a)(8a)が接触または近接するフローティングナット。
【請求項5】
請求項3または請求項4に記載のフローティングナットにおいて、
前記軸部(7)は、その軸線方向に離間して外周が段付きに拡大する小径段付き部(7a)と大径段付き部(7b)とを有し、
その大径段付き部(7b)に第2プレート(5)または第3プレート(8)がカシメ固定され、小径段付き部(7a)に第3プレート(8)または第2プレート(5)がカシメ固定されたフローティングナット。
【請求項6】
請求項5に記載のフローティングナットにおいて、
前記軸部(7)の前記小径段付き部(7a)の外周と大径段付き部(7b)の外周とに、歯形(10)が形成され、それらの歯形(10)に、第2プレート(5)および第3プレート(8)の各中心孔(5b)(8 b)が、軸線方向から圧入されて、それらが軸部(7)に固定されたフローティングナット。
【請求項7】
請求項4に記載のフローティングナットにおいて、
前記第1プレート(3)の長手方向の断面が偏平な台形状に曲折され、その曲折された台形の凹陥部が前記表面側または裏面側に位置し、その凹陥部の深さが前記第3プレート(8)または第2プレート(5)の厚み以上であり、台形の段壁(3a)に前記第3プレート(8)または第2プレート(5)の長手方向の一端が当接したとき、その他端の少なくとも一部が、前記開口(1)の孔縁部に支持されているフローティングナット。
【請求項8】
請求項2に記載のフローティングボルトにおいて、
第2プレート(5)および第3プレート(8)は、略同一の平面を有すると共に、それぞれ平行二面(5a)(8a)を有し、両プレート(5)(8)の各平行二面(5a)(8a)が互いに平行に位置して夫々が前記軸部(7)に固定されたフローティングボルト。
【請求項9】
請求項8に記載のフローティングボルトにおいて、
前記板バネ(4)は、その両側が第2プレート(5)または第3プレート(8)の側に立ち上げられた一対のバネ側壁(4a)を有し、その一対のバネ側壁(4a)に第2プレート(5)または第3プレート(8)の前記平行二面(5a)(8a)が接触または近接するフローティングボルト。
【請求項10】
請求項8または請求項9に記載のフローティングボルトにおいて、
前記軸部(7)は、その軸線方向に離間して外周が段付きに拡大する小径段付き部(7a)と大径段付き部(7b)とを有し、
その大径段付き部(7b)に第2プレート(5)または第3プレート(8)がカシメ固定され、小径段付き部(7a)に第3プレート(8)または第2プレート(5)がカシメ固定されたフローティングボルト。
【請求項11】
請求項10に記載のフローティングボルトにおいて、
前記軸部(7)の前記小径段付き部(7a)の外周と大径段付き部(7b)の外周とに、歯形(10)が形成され、それらの歯形(10)に、第2プレート(5)および第3プレート(8)の各中心孔(5b)(8 b)が、軸線方向から圧入されて、それらが軸部(7)に固定されたフローティングボルト。
【請求項12】
請求項9に記載のフローティングボルトにおいて、
前記第1プレート(3)の長手方向の断面が偏平な台形状に曲折され、その曲折された台形の凹陥部が前記表面側または裏面側に位置し、その凹陥部の深さが前記第3プレート(8)または第2プレート(5)の厚み以上であり、台形の段壁(3a)に前記第3プレート(8)または第2プレート(5)の長手方向の一端が当接したとき、その他端の少なくとも一部が、前記開口(1)の孔縁部に支持されているフローティングボルト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケーシングの内部等に取付けて、そこにボルト等を介して各種部品を固定する際、そのナット等が水平方向に移動できるようにしたフローティングナットおよびフローティングボルトに関する。
【背景技術】
【0002】
本出願人は、既に特許文献1に記載のフローティングナットを提案している。
このフローティングナットは、中央にネジ孔を有するナット板と、それを支持する支持板とを有し、その支持板の長手方向両端を折り返してナット板を抱持するものである。そしてナット板が平面に沿って移動可能としたものである。それにより、他の取付部材のボルト孔の位置の自由度を増すものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−94783号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のフローティングナットは、金属板よりなる支持板の両端部を折り返して、内部にナット板を抱持し、そのナット板が平面方向に移動できるようにしたものである。
この種のフローティングナットは、それにボルトを締結する際、慎重に行わないと、ナット板にかかる外力により、支持板の折返し部を変形させてしまう。すると、その支持機能を失うことになる。
また、ボルトの不用意な操作により支持板の変形が大きいと、ナット板がケーシング内に脱落することも有り、ケーシングを解体してナット板を取り出さなければならない。
更に、支持板自体はケーシングにリベットやスポット溶接等で固着されているため、支持機能を失ったフローティングナットの付け替えに労力と時間を要する。
【0005】
また、ナット板の移動のし易さは、ナット板を抱持する抱持力による。その抱持力の調整は、極めて厳密に行なう必要がある。通常は支持板のナット板の押さえ部分に僅かの凸面を形成しプレス圧力を調整することで行われる。強すぎればナット板の移動ができず、弱すぎればナット板が不用意に移動し、ボルトとの芯合わせができなくなる。その状態で、ボルトを締め付けるとフローティングナットのねじ部を損傷し、締め付けが困難乃至は不能となる場合がある。
特に、ケーシングの壁にフローティングナットを取り付けた場合には、ナット板の自重が作用するので移動のしやすさと保持力の兼ね合いは微妙な調整が必要となる。
この支持板によるナット板押さえ構造では、ナットの稼動範囲の大きさ、ナットサイズの違いおよび使用場所等により支持板のナット板押さえ部分の形状を変更しなければならないので、支持板の加工時のプレス型を変える必要があり製作にコストもかかる。
【0006】
そこで本発明は、ボルト締結の際に、不用意に支持板を変形することがなく且つ、ナットの抱持力を容易に且つ最適に調整することができる新たなフローティングナットおよびフローティングボルトを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の本発明は、中心部に開口(1)を有し、表面側または裏面側の幅方向両側に一対の側壁部(2)が立ち上げられ、その端部が被取付部材に固定される第1プレート(3)と、
第1プレート(3)の裏面側または表面側に板バネ(4)を介してスライド自在に接触する第2プレート(5)と、
第2プレート(5)の中心部に突設固定され、その軸線上に内ネジ(6)が形成され、その突設部の外直径が前記第1プレート(3)の前記開口(1)の直径より小径の軸部(7)と、
第1プレート(3)の表面側または裏面側に接触し、前記軸部(7)に固定される第3プレート(8)と、を具備し、
前記板バネ(4)は第2プレート(5)が第1プレート(3)から離反する方向に付勢され、
第1プレート(3)の前記一対の側壁(2)は、第3プレート(8)または第2プレート(5)の端が第1プレート(3)より外側にはみ出るのを規制することを特徴とするフローティングナットである。
【0008】
請求項2に記載の本発明は、中心部に開口(1)を有し、表面側または裏面側の幅方向両側に一対の側壁部(2)が立ち上げられた第1プレート(3)と、
第1プレート(3)の裏面側または表面側に板バネ(4)を介して接触する第2プレート(5)と、
第2プレート(5)の中心部に突設固定され、その外周に外ネジが形成され、その突設部の外直径が前記第1プレート(3)の前記開口(1)の直径より小径の軸部(7)と、
第1プレート(3)の表面側または裏面側に接触し、前記軸部(7)に固定される第3プレート(8)と、を具備し、
前記板バネ(4)は第2プレート(5)が第1プレート(3)から離反する方向に付勢され、
第1プレート(3)の前記一対の側壁(2)は、第3プレート(8)または第2プレート(5)の端が第1プレート(3)より外側にはみ出るのを規制することを特徴とするフローティングボルトである。
【0009】
請求項3に記載の本発明は、請求項1に記載のフローティングナットにおいて、
第2プレート(5)および第3プレート(8)は、略同一の平面を有すると共に、それぞれ平行二面(5a)(8a)を有し、両プレート(5)(8)の各平行二面(5a)(8a)が互いに平行に位置して夫々が前記軸部(7)に固定されたフローティングナットである。
【0010】
請求項4に記載の本発明は、請求項3に記載のフローティングナットにおいて、
前記板バネ(4)は、その両側が第2プレート(5)または第3プレート(8)の側に立ち上げられた一対のバネ側壁(4a)を有し、その一対のバネ側壁(4a)に第2プレート(5)または第3プレート(8)の前記平行二面(5a)(8a)が接触または近接するフローティングナットである。
【0011】
請求項5に記載の本発明は、請求項3または請求項4に記載のフローティングナットにおいて、
前記軸部(7)は、その軸線方向に離間して外周が段付きに拡大する小径段付き部(7a)と大径段付き部(7b)とを有し、
その大径段付き部(7b)に第2プレート(5)または第3プレート(8)がカシメ固定され、小径段付き部(7a)に第3プレート(8)または第2プレート(5)がカシメ固定されたフローティングナットである。
【0012】
請求項6に記載の本発明は、請求項5に記載のフローティングナットにおいて、
前記軸部(7)の前記小径段付き部(7a)の外周と大径段付き部(7b)の外周とに、歯形(10)が形成され、それらの歯形(10)に、第2プレート(5)および第3プレート(8)の各中心孔(5b)(8 b)が、軸線方向から圧入されて、それらが軸部(7)に固定されたフローティングナットである。
【0013】
請求項7に記載の本発明は、請求項4に記載のフローティングナットにおいて、
前記第1プレート(3)の長手方向の断面が偏平な台形状に曲折され、その曲折された台形の凹陥部が前記表面側または裏面側に位置し、その凹陥部の深さが前記第3プレート8または第2プレート5の厚み以上であり、台形の段壁3aに前記第3プレート8または第2プレート5の長手方向の一端が当接したとき、その他端の少なくとも一部が、前記開口1の孔縁部に支持されているフローティングナットである。
請求項8に記載の本発明は、請求項2に記載のフローティングボルトにおいて、
第2プレート(5)および第3プレート(8)は、略同一の平面を有すると共に、それぞれ平行二面(5a)(8a)を有し、両プレート(5)(8)の各平行二面(5a)(8a)が互いに平行に位置して夫々が前記軸部(7)に固定されたフローティングボルトである。
請求項9に記載の本発明は、請求項8に記載のフローティングボルトにおいて、
前記板バネ(4)は、その両側が第2プレート(5)または第3プレート(8)の側に立ち上げられた一対のバネ側壁(4a)を有し、その一対のバネ側壁(4a)に第2プレート(5)または第3プレート(8)の前記平行二面(5a)(8a)が接触または近接するフローティングボルトである。
請求項10に記載の本発明は、請求項8または請求項9に記載のフローティングボルトにおいて、
前記軸部(7)は、その軸線方向に離間して外周が段付きに拡大する小径段付き部(7a)と大径段付き部(7b)とを有し、
その大径段付き部(7b)に第2プレート(5)または第3プレート(8)がカシメ固定され、小径段付き部(7a)に第3プレート(8)または第2プレート(5)がカシメ固定されたフローティングボルトである。
請求項11に記載の本発明は、請求項10に記載のフローティングボルトにおいて、
前記軸部(7)の前記小径段付き部(7a)の外周と大径段付き部(7b)の外周とに、歯形(10)が形成され、それらの歯形(10)に、第2プレート(5)および第3プレート(8)の各中心孔(5b)(8 b)が、軸線方向から圧入されて、それらが軸部(7)に固定されたフローティングボルトである。
請求項12に記載の本発明は、請求項9に記載のフローティングボルトにおいて、
前記第1プレート(3)の長手方向の断面が偏平な台形状に曲折され、その曲折された台形の凹陥部が前記表面側または裏面側に位置し、その凹陥部の深さが前記第3プレート(8)または第2プレート(5)の厚み以上であり、台形の段壁(3a)に前記第3プレート(8)または第2プレート(5)の長手方向の一端が当接したとき、その他端の少なくとも一部が、前記開口(1)の孔縁部に支持されているフローティングボルトである。
【発明の効果】
【0014】
請求項1、請求項2に記載の発明は、第1プレート3の両側に一対の側壁2が設けられ、その側壁2により第3プレート8または第2プレート5の端が第1プレート3より外側にはみ出るのを規制している。そのため、第3プレート8等が他の部材と干渉するおそれがない。
さらに、第2プレート5と第1プレート3と、第3プレート8とが配置されると共に、その第2プレート5と、第3プレート8とがそれぞれ軸部7に固定されて、両プレート5,8の間隔を特定している。そして、第1プレート3と第2プレート5または第3プレート8との間に板バネ4が、介装されるため、その板バネの弾発力を正確に規制することができ、最適な接触圧でスライドできるフローティングナットまたはフローティングボルトを提供できる。
【0015】
請求項3
又は請求項8に記載の発明は、第2プレート5および第3プレート8の各平行二面5a,8aが互いに平行に位置して夫々が前記軸部7に固定され、両プレート5、8が略同一の平面である。そのため、第2プレート5も第3プレート8と同一姿勢でスライドし、それらが第1プレート3より外側にはみ出ることがなく、第2プレート5、第3プレート8のいずれも他の部材と干渉するおそれがない。
【0016】
請求項4
又は請求項9に記載の発明は、前記板バネ4の両側が第2プレート5または第3プレート8の側に立ち上げられた一対のバネ側壁4aを有し、その一対のバネ側壁4aに第2プレート5または第3プレート8の前記平行二面5a,8aが接触または近接する。そのため板バネ4の姿勢が第2プレート5または第3プレート8に規制され、バネ圧が変化することを防止できる。
請求項5
又は請求項10に記載の発明は、軸部7の外周が段付きに拡大する小径段付き部7aと大径段付き部7bとを有し、その大径段付き部7bと小径段付き部7aに第2プレート5と第3プレート8とがカシメ固定されたものである。そのため、製造容易で量産性が高い。
【0017】
請求項6
又は請求項11に記載の発明は、軸部7の前記小径段付き部7aの外周と大径段付き部7bの外周とに、歯形10が形成され、それらの歯形10に、第2プレート5および第3プレート8の各中心孔5b,8bが、軸線方向から圧入されて、それらが軸部7に固定されたものである。そのため、さらに、製造容易で量産性が高い。
請求項7
又は請求項12に記載の発明は、第1プレート3の断面が台形状に曲折され、その凹陥部の深さが前記第3プレート8または第2プレート5の厚み以上であり、台形の段壁3aに前記第3プレート8または第2プレート5の長手方向の一端が当接したとき、その他端の少なくとも一部が、前記開口1の孔縁部に支持されているものである。そのため、第2プレート5、第3プレート8の一部が第1プレート3の開口1に没入することがなく、取扱易いフローティングナットまたはフローティングボルトとなる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の第1実施例のフローティングナットの分解斜視図。
【
図2】同フローティングナットの組立て状態を示す斜視図。
【
図4】
図3のIV−IV矢視における使用状態を示す説明図。
【
図5】同フローティングナットの使用時における軸部7の移動範囲を示す説明図。
【
図6】本発明の第2実施例のフローティングナットの分解斜視図。
【
図7】本発明の第3実施例のフローティングナットの分解斜視図。
【
図8】本発明の第4実施例のフローティングナットの分解斜視図。
【
図9】本発明のフローティングボルトの取付状態を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、図面に基づいて本発明の実施の形態につき説明する。
図1〜
図5は、本発明の第1実施例のフローティングナットであり、
図6はその第2実施例のフローティングナットであり、それぞれ請求項1に記載の発明である。
この第1実施例のフローティングナット15は、
図1に示す如く、第3プレート8と第1プレート3と板バネ4と第2プレート5と軸部7とからなる。第1プレート3は、金属板のプレス成形体からなり、その長手方向が偏平な台形状に形成され、中心に開口1を有するとともに、その両側に一対の側壁部2が第1プレート3の段壁3a側に立ち上げられている。この段壁3aおよび側壁部2の高さは、第3プレート8の厚みにほぼ等しい。第3プレート8と板バネ4と第2プレート5はそれぞれ矩形に形成され、それらの外周がほぼ整合する。そして、それら各中心に貫通孔を有する。
【0020】
板バネ4は、その両側が第2プレート5側に折り曲げられてバネ側壁4aを形成する。そして、そのバネ側壁4aが第2プレート5の両側の平行二面5aに接触又は近接する。板バネ4には、長手方向に一対の舌片部4bが第2プレート5側に切り起こされている。なお、第1プレート3の長手方向両端部にはそれぞれ取付孔14が設けられている。
次に軸部7は、軸線方向に段付き状に形成され、先端部に小径段付き部7a、根元部に大径段付き部7bを有する。それとともに、それぞれに小径段付き部7a、大径段付き部7bよりも僅かに小なる外直径の歯車状の歯形10が、それらに隣接して設けられている。さらに、軸部7の中心には内ネジ6が螺刻されている。
【0021】
第2プレート5の中心孔5b内の内径は大径段付き部7bの歯形10外周よりも僅かに小に形成されている。又、第3プレート8の中心孔8bは、小径段付き部7aの歯形10の外周よりも僅かに小に形成されている。
このようにしてなる各部品は、先ず、軸部7の大径段付き部7bの歯形10に第2プレート5の中心孔5bが圧入される。その状態を
図4に示す。次いで、第2プレート5に板バネ4が被嵌され、その上に第1プレート3、第3プレート8が配置され、第3プレート8の中心孔8bが小径段付き部7aの歯形10に圧入される(
図4参照)。
【0022】
このようにして、
図2〜
図4に示すフローティングナットが完成する。このとき、板バネ4の舌片部4bが第2プレート5を第1プレート3に対して軸線方向の外側に押圧する。 又、組立て状態において、
図5に示すごとく、第2プレート5の下面側の孔縁部が大径段付き部7bに着座し、第3プレート8の孔縁部が小径段付き部7aに着座される。それら、各段付き部7a、7bの位置により、両プレート5,8の離間距離が特定される。その間隔により、中間に介装される板バネ4の弾発力および、各プレートのスライドのし易さの程度が調整される。
そして、それぞれの歯形10と第3プレート8、第2プレート5とは、それらの孔縁部の塑性変形により、咬着され、各プレート8、5と軸部7との間の回り止めがされる。
【0023】
このようにしてなるフローティングナット15は、一例として
図4に示すごとく、被取付部材11に溶接、リベット止め、あるいはボルト等により、固定される。そして、被取付部材11に組付部材12が重ねられ、ボルト13のねじ部を組付部材12の貫通孔に挿入することにより、その先端が軸部7の内ネジ6に螺着される。このとき、軸部7は水平方向に移動し、ボルト13の軸線と内ネジ6の軸線が一致するようになる。
即ち、軸部7はボルト13の軸線位置に応じて移動するものである。
【0024】
その移動範囲は、
図5に示すとおりである。そして、第2プレート5、板バネ4が長手方向には第1プレート3の一対の段壁3a間に位置し、幅方向には側壁部2間に位置する。なぜならば、
図1において、第3プレート8と板バネ4と第2プレート5とが略同一形状であり、第3プレート8と第2プレート5とは互いに整合するように一体に固定されている。そして、第3プレート8が第1プレート3の一対の側壁部2間と一対の段壁3a間に囲まれ、それらの範囲から外れることができない。そのため、第3プレート8の移動範囲で第2プレート5が移動できる。
なお、開口1の内径は軸部7の中間部の外直径の数倍以上に形成されている(
図5参照)。そのため、軸部7は開口1内を実線の状態から鎖線の状態まで移動することができる。
【0025】
次に、
図6は、本発明のフローティングナットの第2実施例であり、この例が
図1の第1実施例と異なる点は、板バネ4および第2プレート5の位置と、第3プレート8の位置が逆転している点である。それらの変更によっても、その作用効果に変わりがない。なお、
図6において、第1プレート3の両側壁2の方向を下向きにしてもよい。さらには、一方の側壁と他方の側壁を逆方向に折り曲げてもよい。
【0026】
図7は、本発明のフローティングナットの第3実施例であり、この例が
図6の第2実施例と異なる点は、軸部7の形状と、第3プレート8の中心孔の口径のみである。この軸部7は外周に縦ローレット19(歯車状)が形成され、軸方向の外周が同一直径に形成されている。第3プレート8の中心孔8bの口径および第2プレート5の中心孔5bの口径は、その縦ローレット19の歯先直径より僅かに小に形成され、その軸部7が各プレート8,5の中心孔8b,5bに圧入固定される。
図8は、本発明のフローティングナットの第4実施例であり、この例が第3実施例と異なる点は、その軸部7のみであり、その軸部外周に綾目ローレット18が形成されたものである。各プレート8,5等との関係は上記第3実施例と同じである。
【0027】
次に
図9は、本発明のフローティングボルト16の一実施例であり。本発明の請求項2に記載のものである。
この例が
図4のフローティングナット15と異なる点は、基本的に、軸部7のナットの替わりに外ネジ付きボルト9を用いた点である。そして、第1プレート3が溶接あるいはボルト等により被取付部材11に固定され、それに組付部材12がフローティングボルト16の外ネジ付きボルト9とナット17とで締結固定される。そして組付部材12の孔に外ネジ付きボルト9を挿入するとき、組付部材12の孔に整合するように外ネジ付きボルト9を水平方向に移動することができる。
【0028】
なお、前記
図1の実施例と同様に、
図7又は
図8において、板バネ4および第2プレート5の位置と、第3プレート8の位置を逆転してもよい。その場合にも作用効果は
図7の実施例と変わらない。
また、各実施例の図において、同一部品には同一符号を付し、その説明を省略する。本発明は上記各実施例に限定されるものでは勿論なく、特許請求の範囲の各構成の範囲内で適宜設計変更しうる。
又、特許請求の範囲における各部品の括弧内の符号は、実施例に対応したものであり、その符号の実施例に、本発明が限定されるものではないことは勿論である。
【符号の説明】
【0029】
1 開口
2 側壁部
3 第1プレート
3a 段壁
4 板バネ
4a バネ側壁
4b 舌片部
5 第2プレート
5a 平行二面
5b 中心孔
【0030】
6 内ネジ
7 軸部
7a 小径段付き部
7b 大径段付き部
8 第3プレート
8a 平行二面
8b 中心孔
9 外ネジ付きボルト
10 歯形
【0031】
11 被取付部材
12 組付部材
13 ボルト
14 取付孔
15 フローティングナット
16 フローティングボルト
17 ナット
18 綾目ローレット
19 縦ローレット