特許第6096532号(P6096532)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6096532異種ポリマー間の型内接着成形方法及び防水製品の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6096532
(24)【登録日】2017年2月24日
(45)【発行日】2017年3月15日
(54)【発明の名称】異種ポリマー間の型内接着成形方法及び防水製品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 39/10 20060101AFI20170306BHJP
   B29C 39/22 20060101ALI20170306BHJP
【FI】
   B29C39/10
   B29C39/22
【請求項の数】4
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-35522(P2013-35522)
(22)【出願日】2013年2月26日
(65)【公開番号】特開2014-162123(P2014-162123A)
(43)【公開日】2014年9月8日
【審査請求日】2016年2月9日
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成24年度経済産業省戦略的基盤技術高度化支援事業、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】599016431
【氏名又は名称】学校法人 芝浦工業大学
(73)【特許権者】
【識別番号】500241952
【氏名又は名称】三光ライト工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096002
【弁理士】
【氏名又は名称】奥田 弘之
(74)【代理人】
【識別番号】100091650
【弁理士】
【氏名又は名称】奥田 規之
(72)【発明者】
【氏名】相澤 龍彦
(72)【発明者】
【氏名】山口 鉄也
(72)【発明者】
【氏名】酒寄 治樹
【審査官】 内藤 康彰
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−168448(JP,A)
【文献】 特開2007−334289(JP,A)
【文献】 特開2004−330509(JP,A)
【文献】 特開平04−251718(JP,A)
【文献】 特開2012−066417(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C33/00−51/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のポリマーよりなる被接合物の表面を、接合物成形用金型にインサート型締め圧着させる工程と、
上記金型の凹部に連通するゲートから、接着成分を含有あるいは溶解させたプライマーを凹部内に注入して、上記被接合物の表面に接着準備領域を形成する工程と、
上記ゲートから溶融した第2のポリマーを注入して、上記凹部内に第2のポリマーを充填させる工程と、
第2のポリマーが固化した後に、上記金型から第1のポリマー被接合物の表面の接着準備領域に接合された第2のポリマーを取り外す工程と、
からなる異種ポリマー間の型内接着成形方法。
【請求項2】
事前に上記被接合物の表面における少なくとも接着準備領域に対応する領域に微細な凹部を多数形成する工程を設けることを特徴とする請求項1に記載の異種ポリマー間の型内接着成形方法。
【請求項3】
上記被接合物を形成するための金型に、極短パルスレーザを照射して多数の凹部を形成しておき、この凹部を転写することによって上記被接合物の凹部が形成されることを特徴とする請求項2に記載の異種ポリマー間の型内接着成形方法。
【請求項4】
第1のポリマーよりなる被接合物の表面を、接合物成形用金型にインサート型締め圧着させる工程と、
上記金型の凹部に連通するゲートから、接着成分を含有あるいは溶解させたプライマーを凹部内に注入して、上記接合物の表面に接着準備領域を形成する工程と、
上記ゲートからパッキン形成用の第2のポリマーを溶融させた状態で注入して、上記凹部内に第2のポリマーを充填させる工程と、
第2のポリマーが固化した後に、上記金型から第1のポリマー被接合物の表面の接着準備領域に接合された第2のポリマーを取り外す工程と、
からなる防水製品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、異種ポリマー間をプライマーを介して接着する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話やスマートメータをはじめ、多くの機器・構造体は、その内部にバッテリー、アンテナ、電子回路など、水を含む液体の接触・混入を嫌うため、防水機能、特に完全防止機能は不可欠な要素となっている。東日本大震災では、多くの自動車が冠水したため、その心臓部ともいうべき制御系も使用不能となり、多くが廃車となるなど、完全防止機能は、地域インフラを保証する重要な要素でもある。
【0003】
携帯電話を例にとると、この完全防水機能を付与するために、バッテリーカバーなどの外装部品内側に、シリコン樹脂などを接着あるいは締結している。
O−リングのような構造では、取り外し時の取り扱いが困難となるため、通常は、外装部品とシリコン樹脂などを接着したものが多い。
【0004】
その場合、外装部品の所定の位置に、シリコン樹脂本体と接着剤とを別々に塗布して接着する方法(金型外接着)は、膨大な労力を必要とする。
したがって、シリコン樹脂に接着成分を含有、溶解した樹脂を用い、それを金型内で、外装部品の所定の位置に成形する方法(選択接着)が採用されている。
【0005】
この選択接着では、成形時の流動むらは避けられず、成形時の流量が過多であると、接着成分を含むシリコン樹脂は、所定の位置から漏れ、外装部品面に接着することになる。
接着成分を含むため、これらのバリや不具合を除去するには膨大な労力を必要としているのが現状である(非特許文献1参照)。また成形時の流量が過少の場合、接着不良となり、ロット単位での不良となり、大きな生産上の問題となる。
【非特許文献1】防水パッキン・防水ゴムの品質管理 インターネットURL:http://www.kyowakg.com/products/bosui/kanagata.html 検索日:2013年2月18日
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この発明は、従来の上記問題を解決するために案出されたものであり、バリや接着不良が生じ難く、万一バリが生じた場合であっても除去し易い異種ポリマー間の接着技術を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するため、請求項1に記載した異種ポリマー間の型内接着成形方法は、第1のポリマーよりなる被接合物の表面を、接合物成形用金型にインサート型締め圧着させる工程と、上記金型の凹部に連通するゲートから、接着成分を含有あるいは溶解させたプライマーを凹部内に注入して、上記被接合物の表面に接着準備領域を形成する工程と、上記ゲートから溶融した第2のポリマーを注入して、上記凹部内に第2のポリマーを充填させる工程と、第2のポリマーが固化した後に、上記金型から第1のポリマー被接合物の表面の接着準備領域に接合された第2のポリマーを取り外す工程と、からなることを特徴としている。
【0008】
請求項2に記載した異種ポリマー間の型内接着成形方法は、請求項1の方法を前提とし、さらに、事前に上記被接合物の表面における少なくとも接着準備領域に対応する領域に微細な凹部を多数形成する工程を設けたことを特徴としている。
【0009】
請求項3に記載した異種ポリマー間の型内接着成形方法は、請求項2の方法を前提とし、さらに、上記被接合物を形成するための金型に、極短パルスレーザを照射して多数の凹部を形成しておき、この凹部を転写することによって上記被接合物の凹部を形成することを特徴としている。
【0010】
請求項4に記載した防水製品の製造方法は、第1のポリマーよりなる被接合物の表面を、接合物成形用金型にインサート型締め圧着させる工程と、上記金型の凹部に連通するゲートから、接着成分を含有あるいは溶解させたプライマーを凹部内に注入して、上記接合物の表面に接着準備領域を形成する工程と、上記ゲートからパッキン形成用の第2のポリマーを溶融させた状態で注入して、上記凹部内に第2のポリマーを充填させる工程と、第2のポリマーが固化した後に、上記金型から第1のポリマー被接合物の表面の接着準備領域に接合された第2のポリマーを取り外す工程と、からなることを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
本技術(型内接着)では、上記の型外接着法、選択接着法の問題を解消する。
まず、シリコン樹脂等の接合側のポリマーに接着成分を含ませない。具体的には、プライマーを型内で、製品を構成する異種ポリマーの所定の位置に塗布し、製品の接着部位を構成する部分のみを、接着準備状態とする。
次に、接着・接合すべき異種ポリマーを型内で成形し、接着準備状態にある製品を構成する異種ポリマーと、型内で接着・接合する。
【0012】
接着準備状態を作製する段階から最終製品を成形する工程をすべて金型内で実施するため、型外での接着・接合の必要はない。
型内では、接着・接合すべき異種ポリマーが、接着準備状態にある製品を構成する異種ポリマーのみと接着・接合するため、原理的にバリは発生しない。
また、接着・接合すべき異種ポリマーの過不足を成形装置の制御系で管理することで、流量不足による製品不良も生じない。
【0013】
さらに、製品外装品を構成する異種ポリマーに微細な規則パターンを事前に作製しておくことで、上記の型内接着強度は増進する。そのパターン形状・密度を制御することで、異種ポリマーの接着・接合強度はさらに増加する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1は、この発明に係る防水外装製品10を示す平面図であり、ポリカーボネート樹脂よりなる携帯電話のバッテリーカバー12の裏面に、シリコン樹脂よりなる防水パッキン14を矩形状に接着形成した構造を備えている。
このバッテリーカバー12を携帯電話の本体に装着させると、防水パッキン14がバッテリーの周囲に圧着される結果、液体がバッテリー側に侵入することを有効に防止することができる。
【0015】
つぎに、図2に基づいて、防水パッキン14をバッテリーカバー12の裏面に接着形成する方法について説明する。
まず、表面に防水パッキン形成用の溝状凹部20が矩形状に形成された金型22を加工台24上に載置し、その上にバッテリーカバー12の裏面を被せる。
この状態で、バッテリーカバー12の表面には一定の荷重が加えられ、型締めがなされる。
【0016】
上記溝状凹部20の一箇所には、材料供給管26の先端ゲート28が連通接続されると共に、その接続箇所の反対側には排出用ノズル30が連通接続されている。
この材料供給管26の後端側は二又に分岐しており、第1の後端開口部32と、第2の後端開口部34を備えている。
【0017】
ここで、上記材料供給管26の第1の後端開口部32から、接着成分を含んだ霧状のプライマーが注入される。このプライマーは、金型22の溝状凹部20に沿って左右に広がり、排出用ノズル30から外部に排出される。
この結果、図3(a)に示すように、バッテリーカバー12の裏面には、溝状凹部20の形状に沿ってプライマーが付着し、接着準備状態が実現される。このプライマーが付着して接着準備状態が整った部分を、接着準備領域38と称する。
【0018】
このプライマーとしては、例えば、有機溶剤(n-ヘプタン、エタノール、n-ヘキサン)をベースに、チタネート系・アミノ系・シリカ系・エポキシ系・メタクリル系・アクリル系・イソシアネート系ポリマーを含有・溶解したポリマーよりなる。
【0019】
つぎに、上記材料供給管26の第2の後端開口部34から熱硬化型シリコン樹脂が射出される。このシリコン樹脂は、金型の溝状凹部20に沿って左右に広がり、一部は排出用ノズル30から外部に排出される。
この結果、図3(b)に示すように、バッテリーカバー12の裏面と金型22の溝状凹部20との間には、シリコン樹脂40が密に充填される。
【0020】
つぎに、シリコン樹脂40が熱硬化した後、バッテリーカバー12を引き上げることにより、図3(c)に示すように、その裏面にシリコン樹脂40よりなる防水パッキン14が接着形成される。
【0021】
従来のように、防水パッキン14を構成するための材料に接着成分を混合させる代わりに、接着成分を含んだプライマーをバッテリーカバー12の裏面に塗布して接着準備領域38を形成した後に、シリコン樹脂40が金型22内に充填される仕組みであるため、シリコン樹脂の過不足が生じ難くなる。
しかも、プライマーはシリコン樹脂用の金型22を用いて必要箇所に被着されるため、バリが生じ難くなり、万一はみ出しても接着成分を含んでいないため、容易に除去することができる。
【0022】
図4に示すように、バッテリーカバー12の裏面における少なくとも接着領域に、事前に微細な線状凹部42を多数形成しておくことで、シリコン樹脂40とバッテリーカバー12との接合強度を高めることができる。
【0023】
具体的には、溝幅40μm、深さ11μmの線状凹部42を80μm間隔で多数形成することが該当する。
もちろん、線状凹部42の構成はこれに限定されるものではなく、材質や用途に応じて様々な寸法の線状凹部42を様々な間隔で形成することができる。
あるいは、線状凹部42の代わりに、微細な点状の凹部を多数形成することもできる。
【0024】
この凹部の形成は、例えば、バッテリーカバー12を成形するための金型(図示省略)に対して、ピコ秒レーザやフェムト秒レーザ等の極短パルスレーザを照射して凹部(マイクロテクスチュア)を形成しておき、これをバッテリーカバー12の形成時に転写することによって実現される。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】この発明に係る防水製品の構造を示す平面図である。
図2】この発明に係る異種ポリマー間の型内接着成形方法を示す断面図である。
図3】この発明に係る異種ポリマー間の型内接着成形方法の各工程を示す拡大断面図である。
図4】被接合物の表面に微細な線状凹部を多数形成した様子を示す拡大断面図である。
【符号の説明】
【0026】
10 防水外装製品
12 バッテリーカバー
14 防水パッキン
20 溝状凹部
22 金型
24 加工台
26 材料供給管
28 材料供給管の先端ゲート
30 排出用ノズル
32 材料供給管の第1の後端開口部
34 材料供給管の第2の後端開口部
38 接着準備領域
40 シリコン樹脂
42 線状凹部
図1
図2
図3
図4