(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を詳細に説明するが、これは本願発明を何ら限定するものではない。
【0018】
[定義]
本願明細書において物が「透明」(transparent)であるとは、透過光が主に正透過からなり、可視光線の正透過率が高いことをいう。透明性の程度は、本願においてはヘーズ値または全光線透過率によって規定できる。その程度に及ばない透明性を有する物のことは、本願においては「不透明」(opaque)または「半透明」(semi-transparent)であると称する。
【0019】
「ヘーズ」(haze)とは、JIS K7163(またはISO 14782)に示される基準に従って測定される、透明材料の曇りの度合いのことをいう。ヘーズの値は、試験片を通過する透過光のうち、前方散乱によって、入射光から0.044rad以上それた透過光の百分率として定まる。
【0020】
「全光線透過率」(total luminous transmittance、またはTT)とは、JIS K7361-1(またはISO 13468-1)に示される基準に従って測定される、透明材料を透過する光線の率をいう。全光線透過率の値は、試験片の平行入射光束に対する全透過光束の割合として定まる。
【0021】
「タイプAデュロメータ硬さ」(Type A Durometer Hardness、またはHs)とは、JIS K6253に示される基準によって測定される、ゴム組成物の硬さのことをいう。本願明細書においてタイプAデュロメータ硬さの値は、試験片にプランジャを一定の押し込みで押しつけてから瞬間の沈み込みの深さとして、または押しつけてから30秒後の沈み込みの深さとして、測定したものとする。
【0022】
「引裂強度」(tear strength)とは、JIS K6252に示される基準によって測定される、ゴム組成物の引裂強さのことをいう。本願明細書においては、引裂強度の値は、供試材料を2mmの厚さのシートとしたものを用いて測定したものをN/mm単位に換算したものとする。
【0023】
「ムーニー粘度」(Mooney viscosity)とは、JIS K6300-1に示される基準によって測定される、未加硫ゴムの粘度のことをいう。本願明細書においては、ムーニー粘度の値は、上記基準に従うムーニー粘度計を用いて測定したものとする。
【0024】
「ビニル含量」(vinyl content)という用語は、(ブタジエンの場合)1,2-付加反応を介して、または(イソプレンの場合)3,4-付加反応を介して、重合された共役ジエンのコポリマー中のパーセンテージのことを言う。厳密には、純粋な「ビニル基」は1,3-ブタジエンの1,2-付加重合でのみ形成されるものではあるけれども、イソプレンの3,4-付加反応(または他のジエンにおけるこれに類似する付加反応)についても、ブロックコポリマー上で最終的に得られる特性は同様なものであることから、このように定義するものである。この反応の結果、ポリマー骨格にぶら下がる一置換のオレフィン基、すなわちビニル基が生じる。ポリマー中のビニル含量は周知の手法で求めることができ、例えばプロトンNMRの測定結果から求めることができる。
【0025】
こうしたビニル含量は、加える分布剤(distribution agent)の相対量によって有効に制御可能である。よく知られているように、分布剤は二種の目的を以って使用される。すなわち、まずモノアルケニルアレーンと共役ジエンの制御された分布を調製すること、さらには共役ジエンの微細構造を制御することである。分布剤とリチウムの好ましい比率については、この参照により本願に含まれる米国再特許27,145号に教示されている。
【0026】
「軟化油(plasticizer oil)」または「軟化剤」(softener)とは、当該技術分野において材料の物性を柔軟なものに変化させるために添加されることがある(油性)化合物を言い、例えば、パラフィン油、鉱物油、エステル油、炭化水素系合成潤滑油、ナフテン油、植物油、などが含まれうる。
【0027】
ブロックコポリマーに関して本願明細書で使用されている場合、「分子量」という用語は、特に他に断わりが無ければ、ポリマーまたはコポリマーのブロックのg/mol単位での真の分子量を指す。本願明細書および特許請求の範囲において言及されている(見掛けの)分子量は、ASTM 3536に従い行われるようなポリスチレン較正基準を用いて、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で測定することができる。GPCは周知の手法である。この手法においては、ポリマーは、分子サイズに従い分離され、最も大きい分子が最初に溶出される。クロマトグラフは、市販のポリスチレン分子量基準を用いて較正される。GPCを用いて測定され、このように較正されたポリマーの分子量が、スチレン換算(当量)の分子量である。スチレン当量分子量は、ポリマーのスチレン含有量およびジエンブロックのビニル含有量がわかれば、真の分子量に変換し得る。使用する検出器は、紫外線検出器と屈折率検出器の組合せが好ましい。本明細書中で表現されている分子量は、GPCトレースのピークで測定し、真の分子量に変換するが、これが一般に「最大分子量(ピーク分子量)」と呼ばれているものである。見掛けの分子量について言及しているときは、ブロックコポリマー組成物を考慮してその後の換算をしていない以外は、上記と同様の手法で測定したものであると理解されたい。
【0028】
本願明細書において「含む」または「有する」(comprising、including、またはcontaining)とは、特に他に断わりがないかぎり、或る物または部品が、一つ以上の要素を包含する/持つことを指す。この語の概念は、内的付加も外的付加もいずれをも包摂するものである。
【0029】
本願明細書において「約」または「およそ」(about、around、またはappropriately)とは、特に他に断わりがないかぎり、その語が付された数値について少なくともプラスマイナス10%の幅があることを意味する。
【0030】
[オレフィン重合体]
オレフィン重合体とは、オレフィンを重合させたものをいい、ジエン重合体および非ジエン重合体を含む。また、オレフィン重合体には、熱可塑性エラストマー(TPE)も含まれうる。本願の実施形態にかかる組成物は、少なくとも二種以上のオレフィン重合体を含むことができる。
【0031】
なお本願明細書においては、特に別に定めないかぎり、「重合体」という概念には加硫させたものと未加硫のものの双方が含まれうることに留意されたい。
【0032】
オレフィン重合体には、共役オレフィン重合体と非共役オレフィン重合体が含まれる。「共役オレフィン重合体」とは、一つの単結合によって二重結合が隔てられた構造を有するオレフィンの重合体をいう。非共役オレフィン重合体とは、一般に二つ以上の単結合によって二重結合が隔てられた構造を有するオレフィンの重合体をいう。
【0033】
こうしたオレフィン重合体を調製するにあたっては例えば、炭素数4〜20のオレフィン(ジオレフィンおよびαオレフィンを含む)、好ましくは炭素数4〜12のオレフィン、より好ましくは炭素数4〜8のオレフィンを原料として使用することができるが、これらに限定はされない。
【0034】
そうした共役または非共役のオレフィンとしては例えば、1,2-ブタジエン、1,3-ブタジエン、2-メチル-1,3-ブタジエン(イソプレン)、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエン、4-メチル-1-ペンテン、1,3-ヘキサジエン、1,4-ヘキサジエン、1,3-ヘプタジエン、4,6-ジメチル-1-ヘプテン、1,3-オクタジエン、1,7-オクタジエン、1,3-ノナジエン、1,3-デカジエン、1,9-デカジエン、1,3-ドデカジエン、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロオクテン、ジシクロペンタジエン、ノルボルネン、5-エチリデン-2-ノルボルネン、5-ビニリデン-2-ノルボルネン、5-メチレン-2-ノルボルネンなどが含まれるが、これらに限定はされない。こうしたオレフィン重合体の数平均分子量については特に制限は無いが、例えば約100g/mol〜100,000g/molの範囲のものとすることができる。
【0035】
またオレフィン重合体には、スチレン、o-メチルスチレン、p-メチルスチレン、p-tert-ブチルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、α-メチルスチレン、ビニルナフタレン、ビニルトルエン、ビニルキシレン、およびこれらの混合物から選択されるビニル芳香族炭化水素を含めることもできる。
【0036】
「ジエン重合体」とは、オレフィン重合体の一種であって、二重結合を二つ有する炭化水素を重合させたものをいう。ジエン重合体には例えば、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、1,2-ポリブタジエンゴム(または1,2-ポリブタジエンエラストマー)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、水素化ニトリルゴム(HNBR)、クロロプレンゴム(CR)、および任意のグレードの天然ゴム(NR)が含まれるが、これらに限定はされず、当該技術分野において知られるジエン炭化水素から製造できる任意の重合体も含めることができる。なお本願明細書においては、こうしたゴムである重合体のことを、「ゴム重合体」(rubber polymer)とも称することがある。
【0037】
当然のことながら、ジエン重合体にも、共役ジエン重合体および非共役ジエン重合体が含まれる。共役ジエン重合体には、エチレン-αオレフィン共重合体、エチレン-スチレン共重合体、エチレン-共役ジエン共重合体が含まれるが、これらに限定はされない。非共役ジエン重合体には例えば、エチレン-非共役ジエン共重合体が含まれうる。
「非ジエン重合体」とは、重合体のユニットにおいて二重結合を二つ有しないものをいう。非ジエン重合体としては例えば、ブチルゴム(IIR)、フッ素ゴム(FKM)、エチレンプロピレンゴム(EPM)、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、およびウレタンゴム(U)が含まれるが、これらに限定はされず、当該技術分野において知られる炭化水素から製造できる任意の重合体も含めることができる。
【0038】
なお非ジエン重合体という概念には、辞書的にはシリコーンゴム(Q)も含まれうるが、その問題については背景技術の項で述べたとおりである。しかしながら本願実施形態は、組成物全体の物性に影響をほとんど与えない程度の微量のシリコーンゴムまたはシリカの使用までをも排除しようとするものではない。すなわち、「シリカを実質的に含まない」なる語は、実質的でないシリカの使用(例えば、製造工程上不可避的に混入するものなど)までも排除するものではないことに留意されたい。
【0039】
なお、ジエンまた非ジエンの重合体には幾何異性が存在する場合がある。それらのcis含量の度合によって物性に変化も生じうる。cis含量は例えば、JIS 6230(またはISO 4650)に示された基準に従って赤外分光分析法によって測定可能である。
【0040】
cis含量の程度の高低はポリマーの種類に依って変わるが、例えばポリイソプレンの場合については、cis含量が約90〜95%、より典型的には約90〜94%程度、さらに典型的には約90〜92%程度であるジエン重合体のことを、「低cisz(低シス、ローシス)」であると称することができる。また、cis含量が約95%を超えるもの、より典型的には約98%〜約99%程度であるもののことを、「高cis(高シス、ハイシス)」であると称することができる。
【0041】
また例えばポリブタジエンについては、cis含量が約20〜40%程度のものが「低cis」、約94〜98%程度のものが「高cis」、その中間のものが「中cis」と称されることがある。
【0042】
本願の実施形態においては、より高い透明性または適切な硬度を得る観点から、低cisまたは中cisのジエン重合体を少なくとも一種使用することが好ましい。
【0043】
そのような低cisまたは中cisのジエン重合体の例としては、Cariflex IR0307KUおよびCariflex IR0310KU(クレイトンポリマー社製のポリイソプレン、cis含量:約90%〜約91%)、ソルプレン255およびアサプレン755A(旭化成社製のスチレン系エラストマー)、ジエン35NR、ジエン35RNF、ジエン55RNF、ジエン35NF、ジエン55NF、およびジエン51(Firestone Polymers社製の中cisポリブタジエン、cis含量:約40%、ムーニー粘度:約35〜55)、Nipol BR1241SおよびNipol BR1242S(日本ゼオン社製の低cis1,4-ポリブタジエン、ムーニー粘度:約35〜55)、ならびにJSR RB805、JSR RB810、JSR RB820、JSR RB830、およびJSR RB840(JSR社製の低結晶性シンジオクタクチック1,2-ポリブタジエン系熱可塑性エラストマー、1,2-結合含量:約90%〜約96%)、といったものを挙げることができる。
【0044】
柔軟性を得る観点からは、重合体の結晶性は低いことが好ましい。例えばポリブタジエンブロック共重合体の場合、水素化後の結晶性(特に低温での過度の硬度)を回避するために、1,2-付加の割合を好ましくは約30%以上とすることができる。
【0045】
上記重合体(ポリマー)の調製にあたっては、従来技術でこうした重合体の調製に有用であることが公知の任意の不活性な炭化水素溶媒を使用できる。適当な溶媒としては例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタンなど、ならびにそのアルキルで置換された誘導体などの直鎖および側鎖の炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタンなど、ならびにそのアルキルで置換された誘導体などの脂環式炭化水素;ベンゼン、ナフタレン、トルエン、キシレンなど芳香族系およびアルキルで置換された芳香族系炭化水素;およびテトラリン、デカリンなど水素化芳香族系炭化水素が挙げられる。
【0046】
また、特に別に定めないかぎり、「重合体」にはその末端が変性剤で変性された変性重合体も含まれうる。そうした変性剤としては例えば、アミノ基、アミド基、アルコキシシリル基、イソシアネート基、イミノ基、イミダゾール基、ウレア基、エーテル基、カルボニル基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、ニトリル基、およびピリジル基からなる群から選択される一種以上の官能基を有する化合物を挙げることができる。変性剤としては例えば、3-(N,N-ジメチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、3-(N,N-ジエチルアミノプロピル)トリメトキシシラン、3-(N,N-ジメチルアミノ)プロピルトリエトキシシラン、3-(N,N-ジエチルアミノプロピル)トリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2-(4-ピリジルエチル)トリエトキシシラン、N-(3-トリエトキシシリルプロピル)-4,5-ジヒドロイミダゾール、四塩化ケイ素などが挙げられるが、これらに限定はされない。
【0047】
[架橋剤]
本願の実施形態にかかる組成物の最終的な調製(製品として用いるための仕上げの処理)にあたっては、少なくとも二種のオレフィン重合体の混合物を、架橋剤(加硫剤)により架橋することが好ましい。架橋剤としては例えば、硫黄、硫黄含有化合物、ラジカル架橋剤、および過酸化物といったものが挙げられる。
【0048】
ラジカル架橋剤としては例えば、エチレングリコールメタアクリラート(EGDMA)、トリメチロールプロパントリメタクリラート、トリアリルイソシアヌラート、トリアリルシアヌラート、ジエチレングリコールジアクリラート、およびネオフェニレングリコールジアクリラートなどが含まれるが、これらに限定はされない。
【0049】
過酸化物としては例えば、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジクミルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)-3,5,5-トリメチルシクロヘキサン、ジイソブチリルパーオキサイド、クミルパーオキシネオデカノエート、ジ-n-プロピルパーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ-sec-ブチルパーオキシジカーボネート、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、ジ(4-t-ブチルシクロへキシル)パーオキシジカーボネート、ジ(2-エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート、t-ヘキシルパーオキシネオデカノエート、t-ブチルパーオキシネオデカノエート、t-ブチルパーオキシネオヘプタノエート、t-ヘキシルパーオキシピバレート、t-ブチルパーオキシピバレート、ジ(3,5,5-トリメチルヘキサノイル)パーオキサイド、ジラウロイルパーオキサイド、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、ジコハク酸パーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(2-エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン、t-ヘキシルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、ジ(4-メチルベンゾイル)パーオキサイド、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、ジ(3-メチルベンゾイル)パーオキサイド、ベンゾイル(3-メチルベンゾイル)パーオキサイド、ジベンゾイルパーオキサイド、1,1-ジ(t-ブチルパーオキシ)-2-メチルシクロヘキサン、1,1-ジ(t-ヘキシルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ジ(t-ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1-ジ(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2-ジ(4,4-ジ-(t-ブチルパーオキシ)シクロへキシル)プロパン、t-ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t-ブチルパーオキシマレイン酸、t-ブチルパーオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシラウレート、t-ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t-ブチルパーオキシ2-エチルヘキシルモノカーボネート、t-ヘキシルパーオキシベンゾエート、2,5-ジメチル-2,5-ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t-ブチルパーオキシアセテート、2,2-ジ-(t-ブチルパーオキシ)ブタン、t-ブチルパーオキシベンゾエート、n-ブチル4,4-ジ-(t-ブチルパーオキシ)バレレート、ジ(2-t-ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、ジ-t-ヘキシルパーオキサイド、t-ブチルクミルパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、p-メンタンヒドロパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキシン-3、ジイソプロピルベンゼンヒドロパーオキサイド、1,1,3,3-テトラメチルブチルヒドロパーオキサイド、クメンヒドロパーオキサイド、およびt-ブチルヒドロパーオキサイドといったもののうちの一種以上を用いることができるが、これらに限定はされない。
【0050】
本願実施形態の調製にあたっては例えば、上述した架橋剤のうちの一種以上を、オレフィン重合体成分100質量部に対して、0.1〜10質量部の範囲、好ましくは0.2〜8.0質量部の範囲、より好ましくは0.5〜6.0質量部の範囲で添加することができるが、他の量を添加することも可能である。
【0051】
本願実施形態の調製にあたっては好ましくは、生成物に与える汚染の少なさの観点から、架橋剤として過酸化物を用いることができる。より好ましくは、悪臭と残渣の少なさの点から、パーヘキサ(R)25B、パーヘキサ(R)25B-40、またはパーヘキサ(R)25B-40MB(日本油脂社製の2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン)を用いることができるが、これに限定はされない。
【0052】
[その他の成分]
本願の実施形態にかかる組成物には、その透明性を著しく損わないかぎりにおいて、他の成分を含めることもまた可能である。そうした他の成分としては例えば、着色剤、変性剤、加工剤(
ラウリン酸など)、抗酸化剤(モノフェノール系、ビスフェノール系、ポリフェノール系、硫黄系、リン系の化合物など;例えばイルガノックス1010(BASF製)、イルガフォス168(BASF製)、イルガノックスPS800(BASF製)など)、還元剤、脱酸素剤、光安定剤、制酸剤、pH安定剤、表面処理剤、熱安定剤、着色剤、充填剤(タルク、炭酸カルシウム、カーボンブラックなど)、界面活性剤、ゲル化剤、殺生物剤、UV吸収剤(サリチル酸、ベンゾフェノン、ベンゾトリアゾール、シアノアクリラート、ヒンダードアミンなど)、ダスティング剤(ポリエチレン等のポリオレフィン、シリカ、タルク、または炭酸カルシウム粉末など)、難燃剤、またはポリリン酸が含まれるが、これらに限定はされない。
【0053】
例えば着色剤は、組成物に対し、単なる透明ではなくクリアブルー、クリアレッド、またはクリアグリーンのような透明感のある色彩を与えたいときに用いることが可能である。そうした着色剤としては任意の公知の着色剤を用いることが可能であり、例えば着色顔料、体質顔料、防錆顔料、機能性顔料など、すなわち例えばフタロシアニングリーン、チタン、紺青、酸化鉄、亜酸化鉛、硫化亜鉛などを用いることができるが、これらに限定はされない。
【0054】
本願実施形態にかかる組成物には例えば、これらの成分のうちの一種以上を、オレフィン重合体成分100質量部に対して、約0.10〜10.0質量部の範囲、好ましくは約0.20〜5.00質量部の範囲、より好ましくは約0.25〜2.00質量部の範囲で添加することができるが、他の量を添加することもまた可能である。
【0055】
[透明組成物]
本願の実施形態にかかる透明組成物においては、透明性の観点から、ヘーズの値が20%未満であることが好ましく、より好ましくは15%以下、さらに好ましくは10%以下である。ヘーズが20%以上となると、組成物の透明性が低くなってしまい、実用的・審美的な観点から市場の要請に応えられない問題が生ずる。
【0056】
本願の実施形態にかかる組成物はまた、タイプAデュロメータ硬さが35以上であることが好ましく、より好ましくは35以上70以下の範囲、さらに好ましくは40以上70以下の範囲、なおもさらに好ましくは50以上70以下の範囲である。また一般に、靴製品(靴底など)やタイヤなどの苛酷な環境での使用を強いられる用途では、当該硬さが60〜70程度であるのが好ましいとされる。また組成物は、30sec後におけるタイプAデュロメータ硬さが、0sec後におけるそれの80%を下回らないことが好ましく、より好ましくは90%を下回らず、さらに好ましくは95%を下回らないように構成できる。
【0057】
或る実施形態においては、組成物が、少なくとも一種の、23℃における屈折率が1.500〜1.525の範囲であるオレフィン重合体を含むことが好ましい。この実施形態の一態様においては、その組成物は、得られる透明性の観点から、そのオレフィン重合体の屈折率との差の絶対値が0.100以下、より好ましくは0.050以下、さらにより好ましくは0.020以下であるような第二のオレフィン重合体を含むことができる。
【0058】
或る実施形態においては、組成物が、低cisイソプレンゴム(IR)成分と、ブタジエンゴム(BR)、1,2-ポリブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、水素化ニトリルゴム(HNBR)、ウレタンゴム(U)、エチレンプロピレンゴム(EPM)、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、クロロプレンゴム(CR)、および天然ゴム(NR)からなる群から選択される、ゴム重合体成分とを含むことができる。その実施形態の一態様においては、その低cisイソプレンゴム成分とゴム重合体成分の質量の合計を100質量部としたときに、低cisイソプレンゴム成分の量が45〜95質量部の範囲でありえる。さらなる一態様においては、その低cisイソプレンゴム成分のcis含量が90〜94%の範囲であってもよい。
【0059】
或る実施形態においては、組成物が、軟化剤としてのオイルを実質的に含まないことで、オイルのブリーディングを回避することができる。
【0060】
或る実施形態においては、組成物が、JIS K7361-1に従って測定した全光線透過率として、88%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは91%以上を有することができる。全光線透過率が88%未満であると、透明性に欠けてしまう問題が生じうる。
【0061】
或る実施形態においては、組成物が、JIS K6252に従って2mmシートで測定した引裂強度(N/mm単位への換算値)として、10N/mm以上、好ましくは10N/mm〜50N/mmの範囲、より好ましくは10N/mm〜40N/mmを有することができる。引裂強度が10N/mm未満であると、耐久性の面で問題が生じうる。
【0062】
[製造方法]
或る実施形態においては、組成物を、以下の工程を含んだ方法により調製することができる。すなわち、リチウム触媒により得られた23℃における屈折率が1.500〜1.525の範囲である第一のオレフィン重合体を用意する工程と、リチウム触媒により得られた第二のオレフィン重合体を用意する工程と、第一のオレフィン重合体と第二のオレフィン重合体とを混合して混合物を得る工程と、混合物に架橋剤を添加する工程と、混合物を均一に混練する工程とを含む方法により調製可能である。
【0063】
リチウム触媒の使用は、残渣が少なく、高い透明性に寄与できる観点からみて好ましい。リチウム触媒としては例えば、有機リチウム触媒を用いることができ、例えば、炭素数1〜20個の炭化水素基、好ましくは炭素数2〜8個の炭化水素基で一置換から四置換されたリチウム化合物を用いることができる。
【0064】
有機リチウム触媒の例としては、アルキルリチウム(メチルリチウム、エチルリチウム、プロピルリチウム、n-ブチルリチウム、s-ブチルリチウム、t-ブチルリチウムなど)、アリールリチウム(フェニルリチウム、トリルリチウムなど)、アルケニルリチウム(ビニルリチウム、プロペニルリチウムなど)、アルキレンリチウム(テトラメチレンリチウム、ペンタメチレンリチウムなど)が挙げられるが、これらに限定はされない。
【0065】
本願の実施形態にかかる組成物は、その高い透明性が活かされる任意の産業用途に用いることができる。そのような用途の例としては、靴製品、タイヤ、衣服、マスク、雨具、玩具、制振材、建築部材、配線用被覆材、梱包材、コンピュータ用保護部材、コンピュータ用周辺機器、避妊用品、性具、人工乳首、紙おむつ、文房具、容器、食品用トレイ、球技用ボール、ボールチェア、および保護フィルムといったものが挙げられるが、これらに限定はされない。
【0066】
靴製品においては、本願実施形態にかかる組成物を用いることで、従来技術では得ることができない高い透明性と強靭性を兼ねそなえた靴底、チップ、オーナメント、舌革その他のパーツを作成することもできるし、あるいは靴全体を透明にすることも可能である。このような靴製品は実用性と意匠的(デザイン的)審美性を併せもち、商業的にきわめて高い価値を有しうる。他の用途とも共通することであるが、オイルを実質的に含まないようにすることで、ブリーディングが起こらないようにすることができるため、オイルにより他の部品を侵すことがないというのは非常に大きな利点であるといえる。
【0067】
タイヤにおいては、本願実施形態にかかる組成物を用いることで、強靭かつ透明な意匠性にすぐれたものを製造することができる。例えば、自転車または自動車用の瀟洒なタイヤを作成することが可能である。同様に、チューブも作成可能である。
【0068】
衣服や下着類、雨具、医療用マスク・花粉防護用のマスクなどのマスクや、熔接用保護眼鏡・自転車用/水泳用ゴーグル・化学実験用保護眼鏡などのアイウェアなどにおいては、本願実施形態にかかる組成物を用いることで、強靭かつ透明な部分を設けることが可能になり、向こうが見えるという実用的な価値のみならず、意匠的な要請をみたしつつも耐久性も付与することができるようになる。
【0069】
制振材および建築部材においては、本願実施形態にかかる組成物を用いることで、高い耐久性や防振性を発揮しながらも、なおも美的に満足できる透明性を担保することができる。
【0070】
配線用被覆材および梱包材においては、本願実施形態にかかる組成物を用いることで、高い絶縁性を持ちながらもその透明性により内部を容易に視認できるという効果を得ることができる。
【0071】
プラモデル、ガレージキット、もしくはミニカーなどの玩具や、人工乳首、または紙おむつなどにおいては、本願実施形態にかかる組成物を用いることで、一部または全体が透明でありながら乳幼児などがそれを口に入れても問題が無いようにすることができる。
【0072】
また避妊用品(コンドームやペッサリーなど)、性具(ラブドールやディルドーなど)、コンピュータ用保護部材(スマートフォン用カバーなど)、コンピュータ用周辺機器(コンピュータ用キーボードやマウスなど)、容器、食品用トレイ、球技用ボール、ならびにボールチェアといった用途においては、本願実施形態にかかる組成物をシリコーン樹脂の代わりに用いることで、従前の使い勝手を損うことなく、意匠的な要請から全体や一部分を透明にしつつ、オイルのブリーディングによる周囲環境の汚染を起こさず、しかも人体に触れても健康上の問題を起こしにくく耐久性にも優れたものを作成できる。
【0073】
ここに列挙した用途はあくまで例示であり、本願実施形態にかかる組成物の用途はこれらに限定されるものではないことに留意されたい。
【実施例】
【0074】
以下に述べる実施例および比較例により、さらに詳細に本願実施形態について説明してゆく。
【0075】
[実施例1]
[工程1]
低シスポリイソプレンゴム(クレイトンポリマー社製、Cariflex IR0307KU)95gの塊を、5インチオープンロール(安田精機株式会社製、ロール温度70℃、回転比1:1.25)にかけて押し潰した。
【0076】
[工程2]
5インチオープンロールの温度を100℃に上げて、1,2-ポリブタジエン(JSR社製、RB-820)5.0gをロールにかけて、潰しながらロールに巻きつけた。
【0077】
[工程3]
1,2-ポリブタジエンを巻きつけたロールに、工程1で先に潰しておいたポリイソプレンゴムを加え、同時に
ラウリン酸(0.25g)を加えながら均一に練り上げた。
【0078】
[工程4]
均一に練られたゴムをロールから外し、ロール温度を70℃に下げた。
【0079】
[工程5]
70℃になったロールに、工程4で外しておいたゴムを巻きつけて、架橋剤として2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルペルオキシ)ヘキサン(日本油脂製、商品名パーヘキサ(R)25B)を2.0g、およびエチレングリコールメタアクリラート(EGDMA)を4.0g添加して、均一に練った。
【0080】
[工程6]
次に練りあがったゴムをロールより厚さ3〜4mmのシート状に切りだし、室温で一昼夜放置して熟成させた。
【0081】
[工程7]
一昼夜熟成させたゴムを、プレス機(関西ロール株式会社製、36t・2段加熱冷却プレス)を用いて、150℃、13分(加圧15MPa)のプレス条件で架橋(cure)させ、ゴム組成物の実施例1を得た。上述した手法により物性の測定も行った。
【0082】
なお、上記工程4においてゴムをロールから外したのは、外さないと以下の三つの問題が生じるためである。
【0083】
すなわち第一に、ゴムをロールに付けたままでは冷却にかかる時間だけゴムを練りすぎ、ゴムに過度の分子切断が進行し物性が低下する悪影響が出ること。
【0084】
第二に、ゴムを付けたままロールを止め、ロールを冷却すると、再始動した場合、冷却されて粘度の上がったゴムにより始動時に過度の力がロールにかかり危険であること。
【0085】
また第三に、ゴムをロールに巻き付けた状態ではゴムが保温材となりロール温度の下がるのを妨げ、冷却に時間がかかること。
【0086】
[実施例2]
工程1においてCariflex IR0307KUを80g、工程2においてRB-820を20g用い、工程7において架橋時間を7分間とした他は、実施例1と同様にして、ゴム組成物の実施例2を得た。
【0087】
[実施例3]
工程1においてCariflex IR0307KUを90g、工程2においてRB-820を10g、工程3において
ラウリン酸を0.5g用い、工程7において架橋温度を160℃、架橋時間を10分間とした他は、実施例1と同様にして、ゴム組成物の実施例3を得た。
【0088】
[実施例4]
工程1においてCariflex IR0307KUを50g、工程2においてRB-820を50g用い、工程5においてEGDMAを添加せずパーヘキサ25Bの量を1.0gとし、工程7において架橋温度を160℃、架橋時間を5分間とした他は、実施例1と同様にして、ゴム組成物の実施例4を得た。
【0089】
[実施例5]
工程1においてCariflex IR0307KUを50g、工程2においてRB-820の代わりにジエン35NR(Firestone Polymers社製)を50g用い、工程5においてEGDMAを添加せずパーヘキサ25Bの量を1.0gとし、工程7において架橋温度を160℃、架橋時間を10分間とした他は、実施例1と同様にして、ゴム組成物の実施例5を得た。
【0090】
[実施例6]
工程1においてCariflex IR0307KUを50g、工程2においてRB-820を50g用い、工程5においてEGDMAを添加せずパーヘキサ25Bの量を1.5gとし、工程7において架橋温度を160℃、架橋時間を6分間とした他は、実施例1と同様にして、ゴム組成物の実施例6を得た。
【0091】
[実施例7]
工程1においてCariflex IR0307KUを50g、工程2においてRB-820を50g用い、工程5においてEGDMAを添加せずパーヘキサ25Bの量を2.0gとし、工程7において架橋温度を160℃、架橋時間を6分間とした他は、実施例1と同様にして、ゴム組成物の実施例7を得た。
【0092】
[実施例8]
工程1においてCariflex IR0307KUを50g、工程2においてRB-820を50g用い、工程5においてパーヘキサ25Bの量を1.0g、EGDMAの量を2.0gとし、工程7において架橋時間を5分間とした他は、実施例1と同様にして、ゴム組成物の実施例8を得た。
【0093】
[実施例9]
工程1においてCariflex IR0307KUを50g、工程2においてRB-820を50g用い、工程5においてパーヘキサ25Bの量を1.0gとし、工程7において架橋時間を4分間とした他は、実施例1と同様にして、ゴム組成物の実施例9を得た。
【0094】
[実施例10]
工程1においてCariflex IR0307KUを60g、工程2においてRB-820を40g用い、工程5においてパーヘキサ25Bの量を1.0gとし、EGDMAを添加せず、工程7において架橋温度を160℃、架橋時間を7分間とした他は、実施例1と同様にして、ゴム組成物の実施例10を得た。
【0095】
[実施例11]
工程1においてCariflex IR0307KUを70g、工程2においてRB-820を30g用い、工程5においてパーヘキサ25Bの量を1.0gとし、EGDMAを添加せず、工程7において架橋温度を160℃、架橋時間を11分間とした他は、実施例1と同様にして、ゴム組成物の実施例11を得た。
【0096】
[実施例12]
工程1においてCariflex IR0307KUを70g、工程2においてRB-820を30g用い、工程5においてEGDMAを添加せず、工程7において架橋温度を160℃、架橋時間を6分間とした他は、実施例1と同様にして、ゴム組成物の実施例12を得た。
【0097】
[実施例13]
工程1においてCariflex IR0307KUを70g、工程2においてRB-820を30g用い、工程5においてパーヘキサ25Bの量を1.0gとし、工程7において架橋時間を6分間とした他は、実施例1と同様にして、ゴム組成物の実施例13を得た。
【0098】
[実施例14]
工程1においてCariflex IR0307KUを70g、工程2においてRB-820を30g用い、工程7において架橋時間を6分間とした他は、実施例1と同様にして、ゴム組成物の実施例14を得た。
【0099】
[比較例c1]
[工程c1]
低シスポリイソプレンゴム(クレイトンポリマー社製、Cariflex IR0307KU)100gの塊を、5インチオープンロール(安田精機株式会社製、ロール温度55℃、回転比1:1.25)にかけて押し潰しながらロールに巻きつけた。
【0100】
[工程c2]
巻きついたゴムに
ラウリン酸0.5gを加えた。
【0101】
[工程c3]
次に架橋剤(日本油脂製、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルペルオキシ)ヘキサン、商品名パーヘキサ(R)25B)を2.0g、およびEGDMAを4.0gを添加して、均一に練った。
【0102】
[工程c4]
練りあがったゴムをロールより厚さ3〜4mmのシート状に切りだし、室温で一昼夜放置して熟成させた。
【0103】
[工程c5]
熟成したゴムを、プレス機(関西ロール株式会社製、36t・2段加熱冷却プレス)を用いて、160℃、15分(加圧15MPa)のプレス条件で架橋させ、ゴム組成物の比較例c1を得た。実施例1と同様に、上述した基準に従い物性を測定した。
【0104】
[比較例c2]
工程c2を省略し、工程c3においてEGDMAを添加しなかった他は、比較例c1と同様にして、ゴム組成物の比較例c2を得た。
【0105】
[比較例c3]
工程c2においてさらにイルガノックス1010を1.0g添加し、工程c3においてEGDMAを添加しなかった他は、比較例c1と同様にして、ゴム組成物の比較例c3を得た。
【0106】
[比較例c4]
工程1においてCariflex IR0307KUに代えて天然ゴム(NR#1; タイ産のRibbed Smoked Sheet #1)50gを用い、工程2においてRB-820を50g用い、工程5においてパーヘキサ25Bの量を1.0gとし、工程7において架橋温度を160℃、架橋時間を7分間とした他は、実施例1と同様にして、ゴム組成物の比較例c4を得た。
【0107】
[比較例c5]
工程c1においてCariflex IR0307KUに代えて高シスイソプレンゴム(日本ゼオン社製、IR 2200GA)100gを用い、工程c2を省略し、工程c3においてEGDMAを添加しなかった他は、比較例c1と同様にして、ゴム組成物の比較例c5を得た。
【0108】
実施例1〜14および比較例c1〜c5の結果をそれぞれ、下記表にまとめた。この結果からは、各実施例においてはヘーズ値とタイプAデュロメータ硬さなどの物性の組み合わせが優れている一方、各比較例ではいずれかの物性に欠陥が見られることがわかる。
【0109】
【表1】
【0110】
【表2】
【0111】
さらにTaber耐摩耗性とDIN耐摩耗性も比較するため、あらためて下記の実施例および比較例を行った。
【0112】
[実施例15]
工程1においてCariflex IR0307KUを50g、工程2においてRB-820を50g用い、工程5においてEGDMAを添加せずパーヘキサ25Bの量を1.0gとし、工程7において架橋温度を160℃、架橋時間を7分間とした他は、実施例1と同様にして、ゴム組成物の実施例15を得た。Taber耐摩耗性についてJIS K7204(ASTM D1044)に従って測定し、またDIN耐摩耗性についてJIS K6264-2に従って測定した。
【0113】
[実施例16]
工程5においてEGDMAを2.0g添加し、工程7において架橋温度を150℃、架橋時間を6分間とした他は実施例15と同様にして、ゴム組成物の実施例16を得た。(ヘーズなどの測定は省略した。)
【0114】
[実施例17]
工程5においてEGDMAを4.0g添加し、工程7において架橋温度を150℃、架橋時間を6分間とした他は実施例15と同様にして、ゴム組成物の実施例17を得た。(ヘーズなどの測定は省略した。)
【0115】
[実施例18]
工程7において架橋時間を6分間とした他は実施例15と同様にして、ゴム組成物の実施例18を得た。
【0116】
[比較例c6]
工程c2を省略し、工程c3においてEGDMAを添加しなかった他は、比較例c1と同様にして、ゴム組成物の比較例c6を得た。(ヘーズなどの測定は省略した。)
【0117】
[比較例c7]
工程1においてCariflex IR0307KUに代えて高シスイソプレンゴム(日本ゼオン社製、IR 2200GA)50gを用い、工程2においてRB-820を50g用い、工程5においてEGDMAを添加せずパーヘキサ25Bの量を1.0gとし、工程7において架橋温度を160℃、架橋時間を7分間とした他は、実施例1と同様にして、ゴム組成物の比較例c7を得た。
【0118】
実施例15〜18および比較例c6〜c7の結果を下記表にまとめた。この結果からは、各実施例においては耐磨耗性を含めた物性の組み合わせが優れている一方、各比較例ではいずれかの物性に欠陥が見られることがわかる。
【0119】
【表3】