特許第6096539号(P6096539)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ トヨタ自動車九州株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6096539-可動床装置 図000002
  • 特許6096539-可動床装置 図000003
  • 特許6096539-可動床装置 図000004
  • 特許6096539-可動床装置 図000005
  • 特許6096539-可動床装置 図000006
  • 特許6096539-可動床装置 図000007
  • 特許6096539-可動床装置 図000008
  • 特許6096539-可動床装置 図000009
  • 特許6096539-可動床装置 図000010
  • 特許6096539-可動床装置 図000011
  • 特許6096539-可動床装置 図000012
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6096539
(24)【登録日】2017年2月24日
(45)【発行日】2017年3月15日
(54)【発明の名称】可動床装置
(51)【国際特許分類】
   B05B 15/12 20060101AFI20170306BHJP
【FI】
   B05B15/12
【請求項の数】6
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2013-47603(P2013-47603)
(22)【出願日】2013年3月11日
(65)【公開番号】特開2014-171985(P2014-171985A)
(43)【公開日】2014年9月22日
【審査請求日】2016年2月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】596002767
【氏名又は名称】トヨタ自動車九州株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080160
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 憲一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100149205
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 泰央
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 道寛
【審査官】 安藤 達也
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−116571(JP,A)
【文献】 特開平06−292850(JP,A)
【文献】 特開平01−180264(JP,A)
【文献】 特開平07−236844(JP,A)
【文献】 実公昭63−033655(JP,Y1)
【文献】 特開2001−187355(JP,A)
【文献】 実公昭61−000947(JP,Y1)
【文献】 特開2000−093874(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05B1/00〜B05B17/08
B05C1/00〜B05C21/00
B05D1/00〜B05D7/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗装室の床面部を床面形成部と架台部と駆動部とから構成し、前記駆動部によって前記床面形成部を前記塗装室に対して進退自在とした可動床装置であって、
前記床面形成部は、互いに隣接するように配設され前記塗装室内に進出することで床を形成する複数の多孔の床片部材と、
複数の中継部材を介して複数の前記床片部材を連結する曲げ変形可能な連結部と、を備え、
前記架台部は、前記連結部が摺動可能な案内部と、前記案内部と前記駆動部を支持するフレーム部と、を備え、
前記案内部は、前記連結部を略水平に支持しつつ前記連結部が摺動可能な摺動空間を有する水平部と、前記連結部を収容可能な収容空間を有する収容部と、を連設して備え、
前記水平部は、前記連結部の摺動方向を長手方向として少なくとも前記床側が解放された平面視略長方形状で横断面略コ字状の水平案内フレームと、
前記水平案内フレームの上面を被覆する水平片と、当該水平片の前記床側を鉛直下方へ伸延させた垂直片とを有する、平面視略長方形状で横断面略L字状のカバーと、
を備え、
前記連結部と前記床片部材の間は、前記中継部材と前記連結部を構成する接続片とで構成される接続部材によって、前記連結部と前記床片部材の間を下に凸の湾曲形状で迂回連結され、
前記垂直片は、前記連結部、前記床片部材及び前記接続部材と干渉しないように前記接続部材の下に凸の湾曲形状の凹部内へ延びており、前記接続部材と前記連結部との接続部位と略同じ上下方向位置又はそれよりも下方位置まで延設されていることを特徴とする可動床装置。
【請求項2】
前記収容部は、前記連結部の案内方向を長手方向とし、少なくとも前記床側が解放された横断面略コ字状の収容案内フレームを備えることを特徴とする請求項1に記載の可動床装置。
【請求項3】
前記収容部は、側面視略U字状に形成し、前記水平部よりも下側に配設したことを特徴とする請求項2に記載の可動床装置。
【請求項4】
前記収容部は、側面視略逆U字状に形成し、前記水平部よりも上側に配設したことを特徴とする請求項2に記載の可動床装置。
【請求項5】
前記駆動部は、動力部と、回動部と、を伝達部を介して前記回動部を回動自在として構成したことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の可動床装置。
【請求項6】
前記回動部は、スプロケットとし、
前記連結部は、前記スプロケットと係合可能なチェーン機構としたことを特徴とする請求項5に記載の可動床装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可動床装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車ボディ等への自動吹付塗装は、専用の塗装ブース内において行われる。塗装ブースでは、コンベア等によって自動搬送された自動車ボディ等の塗装対象物に対して塗装ロボットによって塗料が吹付けられることで塗装が施される。このような吹付塗装では、塗装対象物に付着しなかった塗料ミストの行方が問題となる。そこで、従来、塗装ブース内の気流を塗装ブースの上方から下方へと制御することで、塗装対象物への塗料ミストの再付着を防止することが行われている。
【0003】
具体的には、塗装ブースの上部に給気用の空調設備を備え、下部に排気用のファンを備えることで、上方から下方に向かう気流を形成することができる。更に、塗料ミストを回収する観点からは、塗料ミストが塗装対象物以外の部分に、可能な限り付着しないようにすることが重要となる。このため、塗料ミストを効率よく回収する方法として、排気用のファンに至るまでの経路中に排気を水に通すことで塗料ミストを捕集することができる水流洗浄式等のフィルター機構を設ける方法が一般的に採用されている。
【0004】
また、上部の空調設備と下部のフィルター機構との間で行われる塗装作業においては、自動搬送される塗装後の自動車ボディ等の出来栄えを作業者が直接目視にて確認する作業や、塗装ロボットに対する色替え作業、メンテナンス作業等の各種作業を行う必要がある。これらの作業は作業者が自動車ボディ等や塗装ロボット等に接近して行われることから、作業者が塗装ブースに入って作業を行うための床等の通路が必要となる。そのため、自動車ボディ等の塗装対象物の下方には、通気性を考慮したグレーチング等の多孔の床が設けられている。これにより、作業者による上記各種作業が可能になると共に、塗装ブース内の気流についてグレーチング等による抵抗が負荷とはなるものの、上方から下方に向かう気流が確保されることになる。
【0005】
しかしながら、このような塗装ブースの構造においては、グレーチング等の床に対して塗料ミストの付着が避けられず、付着した塗料の堆積によって、床上で作業をする作業者の歩行等を阻害する場合があると共に、グレーチング等の隙間(開口)が減少することで気流が乱れ、塗料ミストが塗装対象物に再付着しやすいといった問題があった。更に、グレーチング等に付着した塗料を除去するために、グレーチング等を取り外して、別途の洗浄を行う必要があり、塗装ブースのメンテナンス作業が非常に煩雑なものとなっていた。
【0006】
このような問題を解決する技術が、例えば、特許文献1、2、3に開示されている。これらは何れも、グレーチング等の床を可動式として、塗装ロボットによる塗装時には床を収容したり退避させたりして、床に対する塗料ミストの付着を防止する一方、作業者による作業時には、塗装ブース内に床が形成されるようにしたものである。このような技術により、床上における作業者の歩行等についての安全の確保、安定した気流による塗装品質の確保、及び床を取外して行う洗浄作業の廃止が実現できると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特公平6−34954号公報
【特許文献2】特開平7−116571号公報
【特許文献3】特開2001−187355号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、塗装ブース内には塗料ミストや浮遊ダストが存在し、これらの塗料ミストや浮遊ダストは非常に微細で軽量であり、静電気によって帯電した箇所に引き寄せられる性質を有している。このため、塗装対象物が静電気によって帯電した場合には、塗料ミストや浮遊ダストが塗装対象物に付着してしまう。塗装対象物に付着する塗料ミストや浮遊ダストは、塗装ムラや異物付着として品質を阻害する要因となる。従って、塗装対象物への帯電防止策として、塗装対象物を接地(アース)したり、塗装ブース内の温湿度を制御することで、塗装対象物への塗料ミスト等の異常な付着を防止している。これに対して、塗装が不要な塗装対象物以外の部分については、塗料ミスト等の付着防止対策が遅れている。
【0009】
特に、塗装対象物以外の部分で可動部が存在する箇所は、可動部の動作による部品同士の接触・離反が生じることから、当該部分における静電気の発生は避けられず、このような剥離帯電は例えば1000ボルト以上の非常に大きな帯電圧となる。こうした帯電圧を低くするためには塗装ブース内の温湿度の設定を高くしておくことが必要となるが、塗装品質の安定維持のためには、使用される塗料が許容する範囲内において温湿度を制御することが必要となるため、塗装対象物以外の部分で生じる静電気対策を基準として温湿度を制御することはできない。こうした塗装ブース内の温湿度の制御の困難性が、塗料ミスト等の付着防止対策を遅らせている要因となっている。
【0010】
上述した特許文献1,2,3に係る技術においては、グレーチング等の床が可動式となっているため、床と連結されたチェーン機構等の連結部と、連結部を支持して案内する案内フレームが接触することになり、当該接触部分に静電気が発生する。この場合、案内フレームを備えた案内部の全てが金属材料で構成されていれば、アースによる静電気対策を講じることが可能であるが、床の可動時における摺動性や騒音対策、発塵対策等のためには、連結部を支持・案内する案内フレームの部分に樹脂製の緩衝材等の使用が不可欠となっている。従って、発生した静電気は樹脂部材に帯電したままとなり、案内部の全体が帯電することになる。
【0011】
このように案内部が帯電することで塗料ミスト等が当該部分に引き寄せられ、塗装中に床を収容したり退避させたりしたとしても案内フレームには塗料ミスト等が付着して堆積することになる。案内フレームに付着・堆積した塗料ミスト等は、床の摺動性を低下させたり、床を可動させるためのモータ等への負荷を増大させ、モータ等の故障の原因となったりする。一方で、付着した塗料を除去するためには、案内フレーム等を取り外して洗浄する必要があり、かかる洗浄作業は、非常に大掛かりで煩雑な作業となってしまう。なお、案内フレームへの塗料ミストの付着・堆積については、静電気による帯電がない場合であっても、当然に対策しておくべき箇所であることは言うまでもない。
【0012】
本発明は、以上のような事情に鑑みてなされたものであり、塗装ブース内の気流の安定化を図りつつ、床上、及び可動する床の案内部への塗料の付着を防止して、塗装品質の向上と作業者の安全確保、及び付着塗料の洗浄作業の簡略化を図ることができる可動床構造を有する可動床装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
以上のような目的を達成するために、本発明は以下のようなものを提供する。
【0014】
請求項1に係る発明では、塗装室の床面部を床面形成部と架台部と駆動部とから構成し、前記駆動部によって前記床面形成部を前記塗装室に対して進退自在とした可動床装置であって、前記床面形成部は、互いに隣接するように配設され前記塗装室内に進出することで床を形成する複数の多孔の床片部材と、複数の中継部材を介して複数の前記床片部材を連結する曲げ変形可能な連結部と、を備え、前記架台部は、前記連結部が摺動可能な案内部と、前記案内部と前記駆動部を支持するフレーム部と、を備え、前記案内部は、前記連結部を略水平に支持しつつ前記連結部が摺動可能な摺動空間を有する水平部と、前記連結部を収容可能な収容空間を有する収容部と、を連設して備え、前記水平部は、前記連結部の摺動方向を長手方向として少なくとも前記床側が解放された平面視略長方形状で横断面略コ字状の水平案内フレームと、前記水平案内フレームの上面を被覆する水平片と、当該水平片の前記床側を鉛直下方へ伸延させた垂直片とを有する、平面視略長方形状で横断面略L字状のカバーと、を備え、前記連結部と前記床片部材の間は、前記中継部材と前記連結部を構成する接続片とで構成される接続部材によって、前記連結部と前記床片部材の間を下に凸の湾曲形状で迂回連結され、前記垂直片は、前記連結部、前記床片部材及び前記接続部材と干渉しないように前記接続部材の下に凸の湾曲形状の凹部内へ延びており、前記接続部材と前記連結部との接続部位と略同じ上下方向位置又はそれよりも下方位置まで延設されていることを特徴とする可動床装置。
【0018】
請求項に係る発明では、前記収容部は、前記連結部の案内方向を長手方向とし、少なくとも前記床側が解放された横断面略コ字状の収容案内フレームを備えることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の可動床装置。
【0019】
請求項に係る発明では、前記収容部は、側面視略U字状に形成し、前記水平部よりも下側に配設したことを特徴とする請求項5に記載の可動床装置。
【0020】
請求項に係る発明では、前記収容部は、側面視略逆U字状に形成し、前記水平部よりも上側に配設したことを特徴とする請求項5に記載の可動床装置。
【0021】
請求項に係る発明では、前記駆動部は、動力部と、回動部と、を伝達部を介して前記回動部を回動自在として構成したことを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の可動床装置。
【0022】
請求項に係る発明では、前記回動部は、スプロケットとし、前記連結部は、前記スプロケットと係合可能なチェーン機構としたことを特徴とする請求項8に記載の可動床装置。
【発明の効果】
【0023】
本発明による可動床装置によれば、可動する床面形成部を支持・案内する案内部の摺動空間内に塗料ミストが付着・堆積しないので、モータ等に必要以上の負荷がかからず長期に渡りスムーズな摺動性を維持することができる。
【0024】
更に、案内部の摺動空間内に付着・堆積した塗料を除去するための洗浄作業が不要となるため、作業性が大幅に向上する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の一実施形態に係る可動床装置が設置された状態を示す簡易断面図である。
図2】本発明の一実施形態に係る可動床装置の後上方斜視図である。
図3】本発明の一実施形態に係る可動床装置の床を形成した状態を示す平面図である。
図4】本発明の一実施形態に係る可動床装置の床を収容した状態を示す平面図である。
図5】本発明の一実施形態に係る可動床装置の正面図である。
図6】本発明の一実施形態に係る可動床装置の左側面図である。
図7】(a)は、本発明の一実施形態に係る可動床装置の床を形成した状態を示す図であり、(b)は、床を収容した状態を示す図である。
図8】(a)は、本発明の一実施形態に係る可動床装置の水平部を摺動方向側から見た図であり、(b)は、床面形成部の一部を連結部側から見た図であり、(c)は、床面形成部の連結部近傍の一部を上側から見た図である。
図9】(a)は、本発明の一実施形態に係る可動床装置の案内部側面を示す図であり、(b)は、水平部と回動部の位置関係を示す図であり、(c)は、(b)におけるA−A線断面図である。
図10】(a)は、本発明の一実施形態に係る可動床装置の水平部を摺動方向側から見た図であり、(b)は、案内部の構造に関する第一の変形例を示す図であり、(c)は、案内部の構造に関する第二の変形例を示す図である。
図11】本発明の一実施形態に係る可動床装置の第三の変形例の左簡易側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明は、塗装ブースにおける自動車ボディ等への塗装において、塗装時には床を形成せず、塗装停止時には床を形成して床への塗料ミストの付着防止を図ると共に、床を可動させるための連結部の摺動空間を略被覆することにより、案内部内への塗料ミストの付着・堆積防止を図ろうとするものである。
【0027】
本発明の要旨は、塗装室102の床面部を床面形成部9と架台部3と駆動部10とから構成し、前記駆動部10によって前記床面形成部9を前記塗装室102に対して進退自在とした可動床装置1であって、前記床面形成部9は、互いに隣接するように配設され前記塗装室102内に進出することで床5を形成する複数の多孔の床片部材4と、複数の中継部材13を介して複数の前記床片部材4を連結する曲げ変形可能な連結部12と、を備え、前記架台部3は、前記連結部12が摺動可能な案内部7と、前記案内部7と前記駆動部10を支持するフレーム部11と、を備え、前記案内部7は、前記連結部12を略水平に支持しつつ前記連結部12が摺動可能な摺動空間8を有する水平部14と、前記連結部12を収容可能な収容空間37を有する収容部6と、を連設して備え、前記摺動空間8は、少なくとも、上側を被覆すると共に床5側を上方から略被覆した可動床装置1である。このような可動床装置1により、塗装ブース100内の気流の安定化を図りつつ、床5上、及び可動する床5の案内部7への塗料の付着を防止して、塗装品質の向上と作業者の安全確保、及び付着塗料の洗浄作業を削減することができる。
【0028】
以下、本発明に係る可動床装置1の一実施形態、及び変形例について図面を参照しながら説明する。なお、本説明中の塗装ブース100における前後左右の関係は、図1において、紙面と直交する方向の奥側を後方、手前側を前方とし、同図中における左右側を同様に左右とする。また、本説明中の可動床装置1における前後左右の関係は、図3に示す平面図において、下側を前、上側を後、とすると共に右側は右、左側は左として表現する。すなわち、図3に示す可動床装置1の床5の前進端2側を前、駆動部10側を後とし、同図中における左右側は、可動床装置1においても同様に左右となる。
【0029】
また、本説明中において、左右同一又は左右対称の構造や部品については、原則として同一の符号を付し、左右何れか一方のみを説明して、他方については説明を適宜省略する。
【0030】
本実施形態に係る床面部を構成する可動床装置1は、図1に示すような塗装ブース100で使用されるものである。塗装ブース100は、塗装が行われる塗装室102の上側に空調設備(図示せず)を有する給気室101を設け、給気室101から下方の塗装室102に向けて、温湿度管理された空気を供給している。また、塗装室102の下側には、塗料ミストを捕捉するための水103が循環する水流洗浄式のフィルター機構104、排気口105、及び排気ファン106を有する排気室107が設けられている。上方の給気室101から供給され塗装室102を通過した塗料ミストを含有する空気は、排気ファン106により形成される空気の流れによって排気室107に導かれる。排気室107では、フィルター機構104によって空気から塗料ミストが除去され、塗料ミストが除去された空気は、排気口105によって塗装ブース100から排出される。このように、塗装ブース100内の空気の流れは、上方から下方に向かう略一方向の気流となっている。
【0031】
塗装室102においては、塗装室102の略中央であって図1の紙面と直交する方向(前後方向)に自動搬送可能なコンベア108を配設し、コンベア108によって塗装対象物である自動車ボディ109を塗装ブース100内の所定の位置に搬送可能としている。また、コンベア108左右両側には塗装ロボット110が配設され、自動車ボディ109の所定の箇所を自動で塗装することができるように構成している。
【0032】
本実施形態に係る可動床装置1は、自動車ボディ109の下側であって、コンベア108の搬送方向に対して左右両側に、左右両側壁111,111とコンベア108との間を作業者が歩行可能なように各々配設している。つまり、塗装ブース100の上面視において、前後方向を搬送方向として設けられるコンベア108に対して、その搬送方向に直交する方向となる左右方向の両側に、一対の可動床装置1が床の進退方向を互いに対向させるように設けられている。なお、可動床装置1の一部は、塗装室102の左右両側壁111,111を越えて隣接する左右の部屋(塗装室102の外部)にも及ぶように配設しており、そのため左右両側壁111,111の対応する部分には、可動床装置1,1を配設可能なように設置用開口112を形成している。また、左右両側壁111,111には、塗装室102に出入り可能なように扉等113が形成されている。また、可動床装置1は、塗装ブース100等の建屋の一部を構成する梁114等の上に、可動床装置1の一部である架台部3をボルトや溶接等によって固定し、可動床装置1全体として床面部を構成している。
【0033】
可動床装置1の上面部には、グレーチング等の多孔の床片部材4群によって床5が形成されており、複数の床片部材4によって構成される床5は、コンベア108近傍側から左右両側壁111,111側に渡り略水平方向に進退自在に構成している。なお、退避する床5は、塗装室102に隣接する部屋(塗装室102の左右両外側)に位置する可動床装置1の一部である収容部6に収容される。
【0034】
このように床5を可動式とすることで、塗装中は床5を塗装ブース100から退避させることで床5に対して塗料ミストや浮遊ダストの付着を防止できると共に、塗装が行われない時には、作業者が塗装室102に出入り可能なように左右両側壁111,111の設置用開口112を介して塗装室102の外部から内部にかけて床5を形成して、その床5上にて、塗装が施された自動車ボディ109等の出来栄えを直接目視にて確認したり、塗装ロボット110の色替え作業や、メンテナンス等を行うことが可能となる。
【0035】
また、塗装中においては、床5への塗料ミストの付着防止だけでなく、床5を支持している案内部7の摺動空間8を略被覆するように構成することで、摺動空間8内への塗料ミストの進入防止を図り、案内部7について長期に渡る良好な摺動性を維持することが可能となるものである。
【0036】
また、本実施形態に係る可動床装置1は、塗装室102と一体として現場で施工し組立てることもできるが、完成体として予め組立ておくこともできるので、作業工程のレイアウト変更等の際に、設置や立ち上げ等が短期間でできるので、作業工程の稼働率等に大きな影響を与えることがない。
【0037】
次に、可動床装置1の概略を説明する。
【0038】
図2は、本実施形態に係る可動床装置1の後上方斜視図を示し、図3は可動床装置1の床5を形成した状態の平面図を示し、図4は可動床装置1の床5を収容した状態の平面図を示し、図5は可動床装置1の正面図(蓋部材45のみ図示せず)を示し、図6は可動床装置1の左側面図を示している。
【0039】
可動床装置1は、床面形成部9と架台部3と駆動部10とによって構成されている。装置全体の外観は、架台部3のフレーム部11による骨組みを含め、平面視及び側面視共に略長方形状となる略直方体形状である。
【0040】
床面形成部9は、上側に、床5面を形成する多孔の床片部材4を複数隣接するように配設して形成した床5と、曲げ変形可能とした連結部12とを複数の中継部材13を介して一体として備えている。各床片部材4は、格子状に組まれた鋼材からなるグレーチングであり、全体として矩形板状(短冊形板状)の外形を有する。このように矩形板状の外形を有する床片部材4が、長手方向を左右方向として、前後に位置する床片部材4との関係で長辺側を互いに隣接させるように、前後方向に並んだ状態で複数設けられる。
【0041】
架台部3は、連結部12が進退自在に摺動可能な案内部7と、案内部7と床面形成部9と駆動部10を支持するフレーム部11とで構成している。また、案内部7は、水平部14と収容部6とで構成している。
【0042】
駆動部10は、動力部15と、床5面の下側に配設した回動部16とを伝達部17を介して回動部16が回動自在となるように構成している。
【0043】
以上のように構成することで、床5面が形成された状態の可動床装置1は、動力部15によって発生した一方向への回転による駆動力が、伝達部17を介して回動部16に伝わり、回動部16を一方向へ回転させる。更に、回動部16と係合された連結部12が、水平部14の摺動空間8を移動しながら収容部6に収容され、所定の位置で動力部15の動作が停止する。すなわち、連結部12と連設した床5が収容部6に引き込まれて、床5面が形成されていない状態となる。また、この状態から床5面を形成する場合には、動力部15によって発生した他方向への回転による駆動力が、伝達部17を介して回動部16に伝わり、回動部16を他方向へ回転させる。更に、回動部16と係合された連結部12が、収容部6から引き出されて、水平部14を移動しながら所定の位置まで進行して動力部15の動作が停止する。すなわち、連結部12と連設した床5が水平部14に引き出されて床5面が形成された状態となる。
【0044】
なお、連結部12が収容部6の所定の位置に収容されると同時に動力部15の動作が停止する機構、及び連結部12が水平部14の所定の位置まで進行すると同時に動力部15の動作が停止する機構については、例えば、可動床装置1の所定の箇所にフォトセンサー等(図示せず)の位置検出用のセンサー等を配設することで連結部12や床5等の位置を検出可能とし、検出した信号から、例えばシーケンサー等(図示せず)を介して動力部15の動作を制御できるようにしている。
【0045】
また、上述した摺動空間8とは、水平部14において連結部12がスムーズに摺動するために必要な、連結部12の周りの空間を示しており、他部材による閉塞の有無は問わないものである。また、収容空間37とは、収容部6において連結部12がスムーズに収容されるために必要な、連結部12の周りの空間を示しており、他部材による閉塞の有無は問わないものである
【0046】
また、床5面が形成された状態においては、床5上での歩行や作業等を安全なものとするために、床5が揺れたりガタついたりすることを防止する必要がある。これを可能とする技術については、後述する駆動部10の説明において詳説する。
【0047】
次に、可動床装置1を構成する架台部3,床面形成部9,駆動部10の構造について、具体的に詳説する。
【0048】
床面形成部9を構成する床5は、図2〜6に示すように、床片部材4としてグレーチング等の平面視略長方形状で多孔の部材を使用し、各床片部材4の長辺側が夫々隣接するように略水平に複数配設することで、作業者が歩行可能な床面を形成している。
【0049】
また、連結部12は、図7(a)、(b)、図8(a)、(b)、(c)に示すように連続形状で曲げ変形可能なようにローラリンク18とピンリンク19によるチェーン機構を採用し、後述する回動部16と係合可能に構成している。
【0050】
ローラリンク18は、外側ローラリンク側板20と内側ローラリンク側板22と2個のローラ23と2個のブッシュ24で構成している。外側ローラリンク側板20は、側面視で長手方向について略全体にわたり同一幅を有しながら長手方向の両側において外側に凸の半円弧状をなす端部形状を有する。内側ローラリンク側板22は、外側ローラリンク側板20と略同じ形状・寸法の部分を有するとともに、その部分の下側の長手方向中央部に略四角形状のローラリンク接続片21を有している。ローラリンク接続片21は、内側ローラリンク側板22の上側の部分に対して略直角に曲げ加工しているため、内側ローラリンク側板22は、断面略L字状となる。外側ローラリンク側板20と内側ローラリンク側板22とは、長手方向の端部同士が側面視で互いに重なるように配置される。また、外側ローラリンク側板20は、内側ローラリンク側板22のローラリンク接続片21が折り曲げられる側と反対側の面と対向するように配設される。外側ローラリンク側板20と内側ローラリンク側板22とは、ローラ23を挿通した円筒状のブッシュ24を、互いに対向して側面視で互いに重なる長手方向の両端部に形成された孔(図示せず)に圧入することで一体とされ、ローラリンク18を構成している。
【0051】
なお、ローラリンク接続片21は、後述する中継部材13と接続するために必要な部分となり、また、内側ローラリンク側板22側に位置するローラ23の外周縁には、フランジ25を形成している。
【0052】
ピンリンク19は、外側ピンリンク側板26と内側ピンリンク側板28と2本のピンで構成している。外側ピンリンク側板26は、側面視で長手方向について略全体にわたり同一幅を有しながら長手方向の両側において外側に凸の半円弧状をなす端部形状を有する。内側ピンリンク側板28は、外側ピンリンク側板26と略同じ形状・寸法の部分を有するとともに、その部分の下側の長手方向中央部に略四角形状のピンリンク接続片27を有している。ピンリンク接続片27は、内側ピンリンク側板28の上側の部分に対して略直角に曲げ加工しているため、内側ピンリンク側板28は、断面略L字状となる。外側ピンリンク側板26と内側ピンリンク側板28とは、長手方向の端部同士が側面視で互いに重なるように配置される。また、外側ピンリンク側板26は、内側ピンリンク側板28のピンリンク接続片27が折り曲げられる側と反対側の面と対向するように配設される。外側ピンリンク側板26と内側ピンリンク側板28とは、円柱状のピン29を、互いに対向して側面視で互いに重なる長手方向の両端部に形成されたピン挿通孔31に挿通して後述するような方法で固定することで一体とされ、ピンリンク19を構成している。なお、ピンリンク接続片27は、後述する中継部材13と接続するために必要な部分となる。
【0053】
ローラリンク18とピンリンク19は、上述のようにローラリンク18を一体として構成した後、一方のブッシュ24の両開口部30,30に対して、内側ピンリンク側板28と外側ピンリンク側板26の長手方向の両端部近傍に形成したピン挿通孔31,31の一方を連通するように配設した後、ピン29を挿通することで、相対的に回動自在に接続されている。なお、ピン29の固定方法については、ピン29の両端部をリベット接続したり、ピン29の一方の端部にフランジを設けてキノコ状として他方をリベット接続したり、割りピン接続したり、その他、別途部材を使用してボルト固定する等、様々な方法が使用できる。
【0054】
このようにしてローラリンク18とピンリンク19を接続して、連結部12を所定の長さに形成することができる。また、隣接するローラ23間には、後述する回動部16の凸部32が挿入されて係合し、回動部16の回転方向に応じて連結部12が移動できるように構成されている。なお、連結部12の長手方向の両端部には、ローラリンク18が配設され、ローラリンク18の最外端は外側ローラリンク側板20と内側ローラリンク側板22とで挟持されたローラ23を、上述したピン29よりも短い終端ピン33を使用して上述したピン29の接続方法と同様の方法で固定して連結部12の端部を形成している。
【0055】
床5を構成する床片部材4と連結部12との接続で用いられる中継部材13は、図8(a)、(b)、(c)に示すように、背面視(摺動方向視)で略S字状の形状を有する。また、中継部材13の中継部材下片34の下面と、上述した内側ローラリンク側板22、又は内側ピンリンク側板28の各接続片21,27の上面とを互いに接触させた状態で、夫々に2箇所ずつ形成したボルト孔200,201が連通するように位置決めし、下側から上側にかけてボルト300を挿入してナット301によって締結固定することで連結部12と中継部材13とが一体的に連結されている。
【0056】
床片部材4と中継部材13との接続は、中継部材13の中継部材上片35の上面と、床片部材4の長手方向の端部の下面とを互いに接触させた状態で、床片部材4の一方の端部側に形成した2箇所のボルト孔202と中継部材13の中継部材上片35に形成した2箇所のボルト孔203とが連通するように位置決めし、上側からボルト302を挿入してナット303によって締結固定することで床片部材4と中継部材13とが一体的に連結されている。
【0057】
以上のようにして床面形成部9は、床5と連結部12とを中継部材13を介して一体として構成することができると共に、連続形状で曲げ変形可能な連結部12に追従した夫々の床片部材4によって、床5の形状を柔軟に変えることが可能となる。
【0058】
架台部3を構成する案内部7は、水平部14と収容部6とで構成している。図9(a)に示すように、水平部14と収容部6とは、水平部14の後端部と収容部6の一側の端部とが互いに当接した状態で、略正方形の繋板36を介して4本のボルト304で締結固定されることで一体的に構成されている。水平部14は、連結部12を略水平に支持しつつ連結部12が摺動可能な摺動空間8を有しており、収容部6は、連結部12を収容可能な収容空間37を有している。
【0059】
水平部14は、図7(a)、(b)、図8(a)、図9(a)、(b)に示すように、連結部12を略水平に支持して摺動方向に案内すると共に、連結部12が摺動可能な摺動空間8を確保するために、連結部12の摺動方向を長手方向として床5側を開口側とした平面視略長方形状(略帯状)で横断面略コ字状の第一水平案内フレーム38を備え、第一水平案内フレーム38の内部を摺動空間8としている。
【0060】
また、図8(a)に示すように、水平部14は、第一水平案内フレーム38の摺動空間8において、第一水平案内フレーム下片39の上面に、長手方向に渡り第一水平案内フレーム下片39の長辺側端縁から若干だけ突出するように配設した樹脂製で帯状の緩衝材40を備えている。緩衝材40は、連結部12のローラ23表面が第一水平案内フレーム38と直に接触して異音や発塵等が発生しないように支持する効果と、緩衝材40の側面が、ローラ23に形成したフランジ25との関係で、ローラ23を正確に摺動方向に案内する役割を果たす。
【0061】
以上のように構成することで、連結部12は、水平部14の摺動空間8内を進退自在に正確に往復することが可能となる。
【0062】
なお、図7(a)、図9(b)に示すように、後述する回動部16上方近傍に位置する水平部14と収容部6との連結部分においては、回動部16が連結部12を支持することになるため、当該連結部分における第一水平案内フレーム38には第一水平案内フレーム下片39が形成されていない。また、緩衝材40は、第一水平案内フレーム38の摺動空間8において、第一水平案内フレーム下片39に配設した緩衝材40と対向するように同様の緩衝材40(図示せず)を第一水平案内フレーム上片41の下面にも備えることができる。
【0063】
また、図2図5図8(a)に示すように、水平部14には、第一水平案内フレーム38の上面に、第一水平案内フレーム38の上方を被覆すると共に、摺動空間8の長手方向の床5側である横側方を上方から略被覆する第一カバー42が設けられている。第一カバー42は、板状の部材を折り曲げることにより形成された第一カバー水平片43と第一カバー垂直片44とを有し、平面視略長方形状(略帯状)で横断面略L字状の部材である。第一カバー42は、第一カバー水平片43の部分が第一水平案内フレーム38の上方から皿ボルト305で第一水平案内フレーム38の第一水平案内フレーム上片41に締結固定された状態で設けられている。なお、第一カバー42の第一カバー垂直片44は、図10(a)に示すように下方に更に伸延して形成してもよい。この場合、内側ローラリンク側板22のローラリンク接続片21と内側ピンリンク側板28のピンリンク接続片27、及び中継部材13は、第一カバー42に干渉しないような形状としている。
【0064】
第一カバー42は、第一カバー水平片43によって左右方向について少なくとも第一水平案内フレーム38およびピン29の床5側の端部を覆う範囲で設けられる。また、第一カバー42は、第一カバー垂直片44が上下方向について第一水平案内フレーム38の第一水平案内フレーム上片41の位置からピン29と略同じ位置またはそれよりも下方の位置まで延設されるように設けられる。従って、第一カバー水平片43が、摺動空間8の上方を被覆する摺動空間上被覆体として、また、第一カバー垂直片44が、摺動空間8の床5側の横側方を略被覆する摺動空間横被覆体としての機能を有することになる。
【0065】
以上のように第一カバー42を配設することで、第一カバー42の第一カバー水平片43と第一カバー垂直片44とによって、浮遊し、落下する塗料ミストの摺動空間8への侵入を防止できる。従って、摺動空間8を形成する部材に塗料ミストが付着して堆積しないので、案内部7の水平部14や収容部6を定期的に取り外して、付着・堆積した塗料を除去するための洗浄作業を行う必要がない。
【0066】
また、第一カバー42が設けられていることから、案内部7が静電気によって帯電したとしても、浮遊しつつ落下する塗料ミストが摺動空間8に侵入することはほぼ不可能なので、案内部7の帯電状況の変化に関わらず安定的に塗料ミストの付着を防止することができる。
【0067】
また、摺動空間8を形成する部材に塗料ミストが付着して堆積しないので、摺動空間8内を摺動する連結部12に対しても塗料ミストが二次的に付着することがないので、定期的に連結部12等を取り外して、付着した塗料を除去するための洗浄作業を行う必要がない。
【0068】
更に、摺動空間8を形成する部材や連結部12に塗料ミストが付着・堆積しないことから、連結部12の摺動性を長期間に渡り維持することができ、また、駆動部10に対して必要以上の負荷がかからないので、可動床装置1全体としてメンテナンスの簡略化と高寿命化を図ることができる。
【0069】
また、第一カバー42への塗料ミストの付着については、第一カバー42表面を使い捨てのビニールシート等(図示せず)で被覆することで、これを定期的に交換するだけで第一カバー42への塗料ミストの付着を防止できる。また、第一カバー42に塗料ミストが付着して堆積したとしても、第一カバー42の取り外しは非常に簡単であり形状も単純なので、案内部7を構成する水平部14や収容部6を全体的に取り外す場合と比べて、付着・堆積した塗料を除去するための洗浄作業の煩わしさが少ない。
【0070】
なお、可動床装置1の前方であり床5の前進端2側における水平部14の開口する端部には、図7(a)、(b)、図9(a)、(b)に示すように、水平部14の前側の開口を閉塞する蓋部材45を配設すると共に、蓋部材45の摺動空間8側には、ショックアブソーバ等の衝撃吸収材87を配設している。
【0071】
案内部7を構成する収容部6は、図2図7(a)、(b)、図9(a)、(b)、(c)に示すように、連結部12を水平部14よりも下側に案内すると共に、連結部12が収容可能な収容空間37を確保するために、床5側を開口側とした側面視略U字状で横断面略コ字状の第一収容案内フレーム46を備え、内部を収容空間37としている。
【0072】
具体的には、収容部6は、図7等に示すように、水平部14の後端部から後側(図7において左側)にかけて徐々に下側へと湾曲する上側湾曲部と、この上側湾曲部の下側から下方に向けて鉛直方向に延設される後側垂直部と、この後側垂直部の下側から前側(図7において右側)にかけて下側に凸となる半円弧状に湾曲する下側湾曲部と、この下側湾曲部の前側から上方に向けて鉛直方向に延設される前側垂直部とを有する。すなわち、収容部6は、案内部7において水平部14の後側端部から下側かつ前側に巻き込むような形状をなす部分であって、先端部となる前側垂直部の上端を水平部14の下側の面の近傍に位置させ、側面視において水平部14とともに略P字状の形状をなす。
【0073】
なお、図7(a)、図9(b),(c)に示すように、後述する回動部16の上方近傍に位置する水平部14と収容部6との連結部分においては、回動部16が連結部12を支持することになるため、当該連結部分における第一収容案内フレーム46には第一収容案内フレーム下片47が形成されていない。また、収容部6は、塗装室102と隣接する部屋(塗装室102の外部)に位置する部分となるため、発塵しても塗装に影響を与えないことから、収容部6においては、緩衝材40は必須とはならない。但し、収容部6において発塵を防止する観点や、異音等の騒音を防止する観点からは、上述した水平部14における緩衝材40と同様のものを同様の位置関係で第一収容案内フレーム46の第一収容案内フレーム上片48や第一収容案内フレーム下片47に配設しても良い。
【0074】
以上のように収容部6を構成することで、塗装室102に隣接する部屋の床下に、床面形成部9をコンパクトに収容・退避できるので、作業者等が可動部分に触れることなく安全で、かつ、スペースの有効活用ができる。
【0075】
また、収容部6は、床5側を除く他の面が被覆されており、連結部12との接触により発塵したとしても、発生した塵は収容空間37内等の収容部6内に収まるため、清掃作業が非常に楽である。
【0076】
なお、連結部12が回動部16によってスムーズに収容部6へ送られるようにするために、図9(b)、(c)に示すようなガイド89を第一収容案内フレーム下片47の外側に設けることができる。ガイド89は、背面視略L字状の板状であり、ローラ23のフランジ25を案内できるように、上部を曲げ広げた案内片90を備え、第一収容案内フレーム下片47と溶接によって接続されている。
【0077】
以上のようにガイド89を設けることで、連結部12を第一収容案内フレーム46の収容空間37へスムーズに収容できるようになると共に、第一収容案内フレーム46からスムーズに送出できるようになる。
【0078】
フレーム部11は、図2〜6に示すように、可動床装置1を一つの構造体とするための骨組みを形成するものであり、複数の任意の長さで断面を同一とする角パイプを溶接することで一体としている。また、フレーム部11に案内部7が接続されることで架台部3が構成される。
【0079】
フレーム部11は、案内部7の外側であって、案内部7の略下方において片側3本、両側合計で6本の垂直な脚部49を有する。脚部49は、床面形成部9の前進端2側の前脚50と、床面形成部9が退避される駆動部10側の後脚51と、これらの間に位置する中脚52とで構成されている。また、前脚50、中脚52、後脚51は同一面内に配設されると共に、前脚50と後脚51の2本は、可動床装置1の外形を平面視略長方形状で側面視略長方形状とする略直方体形状とする垂直方向の4つの角部を形成する位置に配設されている。すなわち、6本の脚部49は略直方体形状の角部と垂直な側面を形成する位置に配設されていることになる。
【0080】
なお、前脚50と中脚52の長さは同一で、後脚51は前脚50よりも短く形成されている。また、脚部49の下端部近傍には、隣接する全ての脚部49間に渡り同一水平面上に下フレーム53が配設され、更に、前脚50と中脚52との略中間には、前脚50と中脚52の上端と同一の高さで下フレーム53に向けて垂直に形成された垂直フレーム54が配設されている。また、下フレーム53の上方であって、隣接する全ての脚部49間に渡り、後脚51の上端と同一水平面上に上フレーム55が配設されている。更に、対向する中脚52間には、上フレームの同一水平面上に上内フレーム56が配設されると共に、下フレーム53の同一水平面上に下内フレーム57が配設されている。また、隣接する前脚50間に配設された下フレーム53の略中央と、下内フレーム57の略中央に渡り中央フレーム58が配設されている。
【0081】
また、隣接する後脚51間に配設された上フレーム55の右端部側に、駆動部10の動力部15を載置固定可能な略正方形状の固定台59を配設すると共に、固定台59を下方から支持するように補強フレーム60を配設している。なお、これらはボルトや溶接等によって固定(図示せず)されている。
【0082】
フレーム部11と水平部14との連結については、図2図6図8(a)に示すように、水平部14における第一水平案内フレーム38の垂直な外壁面に3箇所に溶接等によって設けられた第一固定板61の雌ネジ孔204対して、前脚50と中脚52と垂直フレーム54の3本の上端部に同様に設けられた略L字状の第一L型接続プレート62の垂直面に形成されたボルト孔205を連通するように位置決めし、ボルト306によって締結固定することで連結される。
【0083】
以上のように、水平部14はボルト306によって簡単にフレーム部11に着脱できるので、可動床装置1の組立や分解を容易に行うことができる。従って、可動床装置1の設置作業や除去作業、水平部14の交換やメンテナンス等の作業における煩わしさを軽減できる。
【0084】
フレーム部11と収容部6との連結については、図2図6に示すように、水平部14の略下方であって、隣接する中脚52と後脚51との間に架設された上フレーム55と下フレーム53の内側において、収容部6が連結される。
【0085】
具体的には、第一収容案内フレーム46の略U字状の上端側の垂直な2つの外壁面に、上述した第一固定板61と同構造の第二固定板(図示せず)を設けると共に、第一収容案内フレーム46の略U字状の下端部の左右外側の垂直な外壁面に、同じく同構造の第三固定板(図示せず)を設ける。また、また各第二固定板に対応する上フレーム55の上面には、略L字状の第二L型接続プレート64を設けると共に、第三固定板に対応する下フレーム53の上面には、略L字状の第三L型接続プレート66を設ける。更に、各固定板に形成された雌ネジ孔(図示せず)と、各L型接続プレート64,66の垂直面に形成されたボルト孔(図示せず)を連通するように位置決めし、ボルト307によって締結固定することで、フレーム部11に対して収容部6が連結される。
【0086】
以上のように、収容部6はボルト307によって簡単にフレーム部11に着脱できるので、可動床装置1の組立や分解を容易に行うことができる。従って、可動床装置1の設置作業や除去作業、収容部6の交換やメンテナンス等の作業における煩わしさを軽減できる。
【0087】
駆動部10は、図2〜6に示すように、動力部15としてギヤモータ67を備え、回動部16にはスプロケット68を備え、伝達部17にはベルト69を備えている。ギヤモータ67としては、内部に備える減速機によって、床面形成部9を安全な速度と充分なトルクで可動させることができるものが選定される。また、連結部12が水平部14の摺動空間8内に進出することで形成された床5は、作業者等の安全な歩行や、安全な作業を可能とするために、ガタつき等の無い状態で保持されることが必要である。そのためにギヤモータ67の内部にはブレーキ機構(図示せず)が備えられている。ブレーキ機構は、ギヤモータ67の励磁、非励磁に関わらずブレーキとして作動するものであれば、何れのタイプを使用しても良い。また、ギヤモータ67は固定台59に載置され、ボルト等(図示せず)によって固定台59に固定される。
【0088】
スプロケット68は、左右方向を回転軸方向として回転可能に支持された状態で設けられる。スプロケット68は、図2図6に示すように、フレーム部11の後脚51側で水平部14と収容部6との連結部分の近傍の下方の位置、詳細には、水平部14の後端部と収容部6の上側湾曲部および後側垂直部とからなる角部分に対して内側から嵌り込む態様となる位置に設けられる。そして、スプロケット68は、この案内部7の後端上側の部分の角部分を通過する連結部12に係合して作用する。スプロケット68は、その中心を貫通する従動軸70の両端部側を、上フレーム55の上面に配設されたベアリングケース71内のベアリング72によって支持することで回動自在としている。
【0089】
なお、従動軸70に対するスプロケット68の固定は、例えば、従動軸70の両端部側の直径を、その内側よりも小径として、当該径に対応した軸孔(図示せず)を備えたスプロケット68を従動軸70の両端側から挿入することで従動軸70の長手方向に対する動きを規制できる。更に、従動軸70の外周壁(図示せず)とスプロケット68の軸孔の内周壁(図示せず)に、キー溝(図示せず)を形成し、当該部分にキー(図示せず)を挿入することで、スプロケット68と従動軸70とを一体とすることができる。
【0090】
また、図7(a)、(b)に示すように、スプロケット68は、連結部12のチェーン機構と係合可能なように6個の凸部32を有する歯車状に形成しており、連結部12のローラ23間に、下側から凸部32が挿入されて連結部12と係合し、スプロケット68の回転方向に応じて連結部12が移動するように構成している。
【0091】
また、図2図3に示すように、伝達部17は、ギヤモータ67の回転軸の回転を、スプロケット68を支持する従動軸70に伝達する。伝達部17はベルト伝達を採用しており、ギヤモータ67の回転軸の軸端部にモータ側プーリ73を配設し、スプロケット68の従動軸70端部に駆動側プーリ74を夫々配設し、これらに架け渡したベルト69の摩擦によってギヤモータ67による回転を駆動力としてスプロケット68に伝達することができるように構成している。なお、伝達部17は、チェーン伝達を採用することもでき、この場合には、プーリ73,74の換わりに伝達用スプロケットを用い、ベルト69の換わりに伝達用チェーンを用いる。
【0092】
以上のように構成された駆動部10によって、スプロケット68が回動自在となり、床面形成部9の一部である連結部12を案内部7の水平部14へ引き出して床5を形成したり、収容部6へ収容し床5を退避させることが可能となる。
【0093】
上述したように、床5の揺れやガタつき等を防止するために、ギヤモータ67の内部にブレーキ機構を備えたものを使用することが有効である。しかしながら、連結部12のローラ23間に、スプロケット68の凸部32を順次連続して挿入して係合と解除を繰り返すためには、ローラ23間の距離と凸部32の幅との関係において、ローラ23間の距離を大きめに設定してバックラッシを確保する必要がある。バックラッシは、床5を形成した際に床5のガタつき等の原因となるものであり、床5上で作業等を行う場合に、作業性を低下させることになるが、本実施形態に係る可動床装置1は、これを防止することが可能である。
【0094】
具体的には、図7(a)に示すように、床5を前進端2まで進めて床5を形成する際には、連結部12の先頭のローラ23が、案内部7の水平部14の前端部において蓋部材45の摺動空間8側に設けられたショックアブソーバ等の衝撃吸収材87を押圧することになり、連結部12のローラ23間と係合しているスプロケット68の凸部32が、前方のローラ23を押し付けた状態でギヤモータ67のブレーキを作動させる。従って、連結部12のローラ23間とスプロケット68の凸部32とのバックラッシの影響を受けることなく、床5はガタつき等のない安定した状態で強固に保持されることになり、床5上の歩行や作業等を安全に行うことが可能となる。
【0095】
以上説明した本実施形態に係る床面部を構成する可動床装置1は、塗装室102と一体として現場で施工し組立てることもできるが、完成体として予め組立てておくこともできるので、作業工程のレイアウト変更等の際に、設置や立ち上げ等、もしくは撤去等が短期間でできるので、作業工程の稼働率等に大きな影響を与えることがない。
【0096】
ここで、上述した本発明に係る一実施形態の変形例を説明する。なお、以下の説明においては、上述した実施形態と異なる点のみ説明し、その他は同じ符号を付して説明は適宜省略する。
【0097】
[第一の変形例]
まず、図10(b)を参照して案内部7の構造についての第一の変形例を説明する。本変形例に係る水平部14は、図10(b)に示すように、上述した一実施形態に係る第一水平案内フレーム38の上面に配設した第一カバー42と、第一水平案内フレーム38と、を一体としたような形状としている。具体的には、連結部12を略水平に支持して摺動方向に案内すると共に、連結部12が摺動可能な摺動空間8を確保するために、上述した一実施形態に係る横断面略コ字状の第一水平案内フレーム38の第一水平案内フレーム上片41を床5側に伸延させて第二水平案内フレーム上片76とし、更に、第二水平案内フレーム上片76の端部を鉛直下方に伸延させて第二水平案内フレーム内垂直片77とすることで、第二水平案内フレーム75を形成して内部を摺動空間8としている。すなわち、第二水平案内フレーム75の形状は、連結部12の摺動方向を長手方向として少なくとも端部間に渡り中継部材13が移動可能な開口部を有する略角パイプ状である。
【0098】
また、水平部14は、第二水平案内フレーム75の摺動空間8において、第二水平案内フレーム下片78の上面に、長手方向に渡り第二水平案内フレーム下片78の長辺側端縁から若干だけ突出するように配設した樹脂製で帯状の緩衝材40を備えている。緩衝材40は、連結部12のローラ23表面が第二水平案内フレーム75と直に接触して異音や発塵等が発生しないように支持する効果と、緩衝材40の側面が、ローラ23に形成したフランジ25との関係で、ローラ23を正確に摺動方向に案内する役割を果たす。
【0099】
なお、緩衝材40は、第二水平案内フレーム75の摺動空間8において、第二水平案内フレーム下片78に配設した緩衝材40と対向するように同様の緩衝材40を第二水平案内フレーム上片76の下面にも備えることができる。
【0100】
第二水平案内フレーム75は、第二水平案内フレーム上片76によって左右方向について少なくともピン29の床5側の端部を覆う範囲で設けられる。また、第二水平案内フレーム内垂直片77は、第二水平案内フレーム内垂直片77が上下方向について第二水平案内フレーム上片76の位置からピン29と略同じ位置またはそれよりも下方の位置まで延設されるように設けられる。従って、第二水平案内フレーム上片76が、摺動空間8の上方を被覆する摺動空間上被覆体として、また、第二水平案内フレーム内垂直片77が、摺動空間8の床5側の横側方を略被覆する摺動空間横被覆体としての機能を有することになる。
【0101】
以上のように第二水平案内フレーム75を配設することで、第二水平案内フレーム上片76と第二水平案内フレーム内垂直片77とによって、浮遊し、落下する塗料ミストの摺動空間8への侵入を防止できる。従って、摺動空間8を形成する部材に塗料ミストが付着して堆積しないので、案内部7の水平部14や収容部6を定期的に取り外して、付着・堆積した塗料を除去するための洗浄作業を行う必要がない。これは、上述した一実施形態に係る第一カバー42の役割を、本第一の変形例に係る第二水平案内フレーム75のみで果たすことが可能となるので、可動床装置1を構成する部材点数を削減でき、コスト面でも有利となる。
【0102】
[第二の変形例]
次に、図10(c)を参照して案内部7の構造についての第二の変形例を説明する。本変形例に係る水平部14は、図10(c)に示すように、第一の変形例に係る第二水平案内フレーム75の形状と類似するものであり、第一の変形例に係る第二水平案内フレーム75の第二水平案内フレーム外垂直片86の部分で上下に分割して、上側を第二カバー79とし、下側を第三水平案内フレーム80として構成したものである。具体的には、連結部12を略水平に支持して摺動方向に案内すると共に、連結部12が摺動可能な摺動空間8を確保するために、連結部12の摺動方向を長手方向として床5側と上側を開口側とした平面視略長方形状(略帯状)で横断面略L字状の第三水平案内フレーム80を備え、第三水平案内フレーム下片81を下側とし、第三水平案内フレーム垂直片82を外側として配設する。また、連結部12の摺動方向を長手方向として下方を開口側とした平面視略長方形状(略帯状)で横断面略コ字状の第二カバー79の外側の第二カバー外垂直片83の内壁面を、第三水平案内フレーム80の第三水平案内フレーム垂直片82の外壁面と当接して、第二カバー79側から皿ボルト305によって締結固定して一体として内部を摺動空間8としている。
【0103】
また、水平部14は、第三水平案内フレーム80と第二カバー79で形成される摺動空間8において、第三水平案内フレーム下片81の上面に、長手方向に渡り第三水平案内フレーム下片81の長辺側端縁から若干だけ突出するように配設した樹脂製で帯状の緩衝材40を備えている。緩衝材40は、連結部12のローラ23表面が第三水平案内フレーム80と直に接触して異音や発塵等が発生しないように支持する効果と、緩衝材40の側面が、ローラ23に形成したフランジ25との関係で、ローラ23を正確に摺動方向に案内する役割を果たす。
【0104】
なお、緩衝材40は、第三水平案内フレーム80と第二カバー79で形成される摺動空間8において、第三水平案内フレーム下片81に配設した緩衝材40と対向するように同様の緩衝材40を第二カバー79の第二カバー上片84の下面にも備えることができる。
【0105】
第二カバー79は、第二カバー上片84によって左右方向について少なくとも第三水平案内フレーム80およびピン29の床5側の端部を覆う範囲で設けられる。また、第二カバー79は、第二カバー内垂直片85が上下方向について第二カバー上片84の位置からピン29と略同じ位置またはそれよりも下方の位置まで延設されるように設けられる。従って、第二カバー上片84が、摺動空間8の上方を被覆する摺動空間上被覆体として、また、第二カバー内垂直片85が、摺動空間8の床5側の横側方を略被覆する摺動空間横被覆体としての機能を有することになる。
【0106】
以上のように第三水平案内フレーム80に第二カバー79を配設することで、第二カバー79の第二カバー上片84と第二カバー内垂直片85とによって、浮遊し、落下する塗料ミストの摺動空間8への侵入を防止できる。従って、摺動空間8を形成する部材に塗料ミストが付着して堆積しないので、案内部7の水平部14や収容部6を定期的に取り外して、付着・堆積した塗料を除去するための洗浄作業を行う必要がない。これは、第二カバー79が、上述した一実施形態に係る第一カバー42と同様の役割を果たすことになる。
【0107】
また、第二カバー79は皿ボルト305を外すだけで第三水平案内フレーム80から容易に取り外すことができると共に、第二カバー79を取り外すことで、連結部12や第三水平案内フレーム80の内面が露見するので、メンテナンスや清掃等を容易に行うことが可能となる。
【0108】
以上、説明したように案内部7は、外部から摺動空間8への塗料ミストの侵入を防止するために、様々な形状や構造を採用することが可能である。従って、案内部7の形状や構造は、本実施形態や本変形例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【0109】
[第三の変形例]
次に、図11を参照して収容部6の配置についての第三の変形例を説明する。本変形例に係る可動床装置1´の収容部6´は、図11に示すように、上述してきた第一収容案内フレーム46の位置を、水平部14に対して上下対称となるように上方に反転させて第二収容案内フレーム46´として配置している。
【0110】
具体的には、収容部6´は、水平部14の後端部から後側(図11において左側)にかけて徐々に上側へと湾曲する下側湾曲部と、この下側湾曲部の下側から上方に向けて鉛直方向に延設される後側垂直部と、この後側垂直部の上側から前側(図11において右側)にかけて上側に凸となる半円弧状に湾曲する上側湾曲部と、この上側湾曲部の前側から下方に向けて鉛直方向に延設される前側垂直部とを有する。すなわち、収容部6´は、案内部7において水平部14の後側端部から上側かつ前側に巻き込むような形状をなす部分であって、先端部となる前側垂直部の下端を水平部14の上側の面の近傍に位置させ、側面視において水平部14とともに略P字状の形状をなす。
【0111】
なお、図示していないが、収容部6´を安定して保持するために、上述したフレーム部11のような支持体を、作業者等の邪魔にならないように適宜配設する。
【0112】
以上のように構成することで、塗装室102に床5が形成されていない状態、つまり、連結部12が収容部6´に収容されている状態においては、塗装室102に出入りするための扉等113の直前に床片部材4が防護壁として位置することになる。従って、作業者等が、扉等113を開けて、塗装室102に入ることができず、非常に安全である。なお、塗装室102に床5が形成された状態、つまり、連結部12が水平部14に進出した状態においては、扉等113の直前に作業者等の入室を阻害するような床片部材4による防護壁が存在しないので、スムーズかつ安全に塗装室102に入ることが可能となる。
【0113】
また、塗装室102に隣接する部屋の床下に収容部6や床面形成部9を収容・退避するスペースがない場合でも、本変形例に係る可動床装置1を設置することができる。
【0114】
以上、本発明の好ましい実施形態や変形例を説明したが、本発明は係る特定の実施形態や変形例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0115】
1 可動床装置
1´ 可動床装置(変形例)
3 架台部
4 床片部材
5 床
6 収容部
6´ 収容部(変形例)
7 案内部
8 摺動空間
9 床面形成部
10 駆動部
11 フレーム部
12 連結部
13 中継部材
14 水平部
15 動力部
16 回動部
17 伝達部
37 収容空間
38 第一水平案内フレーム
41 第一水平案内フレーム上片
42 第一カバー
46 第一収容案内フレーム
46´ 第二収容案内フレーム(変形例)
68 スプロケット
75 第二水平案内フレーム
79 第二カバー
80 第三水平案内フレーム
100 塗装ブース
102 塗装室
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11