(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の噴霧システムの好適な実施の形態につき、図面を用いて説明する。
なお、本発明は、実験データに基づいて、ミスト粒子を帯電させて(以下帯電ミストと呼ぶ)による煙等の浮遊微粒子の除去を得るための適切な条件を規定している。
【0011】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1に係わる帯電ミストによる煙除去装置の全体図である。貯水容器1には、低導電率水があらかじめ貯蔵されている。そして、ポンプ2により貯水容器1から吸い上げられた低導電率水は、バルブ3を開状態とすることで、対象区画内に設けられたドライミストノズル4(噴霧ノズルの一例)から噴霧される。
【0012】
そして、噴霧制御部5は、
図1では示していない煙感知器から煙の発生または流入を知らせる外部信号を受信した際には、ポンプ2およびバルブ3を制御することで、所望の時間に渡って、低導電率水をドライミストノズル4に供給する。なお、煙感知器からの外部信号および噴霧制御部5を用いなくても、オペレータ判断による手動操作で、バルブ3を開状態とし、ポンプ2を駆動することによっても、低導電率水をドライミストノズル4に供給することは可能である。
【0013】
なお、水を急激に微粒子化すると、レナード効果によりマイナスに帯電するといわれている。このとき高導電率水(例えば、水道水など)の場合、水に含まれる不純物によりマイナスの帯電が中和されるが、低導電率水(例えば、脱イオン水など)の場合、マイナスの帯電が維持される。これより、低導電率水をドライミストノズル4のように小さな粒子径で放射するノズルを用いて放射すると、水粒子が帯電することとなる。そこで、本発明では、この水粒子の帯電性を利用して、対象区画内を浮遊する煙粒子の除去効果を得ている点を技術的特徴としている。
【0014】
このような除去効果を検証するために、4つの検証実験を行ったので、それらの検証結果について、以下に詳細に説明する。
【0015】
<検証実験1>
(1)試料水
低導電率水、および帯電し難い高導電率水として、以下の2つを試料水として使用した。
低導電率水:導電率=0.9μS/cmの脱イオン水
高導電率水:導電率=270μS/cmの水道水
【0016】
(2)ミスト放出条件
ミストノズルおよびミストポンプとしては、以下の性能のものを使用した。
ミストノズル:6MPa−20mL/min×1個
ミストポンプ:高圧プランジャポンプ(出力0.4kW)
ミスト放出時間:1分間
【0017】
(3)実験区画の大きさ
防護区画に相当する実験区画として、以下の容量のものを使用した。
グローブボックス(容量:100L)
【0018】
(4)煙発生源
除去対象である煙は、以下の条件で発生させた。
燃料(火皿):自動車用ガソリン(φ25×20mm)
燃焼量:約3mL
(5)測定項目
以下の3つのデータを測定し、低導電率水と高導電率水での煙除去効果を比較した。
測定項目1(減光率):ミスト放出前およびミスト放出後(沈降飽和後)の煙濃度を光学式煙濃度計(以下Cs計と呼ぶ)減光率として測定
測定項目2(沈降飽和時間):一定時間ミストを放出し、ミスト放出を停止した後、煙および水粒子の沈降により減光率の回復(減光率の減少)が飽和するまでの時間を測定
測定項目3(静電気電圧):ミスト放出中におけるノズル近傍のミストパターンから約5cmの距離での電圧をミスト静電気として測定
【0019】
(6)検証実験手順
以下の手順で、検証データを測定した。
ステップ1:グローブボックス内の燃料に点火
ステップ2:燃焼終了後、Cs計光路の窓に付着した煙粒子を拭き取って、グローブボックス内の減光率(煙濃度)を測定
ステップ3:所定時間として1分間ミストを放出し、ミスト放出中、およびミスト放出停止後の減光率の回復状況を継続して測定
ステップ4:減光率回復の飽和後、Cs計光路の窓に付着した水粒子を拭き取って、グローブボックス内の減光率(煙濃度)を測定
【0020】
以上のような検証実験1の実験結果について説明する。
図2は、本発明の実施の形態1における検証実験1を実施した際の、経過時間に伴う減光率の測定結果をまとめた図である。また、
図3は、本発明の実施の形態1における検証実験1を実施した際の、測定項目1〜3の測定結果の一覧を示したものである。
【0021】
図3より、脱イオン水ミストは−4〜−5kVの静電気を帯電していることがわかる。
【0022】
また、
図2および
図3に示した実験結果から、以下のことがわかる。
(効果1)減光率の改善
ガソリン燃焼煙に対して脱イオン水ミストを約1分間噴霧した結果、放出前に約95%であった減光率が、放出後に約25%にまで回復(減少)している。一方、水道水ミストを同条件で噴霧した際には、放出後の噴霧率の回復は、約59%でとどまっている。従って、低導電水の水を使用することで、減光率の回復が大幅に改善される結果となった。
【0023】
(効果2)沈降飽和時間の改善
ミスト噴霧中の1分間において、グローブボックス内を観測した結果、煙粒子が帯電した水粒子に吸着することで、煙粒子の凝集(すなわち、多数の煙粒子が集合体を作る現象)が観測された。その結果、
図2に示すように、脱イオン水ミストを約1分間噴霧している間にも、減光率が回復していく測定結果が得られている。
【0024】
さらに、ミスト放出を停止した後にも、同様の凝集が発生し、これにより煙粒子の沈降速度が大きくなったと考えられる。その結果として、脱イオン水ミストを採用した場合には、減光率の回復が飽和するまでの時間に相当する沈降飽和時間が、1分程度となっている。一方、同条件で水道水ミストを採用した場合の沈降飽和時間は、3分以上かかっている。従って、脱イオン水ミストを採用することで、沈降飽和時間を約1/3に短縮する効果が得られた。
【0025】
以上のように、検証実験1によれば、低導電率水である脱イオン水をドライミストノズル4から噴霧することで、高導電率である水道水を噴霧する場合と比較して、減光率の回復、および沈降飽和時間に関して、大幅な改善結果が得られた。
【0026】
そして、このような低導電率水としては、例えば脱イオン水を採用することができ、あらかじめ貯水容器に蓄えておくことができる。この結果、帯電散布ヘッドに帯電電圧を印加する電圧印加部を不要にできる、ミストによる煙等の浮遊微粒子除去装置およびミストによる煙等の浮遊微粒子除去方法を得ることができる。
【0027】
<検証実験2>
次に、実験区画の規模を拡大して、本発明の帯電ミストによる煙除去方法の効果を検証した検証実験2について、説明する。
【0028】
(1)試料水
低導電率水、および帯電し難い高導電率水として、以下の2つを試料水として使用した。
低導電率水:導電率=1.2μS/cmの脱イオン水
高導電率水:導電率=280μS/cmの水道水
【0029】
(2)ミスト放出条件
ミストノズルおよびミストポンプとしては、以下の性能のものを使用した。
ミストノズル:6MPa−47mL/min×20個
ミストポンプ:高圧プランジャポンプ(出力0.4kW)
ミスト放出時間:2分間
【0030】
(3)実験区画の大きさ
対象区画に相当する実験区画として、以下の容量のものを使用した。
1.86m×1.86m×1.86m高(容量:6.43m
3)
【0031】
(4)煙発生源
除去対象である煙は、以下の条件で発生させた。
燃料(火皿):自動車用ガソリン(10cm角、深さ10cm)
燃焼量:約50mL
(5)測定項目
以下の2つのデータを測定し、低導電率水と高導電率水での煙除去効果を比較した。
測定項目1(減光率):実験区画内の高さ1.6mと0.8mの2箇所にCs計を接地し、減光率の経時変化を測定
測定項目2(沈降飽和時間):一定時間ミストを放出し、ミスト放出を停止した後、煙および水粒子の沈降により減光率の回復が飽和するまでの時間を測定
【0032】
(6)検証実験手順
以下の手順で、検証データを測定した。
ステップ1:実験区画内の燃料に点火
ステップ2:燃焼終了後、2分間ミストを放出し、ミスト放出中、およびミスト放出停止後の減光率の回復状況を減光率の回復が飽和するまで継続して測定
【0033】
以上のような検証実験2の実験結果について説明する。
図4は、本発明の実施の形態1における検証実験2を実施した際の、経過時間に伴う減光率の測定結果をまとめた図である。
【0034】
図4に示した実験結果から、以下のことがわかる。
(効果1)減光率の改善
ガソリン燃焼煙に対して脱イオン水ミストを約2分間噴霧した結果、放出前に約90%であった減光率が、放出後に約10%にまで回復している。一方、水道水ミストを同条件で噴霧した際には、放出後の減光率の回復は、約50%でとどまっている。従って、低導電水の水を使用することで、減光率の回復が大幅に向上する結果となった。
【0035】
(効果2)沈降飽和時間の改善
沈降飽和時間に関しては、脱イオン水ミストを噴霧した場合には、2〜3分で減光率が急速に回復しているのに対して、同条件で水道水ミストを採用した場合には、20分以上かかっている。従って、脱イオン水ミストを採用することで、沈降飽和時間を大幅に短縮する効果が得られた。
【0036】
以上のように、検証実験2によれば、先の検証実験1と比較して実験区画の規模を拡大した場合にも、低導電率水をドライミストノズル4から噴霧することで、高導電率水道水を噴霧するときと比較して、減光率の回復、および沈降飽和時間に関して、大幅な改善結果が得られた。
【0037】
<実証実験3>
次に、ドライミストノズル4から噴霧する水の導電率を変えて、本発明の帯電ミストによる煙除去方法の効果を検証した検証実験3について説明する。
【0038】
(1)試料水
低導電率水および帯電し難い高導電率水として、以下の5つを試料水として使用した。
低導電率水(4種):導電率=1,3,6,10μS/cmの脱イオン水
高導電率水:導電率=280μS/cmの水道水
【0039】
(2)ミスト放出条件
ミストノズルおよびミストポンプとしては、以下の性能のものを使用した。
ミストノズル:6MPa−20mL/min×1個
ミストポンプ:高圧プランジャポンプ(出力0.4kW)
ミスト放出時間:2分間
【0040】
(3)実験区画の大きさ
防護区画に相当する実験区画として、以下の容量のものを使用した。
グローブボックス(容量:100L)
【0041】
(4)煙発生源
除去対象である煙は、以下の条件で発生させた。
燃料(火皿):自動車用ガソリン(φ25×20mm)
燃焼量:約3mL
(5)測定項目
以下の2つのデータを測定し、低導電率水と高導電率水での煙除去効果を比較した。
測定項目1(減光率):ミスト放出前およびミスト放出後(沈降飽和後)の煙濃度をCs計減光率として測定
測定項目2(沈降飽和時間):一定時間ミストを放出し、ミスト放出を停止した後、煙および水粒子の沈降により減光率の回復が飽和するまでの時間を測定
【0042】
(6)検証実験手順
以下の手順で、検証データを測定した。
ステップ1:グローブボックス内の燃料に点火
ステップ2:燃焼終了後、2分間ミストを放出し、ミスト放出中、およびミスト放出停止後の減光率の回復状況を減光率の回復が飽和するまで継続して測定
【0043】
以上のような検証実験3の実験結果について説明する。
図5は、本発明の実施の形態1における検証実験3を実施した際の、経過時間に伴う減光率の測定結果をまとめた図である。
【0044】
また、
図5に示した実験結果から、以下のことがわかる。
(効果1)減光率の改善
ガソリン燃焼煙に対して脱イオン水ミストを約2分間噴霧した結果、放出前に約90%であった減光率が、放出後に1μS/cmの脱イオン水ミストの場合は約20%、3μS/cmの脱イオン水ミストの場合は約25%、6μS/cmの脱イオン水ミストの場合は約35%、10μS/cmの脱イオン水ミストの場合は約50%、にまで回復している。一方、水道水ミストを同条件で噴霧した際には、放出後3分30秒では、減光率の回復の飽和には至らず、回復は約60%となっている。これより水の導電率が低い程、煙除去効果が高いことが確認された。
【0045】
(効果2)沈降飽和時間の改善
ミスト噴霧中の2分間において、グローブボックス内を観測した結果、1,3,6μS/cmの脱イオン水ミストでは、煙粒子が帯電した水粒子に吸着することで、煙粒子の凝集(すなわち、多数の煙粒子が集合体を作る現象)が観測された。また、ミスト放出を停止した後にも、同様の凝集が発生し、沈降飽和時間に関しては、1μS/cmの脱イオン水ミストの場合はミスト放出後約1分、3,6μS/cmの脱イオン水ミストの場合はミスト放出後約1分30秒、10μS/cmの脱イオン水ミストの場合でもミスト放出後約2分で減光率が急速に回復して飽和した。一方、水道水ミストは、減光率が急速に回復することはなく、放出後3分30秒経過しても飽和には至らなかった。
【0046】
以上のように、検証実験3によれば、導電率6μS/cm以下の低導電率水をドライミストノズル4から噴霧することで、高い煙除去効果を発揮し、導電率10μS/cmの低導電率水をドライミストノズル4から噴霧した場合でも、水道水をドライミストノズル4から噴霧した場合と比較して、一定の煙除去効果を示す結果が得られた。
【0047】
そして、このような低導電率水としては、例えば脱イオン水を採用することができ、あらかじめ貯水容器に蓄えておくことができる。この結果、帯電散布ヘッドに帯電電圧を印加する電圧印加部を不要にできる、ミストによる煙等の浮遊微粒子除去装置およびミストによる煙等の浮遊微粒子除去方法を得ることができる。
【0048】
<検証実験4>
次に、ドライミストノズル4から噴霧する放射圧力を変えて、本発明の帯電ミストによる煙除去方法の効果を検証した検証実験4について、説明する。
【0049】
(1)試料水
低導電率水として、以下を試料水として使用した。
低導電率水:導電率=1μS/cmの脱イオン水
【0050】
(2)ミスト放出条件
ミストノズルおよびミストポンプとしては、以下の性能のものを使用し、放水圧力を変えて実験を行った。なお、総水量が同程度になるように、ミストノズルの数量を調整した。
ミストノズル:6MPa−47mL/min
ミストポンプ:高圧プランジャポンプ(出力0.4kW)
ミスト放出時間:2分間
ミスト放出圧力(3種):1.5,3,6MPa
ミストノズル数量(3種):20個(放出圧力:1.5MPa)、14個(放出圧力:3MPa、)、10個(放出圧力:6MPa)
【0051】
(3)実験区画の大きさ
対象区画に相当する実験区画として、以下の容量のものを使用した。
1.86m×1.86m×1.86m高(容量:6.43m
3)
【0052】
(4)煙発生源
除去対象である煙は、以下の条件で発生させた。
燃料(火皿):自動車用ガソリン(10cm角、深さ10cm)
燃焼量:約50mL
(5)測定項目
以下の2つのデータを測定し、低導電率水と高導電率水での煙除去効果を比較した。
測定項目1(減光率):実験区画内の高さ1.6mと0.8mの2箇所にCs計を接地し、減光率の経時変化を測定
測定項目2(沈降飽和時間):一定時間ミストを放出し、ミスト放出を停止した後、煙および水粒子の沈降により減光率の回復が飽和するまでの時間を測定
【0053】
(6)検証実験手順
以下の手順で、検証データを測定した。
ステップ1:実験区画内の燃料に点火
ステップ2:燃焼終了後、2分間ミストを放出し、ミスト放出中、およびミスト放出停止後の減光率の回復状況を減光率の回復が飽和するまで継続して測定
【0054】
以上のような検証実験4の実験結果について説明する。
図6は、本発明の実施の形態1における検証実験4を実施した際の、経過時間に伴う減光率の測定結果をまとめた図である。
【0055】
図6に示した実験結果から、以下のことがわかる。なお、検証実験4は、総水量をほぼ一定とし、放出圧力を変えることで、ミスト粒径の大きさを変えて煙除去効果を比較するものである。本実験に使用したミストノズルの場合、1.5MPaで放出した場合の平均粒径は約45μm、3MPaで放出した場合の平均粒径は約35μm、6MPaで放出した場合の平均粒径は約30μmである。
【0056】
(効果1)減光率の改善
ガソリン燃焼煙に対して脱イオン水ミストを約2分間噴霧した結果、放出前に約85%であった減光率が、放出後に1.5MPaで放出した場合は約65%、3MPaで放出した場合は約45%、6MPaで放出した場合は約25%にまで回復している。従って、放出水量が同量であれば、ミスト粒径が小さいほど煙除去効果が高い結果となった。
【0057】
(効果2)沈降飽和時間の改善
いずれの場合もミスト放出中から減光率の回復が見られ、放出後2〜3分で減光率が急速に減少した。この結果から、本実験の場合1.5MPaで放出した場合の減光率は約65%程度までしか回復していないが、1.5MPaでミスト放出した場合でも、放出量を増やすことで、減光率の回復が期待できる。
【0058】
以上のように、検証実験4によれば、ミスト粒径をより小さくすることで少水量でも高い煙除去効果が得られ、また、平均粒径45μm以下のミスト粒径でミストを放出すれば煙除去効果が得られることが確認できた。
【0059】
さらに、今回の検証実験4から、ミストを放出する圧力としては、1.5MPa以上に設定することで煙除去効果が得られることが確認でき、好ましくは3MPa以上に設定することで、減光率および沈降飽和時間の両面で、より充分な煙除去効果が得られることが確認できた。
【0060】
なお、検証実験4に関しては、異なるノズルを用いて同じ平均粒子径のミストを発生させる場合、より高い放出圧力で生成された帯電ミストの方が、煙除去効果が高いことを確認している。
【0061】
そして、このような低導電率水としては、例えば脱イオン水を採用することができ、あらかじめ貯水容器に蓄えておくことができる。この結果、帯電散布ヘッドに帯電電圧を印加する電圧印加部を不要にできる、ミストによる煙等の浮遊微粒子除去装置およびミストによる煙等の浮遊微粒子除去方法を得ることができる。
【0062】
以上のように、実施の形態1によれば、脱イオン水のような低導電率水をあらかじめ貯水容器1に蓄えておくことで、噴霧時に電圧を印加することなく、帯電した水粒子を得ることができ、通常の水道水のような高導電率水を使用する場合と比較して、優れた煙除去効果を得ることができる。具体的な煙除去効果としては、減光率の回復、および沈降飽和時間において、大幅な改善結果が、検証実験を通じて確認できた。
【0063】
また、
図1の構成においては、低導電率水が、あらかじめ貯水容器に蓄えられている場合を想定しているが、本発明は、このような構成に限定されるものではない。水道水から低導電率水を生成する整水器を備えた構成とすることによっても、同様の効果を得ることができる。
【0064】
実施の形態2.
本実施の形態2では、降温機能と、先の実施の形態1で説明した帯電ミストによる煙除去機能とを兼ね備えた噴霧システムについて説明する。
【0065】
図7は、本発明の実施の形態2に係わる噴霧システムの全体構成図である。
図7における噴霧システムは、降温噴霧用に設けられた貯水容器1a、ポンプ2a(通常水用送水装置の一例)、バルブ3a(切り替え機構部の一例)と、煙除去用に設けられた貯水容器1b、ポンプ2b(低導電率水用送水装置の一例)、バルブ3b(切り替え機構部の一例)と、ドライミストノズル4と、噴霧制御部5と、対象区画に設けられた煙感知器6(浮遊微粒子検出器の一例)とを備えて構成されている。
【0066】
ここで、
図7における煙除去用に設けられた貯水容器1b、ポンプ2b、バルブ3b、ドライミストノズル4、および噴霧制御部5は、先の
図1に示した構成と同一であり、
図6においては、
図1の構成に加えて、降温噴霧用に設けられた貯水容器1a、ポンプ2a、バルブ3a、および煙感知器6がさらに設けられている点が異なっている。
【0067】
本実施の形態2における噴霧制御部5は、煙が発生または流入していない通常時には、降温噴霧用に設けられた貯水容器1a、ポンプ2a、バルブ3aによる噴霧送水機構により、ドライミストノズル4に対して、通常の水道水(すなわち、高導電率水)を供給する。一方、噴霧制御部5は、煙が発生または流入していることを煙感知器6からの外部信号により検知した場合には、煙除去用に設けられた貯水容器1b、ポンプ2b、バルブ3bによる噴霧送水機構により、ドライミストノズル4に対して、低導電率水を供給する。
【0068】
このように、噴霧制御部5は、煙の発生または流入の有無に応じて噴霧送水機構を切り替え制御することで、帯電ミストによる煙除去機能と、降温機能とを兼ね備えた噴霧システムを実現している。
【0069】
さらに、降温噴霧および煙除去噴霧のいずれも、噴霧水量は少量で済むため、ポンプ2a、2bは、小型ポンプでよい。また、煙除去噴霧用のポンプ2bとしては、十分な煙除去効果を得るために、高圧タイプのものを用いることも可能である。
【0070】
以上のように、実施の形態2によれば、通常時は、高導電率水を用いて降温効果を実現し、煙発生または流入時には、低導電率水を用いて煙除去効果を実現できる噴霧システムを、安価で簡素な構成により実現できる。
【0071】
なお、低導電率水としては、導電率が、10μS/cm以下であるものが適している。このような低導電率水を用いることで、先の実施の形態1で詳述したように、減光率の回復、および沈降飽和時間において、大幅な改善結果が得られる。
【0072】
また、高導電率水は、導電率が、10μS/cmより高い水に相当する。このような高導電率水を用いることで、低導電率水を得るための整水処理を行う必要がなく、通常の水道水等を用いて、対象区画内の降温効果を得ることができる。
【0073】
なお、実施の形態1、2では、浮遊微粒子として煙にて実験を行っているが、本願のミストにより除去できる浮遊微粒子は、煙に限定するものではなく、空気中に浮遊する人に対し有害なものであり、例えば、花粉、ホコリ、塵、砂塵、PM2.5といったものである。
【0074】
また、本実施の形態2においては、通常時は降温用として噴霧を行っているが、これに限定するものではなく、噴霧の必要がない場合には、バルブ3a、3bおよびポンプ2a、2bを停止してもよい。
【0075】
また、本実施の形態2においては、通常時の使用方法として降温用としているが、これに限定するものではなく、例えば加湿用として使用してもよい。
【0076】
また、
図7の構成においては、低導電率水が、あらかじめ貯水容器1bに蓄えられている場合を想定しているが、本発明は、このような構成に限定されるものではない。水道水から低導電率水を生成するイオン交換整水器を備えた構成とすることによっても、同様の効果を得ることができる。
【0077】
また、
図7を用いた実施の形態2では、煙感知器6の検出結果に応じて、噴霧制御部5が噴霧動作を切り替える自動制御について説明したが、本発明はこのような構成に限定されるものではない。煙感知器6からの外部信号および噴霧制御部5を用いなくても、オペレータ判断による手動操作でバルブ3a、3bおよびポンプ2a、2bを切り替え駆動することによっても、同様の効果を得ることができる。
【0078】
また、本実施の形態の
図7においては、対象区画内に設けられたドライミストノズル4は、直列接続された1系統のみを示しているが、電動弁等による系統選択機構部を介して、複数系統に分岐させる構成を採用することもできる。そして、このような複数系統を備えている場合には、通常時においては、いずれか1つの系統を選択し、煙発生時には、全ての系統を選択するように、状況に応じて運用を切り替えることも可能である。
【0079】
さらに、通常時において選択される系統は、所定の期間ごとにローテーションさせることも可能である。