(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6096563
(24)【登録日】2017年2月24日
(45)【発行日】2017年3月15日
(54)【発明の名称】作業機械
(51)【国際特許分類】
F16H 61/456 20100101AFI20170306BHJP
F16H 61/4043 20100101ALI20170306BHJP
【FI】
F16H61/456
F16H61/4043
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-72407(P2013-72407)
(22)【出願日】2013年3月29日
(65)【公開番号】特開2014-196777(P2014-196777A)
(43)【公開日】2014年10月16日
【審査請求日】2015年3月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090022
【弁理士】
【氏名又は名称】長門 侃二
(72)【発明者】
【氏名】阿部 浩
(72)【発明者】
【氏名】青坂 隆史
(72)【発明者】
【氏名】岡崎 鉄朗
【審査官】
日下部 由泰
(56)【参考文献】
【文献】
特開2002−372149(JP,A)
【文献】
特開2001−001936(JP,A)
【文献】
実開昭55−047478(JP,U)
【文献】
実開平03−069359(JP,U)
【文献】
米国特許第3543645(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 61/14,61/38−61/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体の前側又は後側の左右にそれぞれ配された車輪と、
該車輪にそれぞれ接続された左右の油圧モータと、
該左右の油圧モータに作動油を供給する油圧ポンプと、
該油圧ポンプに接続された供給管路を途中で分岐させて前記左右の油圧モータまで連通する左右の管路と、
前記左右の管路に設けられて作動油の流量を調整するためのフローデバイダと、
該フローデバイダと前記左右の油圧モータの間の前記左右の管路を接続するデフロック管路と、
該デフロック管路での前記作動油の連通を許容又は遮断するデフロック弁と、
前記車体の運転席の床面に設けられ、デフロック機能を有効にするための入力器と、
前記左右の管路を流れる前記作動油の圧力を計測する圧力センサと、
前記入力器からの出力信号により前記デフロック弁を遮断位置に切り替えて、前記デフロック機能を有効にした状態で、前記圧力センサにより前記左右の管路を流れる前記作動油の圧力が略同一となる前記車体がぬかるみを脱したときの速度に対応する前記左右の管路の圧力を基準圧力として予め定め、実際に計測した前記左右の圧力偏差が双方とも前記基準圧力に対して所定値以内となったときに前記デフロック弁を連通位置に切り替えて前記デフロック機能を解除するための制御を行うコントローラとを備えたことを特徴とする作業機械。
【請求項2】
車体の前側又は後側の左右にそれぞれ配された車輪と、
該車輪にそれぞれ接続された左右の油圧モータと、
該左右の油圧モータに作動油を供給する油圧ポンプと、
該油圧ポンプに接続された供給管路を途中で分岐させて前記左右の油圧モータまで連通する左右の管路と、
前記左右の管路に設けられて作動油の流量を調整するためのフローデバイダと、
前記フローデバイダをバイパスして、前記供給管路を途中で分岐させて前記左右の油圧モータまで連通するバイパス管路と、
該バイパス管路への作動油の連通を許容又は遮断するデフロック弁と、
前記車体の運転席の床面に設けられ、デフロック機能を有効にするための入力器と、
前記左右の管路を流れる前記作動油の圧力を計測する圧力センサと、
前記入力器からの出力信号により前記デフロック弁を前記バイパス管路への連通を遮断する遮断位置に切り替えて、前記デフロック機能を有効にした状態で、前記圧力センサにより前記左右の管路を流れる前記作動油の圧力が略同一となる前記車体がぬかるみを脱したときの速度に対応する前記左右の管路の圧力を基準圧力として予め定め、実際に計測した前記左右の圧力偏差が双方とも前記基準圧力に対して所定値以内となったときに前記デフロック弁を前記バイパス管路への連通を許容する連通位置に切り替えて前記デフロック機能を解除するための制御を行うコントローラとを備えたことを特徴とする作業機械。
【請求項3】
前記コントローラは前記入力器からのONスイッチにより遮断位置に切り替えられた前記デフロック弁を連通位置に切り替えるOFFスイッチとして機能することを特徴とする請求項1又は2に記載の作業機械。
【請求項4】
前記所定値は、3%であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の作業機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、左右の車輪を別々の油圧モータで回転させる作業機械に関する。
【背景技術】
【0002】
左右の車輪を別々の油圧モータで回転させる作業機械、より詳しくはHSTの駆動方式を用いて一つのポンプで二つのモータを駆動させて車輪を回転させるような作業機械(例えば前輪が転圧輪で後輪がタイヤの転圧機械)が知られている。この作業機械の左右の車輪のうち、片輪がぬかるみ等にはまってしまうと、当該片輪だけが空転してしまい脱出できない場合がある。このとき、空転している片輪側の負荷は小さくなるので、作動油は空転した側の車輪の油圧モータに過剰に供給され、空転していない側の車輪の油圧モータには作動油が供給されにくくなる。
【0003】
これを回避するためにデフロック機能が採用されているが、このデフロック機能としては様々な方式がある(例えば特許文献1参照)。一例としては、ポンプと左右の油圧モータとをつなぐ左右の往還路にフローデバイダ(分集流弁)を設け、このフローデバイダの下流にて左右の往還路を互いに連通させる流量補正管路及びデフロック管路を設ける構成とする。そして、上記空転が発生したらデフロック管路での作動油の連通をストップさせて左右の油圧モータにできるだけ均等に作動油を供給する。これにより、空転していない車輪への作動油の流量をできるだけ確保して車体がぬかるみ等から脱出できるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−262840号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記デフロック機能を作動、すなわちONにするためのスイッチは運転席の足元に配されている。作業者はこのスイッチを踏むことによりデフロック機能をONにする。デフロック機能を作動させている間はスイッチを踏みっぱなしにしておく必要があるため、作業者の姿勢が制限されてしまう。このため、駆動輪の空転状況を確認したり、前方の視認を確保したりすることが困難となっている。
【0006】
本発明は、上記従来技術を考慮したものであって、車輪が空転したときにデフロックを作動させても、作業者の姿勢が制限されることなく、駆動輪の空転状況の確認や前方の視認の確保を容易に行うことができる作業機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するため、本発明では、車体の前側又は後側の左右にそれぞれ配された車輪と、該車輪にそれぞれ接続された左右の油圧モータと、該左右の油圧モータに作動油を供給する油圧ポンプと、該油圧ポンプに接続された供給管路を途中で分岐させて前記左右の油圧モータまで連通する左右の管路と、前記左右の管路に設けられて作動油の流量を調整するためのフローデバイダと、該フローデバイダと前記左右の油圧モータの間の前記左右の管路を接続するデフロック管路と、該デフロック管路での前記作動油の連通を許容又は遮断するデフロック弁と、前記車体の運転席の床面に設けられ、デフロック機能を有効にするための入力器と、前記左右の管路を流れる前記作動油の圧力を計測する圧力センサと、前記入力器からの出力信号により前記デフロック弁を遮断位置に切り替えて、前記デフロック機能を有効にした状態で、前記圧力センサにより前記左右の管路を流れる前記作動油の圧力が略同一
となる前記車体がぬかるみを脱したときの速度に対応する前記左右の管路の圧力を基準圧力として予め定め、実際に計測した前記左右の圧力偏差が双方とも前記基準圧力に対して所定値以内となったときに前記デフロック弁を連通位置に切り替えて前記デフロック機能を解除するための制御を行うコントローラとを備えたことを特徴とする作業機械を提供する。
【0008】
また、本発明では、車体の前側又は後側の左右にそれぞれ配された車輪と、該車輪にそれぞれ接続された左右の油圧モータと、該左右の油圧モータに作動油を供給する油圧ポンプと、該油圧ポンプに接続された供給管路を途中で分岐させて前記左右の油圧モータまで連通する左右の管路と、前記左右の管路に設けられて作動油の流量を調整するためのフローデバイダと、前記フローデバイダをバイパスして、前記供給管路を途中で分岐させて前記左右の油圧モータまで連通するバイパス管路と、該バイパス管路への作動油の連通を許容又は遮断するデフロック弁と、前記車体の運転席の床面に設けられ、デフロック機能を有効にするための入力器と、前記左右の管路を流れる前記作動油の圧力を計測する圧力センサと、前記入力器からの出力信号により前記デフロック弁を前記バイパス管路への連通を遮断する遮断位置に切り替えて、前記デフロック機能を有効にした状態で、前記圧力センサにより前記左右の管路を流れる前記作動油の圧力が略同一
となる前記車体がぬかるみを脱したときの速度に対応する前記左右の管路の圧力を基準圧力として予め定め、実際に計測した前記左右の圧力偏差が双方とも前記基準圧力に対して所定値以内となったときに前記デフロック弁を前記バイパス管路への連通を許容する連通位置に切り替えて前記デフロック機能を解除するための制御を行うコントローラとを備えたことを特徴とする作業機械を提供する。
【0009】
好ましくは、前記コントローラは前記入力器からのONスイッチにより遮断位置に切り替えられた前記デフロック弁を連通位置に切り替えるOFFスイッチとして機能する。
【0010】
好ましくは、
前記所定値は、3%以内である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、作動油が油圧モータに与える影響を示すパラメータを左右の管路それぞれを流れる作動油の圧
力とし、これら圧
力が略同一となったときにデフロック機能を解除する。すなわち、圧
力が略同一となったときに車体がぬかるみ等を脱出したとみなしてデフロック機能を解除することができる。これは、車体がぬかるみ等にはまっているときは空転車輪側の圧力は低
いが、これら圧
力が略同一となれば両輪が同一の条件となって走行している、すなわち片輪のみがぬかるみ等にはまっている状態を脱出したとみなせるため、デフロック機能を解除して通常走行に戻すためである。
【0012】
また、デフロック弁を開くためのONスイッチとして機能する入力器が運転席の足元にあり、且つこの入力器による入力操作が非継続状態であってもデフロック機能は維持している。このため、作業者の姿勢が制限されることなく、駆動輪の空転状況の確認や前方の視認の確保を容易に行うことができる。また、片輪がぬかるみ等を脱出したときもコントローラが自動的にデフロック機能を解除するので、作業者はそのための操作をする必要がなくなり、作業性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明に係る作業機械の一例としての転圧機械の概略側面図である。
【
図3】圧力センサとデフロック弁とがコントローラを介して接続されていることを示すブロック図である。
【
図5】本発明
とは異なる別の作業機械の油圧回路図である。
【
図6】回転数センサとデフロック弁とがコントローラを介して接続されていることを示すブロック図である。
【
図7】本発明に係るさらに別の作業機械の油圧回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明に係る作業機械の一例として転圧機械1がある。この転圧機械1は、前フレーム2と後フレーム3とからなる車体4を備えている。車体4の前側には、転圧ドラム5が配されていて、後側には車輪6が配されている。転圧機械1は車輪6を油圧モータ7(
図2参照)にて駆動させて走行するものである。この油圧モータ7は作動油により駆動する。作動油は前フレーム2内に配設された作動油タンク(図示しない)に貯留される。この作動油タンク内の作動油は、同じく前フレーム2内に配設された油圧ポンプ9(
図2参照)によりくみ出されて油圧モータ7に供給される。油圧ポンプ9は、前フレーム2内に配設されたエンジン(不図示)により駆動する。
【0015】
後フレーム3には、運転席10が形成されている。この運転席10の後側には、転圧中に散水するための水を貯留する水タンク11が配設されている。水は、水タンク11上部のキャップ12を取り外してから水タンク11内に注水される。運転席10の前側には、操作台13が設置されている。運転席10に着座した作業者は、操作台13の操作により転圧機械1を走行させ、路面の転圧作業を行う。前フレーム2と後フレーム3とは、水平方向に屈曲可能とする連結部8にて連結されている。
【0016】
上述したように、車体4の後フレーム3の左右には車輪6が配されていて、この左右の車輪6のそれぞれに油圧モータ7が接続されている。具体的には、左側の車輪には左油圧モータ7aが、右側の車輪には右油圧モータ7bがそれぞれ接続されている。これらの油圧モータ7a、7bには、油圧ポンプ9から作動油が供給される。各油圧モータ7a、7bは、供給管路14及び左右の往還路15a、15bを介して油圧ポンプ9と連通している。すなわち、供給管路14の始端には油圧ポンプ9が接続されていて、終端には分岐部16が形成され、この分岐部16から左右の往還路15a、15bが分岐されている。これにより、油圧ポンプ9から吐出する作動油は、供給管路14を介して左右の往還路15a、15bを通ってそれぞれ左右の各モータ7a、7bに供給される。各モータ7a、7bを通過した作動油は、各モータ7a、7bと油圧ポンプ9とをそれぞれ連通している左右の復還路17a、17bを通って油圧ポンプ9に戻る。以上の作動油の流れが前進だとすると、後進の場合は作動油は逆に流れる。なお、前進の場合の作動油の流れは
図2の矢印で示している。以降の説明では油圧ポンプ9とモータ7a、7bとをつなぐ管路において、前進の場合について説明する。このため、油圧ポンプ9からモータ7a、7bまで作動油が流れる管路を往還路15a、15bと称し、モータ7a、7bから油圧ポンプ9まで作動油が流れる管路を復還路17a、17bと称する。
【0017】
左右の往還路15a、15bには、フローデバイダ18が備わっている。フローデバイダ18は、左右の往還路15a、15bでの作動油の流量を調整するためのものである。具体的には、フローデバイダ18はオリフィスで形成され、左右のモータ7a、7bの回転数に応じて各往還路15a、15bでの作動油の流量が調整される。通常走行時はこのフローデバイダ18を用いて左右のモータ7a、7bへの作動油の供給量が調整されている。
【0018】
フローデバイダ18の下流で左右の往還路15a、15bは流量補正管路19で接続されている。この流量補正管路19により左右の往還路15a、15bは互いに連通している。流量補正管路19にはオリフィスからなる補正部20が備わり、この補正部20により左右の往還路15a、15bを流れる作動油の油量が微調整される。この補正部20は、左右のモータ7a、7bに対して均等に作動油を供給したい場合に(例えば後述するデフロック機能作動時)、モータの内部抵抗等でモータ回転数が均等ではないときに作動油の流通量を微量調整するために主に用いられる。すなわち、左右両輪の微量な内輪差による左右のモータ7a、7bへの作動油供給の偏りを防止するために用いられる。
【0019】
流量補正管路19の下流では、左右の往還路15a、15bはさらにデフロック管路21にて接続されている。このデフロック管路21によって左右の往還路15a、15bは連通する。デフロック管路21には、デフロック弁22が備わっている。具体的には、デフロック弁22はソレノイド式の切替弁である。通常走行時ではスイッチがOFFであり、デフロック管路21での作動油の連通は許容され、左右の往還路が連通する。車体がぬかるみにはまってしまったとき等、車輪6が空転したときは空転していない方の車輪に作動油を供給し、ぬかるみから脱出する必要があるため、運転者はデフロック機能作動のためのスイッチをONにする。そうすると、コントローラ26からデフロック弁22のソレノイド部に電気信号が送信され、デフロック弁22が遮断位置に切り替わり、デフロック管路21での作動油の連通は遮断される。これにより、左右の往還路15a、15b間での作動油の連通が妨げられるので、空転していない方の車輪6に接続されたモータ7にも作動油が供給されることになる。
【0020】
デフロック機能を作動させるための入力器23は、運転席10を形成する床面24から突出して設けられている。この床面24は運転席10に着座した作業者が足を載せる部分であり、作業者は入力器23を踏むことでデフロック機能を作動させることができる。すなわち、作業者が入力器23を踏むと、デフロック機能が作動してデフロック管路21での作動油の連通が遮断される。これにより、片輪がぬかるみ等にはまった場合に空転していない方の車輪に作動油を供給して車体をぬかるみ等から脱出させることができる。このような作業者による入力器23を踏むという入力操作は、一度行えばよく、デフロック機能を維持するために踏み続ける必要はない。すなわち、一旦入力器23からON信号を受けたコントローラ26は、デフロック弁22へ電気信号を出力し続ける。よって、作業者の入力操作が非継続状態であってもデフロック機能を維持できる。このため、入力器23はデフロック機能を作動させるためのONスイッチとして機能する。
【0021】
図2に示すように、デフロック管路21の下流で左右の往還路15a、15bには、それぞれ圧力センサ25a、25bが配設されている。圧力センサ25a、25bは、左右の往還路15a、15bを流れる作動油の圧力を計測するものである。
図3に示すように、圧力センサ25a(25b)は、コントローラ26を介してデフロック弁22と接続されている。これにより、圧力センサ25a(25b)の計測結果を基にデフロック機能の解除を制御することができる。
【0022】
具体的なデフロック機能の制御フローは
図4に記載されている。すなわち、作業者が転圧機械1を操縦して走行中に後輪の片輪がぬかるみにはまり、空転したとする(ステップS1)。この片輪空転状態では空転している側の油圧モータ(例えば油圧モータ7a)に作動油が過剰に供給されてしまい、車体4がぬかるみから脱出することができない。このため、作業者はデフロック機能をONにする(ステップS2)。具体的には、作業者はデフロック機能を作動させるためのONスイッチである床面24に設けた入力器23を踏むと、デフロック管路21にあるデフロック弁22にコントローラ26から電気信号が出力される。このとき上述したように、入力器23による入力操作が非継続状態であってもデフロック機能は維持される。このため作業者はデフロック機能を作動させるために入力器23を一度踏めばよいため、作業者に過大な負担を与えることなくデフロック機能を作動させるための操作を行わせることができる。
【0023】
デフロック機能を作動させると空転していない側の油圧モータ7bにも作動油が供給されるため、油圧モータ7bに接続された車輪6が回転し、車体4がぬかるみを脱出する(ステップS3)。このとき、作業者の姿勢が制限されることなく、駆動輪の空転状況の確認や前方の視認の確保を容易に行うことができる。車体4がぬかるみを脱出すると、未だデフロック機能は作動してデフロック管路21での作動油の連通は遮断されているため、フローデバイダ18及び流量補正管路19により、徐々に作動油が左右の往還路15a、15bに対して均等に流れるようになり、圧力センサ25a、25bでは計測される作動油の圧力が略同一となる(ステップS4)。この略同一は、以下のようにして判断する。まず車体4がぬかるみ等から脱した状態の圧力を基準圧力として定め、一方の圧力センサ25a及び他方の圧力センサ25bでの計測結果が基準圧力から3%以内であることをいう。左右の圧力センサ25a、25bの圧力の双方が基準圧力から3%以内となったとき、コントローラ26からデフロック弁22のソレノイドへの電気信号が停止する。このため、デフロック弁22が連通位置に切り替わり、デフロック管路21での作動油の連通が許容される。すなわち、左右の往還路15a、15bでの作動油の圧力を検出し、その圧力差が所定以下になるとデフロック機能がOFFとされる(ステップS5)。したがって、コントローラ26は入力器23の踏み込みにより閉じた状態のデフロック弁22を連通位置に切り替えるためのOFFスイッチとして機能する。このように、片輪がぬかるみ等を脱出したときは、コントローラ26が左右の往還路15a、15bの圧力の状況に応じてデフロック機能を解除するための指令信号を出力(デフロック弁22のソレノイドへの電気信号出力を停止)するので、作業者はそのための操作をする必要がなくなり、作業性が向上する。なお、圧力センサ25a、25bの計測結果が基準圧力から3%以上であるときは車体4がまだぬかるみを脱出していないと判断できるため、デフロック機能は作動したままとする。この判断は、基準圧力から3%以内となるまで続けられる。なお、車体4がぬかるみ等を脱した直後の速度を5km/hとすれば、そのときの基準圧力は5MPaとなる。
【0024】
このように、作動油が油圧モータに与える影響を示すパラメータを左右の往還路15a、15bそれぞれを流れる作動油の圧力とし、これら圧力が略同一となったときにデフロック機能を解除させる。すなわち、圧力が略同一となったときに車体4がぬかるみ等を脱出したとみなしてデフロック機能を自動的に解除することができる。これは、車体4がぬかるみ等にはまっているときは空転車輪側の圧力は低いが、圧力が略同一となれば両輪が同一の条件となって走行している、すなわち片輪のみがぬかるみ等にはまっている状態を脱出したとみなせるため、両輪に均等に作動油を供給して通常走行に戻すためである。これにより車体4がぬかるみ等を脱出したときは再び走行状態に応じて左右の油圧モータ7a、7bに対して適切な量の作動油を供給しながら走行することができる。
【0025】
本発明とは異なる別の実施形態であるが、図5に示すように、デフロック機能を解除するためのトリガーとして、上述した圧力センサ25a、25bの代わりに、油圧モータ7a、7bの回転数を計測する回転数センサ27a、27bを用いてもよい。回転数センサ27a、27bはそれぞれ油圧モータ7a、7bに接続される。油圧モータ7の回転数は、供給される作動油の圧力に応じて変化するため、油圧モータ7の回転数を計測して
も車体4がぬかるみ等を脱出したことを判断するための要素として用いることができる。
図6に示すように、この回転数センサ27a、27b
は、コントローラ26を介してデフロック弁22と接続されている。すなわち、デフロック機能を解除する制御フローは、上述したステップS4にて回転数センサ27a、27bによる油圧モータ7a、7bの回転数が略同一か否かを判断する。略同一であれば車体4がぬかるみを脱出できたと判断し、コントローラ26がデフロック弁22を連通位置に切り替える。この場合の略同一か否かの判断
は、所定時間当たりの基準回転数を予め定め、双方の回転数センサ27a、27bの計測結果がこの基準回転数から1回転以内であれば略同一と判断する。なお、車体4がぬかるみ等を脱した直後の速度を5km/hとすれば、そのときの基準回転数は30回転/分となる
。
【0026】
図7に示すように、デフロック機能の作動、解除をするためのデフロック弁22をバイパス管路28に設けてもよい。バイパス管路28は、油圧ポンプ9からフローデバイダ18をバイパスして左右の往還路15a、15bに連通する管路である。通常走行時はフローデバイダ18をバイパスして油圧ポンプ9からモータ7a、7bに作動油が供給される(
図7の状態)。デフロック機能が作動したときはバイパス管路28が遮断され、フローデバイダ18を通じて左右のモータ7a、7bに作動油が均等に供給される。デフロック弁22はこのような位置に設けてもよい
。その他の構成、作用、効果は上述した例と同様である。
【符号の説明】
【0027】
1:転圧機械、2:前フレーム、3:後フレーム、4:車体、5:転圧ドラム、6:車輪、7:油圧モータ、8:連結部、9:油圧ポンプ、10:運転席、11:水タンク、12:キャップ、13:操作台、14:供給管路、15a、15b:左右の往還路(管路)、16:分岐部、17a、17b:左右の復還路(管路)、18:フローデバイダ、19:流量補正管路、20:補正部、21:デフロック管路、22:デフロック弁、23:入力器、24:床面、25a、25b:圧力センサ、26:コントローラ、27a、27b:回転数センサ、28:バイパス管路