特許第6096575号(P6096575)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6096575
(24)【登録日】2017年2月24日
(45)【発行日】2017年3月15日
(54)【発明の名称】情報転送システム
(51)【国際特許分類】
   H04M 1/00 20060101AFI20170306BHJP
   E05B 49/00 20060101ALI20170306BHJP
【FI】
   H04M1/00 U
   E05B49/00 J
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-84797(P2013-84797)
(22)【出願日】2013年4月15日
(65)【公開番号】特開2014-207604(P2014-207604A)
(43)【公開日】2014年10月30日
【審査請求日】2015年10月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003551
【氏名又は名称】株式会社東海理化電機製作所
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】河合 英樹
(72)【発明者】
【氏名】木村 有伸
(72)【発明者】
【氏名】渥美 竜太
(72)【発明者】
【氏名】青野 孝之
【審査官】 吉村 伊佐雄
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−165067(JP,A)
【文献】 特開2007−067818(JP,A)
【文献】 特開平10−173895(JP,A)
【文献】 特開2004−108016(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B1/00−85/28
H03J9/00−9/06
H04M1/00
1/24−3/00
3/16−3/20
3/38−3/58
7/00−7/16
11/00−11/10
99/00
H04Q9/00−9/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両情報を外部機器から電子キーを経由して車両へ転送する情報転送システムにおいて、
金属物である前記外部機器と前記電子キーとの間で近距離無線通信が可能であり、前記電子キーは、前記近距離無線通信を通じて前記外部機器から取得した前記車両情報を、通信帯域がUHF帯の無線通信により前記車両へ転送することを前提に、
前記外部機器と前記電子キーとの間において、前記近距離無線通信が確立されていない場合、前記電子キーから前記車両への前記車両情報の転送を許容する制御手段を備える
ことを特徴とする情報転送システム。
【請求項2】
請求項1に記載の情報転送システムにおいて、
前記外部機器と前記電子キーとの間で前記近距離無線通信が確立されているか否かを検知する検知手段を備え、
前記制御手段は、前記検知手段により前記近距離無線通信の途絶が検知されたとき、前記電子キーから前記車両への前記車両情報の転送を許容する
ことを特徴とする情報転送システム。
【請求項3】
請求項2に記載の情報転送システムにおいて、
前記電子キーが前記外部機器から前記車両情報を取得してからの経過時間をカウントするタイマを備え、
前記制御手段は、前記検知手段により前記近距離無線通信の途絶が検知され、且つ、前記タイマによりカウントされた前記経過時間が一定時間に達したとき、前記電子キーから前記車両への前記車両情報の転送を許容する
ことを特徴とする情報転送システム。
【請求項4】
請求項に記載の情報転送システムにおいて、
前記電子キーは、前記車両を遠隔操作する操作手段を備え、
前記制御手段は、前記検知手段により前記近距離無線通信の途絶が検知され、且つ、前記電子キーによる前記外部機器からの前記車両情報の取得後に、前記操作手段が操作されたとき、前記電子キーから前記車両への前記車両情報の転送を許容する
ことを特徴とする情報転送システム。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の情報転送システムにおいて、
前記車両情報は現在時刻の情報を含み、前記車両へ転送した現在時刻の情報をもとに、前記車両での現在時刻を設定可能としたことを前提に、
前記外部機器は、当該外部機器での現在時刻を更新するとともに、前記電子キーとの間で前記近距離無線通信が確立されているとき、前記電子キーに前記車両情報を送信する度に、その送信時の時刻を前記外部機器での現在時刻の情報として前記電子キーに送信する、又は、前記電子キーとの間で前記近距離無線通信が確立されている間、定期間隔で前記外部機器での現在時刻の情報を前記電子キーに送信する
ことを特徴とする情報転送システム。
【請求項6】
請求項5に記載の情報転送システムにおいて、
前記電子キーは、前記近距離無線通信を通じて取得した前記外部機器での現在時刻の情報をもとに、当該電子キーでの現在時刻を更新するとともに、前記車両へ前記車両情報を転送する度に、その転送時の時刻を前記電子キーでの現在時刻の情報として前記車両へ転送する
ことを特徴とする情報転送システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両情報を外部機器から電子キーを経由して車両へ転送する情報転送システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車内環境を示唆するカスタマイズ情報を携帯電話から電子キーを経由して車両へ転送する技術が開示されている。この技術によると、ユーザの望む車内環境を多機能携帯電話であるスマートフォンで設定することによって、設定した内容が車両制御に反映されつつ車内環境が整えられる。スマートフォンと電子キーとの通信に、HF帯(3MHz〜30MHz)の電波を用いた近距離無線通信(NFC:Near Field Communication)を採用するとき、両者を数センチメートルの距離に近接させることによって、車両情報がスマートフォンから電子キーに送信される。一方、電子キーから車両への送信に、UHF帯(300MHz〜3GHz)の電波を用いたRF送信(Radio Frequency )を採用するとき、車両から数十メートル離れた地点にある電子キーから車両へ車両情報を転送することが可能となる。これにより、ユーザは車両へ出向かなくてよいため、煩わしさが低減される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−26768号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
スマートフォンと電子キーが近接している状態で電子キーからRF送信を行うと、RF送信に用いるUHF帯の電波が金属物であるスマートフォンの影響を受けて出力が減衰する等、性能劣化する場合がある。
【0005】
本発明は、このような問題点に着目してなされたものであって、その目的は、性能劣化を抑制しつつ車両情報を車両へ転送することが可能な情報転送システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する情報転送システムは、車両情報を外部機器から電子キーを経由して車両へ転送する情報転送システムにおいて、金属物である前記外部機器と前記電子キーとの間で近距離無線通信が可能であり、前記電子キーは、前記近距離無線通信を通じて前記外部機器から取得した前記車両情報を、通信帯域がUHF帯の無線通信により前記車両へ転送することを前提に、前記外部機器と前記電子キーとの間において、前記近距離無線通信が確立されていない場合、前記電子キーから前記車両への前記車両情報の転送を許容する制御手段を備えることをその要旨としている。
【0007】
この構成によれば、外部機器と電子キーとの間において、近距離無線通信が確立されていない場合、電子キーから車両への車両情報の転送が許容される。このため、UHF帯の無線通信により電子キーから車両へ車両情報を転送する際、金属物による外部機器の影響が抑制される。したがって、性能劣化を抑制しつつ車両情報を車両へ転送することができる。
【0008】
上記情報転送システムについて、前記外部機器と前記電子キーとの間で前記近距離無線通信が確立されているか否かを検知する検知手段を備え、前記制御手段は、前記検知手段により前記近距離無線通信の途絶が検知されたとき、前記電子キーから前記車両への前記車両情報の転送を許容することとしてもよい。
【0009】
この構成によれば、近距離無線通信を通じて車両情報が外部機器から電子キーに送信された後、近距離無線通信の途絶が検知されると、電子キーから車両への車両情報の転送が許容される。このため、外部機器から電子キーが離れた状態で、電子キーから車両情報を車両へ転送することができる。
【0010】
上記情報転送システムについて、前記電子キーが前記外部機器から前記車両情報を取得してからの経過時間をカウントするタイマを備え、前記制御手段は、前記検知手段により前記近距離無線通信の途絶が検知され、且つ、前記タイマによりカウントされた前記経過時間が一定時間に達したとき、前記電子キーから前記車両への前記車両情報の転送を許容することとしてもよい。
【0011】
この構成によれば、近距離無線通信を通じて車両情報が外部機器から電子キーに送信された後、近距離無線通信の途絶が検知され、且つ、近距離無線通信を通じて電子キーが外部装置から車両情報を取得してから一定時間が経過すると、外部機器から電子キーが離れたと推定され、電子キーから車両への車両情報の転送が許容される。このため、上記取得後、直ちに電子キーから車両情報を車両へ転送する構成と比較して、性能劣化を抑制することができる。
【0012】
上記情報転送システムについて、前記電子キーは、前記車両を遠隔操作する操作手段を備え、前記制御手段は、前記検知手段により前記近距離無線通信の途絶が検知され、且つ、前記電子キーによる前記外部機器からの前記車両情報の取得後に、前記操作手段が操作されたとき、前記電子キーから前記車両への前記車両情報の転送を許容することとしてもよい。
【0013】
この構成によれば、近距離無線通信を通じて車両情報が外部機器から電子キーに送信された後、近距離無線通信の途絶が検知され、且つ、電子キーによる外部機器からの車両情報の取得後に、操作手段が操作されると、外部機器から電子キーが離れたと推定され、電子キーから車両への車両情報の転送が許容される。このため、上記取得後、操作手段の操作を待たずに電子キーから車両情報を車両へ転送する構成と比較して、性能劣化を抑制することができる。尚、電子キーを外部機器に近接させる動作と操作手段の操作を並行することは比較的困難であり、操作手段が操作されたということは、電子キーが外部機器から離れている可能性が高い。
【0014】
上記情報転送システムについて、前記車両情報は現在時刻の情報を含み、前記車両へ転送した現在時刻の情報をもとに、前記車両での現在時刻を設定可能としたことを前提に、前記外部機器は、当該外部機器での現在時刻を更新するとともに、前記電子キーとの間で前記近距離無線通信が確立されているとき、前記電子キーに前記車両情報を送信する度に、その送信時の時刻を前記外部機器での現在時刻の情報として前記電子キーに送信する、又は、前記電子キーとの間で前記近距離無線通信が確立されている間、定期間隔で前記外部機器での現在時刻の情報を前記電子キーに送信することとしてもよい。
【0015】
この構成によれば、外部機器で現在時刻が更新されつつ、常に最新の現在時刻の情報が電子キーに送信される。このため、車両での現在時刻を外部機器での現在時刻にほぼ一致させることができる。
【0016】
上記情報転送システムについて、前記電子キーは、前記近距離無線通信を通じて取得した前記外部機器での現在時刻の情報をもとに、当該電子キーでの現在時刻を更新するとともに、前記車両へ前記車両情報を転送する度に、その転送時の時刻を前記電子キーでの現在時刻の情報として前記車両へ転送することとしてもよい。
【0017】
この構成によれば、外部機器で現在時刻が更新されることに加え、電子キーでも現在時刻が更新され、常に最新の現在時刻の情報が車両に転送される。このため、車両での現在時刻を外部機器での現在時刻に一致させることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、性能劣化を抑制しつつ車両情報を車両へ転送することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】情報転送システムの構成を示すブロック図。
図2】NFC通信の途絶の検知をRF送信の契機とするシーケンスチャート。
図3】時間的な要素をRF送信の契機とするシーケンスチャート。
図4】ボタン操作をRF送信の契機とするシーケンスチャート。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、情報転送システムの一実施の形態について説明する。
図1に示すように、本例の情報転送システム1は、近年急速に普及しているスマートフォン2によって車両の行き先を示唆する目的地を設定し、この目的地の情報を車両キーである電子キー3を経由して車両4へ転送するシステムである。
【0021】
スマートフォン2は、車両オーナによって所持されるとともに、タッチ操作による入力の行われるタッチ操作部21と、スマートフォン2の統括的な制御を司る端末制御部22と、端末制御部22による制御のもと電子キー3との間で近距離無線通信(NFC:Near Field Communication)を行うNFC機能部23とを備えている。スマートフォン2に専用のアプリケーションソフトが組み込まれていることを前提に、タッチ操作部21の操作を通じて目的地の情報が設定可能であり、この情報がNFC通信により数センチメートル先の電子キー3に送信可能となっている。NFC通信にはHF帯の電波が用いられる。
【0022】
電子キー3は、ボタン操作による入力の行われるボタン操作部31と、電子キー3の統括的な制御を司るキー制御部32と、キー制御部32による制御のもとスマートフォン2との間でNFC通信を行うNFC機能部33と、車両4に対しUHF帯の電波を用いたRF送信を行うRF送信部34とを備えている。ボタン操作部31は、車両のドアロックを遠隔操作により施錠するロックボタン、同じく解錠するアンロックボタン等を含む。例えば、ロックボタンが押下されると、それを示唆する操作信号がキー制御部32に入力される。キー制御部32は不揮発性のメモリ32aを備え、このメモリ32aには、電子キー3に固有のIDコードが記憶されている。キー制御部32は、ロックボタンが押下されたことを示唆する操作信号が入力されると、車両4に対しドアロックの施錠を要求する操作コードと上記IDコードとを含む原信号を生成しRF送信部34に出力する。RF送信部34は、上記原信号をUHF帯の電波に変調しワイヤレス信号として数十メートル先の車両4にRF送信する。
【0023】
スマートフォン2と電子キー3とのNFC通信では、まずスマートフォン2のNFC機能部23から数センチメートルの範囲にポーリング用の電波が発信される。この範囲に電子キー3が近接されているとき、電子キー3のNFC機能部33によって上記電波が受信されるとともに、この電波から電力を賄いつつ、電子キー3がNFC機能を有することを示唆する識別コードがNFC機能部33から送信される。この識別コードにはNFC通信に関わる通信規格のバージョン情報等が含まれる。この識別コードがNFC通信によりスマートフォン2で受信されると、スマートフォン2の通信規格に則った識別コードであるか否かが認証され、肯定判断されたことを条件に、スマートフォン2で設定された目的地の情報がNFC通信を通じて電子キー3に送信される。NFC機能部33は、NFC機能部23とのやりとりを通じて、スマートフォン2との間でNFC通信が確立されているか否かを検知可能である。NFC通信の途絶が検知されると、その旨がキー制御部32によって認識される。キー制御部32は、NFC通信の途絶されたことを契機に、スマートフォン2から取得した目的地の情報と上記IDコードとを含むワイヤレス信号をRF送信部34を通じて自動的にRF送信し、これにより、スマートフォン2で設定された目的地の情報を車両4へ転送する。
【0024】
車両4は、電子キー3からのワイヤレス信号を受信可能なRF受信部41と、車両4の統括的な制御を司る車両制御部42とを備えている。RF受信部41は、ワイヤレス信号を復調して受信信号を生成し車両制御部42に出力する。車両制御部42は不揮発性のメモリ42aを備え、このメモリ42aには、車両4に適合する電子キー3のIDコードが基準IDコードとして登録されている。車両制御部42は、RF受信部41による受信信号に基準IDコードと一致するIDコードが含まれているとき、車両オーナの所持する正規の電子キー3によるワイヤレス信号である旨特定する。そして、この受信信号にドアロックの施錠を要求する操作コードが含まれている場合には、ドアロックの施錠に必要な制御を行い、また、ドアロックの解錠を要求する操作コードが含まれている場合には、ドアロックの解錠に必要な制御を行う。さらに、RF受信部41による受信信号に、基準IDコードに一致するIDコードと共に目的地の情報が含まれている場合には、この目的地の情報がカーナビゲーションシステムに反映される。
【0025】
次に、情報転送システム1の作用について説明する。
図2に示すように、ステップS10において、スマートフォン2で目的地が設定された後、スマートフォン2と電子キー3が近接されると、両者間でNFC通信が確立される。そして、ステップS20において、NFC通信を通じてスマートフォン2から電子キー3に目的地の情報が送信される。そして、ステップS30において、目的地の情報が電子キー3で取得される。
【0026】
その後、NFC通信の途絶が電子キー3で検知されると、ステップS40において、目的地の情報が電子キー3から車両4へRF送信により自動的に転送される。NFC通信の途絶により、スマートフォン2と電子キー3がNFC通信の確立されない距離にあること、すなわち両者の離れたことが示唆される。したがって、RF送信に際し、金属物によるスマートフォン2の影響が抑制される。そして、ステップS50において、目的地の情報が車両4で取得される。ステップS60では、車両4において目的地が設定され、これにより、スマートフォン2で設定された内容が車両制御に反映される。
【0027】
以上説明したように、本実施の形態によれば、以下の効果を奏することができる。
(1)スマートフォン2と電子キー3との間において、NFC通信が確立されていない場合、電子キー3から車両4への目的地情報の転送が許容される。このため、電子キー3から車両4へ目的地情報を転送する際、金属物によるスマートフォン2の影響が抑制される。したがって、性能劣化を抑制しつつ目的地情報を車両4へ転送することができる。
【0028】
(2)NFC通信を通じて目的地情報がスマートフォン2から電子キー3に送信された後、NFC通信の途絶が検知されると、電子キー3から車両4への目的地情報の転送が許容される。このため、スマートフォン2から電子キー3が離れた状態で、電子キー3から目的地情報を車両4へ転送することができる。
【0029】
(3)キー制御部32により電子キー3から車両4への目的地情報の転送が許容されたとき、電子キー3から車両4へ自動で目的地情報が転送される。このため、ユーザの煩わしさが低減される。
【0030】
尚、上記実施の形態は、次のように変更して具体化することも可能である。
・上記実施の形態では、NFC通信の途絶の検知を電子キー3によるRF送信の契機としたが、時間的な要素をRF送信の契機としてもよい。
【0031】
図3に示すように、ステップS30において目的地の情報が電子キー3で取得された後、当該情報を取得してからの経過時間がタイマ32b(図1に破線で示す)によりカウントされる。そして、ステップS35において、タイマ32bによりカウントされた経過時間が一定時間(例えば5秒〜10秒)に達すると、ステップS40において、目的地の情報が電子キー3から車両4へRF送信により自動的に転送される。目的地の情報が電子キー3で取得されてから5秒程度の時間が経過することで、それまで近接状態にあったスマートフォン2と電子キー3がNFC通信の確立されない距離に離れたと推定される。したがって、この場合も、RF送信に際し、金属物によるスマートフォン2の影響が抑制される。
【0032】
この構成によれば、NFC通信を通じて電子キー3がスマートフォン2から目的地情報を取得してから一定時間が経過すると、スマートフォン2から電子キー3が離れたと推定され、電子キー3から車両4への目的地情報の転送が許容される。このため、上記取得後、直ちに電子キー3から目的地情報を車両4へ転送する構成と比較して、性能劣化を抑制することができる。
【0033】
・ボタン操作部31の操作をRF送信の契機としてもよい。
図4に示すように、ステップS30において目的地の情報が電子キー3で取得された後、ステップS36においてボタン操作部31が操作されると、ステップS40において、目的地の情報が電子キー3から車両4へRF送信により自動的に転送される。電子キー3をスマートフォン2に近接させる動作とボタン操作部31の操作を並行することは比較的困難であるため、ボタン操作部31の操作により、スマートフォン2と電子キー3がNFC通信の確立されない距離にあること、すなわち両者の離れたことが示唆される。したがって、この場合も、RF送信に際し、金属物によるスマートフォン2の影響が抑制される。
【0034】
この構成によれば、電子キー3によるスマートフォン2からの目的地情報の取得後に、ボタン操作部31が操作されると、スマートフォン2から電子キー3が離れたと推定され、電子キー3から車両4への目的地情報の転送が許容される。このため、上記取得後、ボタン操作部31の操作を待たずに電子キー3から目的地情報を車両4へ転送する構成と比較して、性能劣化を抑制することができる。
【0035】
・ボタン操作部31の操作をRF送信の契機とする構成において、ボタン操作部31の操作に伴うワイヤレス信号(操作コードとIDコードを含む)に目的地情報が付加されることによって目的地情報が電子キー3から車両4へ転送される構成を採用してもよい。この場合、一度の操作で操作コードと目的地情報を共に含むワイヤレス信号を電子キー3から車両4にRF送信することができる。
【0036】
・ボタン操作部31の操作をRF送信の契機とする構成において、例えば、アンロックボタンが操作された場合に、目的地情報が車両制御に反映される一方、ドアロックの解錠を要求する操作コードについては車両制御に反映されない構成を採用してもよい。この場合、電子キー3で目的地情報が取得された後のアンロックボタンの1回目の操作に伴い、目的地情報を含みつつ操作コードを含まないワイヤレス信号が電子キー3からRF送信され、このワイヤレス信号の解析を通じて目的地情報が車両制御に反映される。或いは、目的地情報に加え操作コードの含まれるワイヤレス信号がRF送信されることを前提に、目的地情報が含まれる場合には車両4で操作コードを無効化する処理が行われてもよい。すなわち、各態様によるように、上記取得後のボタン操作部31の1回目の操作は、専ら目的地情報の転送契機に用いられてもよい。いずれにせよ、目的地情報を転送する目的でボタン操作部31が操作された場合において、ドアロックが解除されないため、セキュリティ性を向上できる。
【0037】
図2に倣うNFC通信の途絶の検知、図3に倣う時間的な要素、図4に倣うボタン操作のいずれか二つ以上を組み合わせてRF送信の契機とする構成を採用してもよい。例えば、NFC通信の途絶が検知され、且つ、ボタン操作部31が操作された場合に目的地情報をRF送信により電子キー3から車両4へ転送する構成であってもよい。
【0038】
・車両情報は目的地情報に限定されない。例えば、現在時刻の情報が含まれてもよい。この場合、車両4へ転送した現在時刻の情報をもとに、車両4での現在時刻を設定することができる。
【0039】
図1を援用して、スマートフォン2は、当該スマートフォン2での現在時刻を更新するとともに、電子キー3との間でNFC通信が確立されているとき、電子キー3に車両情報を送信する度に、その送信時の時刻をスマートフォン2での現在時刻の情報として電子キー3に送信する。又は、NFC通信が確立されている間、定期間隔で現在時刻の情報を送信する。これにより、NFC通信が確立されている限り、スマートフォン2での最新の現在時刻が電子キー3で取得される。この現在時刻の情報がRF送信により電子キー3から車両4へ転送されることで、車両4での現在時刻を設定できるようになる。RF送信の契機は図2図4のいずれかが採用される。
【0040】
この構成によれば、スマートフォン2で現在時刻が更新されつつ、常に最新の現在時刻の情報が電子キー3に送信される。このため、車両4での現在時刻をスマートフォン2での現在時刻にほぼ一致させることができる。
【0041】
・現在時刻の情報を車両4へ転送する構成において、電子キー3は、NFC通信を通じて取得したスマートフォン2での現在時刻の情報をもとに、当該電子キー3での現在時刻を更新するとともに、車両4へ車両情報を転送する度に、その転送時の時刻を電子キー3での現在時刻の情報として車両4へ転送する構成を採用してもよい。
【0042】
この構成によれば、スマートフォン2で現在時刻が更新されることに加え、電子キー3でも現在時刻が更新され、常に最新の現在時刻の情報が車両4に転送される。このため、車両4での現在時刻をスマートフォン2での現在時刻に一致させることができる。
【0043】
・車両情報は目的地情報や現在時刻の情報の他、次のような各種情報であってもよい。ここではまず、車両情報を車両運転サポート情報と車載機器制御情報とに大別する。前者の車両運転サポート情報には、上記実施の形態で例示した目的地情報の他、音楽等の車内環境情報、さらには、温度、ミラー、シート、ハンドル、サスペンションかたさ等の個人設定情報が含まれる。一方、後者の車載機器制御情報には、例えば操作制限情報が含まれる。この操作制限情報には、例えばバレーパーキングでの使用回数制限やトランク開制限を示唆する携帯機(電子キー3)操作対象制限情報、車両4からのLF送信停止を示唆するスマート機能キャンセル情報、ドアロック/アンロック時のアンサーバック音のキャンセル情報が含まれる。これらの車両情報をスマートフォン2で設定し、この車両情報を電子キー3を経由して車両4へ転送する情報転送システム1であってもよい。
【0044】
・車両4との間で無線通信が可能な電子キー3に対し、外部機器はスマートフォン2に限定されない。電子キー3との間で近距離無線通信が可能なものであればよい。
・電子キー3は車両4との間で無線通信が可能な車両キーのうち、外部機器との間で近距離無線通信が可能なものであればよい。
【0045】
・電子キー3から車両4への送信態様はRF送信に限定されない。例えば、スマートフォン2と電子キー3との無線通信と同じ種類のNFC通信を通じて電子キー3から車両4へ車両情報が転送されてもよい。
【0046】
次に、上記実施の形態及び別例から把握できる技術的思想について記載する。
(イ)情報転送システムにおいて、制御手段により電子キーから車両への車両情報の転送が許容されたとき、電子キーから車両へ自動で車両情報が転送されること。
【0047】
(ロ)情報転送システムにおいて、電子キーの操作手段が操作されたとき、電子キーから車両に遠隔操作信号が送信されることを前提に、この遠隔操作信号に車両情報が付加されることによって車両情報が電子キーから車両へ転送されること。
【0048】
(ハ)外部機器との間で近距離無線通信が可能であるとともに、近距離無線通信を通じて外部機器から取得した車両情報を、近距離無線通信と同じ又は異なる種類の別の無線通信により車両へ転送する電子キーにおいて、外部機器との間において、近距離無線通信が確立されていない場合、車両への車両情報の転送を許容する制御手段を備えること。
【0049】
(ニ)電子キーにおいて、外部機器との間で近距離無線通信が確立されているか否かを検知する検知手段を備え、制御手段は、検知手段により近距離無線通信の途絶が検知されたとき、車両への車両情報の転送を許容すること。
【0050】
(ホ)電子キーにおいて、外部機器から車両情報を取得してからの経過時間をカウントするタイマを備え、制御手段は、タイマによりカウントされた経過時間が一定時間に達したとき、車両への車両情報の転送を許容すること。
【0051】
(ヘ)電子キーにおいて、車両を遠隔操作する操作手段を備え、制御手段は、外部機器からの車両情報の取得後に、操作手段が操作されたとき、車両への車両情報の転送を許容すること。
【0052】
(ト)電子キーにおいて、車両情報は現在時刻の情報を含み、車両へ転送した現在時刻の情報をもとに、車両での現在時刻を設定可能としたことを前提に、近距離無線通信を通じて取得した外部機器での現在時刻の情報をもとに、電子キーでの現在時刻を更新するとともに、車両へ車両情報を転送する度に、その転送時の時刻を示唆する情報を電子キーでの現在時刻の情報として車両へ転送すること。
【符号の説明】
【0053】
1…情報転送システム、2…スマートフォン(外部機器)、3…電子キー、4…車両、21…タッチ操作部、22…端末制御部、23…NFC機能部、31…ボタン操作部(操作手段)、32…キー制御部(制御手段)、32a…メモリ、32b…タイマ、33…NFC機能部(検知手段)、34…RF送信部、41…RF受信部、42…車両制御部、42a…メモリ。
図1
図2
図3
図4