(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
絶縁部と該絶縁部内に形成された導電部とを備えて前記導電部に通電することにより発熱し、軸線方向に延出する形状を有するヒータ素子と、導電性材料により形成された中軸と、前記ヒータ素子の後端部と前記中軸の先端部とが内部に配置されるリングであって、前記導電部と前記中軸とを電気的に接続させるリングと、前記ヒータ素子の後端部を含む部分と前記リングとを内部に収納する金属製筒部材であって、前記リングとの間が空間により絶縁されている金属製筒部材と、を備え、前記中軸と前記リングとを固定する溶接部が形成されたグロープラグにおいて、
前記中軸と前記リングとが重なる部分では、前記中軸と前記リングとの間に隙間ができるように、前記中軸の外径が前記リングの内径よりも小さく形成されており、
前記リングの最後端が前記中軸に接する部位において、前記リングの最後端は、前記中軸よりも大きい外径を有しており、
前記溶接部は、前記リングの最後端の少なくとも一部が溶融することにより形成されていることを特徴とする
グロープラグ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
グロープラグにおいては、一般に、リングと、リングによって接続されたヒータ素子の後端部と中軸の先端部とを含む部分は、金属製の筒部材の内部に収納されている。そして、金属製の筒部材と、上記リングとヒータ素子の後端部と中軸の先端部とを含む部分との間は、空間を設けることにより絶縁されている。ここで、中軸の先端部のリングへの嵌め込みを圧入により行なう際には、中軸の先端部によってリングが押し広げられるため、リングの外径が拡大する。このようにリングの外径が拡大すると、リングと上記した金属製の筒部材との間の距離が縮まり、リングと金属製筒部材とが短絡する可能性がある。また、リングと中軸とを溶接すると、溶接箇所にはリングと中軸とが溶融した溶接部が形成される。この溶接部は、通常はリングの外周よりもリングの径方向外側にはみ出して形成される。このように溶接部が径方向外側にはみ出して形成されると、溶接部を介して上記した金属製筒部材とリングとが短絡する可能性がある。
【0005】
金属製筒部材とリングとの短絡を抑える方法として、金属製筒部材の内壁面とリングの間に絶縁性部材(例えば絶縁チューブ)を配置する方法が考えられる。しかしながら、絶縁性部材の配置は、部品点数の増加および製造工程の増加を引き起こすと共に、グロープラグにおいて径方向の大型化を引き起こす。したがって、上記絶縁性部材の配置は採用し難い場合がある。
【0006】
また、圧入に伴うリングの外径の拡大に起因する金属製筒部材とリングの短絡を抑える方法として、リングおよび中軸を精度良く作製することにより、リング内への中軸の圧入を可能にしつつ、リング外径の拡大の程度を抑制する方法も考えられる。あるいは、溶接部の径方向外側へのはみ出しに起因する金属製筒部材とリングの短絡を抑える方法として、溶接の条件を精度良くコントロールして、溶接部の径方向外側へのはみ出しを抑制する方法も考えられる。しかしながら、リングおよび中軸の作製精度の向上や、リングと中軸を溶接する際の条件管理の精度向上は、製造工程を煩雑化して製造コストの増加を招くため採用し難い場合がある。特に近年は、グロープラグの小型化(径をより小さくすること)が望まれているため、金属製筒部材とリングの間の絶縁性を確保することが益々困難化している。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上述の課題を解決するためになされたものであり、以下の形態として実現することが可能である。
【0008】
(1)本発明の一形態によれば、絶縁部と該絶縁部内に形成された導電部とを備えて前記導電部に通電することにより発熱し、軸線方向に延出する形状を有するヒータ素子と、導電性材料により形成された中軸と、前記ヒータ素子の後端部と前記中軸の先端部とが内部に配置されるリングであって、前記導電部と前記中軸とを電気的に接続させるリングと、前記ヒータ素子の後端部を含む部分と前記リングとを内部に収納する金属製筒部材であって、前記リングとの間が空間により絶縁されている金属製筒部材と、を備え、前記中軸と前記リングとを固定する溶接部が形成されたグロープラグが提供される。このグロープラグは、前記中軸と前記リングとが重なる部分では、前記中軸と前記リングとの間に隙間ができるように、前記中軸の外径が前記リングの内径よりも小さく形成されており、前記リングの最後端が前記中軸に接する部位において、前記リングの最後端は、前記中軸よりも大きい外径を有しており、前記溶接部は、前記リングの最後端の少なくとも一部が溶融することにより形成されている。
この形態のグロープラグによれば、中軸の先端部の外径がリングの後端部の内径よりも小さく形成されているため、中軸の先端をリング内に嵌め込んでも、リングが変形せず、径方向外側に広がらない。そのため、リングと金属製筒部材との間の短絡を抑えることができる。また、上記短絡を抑えつつ、グロープラグを小型化することが可能になる。さらに、溶接部は、リングの最後端の少なくとも一部が溶融することにより形成されているため、溶融部の形状は、溶融した金属がリングの最後端から中軸表面の後端側方向に広がることにより得られる形状になる。そのため、溶接部の径方向外側への広がりを抑制し、溶接部と金属製筒部材との間の短絡を抑制することができる。また、中軸の先端部の外径がリングの後端部の内径よりも小さく形成されているため、リングの最後端で溶接を行なうと、溶融した金属が中軸とリングとの間に入り込み得る。このように溶融した金属が中軸とリングの間に入り込んで溶融部を形成する場合には、溶接部の径方向外側への広がりを抑制し、溶接部と金属製筒部材との間の短絡を抑制する効果を、さらに高めることができる。
【0009】
(2)上記形態のグロープラグにおいて、前記溶接部は、前記リングにおける前記溶接部を含まない部分の外周を前記軸線方向に伸ばした仮想筒状領域内に収まっていることとしてもよい。
この形態のグロープラグによれば、溶接部と金属製筒部材との間の短絡を抑制する効果を高めることができる。
【0010】
(3)上記形態のグロープラグは、さらに、前記グロープラグの外壁を構成し、前記ヒータ素子、前記中軸、および前記リングを含む部材を収納する軸孔が形成されたハウジングと、前記ヒータ素子が前記グロープラグの軸線方向に変位することを許容しつつ、直接または他の部材を介して前記ヒータ素子と前記ハウジングとを連結する連結部材と、前記ハウジングの前記軸孔内において前記連結部材よりも後端側に配置される伝達スリーブであって、前記リングよりも先端側の位置において、前記ヒータ素子と直接または他の部材を介して接続され、前記リングが配置された位置よりも後端側の位置へと、前記ハウジングの前記軸孔の内壁と前記中軸の間の空間において前記中軸に沿って延出するように設けられ、前記ヒータ素子と共に前記軸線方向に変位する伝達スリーブと、前記伝達スリーブの後端部に接続され、前記伝達スリーブが前記軸線方向に変位することによって変形する歪み部材と、前記歪み部材の変形量に応じた信号を出力する圧力検出素子と、を備え、前記金属製筒部材は前記伝達スリーブであることとしてもよい。
この形態のグロープラグによれば、圧力検出素子を備えることにより、溶接部およびリングと金属製筒部材との間の距離を確保することが比較的困難であるにもかかわらず、溶接部およびリングと金属製筒部材との間の絶縁性を確保しつつグロープラグを小型化することが可能になる。
【0011】
(4)上記形態のグロープラグにおいて、前記溶接部は、前記中軸の外表面上において、前記リングの最後端からさらに後端側に広がって設けられ、前記溶接部の外表面は、凹状の曲面となるように形成されていることとしてもよい。
この形態のグロープラグによれば、溶接部の径方向外側への広がりを抑制する効果を高め、溶接部と金属製筒部材との間の短絡を抑制する効果を高めることができる。
【0012】
(5)上記形態のグロープラグにおいて、前記導電部は、前記ヒータ素子における前記リングに嵌め込まれた部分の側面で露出する第1の電位側の接続端子を備え、該第1の電位側の接続端子および前記リングを介して前記中軸と電気的に接続されており、前記ヒータ素子では、前記導電部の第1の電位側の端部と第2の電位側の端部のうちの、少なくとも前記第2の電位側の端部が、前記ヒータ素子の後端部において露出しており、前記リング内で対向する前記ヒータ素子の後端部と前記中軸の先端部の少なくとも一方に、凹部形状または凸部形状が形成されており、前記ヒータ素子の後端部のうちの前記第2の電位側の端部が露出する領域を除く領域と前記中軸の先端部とが接触すると共に、前記導電部の前記第2の電位側の端部が、前記中軸から離間していることとしてもよい。
この形態のグロープラグによれば、中軸の先端部とヒータ素子の後端部とを接触させても、第2の電位側の端部と中軸との間の絶縁性を確保することができる。そのため、第2の電位側の端部と中軸との間の絶縁性を確保するために、リング内への中軸の嵌め込み位置を特別に制御する必要がなく、リング内への中軸の嵌め込みの動作の煩雑化を抑えることができる。また、第2の電位側の端部と中軸との間の絶縁性を確保するために、リング内への中軸の嵌め込み位置を定めるための特別な構造を設ける必要がない。
【0013】
(6)上記形態のグロープラグにおいて、前記グロープラグは、その外表面に燃焼装置の取付孔に螺合するためのねじ部を備え、前記ねじ部のねじ径がM10以下であることとしてもよい。
この形態のグロープラグによれば、M10以下という比較的小さいねじ径を有するグロープラグであっても、リングおよび溶接部と中軸との間の絶縁性を確保することができる。
【0014】
(7)上記形態のグロープラグにおいて、前記ねじ部のねじ径がM8以下であることとしてもよい。
この形態のグロープラグによれば、M8以下というさらに小さいねじ径を有するグロープラグであっても、リングおよび溶接部と中軸との間の絶縁性を確保することができる。
【0015】
本発明は、上記以外の種々の形態で実現可能であり、例えば、グロープラグの製造方法、あるいは、グロープラグにおける中軸とリングとの溶接方法などの形態で実現することが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
A.第1の実施形態:
図1は、本発明の第1の実施形態としてのグロープラグ10の概略構成を表わす断面模式図である。また、
図2は、
図1において領域Xとして示した部分の拡大断面図である。本実施形態のグロープラグ10は、ディーゼルエンジン等の内燃機関に取り付けられて、内燃機関の始動時における点火を補助する熱源として機能する。グロープラグ10は、ディーゼル微粒子捕集フィルター(DPF)の再活性バーナーシステムの熱源として用いることもできる。
図1に示すように、グロープラグ10は、主な構成要素として、ハウジング20と、ヒータ素子40と、中軸50と、リング60と、を備えている。また、グロープラグ10は、内燃機関のシリンダ内の圧力(燃焼圧)を検出する圧力センサとしての機能をさらに有している。グロープラグ10は、圧力センサとしての機能を実現するための主な構成要素として、連結部材70と、伝達スリーブ32と、ダイヤフラム33と、圧力検出素子35と、センサ固定部材34と、を備えている。以下では、
図2に基づいて各部について説明する。なお、本明細書では、
図1におけるグロープラグ10の軸線O方向の下方側をグロープラグ10の「先端側」と呼び、上方側を「後端側」と呼ぶ。
【0018】
ハウジング20は、導電性材料(例えば、炭素鋼やステンレス鋼などの金属材料)によって形成されており、主体金具22とキャップ部24とを備える。主体金具22は、軸線Oに沿って延びる略円筒状の部材である。主体金具22の内部には、軸線Oに沿って主体金具22を貫通する軸孔21が形成されている。また、主体金具22は、その後端側の外表面に、内燃機関のシリンダヘッド(図示せず)のプラグ取付孔に形成された雌ネジに螺合するための雄ネジが形成されたねじ部23(
図1参照)を備えている。キャップ部24は、主体金具22の先端側に配置される環状の部材である。キャップ部24の先端面には先端側に向かって縮径するテーパ部25が設けられている。このテーパ部25が、プラグ取付孔に設けられたシート面(図示せず)に接することにより、エンジンの燃焼室の気密が確保される。
【0019】
ヒータ素子40は、軸線Oに沿って延びる略円柱状の部材であり、絶縁部41と、導電部42とを備えている。ヒータ素子40は、主体金具22の先端部において軸孔21内に配置されており、また、キャップ部24を貫通してキャップ部24の先端から突出している。ヒータ素子40は、電力が供給されることによって発熱する。
【0020】
絶縁部41は、絶縁性のセラミックによって形成されている。本実施形態では、絶縁部41は窒化珪素によって形成されている。ただし、絶縁部41は、窒化珪素に限らず、例えば、アルミナやサイアロン等の他の絶縁性のセラミックによって形成されていてもよい。この絶縁部41は、ヒータ素子40の基体を成す部位である。
【0021】
導電部42は、絶縁部41の内部に埋設されており、軸線O方向に伸長すると共に先端側を頂点にして折り曲げられたU字状の構造であり、通電によって抵抗発熱する導電性のセラミックによって形成されている。本実施形態では、導電部42は、タングステンカーバイドによって形成されている。ただし、導電部42は、タングステンカーバイドに限らず、例えば、二珪化モリブデンや二珪化タングステン等の他の導電性のセラミックによって形成されていてもよい。
【0022】
U字状に形成された導電部42の両端部は、ヒータ素子40の後端部の外表面において露出する。一方の端部が第1の電位側の端部(プラス側端部)44であり、他方の端部が、一方の端部よりも低電位になる第2の電位側の端部(マイナス側端部)43である。また、導電部42には、上記第1の電位側の端部(プラス側端部)44の近傍において、ヒータ素子40の側面で露出する第1の電位側の接続端子(プラス側接続端子)46が形成されている。さらに導電部42には、上記第2の電位側の端部(マイナス側端部)43の近傍であって、上記第1の電位側の接続端子46よりも先端側の位置に、ヒータ素子40の側面で露出する第2の電位側の接続端子(マイナス側接続端子)45が形成されている。なお、本実施形態では、第1の電位側の接続端子46および第2の電位側の接続端子45は、導電部42の他の部位と同じ材料で形成されており、導電部42の一部として形成されている。ただし、第1の電位側の接続端子46および第2の電位側の接続端子45は、導電部42の他の部位と別体で形成されていてもよい。
【0023】
中軸50は、軸線Oに沿って延びる形状を有し、導電性材料(例えば、SUS430等の金属材料)によって形成される棒状の部材であり、主体金具22の軸孔21内において、ヒータ素子40の後端側に配置されている。本実施形態では、中軸50の先端部がヒータ素子40の後端部に接している。中軸50の先端部とヒータ素子40の後端部が接する様子、および、中軸50の先端部の構造の詳細については後に説明する。
【0024】
リング60は、導電材料(例えば、SUS410、SUS630等の金属材料)で形成された円筒状部材であり、主体金具22の軸孔21の内部で、中軸50とヒータ素子40との間に組み付けられる。具体的には、ヒータ素子40の後端部と、中軸50の先端部とが、リング60の内部に嵌め込まれる。ヒータ素子40の後端部のリング60への嵌め込みは圧入により行なわれ、これによりヒータ素子40の側面に露出する第1の電位側の接続端子(プラス側接続端子)46がリング60の内壁に接する。その結果、ヒータ素子40の導電部42の第1の電位側の接続端子(プラス側接続端子)46が、リング60を介して中軸50に電気的に接続される。中軸50の先端部のリング60への嵌め込みの態様については、後に詳しく説明する。
【0025】
ヒータ素子40の側面には、リング60の嵌め込み位置よりも先端側に第1外筒30が配置されており、第1外筒30よりも先端側には第2外筒31が配置されている。第1外筒30および第2外筒31は、導電性材料(例えば、SUS410、SUS630等の金属材料)で形成された円筒状部材であり、第1外筒30および第2外筒31内にヒータ素子40を圧入することにより組み付けられる。第1外筒30内にヒータ素子40を圧入することにより、導電部42の第2の電位側の接続端子(マイナス側接続端子)45が、第1外筒30の内壁に接触し、導電部42と第1外筒30とが電気的に接続される。なお、第2外筒31は、絶縁性材料により形成することも可能である。また、第1外筒30および第2外筒31とヒータ素子40とは、圧入を行なうことなく、第1外筒30および第2外筒31内にヒータ素子40を挿入した後にロウ付けすることにより組み付けてもよい。
【0026】
ハウジング20の内壁面と、ヒータ素子40、中軸50およびリング60との間には、連結部材70、伝達スリーブ32、ダイヤフラム33、およびセンサ固定部材34が配置されている。これらの部材は、いずれも導電性材料によって形成されている。連結部材70は、例えばSUS630などのステンレス鋼やニッケル合金などの金属材料により形成することができる。伝達スリーブ32、ダイヤフラム33、およびセンサ固定部材34は、例えば炭素鋼やステンレス鋼などの金属材料によって形成することができる。
【0027】
連結部材70は、軸線Oに沿ったヒータ素子40の移動を許容しつつ、ヒータ素子40とハウジング20とを連結する膜状の弾性部材であり、キャップ部24内に配置されている。連結部材70には、ヒータ素子40が貫通する孔部が中央部に形成されている。そして、上記孔部が形成される内周部(連結部材70の先端側)は、ヒータ素子40の外周に設けられた第2外筒31の後端部に溶接されており、連結部材70の外周部(連結部材70の後端側)は、キャップ部24に溶接されている。連結部材70は、上記のようにヒータ素子40とハウジング20とを連結することで、ハウジング20内の気密を確保する役割も果たす。なお、連結部材70は、弾性変形することによってヒータ素子40の軸線Oに沿った移動を許容できれば膜状以外の形状であっても良く、例えばベローズであってもよい。
【0028】
センサ固定部材34は、略円筒形状の部材である。センサ固定部材34は、主体金具22の軸孔21の内壁面に沿って配置されており、その先端近傍には、径方向外側に突出する鍔状のフランジ部36が形成されている。このフランジ部36は、主体金具22の先端面およびキャップ部24の後端面に溶接されている。
【0029】
伝達スリーブ32は、略円筒状の部材であり、主体金具22の軸孔21内においてセンサ固定部材34よりも径方向内側に配置されている。伝達スリーブ32の先端は、第1外筒30の外側に嵌め込まれて第1外筒30に溶接されている。これにより、ヒータ素子40が軸線O方向に沿って変位したときには、伝達スリーブ32も一緒に変位し、伝達スリーブ32は、軸線Oに沿ったヒータ素子40の変位を後端側(ダイヤフラム33)へと伝達する。なお、第1外筒30はリング60よりも厚く形成されており、伝達スリーブ32とリング60とは離間している。そのため、リング60およびリング60内に嵌め込まれる中軸50と伝達スリーブ32との間は、空間により絶縁されている。
【0030】
ダイヤフラム33は、環状の部材である。ダイヤフラム33の中央には、中軸50が貫通する開口部37が設けられている。ダイヤフラム33の内周部には、伝達スリーブ32の後端が溶接されている。このため、燃焼ガスの圧力(燃焼圧)を受けてヒータ素子40が軸線Oに沿って変位すると、伝達スリーブ32によってその変位量がダイヤフラム33に伝達され、ダイヤフラム33が変形する。ダイヤフラム33の外周部には、センサ固定部材34の後端が溶接されている。本実施形態では、このセンサ固定部材34によって、ダイヤフラム33がハウジング20内の中央部付近に固定されている。ダイヤフラム33は、特許請求の範囲における「歪み部材」に相当する。
【0031】
ダイヤフラム33の上面(後端側の面)には、ダイヤフラム33の変形量に基づいて圧力を検出する圧力検出素子35が設けられている(
図2参照)。本実施形態では、圧力検出素子35として、ピエゾ抵抗素子が用いられている。なお、本実施形態では、圧力検出素子35としてピエゾ抵抗型素子を用いているが、異なる種類のセンサ素子、例えば圧電素子を用いることとしてもよい。
【0032】
本実施形態の圧力検出素子35(ピエゾ抵抗素子)は、ダイヤフラム33の変形量に応じてその抵抗値が変化する。圧力検出素子35には、ハウジング20内の所定の部位に設けられた集積回路(図示せず)が電気的に接続されている。集積回路は、圧力検出素子35の抵抗値の変化を検出することによって、内燃機関の燃焼圧を検出する。集積回路は、こうして検出された燃焼圧を示す電気信号を、ハウジング20の後端から挿入された配線(図示せず)を通じて外部のECU等に出力する。
【0033】
図1に戻り、ハウジング20の後端側には保護筒72が取り付けられている。保護筒72の内部には、中軸50と電気的に接続する端子金具73が配置されている。
【0034】
以上のように構成されたグロープラグ10では、端子金具73から電力が供給されると、中軸50、リング60および第1の電位側の接続端子46を通じて導電部42に電力が供給され、ヒータ素子40が発熱する。このとき、導電部42の第2の電位側の接続端子45は、第1外筒30、伝達スリーブ32、ダイヤフラム33、センサ固定部材34、ハウジング20、および内燃機関のシリンダヘッドを通じて接地される。
【0035】
図3は、ヒータ素子40の後端部と中軸50の先端部とが接する部位を含む領域の様子を表わす説明図である。具体的には、
図3(A)は、
図2において領域Yとして示した領域を拡大して示す断面模式図である。また、
図3(B)は、
図3(A)における3−3断面の様子を表わす断面図である。なお、
図3では、
図2の領域Y内における伝達スリーブ32、センサ固定部材34、および主体金具22については記載を省略している。
【0036】
図3(A)に示すように、中軸50の先端部には凹部形状52が形成されている。具体的には、凹部形状52は、軸線Oに垂直方向の面(以下、横断面と呼ぶ)の外周が円形に形成されると共に、横断面の外周が中軸50の先端部の横断面の外周と同心円となるように形成されている(
図3(B)参照)。凹部形状52は、例えば、中軸50となる金属製の棒状部材の先端部を切削加工することにより形成すればよい。あるいは、鍛造によって、凹部形状52を有する中軸50を作製することとしてもよい。このような凹部形状52が形成されることにより、中軸50の先端部の横断面では、中軸50の外壁を含む部分がリング状に形成される。リング60内において、中軸50の先端(最先端)は、ヒータ素子40の後端部と接触している。なお、本明細書において説明する各部の形状、具体的には、円形、同心円、径が一定等の形状は、各部を備える部材を製造する際に生じる誤差等に起因する公差による歪みや変形を有する形状を含んでいる。
【0037】
図3(B)では、3−3断面の構成に重ねて、ヒータ素子40の後端部で露出する第1の電位側の端部(プラス側端部)44および第2の電位側の端部(マイナス側端部)43の位置も破線で示している。
図3(B)に示すように、第1の電位側の端部44および第2の電位側の端部43は、中軸50の先端部から離間している。中軸50の先端部には凹部形状52が形成されると共に、ヒータ素子40の後端部と接する中軸50の先端部において、中軸50の先端部と第2の電位側の端部43とが離間しているため、第2の電位側の端部43は、中軸50と絶縁されている。なお、第2の電位側の端部43と中軸50との間の軸線O方向の距離(凹部形状52の軸線O方向の深さ)は、第2の電位側の端部43と中軸50との間の絶縁性を確保する観点から、0.2mm以上とすることが好ましく、1.5mm以上とすることがさらに好ましい。また、上記距離は、加工の容易性の観点から、50mm以下とすることが好ましく、30mm以下とすることがさらに好ましい。
【0038】
なお、
図3に示した凹部形状52は種々の変形が可能である。
図3に示した凹部形状52は、横断面の径が一定となるように形成されているが、例えば、深くなるに従って(後端側ほど)次第に縮径するように凹部形状を形成してもよい。また、
図3に示した凹部形状52は、横断面が円形となるように形成したが、異なる構成としてもよい。凹部形状52は、これを設けることにより、導電部の第2の電位側の端部43と中軸50との間が離間する形状であればよい。
【0039】
また、
図3(A)に示すように、リング60の後端部には、リング60と中軸50とを溶接することにより形成される溶接部65が設けられている。すなわち、リング60の最後端と中軸50の外表面の少なくとも一部が溶融して成る溶接部65が設けられている。
【0040】
図4は、溶接部65および溶接部65の近傍を拡大して示す断面模式図である。
図1〜
図3では表われていないが、本実施形態では、中軸50の先端部の外径はリング60の内径よりも小さく形成されており、中軸50の先端部の側面とリング60の内壁面との間には隙間ができている。また、
図4に示すように、リング60の最後端が中軸50に接する部位において、リング60の最後端は、中軸50よりも大きい外径を有している。
図4では、リング60の最後端が中軸50に接する部位に相当する位置を、水平方向(軸線Oに垂直な方向)の矢印αで示している。また、本実施形態では、リング60と中軸50の溶接は、グロープラグ10の後端側から、溶接前のリング60の最後端に向かってレーザを照射するレーザ溶接により行なわれる。
図4では、溶接前のリング60の最後端を含む水平方向の面に対して垂直にレーザを照射する際の照射の向きを矢印βにより示している。なお、溶接前のリング60の最後端は溶接時に溶融して溶接部65を形成するため、グロープラグ10が備えるリング60(溶接後のリング60)の最後端の面(
図4の矢印αと重なる面)は、溶接前のリング60の最後端の面よりも先端側に位置することになる。溶接の際のレーザ照射は、溶接前のリング60の最後端に対してレーザを照射可能であれば良く、溶接前のリング60の最後端の面に対して0°(
図4中の矢印αの角度)以上であり90°(
図4中の矢印βの角度)未満であれば良い。なお、リング60と中軸50の溶接は、レーザ溶接の他、例えば電子ビーム溶接によっても同様に行なうことが可能である。
【0041】
溶接前のリング60内の最後端の面に対してレーザを照射すると、溶接前のリング60の最後端の少なくとも一部と、溶接前のリング60の最後端近傍の中軸50の側面の少なくとも一部とが溶融し、混じり合って溶接部65が形成され、リング60と中軸50とが溶接される。このように溶接前のリング60の最後端と中軸50の側面とが溶融する際には、溶融して混じり合った金属は、リング60の内壁面と中軸50の側面との間の隙間にも入り得る。
図4では、上記溶融して混じり合った金属が上記隙間に入り込んで溶接部65の一部を形成する様子を表わしている。上記のように溶接時に溶融した金属がリング60の内壁面と中軸50の側面との間の隙間に入り込むためには、中軸50の先端部の外径とリング60の後端部の内径の差は、10μm以上であることが好ましく、50μm以上であることがさらに好ましい。また、中軸50の先端部の外径とリング60の後端部の内径の差は、大きすぎると中軸50の軸がずれてグロープラグとしての組み付けが困難化する可能性があるため、100μm以下であることが好ましく、70μm以下であることがさらに好ましい。中軸50の先端部の外径とリング60の後端部の内径の差は、グロープラグの断面における溶接部65の近傍であって溶接部65よりも先端側の位置で、中軸50の外径とリング60の内径との間の隙間を観察することにより確認できる。
【0042】
また、既述したように、本実施形態では、リング60の最後端が中軸50に接する部位において、リング60の最後端が中軸50よりも大きい外径を有している。そのため、溶接前のリング60の最後端の面にレーザを照射すると、中軸50の外表面上において、リング60の最後端からさらに後端側に広がるように溶接部65が形成される。その結果、リング60の外表面を超えて径方向外側へと溶接部65が広がることが抑制される。また、レーザ溶接時には、レーザのエネルギ強度やレーザの照射時間などの溶接条件を調節することで、溶接部65の形状を調節することができる。そのため、上記溶接条件を調節することによっても、溶接部65の径方向外側へのはみ出しを抑えることができる。特に、本実施形態では、溶接部65の外表面が凹状の曲面となるように(
図4参照)上記溶接条件を調節している。溶接時には、リング60および中軸50を構成する金属が溶融し液状化するため、表面が曲面(Rを有する形状)である溶接部65を容易に形成することができる。溶接部65の外表面を凹状の曲面にすることで、溶接部65の径方向外側へのはみ出しがさらに抑えられる。
図3および
図4では、リング60における溶接部65を含まない部分の外周を軸線O方向に伸ばした仮想筒状領域内を、領域Zとして示している。本実施形態では、上記のように溶接部65の径方向外側へのはみ出しを抑えることにより、溶接部65を、領域Z内に収めている。
【0043】
以下、グロープラグ10の製造方法について説明する。グロープラグ10を製造する際には、まず、リング60の後端側から先端側へとヒータ素子40の先端を挿入し、リング60内にヒータ素子40を圧入する。これにより、導電部42の第1の電位側の接続端子(プラス側接続端子)46がリング60の内壁に接触して、導電部42とリング60とが電気的に接続される。このとき、ヒータ素子40がリング60内に圧入されることで、第1の電位側の接続端子46とリング60の内壁との密着状態が高められ、導電部42とリング60とが電気的に接続される際の抵抗が十分に抑えられる。
【0044】
その後、第1外筒30および第2外筒31内にヒータ素子40を圧入し、第2外筒31の先端からヒータ素子40の先端部を突出させる。これにより、導電部42の第2の電位側の接続端子(マイナス側接続端子)45が第1外筒30の内壁面に密着され、導電部42と第1外筒30とが電気的に接続される。
【0045】
次に、リング60の後端側に中軸50の先端部を嵌め込み、溶接により両者を固定する。既述したように、中軸50の先端部の外径はリング60の内径よりも小さく、上記嵌め込みの動作は、中軸50の先端(最先端)がヒータ素子40の後端部(後端面)に接触するまで中軸50をリング60内に挿入することにより行なう。リング60の最後端と中軸50とを溶接することで、溶接部65が形成される。なお、本実施形態では、ヒータ素子40が嵌め込まれたリング60の後端側に中軸50を圧入する前に、第1外筒30および第2外筒31内にヒータ素子40を圧入したが、これらの工程の順序は逆であってもよい。すなわち、リング60の後端側に中軸50を圧入する工程を、第1外筒30および第2外筒31内にヒータ素子40を圧入する工程に先だって行なってもよい。
【0046】
次に、上記したヒータ素子40、中軸50およびリング60を備える中間部材に対して、さらに、伝達スリーブ32、ダイヤフラム33、センサ固定部材34、および主体金具22を組み付ける。ここでは、伝達スリーブ32、ダイヤフラム33、およびセンサ固定部材34を所定の箇所で溶接し、内側に配置される伝達スリーブ32を軸線O方向に貫通する貫通孔内に、上記ヒータ素子40等を備える中間部材を配置する。さらに、センサ固定部材34の外周側に主体金具22を配置する(
図2参照)。
【0047】
その後、センサ固定部材34の先端部のフランジ部36と主体金具22の先端とを溶接すると共に、ヒータ素子40(具体的には第1外筒30)と伝達スリーブ32の先端部とを溶接する。また、連結部材70の後端部とセンサ固定部材34の先端部の間、および、連結部材70の先端部とヒータ素子40(具体的には第2外筒31の後端部)の間を溶接する。また、キャップ部24をヒータ素子40の先端側から嵌め込み、さらにセンサ固定部材34の先端部に圧入し、センサ固定部材34のフランジ部36とキャップ部24とを溶接する(
図2参照)。その後、主体金具22の後端側に保護筒72を取り付けると共に、中軸50と端子金具73とを接続して、グロープラグ10を完成する。
【0048】
以上のように構成された本実施形態のグロープラグ10によれば、中軸50の先端部の外径がリング60の後端部の内径よりも小さく形成されているため、中軸50の先端をリング60内に嵌め込んでも、リング60が変形せず、径方向外側に広がらない。そのため、リング60と、リング60の外側に配置されて空間によってリング60と絶縁されている金属製筒部材(具体的には伝達スリーブ32)との間の短絡を抑えることができる。
【0049】
また、本実施形態では、リング60の最後端にレーザを照射することにより溶接を行なっており、中軸50の外壁において、リング60の後端からさらに後端側に広がるように溶接部65が形成されている。そのため、溶接部65の径方向外側への広がりを抑制し、溶接部65と伝達スリーブ32との間の短絡を抑えることができる。特に、本実施形態では、外表面が凹状の曲面となるように溶接部65を形成しているため、溶接部65の径方向外側への広がりを抑制する効果を高め、溶接部65を領域Z内に容易に収めることができる。なお、溶接部65が領域Z内からはみ出す場合であっても、中軸50の外径をリング60の内径よりも小さくし、リング60の最後端からさらに後端側に広がるように溶接部65を設けることで、リング60あるいは溶接部65と伝達スリーブ32との間の短絡を抑える効果を得ることは可能である。
【0050】
ここで、本実施形態では、中軸50の先端部の外径がリング60の後端部の内径よりも小さく形成されると共に、溶接部65は、リング60の最後端の少なくとも一部が溶融することにより形成されている。そのため、リング60の最後端で溶接を行なうときには、溶融した金属が、中軸50とリング60との間に入り込み易くなり、溶融した金属が中軸50とリング60との間に入り込んだ場合には、入り込んだ溶融金属が溶接部65の一部を形成する。そのため、溶接部65の径方向外側への広がりを抑制し、溶接部65と伝達スリーブ32との間の短絡を抑制する効果をさらに高めることができる。
【0051】
また、本実施形態では、中軸50の先端部に凹部形状52を設けているため、中軸50の先端部とヒータ素子40の後端部とを接触させても、第2の電位側の端部43と中軸50との間の絶縁性を確保することができる。そのため、第2の電位側の端部43と中軸50との間の絶縁性を確保するために、リング60内への中軸50の嵌め込み位置を制御する必要がない。したがって、中軸50の先端部の外径をリング60の後端部の内径よりも小さく形成しているにもかかわらずリング60内への中軸50の嵌め込みの動作の煩雑化を抑えることができる。また、第2の電位側の端部43と中軸50との間の絶縁性を確保するために、リング60内への中軸50の嵌め込み位置を定めるための特別な構造を設ける必要がない。
【0052】
なお、本実施形態のグロープラグ10は圧力センサを備えているため、上記のように中軸50および溶接部65の径方向外側への広がりを抑制することにより伝達スリーブ32との間の短絡を防止する効果を、特に顕著に得ることができる。具体的には、圧力センサを備えるグロープラグでは、伝達スリーブ32などの圧力検出に係る部材が配置されることにより、主体金具22内に配置される部品点数が増加する。グロープラグにおいて大型化を抑制するためには、リング60と、リング60の外側に配置される金属製筒部材(伝達スリーブ32)との間の距離をより短くすることが望ましいが、配置される部品点数が多いほど、上記距離を短くすることは困難になる。そのため、圧力センサを備えるグロープラグでは、本発明を適用して、リングおよび溶接部の径方向外側への広がりを抑えることにより、部品点数が増加するにもかかわらずグロープラグのさらなる小型化が可能になるという顕著な効果が得られる。例えば、圧力センサを備えるグロープラグ10のねじ部23(
図1参照)のねじ径をM10以下とすることが可能である。さらに、上記ねじ径をM8以下とすることも可能である。
【0053】
B.第2の実施形態:
図5は、第2の実施形態のグロープラグ110の概略構成を表わす断面模式図である。第2の実施形態において、第1の実施形態と共通する部分には同じ参照番号を付して詳しい説明は省略する。第2の実施形態のグロープラグ110は、中軸50に代えて中軸150を備え、ヒータ素子40に代えてヒータ素子140を備えること以外は、第1の実施形態のグロープラグ10と同様の構成を有している。
図5では、
図3と同様にして、ヒータ素子140の後端部と中軸150の先端部とが接する部位を含む領域のみを拡大して示している。
【0054】
グロープラグ110では、中軸150の先端部には軸線O方向に垂直な平坦面が形成されており、ヒータ素子140の後端部には凹部形状147が形成されている。このような凹部形状147は、例えば、第1の実施形態のヒータ素子40と同様に後端部が平坦な素子を作製した後に、その後端部を研磨することにより形成することができる。ヒータ素子140では、凹部形状147の内壁面において第2の電位側の端部43が露出しており、これにより、第2の電位側の端部43と中軸150とが絶縁されている。
【0055】
図6は、第2の実施形態の第1の変形例のグロープラグ210の概略構成を表わす断面模式図である。
図6において、第1の実施形態と共通する部分には同じ参照番号を付して詳しい説明は省略する。また、
図6では、
図3と同様の領域のみを拡大して示している。グロープラグ210は、中軸50に代えて中軸250を備えている。
【0056】
グロープラグ210では、中軸250の先端部には先端側に突出する凸部形状256が形成されている。このような凸部形状256は、例えば、中軸250となる金属製の棒状部材の先端部を切削加工することにより形成すればよい。あるいは、鍛造によって、凸部形状256を有する中軸250を作製することとしてもよい。中軸250は、凸部形状256の最先端においてヒータ素子40の後端部に接しており、リング60内では、中軸250の先端部の外壁とリング60の内壁とヒータ素子40の後端面との間に、空間152が形成される。グロープラグ210では、凸部形状256におけるヒータ素子40の後端面に接する部分の外周と、ヒータ素子40の後端面で露出する第2の電位側の端部(マイナス側端部)43とは、互いに離間しており、これにより、第2の電位側の端部43と中軸250とが絶縁されている。
【0057】
図7は、第2の実施形態の第2の変形例のグロープラグ310の概略構成を表わす断面模式図である。
図7において、第1の実施形態と共通する部分には同じ参照番号を付して詳しい説明は省略する。また、
図7では、
図3と同様の領域のみを拡大して示している。グロープラグ310は、中軸50に代えて中軸150を備え、ヒータ素子40に代えてヒータ素子340を備えている。
【0058】
ヒータ素子340の後端部には、横断面の中央部近傍が最も後端側に突出している凸部形状348が形成されている。このような凸部形状348は、例えば、第1の実施形態のヒータ素子40と同様に後端部が平坦な素子を作製した後に、その後端部を研磨することにより形成することができる。ヒータ素子340は、凸部形状348の最後端において中軸150の先端部に接しており、リング60内では、中軸250の先端面とリング60の内壁とヒータ素子40の後端部の外壁との間に、空間347が形成される。グロープラグ310では、凸部形状348の表面において第2の電位側の端部43が露出しており、これにより、第2の電位側の端部43と中軸150とが絶縁されている。
【0059】
第1の実施形態では、中軸50の先端部に凹部形状52を形成して第2の電位側の端部43と中軸50とを絶縁させたが、第2の実施形態および第2の実施形態の変形例で示すように、異なる構成としても良い。中軸の先端部とヒータ素子の後端部の少なくとも一方に、凹部形状または凸部形状を設けることにより、第2の電位側の端部(マイナス側端部)43と中軸とが離間していればよい。これにより、中軸の先端部の外径をリング60の内径よりも小さく形成して、中軸の先端部とヒータ素子の後端部とをリング内で接触させても、第2の電位側の端部43と中軸との絶縁性を確保することができる。このとき、リング60の最後端において、径方向外側へのはみ出しを抑えた溶接部65を設けることにより、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0060】
C.第3の実施形態:
図8は、第3の実施形態のグロープラグ410の概略構成を表わす断面模式図である。第3の実施形態において、第1の実施形態と共通する部分には同じ参照番号を付して詳しい説明は省略する。第3の実施形態のグロープラグ410は、中軸50に代えて中軸450を備えること以外は、第1の実施形態のグロープラグ10と同様の構成を有している。
図8では、
図3と同様の領域のみを拡大して示している。
【0061】
グロープラグ410では、中軸450の先端部近傍の外壁に、後端側に向かって急激に外径が拡大する鍔状の段差部454が形成されている。中軸450は、この段差部454においてリング60の最後端と接している。このように中軸450には段差部454が設けられているが、リング60の最後端が中軸450に接する部位(
図8において矢印αで示す)では、リング60の最後端は、段差部454で拡径する中軸450よりも大きい外径を有している。そして、リング60の最後端には、第1の実施形態と同様に径方向外側へのはみ出しが抑えられた(領域Z内に収まる)溶接部65が形成されている。
【0062】
ここで、第3の実施形態においても、中軸450の先端部の外径はリング60の内径よりも小さく形成されている。また、中軸450の先端部には軸線O方向に垂直な平坦面が形成されているが、第3の実施形態では、中軸450の先端面と、ヒータ素子40の後端部との間には、空間452が形成されている。このように、中軸450の先端面とヒータ素子40の後端部とを離間させることにより、第2の電位側の端部43と中軸450とを絶縁している。なお、既述した段差部454は、中軸450の先端面とヒータ素子40の後端部との間に空間452が形成されることになる位置に予め形成されている。このような構成としても、中軸の先端部の外径をリング60の内径よりも小さく形成してリング60の径方向外側への変形を抑えると共に、リング60の最後端において径方向外側へのはみ出しを抑えた溶接部65を設けることにより、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0063】
D.第4の実施形態:
図9は、第4の実施形態のグロープラグ510の概略構成を表わす断面模式図である。第4の実施形態において、第1の実施形態と共通する部分には同じ参照番号を付して詳しい説明は省略する。第4の実施形態のグロープラグ510は、第1の実施形態と同様に、ヒータ素子40、中軸50、およびリング60を備えており、中軸50の側面上において、リング60の最後端から後端側へと広がる溶接部65が形成されている。ただし、グロープラグ510は、グロープラグ10とは異なり、圧力センサを備えていない。また、グロープラグ510は、第1の実施形態と同様の主体金具22を備えると共に、第1の実施形態におけるキャップ部24および第2外筒31に代えて外筒530を備えている。上記したように、グロープラグ510は圧力センサを有していないため、第4の実施形態では、主体金具22の軸孔21の内壁面と中軸50およびリング60との間が、空間によって絶縁されている。
【0064】
外筒530は、軸線Oに沿って延びる略円筒状の金属製部材である。外筒530の内部には、軸線Oに沿って外筒530を貫通する軸孔531が形成されている。軸孔531の内径は、ヒータ素子40の外径と同等、あるいはヒータ素子40の外径に比べて若干小さく形成されており、軸孔531内にヒータ素子40が嵌め込まれる。外筒530の後端部は、主体金具22の軸孔21の先端部に嵌め込まれ、主体金具22の先端において、主体金具22と外筒530とが溶接される。
【0065】
グロープラグ510では、中軸50の後端部において、金属製の端子金具73が加締め固定されている。また、主体金具22の後端部には、主体金具22の軸孔21の内壁と中軸50の間、および、主体金具22の後端と端子金具73の間に介在するように、円筒状の絶縁部材576が配置されている。絶縁部材576は、中軸50を主体金具22内で位置決めすることによって、中軸50と主体金具22との間を電気的に絶縁する空隙を形成すると共に、端子金具73と主体金具22との間を電気的に絶縁する。また、主体金具22の軸孔21の内壁と中軸50の間において、絶縁部材576よりも先端側には、円筒状の封止部材575が配置されている。
【0066】
以上のように構成されたグロープラグ510では、端子金具73から電力が供給されると、中軸50、リング60および第1の電位側の接続端子46を通じて導電部42に電力が供給され、ヒータ素子40が発熱する。このとき、導電部42の第2の電位側の接続端子45は、外筒530、主体金具22、および内燃機関のシリンダヘッドを通じて接地される。
【0067】
このような構成としても、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。なお、圧力センサが無い場合には、伝達スリーブ32およびセンサ固定部材34等の構造を有しないため、圧力センサを設ける場合よりもグロープラグを径方向に小型化することが容易となる。そのため、本発明を適用して、リング60あるいは溶接部65と、リング60の外側に配置された金属製筒部材(第4の実施形態では主体金具22)との間の短絡を抑えることで、さらなる径方向の小型化が可能になる。例えば、主体金具22のねじ部23のねじ径をM8以下にしても、リング60あるいは溶接部65と主体金具22との間の短絡を効果的に抑制することができる。
【0068】
E.変形例:
・変形例1(導電部42の端部の態様の変形):
上記各実施形態では、ヒータ素子40の後端部において、導電部42の第1の電位側の端部44および第2の電位側の端部43が露出しており、双方の端部が中軸50から離間することとしたが、異なる構成としてもよい。例えば、第1の電位側の端部(プラス側端部)44は、中軸50と接していても差し支えない。あるいは、導電部において、第1の電位側の端部44と第2の電位側の端部43の少なくとも一方が設けられず、導電部の後端部に露出しない構成としてもよい。このとき、少なくとも第2の電位側の端部(マイナス側端部)43が露出しない構成とする場合には、第2の電位側の端部43と中軸50の先端部とを離間させる必要が無い。ヒータ素子40における導電部42の引き回しの態様にかかわらず、リング60の最後端に溶接部65を形成することにより、各実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0069】
・変形例2(連結部材70の連結の態様の変形):
上記各実施形態では、連結部材70は、ヒータ素子40とハウジング20とを連結する際に、連結部材70とヒータ素子40との間に第2外筒31を介在させているが、異なる構成としてもよい。連結部材70とハウジング20との間に他の部材を介在させてもよく、あるいは、他の部材を介することなく、連結部材70によってヒータ素子40とハウジング20とを直接連結してもよい。
【0070】
・変形例3(伝達スリーブ32の接続の態様の変形):
上記各実施形態では、伝達スリーブ32は、ヒータ素子40と接続する際に、第1外筒30を介在させているが、ヒータ素子40と直接接続してもよい。伝達スリーブ32がヒータ素子40と直接接続する場合には、伝達スリーブ32が第2の電位側の接続端子(マイナス側接続端子)45と接するように接続すればよい。
【0071】
本発明は、上述の実施形態や実施例、変形例に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施形態、実施例、変形例中の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。