(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0023】
まず、本発明に係る熱処理装置の全体構成について概説する。
図1は、本発明に係る熱処理装置1の構成を示す縦断面図である。熱処理装置1は、基板として円板形状の半導体ウェハーWに対してフラッシュ光照射を行うことによってその半導体ウェハーWを加熱するフラッシュランプアニール装置である。処理対象となる半導体ウェハーWのサイズは特に限定されるものではないが、例えばφ300mmやφ450mmである。熱処理装置1に搬入される前の半導体ウェハーWには不純物が注入されており、熱処理装置1による加熱処理によって注入された不純物の活性化処理が実行される。なお、
図1および以降の各図においては、理解容易のため、必要に応じて各部の寸法や数を誇張または簡略化して描いている。
【0024】
熱処理装置1は、半導体ウェハーWを収容する略円筒形状のチャンバー6と、複数のフラッシュランプFLを内蔵するランプハウス5と、を備える。また、熱処理装置1は、チャンバー6およびランプハウス5に設けられた各動作機構を制御して半導体ウェハーWの熱処理を実行させる制御部3を備える。
【0025】
チャンバー6は、ランプハウス5の下方に設けられており、略円筒状の内壁を有するチャンバー側部63、および、チャンバー側部63の下部を覆うチャンバー底部62によって構成される。また、チャンバー側部63およびチャンバー底部62によって囲まれる空間が熱処理空間65として規定される。熱処理空間65の上方は上部開口60とされており、上部開口60にはチャンバー窓61が装着されて閉塞されている。
【0026】
チャンバー6の天井部を構成するチャンバー窓61は、石英により形成された円板形状部材であり、ランプハウス5から出射されたフラッシュ光を熱処理空間65に透過する石英窓として機能する。チャンバー6の本体を構成するチャンバー底部62およびチャンバー側部63は、例えば、ステンレススチール等の強度と耐熱性に優れた金属材料にて形成されている。また、チャンバー側部63の内側面の上部のガスリング631は、光照射による劣化に対してステンレススチールより優れた耐久性を有するアルミニウム(Al)合金等で形成されている。
【0027】
また、熱処理空間65の気密性を維持するために、チャンバー窓61とチャンバー側部63とはOリングによってシールされている。すなわち、チャンバー窓61の下面周縁部とチャンバー側部63との間にOリングを挟み込むとともに、アルミフレーム90をチャンバー窓61の上面周縁部に当接させ、そのアルミフレーム90をチャンバー側部63にネジ止めすることによって、チャンバー窓61をOリングに押し付けている。なお、アルミフレーム90によるチャンバー窓61の押圧についてはさらに後述する。
【0028】
チャンバー底部62には、保持部7を貫通して半導体ウェハーWをその下面(ランプハウス5からの光が照射される側とは反対側の面)から支持するための複数(本実施の形態では3本)の支持ピン70が立設されている。支持ピン70は、例えば石英により形成されており、チャンバー6の外部から固定されているため、容易に取り替えることができる。
【0029】
チャンバー側部63は、半導体ウェハーWの搬入および搬出を行うための搬送開口部66を有し、搬送開口部66は、軸662を中心に回動するゲートバルブ185により開閉可能とされる。チャンバー側部63における搬送開口部66とは反対側の部位には熱処理空間65に処理ガス(例えば、窒素(N
2)ガスやヘリウム(He)ガス、アルゴン(Ar)ガス等の不活性ガス、あるいは、酸素(O
2)ガス等)を導入する導入路81が形成され、その一端は弁82を介して図示省略の給気機構に接続され、他端はチャンバー側部63の内部に形成されるガス導入バッファ83に接続される。また、搬送開口部66には熱処理空間65内の気体を排出する排出路86が形成され、弁87を介して図示省略の排気機構に接続される。
【0030】
図2は、チャンバー6をガス導入バッファ83の位置にて水平面で切断した断面図である。
図2に示すように、ガス導入バッファ83は、
図1に示す搬送開口部66の反対側においてチャンバー側部63の内周の約1/3に亘って形成されており、導入路81を介してガス導入バッファ83に導かれた処理ガスは、複数のガス供給孔84から熱処理空間65内へと供給される。
【0031】
また、熱処理装置1は、チャンバー6の内部において半導体ウェハーWを水平姿勢にて保持しつつフラッシュ光照射前にその保持する半導体ウェハーWの予備加熱を行う略円板状の保持部7と、保持部7をチャンバー6の底面であるチャンバー底部62に対して昇降させる保持部昇降機構4と、を備える。
図1に示す保持部昇降機構4は、略円筒状のシャフト41、移動板42、ガイド部材43(本実施の形態ではシャフト41の周りに3本配置される)、固定板44、ボールネジ45、ナット46およびモータ40を有する。チャンバー6の下部であるチャンバー底部62には保持部7よりも小さい直径を有する略円形の下部開口64が形成されており、ステンレススチール製のシャフト41は、下部開口64を挿通して、保持部7(厳密には保持部7のホットプレート71)の下面に接続されて保持部7を支持する。
【0032】
移動板42にはボールネジ45と螺合するナット46が固定されている。また、移動板42は、チャンバー底部62に固定されて下方へと伸びるガイド部材43により摺動自在に案内されて上下方向に移動可能とされる。また、移動板42は、シャフト41を介して保持部7に連結される。
【0033】
モータ40は、ガイド部材43の下端部に取り付けられる固定板44に設置され、タイミングベルト401を介してボールネジ45に接続される。保持部昇降機構4により保持部7が昇降する際には、駆動部であるモータ40が制御部3の制御によりボールネジ45を回転し、ナット46が固定された移動板42がガイド部材43に沿って鉛直方向に移動する。この結果、移動板42に固定されたシャフト41が鉛直方向に沿って移動し、シャフト41に接続された保持部7が
図1に示す半導体ウェハーWの受渡位置と
図5に示す半導体ウェハーWの処理位置との間で滑らかに昇降する。
【0034】
移動板42の上面には略半円筒状(円筒を長手方向に沿って半分に切断した形状)のメカストッパ451がボールネジ45に沿うように立設されており、仮に何らかの異常により移動板42が所定の上昇限界を超えて上昇しようとしても、メカストッパ451の上端がボールネジ45の端部に設けられた端板452に突き当たることによって移動板42の異常上昇が防止される。これにより、保持部7がチャンバー窓61の下方の所定位置以上に上昇することはなく、保持部7とチャンバー窓61との衝突が防止される。
【0035】
また、保持部昇降機構4は、チャンバー6の内部のメンテナンスを行う際に保持部7を手動にて昇降させる手動昇降部49を有する。手動昇降部49はハンドル491および回転軸492を有し、ハンドル491を介して回転軸492を回転することより、タイミングベルト495を介して回転軸492に接続されるボールネジ45を回転して保持部7の昇降を行うことができる。
【0036】
チャンバー底部62の下側には、シャフト41の周囲を囲み下方へと伸びる伸縮自在のベローズ47が設けられ、その上端はチャンバー底部62の下面に接続される。一方、ベローズ47の下端はベローズ下端板471に取り付けられている。べローズ下端板471は、鍔状部材411によってシャフト41にネジ止めされて取り付けられている。保持部昇降機構4により保持部7がチャンバー底部62に対して上昇する際にはベローズ47が収縮され、下降する際にはべローズ47が伸張される。そして、保持部7が昇降する際にも、ベローズ47が伸縮することによって熱処理空間65内の気密状態が維持される。
【0037】
図3は、保持部7の構成を示す断面図である。保持部7は、半導体ウェハーWを予備加熱(いわゆるアシスト加熱)するホットプレート(加熱プレート)71、および、ホットプレート71の上面に設置されるサセプタ72を有する。保持部7の下面には、既述のように保持部7を昇降するシャフト41が接続される。サセプタ72は石英により形成され、その上面には半導体ウェハーWの位置ずれを防止するピン75が設けられる。サセプタ72は、その下面をホットプレート71の上面に面接触させてホットプレート71上に支持される。これにより、サセプタ72は、ホットプレート71からの熱エネルギーを拡散してサセプタ72上面に載置された半導体ウェハーWに伝達するとともに、メンテナンス時にはホットプレート71から取り外して洗浄可能とされる。
【0038】
ホットプレート71は、ステンレススチール製の上部プレート73および下部プレート74にて構成される。上部プレート73と下部プレート74との間には、ホットプレート71を加熱するニクロム線等の抵抗加熱線76が配設され、導電性のニッケル(Ni)ロウが充填されて封止されている。また、上部プレート73および下部プレート74の端部はロウ付けにより接着されている。
【0039】
図4は、ホットプレート71を示す平面図である。
図4に示すように、ホットプレート71は、保持される半導体ウェハーWと対向する領域の中央部に同心円状に配置される円板状のゾーン711および円環状のゾーン712、並びに、ゾーン712の周囲の略円環状の領域を周方向に4等分割した4つのゾーン713〜716を備え、各ゾーン間には若干の間隙が形成されている。また、ホットプレート71には、支持ピン70が挿通される3つの貫通孔77が、ゾーン711とゾーン712との隙間の周上に120°毎に設けられる。
【0040】
6つのゾーン711〜716のそれぞれには、相互に独立した抵抗加熱線76が周回するように配設されてヒータが個別に形成されており、各ゾーンに内蔵されたヒータにより各ゾーンが個別に加熱される。保持部7に保持された半導体ウェハーWは、6つのゾーン711〜716に内蔵されたヒータにより加熱される。また、ゾーン711〜716のそれぞれには、熱電対を用いて各ゾーンの温度を計測するセンサ710が設けられている。各センサ710は略円筒状のシャフト41の内部を通り制御部3に接続される。
【0041】
ホットプレート71が加熱される際には、センサ710により計測される6つのゾーン711〜716のそれぞれの温度が予め設定された所定の温度になるように、各ゾーンに配設された抵抗加熱線76への電力供給量が制御部3により制御される。制御部3による各ゾーンの温度制御はPID(Proportional,Integral,Derivative)制御により行われる。ホットプレート71では、半導体ウェハーWの熱処理(複数の半導体ウェハーWを連続的に処理する場合は、全ての半導体ウェハーWの熱処理)が終了するまでゾーン711〜716のそれぞれの温度が継続的に計測され、各ゾーンに配設された抵抗加熱線76への電力供給量が個別に制御されて、すなわち、各ゾーンに内蔵されたヒータの温度が個別に制御されて各ゾーンの温度が設定温度に維持される。なお、各ゾーンの設定温度は、基準となる温度から個別に設定されたオフセット値だけ変更することが可能とされる。
【0042】
6つのゾーン711〜716にそれぞれ配設される抵抗加熱線76は、シャフト41の内部を通る電力線を介して電力供給源(図示省略)に接続されている。電力供給源から各ゾーンに至る経路途中において、電力供給源からの電力線は、マグネシア(マグネシウム酸化物)等の絶縁体を充填したステンレスチューブの内部に互いに電気的に絶縁状態となるように配置される。なお、シャフト41の内部は大気開放されている。
【0043】
図1に戻り、ランプハウス5は、チャンバー6の上方に設けられている。ランプハウス5は、筐体51の内側に、複数本(本実施形態では30本)のキセノンフラッシュランプFLからなる光源と、その光源の上方を覆うように設けられたリフレクタ52と、を備えて構成される。また、ランプハウス5の筐体51の底部にはランプ光放射窓53が装着されている。ランプハウス5の床部を構成するランプ光放射窓53は、石英により形成された板状部材である。ランプハウス5がチャンバー6の上方に設置されることにより、ランプ光放射窓53がチャンバー窓61と相対向することとなる。ランプハウス5は、チャンバー6内にて保持部7に保持される半導体ウェハーWにランプ光放射窓53およびチャンバー窓61を介してフラッシュランプFLからフラッシュ光を照射することにより半導体ウェハーWを加熱する。
【0044】
複数のフラッシュランプFLは、それぞれが長尺の円筒形状を有する棒状ランプであり、それぞれの長手方向が保持部7に保持される半導体ウェハーWの主面に沿って(つまり水平方向に沿って)互いに平行となるように平面状に配列されている。よって、フラッシュランプFLの配列によって形成される平面も水平面である。複数のフラッシュランプFLの配列によって形成される平面の平面エリアは少なくとも保持部7に保持される半導体ウェハーWよりも大きい。
【0045】
キセノンフラッシュランプFLは、その内部にキセノンガスが封入されその両端部にコンデンサーに接続された陽極および陰極が配設された棒状のガラス管(放電管)と、該ガラス管の外周面上に付設されたトリガー電極とを備える。キセノンガスは電気的には絶縁体であることから、コンデンサーに電荷が蓄積されていたとしても通常の状態ではガラス管内に電気は流れない。しかしながら、トリガー電極に高電圧を印加して絶縁を破壊した場合には、コンデンサーに蓄えられた電気がガラス管内に瞬時に流れ、そのときのキセノンの原子あるいは分子の励起によって光が放出される。このようなキセノンフラッシュランプFLにおいては、予めコンデンサーに蓄えられていた静電エネルギーが0.1ミリセカンドないし100ミリセカンドという極めて短い光パルスに変換されることから、連続点灯の光源に比べて極めて強い光を照射し得るという特徴を有する。すなわち、フラッシュランプFLは、1秒未満の極めて短い時間で瞬間的に発光するパルス発光ランプである。なお、フラッシュランプFLの発光時間は、フラッシュランプFLに電力供給を行うランプ電源のコイル定数によって調整することができる。
【0046】
また、リフレクタ52は、複数のフラッシュランプFLの上方にそれら全体を覆うように設けられている。リフレクタ52の基本的な機能は、複数のフラッシュランプFLから出射されたフラッシュ光を保持部7の側に反射するというものである。リフレクタ52はアルミニウム合金板にて形成されており、その表面(フラッシュランプFLに臨む側の面)はブラスト処理により粗面化加工が施されている。このような粗面化加工を施しているのは、リフレクタ52の表面が完全な鏡面であると、複数のフラッシュランプFLからの反射光の強度に規則パターンが生じて半導体ウェハーWの表面温度分布の均一性が低下するためである。
【0047】
また、制御部3は、熱処理装置1に設けられた上記の種々の動作機構を制御する。制御部3のハードウェアとしての構成は一般的なコンピュータと同様である。すなわち、制御部3は、各種演算処理を行うCPU、基本プログラムを記憶する読み出し専用のメモリであるROM、各種情報を記憶する読み書き自在のメモリであるRAMおよび制御用ソフトウェアやデータなどを記憶しておく磁気ディスクを備えている。制御部3のCPUが所定の処理プログラムを実行することによって熱処理装置1における処理が進行する。
【0048】
上記の構成以外にも熱処理装置1は、半導体ウェハーWの熱処理時にフラッシュランプFLおよびホットプレート71から発生する熱エネルギーによるチャンバー6およびランプハウス5の過剰な温度上昇を防止するため、様々な冷却用の構造を備えている。例えば、チャンバー6のチャンバー側部63およびチャンバー底部62には水冷管(図示省略)が設けられている。また、ランプハウス5は、内部に気体流を形成して排熱するための気体供給管55および排気管56が設けられて空冷構造とされている(
図1,5参照)。また、チャンバー窓61とランプ光放射窓53との間隙にも空気が供給され、ランプハウス5およびチャンバー窓61を冷却する。
【0049】
次に、アルミフレーム90によるチャンバー窓61の押圧について説明を続ける。
図6は、チャンバー6の上端部近傍を拡大した部分断面図である。チャンバー6のチャンバー側部63の上面には円環状に溝67が形設されている。その溝67に円環状のOリング68(第1のOリング)が嵌め込まれる。Oリング68は、例えば耐熱性および耐薬品性に優れたフッ素ゴム(FKM)にて形成されており、その最高仕様温度は約300℃である。Oリング68の直径(溝67の直径と等しい)は半導体ウェハーWの直径よりも小さい。また、Oリング68の断面(周方向に垂直な面で切断した断面)の直径は溝67の深さよりも大きい。
【0050】
石英の円板形状のチャンバー窓61は、Oリング68を挟み込んでチャンバー6に装着される。具体的には、チャンバー窓61の下面の周縁部がOリング68に接触するようにチャンバー窓61がチャンバー側部63に装着される。
【0051】
Oリング68を挟み込んでチャンバー6に装着されたチャンバー窓61の上側からアルミフレーム90によって押さえつける。
図7は、チャンバー窓61を押さえつけるアルミフレーム90の平面図である。アルミフレーム90は、アルミニウム(Al)にて形成された円環形状の部材である。
図6に示すように、アルミフレーム90は、固定部91および鍔部92を備える。本実施形態の鍔部92は、2箇所で屈曲する断面形状を有しており、先端部93、中間部94および基端部95を備える。鍔部92は、中間部94がチャンバー窓61側にせり出すように屈曲している。
【0052】
鍔部92の中間部94をチャンバー窓61の上面に当接させつつ、ネジ96によって固定部91をチャンバー側部63に締結することにより、アルミフレーム90をチャンバー6に固定するとともに、鍔部92がチャンバー窓61を下側に押圧する。
図7に示すように、アルミフレーム90は、周方向に沿って30°毎に配置された12本のネジ96によってチャンバー側部63に締結される。ネジ96としては、耐熱性および耐摩耗性の向上を目的として、ステンレス製のネジにチタンナイトライド(TiN)をコーティングしたものを用いている。この場合、締結後のネジ96の緩みを防止するため、TiNコーティングの剥がれていないネジ96を用いるのが望ましい。また、ネジ96を締結するときの締め付けトルクは150cNm〜300cNmに管理されている。さらに、ネジ96の締結時には、スプリングワッシャー97を介挿している(
図6)。これにより、ネジ96が緩むのを確実に防止することができる。
【0053】
等間隔で配置された12本のネジ96によってアルミフレーム90をチャンバー側部63に締結することにより、鍔部92が均等な圧力にてチャンバー窓61の下面をチャンバー6に対して押圧する。チャンバー窓61の下面とチャンバー6のチャンバー側部63との間にはOリング68が挟み込まれているため、アルミフレーム90の鍔部92がチャンバー窓61を下側に押圧するとOリング68が変形して圧縮される。これにより、チャンバー窓61の下面周縁部とチャンバー側部63との間が密封されることとなる。アルミフレーム90をチャンバー6に締結するネジ96の締め付けトルクが150cNm〜300cNmと従来(25cNm)よりも顕著に強いため、チャンバー窓61とチャンバー6との間のシール性を高めることができる。なお、Oリング68を挟み込んでチャンバー窓61は12箇所でネジ96によってチャンバー側部63に締結されているため、締結後においてもチャンバー窓61の下面はチャンバー側部63には直接接触しない。
【0054】
また、
図6および
図7に明示するように、アルミフレーム90は、円環状の平面である中間部94によってチャンバー窓61の上面の周縁部に接触している。そして、アルミフレーム90の先端部93および基端部95はチャンバー窓61の上面に接触していない。
図6に示すように、アルミフレーム90の中間部94は、チャンバー窓61の上面の端縁部61aよりも内側にて周縁部に接触している。従って、チャンバー窓61の上面の端縁部61aには、アルミフレーム90の鍔部92は接触しておらず、当該端縁部61aは開放されている。なお、強い締め付けトルクによってネジ96を締結した場合には、鍔部92の基端部95が変形することもあるが、それでも鍔部92がチャンバー窓61の上面の端縁部61aに接触するには至らない。
【0055】
さらに、
図6に示すように、先端部93の内側先端、つまりチャンバー窓61の内側へと向かうアルミフレーム90の鍔部92の端部はチャンバー窓61の上面から隔離している。すなわち、鍔部92は、中間部94が先端部93および基端部95よりもチャンバー窓61側にせり出すように屈曲しているため、チャンバー窓61の上面の端縁部61aがアルミフレーム90に接触しないとともに、アルミフレーム90の鍔部92の内側端部もチャンバー窓61と接触していない。
【0056】
本実施形態の熱処理装置1においては、Oリング68に加えて、チャンバー窓61の測端面およびチャンバー6とアルミフレーム90との間に挟み込まれるOリング69(第2のOリング)を設けている。Oリング69もOリング68と同様に、例えばフッ素ゴム(FKM)にて形成されている。Oリング69の直径はOリング68の直径よりも大きい。
【0057】
アルミフレーム90の固定部91の内側には、円環形状の押さえ金具98が固設されている。押さえ金具98の断面形状はL字形状である。この押さえ金具98とチャンバー窓61の端面およびチャンバー側部63の上面との間にOリング69を挟み込んでネジ96によってアルミフレーム90を締結する。これにより、Oリング69が変形して圧縮され、Oリング69とチャンバー窓61の端面との間およびOリング69とチャンバー側部63の上面との間が密封される。
【0058】
次に、熱処理装置1における半導体ウェハーWの処理手順について説明する。ここで処理対象となる半導体ウェハーWはイオン注入法により不純物(イオン)が添加された半導体基板である。その不純物の活性化が熱処理装置1によるフラッシュ光照射加熱処理(フラッシュランプアニール)により実行される。以下に説明する熱処理装置1の処理手順は、制御部3が熱処理装置1の各動作機構を制御することにより進行する。
【0059】
まず、保持部7が
図5に示す処理位置から
図1に示す受渡位置に下降する。「処理位置」とは、フラッシュランプFLから半導体ウェハーWに光照射が行われるときの保持部7の位置であり、
図5に示す保持部7のチャンバー6内における位置である。また、「受渡位置」とは、チャンバー6に半導体ウェハーWの搬出入が行われるときの保持部7の位置であり、
図1に示す保持部7のチャンバー6内における位置である。熱処理装置1における保持部7の基準位置は処理位置であり、処理前にあっては保持部7は処理位置に位置しており、これが処理開始に際して受渡位置に下降するのである。
図1に示すように、保持部7が受渡位置にまで下降するとチャンバー底部62に近接し、支持ピン70の先端が保持部7を貫通して保持部7の上方に突出する。
【0060】
次に、保持部7が受渡位置に下降した後、弁82が開かれてチャンバー6の熱処理空間65内に不活性ガス(本実施形態では、窒素ガス)が供給される。それと同時に、弁87が開かれて熱処理空間65内の気体が排気される。チャンバー6に供給された窒素ガスは、熱処理空間65においてガス導入バッファ83から
図2中に示す矢印AR4の方向へと流れ、排出路86および弁87を介して排気機構により排気される。また、チャンバー6に供給された窒素ガスの一部は、べローズ47の内側に設けられる排出口(図示省略)からも排出される。
【0061】
続いて、ゲートバルブ185が開いて搬送開口部66が開放され、装置外部の搬送ロボットにより搬送開口部66を介して半導体ウェハーWがチャンバー6内に搬入され、複数の支持ピン70上に載置される。半導体ウェハーWがチャンバー6内に搬入されると、ゲートバルブ185により搬送開口部66が閉鎖される。そして、保持部昇降機構4により保持部7が受渡位置からチャンバー窓61に近接した処理位置にまで上昇する。保持部7が受渡位置から上昇する過程において、半導体ウェハーWは支持ピン70から保持部7のサセプタ72へと渡され、サセプタ72の上面に保持される。保持部7が処理位置にまで上昇するとサセプタ72に保持された半導体ウェハーWも処理位置に保持されることとなる。
【0062】
ホットプレート71の6つのゾーン711〜716のそれぞれは、各ゾーンの内部(上部プレート73と下部プレート74との間)に個別に内蔵されたヒータ(抵抗加熱線76)により所定の温度まで加熱されている。保持部7が処理位置まで上昇して半導体ウェハーWが保持部7と接触することにより、その半導体ウェハーWはホットプレート71に内蔵されたヒータによって予備加熱されて温度が次第に上昇する。
【0063】
この処理位置にて約60秒間の予備加熱が行われ、半導体ウェハーWの温度が予め設定された予備加熱温度T1まで上昇する。予備加熱温度T1は、半導体ウェハーWに添加された不純物が熱により拡散する恐れのない、200℃ないし600℃程度、好ましくは350℃ないし550℃程度とされる。また、保持部7とチャンバー窓61との間の距離は、保持部昇降機構4のモータ40の回転量を制御することにより任意に調整することが可能とされている。
【0064】
約60秒間の予備加熱時間が経過した後、保持部7が処理位置に位置したまま制御部3の制御によりランプハウス5のフラッシュランプFLから半導体ウェハーWへ向けてフラッシュ光が照射される。このとき、フラッシュランプFLから放射されるフラッシュ光の一部は直接にチャンバー6内の保持部7へと向かい、他の一部は一旦リフレクタ52により反射されてからチャンバー6内へと向かい、これらのフラッシュ光の照射により半導体ウェハーWのフラッシュ加熱が行われる。フラッシュ加熱は、フラッシュランプFLからのフラッシュ光照射により行われるため、半導体ウェハーWの表面温度を短時間で上昇することができる。
【0065】
すなわち、ランプハウス5のフラッシュランプFLから照射されるフラッシュ光は、予め蓄えられていた静電エネルギーが極めて短い光パルスに変換された、照射時間が0.1ミリセカンド以上100ミリセカンド以下程度の極めて短く強い閃光である。そして、フラッシュランプFLからの閃光照射によりフラッシュ加熱される半導体ウェハーWの表面温度は、瞬間的に処理温度T2まで上昇し、半導体ウェハーWに注入された不純物が活性化された後、表面温度が急速に下降する。このように、熱処理装置1では、半導体ウェハーWの表面温度を極めて短時間で昇降することができるため、半導体ウェハーWに注入された不純物の熱による拡散を抑制しつつ不純物の活性化を行うことができる。なお、不純物の活性化に必要な時間はその熱拡散に必要な時間に比較して極めて短いため、0.1ミリセカンドないし100ミリセカンド程度の拡散が生じない短時間であっても活性化は完了する。
【0066】
また、フラッシュ加熱の前に保持部7により半導体ウェハーWを予備加熱しておくことにより、フラッシュランプFLからのフラッシュ光照射によって半導体ウェハーWの表面温度を処理温度T2まで速やかに上昇させることができる。
【0067】
フラッシュ加熱が終了し、処理位置における約10秒間の待機の後、保持部7が保持部昇降機構4により再び
図1に示す受渡位置まで下降し、半導体ウェハーWが保持部7から支持ピン70へと渡される。続いて、ゲートバルブ185により閉鎖されていた搬送開口部66が開放され、支持ピン70上に載置された半導体ウェハーWは装置外部の搬送ロボットにより搬出され、熱処理装置1における半導体ウェハーWのフラッシュ加熱処理が完了する。
【0068】
本実施形態においては、Oリング68を挟み込んでチャンバー6に装着されたチャンバー窓61の上側からアルミフレーム90によって押さえつけているのであるが、チャンバー窓61の上面の端縁部61aには、アルミフレーム90の鍔部92が接触しておらず、当該端縁部61aは開放されている。このため、アルミフレーム90をチャンバー6に締結する締め付けトルクを150cNm〜300cNmと従来より顕著に強くしても、チャンバー窓61の端縁部61aに欠損が生じることは無い。従って、端縁部61aの欠損を起点としたチャンバー窓61全体の割れも防止することができる。
【0069】
その一方、アルミフレーム90の鍔部92の中間部94が円環状の平面にてチャンバー窓61の端縁部61aよりも内側の上面周縁部に接触している。角部である端縁部61aに比較して、それよりも内側の平坦な上面周縁部は鍔部92が接触したとしても欠損が生じにくい。すなわち、アルミフレーム90が石英のチャンバー窓61の端縁部61aよりも内側にて上面周縁部に接触することにより、アルミフレーム90をチャンバー6に締結する締め付けトルクを強くしても石英のチャンバー窓61の欠損を防止することができるのである。
【0070】
逆の視点では、石英のチャンバー窓61に欠損が生じるおそれが少ないため、アルミフレーム90をチャンバー6に締結する締め付けトルクを従来よりも顕著に強くすることができる。その結果、Oリング68によるチャンバー窓61とチャンバー6との間のシール性を高めて外部環境からチャンバー6内に漏れる雰囲気を最小限に抑制してフラッシュ加熱時に半導体ウェハーWに付着するパーティクル数を低減することができる。
【0071】
また、アルミフレーム90の鍔部92の端部はチャンバー窓61の上面に接触することによって当該上面に傷を付けるおそれもあるが、本実施形態においては、チャンバー窓61の内側へと向かうアルミフレーム90の鍔部92の端部もチャンバー窓61の上面から隔離している。このため、鍔部92の端部が石英のチャンバー窓61に欠損を生じさせるおそれもない。よって、石英のチャンバー窓61の欠損をより確実に防止することができる。
【0072】
また、本実施形態の熱処理装置1においては、Oリング68に加えて、チャンバー窓61の端面およびチャンバー6とアルミフレーム90との間に挟み込まれるOリング69を設けている。このOリング69は、アルミフレーム90がチャンバー6に締結されることによって変形し、Oリング69とチャンバー窓61の端面との間およびOリング69とチャンバー側部63の上面との間をシールする。
【0073】
Oリング68のみを設けている場合における、チャンバー6の主たるリーク経路は、アルミフレーム90の固定部91とチャンバー側部63の上面との間の隙間からチャンバー窓61とチャンバー側部63との間の隙間に至る経路である(
図6参照)。この経路を通ってパーティクルを含む外部雰囲気が微量にチャンバー6内の熱処理空間65に流入する。チャンバー窓61とチャンバー側部63との間はOリング68によってシールされているものの、近年要求されている厳しいパーティクル条件には必ずしも十分でないこともあった。本実施形態においては、Oリング68に加えて、Oリング69を設けてOリング69とチャンバー側部63の上面との間をシールしている。すなわち、上記のリーク経路は、Oリング68およびOリング69によって二重にシールされているのである。これにより、リーク経路が確実にシールされることとなり、パーティクルを含む外部雰囲気のチャンバー6内への流入を確実に防止することができる。その結果、フラッシュ加熱時に半導体ウェハーWに付着するパーティクル数を低減して近年要求されている厳しいパーティクル条件をも満足させることができる。
【0074】
また、本実施形態のように、アルミフレーム90の鍔部92の端部をチャンバー窓61の上面から隔離した場合には、鍔部92とチャンバー窓61の上面との間から外部雰囲気が流入することも考えられる。この経路に対しては、Oリング69によってOリング69とチャンバー窓61の測端面との間をシールしている。これにより、鍔部92とチャンバー窓61の上面との間から外部雰囲気が流入したとしても、その外部雰囲気がOリング69とチャンバー窓61の端面との間のシール部分を超えて流入することはなく、パーティクルを含む外部雰囲気のチャンバー6内への流入をより確実に防止することができる。
【0075】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、この発明はその趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば、アルミフレーム90の形状は、
図8または
図9に示すようなものであっても良い。
【0076】
図8に示すアルミフレーム190は、固定部191および鍔部192を備える。固定部191は上記実施形態のアルミフレーム90の固定部91と同様のものである。鍔部192は、チャンバー窓61の側にせり出すように湾曲した断面曲線形状を有している。そして、
図8のアルミフレーム190は、湾曲する鍔部192断面の曲線形状の一点にてチャンバー窓61の上面の周縁部に接触する。よって、
図8のアルミフレーム190は、円環状の曲線(円)によってチャンバー窓61の上面の周縁部に接触することとなる。このような形状のアルミフレーム190であっても、鍔部192がチャンバー窓61を押圧することによって上記実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0077】
また、
図9に示すアルミフレーム290は、固定部291および鍔部292を備える。固定部291は上記実施形態のアルミフレーム90の固定部91と同様のものである。
図9に示すように、鍔部292は断面W字形状を有している。そして、
図9のアルミフレーム290は、鍔部192断面のW字形状の下端の二点にてチャンバー窓61の上面の周縁部に接触する。よって、
図9のアルミフレーム290は、径の異なる2本の円環状の曲線(円)によってチャンバー窓61の上面の周縁部に接触することとなる。このような形状のアルミフレーム290であっても、鍔部292がチャンバー窓61を押圧することによって上記実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0078】
また、上記実施形態においては、断面L字形状の押さえ金具98によってOリング69を押圧していたが、アルミフレーム90の締結によって押さえ金具98からOリング69に作用する力は主として鉛直方向のものなので、水平方向の力が十分でない場合には、固定部91を水平方向に貫通するネジによって押さえ金具98を水平方向に押圧するようにしても良い。なお、このような水平方向のネジを設ける場合、アルミフレーム90をチャンバー6に締結するネジ96と緩衝しない位置に設けるのは勿論である。また、押さえ金具98の全周にわたって均等に押圧することができるように、水平方向のネジを等間隔で複数設けるのが好ましい。
【0079】
また、アルミフレーム90をチャンバー6に締結するネジ96の本数は12本に限定されるものではなく、適宜の本数とすることができる。もっとも、アルミフレーム90が均等な圧力にてチャンバー窓61を押圧するためには、ネジ96は6本以上であることが好ましい。
【0080】
また、アルミフレーム90に代えて、ステンレススチール等の他の材質のフレーム部材を用いるようにしても良い。
【0081】
また、上記実施形態においては、保持部7のホットプレート71によって半導体ウェハーWを予備加熱するようにしていたが、これに代えてチャンバー6の下方にハロゲンランプを設け、そのハロゲンランプからの光照射によって半導体ウェハーWを予備加熱するようにしても良い。この場合、チャンバー6の下側にもハロゲンランプからの光を透過するための石英窓が設けられることとなるため、上記実施形態と同様の技術を適用することによって当該石英窓の欠損を防止することができる。
【0082】
また、上記実施形態においては、ランプハウス5に30本のフラッシュランプFLを備えるようにしていたが、これに限定されるものではなく、フラッシュランプFLの本数は任意の数とすることができる。また、フラッシュランプFLはキセノンフラッシュランプに限定されるものではなく、クリプトンフラッシュランプであっても良い。
【0083】
また、本発明に係る熱処理装置によって処理対象となる基板は半導体ウェハーに限定されるものではなく、液晶表示装置などのフラットパネルディスプレイに用いるガラス基板や太陽電池用の基板であっても良い。また、本発明に係る技術は、金属とシリコンとの接合、或いはポリシリコンの結晶化に適用するようにしても良い。