(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特開2010−5751号公報に記載のハンドルの場合、工具ビットの長軸方向に関する振動の抑制には有効なものの、長軸方向と交差する上下方向の振動の抑制には有効であると言い難いものであり、この点でなお改良の余地がある。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、ハンドルの防振に関して改良された往復動式作業工具を提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を達成するため、本発明に係る往復動式作業工具の好ましい形態によれば、先端工具が長軸方向に駆動して被加工材に加工作業を行う往復動式作業工具が構成される。往復動式作業工具は、先端工具を駆動する駆動機構と、駆動機構を収容する工具本体と、工具本体に連接されるハンドルと、ハンドルと工具本体を連結する第1連結部と第2連結部と、を有する。先端工具の長軸方向を前後方向として、当該前後方向に交差する方向を上下方向、前後方向と上下方向に交差する方向を左右方向と定義したときに、ハンドルは、上下方向に延在するように配置される。そして、第1連結部は、弾性部材を有し、上下方向におけるハンドルの一端側と工具本体を弾性部材を介して連結するように構成され、第2連結部は、左右方向に延在する軸部を有し、上下方向におけるハンドルの他端側と工具本体を、軸部が所定の軸周りに相対回動可能に連結するように構成されており、ハンドルが工具本体に対して軸部を中心として回動することで、弾性部材が工具本体に生じる振動の当該ハンドルへの伝達を抑制するように構成されている。なお、本発明における「軸部」は、円筒状の長尺部材は勿論のこと、凹状球面と当該凹状球面に摺動自在に係合する凸状球面で構成されて様々な方向に回動可能な球面構造を包含し、球面構造については、一部に球面を備える態様、全体が球面で構成される態様のいずれでもよい。
【0007】
また、本発明における「往復動式作業工具」とは、典型的には先端工具を長軸方向に打撃動作させて被加工材にハンマ作業を遂行するハンマがこれに該当するが、ハンマに限らず先端工具を打撃動作及び回転動作させて被加工材にハンマドリル作業を遂行するハンマドリルのほか、例えばブレードに往復直線運動を行わせて被加工材の切断作業を行うレシプロソーやジグソー等の切断作業工具等を広く包含する。また、「弾性部材」とは、バネ、ゴムがこれに相当する。
【0008】
本発明によれば、工具本体に対してハンドルの他端側が軸部を中心として相対回動可能に連結された構成であり、軸部を中心とするハンドルの工具本体に対する回動は、前後方向成分と上下方向成分を含むことになる。これにより、工具本体に発生する上下方向の振動及び前後方向の振動のハンドルへの伝達を弾性部材により抑えることが可能となる。
【0009】
更に、工具本体は、バッテリが着脱可能に装着されるバッテリ装着部を有し、上下方向に関して、駆動機構とバッテリ装着部の間に中間領域が設定されている。そして、バッテリがバッテリ装着部に装着された場合における、バッテリと工具本体を合わせた重心位置、および軸部が中間領域に配置されるように構成されている。上下方向に関して、駆動機構とバッテリ装着部の間に中間領域が設定されることで、バッテリ装着部が先端工具の長軸線から離れた位置に配置された往復動式作業工具が構成される。このような構成の往復動式作業工具では、バッテリと工具本体を合わせた重心位置が先端工具の長軸線から外れることになる。
往復動式作業工具にあっては、加工作業時において被加工材から反力を受けたときに、重心周りにモーメントが発生する。この形態によれば、ハンドルの他端側と工具本体とを連結する軸部も中間領域に配置する構成としたことにより、モーメントに対応した工具本体の動きにハンドルが追従することができる。
本発明に係る往復動式作業工具の更なる形態によれば、前後方向において、先端工具側を前側、ハンドルが工具本体に連接される側を後側と定義し、上下方向において、ハンドルが第1連結部によって工具本体に連結される側を上側、ハンドルが第2連結部によって工具本体に連結される側を下側と定義したときに、工具本体は、駆動機構を収容するギアハウジングと、ギアハウジングの後方にギアハウジングよりも下方に延在するように配置されるとともに、ハンドルが連接されたモータハウジングとを含み、モータハウジングは、ハンドルの下方において、上下方向における中央領域から後方に延在する延在部を有し、バッテリ装着部は、延在部の下面に設けられている。
【0010】
本発明に係る往復動式作業工具の更なる形態によれば、上下方向と前後方向に関して、重心位置と軸部が同じ位置に設定されている。
この形態によれば、ハンドルの工具本体に対する軸部を中心とする相対回動と、工具本体に発生する重心周りのモーメントが一致し、モーメントに対応した工具本体の動きに対するハンドルの追従がより良くなる。
【0011】
本発明に係る往復動式作業工具の更なる形態によれば、軸部の所定の軸周りに弾性要素が配置されている。ハンドルと工具本体は、軸部と弾性要素を介して連結されており、弾性要素が工具本体に生ずる振動のハンドルへの伝達を抑制するように構成されている。なお、この形態における「弾性要素」は、典型的にはゴムがこれに相当するが、ゴムに限らずバネを用いることも可能である。この場合、「弾性要素の配置」の態様としては、軸部の周りに全体にわたって配置する態様、断続的に配置する態様のいずれであってもよく、また「弾性要素」については、工具本体で保持する態様、ハンドルで保持する態様のいずれであってもよい。
この形態によれば、工具本体からハンドルへの軸部を介しての振動伝達を弾性要素によって抑制することができる。
【0012】
本発明に係る往復動式作業工具の更なる形態によれば、軸部は、長尺部材として構成されている。弾性要素は、軸部の長軸方向における第1領域に、軸部の長軸方向周りに配置されている。工具本体は、弾性要素を保持する弾性要素保持部と、軸部の長軸方向における第1領域以外の第2領域と当接可能な当接部を有する。当接部は、弾性要素の弾性変形によって軸部が上下方向と前後方向に移動する際に、第2領域と当接することで、軸部の移動を規制するように構成されている。
この形態によれば、当接部により軸部が必要以上に移動することを規制できるため、弾性要素に過大な負荷がかかることを回避し、耐久性を向上できる。
【0013】
本発明に係る往復動式作業工具の更なる形態によれば、工具本体は、左右方向に関して左側に配置された左ハウジングと、右側に配置された右ハウジングで構成されている。軸部は、金属製である。左ハウジングと右ハウジングには、それぞれ弾性要素を保持する弾性要素保持部が設けられている。
この形態によれば、軸部を金属製としたことにより軸部の強度を確保できる。また、左ハウジングと右ハウジングにより弾性要素を保持することができる。
【0014】
本発明に係る往復動式作業工具の更なる形態によれば、弾性部材と軸部は、前後方向に関して同じ位置に配置され、弾性部材は、前後方向に伸縮可能に構成されている。
上記のように構成したことにより、先端工具を前後方向に駆動して加工作業を行う往復動式作業工具の、上下方向に比べて遥かに大きい前後方向の振動を効率よく抑制することができる。
【0015】
本発明に係る往復動式作業工具の更なる形態によれば、ハンドルは、先端工具の長軸線上に配置されている。
この形態によれば、先端工具を被加工材に押し付けるように、ハンドルに力を加えつつ加工作業を行う場合に好適となる。
【0016】
本発明に係る往復動式作業工具の更なる形態によれば、バッテリ装着部は、上下方向に関して、ハンドルより下方における工具本体に設けられている。
この形態によれば、ハンドルより下方における工具本体にバッテリ装着部を設けることにより、バッテリ装着部にバッテリを装着したときの当該バッテリと工具本体を合わせた重心位置と、ハンドルの回動支点である軸部の位置を近づけるように設計し易くなる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、工具本体に発生する前後方向の振動及び上下方向の振動のハンドルへの伝達が抑えられ、ハンドルの防振に関して改良された往復動式作業工具が提供されることとなった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態につき、
図1及び
図2を参照しつつ詳細に説明する。本発明の実施形態は、往復動式作業工具の一例としてバッテリ式ハンマドリルを用いて説明する。
図1に示すように、バッテリ式のハンマドリル100は、ハンマビット119を装着し、装着されたハンマビット119を長軸方向に打撃動作及び長軸方向周りに回転動作させて、被加工材に対して穴明けやハツリ等の加工作業を行う打撃工具である。このハンマビット119が、本発明における「先端工具」に対応する。
【0020】
ハンマドリル100は、概括的に見て、ハンマドリル100の外郭を形成する本体部101を主体として構成される。本体部101の先端領域には、ハンマビット119が筒状のツールホルダ159を介して着脱自在に取り付けられる。ハンマビット119は、ツールホルダ159のビット挿入孔159a内に挿入され、その長軸方向への相対的な往復動が可能に、且つその周方向への相対的な回動が規制された状態で保持される。
【0021】
本体部101は、電動モータ110を収容するモータハウジング103、運動変換機構120、打撃要素140及び動力伝達機構150を収容するギアハウジング105を主体として構成される。ハンマビット119の長軸方向に関して本体部101のハンマビット119と反対側には、作業者が握るハンドグリップ109が連接されている。この本体部101が、本発明における「工具本体」に対応し、ハンドグリップ109が、本発明における「ハンドル」に対応する。
【0022】
なお、本実施形態では、便宜上、ハンマビット119の長軸方向、すなわち本体部101の長軸方向に関して、ハンマビット119側を、「前側」ないし「前方側」として規定し、ハンドグリップ109側を、「後側」ないし「後方側」として規定する。また、
図1中の紙面上方を、「上側」ないし「上方側」と規定し、紙面下方を、「下側」ないし「下方側」と規定する。
【0023】
本体部101は、ハンマビット119の長軸方向に関して、前方にギアハウジング105が配置され、後方にモータハウジング103が配置された構成とされる。そして、モータハウジング103の後方にハンドグリップ109が配置された構成とされる。モータハウジング103は、ギアハウジング105の下面よりも下方へと延在されており、この延在された領域内部に電動モータ110が収容されている。電動モータ110は、当該電動モータ110の回転軸が上下方向に延在するように配置され、ハンマビット119の長軸方向に延在する打撃軸に対して交差している。なお、本体部101を構成するモータハウジング103、ギアハウジング105、及びハンドグリップ109のそれぞれは、ハンマビット119の長軸方向に沿って2分割された左右の半割体を互いに接合することで構成される。
【0024】
電動モータ110の回転出力は、運動変換機構120によって直線動作に適宜変換された上で打撃要素140に伝達され、当該打撃要素140を介してハンマビット119の長軸方向(
図1の左右方向)への衝撃力を発生する。この運動変換機構120及び打撃要素140が、本発明における「駆動機構」に対応する。また、電動モータ110の回転出力は、動力伝達機構150によって適宜減速された上でハンマビット119に伝達され、当該ハンマビット119が周方向に回転動作される。電動モータ110は、ハンドグリップ109に配置されたトリガ109aの引き操作によって通電駆動される。
【0025】
運動変換機構120は、電動モータ110のモータ軸111の上方に配置されており、モータ軸111の回転出力をハンマドリル100の前後方向への直線運動に変換する機構である。運動変換機構120は、モータ軸111によって回転駆動される中間軸121と、中間軸121に取り付けられた回転体123と、中間軸121(回転体123)の回転に伴いハンマドリル100の前後方向に揺動される揺動部材125と、揺動部材125の揺動動作に伴ってハンマドリル100の前後方向に往復移動する駆動体としての筒状のピストン127と、ピストン127を収容するシリンダ129を主体として構成されている。モータ軸111は中間軸121に対して直交状に配置される。シリンダ129は、ツールホルダ159の後方領域として当該ツールホルダ159に一体状に形成されている。
【0026】
打撃要素140は、運動変換機構120の上方であって、ツールホルダ159の後方に配置されており、運動変換機構120によって電動モータ110の回転が変換されたハンマドリル100の前後方向への直線動作を、ハンマビット119に打撃力として伝達する機構である。打撃要素140は、筒状のピストン127内に摺動可能に配置された打撃子としてのストライカ143と、ストライカ143の前方に配置され、ストライカ143が衝突するインパクトボルト145を主体として構成されている。なお、ストライカ143の後方のピストン127の空間は、ピストン127の摺動動作を空気の圧力変動を介してストライカ143に伝達する空気室127aを形成している。
【0027】
動力伝達機構150は、運動変換機構120の前側に配置されており、運動変換機構120の中間軸121から伝達された電動モータ110の回転出力をツールホルダ159に伝達する機構である。動力伝達機構150は、中間軸121と共に回転する第1ギア151と、第1ギア151と噛み合い係合されるとともに、ツールホルダ159(シリンダ129)に取り付けられた第2ギア153等の複数のギアからなるギア減速機構を主体として構成されている。
【0028】
モータハウジング103の後側には、
図1に示すように、当該モータハウジング103の後端上部から後方に向かって概ね水平状に延出する上方連接部103A、モータハウジング103の上下方向の略中程から後方に向かって概ね水平状に延在する下方連接部103B、上方連接部103Aと下方連接部103Bとを接続する中間壁部103Cが設けられている。これらにより、モータハウジング103の後上方には、側面視で略コ形状の空間が形成され、この空間にハンドグリップ109が配置される。
【0029】
モータハウジング103の下方連接部103Bの下面、すなわち、モータハウジング103の後方で、且つハンドグリップ109の下方には、バッテリ装着部160が形成されている。バッテリ装着部160には、電動モータ110に駆動用の電流を供給するためのバッテリパック161が後方から前方に向けて水平に移動させることで着脱自在に装着される。このバッテリ装着部160が、本発明における「バッテリ装着部」に対応し、バッテリパック161が、本発明における「バッテリ」に対応する。なお、バッテリパック161がバッテリ装着部160に装着された状態では、当該バッテリパック161を含めたハンマドリル100の重心位置Gが、本実施形態の場合、運動変換機構120とバッテリ装着部160の間の中間領域に設定されている。
【0030】
モータハウジング103の後方の空間に配置されるハンドグリップ109は、
図1に示すように、グリップ部109A、上側アーム部109B、下側アーム部109C及びステー109Dを有する。グリップ部109Aは、ハンマビット119の長軸方向、すなわち打撃軸の延在方向と同一平面上で交差する上下方向に延在する。上側アーム部109Bは、グリップ部109Aの延在方向上端部から前方に向かって延出する。下側アーム部109Cは、グリップ部109Aの延在方向下端部から前方に向かって延出する。ステー109Dは、グリップ部109Aと概ね平行に延在するとともに、上側アーム部109Bの延出端部と下側アーム部109Cの延出端部を相互に接続する。これによりハンドグリップ109は、閉ループ状の一体フレーム構造として構成され、剛性が高められている。
【0031】
モータハウジング103は、ハンマビット119の長軸方向に沿って2分割された左右のハウジング103R,103L(
図2参照)により構成されている。そして、モータハウジング103の後方の空間に配置されたハンドグリップ109のうち、グリップ部109Aと上側アーム部109Bの一部以外の領域を左右両側から挟むように配置されている。具体的には、ハンドグリップ109の上側アーム部109Bの前側部分を上方連接部103Aにより挟み、また下側アーム部109Cの全体を下方連接部103Bにより挟み、更にステー109Dの全体を中間部103Dにより挟むように構成されている。この場合、ハンドグリップ109とモータハウジング103の対向面間には、モータハウジング103に対するハンドグリップ109の相対移動を可能とするための所定の隙間が設定される。上方連接部103Aおよび上側アーム部109Bが、本発明における「第1連結部」に対応し、下方連接部103Bおよび下側アーム部109Cが、本発明における「第2連結部」に対応する。
【0032】
モータハウジング103の後方の空間に配置されたハンドグリップ109は、その前側上部、具体的には上側アーム部109Bとステー109Dの交差部がギアハウジング105に圧縮コイルバネ171を介して弾発状に連結され、前側下部、具体的には下側アーム部109Cとステー109Dの交差部がモータハウジング103に支軸181を介して左右方向の軸線周りに回動可能に支持されている。この圧縮コイルバネ171が、本発明における「弾性部材」に対応し、支軸181が、本発明における「軸部」に対応する。
【0033】
圧縮コイルバネ171は、ハンマビット119の打撃軸の上方において、モータハウジング103の上方連接部103A内を前後方向に延在するように配置され、その後端部がギアハウジング105の後部に形成されたバネ受け173によって支持され、前端部がハンドグリップ109の上側アーム部109Bとステー109Dの交差部に形成されたバネ受け175によって支持されている。これによりハンドグリップ109には、圧縮コイルバネ171の弾発力が後方に向けて作用している。なお、圧縮コイルバネ171は、ハンマビット119の打撃軸の上方に1個配置する構成とすることが好ましい。
【0034】
モータハウジング103の上方連接部103Aには、ハンドグリップ109に作用する圧縮コイルバネ171の弾発力を受けるための金属製のストッパピン177が設けられている。ストッパピン177は、圧縮コイルバネ171の後方において、ハンドグリップ109の上側アーム部109Bに形成された横孔179を貫通するとともに、その端部が上方連接部103Aに固定されている。ストッパピン177は、横孔179の前壁と当接することによりハンドグリップ109に作用する圧縮コイルバネ171の弾発力を受けるが、横孔179の前壁から離間した状態では、当該横孔179内での前後方向及び上下方向の相対移動が可能とされる。
【0035】
支軸181は、ハンマビット119の打撃軸より下方であって、且つバッテリ装着部160の上方、具体的にはモータハウジング103のうち、下方連接部103Bと中間壁部103Cの交差部付近であって、ハンマドリル100の重心位置Gの下方に設定されている。支軸181は、金属製であり、
図2に示すように、ハンドグリップ109を左右に貫通するとともに、両端部がグリップ側面から突出されており、その突出された両端部が弾性変形可能なOリング183を介してモータハウジング103に支持されている。このOリング183が、本発明における「弾性要素」に対応する。
【0036】
モータハウジング103を構成する左右のハウジング103R,103Lには、支軸の端部が遊嵌状に嵌合する凹状の軸孔185と、Oリング183を保持する収容凹部187が支軸181の軸方向に並んで設けられている。収容凹部187に配置されたOリング183は、支軸181の外周面に嵌合し、弾性変形により支軸181の径方向への移動を許容する。Oリング183が嵌合する支軸181の外周面が、本発明における「第1領域」に対応する。支軸181の端部は、軸孔185に遊嵌状に嵌合され、支軸181の端部外周面と軸孔185の内周面185aの間には、所定の隙間が設けられている。すなわち、支軸181の端部は、Oリング183の弾性変形に伴う隙間の範囲内での径方向の移動が許容されるが、当該範囲を超えて移動しようとした場合に軸孔185の内周面185aに当接して移動が規制される。この収容凹部187が、本発明における「弾性要素保持部」に対応し、軸孔185の内周面185aが、本発明における「当接部」に対応し、軸孔185の内周面185aと当接可能な支軸185の外周面が、本発明における「第2領域」に対応する。
【0037】
上記のように、ハンドグリップ109は、その上端側がギアハウジング105に圧縮コイルバネ171を介して弾性連結される一方、下端側がモータハウジング103に支軸181を介して左右方向の軸線周りに回動自在に連接された構成とされる。
【0038】
本実施形態に係るハンマドリル100は、上記のように構成されている。ハンマドリル100による加工作業は、作業者がハンドグリップ109のグリップ部109Aを握り、ハンマドリル100に前方への押圧力を付加しつつ遂行される。押圧力が付加されたハンドグリップ109は、圧縮コイルバネ171を圧縮しつつ支軸181を支点として本体部101のモータハウジング103に対して相対的に前方へ回動される。これにより上側アーム部109Bの横孔179内においてモータハウジング103に固定のストッパピン177が相対的に後方へ移動して横孔179の前壁から離間するため、ストッパピン177に対する前後方向及び上下方向の相対移動が可能とされる。
【0039】
ハンマドリル100による加工作業時において、本体部101には、主としてハンマビット119の長軸線上に前後方向の振動が発生する。本実施の形態によれば、本体部101に対して、ハンドグリップ109の前側上端が圧縮コイルバネ171を介して弾性連結され、前側下部が水平方向の支軸181を中心として相対的に回動可能に連結された構成としている。このため、本体部101に発生する前後方向の振動に対しては、支軸181を中心とするハンドグリップ109の相対的な回動のうちの前後方向成分で対応する。また、本体部101には、前後方向のほかに上下方向にも振動が発生するが、この上下方向の振動に対しては、支軸181を中心とするハンドグリップ109の相対的な回動のうちの上下方向成分で対応する。すなわち、本実施形態によれば、本体部101に対してハンドグリップ109が支軸181の軸線周りに回動した場合に、本体部101に発生する上下方向の振動及び前後方向の振動のハンドグリップ109への伝達を圧縮コイルバネ171により抑えることができる。
【0040】
ハンマビット119を長軸方向、すなわち前後方向に駆動して加工作業を行うハンマドリル100の場合、本体部101には、前後方向に上下方向よりも遥かに大きい振動が発生する。本実施形態では、圧縮コイルバネ171と支軸181の位置がハンマビット119の長軸方向に関して、同じ位置に設定されている。すなわち、圧縮コイルバネ171の真下に支軸181が配置されている。そして、圧縮コイルバネ171がハンマビット119の長軸方向に平行に伸縮可能に構成されている。このため、前後方向の振動を効率よく低減することができる。
【0041】
ところで、バッテリ装着部160に装着されるバッテリパック161は、重量物であることから、バッテリパック161がバッテリ装着部160に装着された状態では、当該バッテリパック161とハンマドリル100を合わせた重心位置G(以下、ハンマドリル100の重心位置という)が、前述したようにハンマビット119の打撃軸から離れた下方位置となる。具体的には、
図1に示すように、上下方向に関してハンマビット119を駆動する運動変換機構120とバッテリ装着部160の間の中間領域であって、支軸181のやや上方にある。また、ハンマドリル100は、ハンマビット119が被加工材を打撃したときに、当該被加工材から反力を受けて重心周りにモーメントが発生する。
【0042】
以上のことを踏まえて本実施形態では、支軸181の位置を設定している。すなわち、支軸181の位置を、ハンマドリル100の重心位置Gに極力接近するように、好ましくは一致するように設定される。このことにより、ハンドグリップ109の支軸181を中心とする本体部101に対する相対的な回動と、本体部101の重心周りのモーメントに対応する回動を一致或いは一致させないまでも近似した動きとすることが可能となり、防振効果を高めることができる。なお、本実施形態では、
図1に示すように、支軸181の位置を重心位置Gの下方に設定した場合を図示しているが、重心位置Gの上方に位置するように設定することも可能である。
【0043】
また、本実施の形態によれば、モータハウジング103と支軸181の間に弾性変形可能なOリング183を介在した構成としている。このため、本体部101に発生した前後方向及び上下方向の振動がモータハウジング103からハンドグリップ109に支軸181を介して伝達することをOリング183によって抑制することができる。
【0044】
また、本実施形態によれば、Oリング183の変形に伴う支軸181の径方向の最大移動を、当該支軸181の端部が遊嵌する軸孔185の内周面185aで規制する構成としている。このため、支軸181の移動範囲が規制されることで、Oリング183に過大な負荷が作用することを回避し、Oリング183の耐久性を向上できる。
【0045】
また、本実施形態によれば、モータハウジング103をハンマビット119の長軸方向に沿って2分割された左右のハウジング103R,103Lにより構成するとともに、当該左右のハウジング103R,103Lに、分割面側に開口する軸孔185を設けた構成である。このため、左右のハウジング103R,103Lを、ハンドグリップ109に左右から挟むように配置する場合に、ハンドグリップ109に貫通された支軸181の端部を当該ハウジング103R,103Lの軸孔186に挿入することで組み付けることが可能となり、組付け性が向上する。
【0046】
なお、本実施形態では、モータハウジング103と支軸181の間にOリング183を介在する構成としたが、ハンドグリップ109と支軸181の間にOリング183を介在する構成としてもよい。また、圧縮コイルバネ171に替えてゴムを用いてもよい。
【0047】
また、本実施形態は、往復動式作業工具の例として、ハンマドリルの場合で説明したが、ハンマビット119に長軸方向の打撃動作のみを行なわせるハンマに適用してもよいし、あるいはブレードに往復直線運動を行わせて被加工材の切断作業を行うレシプロソーやジグソー等の切断作業工具に適用してもよい。
【0048】
(実施形態の各構成要素と本発明の構成要素との対応関係)
本実施形態における各構成要素と、本発明における構成要素との発明特定事項との関係は、以下のとおりである。もちろん、本実施形態における各構成要素は、対応する本発明の特定事項に関する一つの実施構成例に過ぎず、本発明の各構成要素はこれに限定されるものではない。
本体部101が、本発明の「工具本体」に対応する構成の一例である。
ハンドグリップ109が、本発明の「ハンドル」に対応する構成の一例である。
ハンマビット119が、本発明の「先端工具」に対応する構成の一例である。
運動変換機構120及び打撃要素140が、本発明の「駆動機構」に対応する構成の一例である。
上方連接部103Aおよび上側アーム部109Bが、本発明の「第1連結部」に対応する構成の一例である。
下方連接部103Bおよび下側アーム部109Cが、本発明の「第2連結部」に対応するする構成の一例である。
圧縮コイルバネ171が、本発明の「弾性部材」に対応する構成の一例である。
支軸181が、本発明の「軸部」に対応する構成の一例である。
Oリング183が、本発明の「弾性要素」に対応する構成の一例である。
Oリング183が嵌合する支軸181の外周面が、本発明の「第1領域」に対応する構成の一例である。
軸孔185の内周面185aが、本発明の「当接部」に対応する構成の一例である。
軸孔185の内周面185aと当接可能な支軸185の外周面が、本発明における「第2領域」に対応する。
バッテリ装着部160が、本発明の「バッテリ装着部」に対応する構成の一例である。
バッテリパック161が、本発明の「バッテリ」に対応する構成の一例である。
収容凹部187が、本発明の「弾性要素保持部」に対応する構成の一例である。