特許第6096629号(P6096629)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6096629
(24)【登録日】2017年2月24日
(45)【発行日】2017年3月15日
(54)【発明の名称】移動手摺り劣化診断装置
(51)【国際特許分類】
   B66B 31/00 20060101AFI20170306BHJP
   B66B 23/24 20060101ALI20170306BHJP
【FI】
   B66B31/00 D
   B66B23/24 A
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-200095(P2013-200095)
(22)【出願日】2013年9月26日
(65)【公開番号】特開2015-67370(P2015-67370A)
(43)【公開日】2015年4月13日
【審査請求日】2016年1月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000232955
【氏名又は名称】株式会社日立ビルシステム
(74)【代理人】
【識別番号】110000442
【氏名又は名称】特許業務法人 武和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小平 法美
(72)【発明者】
【氏名】大西 友治
【審査官】 大塚 多佳子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−159439(JP,A)
【文献】 特開2002−068660(JP,A)
【文献】 実開昭59−056490(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 31/00
B66B 23/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗客コンベアの移動手摺りを稼動させた状態で、前記移動手摺りの凹部底面を、カメラを用いて撮影し、前記カメラの撮影画像から前記移動手摺りの劣化状態を診断する移動手摺り劣化診断装置において、
前記カメラを固定するカメラ取付機構が分割可能な複数の部材からなり、
前記部材の1つが、前記移動手摺りの凹部底面に接触し、転動する第1及び第2の車輪と、前記移動手摺りの一端側の内側に追従して回転する第1のローラ、及び他端側の内側に追従して回転する第2のローラと、を備え、
前記部材の他の1つが、前記移動手摺りの凹部底面に接触し、転動する第3及び第4の車輪と、前記移動手摺りの一端側の内側に追従して回転する第3のローラ、及び他端側の内側に追従して回転する第4のローラと、を備え、
前記第1及び第3のローラが前記移動手摺りの一端側の内側の同一面に接し、前記第2及び第4のローラが前記移動手摺りの他端側の内側の同一面に接する
ことを特徴とする移動手摺り劣化診断装置。
【請求項2】
請求項1に記載の移動手摺り劣化診断装置において、
前記複数の部材の1つは固定ピンを、他の1つは前記固定ピンが差し込まれる差し込み穴を、それぞれ備え、
前記差し込み穴に前記固定ピンを差し込んで2つの部材を連結することを特徴とする移動手摺り劣化診断装置。
【請求項3】
請求項2に記載の移動手摺り劣化診断装置において、
前記複数の部材の1つが支えレールを備え、前記他の1つが前記支えレールに挿入されて連結されることを特徴とする移動手摺り劣化診断装置。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の移動手摺り劣化診断装置において、
前記カメラが前記複数の部材の1つに取り付けられていることを特徴とする移動手摺り劣化診断装置。
【請求項5】
請求項4に記載の移動手摺り劣化診断装置において、
前記カメラが取り付けられている前記複数の部材の1つにフレームと連結するブラケットが取り付けられていることを特徴とする移動手摺り劣化診断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エスカレーターや移動歩道などの乗客コンベアに備えられている移動手摺りの損傷を診断する移動手摺り劣化診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の技術として例えば特開2006−27889号公報(特許文献1)に記載された発明が知られている。この特許文献1に記載された発明は、移動手摺りの稼動による移動手摺りの裏面の摩滅と、移動手摺りの稼動以外の要因による移動手摺りの裏面の傷の発生とを判別するため、移動手摺りの裏面形状を測定し、裏面形状測定値を出力する形状取得手段と、裏面形状測定値より移動手摺りの損傷部位を抽出する損傷部位抽出手段と、損傷部位抽出結果より損傷度を判定する損傷度判定手段とを備え、損傷部位抽出手段は、移動手摺りの裏面形状測定値に対して2次微分を行って2次微分値を出力する2次微分手段を含み、損傷度判定手段9は、2次微分値に対して予め定めた閾値を超える2次微分値が出力された場合、当該移動手摺り部位が損傷していると判定するマンコンベア用移動手摺りの検査装置に関するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−27889号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記従来技術では、乗客コンベアのスカートガードに予め設置した移動手摺り検査用穴を使用し、光学的形状測定手段によって移動手摺りの裏面形状の画像を取得している。しかし、移動手摺りは乗客コンベアを稼動させると、撮影位置において上下左右に動くため、この光学的形状測定手段と移動手摺りとの相対位置を固定して常に同じ相対位置で画像を取得することができなかった。また、移動手摺りが左右に動いてしまうと、画像によって移動手摺りに対する撮影位置が移動手摺りの移動方向と平行な中心軸線に対して大きく変化し、あるいは移動手摺りが上下に動くことになる。その結果、光学的形状測定手段と移動手摺りとの間の距離が変化し、撮影された画像によって縮尺が変わってしまうということがあった。
【0005】
このように距離の変化、あるいは縮尺の変化があると、撮影画像内で占める移動方向と平行な移動手摺りの中心軸線の位置及び撮影されたハンドレールの範囲が、撮影画像によって大きく異なる。その結果、劣化状態を判断する際に判断結果に影響を与えてしまうことになる。また、中心軸線の位置の大きな相違、あるいは撮影されたハンドレールの範囲の撮影画像による大きな相違が、劣化位置の特定を困難としてしまう原因ともなっていた。
【0006】
さらに、このような撮影画像から劣化状態を、コンピュータプログラム等を使用して判定すると、画像の撮影状態により判定のばらつきが生じてしまうことになる。ばらつきがなるべく生じないようにすると、画像の撮影状態によって判断基準を変更するような複雑な判断アルゴリズムが必要とされる。
【0007】
そこで、劣化診断を行うために乗客コンベアを稼動させた状態で移動手摺りを撮影する際、移動手摺りが上下左右に動いても、カメラの撮影位置が極力変化しないようにカメラを設置する必要がある。この設置のためにカメラ取付ブラケットが使用されるが、追従性を確保し、移動手摺りが上下左右に動いても、カメラの撮影位置が極力変化しないようにすると、カメラ取付ブラケットは必然的に大きくなってしまう。
【0008】
しかし、カメラ取付ブラケットが大きくなると、乗客コンベアのフレームと移動手摺りとの間の隙間が狭い場合に、所望の撮影位置にカメラを設置することができない場合がある。あるいは、カメラを取り付けることができるにしても、取り付け作業に時間がかかり、作業効率の低下を招くことは否めない。
【0009】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、乗客コンベアのフレームと移動手摺りとの間の隙間が狭い場合でも、確実にかつ効率よくカメラを設置することができるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するために、本発明の一態様は、乗客コンベアの移動手摺りを稼動させた状態で、前記移動手摺りの凹部底面を、カメラを用いて撮影し、前記カメラの撮影画像から前記移動手摺りの劣化状態を診断する移動手摺り劣化診断装置において、前記カメラを固定するカメラ取付機構が分割可能な複数の部材からなり、前記部材の1つが、前記移動手摺りの凹部底面に接触し、転動する第1及び第2の車輪と、前記移動手摺りの一端側の内側に追従して回転する第1のローラ、及び他端側の内側に追従して回転する第2のローラと、を備え、前記部材の他の1つが、前記移動手摺りの凹部底面に接触し、転動する第3及び第4の車輪と、前記移動手摺りの一端側の内側に追従して回転する第3のローラ、及び他端側の内側に追従して回転する第4のローラと、を備え、前記第1及び第3のローラが前記移動手摺りの一端側の内側の同一面に接し、前記第2及び第4のローラが前記移動手摺りの他端側の内側の同一面に接することを特徴とする
【発明の効果】
【0011】
本発明の一態様によれば、乗客コンベアのフレームと移動手摺りとの間の隙間が狭い場合でも、確実かつ効率よくカメラを設置することができる。なお、前記以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明において明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態に係る移動手摺り劣化診断装置が取り付けられる乗客コンベアとしてのエスカレーターの概要構成を示す斜視図である。
図2図1のエスカレーターの概略構成を示す側面図である。
図3】本発明の一実施形態に係る移動手摺り劣化診断装置を乗客コンベアに取り付けた状態の概要を示す斜視図である。
図4図3において矢印A方向から見た移動手摺り劣化診断装置を乗客コンベアに取り付けた状態の概要を示す側面図である。
図5図3に示したカメラ及びカメラ取付機構を示す上面図である。
図6図5におけるB−B線断面図である。
図7図5におけるカメラ及びカメラ取付機構を2分割した状態を示す上面図である。
図8図7におけるC−C線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0014】
図1は本発明の一実施形態に係る移動手摺り劣化診断装置が取り付けられる乗客コンベアとしてのエスカレーターの概要を示す斜視図である。乗客コンベアとしては、エスカレーターの他に例えば移動歩道などもあるが、本実施形態では、エスカレーターを例にとって説明する。
【0015】
同図において、エスカレーター1は、乗客が乗るステップ2と、ステップ2の進行方向と同方向に移動する移動手摺り3を備えている。移動手摺り3は、ステップ2の進行方向に対してステップ2の左右両側に設けられている。
【0016】
移動手摺り3は無端状に構成され、ステップ2の両側にステップ2の移動方向と平行に設けられた欄干4に沿って周回するようになっている。すなわち、移動手摺り3は、欄干4の上方側ではステップ2の進行方向と同方向に移動し、欄干4の端部に至ると円弧状に下方に移動して上下逆の状態でスカートガード等を備えたデッキ5内部に引き入れられる。そして、デッキ5内を通って欄干4の反対端部に至り、上下逆の状態でデッキ5から外部に出て円弧状に上方に移動して欄干4の上方側に戻るという循環をしている。また、デッキ5内部には移動手摺り3を駆動する駆動装置等が設けられている。
【0017】
図2図1のエスカレーター1の概略構成を示す図で、側面から見た状態を示す。エスカレーター1は上階の床下と下階の床下に埋め込まれると共にその間に掛け渡されたフレーム6を備えている。そして、上階の床下に設けられた図示しない駆動装置により回転されるスプロケット7と下階の床下に設けられた従動スプロケット8に図示しないチェーンを巻きかけ、そのチェーンに図1に示す複数のステップ2を無端状に設けている。
【0018】
移動手摺り3は図2に示すように移動手摺り駆動用のターミナルギア9によって駆動される。ターミナルギア9は図示しない駆動装置によって回転するスプロケット7とチェーン10により連結され、同期回転するようになっている。これによりスプロケット7による駆動力を受けて、移動手摺り3とステップ2は同じ速度で同方向に駆動される。
【0019】
デッキ5及びフレーム6内はエスカレーター1の種々の構成部品が多数配置されており、デッキ5の内部に何らかの装置を取り付けることはスペース的に厳しいが、図2に示すように移動手摺り3にたるみを持たせた移動手摺りたるみ部Tが存在する。この移動手摺りたるみ部Tは移動手摺り支持ガイド11に支持され、断面凹状の移動手摺り3が移動手摺り3の帆布面である凹部を上方に向け、その上方にスペースを有する状態となっている。
【0020】
このような構成を有するエスカレーター1に対して、本実施形態に係る移動手摺り劣化診断装置12はエスカレーター1を構成する不稼動部品であるフレーム6に取り付けられる。移動手摺り劣化診断装置12はデッキ5及びフレーム6内を移動してくる移動手摺り3の復路側の移動手摺りたるみ部Tで移動手摺り3の劣化診断のための計測を行う。
【0021】
図3は本実施形態に係る移動手摺り劣化診断装置12をエスカレーター1に取り付けた状態を示すエスカレーターの要部斜視図、図4図3に示したカメラ13及びカメラ取付機構15を矢印A方向から見た側面図である。図3及び図4に示すように、移動手摺り劣化診断装置12は、エスカレーター1の移動手摺り3を稼動させた状態で、移動手摺り3の凹部内の帆布面(凹部底面3h)を、カメラ13を用いて撮影し、カメラ13の撮影画像をデータ処理装置14に送る。データ処理装置14では、送られてきたカメラ13の撮影画像から移動手摺り3の劣化状態を診断する。
【0022】
このような移動手摺り劣化診断装置12は、移動手摺り3の状態を撮影するカメラ13と、カメラ13が固定されると共に移動手摺り102の凹部102h内に配置されるカメラ取付機構15と、一端がカメラ取付機構15に取り付けられると共に他端がフレーム6に取り付けられる取付部材としてのアーム型ブラケット16と、フレーム6にアーム型ブラケット16を取り付けるクランプ17と、データ処理装置14とを備えている。
【0023】
本実施形態の移動手摺り劣化診断装置12は、診断測定において、図3に示すように移動手摺り劣化診断装置12のカメラ13を、接続線によりPCなどのデータ処理装置14に接続して相互に通信を行う。データ処理装置14は、この通信によって送られてきたカメラ13の撮影動作や撮影された画像の蓄積等を行う。カメラ13は移動手摺り3の裏面の凹部底面3hの帆布面に設置して撮影する。データ処理装置14は、カメラ13によって撮影された画像1枚ごとに帆布の劣化損傷状態をプログラムによりソフト的に診断し、移動手摺り3が劣化品であるか正常品であるか判定する。
【0024】
図3に示した例では、カメラ13とデータ処理装置14はケーブル14aによって接続され、データが送信されるが、無線で送信するようにすることもできる。また、移動手摺り3が劣化品であるか、正常品であるかの判定をプログラムで行うのではなく、撮影された画像を保守員が確認して判断するようにしてもよい。
【0025】
図5図3における移動手摺り診断装置のカメラ13及びカメラ取付機構15の詳細を示す上面図、図6図5におけるB−B線断面図、図7図5のカメラ取付機構15を2分割した詳細を示す上面図、図8図7におけるC−C線断面図である。
【0026】
図5ないし図8において、カメラ取付機構15は第1のカメラ取付ブラケット20と第2のカメラ取付ブラケット30とからなる。カメラ13と照明装置18は取付板19によって固定され、取付板19は図示右側の第1のカメラ取付ブラケット20に固定されている。第1のカメラ取付ブラケット20には、前記取付板19に加えて第1及び第2のローラ21,23と第1及び第2の車輪28a,28bが取り付けられている。
【0027】
第1のローラ21は移動手摺り3の一端側の内側に追従して回転し、ネジ22によって取り付けられている。第2のローラ23は移動手摺り3の他端側の内側に追従して回転し、第1のローラ固定板24にネジ25によって固定されている。さらに、第1のローラ固定板24の他端側にはバネ27の一端が取り付けられ、バネ27の他端は第1のカメラ取付ブラケット20に取り付けられている。これにより第1のローラ固定板24が扇形に弧を描いて移動し、第1及び第2のローラ21,23が移動手摺り3の一端側と他端側の内側に所定の圧力で接触し、転動することができるようになっている。
【0028】
第1の車輪28a及び第2の車輪28bは、第1のカメラ取付ブラケット20にネジ29aとネジ29bによってそれぞれ連結されており、移動手摺り劣化診断装置12を設置した際に、移動手摺り3の凹部底面3hに接するようになっている。
【0029】
図示左側の第2のカメラ取付ブラケット30には、第3及び第4のローラ31,33と第3及び第4の車輪38a,38bが取り付けられている。第3のローラ31は移動手摺り3の一端側の内側に追従して回転し、ネジ32によって取り付けられている。第4のローラ33は移動手摺り3の他端側の内側に追従して回転し、第2のローラ固定板34にネジ35によって固定されている。さらに、第2のローラ固定板34の他端側にはバネ37の一端が取り付けられ、バネ37の他端は第2のカメラ取付ブラケット30に取り付けられている。これにより第2のローラ固定板34が扇形に弧を描いて移動し、第3及び第4のローラ31,33が移動手摺り3の一端側と他端側の内側に所定の圧力で接触し、転動することができるようになっている。
【0030】
第3の車輪38a及び第4の車輪38bは、第2のカメラ取付ブラケット30にネジ39aとネジ39bによってそれぞれ連結されており、移動手摺り劣化診断装置12を設置した際に、移動手摺り3の凹部底面3hに接するようになっている。なお、第1のカメラ取付ブラケット20と第2のカメラ取付ブラケット30のそれぞれに取り付けられた第1のローラ21及び第3のローラ31は、移動手摺り3の同一面の内側に接するように配置され、第2のローラ23及び第4のローラ33も同様に同一面の内側に接するように配置されている。
【0031】
第1のカメラ取付ブラケット20の上板40の第1及び第2のローラ21,23の設置側とは取付板19を挟んで逆の側(図7において左側)の下面には、第1及び第2の支えレール40a,40bが設けられている。第2のカメラ取付ブラケット30は、第1及び第2の支えレール40a,40bに第2のカメラ取付ブラケット30の図において右側の上板42の端部を差し込んで取り付けられる。そして、第2のカメラ取付ブラケット30は、第1及び第2の支えレール40a,40bにより支持され、第1のカメラ取付ブラケット20側に固定される。
【0032】
この固定は、第1のカメラ取付ブラケット20の第1及び第2の支えレール40a,40bの所定位置まで第2のカメラ取付ブラケット30を挿入したときに、第2のカメラ取付ブラケット30の上板42に形成された差し込み穴42aに、第1のカメラ取付ブラケット20の上板40に設けられているピン41を差し込むことにより行われる。すなわち、図7及び図8に示すように第1のカメラ取付ブラケット20と第2のカメラ取付ブラケット30は別体であり、必要に応じてピン41によって一体に結合することが可能になっている。言い換えれば、本実施形態に係るカメラ取付機構15は、第1及び第2のカメラ取付ブラケット20,30の2つに簡単に分割可能な構成となっている。
【0033】
このようにカメラ取付機構15を第1及び第2のカメラ取付ブラケット20,30に分割できるようにすると、分割して収納し、運搬することが可能となる。その結果、収納時の収納スペースが小さくなり、移動手摺り劣化診断装置の運搬が容易となり、作業者への負担を軽減することもできる。
【0034】
第1のカメラ取付ブラケット20の第1及び第2の車輪28a,28bの設置側の端部には、図3及び図4から分るようにアーム形ブラケット16のカメラ取付機構15側への取付側の端部16aが連結されている。カメラ13は、図5及び図6に示すようにカメラ13の撮影レンズ部分が移動手摺り3の凹部底面3hに対向した状態で照明装置18の取付部材を介して第1のカメラ取付ブラケット20固定されている。この照明装置18は、例えば多数のLEDライトが撮影レンズ部分の回りに円環状に配置されたものである。
【0035】
移動手摺り劣化診断装置12をフレーム6との隙間Gの小さな移動手摺り3の凹部底面3hを撮影する位置に設置する場合には、以下の手順で行う。
・カメラ13と照明装置18を搭載した第1のカメラ取付ブラケット20の第1及び第2の車輪28a,28bを移動手摺り3の凹部底面3h上にセットし、第1及び第2のローラ21,23を凹部の内側に接触させる。
・第2のカメラ取付ブラケット30の第3及び第4の車輪38a,38bを、第1のカメラ取付ブラケット20の第1及び第2の支えレール40a,40b側であって、第1及び第2の支えレール40a,40b側の端部から少し離れた位置の移動手摺り3の凹部底面3h上にセットし、第3及び第4のローラ31,33を凹部の内側に接触させる。
・第2のカメラ取付ブラケット30を移動手摺り3の凹部底面3hに沿って第1のカメラ取付ブラケット20側に移動させる。
・第2のカメラ取付ブラケット30の上板42の端部を第1のカメラ取付ブラケット20の第1及び第2の支えレール40a,40bに挿入する。
・第2のカメラ取付ブラケット30の上板42に形成された差し込み穴42aと第1のカメラ取付ブラケット20の上板40に設けられたピン41の位置が一致する所定位置まで挿入されると、ピン41を差し込み穴42aに差し込む。
・ピン41を差し込み穴42aに差し込むことにより第1及び第2のカメラ取付ブラケット20,30が一体化された後、アーム型ブラケット16の一端を第1のカメラ取付ブラケット20に取り付け、他端をクランプ17によりフレーム6に取り付ける。
【0036】
このような手順で設置すると、小型でコンパクトな第1及び第2のカメラ取付ブラケット20,30をそれぞれ取り付けた後、一体化することができる。これによりフレーム6と移動手摺り3の間隔Gが小さく、カメラ13の設置が難しい場合、あるいは設置に時間がかかる場合でも、簡単かつ確実にカメラ13を移動手摺り劣化診断位置に設置することができる。
【0037】
なお、本実施形態では、エスカレーターを例にとっているが、移動歩道を含む公知の乗客コンベア全般に適用できることは言うまでもない。
【0038】
以上のように、本実施形態によれば、次のような効果を奏する。
【0039】
(1)エスカレーター1(乗客コンベア)の移動手摺り3を稼動させた状態で、前記移動手摺り3の凹部底面3hを、カメラ13を用いて撮影し、前記カメラ13の撮影画像から前記移動手摺り3の劣化状態を診断するデータ処理装置14(移動手摺り劣化診断装置)において、前記カメラ13を固定するカメラ取付機構15が分割可能な第1及び第2のカメラ取付ブラケット20,30(複数の部材)からなるので、エスカレーター1のフレーム6と移動手摺り3との間の隙間Gが狭い場合には、撮影位置にカメラを分割した状態で配置し、その後、分割した部材を連結した一体にすることにより、確実にかつ効率よくカメラを設置することができる。
【0040】
(2)第1のカメラ取付ブラケット20(前記複数の部材の1つ)は固定ピン41を、第2のカメラ取付ブラケット30(他の1つ)は前記固定ピン41が差し込まれる差し込み穴42aを、それぞれ備え、前記差し込み穴42aに前記固定ピン41を差し込んで2つの部材を連結するので、エスカレーター1(乗客コンベア)のフレーム6と移動手摺り3との間の隙間Gが狭い場合でも、簡単かつ確実にカメラ13を設置することができる。
【0041】
(3)第1のカメラ取付ブラケット20(前記複数の部材の1つ)が第1及び第2の支えレール40a,40bを備え、第2のカメラ取付ブラケット30(前記他の1つ)が前記第1及び第2の支えレール40a,40bに挿入されて連結されるので、スライド操作により簡単に装着でき、固定ピン41により簡単かつ確実に両者を連結することができる。
【0042】
(4)前記カメラ13が第1のカメラ取付ブラケット20(前記複数の部材の1つ)に取り付けられているので、エスカレーター1(乗客コンベア)のフレーム6と移動手摺り3との間の隙間Gが狭い場合でも第1のカメラ取付ブラケット20が設置できればカメラの設置が可能となる。
【0043】
(5)前記カメラ13が取り付けられている第1のカメラ取付ブラケット20(前記複数の部材の1つ)にフレーム6と連結するアーム型ブラケット16が取り付けられているので、移動手摺り3の凹部底面3hに対してカメラ位置を安定した状態で保持することができる。
【0044】
なお、前記実施形態における効果の説明では、本実施形態の各部について、特許請求の範囲における各構成要素をかっこ書きで示し、若しくは参照符号を付し、両者の対応関係を明確にした。
【0045】
さらに、本発明は前述した実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であり、特許請求の範囲に記載された技術思想に含まれる技術的事項の全てが本発明の対象となる。前記実施形態は、好適な例を示したものであるが、当業者ならば、本明細書に開示の内容から、各種の代替例、修正例、変形例あるいは改良例を実現することができ、これらは添付の特許請求の範囲に記載された技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0046】
1 エスカレーター(乗客コンベア)
3 移動手摺り
3h 凹部底面
12 移動手摺り劣化診断装置
13 カメラ
14 データ処理装置
15 カメラ取付機構
20 第1のカメラ取付ブラケット(複数の部材の1つ)
30 第2のカメラ取付ブラケット(他の1つ)
41 固定ピン
42a 差し込み穴
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8