特許第6096633号(P6096633)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6096633給水装置、およびそれに用いるポンプを駆動する同期電動機を制御するインバータ
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6096633
(24)【登録日】2017年2月24日
(45)【発行日】2017年3月15日
(54)【発明の名称】給水装置、およびそれに用いるポンプを駆動する同期電動機を制御するインバータ
(51)【国際特許分類】
   H02P 29/00 20160101AFI20170306BHJP
   H02P 27/06 20060101ALI20170306BHJP
【FI】
   H02P29/00
   H02P27/06
【請求項の数】12
【全頁数】28
(21)【出願番号】特願2013-208425(P2013-208425)
(22)【出願日】2013年10月3日
(65)【公開番号】特開2015-73392(P2015-73392A)
(43)【公開日】2015年4月16日
【審査請求日】2016年2月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】502129933
【氏名又は名称】株式会社日立産機システム
(74)【代理人】
【識別番号】110001689
【氏名又は名称】青稜特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】富田 敏夫
(72)【発明者】
【氏名】大久保 智文
(72)【発明者】
【氏名】佐野 正浩
【審査官】 池田 貴俊
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−186917(JP,A)
【文献】 特開2012−172644(JP,A)
【文献】 特開平10−304696(JP,A)
【文献】 特開平10−169568(JP,A)
【文献】 特開2009−197602(JP,A)
【文献】 特開2012−235567(JP,A)
【文献】 特開2001−286175(JP,A)
【文献】 特開平10−220388(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0144569(US,A1)
【文献】 中国特許出願公開第102425527(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 29/00
H02P 27/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポンプ部を回転駆動する同期電動機を制御するインバータであって、
該インバータは、前記同期電動機の電機子の外周を構成するハウジングの一部に取り付けられており、該インバータ内に設けられた温度検出器により該ハウジングのハウジング温度を検出するように構成され、
前記ポンプ部の端部に設けられたヒータの電源を入り切りするための信号出力部と、
前記同期電動機の回転数を決定する演算処理部と、
前記演算処理部で行なう演算に必要な制御パラメータを記憶する記憶部と、
前記同期電動機の電機子に駆動電流を供給する電力変換装置と、
を有し、
記ハウジング温度が、前記同期電動機に無効電流を流し始める温度判定値である第1の所定の温度を下回った場合には、前記電力変換装置より前記同期電動機に無効電流を流して前記同期電動機を温め、
前記ハウジング温度が前記ヒータを運転し始める温度判定値である第2の所定の温度を下回った場合には、前記ヒータの電源を入りにする信号を出力し、
前記ハウジング温度の温度低下が、第2の所定の時間の間において、ヒータを運転する温度変化判定値である第2の所定の温度変化量を超過した場合に、前記ヒータの電源を入りにするための信号を出力することを特徴とするインバータ。
【請求項2】
ポンプ部を回転駆動する同期電動機を制御するインバータであって、
該インバータは、前記同期電動機の電機子の外周を構成するハウジングの一部に取り付けられており、該インバータ内に設けられた温度検出器により該ハウジングのハウジング温度を検出するように構成され、
前記ポンプ部の端部に設けられたヒータの電源を入り切りするための信号出力部と、
前記同期電動機の回転数を決定する演算処理部と、
前記演算処理部で行なう演算に必要な制御パラメータを記憶する記憶部と、
前記同期電動機の電機子に駆動電流を供給する電力変換装置と、
を有し、
前記ハウジング温度が前記同期電動機に無効電流を流し始める温度判定値である第1の所定の温度を下回った場合には、前記電力変換装置より前記同期電動機に無効電流を流して前記同期電動機を温め、
前記ハウジング温度が前記ヒータを運転し始める温度判定値である第2の所定の温度を下回った場合には、前記ヒータの電源を入りにする信号を出力し、
前記ハウジング温度が前記第1の所定の温度を下回った場合、前記第1の所定の温度よりも高い、前記同期電動機の加温を停止する温度判定値である第4の所定の温度に達するまでの間は前記同期電動機を運転させないことを特徴とするインバータ
【請求項3】
ポンプ部を回転駆動する同期電動機を制御するインバータであって、
該インバータは、前記同期電動機の電機子の外周を構成するハウジングの一部に取り付けられており、該インバータ内に設けられた温度検出器により該ハウジングのハウジング温度を検出するように構成され、
前記ポンプ部の端部に設けられたヒータの電源を入り切りするための信号出力部と、
前記同期電動機の回転数を決定する演算処理部と、
前記演算処理部で行なう演算に必要な制御パラメータを記憶する記憶部と、
前記同期電動機の電機子に駆動電流を供給する電力変換装置と、
を有し、
前記ハウジング温度が、前記同期電動機に無効電流を流し始める温度判定値である第1の所定の温度を下回った場合には、前記電力変換装置より前記同期電動機に無効電流を流して前記同期電動機を温め、
前記ハウジング温度が前記ヒータを運転し始める温度判定値である第2の所定の温度を下回った場合には、前記ヒータの電源を入りにする信号を出力し、
前記ハウジング温度が前記第2の所定の温度を下回った場合、前記第2の所定の温度よりも高い、ポンプ運転を停止する温度判定値である第5の所定の温度に達するまでの間は前記同期電動機を運転させないことを特徴とするインバータ。
ことを特徴とするインバータ。
【請求項4】
ポンプケーシング内に設けられ羽根車を有する複数のポンプ部と、
前記複数のポンプ部をそれぞれ回転駆動する複数の同期電動機と、
前記複数の同期電動機をそれぞれ制御する複数のインバータと、
前記複数のポンプの吐き出し側に共通に設けられた圧力検出手段と、
前記複数のポンプの吐き出し側に設けられた給水管と、
前記複数のポンプの吸い込み側に設けられた吸込み管と、
前記複数のインバータの運転/停止を制御する制御装置と、
を有する給水装置において、
前記複数のインバータは、
前記複数の同期電動機のそれぞれの電機子の外周を構成するハウジングの一部に取り付けられており、該インバータ内に設けられた温度検出器により該ハウジングの温度を検出するように構成され、
前記同期電動機の回転数を決定する演算処理部と、
前記演算処理部で行なう演算に必要な制御パラメータを記憶する記憶部と、
前記同期電動機の電機子に駆動電流を供給する電力変換装置と、
前記制御装置との通信を行なう通信手段と、
を有し、
前記制御装置は、
前記給水管または吸込み管、あるいはその両方に設けられたヒータの電源を入り切りするための信号出力部と、
前記インバータとの通信を行なう通信手段と、
を有し、
前記インバータは、
前記温度検出器を使用してハウジング温度を検出し、ハウジング温度が前記同期電動機に無効電流を流し始める温度判定値である第1の所定の温度を下回った場合には、前記電力変換装置より前記同期電動機に無効電流を流して前記同期電動機を温め、
前記制御装置は、
前記同期電動機のいずれかのハウジング温度が前記ヒータを運転し始める温度判定値である第2の所定の温度を下回った場合には、前記ヒータの電源を入りにする信号を出力し、
前記ハウジング温度の温度低下が、第2の所定の時間の間において、ヒータを運転する温度変化判定値である第2の所定の温度変化量を超過した場合に、前記ヒータの電源を入りにするための信号を出力することを特徴とする給水装置
【請求項5】
ポンプケーシング内に設けられ羽根車を有する複数のポンプ部と、
前記複数のポンプ部をそれぞれ回転駆動する複数の同期電動機と、
前記複数の同期電動機をそれぞれ制御する複数のインバータと、
前記複数のポンプの吐き出し側に共通に設けられた圧力検出手段と、
前記複数のポンプの吐き出し側に設けられた給水管と、
前記複数のポンプの吸い込み側に設けられた吸込み管と、
前記複数のインバータの運転/停止を制御する制御装置と、
を有する給水装置において、
前記複数のインバータは、
前記複数の同期電動機のそれぞれの電機子の外周を構成するハウジングの一部に取り付けられており、該インバータ内に設けられた温度検出器により該ハウジングの温度を検出するように構成され、
前記同期電動機の回転数を決定する演算処理部と、
前記演算処理部で行なう演算に必要な制御パラメータを記憶する記憶部と、
前記同期電動機の電機子に駆動電流を供給する電力変換装置と、
前記制御装置との通信を行なう通信手段と、
を有し、
前記制御装置は、
前記給水管または吸込み管、あるいはその両方に設けられたヒータの電源を入り切りするための信号出力部と、
前記インバータとの通信を行なう通信手段と、
を有し、
前記インバータは、
前記温度検出器を使用してハウジング温度を検出し、ハウジング温度が前記同期電動機に無効電流を流し始める温度判定値である第1の所定の温度を下回った場合には、前記電力変換装置より前記同期電動機に無効電流を流して前記同期電動機を温め、
前記制御装置は、
前記同期電動機のいずれかのハウジング温度が前記ヒータを運転し始める温度判定値である第2の所定の温度を下回った場合には、前記ヒータの電源を入りにする信号を出力し、
前記ハウジング温度が前記第1の所定の温度を下回った場合、前記第1の所定の温度よりも高い、前記同期電動機の加温を停止する温度判定値である第4の所定の温度に達するまでの間は前記同期電動機を運転させないことを特徴とする給水装置
【請求項6】
ポンプケーシング内に設けられ羽根車を有する複数のポンプ部と、
前記複数のポンプ部をそれぞれ回転駆動する複数の同期電動機と、
前記複数の同期電動機をそれぞれ制御する複数のインバータと、
前記複数のポンプの吐き出し側に共通に設けられた圧力検出手段と、
前記複数のポンプの吐き出し側に設けられた給水管と、
前記複数のポンプの吸い込み側に設けられた吸込み管と、
前記複数のインバータの運転/停止を制御する制御装置と、
を有する給水装置において、
前記複数のインバータは、
前記複数の同期電動機のそれぞれの電機子の外周を構成するハウジングの一部に取り付けられており、該インバータ内に設けられた温度検出器により該ハウジングの温度を検出するように構成され、
前記同期電動機の回転数を決定する演算処理部と、
前記演算処理部で行なう演算に必要な制御パラメータを記憶する記憶部と、
前記同期電動機の電機子に駆動電流を供給する電力変換装置と、
前記制御装置との通信を行なう通信手段と、
を有し、
前記制御装置は、
前記給水管または吸込み管、あるいはその両方に設けられたヒータの電源を入り切りするための信号出力部と、
前記インバータとの通信を行なう通信手段と、
を有し、
前記インバータは、
前記温度検出器を使用してハウジング温度を検出し、ハウジング温度が前記同期電動機に無効電流を流し始める温度判定値である第1の所定の温度を下回った場合には、前記電力変換装置より前記同期電動機に無効電流を流して前記同期電動機を温め、
前記制御装置は、
前記同期電動機のいずれかのハウジング温度が前記ヒータを運転し始める温度判定値である第2の所定の温度を下回った場合には、前記ヒータの電源を入りにする信号を出力し、
前記ハウジング温度が前記第2の所定の温度を下回った場合、前記第2の所定の温度よりも高い、ポンプ運転を停止する温度判定値である第5の所定の温度に達するまでの間は前記同期電動機を運転させないことを特徴とする給水装置。
【請求項7】
ポンプ部を回転駆動する同期電動機を制御するインバータであって、
該インバータは、前記同期電動機の電機子の外周を構成するハウジングの一部に取り付けられており、該インバータ内に設けられた温度検出器により該ハウジングのハウジング温度を検出するように構成され、
前記同期電動機の回転数を決定する演算処理部と、
前記演算処理部で行なう演算に必要な制御パラメータを記憶する記憶部と、
前記同期電動機の電機子に駆動電流を供給する電力変換装置と、
を有し、
前記ハウジング温度が前記ポンプ部を運転し始める温度判定値である第3の所定の温度を下回った場合には、前記同期電動機を運転し、
前記ハウジング温度の温度低下が第3の所定の時間の間において、ポンプを運転する温度変化判定値である第3の所定の温度変化量を超過した場合に、前記同期電動機を運転することを特徴とするインバータ。
【請求項8】
ポンプ部を回転駆動する同期電動機を制御するインバータであって、
該インバータは、前記同期電動機の電機子の外周を構成するハウジングの一部に取り付けられており、該インバータ内に設けられた温度検出器により該ハウジングのハウジング温度を検出するように構成され、
前記同期電動機の回転数を決定する演算処理部と、
前記演算処理部で行なう演算に必要な制御パラメータを記憶する記憶部と、
前記同期電動機の電機子に駆動電流を供給する電力変換装置と、
を有し、
前記ハウジング温度が前記ポンプ部を運転し始める温度判定値である第3の所定の温度を下回った場合には、前記同期電動機を運転し、
前記ハウジング温度が前記第3の所定の温度を下回った場合でも、前記ハウジング温度が前記同期電動機に無効電流を流し始める温度判定値である第1の所定の温度を下回った場合には前記同期電動機を運転させないことを特徴とするインバータ。
【請求項9】
ポンプ部を回転駆動する同期電動機を制御するインバータであって、
該インバータは、前記同期電動機の電機子の外周を構成するハウジングの一部に取り付けられており、該インバータ内に設けられた温度検出器により該ハウジングのハウジング温度を検出するように構成され、
前記ポンプ部の端部に設けられたヒータの電源を入り切りするための信号出力部と、
前記同期電動機の回転数を決定する演算処理部と、
前記演算処理部で行なう演算に必要な制御パラメータを記憶する記憶部と、
前記同期電動機の電機子に駆動電流を供給する電力変換装置と、
を有し、
前記ハウジング温度が前記ポンプ部を運転し始める温度判定値である第3の所定の温度を下回った場合には、前記同期電動機を運転し、
前記ハウジング温度が前記第3の所定の温度を下回った場合でも、前記ハウジング温度が前記ヒータを運転し始める温度判定値である第2の所定の温度を下回った場合には前記同期電動機を運転させないことを特徴とするインバータ。
【請求項10】
請求項1または7に記載のインバータにおいて、
前記第2または第3の所定の温度変化量である温度変化判定値のデータテーブルを前記記憶部に記憶していることを特徴とするインバータ。
【請求項11】
請求項1または7に記載のインバータにおいて、
前記第2または第3の所定の温度変化量である温度変化判定値を自動計算することを特徴とするインバータ。
【請求項12】
ポンプケーシング内に設けられ羽根車を有する複数のポンプ部と、
前記複数のポンプ部をそれぞれ回転駆動する複数の同期電動機と、
前記複数の同期電動機をそれぞれ制御する複数のインバータと、
前記複数のポンプの吐き出し側に共通に設けられた圧力検出手段と、
前記複数のポンプの吐き出し側に設けられた給水管と、
前記複数のポンプの吸い込み側に設けられた吸込み管と、
前記複数のインバータの運転/停止を制御する制御装置と、
を有する給水装置において、
前記複数のインバータは、
前記複数の同期電動機のそれぞれの電機子の外周を構成するハウジングの一部に取り付けられており、該インバータ内に設けられた温度検出器により該ハウジングの温度を検出するように構成され、
前記同期電動機の回転数を決定する演算処理部と、
前記演算処理部で行なう演算に必要な制御パラメータを記憶する記憶部と、
前記同期電動機の電機子に駆動電流を供給する電力変換装置と、
前記制御装置との通信を行なう通信手段と、
を有し、
前記制御装置は、
前記給水管または吸込み管、あるいはその両方に設けられたヒータの電源を入り切りするための信号出力部と、
前記インバータとの通信を行なう通信手段と、
を有し、
前記インバータは、
前記温度検出器を使用してハウジング温度を検出し、ハウジング温度が前記同期電動機に無効電流を流し始める温度判定値である第1の所定の温度を下回った場合には、前記電力変換装置より前記同期電動機に無効電流を流して前記同期電動機を温め、
前記制御装置は、
前記同期電動機のいずれかのハウジング温度が前記ヒータを運転し始める温度判定値である第2の所定の温度を下回った場合には、前記ヒータの電源を入りにする信号を出力し、
前記インバータは、前記ハウジング温度の温度低下が第2の所定の時間の間において、ヒータを運転する温度変化判定値である第2の所定の温度変化量を超過した場合に、前記ヒータの電源を入りにするための信号を出力し、
前記制御装置は、前記ヒータを運転する温度変化判定値を自動計算することを特徴とする給水装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はインバータにより速度制御される同期電動機によって駆動するポンプ、あるいは複数のポンプを用いた給水装置において、低温時における同期電動機およびポンプの保護に関する。
【背景技術】
【0002】
ポンプの凍結防止装置として、特開2006−46151号公報(特許文献1)や特開2012−172644号公報(特許文献2)がある。
【0003】
特許文献1には、ポンプ室の近傍に配設された温度センサにより所定値以下の温度が検出された場合、ポンプを駆動するモータの回転子を回転させることなく任意の固定子巻線に通電して発熱させるようにインバータ回路に制御信号を出力することが開示されている。
また、特許文献2には、給水ユニットに設けられた温度検出手段が検出した温度が第1の設定値以下で、かつ流量検出手段が検出した給水量が第1設定流量以下である状態が所定期間継続したとき、保温用加熱手段に通電を行わせ、凍結が想定される箇所を所定温度に加熱する給水ユニットの凍結防止方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−46151号公報
【特許文献2】特開2012−172644号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1、および特許文献2では、温度センサまたは温度検出手段をポンプ室の近傍または給水ユニットに設ける必要がある。しかし、ポンプ室や給水ユニットなどの配管に温度センサを取り付ける手間、信頼性、コストの増大が問題となる。
【0006】
一方、ポンプを駆動するモータはインバータよって制御されるが、インバータには、発熱素子であるパワースイッチング素子があり、それらの発熱状況を監視し保護をかける目的で温度検出器が設けられている。よって、モータに温度センサを取付ける場合を考えると、モータとインバータのそれぞれに温度検出器を設ける必要があり、部品点数が多くなり、構造も複雑になるという問題がある。
【0007】
本発明は、上述の事情に鑑みなされたもので、簡単な構造で、低温状態にある同期電動機およびポンプを保護し、さらには安定した給水を継続することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、例えば特許請求の範囲に記載の構成を採用する。本発明は上記課題を解決する手段を複数含んでいるが、その一例を挙げるならば、ポンプ部を回転駆動する同期電動機を制御するインバータであって、同期電動機の電機子の外周を構成するハウジングの温度が、前記同期電動機に無効電流を流し始める温度判定値である第1の所定の温度を下回った場合には、前記同期電動機に無効電流を流して電動機を温め、ハウジング温度が前記ポンプ部の端部に設けられたヒータを運転し始める温度判定値である第2の所定の温度を下回った場合には、前記ヒータの電源を入りにする信号を出力するように構成する。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、低温状態にある電動機を加温し、減磁を防ぐとともに、ポンプ部内の凍結による電動機の減磁、脱調を防ぎ、安定した給水を行なうことが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】ポンプ駆動用の同期電動機とインバータが一体となった外観図を示した図である。
図2図1の回転電機部分とインバータの展開図である。
図3】本実施例1の給水装置の全体構成を示す図である。
図4】本実施例1から3のインバータの記憶部のデータ内容を説明する図である。
図5】本実施例1のメイン制御フローである。
図6】本実施例1の温度変化量判定方法の確認処理の詳細制御フローである。
図7】経過時間に対する温度変化の一次近似を説明する図である。
図8】本実施例1および3のインバータ運転/停止処理の詳細制御フローである。
図9】本実施例1の電動機加温処理の詳細制御フローである。
図10A】本実施例1のヒータ運転処理の詳細制御フローの前半部分である。
図10B】本実施例1のヒータ運転処理の詳細制御フローの後半部分である。
図11】本実施例2の給水装置の全体構成を示す図である。
図12】本実施例2のメイン制御フローである。
図13】本実施例2のインバータ運転/停止処理の詳細制御フローである。
図14A】本実施例2の凍結防止ポンプ運転処理の詳細制御フローの前半部分である。
図14B】本実施例2の凍結防止ポンプ運転処理の詳細制御フローの後半部分である。
図15】本実施例3の給水装置の全体構成を示す図である。
図16】本実施例3の制御装置の記憶部のデータ内容を説明する図である。
図17】本実施例3のインバータから制御装置への通信データの内容を示す図である。
図18】本実施例3の制御装置からインバータへの通信データの内容を示す図である。
図19】本実施例3のメイン制御フローを示す図である。
図20】本実施例3の制御装置において温度変化判定値を自動計算する場合の記憶部のデータ内容を説明する図である。
図21】本実施例3の温度変化判定値の自動設定を行なう場合の制御装置からインバータへの通信データの内容を示す図である。
図22】本実施例3の温度変化判定値の自動設定を行なう場合の制御フローである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施例を図面を用いて説明する。
【実施例1】
【0012】
本実施例1は、インバータにより速度制御される同期電動機によって駆動するポンプを用いた給水装置において、該インバータは、該同期電動機の電機子の外周を構成するハウジングの一部に取り付けられており、また該インバータ内に設けられた温度検出器を利用して該ハウジングの温度を検出するように構成されている。そして、インバータは、該温度検出器を使用してハウジング温度を検出し、ハウジング温度が第一の所定の温度(電動機を温める必要のある温度:温度1)を下回った場合に、電動機に無効電流を流して加温し、第二の所定の温度(ポンプ部を温める為にヒータを運転する必要がある温度:温度2)を下回った場合に、ヒータの電源を入りにする信号を出力するものである。電動機を温めることで起動電流による減磁を防ぐと共に、ポンプ部を温めることで凍結による減磁、脱調を防ぐものである。
【0013】
まず、本実施例の前提である、同期電動機とインバータの関係につき説明する。図1は、ポンプ駆動用の同期電動機とインバータが一体となった外観図を示した図である。
図1において、1は同期電動機本体の外周を覆うカバー、2は、後にも説明する、遠心ファン25を内蔵する冷却カバー2、3は、カバー1の外周面に取り付けられた、後に説明するインバータを収納したケース、4はノイズフィルタを内蔵した端子箱、5はエンドブラケット、6は同期電動機の回転子と一体に形成された回転軸である。
【0014】
また、図2に、上記したカバー1の内部に収納する回転電機部分とインバータの各部の展開図を示す。図2において、9は回転電機のハウジングであり、その外周表面の一部には冷却フィン22が形成されている。また、ハウジング9の内部には、図では見えないが、回転電機の固定子と回転子が挿入されており、24は、上記したエンドブラケット5とは反対側において、ハウジング9の端部に取り付けられたエンドブラケット、25は、エンドブラケット24の外側で上記回転軸6に取り付けられる遠心ファンである。また、ハウジング9の平面23には、カバー1の一部に設けられた開口部21を介して、インバータ7が取り付けられ、その後、その保護のためのカバー3が外側から取り付けられている。また、インバータは、発熱素子であるパワースイッチング素子等を有しているので、それらの発熱状況を監視し保護をかける目的で温度検出器が設けられている。26は制御&I/F基板用ケース、27は平滑コンデンサ用ケースである。そして、ハウジング9の他の端部(図の左端)には、上述した冷却カバー2が取り付けられる。また、図中の符号8は、当該冷却カバー2の壁面の略中央部に、メッシュ状に形成した、外部の空気を取り入れるために小孔を示している。
すなわち、インバータ7は、回転電機のハウジング9の一部の平面23に直接的に取付けられており、インバータ7は、伝熱性に優れた材料で構成されたハウジングと熱的に一体となり、インバータ内部にある温度検出器でインバータとハウジングの温度を一体管理することが出来る。
【0015】
図3は給水装置の全体構成を示す図である。図3において、10はポンプを示し、20で示す電動機で駆動されている。30で示すインバータは電源側より電源の供給を受け、符号32で示す電力変換部により出力電流の周波数を変化させることで、電動機20の回転速度を変化させ駆動する。31は演算処理部であり、33で示す記憶部に記憶された制御パラメータに従い、34で示す信号入力部から入力された信号に応じて、電動機20の運転/停止および回転速度変化を行なう。
61はポンプ吸込み側に設けられたヒータであり、62はポンプ吐き出し側に設けられたヒータである。このヒータは、ポンプの両端にあるのが望ましいがポンプ形状や配管形状によってはポンプの吸込み側、或いは吐き出し側だけでも良い。ヒータにはポンプと配管との接続部(フランジなど)に取り付ける形状のものや配管に巻き付ける形状のものがあるが、どのような形状であっても良い。
【0016】
インバータの信号入力部34とヒータ61、62はそれぞれ符号50―4、50−5で示す通信/制御線で接続され、ヒータの運転/停止信号をやり取りする。
【0017】
次に、インバータ30の記憶部33に記憶する、揮発性メモリの内容と不揮発性メモリの内容について説明する。
【0018】
図4(a)に揮発性メモリの内容、図4(b)に不揮発性メモリの内容を示す。なお、インバータ内部に記憶部を持たず、インバータ外部に記憶装置を取り付けて代用しても差し支えない。
【0019】
図4(a)において、揮発性メモリの1000番地にはインバータ内部にある温度検出器で検出した、ハウジングの現在の温度TMPを記憶する。
1202番地には、後述する不揮発性メモリ3000番地で温度変化判定値の設定方法DGMが0:設定値の場合、不揮発性メモリ2202番地のヒータを運転する温度変化判定値TD2が記憶され、DGMが1:データテーブル、あるいは2:自動設定の場合に、データテーブルから決定、または自動設定された判定値を記憶する。
1211番地、1212番地は、温度変化判定を行なう際の、判定を開始した時点でのハウジング温度DGA、判定を終了した時点でのハウジング温度DGBをそれぞれ記憶する。
1213番地には温度変化判定を自動設定する際に、温度変化判定処理の開始前の温度DGCを記憶する。
1302番地には温度変化判定を行なう時間を設定するタイマの残り時間TN2を記憶する。
1304番地には低温を検出して電動機に無効電流を流し始めた後、電動機が加温され、減磁の恐れがなくなるまで運転を禁止する時間を設定するタイマの残り時間TN4を記憶し、1305番地には低温を検出してヒータを運転し始めた後、ポンプ部が加温され、減磁や脱調の恐れがなくなるまで運転を禁止する時間を設定するタイマの残り時間TN5を記憶する。
1306番地には低温を検出して電動機に無効電流を流し始めた後、無効電流を流し続ける時間を設定するタイマの残り時間TN6を記憶し、1307番地には低温を検出してヒータを運転し始めた後、ヒータの電源を入れ続ける時間を設定するタイマの残り時間TN7を記憶する。
【0020】
また、図4(b)において、2101番地には電動機に無効電流を流し始める温度判定値(温度1)TP1を予め記憶しておく。
2102番地にはヒータを運転し始める温度判定値(温度2)TP2を予め記憶しておく。
2104番地には電動機に無効電流を流すのを停止する温度判定値(温度4)TP4を予め記憶しておく。
2105番地にはポンプの運転を停止する温度判定値(温度5)TP5を予め記憶しておく。
2202番地には、後述する不揮発性メモリ3000番地で温度変化判定値の設定方法DGMが0:設定値に設定された場合に、ヒータを運転する温度変化判定値として参照する値TD2を予め記憶しておく。
2302番地には温度変化判定の確認時間TM2を予め記憶しておく。
2304番地には、低温を検出して電動機に無効電流を流し始めた後、電動機が加温され、減磁の恐れがなくなるまで運転を禁止する時間TM4を予め記憶しておく。
2305番地には、低温を検出してヒータを運転し始めた後、ポンプ部が加温され、減磁や脱調の恐れがなくなるまで運転を禁止する時間TM5を予め記憶しておく。
2306番地には、低温を検出して電動機に無効電流を流し始めた後、無効電流を流し続ける時間TM6を予め記憶しておく。
2307番地には、低温を検出してヒータを運転し始めた後、ヒータの電源を入れ続ける時間TM7を予め記憶しておく。
3000番地には温度変化判定値の設定方法DGMを設定する。DGMが0(設定値)の場合は、温度変化判定値として2202番地に記憶されているTD2を揮発性メモリ1202番地にDG2として記憶し、DGMが1(データテーブル)の場合は不揮発性メモリ3001番地から3307番地を用いて温度変化判定値を算出し、その結果を揮発性メモリ1202番地にDG2として記憶する。詳細は制御フローにおいて説明する。また、DGMが2(自動設定)の場合についても後述の制御フローにおいて説明する。
【0021】
なお、以上の説明は、本実施例で使用する部分についてのみとした。上記にて説明のない、その他の部分については、以降、他の実施例で使用する際に説明する。
【0022】
次に、本実施例の制御フローについて図5を用いて説明する。
【0023】
図5は本実施例のメイン制御フローである。100ステップにおいて初期化処理として各制御パラメータの読み出し/書き込みを行なう。120ステップで温度変化量判定方法の確認処理を行ない、処理の結果により揮発性メモリ1202番地、1203番地の温度変化量判定値DG2、DG3を記憶する。130ステップで運転/停止の状態を変更する。131ステップで現在のハウジング温度を確認し、140ステップで電動機加温処理を行ない、150ステップでヒータ運転処理を行ない、120ステップに戻る。
【0024】
次に、120ステップの温度変化量判定方法の確認処理の詳細を図6を用いて説明する。
【0025】
図6において、まず、200ステップで不揮発性メモリ3000番地に予め記憶しておいた温度変化判定の方法選択DGMを確認し、DGMが0に設定されている場合には手動設定となる。すなわち、判定基準値を手動設定として、211ステップで2202番地に予め記憶しておいたヒータ運転のための温度変化量判定値TD2を読み出し、揮発性メモリ1202番地のDG2に判定基準値として記憶し、212ステップで2203番地に予め記憶しておいたポンプ運転のための温度変化量判定値TD3を読み出し、揮発性メモリ1203番地のDG3に判定基準値として記憶し、図5の130ステップに進む。
【0026】
DGMが1に設定されている場合にはデータテーブル設定となる。すなわち、220ステップで熱時定数を選択する。不揮発性メモリ3201番地に予め記憶しておいた時定数選択DT1を確認し、1が設定されている場合には、221ステップで3301番地に予め記憶しておいた熱時定数選択1に対応する定数DC1を定数HR1とする。DT1が2に設定されている場合には、222ステップで3302番地に予め記憶しておいた熱時定数選択2に対応する定数DC2を定数HR1とする。同様にDT1が6に設定されている場合には、226ステップで3306番地に予め記憶しておいた熱時定数選択6に対応する定数DC6を定数HR1とする。
【0027】
経過時間に対する温度変化量は図7のように時定数により変化する曲線で表現されるが、ここでは計算簡易化のために温度変化の初期段階について一次近似を行なう。温度変化は温度差に比例し、熱時定数(熱容量の逆数)に反比例するため、例えばヒータ運転の判定値を求める場合には、不揮発性メモリ2102番地のヒータ運転の温度判定値TD2、3001番地の基準温度HGB、3002番地の基準熱時定数HRB、選択された熱時定数HR1から判定値DG2を式(1)で求める。

DG2=TD2×(DGA÷HGB)×(HR1÷HRB) ・・・(1)

そして、揮発性メモリ1202番地のDG2に判定基準値として記憶する。
同様にポンプ運転の判定値を求める場合には、不揮発性メモリ2103番地のポンプ運転の温度判定値TD3を用いて判定値DG3を式(2)で求める。

DG3=TD3×(DGA÷HGB)×(HR1÷HRB) ・・・(2)

そして、揮発性メモリ1203番地のDG3に判定基準値として記憶する。228ステップで温度変化量判定値を計算し、記憶した後、図5の130ステップに進む。
【0028】
なお、220ステップから228ステップについては、温度変化判定値の確認処理の度に計算をしなくとも、不揮発性メモリ3101番地の熱時定数HR1に0以外の値が記憶されている場合には、計算を行なわずに、130ステップに進むだけでも良い。またHR1の制御パラメータを直接設定できるようにし、実際の温度変化に合わせて微調整できるようにしても良い。
【0029】
DGMが2に設定されている場合には自動設定となる。すなわち、231ステップで現在の温度TMPを揮発性メモリの1213番地にDGCとして記憶した後、232ステップでタイマ6の設定時間の間、電動機を加温する。233ステップで温度TMPを揮発性メモリの1211番地にDGAとして記憶した後、234ステップでタイマ2の設定時間の間、加温を停止し、冷却する。235ステップで温度TMPを揮発性メモリの1212番地にDGBとして記憶した後、例えばヒータ運転の判定値を求める場合には、不揮発性メモリの2102番地のTP2と、DGA、DGB、DGCから判定値DG2を式(3)で求める。
DG2=(DGA−DGB)×(DGA−TP2)×(DGA−DGC) ・・・(3)

そして、揮発性メモリ1202番地のDG2に判定基準値として記憶する。同様にポンプ運転の判定値を求める場合には、不揮発性メモリの2103番地のTP3を用いて判定値DG3を式(4)で求める。

DG3=(DGA−DGB)×(DGA−TP3)×(DGA−DGC) ・・・(4)

そして、揮発性メモリ1203番地のDG3に判定基準値として記憶する。236ステップで温度変化量判定値を計算し、記憶した後、図5の130ステップに進む。
【0030】
なお、231ステップから236ステップについては、温度変化判定値の確認処理の度に計算をしなくとも、初回の計算結果を不揮発性メモリ2202番地、2203番地の判定値TD2、TD3に記憶しておき、以降はTD2、TD3として0以外の値が記憶されている場合には、計算を行なわずに、130ステップに進むだけでも良い。
【0031】
ハウジングよりもポンプ部が冷えやすい場合、ハウジングがヒータ運転、あるいはポンプ運転が必要な温度まで低下していなくても、ポンプ部は運転が必要な温度まで低下している恐れがある。このように温度変化量判定値を定めておくことで、ハウジングの温度変化から外気温を計算し、外気温を推定することで、推定した外気温がポンプ部の凍結の恐れがある温度である場合にはヒータもしくはポンプを運転させることで凍結を防止し、脱調や減磁を防ぐことができる。
【0032】
次に、図5の130ステップのインバータ運転/停止処理の詳細について図8を用いて説明する。
【0033】
図8において、300ステップで運転指令の入力があった場合、320ステップに進み、電動機の加温中の間の電動機運転禁止時間ではない(タイマ4のカウント中ではない)か否かを確認し、運転禁止時間でない場合には330ステップに進む。330ステップで、ヒータの運転中の間の電動機運転禁止時間ではない(タイマ5のカウント中ではない)か否かを確認し、運転禁止時間でない場合には、331ステップでポンプの運転を開始し、図5の131ステップに進む。
320ステップまたは330ステップのいずれかで運転禁止時間であった場合には、ポンプの運転を開始せずに図5の131ステップに進む。
300ステップで運転指令の入力がなく、310ステップで停止指令の入力があった場合には、341ステップでポンプの運転を停止し、図5の131ステップに進む。停止指令の入力がない場合には、何もせずに図5の131ステップに進む。
【0034】
なお、電動機の加温中の間の電動機運転禁止時間の間は運転を許可しないのと同様に、ハウジング温度が電動機を加温する温度判定値TP1の温度を下回った場合、電動機に無効電流を流すのを停止する温度判定値TP4にハウジング温度が達するまでは運転を許可しないようにする。
【0035】
また、ヒータの運転中の間の電動機運転禁止時間の間は運転を許可しないのと同様に、ハウジング温度がヒータを運転する温度判定値TP2の温度を下回った場合、ポンプの運転を停止する温度判定値TP5にハウジング温度が達するまでは運転を許可しないようにする。以上の処理は、電動機の運転、停止を短い時間に何度も繰り返してしまうことにより、ポンプの寿命が短くなることを防止するためである。
【0036】
次に、図5の140ステップの電動機加温処理の詳細について図9を用いて説明する。
【0037】
図9において、400ステップで電動機が加温運転中ではない場合には、401ステップでタイマ6を停止させ、402ステップで揮発性メモリ1000番地の現在の温度TMPが不揮発性メモリ2101番地に予め記憶しておいた電動機を加温する温度判定値TP1以上であるか否かを確認し、TMPがTP1以上である場合、加温が不要であると判断し、何もせずに図5の150ステップに進む。
【0038】
402ステップでTMPがTP1未満である場合、すなわち、ハウジング温度が第1の所定の温度を下回った場合、加温が必要であると判断し、431ステップで電動機の加温を開始し、432ステップで運転状態を電動機加温にし、433ステップで不揮発性メモリ2304番地に予め記憶しておいた電動機の加温中の間の電動機運転禁止時間タイマTM4の設定値を、揮発性メモリ1304番地のタイマ4残り時間TN4に記憶し、TN4のカウントダウンを開始する。434ステップで不揮発性メモリ2306番地に予め記憶しておいた電動機を温める時間設定用タイマTM6の設定値を、揮発性メモリ1306番地のタイマ6残り時間TN6に記憶し、TN6のカウントダウンを開始し、図5の150ステップに進む。
【0039】
400ステップで電動機が加温運転中である場合には、440ステップでTN6のカウントが終了していない場合には、何もせずに図5の150ステップに進む。
TN6のカウントが終了している場合には、441ステップで電動機の加温を停止し、442ステップで運転状態の電動機加温を解除し(該当ビットを0にし)、443ステップでタイマ4を停止させ、444ステップでタイマ6を停止させ、図5の150ステップに進む。
【0040】
次に、図5の150ステップのヒータ運転処理の詳細について図10を用いて説明する。
【0041】
図10は紙面の都合上、図10A図10Bに分割しているが、符号A、B、Cで連続している。以下の説明は、図10A図10Bをまとめて図10として説明する。図10において、500ステップでヒータが運転中でない場合には、501ステップでタイマ7を停止させ、502ステップで揮発性メモリ1000番地の現在の温度TMPが不揮発性メモリ2102番地に予め記憶しておいたヒータを運転する温度判定値TP2以上であるか否かを確認し、TMPがTP2以上である場合、ヒータの温度変化判定用のタイマ2が停止中であるか否かを確認し、停止中である場合には511ステップで現在の温度TMPを温度変化判定開始時の温度DGAとして揮発性メモリ1211番地に記憶し、512ステップで不揮発性メモリ2302番地に予め記憶しておいた電動機の温度変化判定用タイマTM2の設定値を、揮発性メモリ1302番地のタイマ2残り時間TN2に記憶し、TN2のカウントダウンを開始し、図5の120ステップに戻る。
【0042】
510ステップでタイマ2が停止中でない場合、520ステップでタイマ2がカウント中であるか否かを確認し、カウント中である場合は、何もせずに図5の120ステップに戻る。
【0043】
520ステップでタイマ2がカウント中でない場合、521ステップで現在の温度TMPを温度変化判定開始時の温度DGBとして揮発性メモリ1212番地に記憶し、522ステップでタイマ2を停止させる。530ステップでDGAとDGBの差分を確認し、温度変化量である、DGAとDGBの差が揮発性メモリ1202番地に記憶してあるDG2未満である場合には、何もせずに図5の120ステップに戻る。
【0044】
502ステップでTMPがTP2未満である場合、すなわち、ハウジング温度が第2の所定の温度を下回った場合、および、530ステップでDGAとDGBの差がDG2以上であった場合、すなわち、第2の所定の温度変化量を超過した場合には、ヒータの運転が必要であると判断し、531ステップでヒータの運転を開始し、532ステップで運転状態をヒータ運転にし、533ステップで不揮発性メモリ2305番地に予め記憶しておいたヒータの運転中の間の電動機運転禁止時間タイマTM5の設定値を、揮発性メモリ1305番地のタイマ5残り時間TN5に記憶し、TN5のカウントダウンを開始する。534ステップで不揮発性メモリ2307番地に予め記憶しておいたヒータを運転する時間設定用タイマTM7の設定値を、揮発性メモリ1307番地のタイマ7残り時間TN7に記憶し、TN7のカウントダウンを開始し、図5の120ステップに戻る。
【0045】
500ステップでヒータが運転中である場合には、502ステップでタイマ2を停止させ、540ステップでTN7のカウントが終了していない場合には、何もせずに図5の120ステップに戻る。
【0046】
TN7のカウントが終了している場合には、541ステップでヒータの運転を停止し、542ステップで運転状態のヒータ運転を解除し(該当ビットを0にし)、543ステップでタイマ5を停止させ、544ステップでタイマ7を停止させ、120ステップに戻る。
【0047】
以上のように、本実施例では、インバータが、同期電動機のハウジングの一部に取り付けられており、インバータ内に設けられた温度検出器を使用してハウジング温度を検出し、インバータは、ハウジング温度が第1の所定の温度を下回った場合に、電動機に無効電流を流して加温し、第2の所定の温度を下回った場合に、ポンプ部端部に設けられたヒータの電源を入りにする信号を出力する。これにより、配管に温度センサを取り付ける手間、信頼性、コストの増大の問題を解消し、かつ、電動機とインバータのそれぞれに温度検出器を設ける必要がなく、部品点数が少なく、構造も簡単で、電動機を温めることで起動電流による減磁を防ぐと共に、ポンプ部を温めることで凍結による減磁、脱調を防ぐことが出来き、低温状態にある同期電動機およびポンプを保護し、さらには安定した給水を継続することが可能となる。また、ヒータを過剰に運転させないことで省エネを図ることが出来る。
【実施例2】
【0048】
本実施例2は、実施例1と同様に、インバータにより速度制御される同期電動機によって駆動するポンプを用いた給水装置において、該インバータは、該同期電動機の電機子の外周を構成するハウジングの一部に取り付けられており、また該インバータ内に設けられた温度検出器を利用して該ハウジングの温度を検出するように構成されている。そして、該温度検出器を使用してハウジング温度を検出し、ハウジング温度が第3の所定の温度(凍結を防止する為にポンプを運転する必要がある温度:温度3)を下回った場合に、ポンプを運転するものである。ポンプを運転し続けることで水の凍結を防ぐと同時に、水が凍結するより高い温度で電動機を始動させておくことで電動機の減磁を防ぐものである。
【0049】
以下、図面を用いて説明する。図11は本実施例の全体構成が示されている。構成は実施例1とほぼ同等であり、実施例1の、ヒータ61、62、信号入力部34、通信/制御線50−4、50−5が不要である。
【0050】
本実施例における、インバータ30の記憶部33に記憶する、揮発性メモリの内容と不揮発性メモリの内容を図4を用いて説明する。尚、インバータ内部に記憶部を持たず、インバータ外部に記憶装置を取り付けて代用しても差し支えない。内容は実施例1とほぼ同等であるため、差異のある部分のみ説明する。
【0051】
図4(a)において、1203番地には、後述する不揮発性メモリ3000番地で温度変化判定値の設定方法DGMが0:設定値の場合、不揮発性メモリ2203番地のヒータを運転する温度変化判定値TD3が記憶され、DGMが1:データテーブル、あるいは2:自動設定の場合に、データテーブルから決定、または自動設定された判定値を記憶する。
1303番地には温度変化判定を行なう時間を設定するタイマの残り時間TN3を記憶する。
1308番地には低温を検出して電動機を運転させ始めた後、電動機の運転を続ける時間を設定するタイマの残り時間TN8を記憶する。
【0052】
図4(b)において、2001番地には低温検出時のポンプ運転速度(電動機の回転速度)HzCを予め記憶しておく。HzCの低速で運転を続けることでポンプ部内および前後の配管における水の凍結を防ぐ。
2103番地にはポンプを運転し始める温度判定値(温度3)TP3を予め記憶しておく。2106番地にはポンプの運転を停止する温度判定値(温度6)TP6を予め記憶しておく。
2203番地には、後述する不揮発性メモリ3000番地で温度変化判定値の設定方法DGMが0:設定値が設定された場合に、ポンプを運転する温度変化判定値として参照する値TD3を予め記憶しておく。
2303番地には温度変化判定の確認時間TM3を予め記憶しておく。
2308番地には低温を検出して電動機を運転させ始めた後、電動機の運転を続ける時間TM8を予め記憶しておく。
【0053】
3000番地には温度変化判定値の設定方法DGMを設定する。DGMが0(設定値)の場合は、温度変化判定値として2203番地に記憶されているTD3を揮発性メモリ1203番地にDG3として記憶し、DGMが1(データテーブル)の場合は不揮発性メモリ3001番地から3307番地を用いて温度変化判定値を算出し、その結果を揮発性メモリ1203番地にDG3として記憶する。詳細は実施例1の制御フローと同様である。DGMが2(自動設定)の場合について詳細は実施例1の制御フローと同様である。
【0054】
次に、本実施例の制御フローについて図12を用いて説明する。
【0055】
図12は本実施例のメイン制御フローである。100−2ステップにおいて初期化処理として各制御パラメータの読み出し/書き込みを行なう。120−2ステップで温度変化量判定方法の確認処理を行ない、処理の結果により揮発性メモリ1202番地、1203番地の温度変化量判定値DG2、DG3を記憶する。130−2ステップで運転/停止の状態を変更する。131−2ステップで現在のハウジング温度を確認し、160ステップで凍結防止ポンプ運転処理を行ない、120−2ステップに戻る。
【0056】
120−2ステップの温度変化量判定方法の確認処理については実施例1と同様であるので説明を省略する。
【0057】
次に、130−2ステップのインバータ運転/停止処理の詳細を図13を用いて説明する。
【0058】
図13において、300−2ステップで運転指令の入力があった場合、331−2ステップでポンプの運転を開始し、 図12の131−2ステップに進む。
300−2ステップで運転指令の入力がなく、310−2ステップで停止指令の入力があった場合には、340−2ステップでポンプが低温時の凍結防止運転時間ではない(タイマ8のカウント中ではない)か否かを確認し、凍結防止運転中でない場合には341−2ステップに進む。341−2ステップでポンプの運転を停止し、図12の131−2ステップに進む。停止指令の入力がない場合、またはポンプが凍結防止運転中である場合には、何もせずに図12の131−2ステップに進む。
【0059】
次に、160ステップの凍結防止ポンプ運転処理の詳細を図14を用いて説明する。
図14は紙面の都合上、図14A図14Bに分割しているが、符号A、B、Cで連続している。以下の説明は、図14A図14Bをまとめて図14として説明する。
【0060】
図14において、600ステップでポンプが凍結防止運転中ではない場合には、601ステップでタイマ8を停止させ、602ステップで揮発性メモリ1000番地の現在の温度TMPが不揮発性メモリ2103番地に予め記憶しておいたポンプを運転する温度判定値TP3以上であるか否かを確認し、TMPがTP3以上である場合、ポンプの温度変化判定用のタイマ3が停止中であるか否かを確認し、停止中である場合には611ステップで現在の温度TMPを温度変化判定開始時の温度DGAとして揮発性メモリ1211番地に記憶し、612ステップで不揮発性メモリ2303番地に予め記憶しておいたポンプの温度変化判定用タイマTM3の設定値を、揮発性メモリ1303番地のタイマ3残り時間TN3に記憶し、TN3のカウントダウンを開始し、図12の120−2ステップに戻る。
【0061】
610ステップでタイマ3が停止中でない場合、620ステップでタイマ3がカウント中であるか否かを確認し、カウント中である場合は、何もせずに図12の120−2ステップに戻る。
【0062】
620ステップでタイマ3がカウント中でない場合、621ステップで現在の温度TMPを温度変化判定開始時の温度DGBとして揮発性メモリ1212番地に記憶し、622ステップでタイマ3を停止させる。630ステップでDGAとDGBの差分を確認し、温度変化量である、DGAとDGBの差が揮発性メモリ1203番地に記憶してあるDG3未満である場合には、何もせずに図12の120−2ステップに戻る。
【0063】
602ステップでTMPがTP3未満である場合、すなわち、ハウジング温度が第3の所定の温度を下回った場合、および、630ステップでDGAとDGBの差がDG3以上であった場合、すなわち、第3の所定の温度変化量を超過した場合には、ポンプの凍結防止運転が必要であると判断し、631ステップでポンプの凍結防止運転を開始し、632ステップで運転状態を凍結防止運転にし、634ステップで不揮発性メモリ2308番地に予め記憶しておいたポンプを凍結防止運転する時間設定用タイマTM8の設定値を、揮発性メモリ1308番地のタイマ8残り時間TN8に記憶し、TN8のカウントダウンを開始し、図12の120−2ステップに戻る。
【0064】
なお、図14には記載していないが、ハウジング温度が第3の所定の温度を下回った場合、602ステップで判断された後、631ステップでポンプの凍結防止運転を開始する前に、電動機に無効電流を流し始める温度判定値TP1である第1の所定の温度、またはポンプ部を温める為にヒータを運転する必要がある温度判定値TP2である第2の所定の温度を下回っていないかの判断を追加し、いずれかで下回っている場合は、電動機を運転させないようにする。これは、第1の所定の温度を下回っている場合には,電動機を運転させようとすると減磁する可能性がある温度であるので、運転させようとすることで電動機が減磁してしまうことを防ぐためである。また、第2の所定の温度を下回っている場合には,ポンプ内が凍結している可能性のある温度であるので、ポンプケーシング内が凍結している可能性があるので運転させられないためである。
【0065】
600ステップでポンプが凍結防止運転中である場合には、602ステップでタイマ3を停止させ、640ステップでTN8のカウントが終了していない場合には、何もせずに図12の120−2ステップに戻る。
TN8のカウントが終了している場合には、641ステップでポンプの凍結防止運転を停止し、642ステップで運転状態の凍結防止を解除し(該当ビットを0にし)、644ステップでタイマ8を停止させ、図12の120−2ステップに戻る。
【0066】
以上のように、本実施例によれば、インバータが、同期電動機のハウジングの一部に取り付けられており、インバータ内に設けられた温度検出器を使用してハウジング温度を検出し、インバータは、ハウジング温度が第3の所定の温度(凍結を防止する為にポンプを運転する必要がある温度:温度3)を下回った場合に、ポンプを運転する。ポンプを運転し続けることで水の凍結を防ぐと同時に、水が凍結するより高い温度で電動機を始動させておくことで電動機の減磁を防ぐことが出来る。すなわち、ポンプを運転することで凍結を防止することが出来る。
【0067】
なお、実施例1と実施例2を組み合わせても良い。実施例1と実施例2を組み合わせると、温度3(凍結を防止する為にポンプを運転する必要がある温度)の設定値が、温度1(電動機を温める必要のある温度)、温度2(ポンプ部を温める為にヒータを運転する必要がある温度)よりも高く設定されているために、一見、ポンプが凍結防止運転するだけのように見えるが、停電やメンテナンスの為に電源を遮断した場合には温度1、温度2まで低下する可能性があり、実施例1と実施例2を組み合わせることで電源が遮断されている間に温度が低下してしまった場合への対応も可能となる。
【実施例3】
【0068】
本実施例3は、複数のインバータにより速度制御される複数の同期電動機によって駆動する複数のポンプを用いた給水装置において、実施例1と同様に、該インバータは、該同期電動機の電機子の外周を構成するハウジングの一部に取り付けられており、また該インバータ内に設けられた温度検出器を利用して該ハウジングの温度を検出するように構成されている。そして、各々のインバータが、温度検出器を使用してハウジング温度を検出し、ハウジング温度が第1の所定の温度(電動機を温める必要のある温度:温度1)を下回った場合に、電動機に無効電流を流して加温し、第2の所定の温度(ポンプ部を温める為にヒータを運転する必要がある温度:温度2)を下回った場合に、ヒータの電源を入りにする信号を制御装置が出力するものである。
【0069】
本実施例3は、実施例1を給水装置に対し効率よく適用するものである。
【0070】
以下、図面を用いて説明する。図15は本実施例の全体構成である。図15において、10−1、10−2、10−3はポンプを示し、20−1、20−2、20−3で示す電動機で駆動されている。ここでは便宜上番号の小さい方より1号機ポンプ、2号機ポンプ、3号機ポンプ、および1号機電動機、2号機電動機、3号機電動機、と称する。これらのポンプの吸込み側は11で示す吸込み管を介して水源側と接続される。水源側は、直結方式では図示していない水道本管からの水の供給を受け、受水槽方式では図示していない受水槽から水の供給を受ける。12−1、12−2、12−3、14−1、14−2、14−3はそれぞれ仕切り弁、13−1、13−2、13−3はそれぞれ逆止め弁、15は給水管を示し、17は給水管15に備わり、ここの圧力に応じて電気信号を発する圧力検出手段である。この圧力検出手段の検出値を基にポンプの吐き出し圧力を制御(例えば吐き出し圧一定制御、推定末端圧一定制御)する。更に、需要側として、給水管15端末の先が直送式の場合には、需要側給水管と接続して、例えば集合住宅等の水栓に給水する。高置水槽式の場合には、この需要側給水管と接続して高置水槽へ給水する。18は給水管15に備わり、急激な圧力変動を抑えるための圧力タンクである。
30−1、30−2、30−3で示す1号機インバータ、2号機インバータ、3号機インバータは電源側より電源の供給を受け、各々が32−1、32−2、32−3で示す電力変換装置により出力電流の周波数を変化させることで、電動機20−1、20−2、20−3の回転速度を変化させ駆動する。31−1、31−2、31−3は演算処理部であり、33−1、33−2、33−3で示す記憶部に記憶された制御パラメータに従い、34−1、34−2、34−3で示す信号入力部から入力された信号に応じて、電動機20−1、20−2、20−3の運転/停止および回転速度変化を行なう。
【0071】
40は制御装置であり、インバータ30−1、30−2、30−3を通じてポンプの運転台数を管理する。42は演算処理部であり、43で示す記憶部に記憶された制御パラメータに従い、44で示す信号入力部から入力された信号に応じて、ポンプの運転台数を管理する。制御装置40とインバータ30−1、30−2、30−3はそれぞれ50−1、50−2、50−3で示す通信/制御線で接続され、制御装置40およびインバータ30−1、30−2、30−3の制御に必要な信号をやり取りする。
【0072】
61はポンプ吸込み側に設けられたヒータであり、62はポンプ吐き出し側に設けられたヒータである。ポンプの両端にあるのが望ましいがポンプ形状や配管形状によってはポンプの吸込み側、或いは吐き出し側だけでも良い。ヒータにはポンプと配管との接続部(フランジなど)に取り付ける形状のものや配管に巻き付ける形状のものがあるが、どのような形状であっても良い。
【0073】
制御装置の信号入力部44とヒータ61、62は、それぞれ50−4、50−5で示す通信/制御線で接続され、ヒータの運転/停止信号をやり取りする。
【0074】
次に、本実施例における、インバータ30−1、30−2、30−3の記憶部33−1、33−2、33−3に記憶する、揮発性メモリの内容と不揮発性メモリの内容を図4を用いて説明する。尚、インバータ内部に記憶部を持たず、インバータ外部に記憶装置を取り付けて代用しても差し支えない。また、内容は実施例1とほぼ同等であるため、差異のある部分のみ説明する。
【0075】
図4(a)において、揮発性メモリの1001番地には現在の運転状態PNを記憶する。
1つの変数で複数の運転状態を記憶するため、例えばPNの変数の各ビットをそれぞれの状態に割り当て、1ビット目がHighで停止中、2ビット目がHighで運転中、3ビット目がHighで電動機加温中、4ビット目がHighでヒータ運転中、5ビット目がHighで凍結防止のための運転中、というように記憶すると良い。これによりPNが1であれば停止中、PNが2であれば運転中、PNが4であればモータ加温中、PNが12(=4+8)であればモータ加温中かつヒータ運転中、であると判断できる。
図4(b)において、不揮発性メモリの2000番地にはポンプの号機番号NOを予め記憶しておく。制御装置とインバータとが1:多のマルチ接続で通信を行なう場合、制御装置がインバータを区別するのに用いる。制御装置とインバータとをそれぞれ1:1で接続する場合には不要である。
【0076】
次に、制御装置40の記憶部43に記憶する、揮発性メモリの内容と不揮発性メモリの内容について図16を用いて説明する。図16(a)に揮発性メモリの内容、図16(b)に不揮発性メモリの内容を示す。尚、制御装置内部に記憶部を持たず、制御装置外部に記憶装置を取り付けて代用しても差し支えない。
【0077】
図16(a)において、1101番地には現在停止中のポンプ番号SNOを記憶する。1つの変数で複数のポンプの状態を記憶するため、例えばSNOの変数の各ビットをそれぞれの状態に割り当て、1ビット目がHighで1号機ポンプ停止中、2ビット目がHighで2号機ポンプ停止中、3ビット目がHighで3号機ポンプ停止中、というように記憶すると良い。これによりSNOが1であれば1号機ポンプ停止中、SNOが2であれば2号機ポンプ停止中、PNが3(=1+2)であれば1号機ポンプおよび2号機ポンプが停止中、であると判断できる。
同様に1102番地には現在運転中のポンプ番号RNOを各ビットで、
1103番地には現在電動機加温中のポンプ番号DNOを各ビットで、
1104番地には現在ヒータ運転中のポンプ番号HNOを各ビットで記憶する。
【0078】
図16(b)において、不揮発性メモリの2000番地にはポンプの号機番号NOを予め記憶しておく。制御装置の号機番号は0とする。インバータとが1:多のマルチ接続で通信を行なう場合、制御装置がインバータを区別するのに用いる。制御装置とインバータとをそれぞれ1:1で接続する場合には不要である。
【0079】
不揮発性メモリの2002番地には給水装置のポンプ台数PNUMを予め記憶しておく。制御装置は1からPNUMに設定された値までの号機番号のインバータと通信を行ない、インバータの制御を行なう。
【0080】
次に、通信データについて説明する。
【0081】
図17にはインバータから制御装置に対し、通信/制御線50−1、50−2、50−3を介して送信する通信データの例を示す。なお、通信ではなく、データ数と同じ数のアナログ信号線、またはデジタル信号線を用意し、アナログ信号線の電圧または電流、あるいはデジタル信号線のHigh/Lowでデータのやり取りを行なうものでも良い。
【0082】
図17において、インバータからはまず通信開始のビット列STAを送信する。続けて送信元の号機番号(自機のポンプ号機番号)NO、送信先の号機番号(制御装置を示す「0」)TO、現在の運転状態PN、現在の温度TMP、ヒータを運転する必要がある場合に指示を出すための運転指示HRD(HRDが0で運転不要、HRDが1で運転必要)を送信し、これらのデータが正しく送信されていることを確認するための特定の計算式を用いて計算したデータのチェックサムの値CRCを送信し、最後に通信終了のビット列STPを送信する。制御装置は受信したデータから特定の計算式を用いて計算したチェックサムの値と、受信したチェックサム値CRCの比較を行なうことで、データが正しく受信できたか否かを判断できる。
【0083】
図18に、制御装置からインバータに対し、通信/制御線50−1、50−2、50−3を介して送信する通信データの例を示す。
【0084】
図18において、制御装置からはまず通信開始のビット列STAを送信する。続けて送信元の号機番号(制御装置を示す「0」)NO、送信先の号機番号(ポンプ号機番号)TO、運転/停止指示DRCを送信し、これらのデータが正しく送信されていることを確認するための特定の計算式を用いて計算したデータのチェックサムの値CRCを送信し、最後に通信終了のビット列STPを送信する。インバータは受信したデータから特定の計算式を用いて計算したチェックサムの値と、受信したチェックサム値CRCの比較を行なうことで、データが正しく受信できたか否かを判断できる。
制御装置は、インバータから送られてきた現在の運転状態を基に各々のインバータの運転状態を揮発性メモリ1101番地から1103番地にそれぞれ記憶しておく。
運転/停止指示DRCが0の場合は、インバータは電動機を停止させる。運転/停止指示DRCが1の場合は、インバータは電動機を運転させ、予め設定された目標とする吐出側圧力となるよう電動機の回転速度を変化させる。本実施例では圧力制御の詳細の説明は省略する。
【0085】
次に、本実施例の制御フローについて図19を用いて説明する。
【0086】
図19は本実施例3のメイン制御フローである。図19において、100−3ステップにおいて初期化処理として各制御パラメータの読み出し/書き込みを行なう。120−3ステップで温度変化量判定方法の確認処理を行ない、処理の結果により揮発性メモリ1202番地、1203番地の温度変化量判定値DG2、DG3を記憶する。121ステップで制御装置から各々のインバータに対して通信を行なう。122ステップで各々のインバータから制御装置に対して通信を行なう。インバータは121ステップの制御装置からの通信内容を受け、130−3ステップで運転/停止の状態を変更する。制御装置は122ステップの各々のインバータからの通信内容を受け、各々のインバータの現在の運転状態を把握し、揮発性メモリの該当番号に記憶する。ヒータの運転指示がある場合には制御装置はヒータの電源を入りにする。インバータは131−3ステップで現在のハウジング温度を確認し、140−3ステップで電動機加温処理を行ない、150−3ステップで制御装置がヒータ運転処理を行ない、120−3ステップに戻る。各々の制御処理の詳細は実施例1と同様であるため、説明を省略する。
【0087】
以上、本実施例によれば、低温になる前に電動機を加温、あるいはヒータを運転することで常にポンプを起動可能な状態にすることで、給水が必要になった際にすぐにポンプを起動することが出来る。これにより低温時においても安定した給水を行なうことが可能となる。
また、制御装置を用いることで温度変化判定値の自動設定をより正確に設定することが可能となる。以下、それについて説明する。
【0088】
図20に、より正確に温度変化判定値の自動設定を行なう場合の制御装置の記憶部に記憶する、揮発性メモリの内容と不揮発性メモリの内容を示す。 図20(a)に揮発性メモリの内容、図20(b)に不揮発性メモリの内容を示す。前述の実施例との差異について説明する。
【0089】
図20(a)において、揮発性メモリの1100番地には各々の電動機の中で最もハウジング温度が低い電動機の、そのハウジング温度を記憶する。
1111番地、1112番地は、温度変化判定を行なう際の、判定を開始した時点での1号機のハウジング温度AA1、判定を終了した時点での1号機のハウジング温度AB1をそれぞれ記憶する。
1121番地、1122番地は、温度変化判定を行なう際の、判定を開始した時点での2号機のハウジング温度AA2、判定を終了した時点での2号機のハウジング温度AB2をそれぞれ記憶する。
1131番地、1132番地は、温度変化判定を行なう際の、判定を開始した時点での3号機のハウジング温度AA3、判定を終了した時点での3号機のハウジング温度AB3をそれぞれ記憶する。
その他のメモリ内容は前述の実施例、もしくは同番地のインバータのメモリ内容と同じである。
【0090】
図21に、より正確に温度変化判定値の自動設定を行なう場合の制御装置からインバータに対し、通信/制御線50−1、50−2、50−3を介して送信する通信データの例を示す。
【0091】
図21において、前述の実施例と異なるのはデータの4番目に通信内容を示すCMDを追加した点である。CMDが0の場合は前述の実施例と同じく、次のデータ(5番目のデータ)は運転/停止指示を意味する。CMDが2の場合には各々のインバータに対し、ヒータ運転の温度変化判定値(判定値2)を送信する意味となり、次のデータ(5番目のデータ)は判定値2の値となる。CMDが3の場合には各々のインバータに対し、ポンプ運転の温度変化判定値(判定値3)を送信する意味となり、次のデータ(5番目のデータ)は判定値3の値となる。
【0092】
図22に、より正確に温度変化判定値の自動設定を行なう場合の制御フローを示す。
【0093】
図22において、700ステップにおいて加温運転させる電動機を選択・確認し、1号機を選択する場合には701ステップで1号機電動機の加温を開始し、2号機を選択する場合には702ステップで2号機電動機の加温を開始する。同様に3号機を選択する場合には703ステップで3号機電動機の加温を開始する。
【0094】
電動機の加温をした後、711ステップで1号機インバータから送られてきた現在の温度TMPを1号機の温度変化判定開始時の温度AA1として、図20(a)に示す揮発性メモリの1111番地に、2号機インバータから送られてきた現在の温度TMPを2号機の温度変化判定開始時の温度AA2として揮発性メモリの1121番地に、同様に3号機インバータから送られてきた現在の温度TMPを3号機の温度変化判定開始時の温度AA3として揮発性メモリの1131番地に、それぞれ記憶する。712ステップでタイマ2の設定時間(TM2)の間、加温を停止し、冷却する。
【0095】
電動機の冷却をした後、713ステップで1号機インバータから送られてきた現在の温度TMPを1号機の温度変化判定終了時の温度AB1として揮発性メモリの1112番地に、2号機インバータから送られてきた現在の温度TMPを2号機の温度変化判定終了時の温度AB2として揮発性メモリの1122番地に、同様に3号機インバータから送られてきた現在の温度TMPを3号機の温度変化判定終了時の温度AB3として揮発性メモリの1132番地に、それぞれ記憶する。
【0096】
720ステップで1号機電動機から3号機電動機の中で、最も温度の低い電動機を確認し、最も温度が低い電動機が1号機の場合には721ステップで1号機電動機の温度をTMCとして揮発性メモリ1100番地に記憶し、最も温度が低い電動機が2号機の場合には722ステップで2号機電動機の温度をTMCとして揮発性メモリ1100番地に記憶し、同様に最も温度が低い電動機が3号機の場合には723ステップで3号機電動機の温度をTMCとして揮発性メモリ1100番地に記憶する。
【0097】
731ステップで温度変化判定値を求める。例えばヒータ運転の判定値を求める場合には、図20(b)に示す不揮発性メモリの2102番地のTP2と、DGA、DGB、TMCから判定値DG2を式(5)より求める。

DG2=(DGA−DGB)×(DGA−TP2)×(DGA−TMC) ・・・(5)

そして、揮発性メモリ1202番地のDG2に判定基準値として記憶する。同様にポンプ運転の判定値を求める場合には、不揮発性メモリの2103番地のTP3を用いて判定値DG3を式(6)より求める。

DG3=(DGA−DGB)×(DGA−TP3)×(DGA−DGC) ・・・(6)

そして、揮発性メモリ1203番地のDG3に判定基準値として記憶する。
【0098】
732ステップで制御装置は各々のインバータに判定値を送信し、インバータは、制御装置から判定値が送られてきた場合、揮発性メモリの該当の番号(1202番地もしくは1203番地)にそれぞれ記憶しておく。
【0099】
以上説明したように、本実施例では、複数のインバータにより速度制御される複数の同期電動機によって駆動する複数のポンプを用いた給水装置において、それぞれのインバータは、それぞれの同期電動機のハウジングの一部に取り付けられており、各々のインバータが、温度検出器を使用してハウジング温度を検出し、ハウジング温度が第1の所定の温度(電動機を温める必要のある温度:温度1)を下回った場合に、電動機に無効電流を流して加温し、第2の所定の温度(ポンプ部を温める為にヒータを運転する必要がある温度:温度2)を下回った場合に、ヒータの電源を入りにする信号を制御装置が出力するものである。これにより、給水装置に対して効率よく、低温になる前に電動機を加温、あるいはヒータを運転することで常にポンプを起動可能な状態にすることで、給水が必要になった際にすぐにポンプを起動することが出来る。
【0100】
以上、実施例について説明したが、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。また、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加、削除、置換をすることも可能である。
【符号の説明】
【0101】
9・・・ハウジング、
10、10−1、10−2、10−3・・・ポンプ、
20、20−1、20−2、20−3・・・電動機、
7、30、30−1、30−2、30−3・・・インバータ、
40・・・制御装置、
61、62・・・ヒータ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10A
図10B
図11
図12
図13
図14A
図14B
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22