(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記さらに別の第1の導電性熱伝導体層(415)および/または前記さらに別の第2の導電性熱伝導体層(130)が、前記第1のペルチェ素子層(110)または前記第2のペルチェ素子層(115)のうちの少なくとも1つによって前記第1の熱伝導体層(120)または前記第2の熱伝導体層(125)から分離されて前記積層体内に配置されている、請求項2に記載の温度調整素子。
前記第2の熱伝導体層(125)が第1の電気接点(145)を有し、かつ、前記さらに別の第2の熱伝導体層(130)が第2の電気接点(150)を有し、前記第1のペルチェ素子層(110)と前記第2のペルチェ素子層(115)が、前記第2の熱伝導体層(125)と前記さらに別の第2の熱伝導体層(130)との間に配置されており、かつ、前記第1の熱伝導体層(120)が、前記第1のペルチェ素子層と前記第2のペルチェ素子層との間に配置されている請求項1に記載の温度調整素子。
前記第1の熱伝導体層(120)が第1の電気接点(145)を有し、かつ、前記さらに別の第1の熱伝導体層(415)が第2の電気接点(150)を有し、前記第2の熱伝導体層(125)を前記さらに別の第2の熱伝導体層(130)に接続するための電線(420)を備えており、前記第1の熱伝導体層(120)と前記第2の熱伝導体層(125)とが、前記第1のペルチェ素子層(110)と前記第2のペルチェ素子層(115)との間に配置され、かつ、前記第1のペルチェ素子層と前記第2のペルチェ素子層とが、前記さらに別の第1の熱伝導体層(415)と前記さらに別の第2の熱伝導体層(130)との間に配置されている、請求項2に記載の温度調整素子。
前記第1のペルチェ素子層(110)が、少なくとも2つの互いに隣接し合って配置された第1のペルチェ素子導体(135)を有し、前記第2のペルチェ素子層(115)が、少なくとも2つの互いに隣接し合って配置された第2のペルチェ素子導体(135)を有する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の温度調整素子。
前記第1のペルチェ素子層および前記第2のペルチェ素子層が少なくとも1つの第1のペルチェ素子導体および少なくとも1つの第2のペルチェ素子導体をそれぞれ有し、前記第1および第2のペルチェ素子導体が互いに電気的に接続されており、これにより、前記積層体の中を誘電される電流が、前記第1のペルチェ素子導体と前記第2のペルチェ素子導体とを直列的に流れる、請求項1〜5のいずれか1項に記載の温度調整素子。
前記第1の熱伝導体層(120)が冷却材通路として構成されており、前記第2の熱伝導体層(125)がフィン部材として構成されている、請求項1〜7の何れか1項に記載の温度調整素子。
前記第1の熱伝導体層(120)が、外側の面にガルバニック絶縁層(305)を有し、このガルバニック絶縁層が導体層(315)によって覆われ、この導体層が、前記第1のペルチェ素子層(110)と前記第2のペルチェ素子層(115)とを直列に接続している、請求項1に記載の温度調整素子。
請求項4または5に記載の温度調整素子(105;405)を複数個含み、前記複数の温度調整素子が、前記第1の電気接点(145)および前記第2の電気接点(150)を介して直列に接続されている温度調整装置。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の根底にある認識は、それぞれ同型にドープされたペルチェ素子が隣接し合って層状に配置されるように、ペルチェ素子の直列接続に工夫を施すことにより加熱体あるいは冷却体を層構造として実現できるということである。
【0009】
ペルチェ素子を使用する場合におけるPTCペレットを使用する場合との相違は、とりわけ、2つの異型にドープされた材料、すなわちそれぞれp型およびn型にドープされた材料が互いに結合されているという点である。標準的には、ペルチェ素子によって形成される構成は、それぞれ、2つの異型にドープされたペルチェ素子の高温側と2つの異型にドープされたペルチェ素子の低温側とが導電可能に接続されているような構成であり、これにより、全体として直列の接続が生じる。しかし、この種の構成は、製造に適した加熱体あるいは冷却体に直接応用することがほとんど不可能である。なぜなら、金属導体が、2つの異型にドープされて直接的に隣接し合った素子の間にわたる連続的なブリッジを形成しないからである。中断部分は、非導電体によってしか架橋することができない。この非導電体は、両側における伝熱にとって障害となる。
【0010】
本発明に係る方法において説明される加熱体は、電気車両のキャビンを加熱あるいは冷却することが可能な冷却機能を備え、可能な限りの僅かなコストと既に利用可能な製造技術とによって可能な限り低コストで生産することができ、しかも、伝熱を最適化することによって高い効率を有している。
【0011】
本発明に係る加熱体は、フィン部用の容易に製造可能な中断のないブリッジと冷却水用の中断のない通路とを有することができ、これらのブリッジと通路とは、それぞれ導電体として実施されている。ペルチェ素子を液体側および/または空気側に可能な限り直接的に熱的に結合させることによって、高い伝熱を実現することができる。これが実現できる理由は、特に、熱障壁としての電気絶縁体がこの領域に存在しないという点にあると考えられる。有利には、直列接続と並列接続とからなるこの種の組み合わせは、12Vに適合させることができる。空気側のフィンおよび冷却水通路への伝熱は、一実施形態では、2つの側において実施することが可能である。さらに、この種の構造は、例えばフィン間において、ここには対称条件により温度勾配が存在しないので、ガルバニック分離の熱絶縁効果が支障なく実現可能であるという利点を供する。総じて、重要な利点は、既存の製造方法に従って製造された加熱体、例えばPTC補助ヒータを備えた加熱体との相違が、同時に最適な伝熱を行いながらも、可能な限りの僅かな相違でしかないという点である。従って、最適な効率またはCOP(成績係数)が得られる。その結果、本発明に係る方法に従って設計された基本構造が供する利点として、材料結合による接合を用いた加熱体の基本構造とは実質的に2つの点で異なっている。まず第一に、冷却水通路が、加熱運転用の熱源として、または、冷却運転用のヒートシンクとして既に存在しているという点である。第二に、波形フィン間の中央に電気絶縁層が存在するという点である。従って、加熱運転用または冷却運転用のペルチェ素子を備えた本発明に係る加熱体の作動形態は、全体的な正味熱流が、垂直方向にのみ生じ、かつ、そのように解されるように構成される。
【0012】
有利には、燃焼廃熱を伴わないCOP>1での加熱が可能であり、かつ、冷却および加熱の機能を1つの構造に統合することが可能である。さらに、冷媒が不要となり、また、モジュール性によって層を反復して配置し、さらに1つの層内で面構造を反復することで分散化を行うことが容易となる。
【0013】
本発明は車両用の温度調整素子を提案し、この温度調整素子は、以下の特徴、すなわち、第1のペルチェ素子層、第2のペルチェ素子層、第1の熱伝導流体を誘導するための第1の導電性熱伝導体層、および、第2の熱伝導流体を誘導するための第2の導電性熱伝導体層を有し、前記第1のペルチェ素子層、前記第2のペルチェ素子層、前記第1の熱伝導体層および前記第2の熱伝導体層が積層体の形態に配置されて、これにより、前記第1の熱伝導体層および/または前記第2の熱伝導体層が、前記第1のペルチェ素子層と前記第2のペルチェ素子層との間に配置されており、かつ、前記積層体の中を誘導される電流が、ペルチェ効果に基づいて前記第1の熱伝導体層と前記第2の熱伝導体層との温度調整を実施する。
【0014】
前記温度調整素子は、例えば電気車両またはハイブリッド車両で用いることができ、これにより、車両の乗客コンパートメントを温度調整することができる。この場合、温度調整は、加熱および冷却のいずれをも意味することができる。前記第1のペルチェ素子層および前記第2のペルチェ素子層は、2つの異型にドープされた半導体材料で形成しておくことができる。従って、例えば、前記第1のペルチェ素子層をn型にドープし、前記第2のペルチェ素子層をp型にドープしておくこと、あるいは、逆に、前記第1のペルチェ素子層をp型にドープし、前記第2のペルチェ素子層をn型にドープしておくことが可能である。ペルチェ素子層に関して、半導体材料の代わりに他の適切な導体を用いることも可能である。前記第1および第2の導電性熱伝導体層は、良好な導電性を有する金属で形成しておくことができる。前記温度調整素子に印加された電流は、前記積層体の一端から前記温度調整素子内へ流れ込むことができ、前記積層体全体を流通した後、例えば電線に接続された適切な接点を介して、反対側の一端から再び前記積層体を出て行くことができる。前記第1および第2の導電性熱伝導体層には、それぞれ熱伝導流体が流通することができる。ペルチェ効果によって生成された温度を前記積層体内に案内された熱伝導流体へ伝達することができるように、前記第1および第2の熱伝導体層を前記積層体内において前記第1および第2のペルチェ素子層に対して配置しおくことができる。前記ペルチェ効果と前記ペルチェ素子層に対する前記熱伝導体層の配置とに従って、温度調整素子の動作時に常に前記熱伝導流体の一方が加熱され、もう一方が冷却される。前記第1および第2の熱伝導流体は、例えば、それぞれ気体または液体であってもよい。この場合、前記温度調整素子が果たすべき役割に応じて、前記熱伝導流体の一方を車両の乗客コンパートメント内へ誘導するために用いることが可能であり、これにより、乗客コンパートメントを冷却または加熱することができる。前記温度調整素子における電流の流れを逆方向にした場合、先ほど温度調整素子により加熱されていた前記熱伝導流体を今度は冷却することができる。またその逆も同様である。前記熱伝導流体を介した漏れ電流を防止するために、前記熱伝導流体と前記熱伝導流体の方を向いた前記熱伝導体層表面との間に電気絶縁部を配置しおくことが可能である。
【0015】
一実施形態では、前記温度調整素子は、さらに別の第1の導電性熱伝導体層を含むことができ、また、追加的または代替的にさらに別の第2の導電性熱伝導体層を含むことができる。この場合、前記さらに別の第1および/または前記さらに別の第2の熱伝導体層を、前記第1または前記第2のペルチェ素子層のうちの少なくとも1つによって前記第1または前記第2の熱伝導体層から分離して前記積層体内に配置しておくことが可能である。例えば、前記積層体の構成は、前記積層体の一番下に前記さらに別の第2の熱伝導体層が存在し、この熱伝導体層上に前記第1のペルチェ素子層が配置されているような構成にしておくことができる。また、前記第1のペルチェ素子層の上には、前記第1の熱伝導体層を配置しおくことができ、この第1の熱伝導体層上には前記第2のペルチェ素子層が存在する。前記第2の熱伝導体層は、前記温度調整素子積層体の終端部を形成する。あるいは、前記積層体は、前記さらに別の第1の熱伝導体層が前記積層体の前記第1の層を形成するように構成しておくことも可能である。前記さらに別の第1の熱伝導体層上には、例えば、前記第1のペルチェ素子層、前記第2の熱伝導体層、前記第1の熱伝導体層、前記第2のペルチェ素子層および前記さらに別の第2の熱伝導体層を次々と配置しておくことができ、この場合、前記第2の熱伝導体層と前記第1の熱伝導体層との間に熱絶縁層を配置しておくことが可能である。
【0016】
前記温度調整素子がさらに別の第2の導電性熱伝導体層を含む場合、前記第2の熱伝導体層は第1の電気接点を有することができ、前記さらに別の第2の熱伝導体層は第2の電気接点を有することができる。この場合、前記第1のペルチェ素子層と前記第2のペルチェ素子層は、前記第2の熱伝導体層と前記さらに別の第2の熱伝導体層との間に配置しておくことが可能である。前記第1の熱伝導体層は、前記第1のペルチェ素子層と前記第2のペルチェ素子層との間に配置しておくことができる。この配置では、前記第1の熱伝導体層において第1のペルチェ効果を実現することができ、これにより、前記第1の熱伝導体層を、前記積層体の中を誘導される電流の極性に応じて、加熱または冷却することが可能である。前記第1のペルチェ効果とは逆方向のさらに別のペルチェ効果に従って、前記第1の熱伝導体層が冷却されるときに前記第2の熱伝導体層を加熱することができ、あるいは、前記第1の熱伝導体層が加熱されるときに前記第2の熱伝導体層を冷却することができる。この配置は、前記個々の層の間に熱絶縁性の層を必要とせず、常に相異なるように温度調整された熱伝導体層が常にペルチェ素子層によって分離されているというさらに別の利点を供する。また、同じ種類のさらに別の温度調整素子を前記温度調整素子に積層する際、前記両温度調整素子の間にはガルバニック分離のみが必要であり、熱ガルバニック分離は不必要である。なぜなら、ここでは、2つの熱伝導体層が互いに対して隣接し合って配置されており、これらの熱伝導体層が、同一のペルチェ効果を受けることによって同じ温度を有するからである。
【0017】
あるいは、前記温度調整素子は、さらに別の第1の熱伝導体層とさらに別の第2の熱伝導体層とを含むことが可能である。前記第1の熱伝導体層は第1の電気接点を有することができ、前記さらに別の第1の熱伝導体層は第2の電気接点を有することができる。さらに、前記温度調整素子は、前記第2の熱伝導体層を前記さらに別の第2の熱伝導体層に接続するための電線を有することができる。この場合、前記第1の熱伝導体層と前記第2の熱伝導体層とは、前記第1のペルチェ素子層と前記第2のペルチェ素子層との間に配置しておくことができ、前記第1のペルチェ素子層と前記第2のペルチェ素子層とは、前記さらに別の第1の熱伝導体層と前記さらに別の第2の熱伝導体層との間に配置しておくことが可能である。また、前記第1の熱伝導体層と前記第2の熱伝導体層との間に、ガルバニック・熱絶縁層を配置しておくことができる。この配置では、電流が、前記第1の電気接点から前記温度調整素子内へ流れ込み、そこから前記第2のペルチェ素子層、前記第2の熱伝導体層を通り、さらに電線を介して前記さらに別の第2の熱伝導体層、前記第1のペルチェ素子層を通過して、最後に前記さらに別の第1の熱伝導体層を通過する。前記第2の電気接点において前記電流を前記温度調整素子から導出でき、場合によっては、さらに別の温度調整素子の中へ誘導することが可能である。
【0018】
また、さらに別の実施形態では、前記温度調整素子の前記様々な熱伝導体層を追加的な電線を介して互いに接続しておくことが可能である。この場合、前記追加的な電線は、それぞれ、前記温度調整素子の前記それぞれの熱伝導体層の、前記電線とは反対側の端部に配置しておくことできる。それに応じて、第1または第2の接点を備えた熱伝導体層が、それぞれ、前記追加的な電線を接続するための追加的な接点を有することが可能である。例えばケーブルを用いて電流の供給線と送出線とをこのように前記温度調整素子の左右両側に実装することで、前記温度調整素子の前記様々な熱伝導体層のブリッジまたはフィンにおける電流の強さを低減することを支援することができる。これによって、接続が一方の側だけであることで、前記熱伝導体層への流入部における電流の強さが、一列状のペルチェ素子層を通る全電流の総計の強さになることによって、時に許容外の電流密度が生じるという欠点を取り除くことができる。
【0019】
前記第1のペルチェ素子層は、少なくとも2つの互いに隣接し合って配置された第1のペルチェ素子導体を有し、前記第2のペルチェ素子層は、少なくとも2つの互いに隣接し合って配置された第2のペルチェ素子導体を有する。前記個々のペルチェ素子の間の距離は、前記ペルチェ素子導体の熱出力に従って選定することが可能である。前記個々のペルチェ素子導体の間に、電気絶縁部を配置しておくことができる。前記ペルチェ素子層の面積に従って、それに応じた数のペルチェ素子導体を互いに隣接して配置しておくことができる。この場合、前記ペルチェ素子導体は、面状に、すなわち例えば長手方向にも横方向にも互いに並べて配置しておくことが可能である。
【0020】
代替的な一実施形態では、前記第1のペルチェ素子層と前記第2のペルチェ素子層は、それぞれ少なくとも1つの第1のペルチェ素子導体と少なくとも1つの第2のペルチェ素子導体とを有することができる。この場合、前記第1および第2のペルチェ素子導体を、互いに隣接して配置して、導電可能に互いに接続しておくことが可能である。従って、前記積層体の中を誘導される電流は、前記第1のペルチェ素子導体と前記第2のペルチェ素子導体とを連続して流通することができる。例えば、前記第1のペルチェ素子導体をn型にドープしておき、前記第2のペルチェ素子導体をp型にドープしておくこと、または、その逆にドープしておくことが可能である。前記温度調整素子のこの実施形態は、場合によって既に存在しているプロトタイプとしての加熱素子を、ここで提案される温度調整素子の組み立てを行うためのペルチェ技術の基礎として利用できるという利点を供する。これにより、生産における時間およびコストが節約される。
【0021】
一実施形態では、前記第1の熱伝導体層を冷却材通路として構成しておき、前記第2の熱伝導体層をフィン部材として構成しておくことが可能である。例えば、前記冷却材通路は、冷却液を案内するための管として構成しておくことができる。前記フィン部材は、例えば2つのブリッジで構成しておくことができ、これらのブリッジの間にジグザグ状または波形状に曲げられた金属帯が配置されており、これにより、例えば、前記ブリッジの間に斜めに配置されたフィンが形成される。前記第2の熱伝導流体は、例えば空気であってもよく、この空気は、車両周囲から車両内へ誘導されて前記第2の熱伝導体層の中を案内され、そこで、前記第2の熱伝導体層の温度に一致するように冷却または加熱される。前記第2の熱伝導体層のこのような構造は、有利には、前記第2の熱伝導体層の中を案内される流体のための大きな温度伝導面を提供する。また、当然ながら、前記第1の熱伝導体層を空気を案内できるように構成し、前記第2の熱伝導体層を液体を案内できるように構成しておくことも可能である。同様に、前記第1の熱伝導体層は、複数の互いに隣接して配置された冷却材通路を有することができ、前記第2の熱伝導体層は、複数の互いに隣接して配置されたフィン部材を有することができる。
【0022】
前記第1の熱伝導体層は、外側面にガルバニック絶縁層を有することができる。このガルバニック絶縁層は導体層で包囲しておくことができ、この導体層は、前記第1のペルチェ素子層と前記第2のペルチェ素子層との間に電流を流すことができるように構成しておくことが可能である。例えば、前記第1の熱伝導体層は、全体を前記導体層で包囲しておくこと、または、前記導体層を前記第1の熱伝導体層の2つの対向する側面に付着させて電線に接続しておくことができる。このようにして、前記電流の流れが前記温度調整素子の前記積層体を通過することを保証することができ、その際、同時にまた、前記第1の熱伝導体層は電流が流れることから除外されている。従って、前記第1の熱伝導体層を流通する冷却材の中へ漏れ電流が入り込むことを回避することができる。
【0023】
前記第1の熱伝導体層と前記第2の熱伝導体層は、前記第1の熱伝導流体と前記第2の熱伝導流体とに関して、互いに直交する流れ方向を実現するように構成しておくことが可能である。このようにすることで、前記相異なる熱伝導流体の流入部と流出部は、前記温度調整素子の相異なる側面に配置することができる。
【0024】
本発明はさらに温度調整装置を提案し、この温度調整装置は複数の温度調整素子を含み、前記複数の温度調整素子は、前記それぞれの第1および第2の接点を介して直列接続において結合されている。
【0025】
一実施形態では、前記複数の温度調整素子のそれぞれ2つの間にガルバニック絶縁層を配置しておくことが可能である。このようにすることで、電流の流れが前記温度調整装置の全ての温度調整素子を次々と通過することを保証できる。前記電流の流れに関する第1および最後の温度調整機構のそれぞれの接点を電流源に接続しておくことが可能である。さらに、隣接し合った温度調整素子の間に配置されたガルバニック絶縁層は、前記個々の温度調整素子の間の熱絶縁部としても利用できる。このことが重要であるのは、特に、相異なるように温度調整された2つの熱伝導体層が互いに隣接し合って前記温度調整装置内に配置されている場合である。前記温度調整素子は、前記温度調整装置内において直列接続でも並列接続でも、あるいは、混合形態でも結合しておくことが可能である。
【0026】
前記複数の温度調整素子は、少なくとも1つの積層体内に配置しておくことができる。この場合、前記温度調整装置の寸法は、対応する個数の温度調整素子を積層することによって、および/または、前記複数の温度調整素子の前記個々の層を水平方向に拡張することによって、既存の空間的な諸事情に適合させることが可能である。当然ながら、前記温度調整装置は、複数の積層体で形成しておくことも可能であり、これらの積層体は、隣接し合うように配置されて、直列接続または並列接続において前記それぞれの接点を介して結合されている。
【0027】
参考例としての車両用の温度調整装
置は、以下の特徴、すなわち、第1の熱伝導流体を誘導するための第1の熱伝導体層、互いに離間して配置されてそれぞれ複数のペルチェ素子導体を含んでいる複数のペルチェ素子を有するペルチェ素子層、および、第2の熱伝導流体を誘導するための第2の熱伝導体層を備えており、この場合、前記諸層は、積層体の形態に配置されて、これにより、前記ペルチェ素子層は前記第1の熱伝導体層と前記第2の熱伝導体層との間に配置されている。前記ペルチェ素子層は、前記温度調整装置の動作時に前記第1の熱伝導体層を冷却し、かつ、前記第2の熱伝導体層を加熱するように、あるいは、その逆に動作するように構成しておくことができる。各ペルチェ素子は、個別のペルチェモジュールとして設計しておくことが可能である。これが意味することは、各ペルチェ素子が、前記ペルチェ素子の前記ペルチェ素子導体の中を流れる電流を供給および送出するための独自の電気接続部を有するということである。前記ペルチェ素子はそれぞれ基板を有し、この基板上に、専ら前記それぞれのペルチェ素子の前記ペルチェ素子導体のみが配置されている。ペルチェ素子内における隣接し合ったペルチェ素子導体間の距離は、隣接し合ったペルチェ素子間の距離よりも小さくしておくことが可能である。前記ペルチェ素子は、それぞれ、n型にドープされたペルチェ素子導体およびp型にドープされたペルチェ素子導体のいずれをも有することができる。また、前記ペルチェ素子導体は、蒸着された導電路としてまたはファブリックとして実装しておくことも可能である。
【0028】
ペルチェ素子層の前記複数のペルチェ素子は、前記ペルチェ素子層の総面積の最大10分の1を覆うことが可能である。前記ペルチェ素子間に、熱絶縁された中間スペースを設けておくことができる。あるいは、前記複数のペルチェ素子導体が、前記ペルチェ素子層の総面積の最大10分の1を覆うことができる。
【0029】
前記温度調整装置は
、さらに別のペルチェ素子層であっ、複数のさらに別のペルチェ素子を有し、これペルチェ素子が互いに離間して配置されてそれぞれ複数のさらに別のペルチェ素子導体を含んでいるさらに別のペルチェ素子層と、前記第2の熱伝導流体を誘導するためのさらに別の第2の熱伝導体層とを有することができる。この場合、前記さらに別のペルチェ素子層を、前記積層体において前記第1の熱伝導体層と前記さらに別の第2の熱伝導体層との間に配置しておくことができる。このようにすることで、隣接し合った層の間に熱絶縁が必要ではなくなる。
【0030】
あるいは、前記温度調整装置は、熱絶縁層、前記第
2の熱伝導流体を誘導するためのさらに別の第
2の熱伝導体層、および、さらに別のペルチェ素子層を有することができ、この
さらに別のペルチェ素子層は、複数のさらに別のペルチェ層(600)を有し、これらのペルチェ素子は、互いに離間して配置されて、それぞれ複数のさらに別のペルチェ素子導体を含む。この場合、前記熱絶縁層を前記積層体において前第2の熱伝導体層に隣接して配置しておくこと、および、前記さらに別の第
2の熱伝導体層を前記積層体において前記熱絶縁層と前記さらに別のペルチェ素子層との間に配置しておくことが可能である。
【0031】
温度調整装置が切り替え機構を有し
ている場合、この切り替え機構は前記第2の熱伝導流体を前記温度調整装置の第1の動作モードにおいて前記第2の熱伝導体層と前記さらに別の第2の熱伝導体層との中を誘導するように、かつ、前記温度調整装置の第2の動作モードにおいて前記第2の熱伝導体層と前記さらに別の第2の熱伝導体層とのいずれか一方の中を誘導するように構成されている。前記温度調整素子は、フラップとして構成しておくことができる。前記温度調整装置は第1の動作モードにおいて前記第2の動作モードにおけるよりも大きな熱出力を実現することが可能である。有利には、アクティブなペルチェ素子導体には、前記第1の動作モードにおいても前記第2の動作モードにおいても、ペルチェ素子導体を動作させるための最適な電流の強さを有する電流が流通可能である。
【0032】
例えば、隣接し合って配置されたペルチェ素子層、例えば前記第1のペルチェ素子層と前記第2のペルチェ素子層は、それぞれ異なる個数のペルチェ素子導体またはペルチェ素子を有することができる。代替的または追加的に、隣接し合って配置されたペルチェ素子層におけるペルチェ素子導体またはペルチェ素子の配置は、それぞれ異なっていてもよい。代替的または追加的に、隣接し合って配置されたペルチェ素子層における前記ペルチェ素子導体またはペルチェ素子の延在面積は、それぞれ異なっていてもよい。前記配置、個数および/または大きさを適切に選定することによって、前記ペルチェ素子層内の温度分布を調整することができる。特に、均一な温度分布を実現することが可能である。
【0033】
本発明の有利な実施例について、以下において、添付した図面を参照しながらさらに詳述する。
【実施例】
【0035】
本発明の好ましい実施例についての下記説明では、様々な図面に示された、類似の働きをする要素に対して同一または類似の符号が用いられており、これらの要素について繰り返し説明されることはない。
【0036】
図1は、本発明の一実施例に係る温度調整装置100を示す概念図である。前記温度調整装置100は、ここでは4つの温度調整素子105の積層体で形成されている。煩雑にならないように、前記温度調整素子105のうちの1つにのみ符号が付されている。また、前記温度調整装置100は、これよりも多い数または少ない数の前記温度調整素子105を有していてもよい。
【0037】
図1の前記温度調整素子105の各々は、第1のペルチェ素子層110、第2のペルチェ素子層115、第1の熱伝導体層120、第2の熱伝導体層125およびさらに別の第2の熱伝導体層130を有する。
図1では、前記第2の熱伝導体層125が前記積層体の基礎部を形成する。この基礎部上に前記第1のペルチェ素子層110が配置されており、さらにこの第1のペルチェ素子層上に前記第1の熱伝導体層120が配置されている。この第1の熱伝導体層は、前記第2のペルチェ素子層115によって覆われており、最後に、この第2のペルチェ素子層上に前記さらに第2の熱伝導体層130が存在する。
図1では、前記第1のペルチェ素子層110と前記第2のペルチェ素子層115とは、離間して隣接し合うように配置されたそれぞれ3つの個別のペルチェ素子導体135で構成されている。煩雑にならないように、前記ペルチェ素子導体135のうちの1つにのみ符号が付されている。
図1では、前記第1のペルチェ素子層110の前記ペルチェ素子導体135はn型にドープされており、前記第2のペルチェ素子層115の前記ペルチェ素子導体135はp型にドープされている。
【0038】
図1の前記温度調整装置100のこの実施例の場合、前記第1の熱伝導体層120は、それぞれ冷却材通路として構成されている。前記第2の熱伝導体層125と前記さらに別の第2の熱伝導体層130は、それぞれ、2つの並列に配置されたブリッジと前記ブリッジ間に斜めに配置されたフィンとを備えたフィン部材として実施されている。それぞれ2つの隣接し合う温度調整素子105の間に、ガルバニック絶縁層140が配置されている。煩雑にならないように、前記ガルバニック絶縁層140のうちの1つにのみ符号が付されている。任意選択的に、前記フィン部材130の前記2つのブリッジのうちの1つは、例えば2つの温度調整素子105が前記積層体内で連続している場合にはなくてもよく、これにより、温度調整素子105の第2の熱伝導体層125が、後続の温度調整素子105のさらに別の第2の熱伝導体層130に対して隣接して、および、場合によってはガルバニック絶縁層140によってのみ分離されて配置されている。ここでは、例えばそれぞれ、前記絶縁層140に隣接する前記ブリッジなしで済ますことができる。隣接し合う層が、互いに直接接触していてもよい。
【0039】
前記温度調整装置100の
図1に示された実施例では、それぞれ、前記第2の熱伝導体層125は第1の電気接点145を有し、前記さらに別の第2の熱伝導体層130は第2の電気接点150を有する。前記温度調整素子105間に電気的な直列接続を構築するために、それぞれ、温度調整素子105の第2の接点150が、隣接する温度調整素子105の第1の接点145に電線155を介して接続されている。
図1では、前記温度調整装置100における前記最上部の温度調整素子105の前記第1の接点145と前記最下部の温度調整素子105の前記第2の接点150とは、電気の供給線または送出線に接続されており、これにより、前記供給線により前記温度調整装置100内へ送り込まれた電流が、前記積層体全体の中を流れて、再び送出線を通じてこの積層体から出て行くことができる。
【0040】
図1の各加熱体あるいは各温度調整素子105は、冷却材通路120と空気通過部125、130とを含む。熱は、前記ペルチェ素子135を介して前記冷却材と前記ペルチェ素子135との間および前記ペルチェ素子135と前記フィン付きの空気側125、130との間を輸送される。前記有利な電気的結合155によって、容易に製造可能な構造原理を得ることができる。さらに、前記加熱体105は、要求される高い熱伝達範囲において一般に熱伝導特性に好ましくない影響を及ぼす電気絶縁体を必要としない。
【0041】
前記冷却材通路120には冷却材が流通する。これらの冷却材通路には両側において前記ペルチェ素子135が接合されており、これにより、伝熱を両方向へ行うことができる。この熱は、前記ペルチェ素子135を介して伝達されて、前記フィン付きの空気側125、130に達し、前記フィン125、130が空気への伝熱を容易にさせる。この伝熱は、電気的に間断なく導通した状態でも実施される。なぜなら、前記導電性熱伝導体層120、125、130は、金属、例えばアルミニウムで形成されており、前記ペルチェ素子135は熱電的にアクティブな機能性材料を含むからである。前記波形フィン125、130間の中央に前記電気絶縁層140が存在する。前記絶縁層140による伝熱抵抗があったとしても重要ではない。なぜなら、ここでは対称性に従って、作用原理に基づき垂直方向への伝熱は行われないからである。
【0042】
図1の前記ペルチェ素子135は、それぞれ専らp型またはn型にドープされて一列(層)に実装されている。前記電気的結合155は、温度調整素子105の層の数を増大することにより前記温度調整装置100を垂直方向に拡張することで前記温度調整装置100における全電圧降下が増大されるように実施される。
図1に示された実施例の場合、前記温度調整装置100は、それぞれ同じ内部構造を備えた温度調整素子105の層を4つ含んでいる。一方、前記温度調整装置100を水平方向に拡張すると、層の全ての素子が電気的に並列に接続されることにより電流の強さが増大される。
【0043】
図1では、それぞれ、2つの隣接し合う垂直方向の層の前記フィン部材あるいは空気側125、130は、空気側125、130に直接接合されたペルチェ素子135が異なるドーピングを有するように、この図では「ケーブル」として表された別個の導電体155を介して接続されている。前記同じ冷却材通路120に接合されたペルチェ素子135の2層間の接続は、前記冷却材通路120自体が導電性を有するので、別個の導体によって橋絡される必要がない。
【0044】
当然ながら、構成によっては、直接的に隣接していない層を互いに結合することも可能であろうが、隣接し合う層の方が、必要とされる電線の長さが最短となるので容易に利用でき、好ましい。同様に、温度調整素子層105を180°回転させることで、一方のドーピングが常に上に位置し、もう一方のドーピングが常に下に位置することがないようにすることも可能である。しかし、
図1に示された、温度調整素子105の層が常に同じである配置の方が、製造時の不良回避に有用である。前記電気接続部145、150は、
図1に示されているように、接続原理にスムーズに適合させるのに適している。上述したように、温度調整素子105の層の数によって前記加熱体100における電圧降下の範囲は決定される。この範囲が、前記加熱体100の所定のレベルの場合に大きすぎるとき、前記電気的結合をさらに別の電気供給線によって中断することができる。一実施例では、
図1の加熱体部分を精密に複製し、それを既存の加熱体部分の上に載設することができる。その場合、分離は純粋に電気的なものであろうし、機械的な接合は、その他の層間の接合と同様に実施することができるであろう。しかし、むしろ予想されることは、例えば、車両の低電圧車載電源システムにおける12∨の電圧のように、電圧源により提供される電圧を可能な限り完全に取り出す必要がある場合に、電圧降下が小さすぎることであろう。この場合、前記空気側における自由な流れ断面が維持し続けられるように、複数のこの種の加熱体100を、従来利用されていなかった奥行き寸法において一列状に配置することにより電気的な直列接続を拡張することも可能である。本発明に係る方法のこの態様については、
図5との関連で説明される。
【0045】
もう一度、前記温度調整装置100の
図1に示された実施例に関して要約すると、電流の流れは以下のように説明できる。すなわち、電流は、同型のドーピングを有する一連のペルチェ素子135を並列接続において通過し、前記冷却水通路120にまで流れ、この冷却材通路を介して、同様に列状に接続されている他の型にドープされた一連の素子135に達する。前記空気側125に、すなわちここでは、例えばろう接により施着されたフィンを備えたフィン部または基板に、別個の、場合によっては任意に実施された導体155への電気接続部150が存在し、この導体を通じて、別の層105における、例えばろう接により施着されたフィンを備えた前記フィン部または前記基板130の中へ電流が流れる。それぞれ、電気的な直列接続において隣接し合う素子は、ドーピングの型が交互に入れ替わる。
【0046】
図2は、本発明のさらに別の実施例に係る温度調整装置200を示す概念図である。前記温度調整装置200は、
図1の温度調整装置100とほぼ同一の構造を有するが、各温度調整素子105が前記冷却材通路120を迂回するための外側の電気接続部205を有する点が異なっている。煩雑にならないように、前記電気接続部205のうちの1つにのみ符号が付されている。前記電気接続部205を用いる理由は、一般に純粋に有機的な冷却材は用いられず、ある程度水分が含まれた冷却材が用いられるという事実による。これにより、前記冷却材は導電性を有するので、
図1の温度調整装置内で使用する場合、電圧差にさらされることになるであろう。このことは、前記冷却材通路120を前記電流カスケードから外へ取り出すことによって回避することができる。それに応じて、例えば、前記冷却材管120上に非導電体が薄い層状に施着されており、これにより、熱輸送抵抗が可能な限り小さくなる。また、その上には、好ましくは連続的な導体層が施着されている。従って、前記冷却材通路120自体は無電位のままであるが、導体層の施着のために前記別個の導体205によって迂回されねばならない。このことはまた空気側125、130にも当てはまる。前記導体205は、
図2に示された実施態様とは異なる実施態様を有することも可能である。
【0047】
図3は、
図2に示された実施例に係る冷却材通路120の構造を示す詳細拡大図である。ここでは、前記冷却材通路120の一部分が長手方向断面図として示されている。絶縁体からなるガルバニック絶縁層305が前記冷却材通路120上に付着されており、これにより、管壁310へ伝えられた電圧が、前記冷却材通路120を流通する冷却流体へ伝えられることはない。前記ガルバニック絶縁層305全体にわたって、導電体からなる導体層315が付着されている。また、前記導体層315は集電体320への電気接点を有し、この集電体が電流をここから取り出して、別の場所から前記導体層315に再び供給することができ、これにより、前記冷却流体は電流の流れから除外され続ける。前記管壁310は、例えばアルミニウムで形成しておくことができる。
【0048】
図4は、温度調整装置400の代替的な実施例を示す概念図である。前記温度調整装置400は、3つの温度調整素子405の垂直積層体を含む。これらの温度調整素子は、
図1との関連で説明された温度調整素子とは異なる構造を有する。ここでは、前記第1の熱伝導体層120の他に前記第2の熱伝導体層125も、前記第1のペルチェ素子層110と前記第2のペルチェ素子層115との間に配置されている。前記第1の熱伝導体層120と前記第2の熱伝導体層125との間に、ガルバニック・熱絶縁層410が存在する。前記ガルバニック・熱絶縁層410は、前記フィン部材125用または前記フィン部材130用の任意選択的なブリッジを有することができる。
図1との関連で説明されたガルバニック絶縁層は、ここでは用いられない。ここに示された実施例の場合、前記温度調整素子405はさらに別の第1の熱伝導体層415を有し、この熱伝導体層は前記温度調整素子405の基礎部を形成する。ここでは、前記第1の熱伝導体層120は前記第1の電気接点145を有し、前記さらに別の第1の熱伝導体層415は前記第2の電気接点150を有する。さらに、各温度調整素子405の前記第2の熱伝導体層125は、電線420を介して前記さらに別の第2の熱伝導体層130に接続されている。
【0049】
図4では、
図1との関連で説明された実施例とは異なり、それぞれ低温側および高温側において片側の伝熱しか存在しない。従って、前記絶縁層410は、もう一方の側において低電圧に対して電気絶縁性を有するだけでなく、熱絶縁性も有している。それに応じて、前記絶縁層410の厚さが、ここではより大きくなる可能性がある。ここでは、隣接し合う層の前記空気側125、130は、前記電線420を介して電気的に互いに接続されている。同様に、隣接し合う層の前記冷却水側120、415は、直接的に接続されておらず、前記空気側に類似して別個の導体425を介して間接的に電気的に互いに接続されている。また、この接続は、2つの電気的に互いに接続された層120、415あるいは125、130が有する、層内において同一にドープされているペルチェペレット135のドーピングの型が、交互に入れ替わるように実施される。
【0050】
上記の
図1〜4を用いて説明された諸実施例との関連において強調されることは、ここに提示された方法では、絶対的な順序、すなわち所定のドーピング(p型またはn型)を備えた直列接続の始端と終端、および、各空間方向におけるペルチェ素子の個数が、原則として定められていないままであるということである。同様に、動作が、空気が加熱されるヒートポンプとしての動作であるか、空気が冷却される空調設備としての動作であるかも定められていない。前記それぞれの機能は、極性反転によって切り替えることができる。
【0051】
図5は、
図1〜4の温度調整装置100、200または400が水平方向に拡張された電気的な直列接続500の実施例を示す概念図である。前記複数の温度調整装置100、200または400は、簡略化した形で示されている。
図5では、前記温度調整装置100、200または400は、一平面に、矢印により示された奥行き方向510に互いに前後に並べて配置されている。使用場所の構造上の条件に応じて、ここに示された前記配置500をさらに別の温度調整装置100、200または400を加えて拡張することも可能である。前記個々の温度調整装置100、200または400は、導電可能に互いに接続されており、これにより、電流を前記配置500全体に流通させることができる。前記電気接続部は
図5には示されていない。もう1つの矢印は、例えば前記温度調整装置100、200または400の前記第2の熱伝導体層および前記さらに別の第2の熱伝導体層の中を誘導される熱伝導流体の流れ方向520を示す。この熱伝導流体は例えば空気であってもよい。
【0052】
温度調整装置100、200または400の
図1〜4に提示された諸実施例の代替例として、本発明に係る温度調整装置のさらに別の実施例は、ペルチェ素子層を有し、このペルチェ素子層が複数のペルチェ素子を有し、またこれらのペルチェ素子が複数のペルチェ素子導体を有する。従って、純粋なn型ドープまたはp型ドープの素子135の代わりに、外面上幾何形状的に同一である素子であって、それ自体の中に、n型およびp型の直列接続されたチップの、任意の平面的な微細構造を有する素子を用いることが可能である。
【0053】
図6は、
参考例としてのペルチェ素子600を示す概念図である。ペルチェ素子導体135の水平方向の配置が示されている。この場合、それぞれn型にドープされたペルチェ素子導体とp型にドープされたペルチェ素子導体とが、一平面に交互に配置されている。隣接し合って配置されて互いに異型にドープされたペルチェ素子導体135が、それぞれ交互に、高温側では導電体605を介して、低温側ではさらに別の導電体605を介して互いに接続されている。前記それぞれの導電体に対向する高温側あるいは低温側に、前記導電体605の中断部610が存在する。ペルチェ素子導体135の前記層の上方および下方に、それぞれ電気絶縁体615が配置されている。
【0054】
ペルチェ素子600を用いた温度調整装
置は、
図1〜4に示された温度調整装置100、200、400の前記原理に従って構成しておくことができる
が、この場合
、電流の流れが、このように構成された温度調整装置の前記積層体全体の中を通ることが保証されるように、ここでは、図示された前記実施例100、200、400とは異なり、各ペルチェ素子600が電流用の供給線および送出線を有する。
図1〜4の実施例とは異なり、ここでは、電流は垂直方向ではなく水平方向に前記それぞれのペルチェ素子600の中を流れる。個々のペルチェ素子600間は直列に接続すること、または、並列接続にすることが可能であり、並列接続の場合、各ペルチェ素子600は、車両の中央電源部、通例はカーバッテリの中央電源部に接続されており、これにより、前記温度調整装置の前記積層体全体にわたって12∨の電圧降下が保証されている。
【0055】
前記ペルチェ素子600が用いられる一実施例では、電流は、前記積層体全体、特に前記熱伝導体層を通過せず、専ら前記ペルチェ素子層の中だけを通過する。前記個々のペルチェ素
子は、それぞれ並列または直列に接続しておくことができる。
【0056】
前記ペルチェ素子600における電圧降下次第では、前記諸列の間にここで述べられた電気的結合を利用することが可能となり、これにより、前記加熱体にわたる前記電圧降下全体をさらに増大させることができるであろう。あるいは、例えば、従来の機能のとおりに、前記ペルチェモジュール600の微細構造が既に12∨の電圧降下を生じる場合、熱電素子600を備えた各列を単独で個別回路として容易に扱うことができる。例えば、n型またはp型のチップあるいはn型またはp型のペルチェ素子導体は、0.0625∨の電圧降下を有することができる。従って、16個のチップの場合、1つのペルチェ素子に関して1Vが生じる。前記加熱体が12個の直列に接続された列を有する場合、全部で12∨の電圧降下が実現されるであろう。
【0057】
図7は、本発明の一実施例に係る平面層、特に
複数のペルチェ素子600を有するペルチェ素子層710を示す斜視図である
。前記ペルチェ素子600は、それぞれ、例えば
図6に示されているようなモジュールであってもよい。前記個々のペルチェ素子600は、それぞれ、熱絶縁された中間スペース712によって互いに分離されている。熱流の方向が矢印によって示されている。
【0058】
図8は、
複数のペルチェ素子層を含む温度調整装置800を示す模式図である。前記温度調整装置は、例として1つの空気通路に符号125が付された熱伝導体層と、例として1つに符号710が付されたペルチェ素子層とからなる積層体を有する。こ
の例では、矢印によって示されているように、高温の空気が前記温度調整装置800の中へ流入し、低温の空気が前記温度調整装置800から流出する。これが意味することは、前記ペルチェ素子が、前記空気通路125を冷却するように配置されているということ、あるいは、そのように動作するということである。それに対して、前記温度調整装置800の、例えば冷却材が流通可能なさらに別の熱伝導体層の場合には加熱される。
【0059】
図9の左側は
、図8に示された温度調整装置の層を示し、右側はこの層の分解図を示す。
ここで示されているのは、第1の熱伝導体層120、2つの第2の熱伝導体層125および2つのペルチェ素子層710からなる積層体構造である。前記ペルチェ素子層710は、それぞれ、前記第1の熱伝導体層120と前記第2の熱伝導体層125の一方との間に配置されている。前記第1の熱伝導体層120は、扁平な冷却材通路の形態に構成されており、この冷却材通路を冷却材950が流通する。前記ペルチェ素子層710は、電気接触部と材料結合による電気絶縁部とを備えたペルチェ層として形成しておくことができる。
【0060】
図10は、
図9のペルチェ素子層710
とペルチェ素子600と
の関係を示す
。
【0061】
占有率εは10%以下であることが可能である。すなわち、
ε=(ペルチェ素子600の総面積)/(層710の面積)≦10%
前記ペルチェ素子600は基板と蓋板とを有し、これらの間に複数のペルチェ素子導体が配置されている。前記ペルチェ素子導体の前記配置は、
図6に示された配置に従って実施しておくことが可能である。
【0062】
図10に示され
た参考例では、ドープされたペレットに代わり、素子600全体が層710内に設けられる。この場合、層710の面積の最大10%が、ペルチェ素子600に占有されている。従って、統合平面は、ドープされたp型およびn型のペレットには位置せず、独自の微細構造、すなわちp型およびn型を有する調達素子全体を内設することができる。前記微細構造はペレットで構成しておいてもよい。結合されたペレットの代わりに、例えば蒸着された導電路またはファブリックを用いることも可能である。
【0063】
本発明の一実施例は、熱電性の加熱機器および空調機器において利用することができる。モジュール構造の機器は、キャビンの空気を加熱または冷却するために用いられる。熱の受け取りあるいは熱の引き渡しは、車両、好ましくは電気車両の低温回路を介して行われる。従来利用可能な熱電材料を用いても有益であるように、前記機器の基本構造は、最上の伝熱が得られるように構想されている。
【0064】
電気車両では、有意なエンジン廃熱を利用することができないので、キャビンを加熱することは難題である。電気抵抗加熱器は、電池内に蓄積された電流をCOP=1(英:Coefficient of Performance、成績係数)で熱に変換し、航続距離をかなり低減させる。より効率が良いのは、COP>1で動作し、熱を一部は電流から、また一部は周囲または低い温度レベルの廃熱源から得るヒートポンプである。冷却材ヒートポンプを利用する以外に、可動部材も冷却材もなしで効果を得られる熱電材料も適している。理想的な状態は、同じ熱電素子を用いることでキャビンの冷却機能(夏季モード)も担うことができる場合であろう。この場合、冷凍回路全体が必要ではなくなり、機械技術的な変更を伴うことなく、印加されている電圧の極性反転によって加熱と冷却との切り替えが実現されるであろう。
【0065】
本発明
によって、「キャビンの加熱」という機能をCOP>1で実現すること(ヒートポンプ運転)、および、冷却運転への電気的な切り替えによって別個の冷凍回路をなくすことが可能となる。この場合、冷却運転におけるCOPは、冷凍回路のCOPより劣ってはならない。
【0066】
ペルチェ効果を利用する加熱・空調機器の主要な特徴は、流体と熱電素子の熱的に結合された側面との間において可能な限りの僅かな温度差を用いることで、伝熱量が明確に増大されることである。熱交換器の効率は直ぐにその限界に達するので、解決策が、伝達される熱流密度を大きく低減することによって僅かな駆動温度差を生じさせることであることに変わりはない。温度差が大きくなるほどCOPが低下するという関係は、冷凍回路の場合よりも熱電系においてかなり顕著に現れる。これは、ペルチェ素子の高温側と低温側との間で、自然な熱流方向において不所望な熱伝導が生じるためである。ここでは冷却運転において、僅かな温度差が、許容範囲内の使用と、有益でない構成または物理的に不可能な構成との間の差を生み出す可能性がある。なぜなら、以下のフィードバックメカニズムが存在するからである。すなわち、COPが悪化すると、廃熱側における発熱量が増大して、そこでの温度が上昇し、これがまたCOPを悪化させて、廃熱側における所要電力および発熱量をさらに増大させるのである。
【0067】
出力密度の低減時、熱電素子への通電量を容易に低減することはできない。なぜなら、ここではCOPが大きく悪化し、前記熱電素子が高温側と低温側との間の不所望な熱橋として維持され続けるからである。用いられる半導体は、一般に一桁レベルの熱伝達率(W/m2K)を持つ。その代わりに、ペルチェ素子には、算定できる最適な電流の強さ、または、特性マップとして格納できる最適な電流の強さを印加しなければならず、ペルチェ素子は、出力密度を低減する際、それらの各取り付け平面層のただ僅かな面積部分を占めることしか許されない。熱電材料により占有されていない面積部分は、例えば、
図7に示されているように絶縁材料、空気または気体を充填することができる。
【0068】
全体で許容範囲内の体積出力密度が利用可能となるように、かつ、
図8に示されているような組み合わされた加熱・冷却機器の構造が大きくなりすぎないように、ペルチェ素子の平面層における小さな出力密度は、残余寸法において層を可能な限り近接して連続させることより補償しなければならない。空気通路は、
図8ではフィンが示されていが、当然ながらフィンを有している。
【0069】
前記望ましい利点および効果を、
図8に示されているようなキャビンの空気および冷却材の流れを逆流案内することによって増大させること、および、
図9に示されているように、個々の層を材料結合により接合することによって増大させることができる。例えば、非常に薄い電気絶縁層を材料結合によって付着させることが可能である。理想的には、各層において、それぞれ各側面に向かって続く層、すなわち、ペルチェ素子→導電体→電気絶縁体→流路(冷却材側または空気側)底部が、材料結合により接合されており、かつ、それらの役割を果たすために必須であるような厚さにしかならないように実施されている。前記冷却材通路120は、バッフル、タービュレータ等を装備しておくことが可能であるが、この冷却材通路は、
図9に示されているように、両側において熱電素子に熱的に結合されている。この構成の更なる利点は、モジュール構造であることであり、また、この構造により、層の数を然るべく適合させることによって、および、平面の寸法を適切に選択することによって分散構成要素を開発することが可能となり、これらの分散構成要素を前部領域または後部領域における対応する流出開口部の近傍に設置できることである。
【0070】
低温モードにおいて、冷凍能力1200W、吹き出し温度15℃、冷却材温度35℃、寸法150×150×300mm
3、冷却材層数10、実際的な空気および冷却材の流れ、および、適切な熱電材料という条件を備えている場合、1≧COP=Q
Kaelte/P
elektrisch=2が実現可能である。
【0071】
前記加熱・冷却体は、1つまたは複数の重要な動作点における最大COPに可能な限り良好に近似できるように設計される。電力需要が僅かである場合、すなわち、通電量が低減されている場合、ペルチェ素子が次第に自然の熱橋として作用するので、COPは悪化するであろう。従って、個々の層は、ある一定の電力レベルを下回った後、空気の流れから電気的に分離されるだけでなく、例えばフラップが入口を閉鎖することによって熱的にも分離される。この分離は、ある一定数の個別層に関して、あるいはまた、複数の層の全体にわたって実現することが可能である。分離の段階をより細密にすると、動作サイクル全体にわたるCOPが改善され、また、この段階をより粗くすると、製造コストが低減される。
【0072】
例えば、1つの加熱・冷却体には、12個の層を設けておくことができる。そのうち全部で6つの層において、それぞれ3つの層を共通にそれぞれ空気側で閉鎖することができる。従って、2つのフラップが必要とされる。そのため、同時に流通される層の数は、次のような値、すなわち、2つのフラップが閉じられている場合は6層、1つのフラップが閉じられている場合は9層、全てのフラップが開いている場合は12層となり得る。
【0073】
さらに、この構成要素の寸法は、ヒートアップ時あるいはクールダウン時、すなわち昇温時および降温時に、これらの段階において達成されるCOPに依存せずに、必要な加熱出力あるいは冷却出力が得られるように設定する必要がある。
【0074】
図11は、
参考例として2つの隣接し合うペルチェ素子層を示した、図平面に対して垂直方向の投影図である。
ここで示されているのは前方のペルチェ素子層、すなわち
図11では上方の層であり、模式的に示された複数のペルチェ素子600を備えている。煩雑にならないように、前記複数のペルチェ素子600のうちの1つにのみ符号600が付されている。さらに、模式的に示された複数のペルチェ素子1600を備えた後方のペルチェ素子層が示されている。前記ペルチェ素子1600は破線によって示されている。ここでも、煩雑にならないように、1つにのみ符号1600が付されている。
【0075】
この
参考例では、前記前方のペルチェ素子層と前記後方のペルチェ素子層とが、異なる個数のペルチェ素子600、1600を有する。例として、前記前方のペルチェ素子層は16個のペルチェ素子600を有し、前記後方のペルチェ素子層は9個のペルチェ素子1600を有する。さらに、前記前方のペルチェ素子層上における前記ペルチェ素子600の配置は、前記後方のペルチェ素子層上のペルチェ素子1600の配置とは異なっている。
ここで示されているのは、ずらした配置であり、この配置の場合、ペルチェ素子600の横列または縦列が、ペルチェ素子1600の横列または縦列と交互に入れ替わる。この場合、前記ペルチェ素子600は、前記ペルチェ素子1600との重なり領域を有していない。この
参考例では、前記ペルチェ素子600と前記ペルチェ素子1600とは、それぞれ同じ大きさを有する。前記ペルチェ素子600、1600は、同一のものであってもよい。あるいは、前記ペルチェ素子600、1600が、異なる大きさを有することも可能である。
【0076】
理想的には、それぞれペルチェ素子層の表面は均一の温度分布を有する。しかし、実際には、熱源あるいはヒートシンクとなる前記ペルチェ素子600、1600には、最高温度位置あるいは最低温度位置、すなわちいわゆるホットスポットとコールドスポットとが現れる。これが生じるのは、水平方向の熱伝導が限定されているためである。ペルチェ素子600、1600の平面的な配置と個数、および、追加的または代替的に前記ペルチェ素子600、1600自体の大きさは、2つの隣接し合うペルチェ素子層の間で異なっていてもよい。このことがもたらし得る利点は、ホットスポットあるいはコールドスポットの形成を低減させることであり、この利点は、例えばフィン部、タービュレータまたは流体に対して作用する熱源あるいはヒートシンクの個数、すなわち
図11に示された、両ペルチェ素子層の概念上の垂直方向の投影図における投影面に対して作用する熱源あるいはヒートシンクの個数が増大し、熱源あるいはヒートシンクの距離が小さくなることによってもたらされる。
【0077】
前述の
実施例及び参考例は、単に例示のために選択されているにすぎず、互いに組み合わせることも可能である。特に、個々のペルチェ素子導体で構成されたペルチェ素子層を備えている前記諸実施例と、ペルチェ素子で構成されたペルチェ素子層を備えている前記
参考例とを組み合わせることが可能である。この場合、前記ペルチェ素子層の前記電気的結合をそれぞれ然るべく適合させることが可能である。