(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
第1の不飽和ポリエステルプレポリマーの二重結合と第2の不飽和ポリエステルプレポリマーの二重結合とのフリーラジカル重合により調製される架橋性ポリエステルであって、前記プレポリマー中の不飽和の数平均官能基数が0.05〜25であり、前記架橋性ポリエステルの官能基が、ヒドロキシル基、酸基、アミノ基、エポキシ基、シラン基、またはこれらの組合せを含み、ここで、前記架橋性ポリエステル対前記不飽和ポリエステルプレポリマーの重量平均分子量比が少なくとも1.2でありそして前記架橋性ポリエステルのヒドロキシル価および酸価が前記プレポリマーのそれらと同じ範囲内である、
ポリエステル。
前記プレポリマーが、a)ポリ酸、ならびに/またはそのエステルおよび/もしくは無水物と、b)ポリオールとの重縮合により調製され、aおよび/またはbが不飽和である、請求項1に記載のポリエステル。
第1の不飽和ポリエステルプレポリマーと、前記第1のポリエステルプレポリマーと異なる1種または複数種のモノマーを含む第2の不飽和ポリエステルプレポリマーとのコポリマーを含む、請求項1に記載のポリエステル。
第1の不飽和ポリエステルプレポリマーと、前記第1のポリエステルプレポリマーと同じモノマーを含む第2の不飽和ポリエステルプレポリマーとのコポリマーを含み、各ポリエステルプレポリマーの前記モノマーの比率が異なる、請求項1に記載のポリエステル。
【発明を実施するための形態】
【0006】
本発明は、不飽和ポリエステルプレポリマーの
フリーラジカル重合により調製されるポリエステルを対象としている。該ポリエステルは架橋性である。本明細書において使用する場合、「架橋性」および同様の用語は、該ポリエステルが別の化合物と架橋できることを意味する。すなわち、該ポリエステルは、架橋剤などの別の化合物の官能基と反応する官能基を有する。本発明のポリエステルは、熱硬化性材料であり、熱可塑性物質ではない。
【0007】
該ポリエステルは、該ポリエステルが形成されるように該プレポリマーの不飽和が反応する
フリーラジカル重合を使用することにより形成される。したがって、該プレポリマーは不飽和であり、この不飽和は、該ポリエステルの形成の間、所望のレベルまたは程度まで反応させられる。特定の実施形態において、この反応は、不飽和の実質的に全てがポリエステルの形成において反応するように行われる一方、他の実施形態において、得られるポリエステルは、ある程度の不飽和も含む。例えば、得られるポリエステルは、ポリエステルを他の官能基と反応性にするのに十分な不飽和を含むことができる。該プレポリマーは、不飽和以外の官能基も含む。この官能基は、
フリーラジカル重合の間、大部分が未反応のままである。そのため、得られるポリエステルは、ポリエステルを架橋可能にする官能基を有する。そのような官能基は、使用するプレポリマー(1種または複数種)に応じてペンダントおよび/または末端であり得る。
【0008】
不飽和ポリエステルプレポリマーは、重縮合などの当技術分野において公知である任意の手段により、ポリ酸ならびに/またはそれらのエステルおよび/もしくは無水物とポリオールとを反応させることにより調製することができる。「ポリオール」および同様の用語は、本明細書において使用する場合、2つ以上のヒドロキシ基を有する化合物を指す。「ポリ酸」および同様の用語は、本明細書において使用する場合、2つ以上の酸基を有する化合物を指し、その酸のエステルおよび/または無水物を含む。ポリ酸および/またはポリオールは不飽和である。ポリ酸および/またはポリオールは、上で論じたように、1つまたは複数のさらなる官能基も含有し得る。そのようなさらなる官能基としては、例えば、ヒドロキシル、カルボキシル、アミノ、エポキシおよび/またはシラン基が挙げられる。ポリ酸および/またはポリオールの不飽和により官能基が提供されることが当業者に理解されるので、そのような官能基は、「さらなる」官能基または官能性基と呼ぶ。さらなる官能基は、ポリ酸および/またはポリオール上の官能基であり得、不飽和を含有する同じまたは異なるポリ酸および/またはポリオール上の官能基であり得る。さらなる官能性基は、ポリオールとポリ酸とが反応した場合に、その結果として末端および/またはペンダント官能基を有するプレポリマーが生じるように選択する。「末端官能基」、「末端官能性基」および同様の用語は、プレポリマーまたは結果として生じるポリエステルの鎖端にある、上で列挙したもののいずれかなどの官能基を指す。「ペンダント官能基」、「ペンダント官能性基」および同様の用語は、プレポリマーまたは結果として生じるポリエステルの鎖端には見られない、上で列挙したもののいずれかなどの官能基を指す。しかし、以下に記載の通り、別のモノマーにより、結果としてプレポリマーの官能基となるさらなる官能基を導入することも可能である。
【0009】
本発明において使用するための適切な不飽和ポリ酸は、2つ以上のカルボキシ基を含有する任意の不飽和カルボン酸ならびに/あるいはそのエステルおよび/または無水物であり得る。その例としては、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸およびテラコン酸、ならびに/あるいはそれらのエステルおよび/または無水物が挙げられるが、これらに限定されない。上記ポリ酸がエステルの形態である場合、これらのエステルは、C
1〜C
18アルコール(例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、イソブタノール、1−ペンタノール、1−ペンタノールおよび1−ヘキサノール)とポリ酸との反応により形成されるC
1〜C
18アルキルエステルなどのように、任意の適切なアルコールを用いて形成することができる。特に適切な不飽和ポリ酸は、マレイン酸、無水マレイン酸またはマレイン酸のC
1〜C
6アルキルエステルである。本発明において使用するための適切な飽和ポリ酸としては、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、コハク酸、グルタル酸、デカン二酸、ドデカン二酸ならびにそれらのエステルおよび無水物が挙げられるが、これらに限定されない。不飽和および/または飽和ポリ酸の組合せを使用することができる。理解される通り、特定の実施形態において、上記ポリ酸は脂肪族である。特定の実施形態において、ポリ酸は、マレイン酸、フマル酸および/もしくはイタコン酸、ならびに/またはそれらのエステル(複数可)および/もしくは無水物(複数可)を含み、他の実施形態において、ポリ酸は、マレイン酸、フマル酸および/もしくはイタコン酸、ならびに/またはそれらのエステル(複数可)および/もしくは無水物(複数可)を含み、実質的に、または完全に、任意の他のモノマーを含まない。特定の実施形態において、不飽和カルボン酸/無水物/エステルは、該ポリエステルの3〜10重量%、例えば、4〜7重量%などを構成する一方、他の実施形態において、不飽和カルボン酸/無水物/エステルは、該ポリエステルの10重量%超、例えば、15重量%以上などを構成する。
【0010】
本発明において使用するための適切な飽和ポリオールは、ポリエステルを作製するために使用されることが公知の任意のポリオールであり得る。その例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール、ヘキシレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールおよびネオペンチルグリコールなどのアルキレングリコール;水素化ビスフェノールA;シクロヘキサンジオール;1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、ブチルエチルプロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオールを含めたプロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、および2−エチル−1,4−ブタンジオールを含めたブタンジオール、トリメチルペンタンジオールおよび2−メチルペンタンジオールを含めたペンタンジオール;シクロヘキサンジメタノール;トリシクロデカンジメタノール;1,6−ヘキサンジオールを含めたヘキサンジオール;カプロラクトンジオール(例えば、イプシロン−カプロラクトンとエチレングリコールの反応生成物);ヒドロキシ−アルキル化ビスフェノール;ポリエーテルグリコール、例えば、ポリ(オキシテトラメチレン)グリコール;トリメチロールプロパン、ペンタエリトリトール、ジ−ペンタエリトリトール、トリメチロールエタン、トリメチロールブタン、ジメチロールシクロヘキサン、グリセロール、エリトリトール等が挙げられるが、これらに限定されない。本発明において使用するための適切な不飽和ポリオールは、2つ以上のヒドロキシル基を含有する任意の不飽和アルコールであり得る。その例としては、トリメチロールプロパンモノアリルエーテル、トリメチロールエタンモノアリルエーテルおよびプロパ−1−エン−1,3−ジオールが挙げられるが、これらに限定されない。不飽和および/または飽和ポリオールの組合せを使用することができる。
【0011】
本発明の不飽和ポリエステルプレポリマーは、1種または複数種の任意選択のさらなるモノマー、例えば、芳香族ポリ酸、単官能酸、脂肪酸、これらの酸のいずれかのエステルまたは無水物、芳香族ポリオールおよび/または単官能アルコールなどをさらに含み得る。特定の実施形態において、「さらなる」官能基は、これらの1種または複数種の任意選択のさらなるモノマーを介して不飽和ポリエステルプレポリマーに導入することができる。すなわち、さらなる官能基は、上記の通り、ポリ酸および/またはポリオール上の官能基でもよく、そして/または1種または複数種の任意選択のさらなるモノマー上の官能基でもよい。したがって、「さらなる」官能基は、様々な方法で導入することができる。
【0012】
適切なさらなるモノマーの非限定的な例としては、酸、ならびにそれらのエステルおよび無水物、例えば、フタル酸、イソフタル酸、5−tert−ブチルイソフタル酸、テトラクロロフタル酸、テトラヒドロフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、テレフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、メチルヘキサヒドロフタル酸、テレフタル酸ジメチル、トリメリット酸、およびシクロヘキサンジカルボン酸を含めた脂環式カルボン酸、エンドメチレンテトラヒドロフタル酸、トリシクロデカンジカルボン酸、エンドエチレンヘキサヒドロフタル酸、ショウノウ酸、シクロヘキサンテトラカルボン酸およびシクロブタンテトラカルボン酸、C
1〜C
18脂肪族カルボン酸、例えば、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、ヘキサン酸、オレイン酸、リノール酸、ウンデカン酸、ラウリン酸、イソノナン酸など、他の脂肪酸、および天然油の水素化脂肪酸、安息香酸、t−ブチル安息香酸、ならびにそれらのエステルおよび無水物などが挙げられる。
【0013】
適切なさらなる多官能性および単官能性アルコールの非限定的な例としては、ヒドロキシ−アルキル化ビスフェノールならびにベンジルアルコールおよびヒドロキシエトキシベンゼンなどの芳香族アルコール、メタノール、エタノール、プロパノール、ヘキサノール、ステアリルアルコール、オレイルアルコールおよびウンデカノールなどのC
1〜C
18脂肪族アルコール、ならびにベンジルアルコールおよびヒドロキシエトキシベンゼンなどの芳香族アルコールが挙げられる。
【0014】
不飽和ポリエステルプレポリマーは、当技術分野において公知である任意の方法で作製することができ、該プレポリマーを作製するのに使用する構成要素に応じて変わり得る。例えば、本発明の一実施形態において、少なくとも一方が不飽和であるポリ酸とポリオールとを反応させて、不飽和ポリエステルプレポリマーを調製する。次いで、この反応生成物は、さらに、上記のもののいずれかなどの他の任意選択のモノマーと反応させることができ、得られる生成物も、本発明において使用するのに適した不飽和ポリエステルプレポリマーである。このように調製される不飽和ポリエステルプレポリマーの一例としては、ジオールと無水マレイン酸(またはフマル酸)が第1段階で反応させられて、マレエート(またはフマレート)の線状ポリマーが生成されるポリマーが挙げられる。次いで、これがポリオール(例えば、グリセリンまたはトリメチロールプロパンなど)および脂肪族(または脂環式)ポリ酸と反応させられて、分枝不飽和ポリエステル前駆体またはプレポリマーが生成される。線状の不飽和プレポリマーは、二酸を使用することにより同様の方法で生成することもできる。本発明の別の実施形態において、いずれも飽和であるポリオールおよびポリ酸を反応させることができ、反応生成物を、さらに、不飽和モノマーと反応させる。このように作製される特に適切な不飽和ポリエステルプレポリマーは、ジオールがイソフタル酸と反応させられ、その結果、相対的に低い酸価、および相対的に高いヒドロキシ価を有する反応生成物が生じる。次いで、この反応生成物を、マレイン酸、エステル、または無水物とさらに反応させて、得られる低酸価プレポリマー中に不飽和を導入することができる。
【0015】
不飽和ポリエステルプレポリマーが作製される方法、該プレポリマーに含まれるモノマーの添加の順番等にかかわらず、結果は、不飽和ポリエステルプレポリマーとなるべきである。該プレポリマー中の不飽和の数平均官能基数(「Fn」)は、0.05〜25.0である。特定の実施形態において、Fnは、0.1以上、例えば、0.2以上、0.5以上、0.8以上、1.0以上、または1.2以上などであり、上限は2.0、2.5、5.0、7.0、9.0、10またはそれ以上である。0.05〜25.0の範囲内の任意の値が本発明の範囲内である。特定の実施形態において、不飽和は、マレイン酸/無水物に由来し、該プレポリマーは、平均で0.2以上、例えば、0.5以上、0.9以上またはそれ以上、例えば、2.0以上などのマレイン酸残基を有する。
【0016】
不飽和ポリエステルプレポリマーが、0.05〜25.0の一般的なFn範囲内で様々な程度の不飽和を有することができ、不飽和ポリエステルプレポリマーが形成される重縮合反応または他の反応の後に、様々な程度の不飽和、様々な鎖長、様々な程度の枝分かれおよび様々な数および/またはタイプの末端基を有するポリマー種が分布することがさらに理解されよう。不飽和ポリエステルプレポリマー鎖当たりの二重結合の平均数は、標的ポリエステル、および得られるポリエステルに起因する様々な性質を提供するために望ましい
フリーラジカル重合の程度に応じて変化させることができる。したがって、不飽和ポリエステルプレポリマー鎖当たりの二重結合の数は、一般に平均(Fn)として報告する。該ポリエステルプレポリマー中の不飽和は、例えば、マレイン酸、エステルまたは無水物の残基に由来することができる。特定の実施形態において、不飽和部分は、実質的に、該プレポリマーの端または末端以外の位置で鎖に組み込まれる。この文脈における「実質的に組み込まれる」とは、わずかな反応のみが末端で起きることを意味する。他の実施形態において、末端での不飽和の組込みは存在しない。
【0017】
不飽和ポリエステルプレポリマーを形成するための重縮合反応は、エステル化触媒の存在下で実施することができる。ポリエステルの調製において一般に使用する任意の重縮合触媒を使用することができる。適切なエステル化触媒の非限定的な例としては、スズ、チタンおよび亜鉛触媒、例えば、酸化ジブチルスズ(DBTO)、塩化第一スズ、シュウ酸第一スズ、オクタン酸第一スズ、ブチルスズ酸、チタン酸テトラ−n−ブチル、チタン酸テトライソプロピル、酢酸亜鉛およびステアリン酸亜鉛などが挙げられる。特定の実施形態において、不飽和点での重合を阻害するように機能する重合阻害剤を含むことも望ましい場合がある(不飽和点での反応は、結果として、飽和または大部分が飽和のプレポリマーを生じる可能性がある)。そのような阻害剤の適切な例としては、メチルヒドロキノン、およびt−ブチルヒドロキノンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0018】
上述の通り、本発明のプレポリマーは、末端および/またはペンダント官能基も含む。特定の実施形態において、末端官能基は、分枝鎖端を含めた実質的に全ての末端に存在する。末端および/またはペンダント官能基がヒドロキシ基を含む場合、不飽和ポリエステルプレポリマーのヒドロキシ価は、2〜500mgKOH/gm、例えば、10〜350、30〜250、40〜200、50〜200mgKOH/gmなどであり得、末端および/またはペンダント官能基が酸基を含む場合、不飽和ポリエステルプレポリマーの酸価は、1〜400mgKOH/gm、例えば、10〜500、20〜200、30〜250、30〜150、40〜100mgKOH/gmなどであり得る。これらの広い範囲の間の任意の値も本発明の範囲内である。
【0019】
不飽和ポリエステルプレポリマーは、150〜5,000、例えば、250〜2,500などの数平均分子量(「Mn」)、および250〜50,000、例えば、1,000〜20,000などの重量平均分子量(「Mw」)を有することができる。これらの広い範囲の間の任意の値も本発明の範囲内である。
【0020】
本発明のポリエステルは、主に、不飽和点での反応による不飽和ポリエステルプレポリマー鎖の
フリーラジカル重合により形成される。該プレポリマーの形成と同様に、該ポリエステルの形成において、様々な反応生成物を形成することができる。これらの反応生成物の大多数は、不飽和の反応を介して形成されるが、該プレポリマーの不飽和とさらなる官能基との間にも少なくともある程度の反応がある可能性が高い。したがって、特定の実施形態において、該ポリエステルポリマーの多分散性または多分散性指数(「PDI」)は、1以上、例えば、2.0、10、50、200以上など、または4と40の間などとなろう。
【0021】
該重合は、
フリーラジカル開始剤の存在下で実行する。二重結合を含有する不飽和化合物の重合を開始するのに一般に使用する任意の
フリーラジカル開始剤を
フリーラジカル重合において使用することができる。例えば、
フリーラジカル開始剤は、アゾ開始剤または過酸化物開始剤、例えば、ペルオキシ−2−エチルヘキサン酸tert−ブチル、過安息香酸tert−ブチル、ペルオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサン酸tert−ブチルもしくは過酸化ジベンゾイルなどであり得る。不飽和ポリエステルプレポリマーに対する開始剤の比は、所望のポリエステルプレポリマーの鎖の結合の程度に応じて変えることができる。例えば、不飽和ポリエステルプレポリマーの鎖当たりの二重結合の平均数に対する開始剤のモル比は、0.0001〜1.0、例えば、0.001〜0.7、0.01〜0.5、0.05〜0.2などであり得る。
【0022】
望ましい重合の制御の程度に応じて、異なる時点で異なる分量で開始剤を添加することができる。例えば、
フリーラジカル開始剤の全てを反応の開始時に添加してもよく、開始剤を複数回分に分割し、反応の間に間隔をあけて一回分ずつ添加してもよく、または開始剤を連続供給で添加してもよい。本発明の一部の実施形態において、このプロセスは、連続供給と複数回分に分けて添加する開始剤との組合せを使用することにより行うことができる。設定した間隔で、または連続供給で開始剤を添加することにより、開始剤の全てを開始時に添加するよりプロセスが制御されることが理解されよう。さらに、開始剤の全てを1回で添加すると、発熱反応に起因して発生する熱により、温度の制御が困難となる恐れがある。
【0023】
フリーラジカル重合反応を実行する温度は、不飽和ポリエステルプレポリマー、開始剤、溶剤の組成およびポリエステルにおいて望まれる性質などの要因に応じて変えられ得る。一般に、不飽和ポリエステルプレポリマーの
フリーラジカル重合は、30℃〜180℃以上、例えば、50℃〜150℃または80℃〜130℃などの温度で実行する。アクリル系重合などの一般的重合において、
フリーラジカル開始剤の濃度が高いと、それによって、その各々が相対的に低い分子量を有する鎖がより多く重合する。驚くべきことに、本発明の系において、特にマレイン酸を使用する場合、開始剤濃度が高いほど、得られるポリマーの分子量が高くなることを発見した。当業者は、本発明の重合が起きることを予想することがなかったため、このことは驚くべき結果である。しかし、開始剤が多すぎると、ゲル化(gellation)につながる場合がある。したがって、特定の実施形態において、本発明のポリエステ
ルはゲル化していない。
【0024】
ポリエステルを重合するために任意の手段を使用することができるが、取り扱いやすくするために、
フリーラジカル重合は、不飽和ポリエステルプレポリマーの溶液を使用して実施することができる。重合を効率的に起こすことを可能にするのに十分な程度に、不飽和ポリエステルプレポリマーおよび
フリーラジカル開始剤を溶解することができる限り、任意の溶剤を使用することができる。適切な溶剤の一般例としては、ブチルグリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、メトキシプロピルアセテートおよびキシレンが挙げられる。不飽和ポリエステルプレポリマーは、また、溶融下(すなわち、100%固体のもの)で形成することができ、得られた不飽和ポリエステルプレポリマーを冷却し、次いで、適切な溶剤および
フリーラジカル開始剤を添加し、その後、所望の分子量および官能性を有する本発明のポリエステルの形成を可能にする、連続プロセスで実施すべき
フリーラジカル重合を行う。したがって、本発明のポリエステルは、固体であっても液体であってもよい。
【0025】
不飽和ポリエステルの
フリーラジカル重合は、水または他の水性媒体において、すなわち、水を含有する混合物において行うこともできる。不飽和ポリエステルプレポリマーが十分なカルボン酸基を有する場合、それは、適切な塩基による中和、または部分的中和、およびその後の水の添加により、水で希釈された材料に転換することができる。中和に適切な塩基の非限定的な例としては、ジメチルエタノールアミン、トリエチルアミンおよび2−アミノ−2−メチルプロパノールが挙げられる。この水性材料は、次いで、上記のフリーラジカルと重合することができる。あるいは、不飽和ポリエステルプレポリマーは、界面活性剤および/またはポリマー系安定剤材料と混合することができ、その後、前述の
フリーラジカル重合の前に水と混合することができる。これらの水性混合物が、ブチルグリコール、ブチルジグリコールおよびプロピレングリコールモノメチルエーテルが例として挙げられるがこれらに限定されないさらなる有機共溶剤を含有し得ることも当業者に明らかとなろう。
【0026】
上述の通り、本発明のポリエステルは、不飽和ポリエステルプレポリマーの二重結合を介した
フリーラジカル重合により形成される。特定の実施形態において、本発明のポリエステルは、同じ構成要素から構成される不飽和ポリエステルプレポリマーの反応により調製することができる一方、他の実施形態において、それらは、異なる構成要素により形成される2種以上の不飽和ポリエステルプレポリマーの反応により調製することができる。すなわち、
フリーラジカル重合により第1の不飽和ポリエステルプレポリマーと第2の不飽和ポリエステルプレポリマーとを反応させるが、各々のプレポリマーは、ある程度の不飽和を有し、不飽和の程度は同じでも異なっていてもよく、不飽和により、主要ビヒクル(該プレポリマーがポリエステルを形成するようにこれを通して重合する)が提供され、第1および第2のプレポリマーを作製するのに使用する構成要素は異なってもよく、または1つもしくは複数の異なる構成要素を有することができる。さらに、第1および第2のコポリマーは、同じ構成要素を含むことができるが、各構成要素の官能性、分子量、量等は異なり、このことは、本明細書において、異なる「比率」と呼ぶ場合もある。同様に、第1および第2のプレポリマーの各々は、同じまたは異なるタイプの末端官能性基を有することができる。この実施形態において、得られるポリエステルは、使用する各タイプのプレポリマーに由来するランダム単位を有すると考えられる。したがって、本発明は、本明細書に記載の任意の数の異なる種類の不飽和ポリエステルプレポリマーの
フリーラジカル重合により調製されるポリエステルを包含する。2種以上の異なるプレポリマーの重合は、当技術分野において標準的な手段を使用して実施することができる。異なるプレポリマーを使用することにより、異なる性質を有するポリエステルが生じる可能性がある。このような様式で、使用する特定のプレポリマーの使用に由来する望ましい性質を有するポリエステルを形成することができる。
【0027】
本発明において調製されるポリエステルは、分枝状または線状の形状を有することができる。プレポリマーを形成するのに使用する構成要素に応じてポリエステルの形状が変化することは当業者に理解されよう。例えば、三官能性以上を有するプレポリマー構成要素は、一般に、分枝プレポリマー、したがって分枝ポリエステルをもたらす。線状プレポリマーは、ジオールおよび二酸から調製される。
フリーラジカル反応後、得られるポリエステルは、線状および分枝状構造の混合物を含有し得る。特定の実施形態において、分枝ポリエステルを生成する場合、その枝分かれは、大部分が不飽和の反応を通して得られる。この実施形態において、トリオールまたはテトラオールの使用を通して、わずかな程度の分枝に寄与することが可能であるが、そのような化合物の量は、ゲル化を回避するように選択しなければならない。該ポリエステルの他の特徴も、該プレポリマーの組成に応じて変化する。
【0028】
特定の実施形態において、不飽和は、該ポリエステルプレポリマーの主鎖に沿ってランダムであることができる。本発明の特定の他の実施形態において、該プレポリマーの端には二重結合が存在せず、すなわち、該ポリエステルは、末端不飽和を「実質的に含まない」、例えば、20%未満、例えば、10%未満もしくは5%未満、2%未満もしくは1%未満などの末端不飽和を含むか、または末端不飽和を完全に含まない。特定の実施形態において、該ポリエステルプレポリマーは、実際にはモノエステルである。そのようなモノエステルは、モノアルコールとポリ酸とを反応させる場合、または一酸とポリオールとを反応させる場合に形成することができる。また、一般に、ポリマー形成は多様性を伴うので、該プレポリマーを構成する反応生成物は、大多数の、ジエステルを含めたポリエステルの形状を有し、多少のモノエステルも有する。したがって、本発明の「ポリ」エステルプレポリマーは、実際には、主としてポリエステルを含むがモノエステルも含むエステルのミックスである可能性が最も高い。
【0029】
上述の通り、本発明のポリエステルは、主に不飽和ポリエステルプレポリマー中の不飽和の
フリーラジカル重合を通して形成されるので、末端および/またはペンダント官能基(複数可)は、本発明のポリエステルを構成する反応生成物の大部分において未反応のままである。次いで、これらの未反応の官能基は、別の構成要素と架橋することができる。したがって、本発明は、広く網状化したポリエステルであるゲル化ポリエステルが形成される技術とは異なる。
【0030】
特定の実施形態において、不飽和ポリエステルプレポリマー(例えば、重合の前など)および/または分枝ポリエステルのヒドロキシ官能基の一部または全てを、別の官能基に転換することが望ましい場合がある。例えば、ヒドロキシを環式無水物と反応させて、酸性官能基を得ることができる。酸エステルも形成することができる。
【0031】
特定の他の実施形態において、不飽和ポリエステルプレポリマーは、エステル結合の他に結合を含み得る。例えば、該ポリエステルプレポリマーは、1つまたは複数のウレタン結合をさらに含み得る。ウレタン結合は、過剰なポリオールプレポリマーまたは不飽和ポリエステルポリマーとポリイソシアネートとを反応させることにより導入することができる。得られる生成物は、依然として、末端官能基および不飽和を有するが、エステル結合の他にウレタン結合を有する。他の化学物質も導入することができる。したがって、特定の実施形態において、不飽和ポリエステルプレポリマーは、エステル結合の他に1つまたは複数の結合を含む。
【0032】
特定の実施形態において、不飽和ポリエステルプレポリマーは、具体的には、アルデヒドとの反応により形成されるプレポリマーを除外し、したがって、この実施形態において、具体的には、アシルコハク酸ポリエステルは除外される。同様に、本発明の特定の実施形態において、具体的には、溶剤中でのアルデヒドの使用を除外する。
【0033】
特定の他の実施形態において、反応生成物の不飽和ポリ酸/無水物/エステル以外の不飽和モノマーの使用は除外する。例えば、(メタ)アクリレート、スチレン、ハロゲン化ビニルなどのビニルモノマーの使用は、特定の実施形態において除外することができる。したがって、本発明の分枝ポリエステルが、当技術分野において広く公知であるポリエステル/アクリル系グラフトコポリマーではないことが理解されよう。
【0034】
主に不飽和ポリエステルプレポリマーの
フリーラジカル重合により形成される本発明のポリエステルは、従来のポリエステル樹脂と比較して高い分子量および高い官能性(1分子当たり)の両方を有するポリエステルをもたらす。特定の実施形態において、不飽和ポリエステルプレポリマーの分子量と比較した本発明のポリエステルの分子量の増加は、非常に著しいものであってよい一方で、他の実施形態において、分子量の増加は、漸進的でしかない可能性がある。ゲル浸透クロマトグラフィーの結果により、異なる線状ポリエステルプレポリマーおよびわずかに分枝状のポリエステルプレポリマーの分子量を、
フリーラジカル重合によりかなり増加させて、より高い分子量の本発明のポリエステルを得ることができることが確認された。一般に、不飽和ポリエステルプレポリマーのMwに対する本発明のポリエステルの重量平均分子量(「Mw」)の比は、1.2〜500であり、500超であり得る場合もある。本発明のポリエステルは、一般に、600〜10,000,000、例えば、1,000〜7,000,000、10,000〜4,000,000、25,000〜4,000,000、50,000〜4,000,000、100,000〜4,000,000など、またはこれらのいずれかの範囲内の任意の組合せの重量平均分子量を有する。特定の実施形態において、該ポリエステルのMwは、1,000超、例えば、5,000超、10,000超、25,000超、または50,000超、または100,000超などである。分子量の増加は、1つまたは複数の要因、例えば、使用する開始剤のタイプおよび/または量、不飽和ポリエステルプレポリマーのFn、不飽和ポリエステルプレポリマーの分子量および/またはPDI、溶剤の温度およびタイプおよび/または量などにより制御することができる。
【0035】
上記の分子量の他に、本発明のポリエステルは、そのような分子量を有する従来のポリエステルに期待されるものより高い官能性(1分子当たり)も有する。本発明の最終ポリエステルの「平均官能基数」は、2.0以上、例えば、2.5以上、10以上、50以上など、またはさらに高いものであり得る。この文脈において使用する場合、「平均官能基数」とは、最終ポリエステル上の官能基の平均数を指す。最終ポリエステルの官能性は、最終ポリエステルにおいて未反応のままである「さらなる」官能基の数により測定されるものであり、未反応の不飽和により測定されるのではない。驚くべきことに、特定の実施形態において、例えば、ヒドロキシ価、酸価等によって測定した最終ポリエステルプレポリマーの官能基の濃度が、該ポリエステルプレポリマーの官能基の濃度と同様であることを発見した。このことは、該プレポリマーの末端および/またはペンダント官能基が重合反応にほとんど関与していないことを示している。したがって、特定の実施形態において、本発明のポリエステルのヒドロキシ価または酸価は、該プレポリマーについて上で示したものと同じ範囲内であり得る。
【0036】
特定の実施形態において、本発明のポリエステルは、例えば、≧15,000、例えば、20,000〜40,000、または40,000超などのMwなどの高い官能性、および≧100mgKOH/gmの官能性の両方を有する。
【0037】
本発明のポリエステルは官能基を含むので、本発明のポリエステルは、コーティング配合物において一般に使用する他の樹脂および/またはクロスリンカーと官能基とが架橋しているコーティング配合物における使用に適している。したがって、本発明は、本発明のポリエステルおよびそのためのクロスリンカーを含むコーティング配合物をさらに対象としている。クロスリンカー、または架橋樹脂または架橋剤は、当技術分野において公知である任意の適切なクロスリンカーであっても架橋樹脂であってもよく、ポリエステルの官能基(1つまたは複数)と反応性であるものが選択される。本発明のコーティングは、さらなる官能性基とクロスリンカーとの反応を通して硬化し、架橋性ポリエステルにおいて、いずれかが存在する限り、不飽和によって硬化するわけではないことが理解されよう。
【0038】
適切なクロスリンカーの非限定的な例としては、フェノール系樹脂、アミノ樹脂、エポキシ樹脂、イソシアネート樹脂、ブロックされたイソシアネートの樹脂、ベータ−ヒドロキシ(アルキル)アミド樹脂、アルキル化カルバメート樹脂、ポリ酸、ポリマー系酸無水物を含めた酸無水物、有機金属酸官能性材料、ポリアミン、ポリアミド、アミノプラスト、メラニンホルムアルデヒド縮合物、ウレタンクロスリンカーおよびそれらの混合物が挙げられる。特定の実施形態において、クロスリンカーは、官能性≧3のアルキル化フェノール/ホルムアルデヒド樹脂および二官能性o−クレゾール/ホルムアルデヒド樹脂を含むフェノール系樹脂である。そのようなクロスリンカーは、HexionからBAKELITE 6520LBおよびBAKELITE 7081LBとして市販されている。
【0039】
適切なイソシアネートとしては、多官能性イソシアネートが挙げられる。多官能性ポリイソシアネートの例としては、ヘキサメチレンジイソシアネートおよびイソホロンジイソシアネートのような脂肪族ジイソシアネート、ならびにトルエンジイソシアネートおよび4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートのような芳香族ジイソシアネートが挙げられる。ポリイソシアネートは、ブロックされていてもいなくてもよい。他の適切なポリイソシアネートの例としては、イソシアヌレート三量体、アロファネート、およびジイソシアネートのウレトジオン、ならびに、参考として本明細書の該当部分に援用される2008年3月27日出願の米国特許出願第12/056,304号に開示されているものなどのポリカルボジイミドが挙げられる。適切なポリイソシアネートは、当技術分野において周知であり、広く市販されている。例えば、適切なポリイソシアネートは、米国特許第6,316,119号の第6欄、19〜36行(この引用部分は、参考として本明細書に援用される)に開示されている。市販されているポリイソシアネートの例としては、Bayer Corporationにより販売されているDESMODUR VP2078およびDESMODUR N3390、ならびにRhodia Inc.により販売されているTOLONATE HDT90が挙げられる。
【0040】
適切なアミノプラストとしては、アミンおよび/またはアミドとアルデヒドとの縮合物が挙げられる。例えば、メラミンとホルムアルデヒドとの縮合物は適切なアミノプラストである。適切なアミノプラストは、当技術分野において周知である。適切なアミノプラストは、例えば、米国特許第6,316,119号の第5欄、45〜55行(この引用部分は、参考として本明細書に援用される)に開示されている。
【0041】
本発明のコーティングの調製において、分枝ポリエステルおよびクロスリンカーは、単一の溶剤または溶剤の混合物に溶解または分散することができる。配合物が基材にコーティングされることを可能にする任意の溶剤を使用することができ、これらは、当業者に周知である。一般例としては、水、有機溶剤(複数可)、および/またはそれらの混合物が挙げられる。適切な有機溶剤としては、グリコール、グリコールエーテルアルコール、アルコール、ケトン、アセテート、ミネラルスピリット、ナフサおよび/またはそれらの混合物が挙げられる。「アセテート」は、グリコールエーテルアセテートを含む。特定の実施形態において、溶剤は非水溶剤である。「非水溶剤」および同様の用語は、溶剤の50%未満が水であることを意味する。例えば、溶剤の10%未満、またはさらには5%未満または2%未満が水であり得る。50%未満の量の水を含むまたは含まない溶剤の混合物が「非水溶剤」を構成することが理解されよう。他の実施形態において、該コーティングは、水性または水ベースである。これは、溶剤の50%以上が水であることを意味する。これらの実施形態は、50%未満、例えば、20%未満、10%未満、5%未満または2%未満などの溶剤を有する。
【0042】
特定の実施形態において、本発明のコーティングは、硬化触媒をさらに含む。ポリエステル樹脂とクロスリンカーとの間の架橋反応を触媒するのに一般に使用するフェノール系樹脂などの任意の硬化触媒を使用することができ、触媒は特に限定されない。そのような硬化触媒の例としては、リン酸、アルキルアリールスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ジノニルナフタレンスルホン酸、およびジノニルナフタレン二スルホン酸が挙げられる。本発明のコーティングが、主として、該ポリエステルの官能基と適切な架橋剤または架橋樹脂との間の架橋により硬化し、該ポリエステル中に残っている任意の不飽和の反応により硬化するわけではないことが理解されよう。
【0043】
所望であれば、該コーティング組成物は、着色剤、可塑剤、耐摩耗性粒子、酸化防止剤、ヒンダードアミン光安定剤、紫外線吸収剤および安定剤、界面活性剤、流量調整剤(flow control agent)、チキソトロープ剤、充填剤、有機共溶剤、反応性希釈剤、触媒、磨砕ビヒクル(grind vehicle)、ならびに他の通例の助剤などの構成要素のいずれかにおいて、コーティングの配合の技術分野において周知である他の任意選択の材料を含むことができる。
【0044】
本明細書において使用する場合、「着色剤」という用語は、色および/もしくは他の不透明度ならびに/または他の視覚効果を組成物に付与する任意の物質を意味する。着色剤は、離散粒子、分散体、溶液および/またはフレークなどの任意の適切な形態でコーティングに添加することができる。本発明のコーティングにおいて、単一の着色剤または2種以上の着色剤の混合物を使用することができる。
【0045】
着色剤の例としては、ペイント産業において使用するもの、および/またはDry Color Manufacturers Association(DCMA)に列挙されているものなどの顔料、染料および色調剤、ならびに特殊効果組成物が挙げられる。着色剤は、例えば、使用条件下で不溶性であるが湿潤可能である微粉化された固体粉末を含み得る。着色剤は、有機でも無機でもよく、凝集していても凝集していなくてもよい。着色剤は、磨砕または単純な混合によりコーティングに組み込むことができる。着色剤は、アクリル系磨砕ビヒクルなどの磨砕ビヒクルの使用により、磨砕によりコーティングに組み込むことができ、磨砕ビヒクルの使用は、当業者によく知られている。
【0046】
顔料および/または顔料組成物の例としては、カルバゾールジオキサジン粗顔料、アゾ、モノアゾ、ジスアゾ、ナフトールAS、塩タイプ(レーキ)、ベンゾイミダゾロン、縮合物、金属錯体、イソインドリノン、イソインドリンおよび多環式フタロシアニン、キナクリドン、ペリレン、ペリノン、ジケトピロロピロール、チオインジゴ、アントラキノン、インダントロン、アントラピリミジン、フラバントロン、ピラントロン、アントアントロン、ジオキサジン、トリアリールカルボニウム、キノフタロン顔料、ジケトピロロピロールレッド(「DPPBOレッド」)、二酸化チタン、カーボンブラック、炭素繊維、グラファイト、他の導電顔料および/または充填剤ならびにそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。「顔料」および「有色充填剤」という用語は、互換的に使用することができる。
【0047】
染料の例としては、溶剤および/または水性ベースのもの、例えば、酸性染料、アゾイック染料、塩基性染料、直接染料、分散染料、反応性染料、溶剤染料、硫化染料、媒染染料、例えば、バナジン酸ビスマス、アントラキノン、ペリレンアルミニウム、キナクリドン、チアゾール、チアジン、アゾ、インジゴイド、ニトロ、ニトロソ、オキサジン、フタロシアニン、キノリン、スチルベン、およびトリフェニルメタンなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0048】
色調剤の例としては、水ベースまたは水混和性の担体に分散した顔料、例えば、Degussa,Inc.から市販されているAQUA−CHEM 896、Eastman Chemicals,Inc.のAccurate Dispersions部門から市販されているCHARISMA COLORANTSおよびMAXITONER INDUSTRIAL COLORANTSなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0049】
上述の通り、着色剤は、ナノ粒子分散体が挙げられるが、これに限定されない分散体の形態であり得る。ナノ粒子分散体は、所望の可視色および/または不透明度および/または視覚効果をもたらす1種または複数種の高度に分散したナノ粒子着色剤および/または着色剤粒子を含むことができる。ナノ粒子分散体は、150nm未満、例えば、70nm未満、または30nm未満などの粒径を有する顔料または染料などの着色剤を含むことができる。ナノ粒子は、0.5mm未満の粒径を有する磨砕媒体を用いて有機または無機顔料の素材を粉砕することにより製造することができる。ナノ粒子分散体およびそれを作製する方法の例は、参考として本明細書に援用される米国特許第6,875,800 B2号において同定されている。ナノ粒子分散体は、結晶化、沈殿、気相縮合、および化学的摩損(すなわち、部分溶解)により製造することもできる。コーティング内のナノ粒子の再凝集を最小化するために、樹脂でコーティングされたナノ粒子の分散体を使用することができる。本明細書において使用する場合、「樹脂でコーティングされたナノ粒子の分散体」は、ナノ粒子を含む離散した「複合微粒子」およびナノ粒子上の樹脂コーティングが分散している連続相を指す。樹脂でコーティングされたナノ粒子の分散体およびそれを作製する方法の例は、やはり参考として本明細書に援用される、2004年6月24日出願の米国特許出願公開第2005−0287348 A1号、2003年6月24日出願の米国仮出願第60/482,167号、および2006年1月20日出願の米国特許出願第11/337,062号において同定されている。
【0050】
使用することができる特殊効果組成物の例としては、反射率、真珠光沢、金属光沢、リン光、蛍光、フォトクロミズム、感光性、サーモクロミズム、ゴニオクロミズムおよび/または変色などの1つまたは複数の外観効果をもたらす顔料および/または組成物が挙げられる。さらなる特殊効果組成物は、不透明度または質感などのその他の知覚できる性質をもたらすことができる。非限定的な実施形態において、特殊効果組成物は、コーティングを異なる角度から見るとコーティングの色が変化するように色ずれを生じさせ得る。色効果組成物の例は、参考として本明細書に援用される米国特許第6,894,086号において同定されている。さらなる色効果組成物は、透明なコーティングをされた雲母および/または合成雲母、コーティングされたシリカ、コーティングされたアルミナ、透明な液晶顔料、液晶コーティング、および/またはその干渉が材料内の屈折率差から生じるものであって材料の表面と空気の間の屈折率差が原因ではない任意の組成物が挙げられる。
【0051】
特定の非限定的な実施形態において、1つまたは複数の光源に曝露されるとその色を可逆的に変える感光性組成物および/またはフォトクロミック組成物を本発明のコーティングにおいて使用することができる。フォトクロミックおよび/または感光性組成物は、指定の波長の照射への曝露により活性化することができる。該組成物が励起されると、その分子構造が変化し、変化した構造は、該組成物の元の色とは異なる新しい色を示す。照射への曝露を止めると、フォトクロミックおよび/または感光性組成物は、静止状態に戻ることができ、その状態では、該組成物の色が元に戻る。1つの非限定的な実施形態において、フォトクロミックおよび/または感光性組成物は、非励起状態では無色であり、励起状態では色を呈すことができる。完全な変色は、ミリ秒から数分以内、例えば、20秒〜60秒以内に生じることができる。フォトクロミックおよび/または感光性組成物の例としては、フォトクロミック染料が挙げられる。
【0052】
非限定的な実施形態において、感光性組成物および/またはフォトクロミック組成物は、重合性構成要素のポリマーおよび/もしくはポリマー性材料を伴い、かつ/または少なくとも部分的に重合性構成要素のポリマーおよび/もしくはポリマー性材料に共有結合などにより結合することができる。感光性組成物がコーティングから流出し、基材内に結晶化し得る一部のコーティングとは対照的に、本発明の非限定的な実施形態の、ポリマーおよび/もしくは重合性構成要素を伴い、かつ/または少なくとも部分的にポリマーおよび/もしくは重合性構成要素に結合した感光性組成物および/もしくはフォトクロミック組成物は、コーティングからの流出が最小限である。感光性組成物および/またはフォトクロミック組成物ならびにそれらを作製する方法の例は、参考として本明細書に援用される2004年7月16日出願の米国出願第10/892,919号において同定されている。
【0053】
一般に、着色剤は、所望の視覚および/または色効果を付与するのに十分な任意の量で存在することができる。着色剤は、重量パーセントで、本発明の組成物の全重量に対して本発明の組成物の1〜65重量パーセント、例えば、3〜40重量パーセントまたは5〜35重量パーセントなどを構成し得る。
【0054】
「耐摩耗性粒子」は、コーティングにおいて使用する場合、該粒子を含まない同じコーティングと比較してある程度の耐摩耗性をコーティングに付与するものである。適切な耐摩耗性粒子としては、有機および/または無機粒子が挙げられる。適切な有機粒子の例としては、ダイアモンド粉末粒子などのダイアモンド粒子、および炭化物材料から形成される粒子が挙げられるがこれらに限定されず、炭化物粒子の例としては、炭化チタン、炭化ケイ素および炭化ホウ素が挙げられるが、これらに限定されない。適切な無機粒子の例としては、シリカ;アルミナ;アルミナシリケート;シリカアルミナ;アルカリアルミノシリケート;ホウケイ酸塩ガラス;窒化ホウ素および窒化ケイ素を含めた窒化物;二酸化チタンおよび酸化亜鉛を含めた酸化物;石英;霞石閃長岩;酸化ジルコニウムの形態などのジルコン;バデレアイト(buddeluyite);およびユージアライトが挙げられるが、これらに限定されない。任意のサイズの粒子を使用することができ、異なる粒子および/または異なるサイズの粒子の混合物も使用することができる。例えば、粒子は、0.1〜50ミクロン、0.1〜20ミクロン、1〜12ミクロン、1〜10ミクロン、または3〜6ミクロン、またはこれらのいずれかの範囲内の任意の組合せの平均粒径を有する微粒子であり得る。粒子は、0.1ミクロン未満、例えば、0.8〜500ナノメートル、10〜100ナノメートル、または100〜500ナノメートルなど、またはこれらの範囲内の任意の組合せの平均粒径を有するナノ粒子であり得る。
【0055】
本発明のポリエステルおよびそのためのクロスリンカーが、コーティングのフィルム形成樹脂の全てまたは一部を形成することができることが理解されよう。特定の実施形態において、1種または複数種のさらなるフィルム形成樹脂も該コーティングにおいて使用する。例えば、コーティング組成物は、当技術分野において公知である様々な熱可塑性および/または熱硬化性組成物のいずれかを含むことができる。コーティング組成物は、水ベースまたは溶剤ベースの液体組成物でよく、あるいは、固体微粒子形態、すなわち、粉末コーティングでもよい。
【0056】
熱硬化性または硬化性コーティング組成物は、一般に、それら自身か、または架橋剤と反応性である官能基を有するフィルム形成ポリマーまたは樹脂を含む。さらなるフィルム形成樹脂は、例えば、アクリル系ポリマー、ポリエステルポリマー、ポリウレタンポリマー、ポリアミドポリマー、ポリエーテルポリマー、ポリシロキサンポリマー、ポリエポキシポリマー、エポキシ樹脂、ビニル樹脂、それらのコポリマー、およびそれらの混合物から選択することができる。一般に、これらのポリマーは、当業者に公知である任意の方法により作製されるこれらのタイプの任意のポリマーであり得る。そのようなポリマーは、溶剤系または水分散性、乳化性でもよく、または水への溶解度が制限されたものでもよい。フィルム形成樹脂の官能基は、例えば、カルボン酸基、アミン基、エポキシド基、ヒドロキシル基、チオール基、カルバメート基、アミド基、尿素基、イソシアネート基(ブロックされているイソシアネート基を含む)、メルカプタン基、およびそれらの組合せを含めた様々な反応性官能基のいずれかから選択することができる。フィルム形成樹脂の適切な混合物も本発明のコーティング組成物の調製において使用することができる。
【0057】
熱硬化性コーティング組成物は、一般に、上記のクロスリンカーのいずれかから選択することができる架橋剤を含む。特定の実施形態において、本発明のコーティングは、熱硬化性フィルム形成ポリマーまたは樹脂およびそのための架橋剤を含み、クロスリンカーは、ポリエステルを架橋するのに使用するクロスリンカーと同じであっても異なっていてもよい。特定の他の実施形態において、それら自身と反応性である官能基を有する熱硬化性フィルム形成ポリマーまたは樹脂を使用し、このため、そのような熱硬化性コーティングは、自己架橋性である。
【0058】
本発明のコーティングは、該コーティングの全固形分重量に対して重量%で1重量%〜100重量%、例えば、10重量%〜90重量%または20重量%〜80重量%などの本発明のポリエステルを含み得る。本発明のコーティング組成物は、該コーティングの全固形分重量に対して、重量%で0重量%〜90重量%、例えば、5重量%〜60重量%または10重量%〜40重量%などの分枝ポリエステル用のクロスリンカーも含み得る。さらなる構成要素を使用する場合、それらの構成要素は、該コーティングの全固形分重量に対して、重量%で1重量%、最大で70重量%以上を構成し得る。これらのいずれかの範囲内の任意の数値もまた、本発明の範囲内である。
【0059】
本発明のコーティング配合物は、従来のポリエステルと比較して、硬化反応および/もしくは曲げ柔軟性の有意な増加、ならびに/または機械的変形および/もしくは滅菌耐性の顕著な改善を有することができる。
【0060】
本発明の特定の実施形態において、該ポリエステルおよび/または該ポリエステルを含むコーティングは、実質的にエポキシを含まない。本明細書において使用する場合、「実質的にエポキシを含まない」という用語は、該ポリエステルおよび/または該ポリエステルを含むコーティングが実質的にエポキシも、エポキシ残基も、オキシラン環も、オキシラン環の残基も、ビスフェノールAも、BADGEも、BADGEの付加物も、ビスフェノールFも、BFDGEも、BFDGEの付加物も含まないことを意味する。本発明の特定の他の実施形態において、該ポリエステルおよび/または該ポリエステルを含むコーティングは、実質的に、ビスフェノールA、ビスフェノールF、BADGE、およびBFDGEを含めたビスフェノールもその残基も含まない。該ポリエステルおよび/または該ポリエステルを含むコーティングは、また、実質的に、ポリ塩化ビニルおよび関連するハロゲン化物含有ビニルポリマーを含まなくてもよい。「実質的に含まない」とは、該ポリエステルおよび/またはコーティングが、10重量%以下、例えば、5重量%以下、2重量%以下または1重量%以下などの、本明細書に列挙しているか、またはその他の方法で公知である形態のいずれかの化合物を含むことを意味する。したがって、本発明のポリエステルおよび/またはコーティングは、微量またはわずかな量のこれらの構成要素を含み、なおかつ、依然としてそれらを「実質的に含まない」ものであり得ることが理解されよう。さらに他の実施形態において、該ポリエステルおよび/または該ポリエステルを含むコーティングは、上で列挙したかこの段落中で言及した化合物、またはその誘導体の1種以上を完全に含まない。
【0061】
本発明のコーティングは、当技術分野において公知である任意の基材、例えば、自動車基材、工業用基材、包装基材、木質フローリングおよび家具、服飾品、ハウジングおよび回路基盤を含めた電子機器、ガラスおよびトランスペアレンシ、ゴルフボールを含めたスポーツ用品等に適用することができる。これらの基材は、例えば、金属製であっても非金属製であってもよい。金属製基材としては、スズ、鋼、スズめっき鋼、クロム不動態化鋼、亜鉛めっき鋼、アルミニウム、アルミニウム箔、コイル状の鋼、または他のコイル状の金属が挙げられる。非金属製基材としては、ポリマー系、プラスチック、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリアミド、セルロース、ポリスチレン、ポリアクリル系、ポリ(エチレンナフタレート)、ポリプロピレン、ポリエチレン、ナイロン、EVOH、ポリ乳酸、他の「緑色」ポリマー系基材、ポリ(エチレンテレフタレート)(「PET」)、ポリカーボネート、ポリカーボネートアクリロブタジエンスチレン(「PC/ABS」)、ポリアミド、木材、ベニヤ、木材複合材、パーティクルボード、中質繊維板、セメント、石材、ガラス、紙、厚紙、織物、合成および天然の革等が挙げられる。基材は、視覚および/または色効果を付与するように何らかの方法で既に処理されたものであり得る。
【0062】
本発明のコーティングは、当技術分野において標準的な任意の手段、例えば、電着、噴霧、静電噴霧、液浸、ローリング、ブラッシング、ローラーコーティング、フローコーティング、押し出しなどにより適用することができる。
【0063】
該コーティングは、0.04ミル〜4ミル、例えば、0.1ミル〜2ミルまたは0.7ミル〜1.3ミルなどの乾燥膜厚まで適用することができる。他の実施形態において、該コーティングは、0.1ミル以上、0.5ミル以上、1.0ミル以上、2.0ミル以上、5.0ミル以上、またはさらなる厚さの乾燥膜厚まで適用することができる。本発明のコーティングは、単独で、または1つもしくは複数の他のコーティングと組み合わせて使用することができる。例えば、本発明のコーティングは、着色剤を含んでいてもいなくてもよく、プライマー、ベースコート、および/またはトップコートとして使用することができる。複数のコーティングでコーティングされた基材については、それらのコーティングの1種または複数種は、本明細書に記載のコーティングであり得る。
【0064】
本明細書に記載のコーティングは、1種の構成要素(「1K」)、または2種の構成要素(「2K」)またはそれ以上などの多構成要素組成物であり得ることが理解されよう。1K組成物は、全てのコーティング構成要素が製造後、貯蔵の間等に同じ容器中で維持される組成物を指すものと理解されよう。1Kコーティングは、基材に適用し、任意の従来の手段により、例えば、加熱、通気、放射線硬化などにより硬化させることができる。本発明のコーティングは、また、多構成要素コーティングであり得、これは、様々な構成要素が適用の直前まで別個に維持されるコーティングであると理解されよう。上述の通り、本発明のコーティングは、熱可塑性であっても熱硬化性であってもよい。
【0065】
特定の実施形態において、コーティングは、クリアコートである。クリアコートは、実質的に透明なコーティングであると理解されよう。したがって、クリアコートは、クリアコートを不透明にしない、またはその他の方法で下部にある基材を認識できる能力にほとんど影響を及ぼさないならば、ある程度の色を有することができる。本発明のクリアコートは、例えば、着色ベースコートと併せて使用することができる。クリアコートは、カルバメートとの反応により改変することができる。
【0066】
特定の他の実施形態において、該コーティングはベースコートである。ベースコートは、一般に着色されており、すなわち、それが適用される基材に何らかの色および/または他の視覚効果を付与する。
【0067】
本発明のコーティング組成物は、単独で、または本明細書に記載の異なる基材に堆積させることができるコーティング系の一部として適用することができる。そのようなコーティング系は、一般に、2種以上などの多数のコーティング層を含む。コーティング層は、一般に、基材に堆積したコーティング組成物を当技術分野において公知である方法により(例えば、熱的加熱により)実質的に硬化すると形成される。上記のコーティング組成物は、本明細書に記載のコーティング層の1種または複数種において使用することができる。
【0068】
自動車産業において使用する従来のコーティング系において、前処理した基材を電着可能なコーティング組成物でコーティングする。電着可能なコーティング組成物を硬化した後、電着可能なコーティング組成物の少なくとも一部にプライマー−サーフェーサーコーティング組成物を適用する。プライマー−サーフェーサーコーティング組成物は、一般に、電着可能なコーティング層に適用し、プライマー−サーフェーサーコーティング組成物の上に次のコーティング組成物を適用する前に、硬化させる。しかし、一部の実施形態において、基材を電着可能なコーティング組成物でコーティングしない。したがって、これらの実施形態においては、プライマー−サーフェーサーコーティング組成物を基材に直接適用する。他の実施形態において、該コーティング系においてプライマー−サーフェーサーコーティング組成物を使用しない。したがって、色を付与するベースコートコーティング組成物を、硬化した電着可能なコーティング組成物に直接適用することができる。
【0069】
特定の実施形態において、ベースコートコーティング層の少なくとも一部にクリアコートを堆積する。特定の実施形態において、実質的にクリアなコーティング組成物は、着色剤を含むことができるが、その量は、硬化後にクリアなコーティング組成物を不透明(実質的に透明ではない)にするような量ではない。場合によっては、硬化した組成物のBYKヘイズ値は、BYK Chemie USAから入手可能なBYKヘイズ光沢計を使用して測定すると、50未満であり、35未満でもよく、20未満である場合が多い。
【0070】
本発明のコーティング組成物は、上記のベースコートおよび/またはクリアコートにおいて使用することができる。
【0071】
特定の実施形態において、本発明のコーティングは、モノコートコーティング系において使用することができる。モノコートコーティング系においては、単一のコーティング層を、以下の層:電着可能なコーティング層またはプライマー−サーフェーサーコーティング層の1種または複数種を含むことができる基材(前処理されていても前処理されていなくてもよい)に適用する(上記の通り)。特定の実施形態において、本発明のコーティング組成物をモノコートコーティング系において使用する。
【0072】
本発明のコーティングは、特に、包装用コーティングとしての使用に適している。様々な前処理およびコーティングを包装へ適用することは十分に確立されている。そのような処理および/またはコーティングは、例えば、金属缶の場合に使用することができ、その場合、そのような処理および/またはコーティングは、腐食を遅延または阻害するため、化粧コーティングを施すため、製造プロセスの間に取り扱いやすくする等のために使用する。コーティングは、内容物が容器の金属と接触することを防ぐためにそのような缶の内側に適用することができる。金属と食品または飲料との接触は、例えば、金属容器の腐食につながる恐れがあり、その結果、食品または飲料が汚染される恐れがある。このことは、特に、缶の内容物が酸性の性質である場合に当てはまる。金属缶の内側に適用されるコーティングは、缶のヘッドスペース(製品の充填ラインと缶の蓋の間の領域)における腐食も防止し、ヘッドスペースにおける腐食は、塩分が多い食品の場合に特に問題となる。コーティングは、金属缶の外側にも適用することができる。本発明の特定のコーティングは、特に、コイル状の金属素材、例えば、それから缶の端が作製される(「缶端素材」)、ならびに端キャップおよびクロージャーが作製される(「キャップ/クロージャー素材」)コイル状の金属素材などと共に使用するのに適用可能である。缶端素材およびキャップ/クロージャー素材で使用するために設計されたコーティングは、一般に、コイル状の金属素材からピースが切断およびスタンプアウトされる前に適用するので、それらのコーティングは、一般に、柔軟性および伸張性である。例えば、そのような素材は、一般に、両面をコーティングする。その後、コーティングされた金属素材は、パンチングする。缶端については、次いで、「引き上げ式」開口のために金属に筋を刻み付け、次いで、別個に製作されたピンで引き上げリングを取り付ける。次いで、エッジ圧延プロセスにより端を缶胴に取り付ける。同様の手順を「イージーオープン」缶端について行う。イージーオープン缶端については、実質的に蓋の外周に付けた筋により、イージーオープニングまたは缶からの蓋の除去が、一般にプルタブにより可能となる。キャップおよびクロージャーについては、キャップ/クロージャー素材は、一般に、ロールコーティングなどによりコーティングし、キャップまたはクロージャーは、素材からスタンプアウトするが、しかし、形成後にキャップ/クロージャーをコーティングすることが可能である。相対的に過酷な温度および/または圧力要件に付される缶のためのコーティングは、また、クラッキング、ポッピング、腐食、白化および/または膨れに耐性を示すべきである。
【0073】
したがって、本発明は、少なくとも一部分が上記のコーティング組成物のいずれかでコーティングされたパッケージをさらに対象としている。「パッケージ」は、別の品目を収容するために使用する物である。パッケージは、金属または非金属製、例えば、プラスチック製であってもラミネート製であってもよく、任意の形態であり得る。特定の実施形態において、パッケージはラミネートチューブである。特定の実施形態において、パッケージは金属缶である。「金属缶」という用語は、任意のタイプの金属缶、容器または任意のタイプの入れ物もしくは何かを保持するのに使用するその部分を含む。金属缶の一例は食品缶であり、「食品缶(複数可)」という用語は、本明細書において、缶、容器または任意のタイプの入れ物もしくは任意のタイプの食品および/もしくは飲料を保持するのに使用するその部分を指すのに使用する。「金属缶(複数可)」という用語は、具体的に、食品缶を含み、さらに、具体的には「缶端」を含み、缶端は、一般に、缶端素材からスタンピングし、飲料の包装と併せて使用する。「金属缶」という用語は、また、具体的に、金属キャップおよび/またはクロージャー、例えば、任意のサイズのビンキャップ、スクリュートップキャップおよび蓋、ラグキャップなどを含む。金属缶は、他の品目もまた維持するのに使用することができ、パーソナルケア製品、虫除けスプレー、スプレー式ペイント、およびエアゾール缶での包装に適した任意の他の化合物が挙げられるが、これらに限定されない。缶としては、「ツーピース缶」および「スリーピース缶」ならびに絞りおよびしごき加工されたワンピース缶が挙げられ、そのようなワンピース缶は、エアゾール製品を用いる用途で使用する場合が多い。本発明に従ってコーティングされるパッケージとしては、プラスチックボトル、プラスチックチューブ、ラミネートおよび柔軟な包装、例えば、PE、PP、PET等から作製されるものなども挙げられる。そのような包装は、例えば、食品、練り歯磨き、パーソナルケア製品等を保持することができる。
【0074】
該コーティングは、パッケージの内側および/または外側に適用することができる。例えば、該コーティングは、ツーピース食品缶、スリーピース食品缶、缶端素材および/またはキャップ/クロージャー素材を作製するのに使用する金属にロールコーティングすることができる。一部の実施形態において、該コーティングは、ロールコーティングによりコイルまたはシートに適用し、次いで、該コーティングは、加熱または照射により硬化し、缶端をスタンプアウトし、完成製品、すなわち、缶端にする。他の実施形態において、該コーティングは、リムコートとして缶の底部に適用し、そのような適用は、ロールコーティングにより行うことができる。リムコートは、缶の連続製作および/または加工の間の取扱いを改善するために摩擦を低減するように機能する。特定の実施形態において、該コーティングは、キャップおよび/またはクロージャーに適用し、そのような用途としては、例えば、キャップ/クロージャーの形成の前および/もしくは後に適用される保護ワニスならびに/またはキャップ、特に底部にシームを刻み付けられたキャップに後で適用される着色エナメルが挙げられる。化粧缶素材も、本明細書に記載のコーティングで外部を部分的にコーティングすることができ、化粧しコーティングされた缶素材は、様々な金属缶を形成するのに使用する。
【0075】
本発明のパッケージは、当技術分野において公知の任意の手段、例えば、噴霧、ロールコーティング、液浸、フローコーティングなどにより、上記の組成物のいずれかでコーティングすることができ、該コーティングは、基材が導電である場合、電着により適用することもできる。適切な適用手段は、コーティングされるパッケージのタイプ、および該コーティングが使用される目的である機能のタイプに基づいて当業者が決定することができる。上記のコーティングは、単一の層として、または所望であれば、複数の層として各層の適用と適用の間に複数の加熱工程を用いて基材に適用することができる。基材への適用後、該コーティング組成物は、任意の適切な手段により硬化させることができる。
【0076】
本明細書において使用する場合、明白な別段の指示がない限り、全ての数、例えば、値、範囲、量またはパーセントを表している数などは、「約」という単語が明らかに登場していない場合でさえ、「約」という単語が前に付いているかのように読むことができる。また、本明細書において列挙した任意の数値の範囲は、そこに包含される全ての部分範囲を含むことを意図したものである。単数形は複数形を包含し、逆もまた同様である。例えば、「ある1つの(a)」ポリエステル、「ある1つの(an)」不飽和ポリエステルプレポリマー、「ある1つの」末端/ペンダント官能基、「ある1つの」クロスリンカーに言及していても、これらの各々および任意の他の構成要素の1種または複数種を使用することができる。本明細書において使用する場合、「ポリマー」とは、オリゴマーならびにホモポリマーおよびコポリマーの両方を指し、接頭語「ポリ」は、2つ以上を指す。「含む(including)」および「同様の用語」は、それに限定されないことを意味する。範囲が示される場合、それらの範囲の任意の端点および/またはそれらの範囲内の数は、本発明の範囲内で組み合わせることができる。
【実施例】
【0077】
以下の実施例は、本発明を例示することを意図したものであり、決して本発明を限定するものと解釈すべきものではない。
【0078】
(実施例1)
不飽和ポリエステルプレポリマーの調製
4種の異なる本発明の不飽和重縮合プレポリマーを調製した。不飽和ポリエステルプレポリマーの調製において使用した反応組成物は、以下で表1に示す通りである。酸化ジブチルスズを使用してエステル化を促進し、一部のプレポリマーにおいては、少量の
フリーラジカル阻害剤、メチルヒドロキノン(MEHQ)を添加して、このように形成される不飽和ポリエステルプレポリマーの使用可能な貯蔵寿命を延長した。
【0079】
【表1】
上記表1において、MEGはモノエチレングリコールであり、1,2PDは1,2−プロパンジオールであり、1,3BDは1,3ブタンジオールであり、TMPはトリメチロールプロパンであり、TPAはテレフタル酸であり、IPAはイソフタル酸であり、CHDAは1,4−シクロヘキサンジカルボン酸であり、MANは無水マレイン酸であり、AAはアジピン酸であり、DBTOは酸化ジブチルスズであり、MEHQはメチルヒドロキノンであり、SnCl
2は塩化第一スズである。
【0080】
上記プレポリマーを以下に記載の通り調製した。
【0081】
プレポリマーA
A.1,3BD、1,2PG、TMP、TPA、IPAおよびDBTO触媒を反応器に入れる。
【0082】
B.窒素スパージ(sparge)下で240℃の最高温度まで加熱し、樹脂の透明度を得るために酸価が10未満となるまで処理する。充填カラムの最高頭部温度を102℃で維持して、グリコールの減少を最小化する。
【0083】
C.140℃まで冷却し、ヒドロキシル価のために試料を採取する。1,3BDを用いてヒドロキシル価を調整して正味178とする。180℃で2時間のグリコール調整において処理する。
【0084】
D.140℃まで冷却し、AAを入れる。最終酸価を40〜42とするために170℃の最高反応器温度で再加熱して蒸留する。
【0085】
E.110℃まで冷却し、希釈溶剤ブチルグリコールを入れる。
【0086】
プレポリマーB
A.1,3BD、1,2PG、TMP、TPA、IPAおよびDBTO触媒を反応器に入れる。
【0087】
B.窒素スパージ下で240℃の最高温度まで加熱し、樹脂の透明度を得るために酸価が10未満となるまで処理する。充填カラムの最高頭部温度を102℃で維持して、グリコールの減少を最小化する。
【0088】
C.140℃まで冷却し、ヒドロキシル価のために試料を採取する。1,3BDを用いてヒドロキシル価を調整して正味176とする。180℃で2時間のグリコール調整において処理する。
【0089】
D.140℃まで冷却し、MANを入れる。最終酸価を40〜42とするために160℃の最高反応器温度で再加熱して蒸留する。
【0090】
E.110℃まで冷却し、希釈溶剤(MEHQ阻害剤を含有するブチルグリコール)を入れる。
【0091】
プレポリマーC
A.1,3BD、1,2PG、TMP、TPA、IPAおよびDBTO触媒を反応器に入れる。
【0092】
B.窒素スパージ下で240℃の最高温度まで加熱し、樹脂の透明度を得るために酸価が10未満となるまで処理する。充填カラムの最高頭部温度を102℃で維持して、グリコールの減少を最小化する。
【0093】
C.140℃まで冷却し、MANを入れる。酸価を60〜70とするために200℃の最高反応器温度で再加熱して蒸留する。
【0094】
D.120℃まで冷却し、ヒドロキシル価のために試料を採取する。1,3BDを用いてヒドロキシル価を調整して正味40とする。120℃で2時間のグリコール調整において処理する。
【0095】
E.最終酸価を40〜42とするために200℃の最高反応器温度で再加熱して蒸留する。
【0096】
F.110℃まで冷却し、希釈溶剤ブチルグリコールを入れる。
【0097】
プレポリマーDおよびE
A.1,3BD、MEG、CHDA、IPA、MAN、MEHQおよびDBTOを順番に反応器に入れる。
【0098】
B.窒素スパージ下で200℃の最高温度まで加熱し、透明度を得るために処理する(酸価約40〜50)。
【0099】
C.180℃まで反応器を冷却し、ヒドロキシル価のために試料を採取する。必要に応じて1,3BDを用いてヒドロキシル価を調整する(ポリマーDの標的OHV40〜42、ポリマーEの標的OHV150〜153)。
【0100】
D.195〜200℃まで再加熱し、キシレンを慎重に添加しながら共沸蒸留を行う。
【0101】
E.最終酸価目標の1〜3となるまで処理する。
【0102】
F.135℃まで冷却し、キシレン溶剤を用いて希釈する。
【0103】
プレポリマーF
A.1,3BD、MEG、TMP,IPA、CHDA(投入量の43%)およびSnCl
2触媒を反応器に入れる。
【0104】
B.窒素スパージ下で230℃の最高温度まで加熱し、樹脂の透明度を得るために酸価が10未満となるまで処理する。充填カラムの最高頭部温度を102℃で維持して、グリコールの減少を最小化する。
【0105】
C.140℃まで冷却し、MeHQ、CHDA(投入量の57%)、MANを入れる。200℃の最高反応器温度で再加熱して蒸留し、酸価が70〜80となるまで処理する。
【0106】
D.120℃まで冷却し、ヒドロキシル価のために試料を採取する。1,3BDを用いてヒドロキシル価を調整して正味−34.7とする。140℃で2時間のグリコール調整において処理する。
【0107】
E.195〜200℃まで再加熱して蒸留し、キシレンを慎重に添加しながら共沸蒸留を行う。最終酸価が45〜50となるまで処理する。
【0108】
F.110℃まで冷却し、希釈溶剤ブチルグリコールおよびプロピレングリコールモノメチルエーテルを入れる。
【0109】
【表2】
上記表2において、OHVは総ヒドロキシル価(mg水酸化カリウム/gプレポリマー)であり、AVは酸価(mg水酸化カリウム/gプレポリマー)であり、Mnは数平均分子量であり、マレイン酸/鎖は不飽和ポリエステルプレポリマー鎖当たりの二重結合の平均数であり、Tgはガラス転移温度である。
【0110】
酸価を以下の通り求めた。試料を適切な溶剤(複数可)に溶解させた。標準溶剤はDMFまたはキシレン/メチルプロキシトールの3/1混合物であった。使用した指示薬は、DMF溶剤についてはチモールフタレイン、キシレン/メチルプロキシトールについてはフェノールフタレインであった。樹脂溶液を0.1Nアルコール性KOHに対して終点まで滴定した。
【0111】
ヒドロキシル価を以下の通り求めた。ヒドロキシル基を含まない溶剤に樹脂試料を溶解させ、正確に知られてはいるが化学量論的に過剰な量の、酢酸ブチルに溶解させた無水酢酸を添加した。次いで、この溶液を加熱して、無水酢酸を樹脂中の任意のヒドロキシル基と反応させる。次いで、ピリジンおよび水を使用して、残りの過剰な無水酢酸を加水分解した。樹脂試料なしで空滴定を行った。空試験試料および樹脂溶液試料をメタノール性KOHに対して滴定して、正味のヒドロキシル価を求めた。
【0112】
(実施例2)
不飽和ポリエステルプレポリマーの
フリーラジカル重合によるポリエステルの調製
実施例1の不飽和ポリエステルプレポリマーを使用して、不飽和ポリエステルプレポリマーの鎖の、それらの二重結合を介した
フリーラジカル重合により、ポリエステルを調製した。別段の定めのない限り、以下の実施例における
フリーラジカル重合ステップは、算出した半減期が100℃で22.9分であるtert−ブチル−ペルオキシ−2−エチルヘキサノエートを
フリーラジカル開始剤として使用し、窒素パージと共に100℃で撹拌しながら実施した。開始剤の添加後、反応混合物を温度で5時間維持した。その結果として得られたポリエステルについて試験を実行し、その試験および得られた結果を以下で論じる。
(a)算出したマレイン酸官能基/プレポリマー鎖が<1であるわずかに分枝状のポリエステル
2種の異なるアプローチを使用して
フリーラジカル重合を実行し、第1のアプローチは
フリーラジカル開始剤を単一ショットで添加し、第2のアプローチでは重合の進行の間に間隔をあけて開始剤を複数のショットで添加した。
(i)単一ショットとして添加した開始剤
0.1、0.2、0.3および0.9:1の開始剤のラジカル:マレイン酸二重結合のモル比(R
*:C=C)で、開始剤の50%ブチルグリコール溶液を分枝ポリエステルプレポリマーBの50%ブチルグリコール溶液に添加することにより、一連のポリエステル樹脂を調製した。結果として生じたポリエステル樹脂は、それぞれ、ポリエステル1、ポリエステル2、ポリエステル3およびポリエステル4(ゲル化したもの)とコード化した。
【0113】
各樹脂の調製の間、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)分析のために試料を採取した(開始剤の添加の1時間後とプロセスの終わりの両方に採取した)。
(ii)開始剤の複数のショット
開始剤:マレイン酸二重結合の合計の比が0.5:1(R
*:C=C)となるように開始剤の50%ブチルグリコール溶液を分枝プレポリマーB(上記表1および2を参照されたい)の50%ブチルグリコール溶液に添加することによりポリエステル5を調製したが、全ての開始剤をまとめて添加する代わりに、開始剤を0.1:1(R
*:C=C)の5つの等量に分割し、各開始剤添加の間に1時間の間隔を開けた。各開始剤添加の1時間後にGPC分析のために樹脂試料を採取した。これらの試料は、それぞれ、ポリエステル5a、5b、5c、5dおよび5eとラベル付けした。
(iii)対照ポリマー
GPC比較のために2種の対照ポリマーも調製した。
【0114】
ポリエステル6:プレポリマーBの50%ブチルグリコール溶液を100℃まで加熱し、開始剤を添加せずに3時間維持した。
【0115】
ポリエステル7:プレポリマーAの50%ブチルグリコール溶液(算出した数平均分子量Mn、OHVおよびAVがプレポリマーBと同様の飽和ポリエステル樹脂)を100℃まで加熱し、上記実施例2(a)(ii)のポリエステル5cの調製と同様に、同等の量の開始剤の50%ブチルグリコール溶液(0.3:1)を1時間おきに3つの別個のショットで添加した。
(b)より高いマレイン酸官能基/鎖
鎖当たりのマレイン酸官能基の多さの影響を調査するために、実施例2(a)において使用したものと同じ条件下で、ただし処理固形分値は60%で、0.1:1のR
*:C=C比でわずかに分枝状のポリエステルプレポリマーCを使用してポリエステル8を調製した。該ポリマーは、開始剤の添加後10分以内にゲル化し始めた。
【0116】
同じ条件下で、ただし、0.003:1というかなり低減したR
*:C=C比で、開始剤の単一ショットをプレポリマーCに添加することにより、第2のポリマーポリエステル9を調製し、開始剤の添加の2時間後、GPCのために試料を採取した。0.006:1のR
*:C=C比で、2時間の間隔で開始剤をさらに2回添加し、各添加の2時間後に試料を採取した。収集した試料は、それぞれ、ポリエステル9a、9bおよび9cとラベル付けした。
(c)異なる出発分子量を有する線状ポリエステル
出発ポリエステル鎖長の効果を調査するために、実施例2(a)(i)と同様の条件、およびGPC分析のための溶剤としてキシレンとブチルグリコールとの混合物を使用して、0.1:1のR
*:C=C比で以下の樹脂を調製した。
【0117】
・ポリエステル10 − プレポリマーDを使用、算出したMnは2500
・ポリエステル11 − プレポリマーEを使用、算出したMnは726
(d)異なる処理温度および異なるタイプの開始剤
異なる処理温度で、および異なるタイプの開始剤を用いて
フリーラジカル重合を実施できることを確かめるために、0.1:1のR
*:C=C比でプレポリマーD(上記表1および2を参照されたい)を使用して以下の樹脂も調製し、次いで、GPCにより分析した。
【0118】
・ポリエステル12:100℃での重合反応、開始剤tert−ブチル−ペルオキシ−2−エチルヘキサノエート、算出した開始剤半減期22.9分、開始剤の総量を3つの等量に分けて2時間の間隔で添加、最終添加の2時間後に試料を採取。
【0119】
・ポリエステル13:120℃での重合反応、開始剤tert−ブチル−ペルオキシ−2−エチルヘキサノエート、算出した開始剤半減期2.95分、開始剤の総量を3つの等量に分けて2時間の間隔で添加、最終添加の2時間後に試料を採取。
【0120】
・ポリエステル14:80℃での重合反応、開始剤tert−ブチル−ペルオキシ−2−エチルヘキサノエート、算出した開始剤半減期223.6分。開始剤半減期がずっと長いため、開始剤を1回で添加し、開始剤の添加後、樹脂を80℃で8時間維持し、試料を採取した。
【0121】
・ポリエステル15:135℃での重合反応、過安息香酸tert−ブチルを開始剤として使用、算出した開始剤半減期13.0分、開始剤の総量を3つの等量に分けて2時間の間隔で添加、最終添加の2時間後に試料を採取。
【0122】
・ポリエステル16:100℃での重合反応、過酸化ジベンゾイルを開始剤として使用し、算出した開始剤半減期22.3分、開始剤の総量を3つの等量に分けて2時間の間隔で添加、最終添加の2時間後に試料を採取。
(e)水性混合物中で調製するポリエステル
水性混合物中で
フリーラジカル重合を行うことができることを確かめるために、プレポリマーF(上記表1および2を参照されたい)を使用して以下の樹脂を調製した。プレポリマーF溶液(43.2gm)とジメチルアミノエタノール(2.4gm)とを混合し、次いで、水(54.4gm)を添加し、得られた混合物を重合において使用した。開始剤tert−ブチル−ペルオキシ−2−エチルヘキサノエート、90℃での重合反応、算出した開始剤半減期69.4分、開始剤の総量を1時間の供給で添加、添加の終了後90℃で2時間維持という条件で、0.1:1のR
*:C=C比で重合を行った。試料は、供給の間に15分間隔で採取し、次いで、供給の1時間後および2時間後に採取した。これらの試料、17a、17b、17c、17d、17eおよび17fの詳細は、以下で表3において示しており、その全てが、出発プレポリマーより分子量が増加した証拠を示している。
【0123】
上記実施例2(a)〜2(d)で調製したポリマーについて、(ポリスチレンを標準とした)GPCにより重量平均分子量Mwを決定した。それぞれの出発プレポリマーと比較したMwの増加率を算出した。これらの結果は、以下で表3に記入している。
【0124】
【表3-1】
【0125】
【表3-2】
注1 プレポリマーD’はプレポリマーDの第2のバッチである。
【0126】
フリーラジカル重合プロセスが他の官能基、ヒドロキシおよびカルボキシに影響を及ぼさないことの確認のために、ポリエステル12(0.1:1のR
*:C=C)のヒドロキシル価および酸価を出発不飽和ポリエステルプレポリマーD’に対して比較した。mgKOH/g樹脂で示すその結果は、以下の通りである:
【0127】
【化1】
この結果は、
フリーラジカル重合の後にヒドロキシル価は低減しなかったが、酸価はわずかに増加したことを示している。しかし、より高いレベルのペルオキシ−2−エチルヘキサン酸tert−ブチルと重合したポリエステルのガスクロマトグラフィーは、最終ポリマー中のt−ブタノールおよび2−エチルヘキサン酸の存在を示していた。ポリエステル12の酸価のわずかな増加は、該プレポリマーのカルボキシル基における変化ではなく、処理の間にペルオキシ−2−エチルヘキサン酸tert−ブチルから2−エチルヘキサン酸が形成したことに起因している可能性の方が高い。
【0128】
上記表3において詳述しているGPCの結果は、本発明の不飽和ポリエステルプレポリマーへの
フリーラジカル開始剤の添加により、出発プレポリマーと比較して重量平均分子量Mwが有意に増加したポリエステルが調製されることを確認している。該プレポリマーの他の官能基が比較的影響を受けないままであるという上で証明した事実と併せて、本発明に記載の不飽和ポリエステルプレポリマーの
フリーラジカル重合により、これまで他の従来の方法では成就できなかった実現すべき平均官能基数および分子量の組合せを有するポリエステルが可能となる。結果として様々な本発明のポリエステルを得るように、出発プレポリマーは、線状でも分枝状でもよく、異なる出発分子量(鎖長)を有することができ、鎖当たりの二重結合の数が異なっていてもよく、いずれの場合も、分子量の増加が観察された。また、重量平均分子量Mwの増加は、異なるタイプの
フリーラジカル開始剤を使用して、異なる温度で実現することができる。
【0129】
2種の対照樹脂、ポリエステル6(開始剤なし)およびポリエステル7(出発ポリエステルプレポリマー中に二重結合なし)の重量平均分子量Mwは変化せず、このことは、重合が、
フリーラジカル開始剤の存在下の出発ポリエステルプレポリマー中の不飽和基に固有のものであり、処理条件の一面ではないことを示している。
【0130】
重量平均分子量Mwは、開始剤を単回添加で添加したか複数のショットで添加したかに関係なく、開始剤のレベルの増加と共に増加した。しかし、開始剤のレベルが過剰に高いと、ポリエステル4(0.9:1のR
*:C=C比)において証明した通り、樹脂のゲル化につながり得る。また、鎖当たりの二重結合の平均数が2.81という高いプレポリマーCが、ほぼゲル化点である重量平均分子量Mw(ポリエステル9を参照されたい)に達するのに必要な開始剤は著しく少なかった。これは、重量平均分子量Mwの増加が、プレポリマー鎖当たりの二重結合の平均数の影響も受け得ることを示唆している。
【0131】
(実施例3)
包装用コーティング用の樹脂の試験
上記実施例2(a)〜2(d)において調製した
フリーラジカル重合ポリエステルの一部を、それぞれの出発ポリエステルプレポリマーと共に、BAKELITE 6520LB(アルキル化フェノール/ホルムアルデヒド樹脂(官能性≧3))およびBAKELITE 7081LB(非アルキル化o−クレゾール/ホルムアルデヒド樹脂(二官能性))と、フェノール系樹脂の異なるレベルで、かつ異なるレベルのリン酸触媒を用いて反応させて、様々な本発明のコーティング配合物を得た。使用した樹脂およびリン酸触媒の量ならびに採用した溶剤は、以下で報告する結果で示している。
【0132】
このように調製したコーティング配合物を、ワイヤーバーコーターにより0.22mmのブリキパネルに適用し、実験用ボックスオーブン中で硬化させた。選択した硬化時間および温度範囲は、それぞれ、4〜12分間および160〜200℃であり、中心点は8分間および180℃であった。
【0133】
異なる試料の硬化パネルを、包装用コーティングを評価するのに一般に使用する以下の試験に付した。
【0134】
・メチルエチルケトン(MEK)摩擦−硬化および耐薬品性比較用。
【0135】
・くさび曲げ−曲げ柔軟性、フィルムの完全性およびフィルムの網状組織のチェック用。
【0136】
・箱絞り−機械的変形を比較するため。
【0137】
・滅菌−(水および蒸気中で121℃で90分間)。
【0138】
MEK摩擦:MEKに液浸した一切れの脱脂綿を使用して、コーティングが剥がれるか、または往復摩擦が200回に達するまで、硬化フィルムのパネルを直線方向に前後に摩擦する(1回の往復摩擦と見なす)。往復摩擦の回数を記録する。
【0139】
くさび曲げ:コーティングされたパネルの長さ10cm×幅4cmのストリップを6mmの金属板でU字形状に形成し、次いで、U字形状のピースを先細の穴に入れ、2kgの金属のおもりを60cmの高さから試験ピースの上に落として、くさび形の形状を形成した。酸性硫酸銅溶液中での2分間の浸漬後、試験ピースを水道水ですすぎ、亀裂について視覚的に評価した。曲げに沿った亀裂がないフィルムの長さを試験ピースの全長の割合として記録する。
【0140】
箱絞り:コーティングされたパネルをスタンピングプレスに入れて、小さい正方形の箱(深さ21mm)を製造する。その箱の隅を、コーティング破壊について視覚的に評価する。その結果は、破壊のない絞りの深さの平均として記録する。
【0141】
滅菌:コーティングされたパネルを、一部水道水で満たした蓋付きの容器に入れ、該パネルの半分は浸漬した状態およびパネルの半分は水位より上の状態とする。次いで、該容器をオートクレーブ内に入れ、記載している温度および期間まで加熱する。該コーティングをフィルム欠陥について評価し、0〜10(0=欠陥なし、10=ひどいコーティング破壊)に等級付けした。
【0142】
水ベースのコーティングにおける
フリーラジカル重合樹脂配合物の潜在的な用途を評価するために、ポリエステル2、ポリエステル3および出発プレポリマーBを異なる量のジメチルエタノールアミンで中和し、脱イオン水で希釈した。
【0143】
包装用コーティングの試験結果
以下の3つ樹脂:プレポリマーB(出発ポリエステルプレポリマー)、ポリエステル2(0.2:1のR
*:C=C)およびポリエステル5(0.5:1 R
*:C=C)(上記表1〜3を参照されたい)について試験を実施して、出発ポリエステルプレポリマーの
フリーラジカル重合により得られる本発明のポリエステルの性能を、前記出発ポリエステルプレポリマーに対して測定するように測定した。実行した試験は、該ポリエステルと2種の代替のフェノール系樹脂との架橋、得られた配合物の試験基材へのコーティング、コーティング配合物の硬化、次いで、標準的な産業技術を使用したコーティングの性能の比較を伴っていた。
(a)触媒に対する応答
使用した触媒:リン酸−固形樹脂100g当たりのミリモル(mmol phr)
硬化条件: 180℃で8分間
基材: 0.22mm 2.8/2.8 スズめっき鋼
フィルム重量: 5〜6グラム/m
2(gsm)
フェノール系樹脂: BAKELITE 6520LB(官能性≧3)
BAKELITE 7081LB(官能性=2)
フェノール系のレベル:6520LB 全結合剤固形分の25.5%
78081LB 全結合剤固形分の19.3%
試験: MEK往復摩擦−フィルム剥離までの摩擦の回数
くさび曲げ−任意の割れを有さないコーティングの%
結果は表4および5に示す通りである。
【0144】
【表4】
【0145】
【表5】
異なる量のフェノール系樹脂を使用してさらなる試験も実行した。
【0146】
使用した触媒:5mmol phrリン酸
硬化条件: 180℃で8分間
基材: 0.22mm 2.8/2.8 スズめっき鋼
フィルム重量: 5〜6gsm
フェノール系樹脂:BAKELITE 6520LB(官能性≧3)
BAKELITE 7081LB(官能性=2)
試験: MEK往復摩擦−フィルム剥離までの摩擦の回数
くさび曲げ−任意の割れを有さないコーティングの%
箱絞り−合格したmm(最大絞り21mm)
結果は表6および7に示す。
【0147】
【表6】
【0148】
【表7】
表4および5に示すMEK摩擦およびくさび曲げ試験結果から、フィルムの網状組織の程度を示す硬化および曲げ柔軟性が、樹脂の分子量および官能基/鎖が増加するにつれてかなり改善することは明らかである。
【0149】
多官能性フェノール系を用いた最高分子量のポリエステル5から得たコーティングについては、増大した分子量の本発明のポリエステルにおける官能基/鎖の増加に起因して、低いレベルのフェノール系架橋剤が、フィルムの網状組織の改善を実現するのに必要とされる(表6を参照のこと)。
【0150】
二官能性フェノール系架橋剤および同じポリエステルを用いて得たコーティングの箱絞り柔軟性も、二官能性フェノール系およびより低い分子量のポリエステルプレポリマー2を用いて得たコーティングのものより著しく良好である(表7を参照のこと)。
(b)滅菌耐性(水道水中で90分間/121℃)
使用した触媒:5mmol phrリン酸
硬化条件: 160〜200℃で4〜12分間
基材: 0.22mm 2.8/2.8 スズめっき鋼
フェノール系樹脂:BAKELITE 6520LB(官能性≧3)
BAKELITE 7081LB(官能性=2)
上記の各ポリエステル樹脂から最高のくさび曲げ結果を示した試料を異なる回数および異なる温度でコーティングし、硬化した。コーティングされたパネルをKilnerジャーに置き、パネルの下半分を水道水に浸漬し、パネルの上半分を水位より上にし、オートクレーブ中で滅菌した。
【0151】
試験:水道水において121℃で90分間
蒸気に曝露し浸漬したパネルの目視検査
0=欠陥なし、10=完全なフィルム破壊
試験した樹脂:
プレポリマーB:14.6%6520LBを使用(試料B−10)
32.4%7081LBを使用(試料B−17)
ポリエステル2:25.5%6520LBを使用(試料2−11)
19.3%7081LBを使用(試料2−16)
ポリエステル5:25.5%6520LBを使用(試料5−11)
19.3%7081LBを使用(試料5−16)
結果は表8および9に示す。
【0152】
【表8】
【0153】
【表9】
最高の分子量および官能基/鎖の樹脂ポリエステル5は、浸漬した相において性能の顕著な改善を示した。多官能性フェノール系を用いた12分間/200℃での硬化は、実際に滅菌試験に合格したが、該ポリエステルプレポリマーを用いて形成したより低い分子量の樹脂は、蒸気相または浸漬した相のいずれかで不合格となった。
(c)水ベースのポリエステルへの転換
プレポリマーB、ポリエステル2およびポリエステル5は、全て、算出したAVが42であった。出発プレポリマーBは、脱イオン水においてクリアな溶液を生じるのにジメチルエタノールアミンを用いた70%の中和を必要とした。しかし、本発明の高分子量ポリエステルである、ポリエステル2およびポリエステル5は、同じ量の脱イオン水で希釈した場合、クリアな溶液を実現するのに50%の中和のみを必要とした。このことにより、ラジカル重合の結果として酸基/鎖の数が増加したことがさらに確認される。
【0154】
一方、本発明の特定の実施形態を、例示目的で上で説明してきたが、添付の特許請求の範囲において定義する本発明から逸脱することなく本発明の詳細に多数の変更を加え得ることが当業者に明らかとなろう。