【実施例】
【0063】
(実施例1:本発明の方法または対照標準法による低分子核酸の単離)
ラットの腎臓由来のFFPE試料(この試料は、固定および包埋後、室温で2カ月間保存した)とラットの肺由来のFFPE試料(この試料は、固定および包埋後、室温で27カ月間保存した)を使用した。Microtomを使用して、10μmの厚みを有している切片を得た。1つの試料あたり1つの切片を使用した。全ての試料を2回処理した。得られたFFPE切片からのその後のRNAの単離のために、RNeasy FFPEキット(QIAGEN)およびQIAamp FFPEキット(QIAGEN)の成分を使用した。
【0064】
試料を1mlのヘプタンの中で1時間インキュベートして、上記試料からパラフィンを取り除いた。50μlのメタノールを添加し、混合し、試料を遠心分離し、上清を
収集し、そして試料を室温で5分間乾燥させた。
【0065】
このそれぞれ由来するパラフィン除去した試料のペレットを150μlのプロテイナーゼK消化バッファ(バッファPKD、QIAGEN)と混合し、さらに、10μlのプロテイナーゼK溶液(>600mAU/ml)と混合した。この混合物を、56℃で15分間、1400rpmで振盪させながらインキュベートした。試料を氷上で3分間冷却し、30分間遠心分離して、溶解しなかった成分を取り除いた。DNAを含有しているペレットを廃棄し(上記DNAを含有しているペレットは、所望される場合には、必要に応じてDNAを単離するために使用することができる)、含まれるRNAを標的核酸として単離するために上清を
収集した。使用した試料材料に原因があるばらつきを排除するために、
収集した上清を合わせ、混合し、150μlのアリコートに分けた。
【0066】
続いて、これらのアリコートを80℃で15分間インキュベートして、(FFPEの保存により生じた)RNA中の架橋を取り除いた。その後、300μlのカオトロピック溶解バッファ(バッファRLT、QIAGEN)を添加し、得られた混合物を1050μlのエタノールと混合した。得られた混合物をシリカメンブレン(RNeasy MinElute Column、QIAGEN)にアプライし、10000rpmで15秒間の遠心分離によりこのメンブレンに通過させた。標的核酸を結合させたこのメンブレンを、カオトロピック剤とエタノールとを含む洗浄バッファ(RWT、QIAGEN)をメンブレンに通過させることにより洗浄した。その後、10μlのDNAse Iと70μlのDNAse反応バッファ(バッファRDD、QIAGEN)とを含む80μlの混合物をこのメンブレンにアプライし、室温で15分間インキュベートして、残っているゲノムDNAを取り除いた。
【0067】
先行技術において公知であるような対照標準法にしたがってRNAを単離するために、メンブレン上でのDNAse消化を行った後に、再び、カオトロピック剤とエタノールとを含む洗浄バッファ(バッファRWT、QIAGEN)を添加して、DNase反応溶液を除去した。洗浄バッファRWTは、含まれるカオトロピック剤とアルコールに起因して、メンブレンに対するRNAの結合を促進する。その後、このメンブレンを、アルコールを含む洗浄バッファ(RPE、QIAGEN)500μlを2回添加し、メンブレンに通過させることにより洗浄した。メンブレンを14000rpmで5分間の遠心分離により乾燥させた。RNAを、30μlの水をアプライし、1分間のインキュベーション工程を行った後に遠心分離により溶離させた。
【0068】
本発明による方法にしたがってRNAを単離するために、メンブレン上でのDNase消化を行った後、メンブレンに、1〜1.5MのGTC、75%のイソプロパノール、クエン酸ナトリウムを含む回収溶液(pH7)をアプライし、遠心分離によってメンブレンを通過させた。フロースルーを
収集し、再びアプライし、そして遠心分離によりメンブレンを通過させた。これにより、メンブレン上でのDNase消化の間にメンブレンから遊離した、特に、低分子標的核酸をメンブレンに再度結合させ、これにより回収する。その後、アルコールを含む洗浄バッファ(RPE、QIAGEN)500μlを2回添加し、メンブレンに通過させることにより、メンブレンを洗浄した。このメンブレンを14000rpmで5分間の遠心分離工程により乾燥させた。RNAを、30μlの水をアプライし、1分間のインキュベーション工程を行った後に遠心分離により溶離させた。
【0069】
腎臓組織から単離したRNAのサイズ分布を、本発明による方法により達成された改良を実証するためにAgilent Bioanalyzerを使用して分析した。同量のRNA(ng量)をアプライした(OD測定法により決定した)。結果を
図1に示す。ここでは、「+」は本発明による方法を使用して単離したRNAを示し、「−」は対照標準法を使用して単離したRNAを示す。図から明らかであるように、本発明の方法にしたがって必須の
収集と再アプライの工程c)および工程d)を行うことにより、単離されたRNAにおける低分子標的RNAのかなりの増加が生じる。これは、本発明による方法にしたがって単離されたRNAにおいて検出することができる、低分子RNAの範囲内にあるかなり濃いバンドにより導くことができる(これらのバンドを
図1において矢印で示す)。したがって、低分子RNAの量は、対照標準法と比較して本発明による方法を用いて単離したRNAの中ではかなり増加した。対照標準法を用いて単離したRNAには低分子RNAは少量しか含まれておらず、したがって、より大きなRNA分子を、アプライした量のRNAの中で検出することができる。したがって、この実施例は、本発明による方法により、単離されたRNAにおける低分子RNAの収量がかなり増えることを示している。誤解を避けるために、本発明による方法または対照標準法を実施する場合には、より大きなRNA分子の全量は基本的に同じであることを強調し、これは、より大きなmRNAのアンプリコンを検出するRT−PCRにより確認したとおりであった。
【0070】
単離したRNAをまた、特定の低分子RNAの収量に対する本発明による方法の有利な効果を分析するために、定量的リアルタイムRT−PCRを使用して分析した。
【0071】
この目的のために、単離したRNAを、製造業者の指示にしたがってABI TaqMan(登録商標)MicroRNAアッセイ(Applied Biosystems)を使用したmicro−RNA miR29aおよびmicro−RNA miR30bのアンプリコンの決定に使用した。20ngのRNAを、TaqMan(登録商標)MicroRNA逆転写キットと対応するプライマーhas−miR30aおよびhas−miR29b(Applied Biosystems)を製造業者の指示にしたがって使用して、逆転写反応において使用した。上記システムを使用したmiRNAアンプリコンの増幅を、リアルタイム増幅システム(ABI PRISM 7900HT Sequence Detection System,Company ABI)において、2μlのcDNA(1:20の希釈率)を使用して行った。測定したct値の平均値(2連のものから導いた)を決定した。それを表1にまとめる。
【0072】
【表1】
結果は、本発明による方法を使用することにより、対照標準法により得られた対応する試料から得られたct値よりもかなり低いct値が生じることを示している。本発明による方法を用いて達成されたより低いct値は、それぞれ単離されたRNAに多量の検出されたmiRNAが含まれるという事実に起因する。これは、本発明の方法により単離したRNAに、対照標準法を用いて単離したRNAよりも多くの低分子核酸が含まれていることを示している。本発明による方法は、低分子標的核酸の収量が増えるため、生物学的試料からの低分子核酸の単離をかなり改善する。参考例が示すように、(先行技術において行われるような)遊離した可能性がある標的核酸の、メンブレンに対する結合を促進する、カオトロピック剤とエタノールとを含む洗浄バッファの単なる添加は、低分子標的核酸を効率よく再度捕捉するためには不十分である。上記で論られたように、遊離した低分子標的核酸がメンブレンの核酸を結合する表面から漏れ、したがって先行技術による方法によってはこれらを再度捕捉できないという事実がその原因である可能性が最も高い。
【0073】
(実施例2:回収溶液中での様々な濃度のカオトロピック剤の使用)
この実施例ではラットの腎臓のFFPE試料を使用した。FFPE試料は、固定および包埋後、室温でおよそ2カ月間保存した。10μmの厚みの切片を、Microtomを使用して上記FFPE試料から得た。1つの試料について1枚の切片を使用した。全ての試料を2回処理した。それぞれのFFPE切片からのその後のRNAの単離のために、RNeasy FFPEキット(QIAGEN)およびQIAamp FFPEキット(QIAGEN)の成分を使用した。
【0074】
本発明の方法および対照標準法によるRNAの単離を実施例1に記載したとおりに行った。メンブレン上でのDNAse消化を行った後に「漏れた」低分子RNAを再度結合させるために、3種類の異なる組成を回収溶液として使用した。試験した回収溶液には、70%のエタノール、クエン酸ナトリウム(pH7)と以下を含めた:
A)1.16MのGTC
B)1.5MのGTC
C)1.8MのGTC。
【0075】
腎臓試料から単離したRNAのサイズ分布をAgilent Bioanalyzerを使用して分析した。
図1に示した結果と同様に、対照標準法を用いて単離した全RNA中の低分子RNAの割合が、本発明による方法を用いて単離したRNA中よりもかなり低いことが再び明らかになった。したがって、本発明による方法により単離したRNAには、低分子RNAがより高い収量で含まれていた。
図2によっても明らかに示されるように、全ての試験した回収溶液A)〜C)が、低分子標的核酸を効率よく再度捕捉するのに適しており、ここで、対照標準法「−」では低分子RNAは少量しか得られなかった。
【0076】
低分子RNAの単離に対する試験した様々な回収溶液の効果を分析するために、RNAを、実施例1に記載したように定量的リアルタイムRT−PCRを実行することにより分析した。この目的のために、単離したRNAを、製造業者の指示にしたがってABI TaqMan(登録商標)MicroRNAアッセイ(Applied Biosystems)を使用したmicro RNA miR29aおよびmicro RNA miR16bのアンプリコンの検出に使用した。
【0077】
測定したct値の平均値(2連のものより導いた)を決定した。それを表2にまとめる。
【0078】
【表2】
結果は、対照標準法により単離したRNAと比較して本発明の方法により単離したRNAを使用した場合には、ct値がかなり低いことを示している。これは、本発明による方法が、単離したRNA中の低分子RNAの収量をかなり増大させるという事実に起因する。結果が示しているように、様々な濃度のカオトロピック剤を回収溶液において使用することができ、成功している。
【0079】
(実施例3:回収溶液における様々なアルコールと様々なアルコール濃度の適合性)
この実施例では、ラットの腎臓由来のFFPE試料(この試料は固定および包埋後、室温で2カ月間保存した)とラットの肺由来のFFPE試料(この試料は固定後、室温でおよそ27カ月間保存した)を使用した。10μmの厚みを持つ切片を、Microtomを使用して得た。1つの試料について1枚の切片を使用した。全ての試料を2回処理した。FFPE切片からのその後のRNAの単離には、RNeasy FFPEキット(QIAGEN)およびQIAamp FFPEキット(QIAGEN)の成分を使用した。
【0080】
本発明による方法または対照標準法を使用したRNAの単離は、実施例1に記載したとおりに行った。メンブレン上でのDNAse処理を行った後に「漏れた」低分子RNAを捕捉するために、4種類の異なる組成を持つ回収溶液を試験した。回収溶液には、1.5MのGTC、クエン酸ナトリウム(pH7)と以下を含めた:
A)70%のエタノール
B)75%のエタノール
C)70%のイソプロパノール
D)75%のイソプロパノール。
【0081】
腎臓組織から単離したRNAのサイズ分布をAgilent Bioanalyzerを使用して分析した。
図1および
図2に示す結果と同様に、本発明による方法を使用した場合には、単離した全RNA中の低分子RNAの割合(portion)がかなり増大することが明らかになった(
図3を参照のこと)。全ての試験した回収溶液は、低分子RNAを効率よく再度捕捉することについて基本的に等しく有効であり、ここで、対照標準法「−」では低分子RNAは少量しか得られなかった。
【0082】
特定の低分子RNAの単離に対する様々な回収溶液の効果を分析するために、単離したRNAを実施例1に記載した定量的リアルタイムRT−PCR法を使用して分析した。単離したRNAを、製造業者の指示にしたがってABI TaqMan(登録商標)MicroRNAアッセイ(Applied Biosystems)を使用することによるmicro−RNA miR29aのアンプリコンの決定に使用した。
【0083】
測定したct値の平均値(2連のものより導いた)を決定した。それを表3にまとめる。
【0084】
【表3】
ここでもまた、結果は、本発明による方法を使用することにより、より低いct値から導くことができるように、単離したRNA中の低分子RNAの収量がかなり増えることを示している。様々なアルコールとアルコール濃度とを回収溶液中で使用することができる。
【0085】
(実施例4:固定されていない試料からの本発明の方法または対照標準法による低分子核酸の単離)
ラットの肺の組織試料(この試料は切除後、RNAlater中、−80℃で保存した)を、カオトロピック剤を含む溶解バッファを使用したRNAの単離に使用した。全ての試料を2回処理した。その後のRNAの単離のために、RNeasyキット(QIAGEN)およびmiRNeasyキット(QIAGEN)の成分を使用した。
【0086】
(フェノール−クロロホルムによる溶解)
それぞれ10mgのラットの肺を、1つの5mmスチールビーズ(steal bead)を含む700μlのフェノールベースの溶解バッファ(バッファQIAzol、QIAGEN)中で、ビーズミル(TissueLyzer、QIAGEN)を使用して25Hzで5分間、ホモジナイズした。その後、試料を室温で5分間インキュベートし、その後、140μlのクロロホルムを添加した。室温で2分間のインキュベーション後、溶解物を4℃にて、12000×gで15分間遠心分離した。上相を取り出し、525μlのエタノールと混合した。得られた混合物をシリカメンブレン(RNeasy Mini Column、QIAGEN)にアプライし、13000rpmで15秒間の遠心分離によりメンブレンを通過させた。標的核酸を結合させたメンブレンを、カオトロピック剤とエタノールとを含む洗浄バッファ(RWT、QIAGEN)をこのメンブレンを通過させることにより洗浄した。
【0087】
(カオトロピック剤による溶解)
それぞれ10mgのラットの肺を、1つの5mmスチールビーズを含む350μlの溶解バッファ(β−メルカプトエタノールを含むバッファRLT、QIAGEN)中で、ビーズミル(TissueLyzer、QIAGEN)を使用して25Hzで5分間、ホモジナイズした。その後、試料を14000rpmで4分間遠心分離し、上清を525μlのエタノールと混合した。得られた混合物をシリカメンブレン(RNeasy Mini
Column、QIAGEN)にアプライし、10000rpmで15秒間の遠心分離によりメンブレンを通過させた。
【0088】
標的核酸を結合させたこのメンブレンを、カオトロピック剤とエタノールとを含む洗浄バッファ(RWT、QIAGEN)をこのメンブレンを通過させることにより洗浄した。(全ての試料のさらなる処理)
10μlのDNAse Iと70μlのDNAse反応バッファ(バッファRDD、QIAGEN)とを含有している80μlの混合物をメンブレンにアプライし、室温で15分間インキュベートして、残っているゲノムDNAを取り除いた。
【0089】
対照標準法にしたがって、または本発明による方法にしたがってRNAを単離するために、全てのさらなる工程を実施例1に記載したとおりに行った。50μlの水(フェノールによる溶解)または40μlの水(カオトロピック剤による溶解)をアプライし、1分間のインキュベーション工程を行った後、RNAを遠心分離により2回溶離させた。
【0090】
(溶離液の分析)
単離したRNAを、実施例1に記載した定量的リアルタイムRT−PCR法を使用して分析した。単離したRNAを、製造業者の指示にしたがってABI TaqMan(登録商標)MicroRNAアッセイ(Applied Biosystems)を使用することによるmicro−RNA miR29aのアンプリコンの決定に使用した。
【0091】
測定したct値の平均値(2連のものより導いた)を決定した、それを表4にまとめる。
【0092】
【表4】
ここでもまた、結果は、より低いct値から導くことができるように、本発明による方法を使用することにより、固定されていない試料においてもまた、単離したRNA中の低分子RNAの収量がかなり増えることを示している。
【0093】
(実施例5:本発明による方法を使用した低分子DNAの単離)
DNA試料として、10bpのDNA−ラダーと50bpのDNA−ラダーを使用した。その後の単離のために、QIAamp MinEluteキット(QIAGEN)の成分を使用した。2μgの10bpのDNA−ラダーと5μgの50bpのDNA−ラダーを180μlの溶解バッファ(バッファATL、QIAGEN)と混合した。対照標準法(DNAのメンブレン上での処理を行ったか、もしくは行わなかったかのいずれか)または本発明による方法を使用して、上記混合物からDNAを精製した。
【0094】
メンブレン上での処理を行わなかった対照標準法(試料(a))については、溶解液−DNA混合物を4μlのRNA(100mg/ml)と混合し、室温で2分間インキュベートした。続いて、カオトロピック剤(バッファAL、QIAGEN)と200μlのエタノールとを含む200μlの結合バッファを添加した。得られた混合物をシリカメンブレン(QIAamp MinEluteカラム、QIAGEN)にアプライし、遠心分離(1分間、8000rpm)によってシリカメンブレンを通過させた。メンブレンを、アルコールとカオトロピック剤を含有している500μlの洗浄バッファ(AW1、QIAGEN)、およびアルコールを含有している500μlの洗浄バッファ(AW2)をこのメンブレンを通過させることにより洗浄した。このメンブレンを遠心分離(1分間、14000rpm)により乾燥させた。溶離バッファ(30μl、ATE、QIAGEN)をアプライし、1分間インキュベーションした後、遠心分離によりDNAを溶離させた。
【0095】
DNAのメンブレン上での処理を行った対照標準法(試料b、c、e、f)および本発明による方法(試料d、g)では、溶解バッファとDNA試料とを含む混合物を、カオトロピック剤を含む200μlの結合バッファ(バッファAL、QIAGEN)、および200μlのエタノールと混合した。得られた混合物をシリカメンブレン(QIAamp MinEluteカラム、QIAGEN)にアプライし、遠心分離(1分間、8000rpm)によりシリカメンブレンを通過させた。
【0096】
その後、DNAをこのメンブレンに結合させたまま、様々なメンブレン上での処理を行った。いくつかの試料はRNaseで処理し(試料b、c、d)、他の試料はプロテアーゼで処理した(試料e、f、g)。
【0097】
4μlのRNase A(100mg/ml)と76μlのRNase反応バッファ(バッファRDD、QIAGEN)とからなる80μlのRNase混合物をメンブレンにアプライし、室温で5分間インキュベートして、メンブレン上でのRNase処理を行なった。
【0098】
20μlのプロテイナーゼK(>600mAU/ml)と60μlのプロテアーゼ反応バッファ(バッファRDD、QIAGEN)とからなる80μlのプロテアーゼ混合物をメンブレンにアプライし、56℃で15分間インキュベートして、メンブレン上でのプロテアーゼ処理を行なった。
【0099】
対照標準法により処理した試料(試料b、c、e、f)については、カオトロピック剤とエタノールとを含む500μlのバッファ(バッファAW1、QIAGEN(試料b、e)またはバッファRWT、QIAGEN(試料c、f))と、アルコールを含む500μlの洗浄バッファAW2(QIAGEN)を、このメンブレンを通過させた。このメンブレンを遠心分離(1分間、14000rpm)により乾燥させた。DNAを、溶離バッファ(30μl、ATE、QIAGEN)をアプライし、1分間インキュベーションした後に、遠心分離により溶離させた。
【0100】
本発明による方法により処理した試料(試料dおよびg)については、回収溶液(1〜1.5MのGTC、75%のイソプロパノール、クエン酸ナトリウム(pH7)を含む)をメンブレンにアプライし、遠心分離によってこのメンブレンを通過させた。フロースルーを再びメンブレンにアプライし、遠心分離によってこのメンブレンを通過させて、漏れた低分子DNA分子を再度結合させた。その後、メンブレンを、アルコールを含む500μlの洗浄バッファ(AW2)をこのメンブレンを通過させることにより洗浄した。このメンブレンを遠心分離(1分間、14000rpm)により乾燥させた。溶離バッファ(30μlのATE、QIAGEN)をアプライし、1分間インキュベーションした後に、遠心分離によりDNAを溶離させた。
【0101】
実施例5で試験した様々な方法により単離したDNAの収量を260nmで決定した。表5は2連の平均値を示す。
【0102】
【表5】
表5から明らかであるように、本発明による方法により、メンブレン上での処理が行なわれる核酸の単離方法において低分子DNAの収量がかなり増える。
【0103】
(実施例6:回収溶液における様々なカオトロピック剤と様々なバッファの適合性)
ラットの肺の組織試料(この試料は切除後、RNAlater中、−80℃で保存した)を、カオトロピック剤を含む溶解バッファを使用するRNAの単離に使用した。その後のRNAの単離のために、RNeasyキット(QIAGEN)およびmiRNeasyキット(QIAGEN)の成分を使用した。
【0104】
溶解物のプールをラットの肺組織から調製して、様々な回収溶液の比較のための均質な出発材料を提供した。350μlの溶解バッファ(β−メルカプトエタノールを含むバッファRLT、QIAGEN)を10mgの各組織に添加し、この材料をロータースターターホモジナイザー(rotor stator homogenizer)を使用してホモジナイズした。ホモジナイズした後、溶解物のプールを350μlの溶解物のアリコートに分け、その後の全てのRNA精製に使用した。この溶解物を525μlの96〜100%のエタノールと混合し、シリカメンブレン(RNeasy Mini Column、QIAGEN)にアプライし、10000rpmで15秒間の遠心分離によりメンブレンを通過させた。
【0105】
再結合を行わなかった対照標準(reference)の場合(
図4のref(対照標準)を参照のこと)、標的核酸を結合させたメンブレンを、カオトロピック剤とエタノールとを含む洗浄バッファ(RWT、QIAGEN)をメンブレンを通過させることにより洗浄した。10μlのDNAse Iと70μlのDNAse反応バッファ(バッファRDD、QIAGEN)とを含有している80μlの混合物をメンブレンにアプライし、室温で15分間インキュベートして、残っているゲノムDNAを取り除いた。その後、メンブレンを、カオトロピック剤とエタノールとを含む洗浄バッファ(RWT、QIAGEN)をこのメンブレンを通過させることによって再度洗浄した。その後、メンブレンを、アルコールを含む洗浄バッファ(RPE、QIAGEN)500μlを2回添加し、このメンブレンを通過させることにより洗浄した。このメンブレンを、14000rpmで3分間の遠心分離により乾燥させた。40μlの水をアプライし、1分間のインキュベーション工程を行った後、RNAを、遠心分離により2回溶離させた。
【0106】
本発明の方法によるRNAの単離のために、標的核酸を結合させたこのメンブレンを、カオトロピック剤、バッファ成分、およびイソプロパノールを様々な組成で含む回収溶液(表6)をこのメンブレンを通過させることにより洗浄した。フロースルーは廃棄した。10μlのDNAse Iと70μlのDNAse反応バッファ(バッファRDD、QIAGEN)とを含有している80μlの混合物をメンブレンにアプライし、室温で15分間インキュベートして、残っているゲノムDNAを取り除いた。オンカラムDNAse消化工程を行った後、同じタイプの回収溶液をメンブレンにアプライし、遠心分離によりこのメンブレンを通過させた。フロースルーを
収集し、再度アプライし、遠心分離によりこのメンブレンを通過させた。これにより、メンブレン上でのDNase消化の間にメンブレンから遊離した、特に、低分子標的核酸をメンブレンに再び結合させ、これにより回収する。その後、RNAを、対照標準法について上に記載したとおりに、メンブレンから溶離させた(全ての試料を2回処理した)。
【0107】
【表6】
単離したRNAを、実施例1に記載した定量的リアルタイムRT−PCR法を使用して分析した。単離したRNAを、製造業者の指示にしたがってmiScript System(QIAGEN)を使用することによるmicro−RNA miR16のアンプリコンの決定に使用した。
【0108】
測定したct値の平均値(2連のものより導いた)を決定し、
図4に示す。ここでもまた、結果は、より低いct値から導くことができるように、本発明による方法を使用することにより、単離したRNA中の低分子RNAの収量がかなり増えることを示している。様々なカオトロピック剤と様々なバッファ成分を回収溶液において使用することができる。
【0109】
(実施例7:本発明による方法または先行技術のプロトコールによる方法を使用したRNAおよびDNAの単離)
ラットの肝臓由来のFFPE試料(試料は固定およびパラフィン包埋後、室温でおよそ2カ月間保存した)、ラットの腎臓由来のFFPE試料(対応させて、およそ19カ月間保存および包埋した)、およびラットの肺由来のFFPE試料(対応させて、およそ8カ月間保存および包埋した)を使用した。10μmサイズの厚みを有している組織切片を、ミクロトームにかけることにより得た。1つの試料について2枚の切片を使用した。全ての試料を3連で処理した。その後のRNAおよびDNAの単離のために、RNeasy FFPEキット(QIAGEN)およびAllprep DNA RNA FFPEキット(QIAGEN)の成分を、本発明の方法を使用する際に利用した。
【0110】
あるいは、先行技術であるキットのプロトコールに基づく方法を比較のために使用した。様々な供給業者による以下のキットを使用した:
− FFPE RNA/DNA Purification Kit(NORGEN)
− RecoverAll(商標)Total Nucleic Acid Isolation Kit Optimized for FFPE Samples(Ambion)
− QuickExtract(商標)FFPE RNA Extraction Kit(EPICENTRE)
− RNA and DNA Isolation from FFPE Samples(Macherey−Nagel)。
【0111】
(本発明による方法)
試料を、1mlのキシロールとともに10秒間ボルテックスすることにより混合し、遠心分離して(2分間、20,000rpm)、上記試料からパラフィンを取り除いた。上清を完全に取り除いた。その後、試料に1mlの96%エタノールを補充し、10秒間ボルテックスすることにより混合し、上記のように遠心分離した。上清を完全に取り除き、試料ペレットを37℃で10分間乾燥させた。
【0112】
これらのパラフィン除去した試料ペレットを150μlのプロテイナーゼK消化バッファ(バッファPKD、QIAGEN)および10μlのプロテイナーゼK溶液(>600mAU/ml)と混合した。この混合物を56℃で15分間、450rpmの一定速度で振盪させながらインキュベートした。試料を氷上で3分間冷却し、20,000gで15分間、室温で遠心分離した。DNAを含有しているペレットを、DNAを単離するために使用し、含まれるRNAを単離するために上清を
収集した。
【0113】
続いて、これらのRNAを含む上清を、サーモミキサー(thermomixer)上で450rpm、80℃で15分間インキュベートした。その後、いずれの場合にも320μlのカオトロピック溶解バッファ(バッファRLT、QIAGEN)を添加し、得られた混合物に1120μlの96%エタノールを加えた。試薬をピペッティングにより混合し、700μlをシリカメンブレン(RNeasy MinElute Column、QIAGEN)にアプライした。試料を10,000rpmで15秒間の遠心分離によりメンブレンを通過させ、フロースルーは廃棄した。これに基づいて、残りの試料をメンブレンにアプライした。標的核酸を結合させたこのメンブレンを、5M GTC(+25mMのクエン酸Na)が1でイソプロパノールが3の割合からなる350μlの回収溶液(以後、回収溶液と呼ぶ)をこのメンブレンを通過させる(10,000rpmで15秒間の遠心分離)ことにより洗浄した。その後、10μlのDNAse Iと70μlのDNAse反応バッファ(バッファRDD、QIAGEN)とを含む混合物をメンブレンにアプライし、室温で15分間インキュベートした。
【0114】
このメンブレン上でのDNase消化を行った後、500μlのこの回収溶液をメンブレンにアプライし、遠心分離(15秒間、10,000rpm)によりメンブレンを通過させた。上記のように、フロースルーを
収集し、メンブレンに再度アプライし、遠心分離によりメンブレンを通過させた。これにより、メンブレン上でのDNase消化の間にメンブレンから遊離した、特に、低分子標的核酸をメンブレンに再度結合させ、これによって回収した。続いて、メンブレンを、アルコールを含む洗浄バッファ(RPE、QIAGEN)500μlを添加し、上記のように遠心分離によってメンブレンを通過させることによって、2回洗浄した。このメンブレンを、14,000rpmで5分間の遠心分離工程により乾燥させた。全RNAを、30μlのRNAseを含まない水を加え、1分間インキュベーションした後、フルスピードで1分間の遠心分離により溶離させた。
【0115】
DNAの単離のために、180μlのバッファATL(QIAGEN)と40μlのプロテイナーゼKを各試料ペレットに添加した。ボルテックスした後、試料を56℃で1時間、一定速度で振盪させながらインキュベートした。その後、試料を90℃で2時間、振盪させずにインキュベートした。4μlのRNase A(100mg/ml)をこの混合物に添加し、混合し、そして室温で2分間インキュベートした。試料に200μlのバッファAL(QIAGEN)を加え、混合した。200μlの96%エタノールを添加し、直ちに混合した。この混合物をQIAamp MinEluteカラムにアプライし、8,000gで1分間遠心分離した。フロースルーは廃棄した。試料に700μlのバッファAW1(QIAGEN)を加え、8,000gで1分間遠心分離した。フロースルーは廃棄した。試料に700μlのバッファAW2(QIAGEN)を加え、上記のように遠心分離した。フロースルーは廃棄した。試料に700μlの96%エタノールを加え、上記のように遠心分離した。フロースルーは廃棄した。メンブレンを乾燥させるために、カラムを、蓋をあけた状態で14,000rpmで5分間遠心分離した。30μlのバッファATE(QIAGEN)をカラムのメンブレン上に直接ピペッティングし、続いて、室温でのインキュベーションと、8000gで1分間の遠心分離を行った。30μlの溶離液を、さらなる処理まで、−20℃で保存した。
(先行技術のプロトコールに基づく方法)
FFPE RNA/DNA Purification Kit(NORGEN)を、製造業者の指示にしたがって全RNAおよびDNAの単離に使用した。試料を、RNAおよびDNAそれぞれについて、50℃でおよそ2時間および24時間、プロテイナーゼKとともにインキュベートし、試料を完全に溶解させた。RNAの場合に限り、結合溶液1mlあたり10μlのβ−メルカプトエタノールを添加した。さらなるDNA消化を、10単位のDNase I(QIAGEN)を用いて行った。対応するインキュベーションバッファ中のDNaseをカラムに加え、続いて遠心分離した後、フロースルーを再度アプライし、15分間インキュベートした。
【0116】
RecoverAll(商標)Total Nucleic Acid Isolation Kit Optimized for FFPE Samples(Ambion)、QuickExtract(商標)the FFPE RNA Extraction Kit(EPICENTRE)、およびキットRNA and DNA Isolation from FFPE Samples(Macherey−Nagel)を、製造業者の指示にしたがって、DNA消化を含む全RNAおよびDNAの単離に利用した。
【0117】
その後、様々なプロトコールにより単離した核酸を、とりわけ、質、量、単離されたRNA中のDNA混入物質、特に、単離した低分子核酸の収量に関して分析した。結果を
図5〜9に示す。
【0118】
これらの結果は、本発明による方法により、同じ試料からDNAおよびRNAを並行して、しかし別々に単離することができることを示している。ここでは、RNAおよびDNAの単離には、合計でおよそ6時間を要する。したがって、これを1日の作業時間のうちに行うことができる。単離された核酸の質は高かった。単離したRNA中のDNA混入物質は、先行技術の方法と比較するとはるかに少なく、単離した低分子RNAの収量はかなり多かった。
【0119】
Epicentreプロトコールは非常に迅速であり(RNAおよびDNAについて合計でおよそ1:10時間)、単純である。しかし、得られる「溶離液」は乳汁状、帯黄色であり、濁っていた。さらに、単離したRNAの質は満足できるものではなく、低分子核酸の含量は非常に低かった。Machery−Nagelプロトコールによっては、同じ試料からDNAとRNAを並行して単離することができる。しかし、単離したRNAは、より分解されており、本発明による方法と比較すると、この実施例7で調べたRNAについて、リアルタイムPCRの高いct値を生じた。このプロトコールを使用する場合には、RNAおよびDNAの単離には、合計でおよそ8:30時間を要する。NORGENプロトコールは、非常に時間がかかり(試験した形式では、RNAについてはおよそ5:20時間、DNAについてはおよそ26時間)、これは、非常に長いプロテイナーゼK消化工程(それぞれ、およそ2時間および24時間)により生じる。さらに、結果は、単離したRNA中のDNA混入物質がやや多いことを示している。さらに、低分子RNAの収量はかなり少なかった。Ambionプロトコールは、DNAの回収に16時間のプロテアーゼ消化工程が必要であるので非常に時間がかかり、これは、日常的に行われる研究室での作業の流れと矛盾する。さらに、単離されたRNA中のDNA混入物質は本発明による方法を用いた場合よりも多く、低分子RNAの含量は少なかった。
(MicroRNAの分析)
様々な組織から単離したRNAのサイズ分布を、本発明による方法により達成された改善を明らかにするためにAgilent Bioanalyserを使用して分析した。同量のRNA(ng量)をアプライした(OD測定法により決定した)。肺組織試料(3連で処理した)についての結果を
図5に示す。図から明らかであるように、本発明による方法を実行することにより、先行技術のキットプロトコールによる方法と比較して、単離したRNAにおいて低分子標的RNAの高く、かつ信頼できる収量が得られた。これは、低分子RNAの範囲にあるバンドから導くことができる。これらのバンドを、
図5において矢印で印をつける。
【0120】
さらに、本発明による方法により、優れて最高純度の単離されたRNAが得られたことを強調しなければならない。
図6は、単離したRNAの逆転写(RT)を行った(+)および単離したRNAの逆転写(RT)を行わなかった(−)リアルタイムPCRによりそれぞれ定量化したcjun mRNAを用いて得られた結果を示す。調べた全ての組織について、得られたct値の差(Δ)は、本発明による方法の場合に、優れて最高の値を示し(QIAGEN)、これは、ゲノムDNAを含む混入物質が最も少ないことを示している。
【0121】
単離したRNAについて、特定の低分子RNAの収量に対する本発明による方法の有利な効果を分析するために、定量的リアルタイムRT−PCRを行った。この目的のために、20ngの各単離した全RNAを、実施例1に記載した手順およびデバイスにしたがって、microRNA miR29aのアンプリコンを検出するために使用した。測定したct値の平均値(3連のものから導いた)を決定した。その結果を
図7に示す。これらの結果は、本発明による方法を使用することにより、先行技術のキットプロトコールに基づく方法により得られた、試料のct値よりもかなり低いct値がもたらされることを示している。本発明による方法を用いて達成されたこれらのより低いct値は、対応する単離された全RNAに多量のmicroRNA miR29aが含まれることに帰因する。ここでもまた、これらの結果は、本発明の方法により単離された全RNAがより多くの低分子核酸を含むこと、すなわち、生物学的試料由来の低分子核酸の収量が増えることを示している。先行技術のキットプロトコールに基づく方法は、本発明による方法よりも低分子標的核酸を再度結合させることにおいて効率が低い。
【0122】
単離したDNAについて定量的リアルタイムPCRを行った。プリオン78bpについて、測定したct値の平均値(3連のものから導いた)を決定した。それを、使用した等容積および等濃度のDNA試料それぞれについて
図8aおよびbにまとめる。プリオン78bpについてのct値は本発明による方法を使用する場合はかなりより低い。
【0123】
単離したRNAについて、さらに定量的リアルタイムRT−PCRを行った。Madh7について、測定したct値の平均値(3連のものから導いた)を決定した。それを、使用した等容積および等濃度のRNA試料それぞれについて
図9aおよびbにまとめる。Madh7についてのct値は本発明による方法を使用する場合はかなりより低い。