【実施例】
【0057】
(実施例1)
ラットの肝臓からのRNAの単離の間のゲノムDNAの排除に対する様々な界面活性剤の効果を以下の方法により評価した:
1.RNAlaterにより安定化した270mgの肝臓組織を、TissueRuptorホモジナイザーを使用して、27mlの、Qiazol試薬、酸性フェノール、およびカオトロピック塩を含む試薬の中でホモジナイズした。
【0058】
2.1000μlの得られたホモジネートを2mlのエッペンドルフチューブにアリコートした。したがって、1つの試料について10mgの組織を使用した。
【0059】
3.8μl(5μg)のゲノムDNAを、相分離の前に上記Qiazol試薬に添加した。
【0060】
4.次の工程で、100μlの以下の界面活性剤をこのホモジネートに添加した(2連で):
− Triton X−100[100%]
− Tween20[20%]
− 臭化セチルトリメチルアンモニウム[1%]、CTAB
− 臭化テトラデシルトリメチルアンモニウム[1%]、TTAB。
【0061】
対照標準(referance)については界面活性剤を添加しなかった(「対照標準」)。
【0062】
続いて、200μlのクロロホルムを添加し、ボルテックスした。
【0063】
5.上記試料を、4℃にて、12,000×gで15分間遠心分離し、得られた水相を新しいエッペンドルフチューブに移した。
【0064】
6.1.5倍容積の無水エタノールをそれぞれの水相に添加し、混合した。
【0065】
7.この混合物をRNeasyミニカラム(Qiagen)に移し、8,200×gで15秒間遠心分離し、続いて、700μlのRWTバッファ(Qiagen)を用い、続いて8,200×gで15秒間遠心分離して洗浄した。
【0066】
8.このカラムを500μlのRPEバッファ(Qiagen)で2回洗浄し、それぞれ8,200×gで15秒間および2分間遠心分離し、続いて最大速度で1分間の最後の遠心分離工程を行った。
【0067】
9.結合したRNAを、8,200×gで1分間の遠心分離により、30μlのRNaseを含まない水に溶離させ、そのRNA濃度を、NanoDrop(ThermoScientific)を使用して分光学的に決定した。その結果を表1に示す。
【0068】
【表1】
明らかであるように、プロトコールの全ての変形(variant)により良好なRNAの収量が得られる。しかし、使用した分光学的方法は、RNAとDNAを厳密に区別するものではなく、したがって、RNAと、さらにはDNAも「RNAの収量」として決定される。表3および対応する
図1に続いて示すように、単離されたRNA中のDNAの量が、本発明による方法を使用する場合にはかなり減少するので、対照標準法、ならびに、非陽イオン性界面活性剤TritonおよびTweenを使用する方法と比較して、本発明による方法を使用する場合には純粋なRNAの収量が改善される。
【0069】
10.RNA完全性に対する試験した界面活性剤の影響を比較するために、RNA完全性を、Agilent BioAnalyzer 2100(登録商標)を使用して評価した。その結果を表2に示す。
【0070】
【表2】
表2は、最も高いRIN数が本発明による方法を用いた場合に得られたことを示している。したがって、本発明による方法を用いて単離したRNAのRNA完全性が、対照標準法を使用して単離したRNAのRNA完全性、または他の非陽イオン性界面活性剤を添加した場合のRNA完全性よりも優れている。
【0071】
11.RNA試料を、RNAseを含まない水で1:50に希釈し、その後、25μlの反応容積において、逆転写酵素を用いておよび逆転写酵素を用いることなく、それぞれQuantiTect RT−PCRキット(Qiagen)を使用して、10ピコモル(pmole)の遺伝子特異的プライマーおよびプローブ(PGK1プライマーミックス、PGK1プローブ)を用いて逆転写させた:
(1)30分間、50℃で
(2)15分間、95℃で
(3)15秒間、95℃で
(4)1分間、60℃で、工程(3)、(4)を40サイクル繰り返す。
【0072】
得られたCt値とΔCt値を、表3と
図1a)(Ct値)および1b)(ΔCt値)に示す。
【0073】
【表3】
「−RT」反応においては、DNA混入物質だけが鋳型となることができ、したがって、上記PCRにおいて増幅される(RNAは「−RT」反応では逆転写されず、したがって鋳型となることができない)。したがって、少量のDNAを含む試料においては、より多いサイクルの後に閾値に到達し、したがって上記Ct値はより高い。このように、「−RT」反応において上記Ct値が高ければ高いほど鋳型の量が少なく、よって単離されたRNA中のDNA混入物質の量がより少ない。最も高いCt値は本発明による方法を用いた場合に得られる。より高いCt値の原因が核酸の全収量がより少ないことではないことを確認するために、「+RT」反応についてのCt値を決定した。ここでは、上記RNAが逆転写され、したがって上記PCRの鋳型となることができる。上記Ct値は全ての「+RT」反応においてより低い。なぜなら、ここでは、逆転写された上記RNA(および上記DNA混入物質)がPCRの鋳型となることができ、したがって、上記「−RT」反応においてより早い段階で閾値に到達するからである。結果から明らかであるように、得られた上記Ct値は全ての試験した試料においてほぼ等しい。
【0074】
ΔCt値(ΔCt=(上記「−RT」反応のCt)−(上記「+RT」反応)のCt)は、その2つの反応間の差を示しており、したがって、単離された上記RNA中のDNA混入物質の量を示す。上記ΔCt値が高ければ高いほど、単離された上記RNA中のDNA混入物質の量はより少ない。表3と
図1a)およびb)は、陽イオン性界面活性剤を添加した、本発明により単離したRNAには、対照標準法よりもかなり少ない量のDNA混入物質しか含まれていないことを示している。したがって、DNA混入物質は本発明の教示により効率よく低減される。他の非陽イオン性界面活性剤はDNA混入物質の量を減らすことはできなかった。逆に、上記対照標準法のΔCt値よりもなおも低いΔCt値から明らかであるように、これらは、単離された上記RNA中のDNAの増加をさらに導く。
【0075】
(実施例2)
上記界面活性剤を上記ホモジネートに直接添加する一方で、上記Qiazol試薬を使用した様々な組織からのRNAの単離の間に共精製された(co−purified)ゲノムDNAの量を評価するために、以下の実験を行った:
1.200mgの、RNAlaterにより安定化した肺、腎臓、心臓、脾臓、および脳組織を、TissueRuptorホモジナイザーを使用して、8mlのQiazol試薬中でホモジナイズした。
2.それぞれ1000μlのホモジネート(1つの試料あたり25mgの組織に相当する)を2mlのエッペンドルフチューブにアリコートし、100μlの以下の界面活性剤ストック溶液をこれに添加した:
− 臭化セチルトリメチルアンモニウム[1%]、CTAB
− 臭化テトラデシルトリメチルアンモニウム[1%]、TTAB。
【0076】
対照標準については界面活性剤を添加しなかった(「対照標準」)。
【0077】
続いて、200μlのクロロホルムを添加し、ボルテックスした。
【0078】
3.上記試料を、4℃にて、12,000×gで15分間遠心分離し、得られた水相を新しいエッペンドルフチューブに移した。
【0079】
4.その上清を1.5倍容積の無水エタノールと混合し、水相をRNeasyミニカラム(Qiagen)に移し、8,200×gで15秒間遠心分離し、続いて700μlのRWTバッファ(Qiagen)を用い、その後、8,200×gで15秒間遠心分離して洗浄した。
【0080】
5.その後、このカラムを500μlのRPEバッファ(Qiagen)で2回、それぞれ8,200×gで15秒間および2分間洗浄し、続いて最大速度で1分間の最後の遠心分離工程を行った。
【0081】
6.結合したRNAを、8,200×gで1分間の遠心分離により30μlのRNaseを含まない水に溶離させ、RNA濃度を、NanoDrop(ThermoScientific)を使用して分光学的に決定した。その結果を表4に示す。
【0082】
【表4-1】
【0083】
【表4-2】
明らかであるように、いずれのプロトコールを用いた場合にもその収量は良好であったが、本発明による方法により単離したRNAにはDNAは極少量しか含まれておらず、したがって、多くの場合は、純粋なRNAの収量が、続いて表6においても明らかにするように、なおさらに多かった。
【0084】
7.RNA完全性を、Agilent BioAnalyzer 2100を使用して評価した。その結果を表5に示す。
【0085】
【表5】
先と同様に、上記RINは、本発明による方法を用いる場合には、対照標準法と等しいか、またはなおさらに優れているかのいずれかである。
【0086】
8.RNA試料を、以下のようにRNaseを含まない水で希釈した:肺1:80、腎臓1:100、心臓1:50、脾臓1:100、脳1:50。2μlのそれぞれの希釈物を、25μlの反応容積において、逆転写酵素を用いておよび逆転写酵素を用いることなく、QuantiTect RT−PCRキット(Qiagen)を使用して、10ピコモルの遺伝子特異的プライマーおよびプローブ(PGK1プライマーミックス、PGK1プローブ)を用いて逆転写させた:
(1)30分間、50℃で
(2)15分間、95℃で
(3)15秒間、95℃で
(4)1分間、60℃で、工程(3)、(4)を40サイクル繰り返す。
【0087】
得られたCt値とΔCt値を、表6と、対応する
図2a)および2b)に示す。
【0088】
【表6】
より高いΔCt値(
図2bもまた参照のこと)から導くことができるように、本発明による方法により、様々な組織試料から単離したRNA中のDNA混入物質の量がかなり低減された。したがって、本発明による方法は、様々な組織からの純粋なRNAの単離に特に適している。
【0089】
(実施例3)
RNAを、上記Qiazol試薬を使用して漸増量の組織から単離した。ここでは、以下の手順にしたがって上記陽イオン性界面活性剤をホモジネートに直接添加した。:
1.5mg、10mg、20mg、30mg、および50mgの、(a)RNAlaterにより安定化した肝臓または(b)凍結した肝臓を、TissueRuptorホモジナイザーを使用して1mlのQiazol試薬中でホモジナイズした。
【0090】
2.100μlの以下の界面活性剤ストック溶液を添加した:
− 臭化セチルトリメチルアンモニウム[1%]、CTAB
− 臭化テトラデシルトリメチルアンモニウム[1%]、TTAB。
【0091】
上記対照標準については界面活性剤を添加しなかった(「対照標準」)。
【0092】
続いて、200μlのクロロホルムを添加し、ボルテックスした。
【0093】
3.上記試料を、4℃にて、12,000×gで15分間遠心分離し、得られた水相を新しいエッペンドルフチューブに移した。
【0094】
4.その上清を1.5倍容積の無水エタノールと混合し、水相をRNeasyミニカラム(Qiagen)に移し、8,200×gで15秒間遠心分離し、続いて700μlのRWTバッファ(Qiagen)を用い、その後、8,200×gで15秒間遠心分離して洗浄した。
【0095】
5.このカラムを、500μlのRPEバッファ(Qiagen)で2回、それぞれ、8,200×gで15秒間および2分間洗浄し、続いて最大速度で1分間の最後の遠心分離工程を行った。
【0096】
6.結合したRNAを、8,200×gで1分間の遠心分離により30μlのRNaseを含まない水に溶離させ、上記RNA濃度を、NanoDrop(ThermoScientific)を使用して分光学的に決定する。その結果を表7および表8と、
図3および
図4に示す。
【0097】
【表7-1】
【0098】
【表7-2】
【0099】
【表8-1】
【0100】
【表8-2】
7.RNA完全性を、Agilent BioAnalyzer 2100を使用して評価した。その結果を表9および表10に示す。
【0101】
【表9】
【0102】
【表10】
明らかであるように、本発明による方法により単離したRNAについてのRIN値は優れている。
【0103】
8.RNA試料を、RNaseを含まない水で1:70に希釈した。その後、2μlのこの希釈液を、25μlの反応容積において、逆転写酵素を用いておよび逆転写酵素を用いることなく、それぞれQuantiTect RT−PCRキット(Qiagen)を使用して、10ピコモルの遺伝子特異的プライマーおよびプローブ(PGK1プライマーミックス、PGK1プローブ)を用いて逆転写させた:
(1)30分間、50℃で
(2)15分間、95℃で
(3)15秒間、95℃で
(4)1分間、60℃で、工程(3)、(4)を40サイクル繰り返す。
【0104】
得られたCt値とΔCt値を表11a)およびb)に列挙し、
図5a)およびb)において棒グラフとしてプロットする。
【0105】
【表11-1】
【0106】
【表11-2】
(実施例4)
RNAの単離の間のゲノムDNAの共精製に対する効果を、1つの条件について4つの個別のRNA調製物を用いて以下の手順にしたがい上記ホモジネートに直接添加した、様々な量の陽イオン性界面活性剤を使用して評価した:
1.930mgの、RNAlaterにより安定化した肝臓を、TissueRuptorホモジナイザーを使用して31mlのQiazol試薬中でホモジナイズした。
【0107】
2.それぞれ1000μlのホモジネート(30mgの肝臓に相当する)を2mlのエッペンドルフチューブにアリコートし、この試料に対して、界面活性剤を添加しなかったか、または漸増量(50μl、100μl、150μl、200μl)の1%のCTABストック溶液を添加したかのいずれかを行い、続いて、200μlのクロロホルムを添加し、ボルテックスした。
【0108】
3.試料を4℃にて、12,000×gで15分間遠心分離し、得られた水相を新しいエッペンドルフチューブに移した。
【0109】
4.その上清を1.5倍容積の無水エタノールと混合し、水相をRNeasyミニカラム(Qiagen)に移し、8,200×gで15秒間遠心分離し、続いて700μlのRWTバッファ(Qiagen)を用い、その後、8,200×gで15秒間遠心分離して洗浄した。
【0110】
5.その後、このカラムを500μlのRPEバッファ(Qiagen)で2回、それぞれ8,200×gで15秒間および2分間洗浄し、続いて最大速度で1分間の最後の遠心分離工程を行った。
【0111】
6.結合したRNAを、8,200×gで1分間の遠心分離により30μlのRNaseを含まない水に溶離させ、上記RNA濃度をNanoDrop分光光度計(ThermoScientific)を使用して決定した。その結果を表12と
図6に示す。
【0112】
【表12】
その結果はまた、
図6にもまとめる。上記対照標準法と本発明による方法との間でのRNAの収量における推定される減少は、主に、単離されたRNA中のゲノムDNAの減少にその原因があり、RNAの減少に原因があるのではない。これは、とりわけqRT−PCRアッセイ(
図7を参照のこと)および本明細書中に示す他の実施例によりサポートされる。
【0113】
7.RNA完全性をAgilent BioAnalyzer 2100を使用して評価した。その結果を表13に示す。
【0114】
【表13】
8.RNA試料をRNaseを含まない水で1:90に希釈し、25μlの反応容積において、逆転写酵素を用いておよび逆転写酵素を用いることなく、QuantiTect RT−PCRキット(Qiagen)を使用して、それぞれ10ピコモルの遺伝子特異的プライマーおよびプローブ(PGK1プライマーミックス、PGK1プローブ)を用いて逆転写させた:
(1)30分間、50℃で
(2)15分間、95℃で
(3)15秒間、95℃で
(4)1分間、60℃で、工程(3)、(4)を40サイクル繰り返す。
【0115】
得られたCt値とΔCt値を、表14と対応する
図7に示す。
【0116】
【表14】
その結果はまた、
図7によっても例証される。明らかであるように、CTABの量を増加させることにより、単離された上記RNA中のDNA混入物質の低減の増加がもたらされた。
【0117】
(実施例5)
組織からのRNAの単離の間のゲノムDNAの共精製に対する効果を比較するために、2種類の陽イオン性界面活性剤溶液(CTABとバッファ「BB」(Qiagen、1%のCTABと塩とを含む))を使用して、以下の実験を行った:
1.425mgのRNAlaterにより安定化した脾臓、および425mgの凍結した脾臓を、TissueRuptorホモジナイザーを使用して、それぞれ、31mlのQiazol試薬中でホモジナイズした。
【0118】
2.それぞれ1000μlのホモジネートを2mlのエッペンドルフチューブにアリコートし、100μlの以下のストック溶液をこのホモジネートに直接添加した:
− 臭化セチルトリメチルアンモニウム[1%]、CTAB
− QiagenバッファBB(NaCl中の1%のCTAB)。
【0119】
上記対照標準については界面活性剤を添加しなかった(「対照標準」)。
【0120】
続いて、200μlのクロロホルムを添加し、ボルテックスした。
【0121】
3.上記試料を、4℃にて、12,000×gで15分間遠心分離し、得られた水相を新しいエッペンドルフチューブに移した。
【0122】
4.その上清を1.5倍容積の無水エタノールと混合し、水相をRNeasyミニカラム(Qiagen)に移し、8,200×gで15秒間遠心分離し、続いて700μlのRWTバッファ(Qiagen)を用い、その後、8,200×gで15秒間遠心分離して洗浄した。
【0123】
5.その後、このカラムを500μlのRPEバッファ(Qiagen)で2回、それぞれ8,200×gで15秒間および2分間洗浄し、続いて最大速度で1分間の最後の遠心分離工程を行った。
【0124】
6.結合したRNAを、8,200×gで1分間の遠心分離により30μlのRNaseを含まない水に溶離させ、上記RNA濃度を、NanoDrop(ThermoScientific)を使用して分光学的に決定した。その結果を表15に示す。
【0125】
【表15-1】
【0126】
【表15-2】
7.RNA完全性を、Agilent BioAnalyzer 2100を使用して評価した。表16を参照のこと。
【0127】
【表16】
明らかであるように、上記RNA完全性は、本発明による方法を使用して上記組織からRNAを単離する場合に改善される。
【0128】
8.RNA試料をRNaseを含まない水で1:100に希釈し、25μlの反応容積において、逆転写酵素を用いておよび逆転写酵素を用いることなく、それぞれQuantiTect RT−PCRキット(Qiagen)を使用して、10μMの濃度の遺伝子特異的プライマー(PGK1プライマーミックスおよびPGK1プローブ)を用いて逆転写させた:
(1)30分間、50℃で
(2)15分間、95℃で
(3)15秒間、95℃で
(4)1分間、60℃で、工程(3)、(4)を40サイクル繰り返す。
【0129】
得られたCt値とΔCt値を、表17と、対応する
図8に示す。
【0130】
【表17】
表17および
図8から導くことができるように、本発明による方法は、DNA混入物質の量を減少させることにより、それぞれの組織から単離されたRNAの純度を改善する。これは、増大したΔCt値から導くことができる。
【0131】
(実施例6)
本明細書中では、RNAの単離を、QIAzol(フェノールとカオトロピック剤とを含むが、CTABは含まない)を使用する対照標準プロトコールにしたがって、本発明にしたがって(ここでは、CTABをそのホモジネートに添加する)、および先行技術(ここでは、フェノールとCTABだけが使用され、カオトロピック剤は使用されない(例えば、EP1219707を参照のこと))にしたがって行った。この実施例は、カオトロピック剤とフェノールとを含む酸性変性組成物の陽イオン性界面活性剤との組み合わせが、試料(特に、組織試料のような難しい試料)から、DNA混入物質の量を減らしながら、純粋なRNAを効率よく単離するために重要であることを示している。上記RNAを、2種類の方法(沈殿による方法、ならびにシリカメンブレンを含むRNAeasyミニカラム(Qiagen)を使用した精製による方法)を使用してRNAを含む水相から単離した。
【0132】
6.1.QIAzolを使用してRNAを単離するために、RNAを含む水相を以下のようにして得た:
1.この実験のために、2×100mgの、RNAlaterにより安定化した脾臓および肺組織をTissueRuptorを使用して9mlのQiazol試薬中でホモジナイズした。
【0133】
2.ホモジネートを、2mlのエッペンドルフチューブ上の900μlのアリコート、または1000μlのアリコート中のいずれかに分けた。
【0134】
3.100μlのQIAGENバッファBB(1%のCTABと塩とを含む)をそれぞれ、900μlの試料に添加した。QIAzolだけを使用する対照標準法については、界面活性剤は添加しなかった。180μlのクロロホルムを全ての試料に対して添加し、ボルテックスし、続いて、室温で2〜3分間インキュベートした。その後、その試料を、4℃にて12,000×gで15分間遠心分離し、得られた水相を新しいエッペンドルフチューブに移した。
【0135】
6.2.RNAを単離するためのRNAを含む水相を、EP1219707による方法を使用して以下のようにして得た:
1.2×100mgの、RNAlaterにより安定化した肺および脾臓組織を、8mlのフェノール(pH4.3)、2mlの10%のCTAB、500μlの2Mの酢酸ナトリウム(pH4.0)、9.48mlのRNaseを含まない水を含む、それぞれ9mlの溶液中でホモジナイズした。
【0136】
2.その後、ホモジネート(1000μl)を2mlのエッペンドルフチューブに移した。上記ホモジネートにおける組織の量は他の方法と同じとした。200μlのクロロホルムを添加し、続いてボルテックスし、室温で2〜3分間インキュベートした。その後、その試料を、4℃にて、12,000×gで15分間遠心分離した。
【0137】
3.水相を新しいエッペンドルフチューブに移し、さらなる処理まで、−20℃で一晩保存した。
【0138】
6.3.沈殿によるRNAを含む水相からのRNAの単離
6.1および6.2にしたがって得た水相を、以下の通りに同じようにさらに処理した:
1.500μlのイソプロパノールを添加し、混合し、室温で10分間インキュベーションし、続いて、4℃にて12,000×gで15分間の遠心分離工程を行うことにより、RNAを沈殿させた。
【0139】
2.その上清を廃棄し、RNAペレットを、1mlの75%のエタノールを添加し、ボルテックスし、続いて4℃にて7500×gで5分間遠心分離することにより1回洗浄した。
【0140】
3.その上清を廃棄し、ペレットを風乾させ、60℃で10分間、30μlのRNAseを含まない水に再度懸濁させた。
【0141】
4.得られたRNAをNanodrop(ThermoScientific)を使用して定量化した。表19を参照のこと。
【0142】
【表18-1】
【0143】
【表18-2】
その結果は、フェノールとCTABとを使用し、カオトロピック剤を使用しないEP1219707にしたがう方法が、組織試料からRNAを単離するためには適していないことを示している。
【0144】
6.4.RNeasyミニカラム(Qiagen)を使用することによるRNAを含む水相からのRNAの単離:
水相は、6.1および6.2において上に記載したとおりに得た。その後、この水相を以下のように処理した:
1.水相を1.5倍容積の無水エタノールと混合し、RNeasyミニカラム(Qiagen)上に移し、8,200×gで15秒間遠心分離した。続いてこれを700μlのRWTバッファ(Qiagen)を用い、その後、8,200×gで15秒間遠心分離して洗浄した。
【0145】
2.その後、そのカラムを、500μlのRPEバッファ(Qiagen)を用いて2回、それぞれ8200gで15秒間および2分間洗浄し、続いて最大速度で1分間の最後の遠心分離工程を行った。
【0146】
3.結合したRNAを、8,200gで1分間の遠心分離により30μlのRNaseを含まない水に溶離させた。上記RNA濃度を、NanoDrop(ThermoScientific)を使用して分光学的に決定した。表19を参照のこと。
【0147】
【表19】
6.5.単離されたRNA中のゲノムDNA含量の決定
6.3または6.4にしたがって単離したRNA中のゲノムDNA混入物質の含量を評価するために、以下の工程にしたがってqRT−PCRを行った:
1.脾臓由来のRNA試料をおよそ30ng/μlに希釈し、肺由来のRNA試料は約10ng/μlに希釈した。
【0148】
EP1219707にしたがってフェノール調合物を使用して調製したRNA試料は、その後のqRT−PCRのためには希釈しなかった。
【0149】
2.qRT−PCRを、2μlのRNA試料を鋳型として用い、20μlの反応容積中でそれぞれ10ピコモルのプライマーおよびプローブ(PGK1プライマーミックス、PGK1プローブ)を用いて「QuantiFastプローブRT PCRマスターミックス」を使用してRotoGene QリアルタイムPCR機器(Qiagen)で行った。数回の独立したqRT−PCR反応をそれぞれの試料について行った。サイクル条件は以下のとおりとした:
(1)10分間、50℃で
(2)5分間、95℃で
(3)10秒間、95℃で
(4)30秒間、60℃で、工程(3)、(4)を40回繰り返す。
【0150】
Ct値およびΔCt値の平均を表20に示す。
【0151】
【表20】
明らかであるように、単離された(純粋な)RNAの量を増やしつつ、単離されたRNA中のDNAの量のかなりの低減をもたらす最良の結果は、本発明による方法を用いて達成される。