(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6096665
(24)【登録日】2017年2月24日
(45)【発行日】2017年3月15日
(54)【発明の名称】試薬容器
(51)【国際特許分類】
G01N 35/02 20060101AFI20170306BHJP
G01N 35/00 20060101ALI20170306BHJP
G01N 37/00 20060101ALN20170306BHJP
【FI】
G01N35/02 A
G01N35/00 C
!G01N37/00 101
【請求項の数】7
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-534626(P2013-534626)
(86)(22)【出願日】2012年7月10日
(86)【国際出願番号】JP2012067552
(87)【国際公開番号】WO2013042435
(87)【国際公開日】20130328
【審査請求日】2015年6月1日
(31)【優先権主張番号】特願2011-204327(P2011-204327)
(32)【優先日】2011年9月20日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005359
【氏名又は名称】富士紡ホールディングス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000590
【氏名又は名称】特許業務法人 小野国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】井上 雅偉
(72)【発明者】
【氏名】麻生川 稔
(72)【発明者】
【氏名】三品 喜典
【審査官】
長谷 潮
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2009/035062(WO,A1)
【文献】
特開2006−335366(JP,A)
【文献】
特表2007−500850(JP,A)
【文献】
特開昭63−191061(JP,A)
【文献】
特表平07−503794(JP,A)
【文献】
特表2005−512071(JP,A)
【文献】
国際公開第2008/038653(WO,A1)
【文献】
特表2005−531774(JP,A)
【文献】
特表2007−518994(JP,A)
【文献】
特開2005−096866(JP,A)
【文献】
国際公開第2006/079082(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 35/00−37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
底部と、該底部周縁から立設された周壁部と、上方に開口し、深さが深くなるに従い内周壁の内径が小さくなるように形成された収容部と、該収容部の開口を封止する延伸性を有するフィルムと、該収容部内底面より容器本体の底部に貫通形成された排出路と、該排出路出口を封鎖するように底部より下方に突出して形成された突起部とを有する試薬容器であって、前記収容部の深さに対する内径の小さくなる割合である内径収縮率は、前記収容部の内壁下部における内径収縮率が、内壁上部における内径収縮率に対して大きくなるよう形成され、前記突起部の周縁には厚膜部と該厚膜部より肉薄に形成された薄膜部よりなる破断部が形成され、前記突起部は、前記収容部側に向けて前記試薬容器外より押圧されたとき、前記破断部が破断し、該突起部が前記排出路内へ挿入されるとともに排出路内に留置され、前記排出路出口の封鎖状態が開放されるように構成され、前記フィルムは、前記排出路出口の封鎖状態が開放された状態で、前記収容部側に向けて外部より加圧されたときに、該収容部に収容された内容物を排出させるように、該収納部の内壁に沿って膨張可能であることを特徴とする試薬容器。
【請求項2】
前記薄膜部が、前記突起部の全周縁の長さに対し、連続して1/4以上の長さになるよう形成されていることを特徴とする請求項1に記載の試薬容器。
【請求項3】
前記薄膜部は前記突起部の周縁に複数箇所設けられ、そのうちの少なくとも1つが突起部の全周縁の長さに対し連続して1/4以上の長さになるよう形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の試薬容器。
【請求項4】
前記薄膜部の厚さが0.03<t1<0.1mmの範囲に形成され、厚膜部の厚さが0.06<t2<0.2mmの範囲に形成されているとともに、薄膜部と厚膜部の幅が0<w≦1mmの範囲に形成されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の試薬容器。
【請求項5】
前記排出路が容器本体の中心軸より周壁側のいずれかの方向に偏芯させて形成されていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の試薬容器。
【請求項6】
前記周壁部の上端にはフランジ片が突出して形成され、該フランジ片の上面に延伸性を有するフィルムを貼付することにより容器開口部を封止したことを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の試薬容器。
【請求項7】
前記周壁周囲のフランジ片の下面に環状凸部を設けたことを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項に記載の試薬容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体・粉体・気体状の試薬等を封入する容器に関し、更に詳細には、底部の突起片を押圧することで排出口が開封され、内容物を確実に排出可能な試薬容器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、1枚のマイクロチップ上に充填容器や微細流路を設け、サンプルや液体試料を制御して送液・反応させ、遺伝子分析、血液検査などを行う種々の送液機構や方法が研究されている。
【0003】
かかる分析・検査においては、サンプルや試料のコンタミネーションや、試料注入ミス、試薬量ミスなどの人為的ミスを防ぐことが重要であり、とりわけ、DNA鑑定などに使用される場合においては、試料を分析機器に注入することの正確性・確実性が要求される。かかる課題を解決するために、特許文献1では試料をマイクロチップに注入するための試料充填装置が開示されている。このものは、試料が充填された試料室を有する試料パッケージを試料充填装置に装着し、試料室に設けられた突起部に外力を加えることにより、底部の一部が開放されて試料が排出されるというものである。
【0004】
この試料充填装置は、試料のコンタミネーションや、試料注入ミス、試薬量ミスなどの人為的ミスを防ぐという点において効果が認められるものであるが、試料の排出という点において下記の課題を有するものであった。
【0005】
すなわち、このタイプの試薬容器においては、特許文献1の
図4(c)に示すように、圧縮空気により被膜を膨らませて試料を外部へ排出する作業の際に、無理な延伸により被膜の一部が破断することがあり、試料を十分に外部に排出できないおそれがあった。
【0006】
更に、分析に使用する試薬量が少量の場合には、試料室内のとりわけ側壁と底部との入れ角部分に試薬液が残留する場合があり、分析や検査結果に影響を及ぼすおそれがある。そこで、少量の試薬でも確実に排出することができ、容器内に試薬が残留しない試薬容器が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】再表2009/035062
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで本発明は、従来の試料容器のかかる欠点を克服し、少量の試薬を正確かつ確実に排出することが可能な試薬容器の提供をその課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記課題を解決するものであり、底部と、該底部周縁から立設された周壁部と、上方に開口し、深さが深くなるに従い内周壁の内径が小さくなるように形成された収容部と、該収容部の開口を封止するフィルムと、該収容部内底面より容器本体の底部に貫通形成された排出路と、該排出路出口を封鎖するように底部より下方に突出して形成された突起部とを有する試薬容器であって、前記突起部の周縁には厚膜部と該厚膜部より肉薄に形成された薄膜部よりなる破断部が形成され、該突起部を容器外より押圧することにより該破断部が破断し、突起部が排出路内へ挿入され該出口の封鎖状態が開放されることを特徴とする試薬容器である。
【発明の効果】
【0010】
本発明にかかる試薬容器は、試薬の排出口が確実に開封されるとともに、試薬収容部をすり鉢状に形成することで少量の試薬であっても正確に排出することができ、容器内の試薬の残留が生じるおそれがない。さらに、収容部内の試薬を押し出す際のフィルムの破断を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図5】(a)本発明の試薬容器の使用態様を表す模式図。(b)本発明の試薬容器の使用態様を表す模式図。
【
図6】(a)本発明の試薬容器の薄膜部と厚膜部の異なる態様を表す模式図。(b)本発明の試薬容器の薄膜部と厚膜部の異なる態様を表す模式図。(c)本発明の試薬容器の薄膜部と厚膜部の異なる態様を表す模式図。(d)本発明の試薬容器の薄膜部と厚膜部の異なる態様を表す模式図。(e)本発明の試薬容器の薄膜部と厚膜部の異なる態様を表す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の試薬容器の実施態様を、図面に基づいて具体的に説明する。なお、本発明はこれら実施態様に何ら制約されるものではない。
【0013】
図1は本発明の試薬容器の側面図、
図2は本発明の試薬容器の底面図、
図3は本発明の試薬容器のA−A断面図、
図4は同B−B断面図である。図中、1は容器本体、2は突起部、3はフランジ片、4はフィルム、11は底部、12は周壁部、13は収容部、14は排出路、15は上部内壁、16は下部内壁、17は排出路出口、21は薄膜部、22は薄膜部、23は厚膜部、31は環状凸部をそれぞれ示す。
【0014】
各図に示すように、本発明の試薬容器は、板状のフランジ片3より下方に突設された容器本体1を有し、その容器本体1内には、試薬等を収容可能に形成された収容部13と、収容部13より容器底部11へ貫通形成された排出路14とを備えている。そして、内容物の収容時には、収容部13の上部開口がフィルム4によって封止されるとともに、排出路14出口は突起部2によって封鎖されている。以下、本実施態様の試薬容器の具体的構成について詳述する。
【0015】
本実施態様の試薬容器の容器本体1は、底部11と、底部11の周縁から立設された周壁部12により、ほぼ円柱状に近い逆円錐台形状に形成されており、周壁部12の上端からは、1枚の板状のフランジ片3が水平方向に延設されている。容器本体1内に設けられた収容部13は、上方に開口し、深さが深くなるに従い内壁の内径が小さくなるように、いわゆるすり鉢状に形成されている。かかる収容部13の深さは、容器本体1の高さに対し、およそ1/2程度になるよう形成されている。このとき、収容部13の深さに対する内径の小さくなる割合、すなわち、深さに対する内径収縮率は一定としても良いが、本実施態様のように収容部13のおよそ上半分と下半分とでその収縮率を変化させ、上部内壁15に対し、下部内壁16の内径収縮率が大きくなるように形成してよい。このように、収容部13の上半分に対し下半分の収縮率を大きくすることで、後述する内容物の排出方法においてフィルム4が内壁に沿って無理なく延伸するため、その破断を防ぐことができ、さらに収容部13内に試薬が残留しにくくなるため、好ましい。また、本実施態様のように、内壁の上部と下部とで内径収縮率を二分するのではなく、内壁の上部から下部にかけて連続的に内径収縮率が大きくなるような、いわゆるお椀状としてもよい。
【0016】
容器本体1の下部半分には筒状の排出路14が縦に貫通形成されており、その入口は収容部13内の底面、いわゆるすり鉢状の底に当たる部分の中央に設けられ、その出口は容器本体1の底部11の中央に設けられている。したがって、本発明の試薬容器の試薬を収容、排出する部分は、すり鉢状に形成された収容部13とその下部に設けられ排出路14により、いわゆる漏斗状を呈している。そして、排出路出口17には、その出口を封鎖するように突起部2が設けられている。かかる排出路14の内径について特に制限はないが、本実施態様では容器本体1の外径のおよそ1/3程度に形成されている。このように、排出路14の内径を容器本体1に対して1/3程度とすることにより、排出路14の周囲が肉厚となり、突起部2を下方から押圧したときに、容器本体1や容器本体底部11が撓むことがなく、よって、破断部に集中すべき応力も分散しないため好ましい。
【0017】
突起部2は、容器本体1の底部11より下方に突出する、先端が丸みを帯びた円錐台形状に形成されており、その周縁には、薄膜部21、22と厚膜部23よりなる破断部が形成され、かかる破断部により周囲の底部11と接合されている。
図2の底面図において、厚膜部23は突起部2の上下および左の周縁に計3箇所設けられている。そして、薄膜部22は上下の厚膜部23と左の厚膜部23の間に2箇所設けられ、また、薄膜部21は上下の厚膜部23より右側の周縁に1箇所設けられており、薄膜部で計3箇所設けられている。薄膜部21、22は厚膜部23に対して肉薄になるよう形成され、とりわけ薄膜部21は薄膜部22よりも長く、突起部2の全周縁のおよそ1/2に連続して形成されているため、破断部の中では最も破れやすくなっている。薄膜部21、22の厚さt1と厚膜部23の厚さt2は、突起部2を下方より押圧したときに薄膜部より破断を開始する厚さであれば特に制限はないが、破断しやすさとシール性を考慮し、薄膜部が0.03<t1<0.1mm、厚膜部が0.06<t2<0.2mmの範囲であって、t1<t2となるように形成するのが好ましい。また、薄膜部21、22と厚膜部23の幅は、ともに0<w≦1mmの範囲であることが好ましい。なお、薄膜部21、22と厚膜部23のそれぞれの長さは、薄膜部21が最初に破断し始めれば特に制限はないが、突起部2の全周縁の長さに対し、薄膜部21が連続して1/4以上を占めるように形成すれば、薄膜部21より無理なく破断するため、好ましい。それに対し、厚膜部23の長さLは、0.06<Lmmであることが好ましい。
【0018】
薄膜部と厚膜部の数および位置は特に制限はないが、本実施態様のように薄膜部と厚膜部をそれぞれ3箇所ずつ設け、そのうち1箇所の薄膜部を、突起部2の全周縁長さに対して連続して1/4以上を占めるよう形成することにより、排出路出口17の開封しやすさと突起部2によるシール性が両立するため好ましい。また、薄膜部と厚膜部の数および位置の異なる実施態様としては、
図6(a)〜(e)に示すように、1ないし4箇所の厚膜部23を突起部2の周縁に設け、薄膜部21が突起部2の全周縁の長さに対し連続して1/4以上を占めるように形成してもよい。
【0019】
突起部2は、その突出高さの最も高くなる部分が、容器本体1の底部11中心部になるように配置されており、かかる構成により、突起部2を下方より押圧したときにその応力が突起部2周縁に均等に分散し、確実に薄膜部21部分から破断する。また、突起部2は、本実施態様では先端が丸みを帯びた円錐台形状に形成されているが、形状はこれに限らず、底面視で楕円を含む円形、三角形、台形を含む四角形などとしてもよい。
【0020】
突起部2は、周囲の破断部が完全に破断されると排出路14内に押し込まれることになる。このように、突起部2が排出路14内に挿入されることにより、排出路出口17の封鎖状態が開放され、試薬の排出が可能となる。また、挿入された突起部2は排出路14内に留置するので、試薬の排出作業中に元の位置に戻ることにより出口を塞いで排出を妨げることもなく、また、フィルム4の収容部13内の延伸を阻害することもない。なお、本実施態様では、排出路14は容器本体1の中心軸に位置するように形成されているが、必ずしもこの位置に限定されず、中心軸より周壁側のいずれかの方向に偏芯させて形成してもよい。このように、あえて排出路14を容器本体1の中心に形成しない利点は以下の通りである。すなわち、本容器より試薬を排出する際、
図5(b)に示すように、フィルム4の上から空気圧をかけてフィルム4を収容部13内に膨張させ、内容物を強制的に排出させる作業を行うが、空気圧とフィルム4の延伸性の関係により、収容部13内に膨張したフィルム4が更に排出路14内にまで入り込んで膨張することがある。このとき、既に収容部13内で延伸しているフィルム4は、収容部13の底面の中央において最も伸びきった状態となっているため、これ以上の延伸によりフィルム自体が破断するおそれがある。その点、排出路14を容器本体1の中心よりずらして形成しておけば、フィルム4のまだ伸びきっていない部分に排出路14の入口が位置するため、さらに排出路14内にまでフィルム4が膨張することがあっても破断のおそれがない。よって、排出作業中のフィルムの破断という事象を防ぐことができる。
【0021】
容器の材質については、試薬を保存するに必要十分なシール性と、破断部が容易に破断されうる程度の硬度のものであれば特に制限はされないが、これらの条件を満たすものとして、EVA樹脂、低密度PE等を好適に使用することができる。
【0022】
また、収容部13の開口を封止するフィルム4については、酵素やアルコールなどの特定の薬剤に対するバリア性を有し、ある程度の延伸性を有するものが好ましく、具体的には、EVOHフィルム、PEフィルム、LLDPEフィルムなどを好適に使用することができる。また、さらにガスバリア性を向上させる場合は、上記フィルムにバリア機能を有するフィルムを剥離可能に貼り合わせて、使用時に剥がしてもよい。こうしたバリア機能を有するフィルムとしては、たとえば、アルミフィルムなどを好適に使用することができる。
【0023】
図5は、本発明の試薬容器の使用状態の態様を表したものである。本発明の試薬容器は、試薬Xを充填した状態でマイクロチップ等分析用のカートリッジ5に装填される。カートリッジ5には、試薬容器を装填することができる凹部51が形成されており、凹部51の底部より試薬を送液するための流路53が延設されている。かかる凹部51は、容基本体1の周壁部12の高さと同一か、もしくはほぼ同一の深さに形成されている。以下に、試薬容器の装填作業の一連の流れを説明する。
【0024】
まず始めに、容器本体1をそのまま、あるいは、フィルム4にバリア機能を有するフィルムが貼付されている場合は、そのバリア性フィルムを剥がして底部11側より凹部51内に挿入する。このとき、突起部2の先端が凹部51の底部に当接するため、容器本体1は完全に挿入されず、
図5(a)に示すように、底部11と凹部51との間に空隙が生じる。次に、上部よりカバー部材等を被せて試薬容器に対して下方向の圧力をかける。かかる押圧により、凹部51の底部に当接している突起部2に上方向の応力が働き、周縁に形成された破断部のうち、まず、薄膜部21が破断を開始する。そのまま押圧を続けると、続けて薄膜部22が破断し、最終的に厚膜部23が破断することにより破断部の破断が完了し、突起部2は底部11より切り離されて、排出路14内に挿入される。そして、容器本体1は凹部51内に更に深く挿入し、
図5(b)示すように、環状凸部31がカートリッジ5の上面52に接した時点で装填作業は完了する。本実施態様では、破断部が完全に破断することにより突起部2は底部11より切り離され排出路14内にほぼそのままの姿勢を保って挿入されるが、たとえば、破断部の中で一部の厚膜部のみ残して破断し、かかる厚膜部を支点として突起部2を排出路14内に傾けながら挿入して排出路出口を確保してもよい。
【0025】
このように、試薬容器の分析機器への装填時に破断部が破断することにより、突起部2による排出路出口17の封鎖状態が解除され、図の矢印のように、排出路14と突起部2との隙間を通って、内容物の試薬が容器外へと排出される。なお、内容物の排出は自然の流出に任せてもよいが、収容部13に試薬を残留させずにより効果的に排出するために、
図5(b)示すように、フィルム4の上から空気圧をかけてフィルム4を収容部13内に膨張させ、内容物を強制的に排出させることが好ましい。空気圧をかけられたフィルム4は、収容部13内の形状に沿う形で膨張するが、このようにフィルム4が無理なく延伸するため、膨張時に破断することを防ぐことが出来るとともに、収容部13内の試薬を余すことなく排出することができる。
【0026】
また、本実施態様の試薬容器には、フランジ片3の下面に周壁部12を二重に囲む形で環状凸部31が形成されている。この環状凸部31は試薬容器を凹部51内に挿入したときにその頂部がカートリッジ5の天面52に当接するように形成されている。かかる環状凸部31により、周壁部12と凹部51の間の空隙から内容物が滲出しても、この部分においてシールされるため、Oリングなどのシール部材を用いることなく試薬のコンタミネーション等を効果的に防ぐことができる。さらに、かかるシール効果をより高めるために、カートリッジ5の天面にシリコンフィルム等の弾性素材からなるフィルム(図示せず)を貼付してもよい。かかる弾性フィルムを貼付することにより、試薬容器1をカートリッジ5に装填した際、環状凸部31の頂部が弾性フィルムに食い込んで、環状凸部31の密閉性を更に向上させることができる。また、環状凸部31とは別に、また、環状凸部31と併せて、試薬容器1の周壁部12の外周面に外方向に突出する環状凸部(図示せず)を設けてもよい。かかる環状凸部が凹部51の内周壁に当接することにより、試薬容器1と凹部51の間のわずかな空隙から内容物が滲出してもこの部分においてシールされるため、好ましい。
【0027】
本発明の試薬容器1は、複数の容器1を連続して設けたものとしてもよく、その場合は、フランジ片3によって隣接する容器と連続させればよい。たとえば、8連容器とする場合、8つの試薬容器1が1枚のフランジ片3によって結合する構成とし、あらかじめその中の7つの容器には試薬を充填し、残りのひとつには、採取したサンプルを充填するなどして使用することができる。
【0028】
試薬Xが液体状の内容物である場合、試薬Xと、突起部2と凹部51の底部と底部11と周壁部12の各々の表面部分との濡れ性を制御することにより、試薬Xの吐出時に発生する空気泡の局在を制御することができる。例えば、突起部2と凹部51底部と底部11のそれぞれの表面を、試薬Xに対する濡れ性を良好な状態に保つことにより、吐出された試薬Xが、突起部2と凹部51底部と底部11の表面を接触角が小さな状態で展開する。これによって、突起部2と凹部51底部と底部11によって構成される間隙に空気泡が発生すること無く試薬Xを充填することができる。その結果、空気泡を発生させることなく流路53を通過せしめることより、試薬Xを次の試薬槽に送液が可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明の試薬容器は、液体状の内容物にもっとも好適に利用可能であるが、内容物が液体以外のもの、たとえば、粉体状、気体状のものに利用することも可能である。さらに、外部からの押圧によって確実に内容物を排出できる特性を利用できる用途であれば、分析・検査機器への試薬の注入に限らず幅広く使用することができる。
【符号の説明】
【0030】
1 … … 容器本体
2 … … 突起部
3 … … フランジ片
4 … … フィルム
5 … … カートリッジ
11 … … 底部
12 … … 周壁部
13 … … 収容部
14 … … 排出路
15 … … 上部内壁
16 … … 下部内壁
17 … … 排出路出口
21 … … 薄膜部
22 … … 薄膜部
23 … … 厚膜部
31 … … 環状凸部
51 … … 凹部
52 … … 天面
53 … … 流路
X … … 試薬