特許第6096695号(P6096695)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6096695-乗りかご内挙動検出装置 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6096695
(24)【登録日】2017年2月24日
(45)【発行日】2017年3月15日
(54)【発明の名称】乗りかご内挙動検出装置
(51)【国際特許分類】
   B66B 3/00 20060101AFI20170306BHJP
   B66B 5/00 20060101ALI20170306BHJP
   B66B 11/02 20060101ALI20170306BHJP
   G06T 7/20 20170101ALI20170306BHJP
   H04N 7/18 20060101ALI20170306BHJP
   G08B 25/00 20060101ALI20170306BHJP
【FI】
   B66B3/00 P
   B66B5/00 F
   B66B11/02 P
   G06T7/20 A
   H04N7/18 D
   G08B25/00 510M
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2014-56757(P2014-56757)
(22)【出願日】2014年3月19日
(65)【公開番号】特開2015-178405(P2015-178405A)
(43)【公開日】2015年10月8日
【審査請求日】2016年2月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000232955
【氏名又は名称】株式会社日立ビルシステム
(74)【代理人】
【識別番号】110000442
【氏名又は名称】特許業務法人 武和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉村 卓馬
(72)【発明者】
【氏名】國貞 拓也
【審査官】 中田 誠二郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−63416(JP,A)
【文献】 特開2009−35375(JP,A)
【文献】 特開2013−56754(JP,A)
【文献】 特開2013−119461(JP,A)
【文献】 特開2008−195495(JP,A)
【文献】 特開2000−335854(JP,A)
【文献】 特開平9−97337(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 3/00
B66B 5/00
B66B 11/02
G06T 7/20
G08B 25/00
H04N 7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス透過部を有したエレベータの乗りかご内にカメラを設置し、前記カメラの画像データを使用して乗客の暴れや滞留を検出する乗りかご内挙動検出装置において、
前記乗りかごのドアが閉じたときにドア閉検出信号を出力するドア閉検出手段と、前記ドア閉検出手段によりドア閉検出信号を受けたとき前記乗りかご内を撮影した画像データから前記ガラス透過部よりも手前側の被写体画像データを抽出する画像入力手段と、前記画像入力手段が抽出した所定時間内の前記被写体画像データから差分画像データを生成する挙動画像作成手段と、前記被写体画像データと前記差分画像データとの比較から暴れ検知と滞留検知とを判別する挙動検知手段と、前記挙動検知手段が暴れ検知または滞留検知の少なくとも一方を検知したときに報知する報知手段とを設けたことを特徴とする乗りかご内挙動検出装置。
【請求項2】
前記カメラとしてステレオカメラを用いたことを特徴とする請求項1に記載の乗りかご内挙動検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベータ乗りかご内の人物の暴れや倒れ等の異常行動を検出するための乗りかご内挙動検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エレベータ乗りかご内の人物の暴れや倒れ等を検出する乗りかご内挙動検出装置として、乗りかご内に設置された防犯カメラからの映像の1コマ1コマの差分を抽出し、一定の時間の差分が大きい場合は暴れ行動と判定し、乗りかご内の人物に対し自動で注意喚起を行ったり、一定の時間、乗りかご内の人物の動き成分が少ない場合は倒れ状態と判定し、ドアを開けたりブザーで乗りかご外に危険を伝えることが知られている。しかし、防犯カメラの付近に背の高い人物が居ると、背の高い人物によって防犯カメラの映像に死角が生まれ、死角の先の状態を検出できない他に、防犯カメラに近くなることで、多少の動きであっても大きな差分を抽出してしまうことから、挙動検出装置の検出漏れや誤検出に繋がってしまう。この問題を解決するために、乗りかご内に、複数の防犯カメラを、視野が重なるように設置し、これら複数の防犯カメラの映像から、任意の視点での仮想映像を生成し、防犯カメラの死角をなくしたかご内映像監視装置が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−15094号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の乗りかご内挙動検出装置によれば、乗りかご内を任意の視点で監視して防犯カメラの死角をなくすことができるが、ドアにガラス窓が付いているエレベータ乗りかごや、乗りかごの側面や背面がガラス状となっている展望用エレベータ等では、ガラス透過部を通して外部の変化を動き成分として検出するため、外部の変化が大きい場合には異常と判断し、誤検出が発生してしまう。
【0005】
本発明の目的は、ガラス透過部を有した乗りかごを使用しても、誤検出をすることなく暴れ検知または滞留検知を行えるようにした乗りかご内挙動検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は上記目的を達成するために、ガラス透過部を有するエレベータの乗りかご内にカメラを設置し、前記カメラの画像データを使用して乗客の暴れや滞留を検出する乗りかご内挙動検出装置において、前記乗りかごのドアが閉じたときにドア閉検出信号を出力するドア閉検出手段と、前記ドア閉検出手段によりドア閉検出信号を受けたとき前記乗りかご内を撮影した画像データからガラス透過部よりも手前側の被写体画像データを抽出する画像入力手段と、前記画像入力手段が抽出した所定時間内の前記被写体画像データから差分画像データを生成する挙動画像作成手段と、前記被写体画像データと前記差分画像データとの比較から暴れ検知と滞留検知とを判別する挙動検知手段と、前記挙動検知手段が暴れ検知または滞留検知の少なくとも一方を検知したときに報知する報知手段とを設けたことを特徴とする。
【0007】
上述の構成によれば、ガラス透過部を有した乗りかごを使用しても、ガラス透過部よりも乗り場側における被写体や、景色の変化などの影響を容易に除くことができ、また乗りかごのドアが閉じた状態での画像データを使用して誤検出の要因を除去し、乗りかごの外部での大きな変化による誤検出を防止して精度の高い暴れ検知または滞留検知を行うことができる。
【0008】
また本発明は、上述の構成に加えて、前記カメラとしてステレオカメラを用いたことを特徴とする。
【0009】
上記の構成によれば、一台のステレオカメラを使用した簡単な構成で、乗りかごのドアに設けたガラス透過部よりも乗り場側における被写体や、景色の変化などの影響を容易に除くことができ、また乗りかごのドアが閉じた状態での画像データを使用して誤検出の要因を除去し、乗りかごの外部での大きな変化による誤検出を防止して精度の高い暴れ検知または滞留検知を行うことができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明による乗りかご内挙動検出装置によれば、ガラス透過部を有する乗りかごにおいても、ガラス透過部よりも乗り場側における被写体や、景色の変化などの影響を容易に除くことができ、そうした外部での大きな変化による誤検出を防止して精度の高い暴れ検知または滞留検知を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施の形態による乗りかご内挙動検出装置の概略構成図である。
図2図1に示した乗りかご内挙動検出装置の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0013】
図1は、本発明の一実施の形態による乗りかご内挙動検出装置の概略構成図である。
【0014】
エレベータの乗りかご1には、ガラス窓などのガラス透過部2が付いたドア3が取り付けられており、乗りかご1内には防犯用のステレオカメラ4が設置されている。ここでステレオカメラ4は、ドア3を撮影する側の位置に配置されて乗りかご1内の撮影を行っている。図示を省略しているが、乗り場にも同様の乗り湯ドアが設置されている。
【0015】
ステレオカメラ4により撮影した場合、画像データから予め設定した距離内の画像データのみを抽出してかご内画像データを作成することができる。この特徴を生かして、ステレオカメラ4は撮影した画像データからガラス透過部2よりも手前側の画像データを抽出して新たなかご内画像データを作成し、この新たなかご内画像データを挙動検出装置5の画像入力手段6に出力するようにしている。
【0016】
画像入力手段6は、新たなかご内画像データを使用することになるため、ガラス透過部2よりもさらに遠方、つまりガラス透過部2よりも乗り場側における被写体や、外部の景色の変化の影響を除くことができる。また画像入力部6は、所定時間毎にステレオカメラ4から入力された新たなかご内画像データを取り込んでいるが、新たなかご内画像データのうちドア閉検出部7からドア閉検出信号が入力されているときのものだけを使用し、そこに被写体が存在するかどうかを判定し、被写体が存在する場合は、それを被写体画像データとして挙動画像作成部8に出力する。
【0017】
挙動画像作成部8は、画像入力部6から受け取った複数の被写体画像データを使用して被写体の動きに対応する被写体差分画像データを作成する。このとき、被写体に動きがあれば被写体差分画像データは生成され、被写体に動きが無ければ被写体作動画像データは生成されない。被写体差分画像データが生成された場合、被写体画像データと被写体差分画像データとを挙動検知部9に出力する。
【0018】
挙動検知部9は、挙動画像作成部8から入力された被写体画像データと被写体差分画像データとを比較して暴れに対応するかどうかを判定する。例えば、両データの大きさを比較し、被写体差分画像データの大きさが被写体画像データの大きさに対し、30%以上なら、暴れ検知と判定し報知部10に暴れ検知信号を出力する。
【0019】
一方、挙動検知部9は、被写体差分画像データに大きさがあるものの被写体差分画像データが所定時間を超えても余り被写体が動かない場合、滞留検知と判定する。例えば、10分を越えても、被写体差分画像データが所定の大きさが被写体画像データの大きさに対して5%未満の場合、乗りかご1から降車せずに被写体が移動せず、乗りかご内に滞留していると判断し、滞留検知と判定し報知部10に滞留検知信号を出力する。
【0020】
報知部10は、挙動検知部9から暴れ検知信号を受け取ったとき警報音を発生させ、図示しないエレベータの制御装置に信号を出力し、乗りかごを最寄り階に停止させドア3を開き、暴れている乗客の存在を報知することができる。一方、挙動検知部9から滞留検知信号を受信したとき報知部10は、警報音を発生させ、同様にエレベータを最寄り階に停止させてドア3を開き、滞留者の存在を報知することができる。
【0021】
次に、図2に示したフローチャートを用いて、上述した挙動検出装置の処理動作を説明する。
【0022】
挙動検出装置5の画像入力部6は、手順S1で、ドア閉検出部7からドア3のドア閉検出信号の有無を監視する。ドア閉検出信号の入力が無い場合、つまり乗りかご1のドア3が開いている状態では、手順S1の監視を継続する。一方、ドア閉検出信号の入力が有って乗りかご1のドア3が閉じられた場合、手順S2において、ステレオカメラ4からの新たな画像データを取り込み、ステレオカメラ4からガラス透過部2までの距離内の新たな画像データ内に被写体が存在しているかどうかを判定する。
【0023】
この判定の結果、新たな画像データ内に被写体が存在しなければ処理を終了する。しかし、手順S2での判定の結果、新たな画像データ内に被写体が存在すれば、被写体画像データとして挙動画像作成部8に出力する。これを受けた挙動画像作成部8は、手順3において、画像入力部6から入力された被写体画像データの差分画像である被写体差分画像データを作成し、被写体画像データと被写体差分画像データを挙動検知部9に出力する。
【0024】
手順S4において挙動検知部9は、挙動画像作成部8から入力された被写体画像データと被写体差分画像データを所定の閾値を用いて2値化して、2値化した画像部分の面積を比較し、その差の大きさが所定の割合、例えば30%以上の場合、暴れ検知と判定し報知部10に暴れ検知信号を出力する。
【0025】
暴れ検知信号を受信した報知部10は、手順S5において、暴れ検知の警報を鳴動し、エレベータの制御装置に信号を出力し処理を終了する。
【0026】
これに対して挙動検知部9は、手順S4の判定で、被写体画像データと被写体差分画像データとの2値化した画像部分の面積を比較して所定の割合、例えば、30%未満の場合、手順S6に進む。手順S6において、2値化した画像部分の面積を比較し所定の割合、例えば5%未満かどうかを判定する。その結果、所定の割合、例えば5%以上の場合、手順1から繰返し実施する。しかし、2値化した画像部分の面積を比較し所定の割合、例えば、5%未満の場合、手順7でタイマーをカウントアップする。
【0027】
次に、挙動検知部9は、手順8において、タイマーが所定の時限をカウントしたかどうか判定する。例えば10分をカウントアップしたかどうかを判定し、所定の時間を経過していない場合、確認のために手順1から処理を繰返し実施する。これに対して、手順S8の判定の結果、所定の時間を経過していた場合、滞留検知と判定し報知部10に滞留検知信号を出力する。
【0028】
滞留検知信号を受信した報知部10は、手順S9において、滞留検知の警報を鳴動し、エレベータの制御装置に信号を出力して処理を終了する。
【0029】
尚、本発明は、挙動検知部9における暴れ検知または滞留検知として上述した実施の形態で説明した方法に限定するものではない。また、乗りかご1内に設置したカメラとしてステレオカメラ4を使用しているが、単眼の防犯カメラを複数台を乗りかごに設置する構成としても良い。
【0030】
上述した本発明による乗りかご内挙動検出装置5は、ガラス透過部2を有したエレベータの乗りかご1内にカメラ4を設置し、カメラ4の画像データを使用して乗客の暴れや滞留を検出する乗りかご内挙動検出装置において、乗りかご1のドア3が閉じたときにドア閉検出信号を出力するドア閉検出部7と、ドア閉検出部7によりドア閉検出信号を受けたとき乗りかご1内を撮影した画像データからガラス透過部2よりも手前側の被写体画像データを抽出する画像入力部6と、画像入力部6が抽出した所定時間内の前記被写体画像データから差分画像データを生成する挙動画像作成部8と、被写体画像データと前記差分画像データとの比較から暴れ検知と滞留検知とを判別する挙動検知部9と、挙動検知部9が暴れ検知または滞留検知の少なくとも一方を検知したときに報知する報知部10とを設けたことを特徴とする。
【0031】
上述の構成によれば、ガラス透過部2を有した乗りかご1においても、ガラス透過部2よりも乗り場側における被写体や、景色の変化などの影響を容易に除くことができ、また乗りかご1のドア3が閉じた状態での画像データを使用して誤検出の要因を除去し、乗りかご1の外部での大きな変化による誤検出を防止して精度の高い暴れ検知または滞留検知を行うことができる。
【0032】
また本発明は、上述の構成に加えて、前記カメラとしてステレオカメラ4を用いたことを特徴とする。
【0033】
上記の構成によれば、一台のステレオカメラ4を使用した簡単な構成で、乗りかご1のガラス透過部2よりも乗り場側における被写体や、景色の変化などの影響を容易に除くことができ、乗りかご1の外部での大きな変化による誤検出を防止して精度の高い暴れ検知または滞留検知を行うことができる。
【符号の説明】
【0034】
1 乗りかご
2 ガラス透過部
3 ドア
4 ステレオカメラ
5 挙動検知装置
6 画像入力部
7 ドア閉検出部
8 挙動画像作成部
9 挙動検知部
10 報知部
図1
図2