特許第6096709号(P6096709)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6096709
(24)【登録日】2017年2月24日
(45)【発行日】2017年3月15日
(54)【発明の名称】燃料電池システム
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/04 20160101AFI20170306BHJP
   H01M 8/10 20160101ALI20170306BHJP
   H01M 8/0612 20160101ALI20170306BHJP
【FI】
   H01M8/04 N
   H01M8/10
   H01M8/06 G
【請求項の数】10
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2014-93828(P2014-93828)
(22)【出願日】2014年4月30日
(65)【公開番号】特開2015-211011(P2015-211011A)
(43)【公開日】2015年11月24日
【審査請求日】2016年1月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000220262
【氏名又は名称】東京瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】多久 俊平
【審査官】 武市 匡紘
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−170877(JP,A)
【文献】 特開2001−143733(JP,A)
【文献】 特開平08−029298(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/00−8/24
B01D 53/22
B01D 53/34−53/98
B01D 61/00−71/82
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料ガスを水蒸気改質する改質触媒と、前記改質触媒を加熱するバーナとを有し、水素ガスを含む燃料ガスを生成する燃料処理装置と、
前記燃料処理装置から供給される燃料ガスと、外部から供給される酸化ガスとを反応させて発電する固体高分子形の燃料電池スタックと、
筒状に形成されると共にその内側に前記燃料電池スタック及び前記バーナの少なくとも一方から排出され水蒸気を含む排ガスが流通する排ガス流路を形成する蒸留膜と、前記蒸留膜の周囲に環状に設けられると共に前記蒸留膜を透過する水蒸気が凝縮される凝縮空間を前記蒸留膜との間に形成する伝熱壁と、前記伝熱壁の周囲に環状に設けられると共に冷却流体が流通する冷却流体流路を前記伝熱壁との間に形成する外壁とを有する熱交換器と、
前記凝縮空間にて生成される凝縮水を回収し、該凝縮水を前記改質触媒及び前記燃料電池スタックの少なくとも一方に供給する凝縮水回収・供給部と、
を備える燃料電池システム。
【請求項2】
湯水を貯留する貯湯タンクをさらに備え、
前記冷却流体流路を流通する冷却流体は、前記貯湯タンクと前記冷却流体流路との間で循環する貯湯循環水である、
請求項1に記載の燃料電池システム。
【請求項3】
前記熱交換器を一つ備え、
前記排ガス流路には、前記燃料電池スタックの空気極及び前記バーナの両方から排出され水蒸気を含む排ガスが流通する、
請求項1又は請求項2に記載の燃料電池システム。
【請求項4】
前記熱交換器を一対備え、
一方の前記熱交換器における前記排ガス流路には、前記燃料電池スタックの空気極から排出され水蒸気を含む排ガスが流通し、
他方の前記熱交換器における前記排ガス流路には、前記バーナから排出され水蒸気を含む排ガスが流通する、
請求項1又は請求項2に記載の燃料電池システム。
【請求項5】
前記熱交換器を一対備え、
一方の前記熱交換器における前記排ガス流路には、前記燃料電池スタックの空気極及び前記バーナの両方から排出され水蒸気を含む排ガスが流通し、
他方の前記熱交換器における前記排ガス流路には、前記燃料電池スタックの燃料極から排出され水蒸気を含む排ガスが流通し、
前記バーナには、他方の前記熱交換器における前記排ガス流路から排出される排ガスがバーナガスとして供給される、
請求項1又は請求項2に記載の燃料電池システム。
【請求項6】
前記熱交換器を三つ備え、
第一の前記熱交換器における前記排ガス流路には、前記燃料電池スタックの空気極から排出され水蒸気を含む排ガスが流通し、
第二の前記熱交換器における前記排ガス流路には、前記バーナから排出され水蒸気を含む排ガスが流通し、
第三の前記熱交換器における前記排ガス流路には、前記燃料電池スタックの燃料極から排出され水蒸気を含む排ガスが流通し、
前記バーナには、第三の前記熱交換器における前記排ガス流路から排出される排ガスがバーナガスとして供給される、
請求項1又は請求項2に記載の燃料電池システム。
【請求項7】
前記熱交換器として、
前記排ガス流路に前記燃料電池スタックの空気極及び前記バーナの両方から排出され水蒸気を含む排ガスが流通する熱交換器、及び、前記排ガス流路に前記燃料電池スタックの燃料極から排出され水蒸気を含む排ガスが流通する前記熱交換器のうち少なくとも一方を備える、
請求項1又は請求項2に記載の燃料電池システム。
【請求項8】
前記熱交換器として、
前記排ガス流路に前記燃料電池スタックの燃料極から排出され水蒸気を含む排ガスが流通する熱交換器を少なくとも備え、
前記バーナには、前記熱交換器における前記排ガス流路から排出される排ガスがバーナガスとして供給される、
請求項7に記載の燃料電池システム。
【請求項9】
前記熱交換器として、
前記排ガス流路に前記燃料電池スタックの空気極から排出され水蒸気を含む排ガスが流通する熱交換器、前記排ガス流路に前記バーナから排出され水蒸気を含む排ガスが流通する熱交換器、及び、前記排ガス流路に前記燃料電池スタックの燃料極から排出され水蒸気を含む排ガスが流通する熱交換器のうち少なくとも一つを備える、
請求項1又は請求項2に記載の燃料電池システム。
【請求項10】
前記熱交換器として、
前記排ガス流路に前記燃料電池スタックの燃料極から排出され水蒸気を含む排ガスが流通する熱交換器を少なくとも備え、
前記バーナには、前記熱交換器における前記排ガス流路から排出される排ガスがバーナガスとして供給される、
請求項9に記載の燃料電池システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体高分子形の燃料電池スタックを備える燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池システムの分野においては、システム内部での排ガスに含まれる水蒸気を凝縮して生成した凝縮水(ドレン水)を、改質触媒や燃料電池スタックなどで再利用する技術が提案されている。このような燃料電池システムによれば、外部から改質触媒や燃料電池スタックへの給水が不要であるので、外部からの水を改質触媒や燃料電池スタックへ供給するための水供給施設を不要にできる。
【0003】
ところで、改質触媒や燃料電池スタックなどで凝縮水を再利用するためには、凝縮水から不純物を除去する必要がある。この不純物を除去する水処理装置としては、イオン交換樹脂を備えたものがある(例えば、特許文献1〜5参照)。
【0004】
しかしながら、このイオン交換樹脂を備えた水処理装置では、イオン交換樹脂カートリッジで吸着できる不純物の量に限りがある。このため、イオン交換樹脂カートリッジの交換や再生など定期的なメンテナンスが必要となり、メンテナンスコストが増加する。
【0005】
そこで、定期的なメンテナンスを不要にする技術として、電気脱イオン式の水処理装置が提案されている(例えば、特許文献6参照)。この電気脱イオン式の水処理装置では、不純物を除去するための樹脂を電気で再生させるため、定期的なメンテナンスが不要になるという利点がある。
【0006】
ところが、電気脱イオン式の水処理装置では、不純物を除去するための樹脂を再生させるために電力が必要になる。従って、燃料電池システムにて発電された電力を電気脱イオン式の水処理装置における樹脂の再生のために使用した場合には、燃料電池システムの発電効率が低下する。
【0007】
なお、水処理装置に関するその他の技術としては、特許文献7,8に記載の蒸留膜を用いたものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2013−243146号公報
【特許文献2】特許第5371554号公報
【特許文献3】特開平8−17457号公報
【特許文献4】特開平9−231990号公報
【特許文献5】特開2011−29144号公報
【特許文献6】特許4461553号公報
【特許文献7】特公昭49−45461号公報
【特許文献8】特開2011−167628号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、メンテナンスコストの低減及び発電効率の向上を実現できる燃料電池システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の燃料電池システムは、原料ガスを水蒸気改質する改質触媒と、前記改質触媒を加熱するバーナとを有し、水素ガスを含む燃料ガスを生成する燃料処理装置と、前記燃料処理装置から供給される燃料ガスと、外部から供給される酸化ガスとを反応させて発電する固体高分子形の燃料電池スタックと、筒状に形成されると共にその内側に前記燃料電池スタック及び前記バーナの少なくとも一方から排出され水蒸気を含む排ガスが流通する排ガス流路を形成する蒸留膜と、前記蒸留膜の周囲に環状に設けられると共に前記蒸留膜を透過する水蒸気が凝縮される凝縮空間を前記蒸留膜との間に形成する伝熱壁と、前記伝熱壁の周囲に環状に設けられると共に冷却流体が流通する冷却流体流路を前記伝熱壁との間に形成する外壁とを有する熱交換器と、前記凝縮空間にて生成される凝縮水を回収し、該凝縮水を前記改質触媒及び前記燃料電池スタックの少なくとも一方に供給する凝縮水回収・供給部と、を備える。
【0011】
この燃料電池システムでは、燃料ガス及び酸化ガスが燃料電池スタックに供給されると、この燃料電池スタックにおいて燃料ガス及び酸化ガスが反応し発電する。この発電に伴い燃料電池スタック及びバーナの少なくとも一方からは、水蒸気を含む排ガスが排出され、この排ガスは、熱交換器に供給される。この熱交換器では、蒸留膜によって排ガス流路が形成されており、この蒸留膜と伝熱壁との間には、凝縮空間が形成され、伝熱壁と外壁との間には、冷却流体が流通する冷却流体流路が形成されている。従って、排ガス流路に供給された排ガスに含まれる水蒸気は、蒸留膜を透過して凝縮空間に移動し、伝熱壁の表面上で熱を放出し凝縮される。そして、このようにして凝縮空間にて生成された凝縮水(蒸留水)は、凝縮水回収・供給部によって回収されると共に改質触媒及び燃料電池スタックの少なくとも一方に供給される。
【0012】
このように、この燃料電池システムによれば、燃料電池スタック及びバーナの少なくとも一方から排出された排ガスから凝縮水を回収し、この凝縮水を改質触媒及び燃料電池スタックの少なくとも一方に供給する。これにより、外部から改質触媒及び燃料電池スタックの少なくとも一方への給水が不要であるので、外部からの水を改質触媒及び燃料電池スタックの少なくとも一方へ供給するための水供給施設を不要にできる。
【0013】
しかも、この燃料電池システムによれば、上述のように、排ガスに含まれる水蒸気から凝縮水を生成するために、交換や再生が不要な蒸留膜が用いられている。従って、凝縮水を安定して生成させるための定期的なメンテナンスを不要にすることができるので、例えばイオン交換樹脂を備えた水処理装置を用いる場合に比して、メンテナンスコストを低減することができる。
【0014】
また、蒸留膜は電気で再生する必要が無いので、蒸留膜の性能を維持するために燃料電池システムにて発電された電力を使用することを回避できる。これにより、例えば電気脱イオン式の水処理装置を用いる場合に比して、燃料電池システムの発電効率を向上させることができる。
【0015】
また、前記蒸留膜は、筒状に形成されると共に、その内側に前記排ガス流路を形成し、前記伝熱壁は、前記蒸留膜の周囲に環状に設けられ、前記外壁は、前記伝熱壁の周囲に環状に設けられている
【0016】
したがって、筒状に形成された蒸留膜の全周に亘って水蒸気が蒸留膜を透過し、この水蒸気から凝縮水を伝熱壁の全周に亘って生成することができる。これにより、凝縮水の生成効率を向上させることができる。
【0017】
また、請求項2に記載のように、請求項1に記載の燃料電池システムにおいて、湯水を貯留する貯湯タンクをさらに備え、前記冷却流体流路を流通する冷却流体は、前記貯湯タンクと前記冷却流体流路との間で循環する貯湯循環水であっても良い。
【0018】
このように構成されていると、伝熱壁と外壁との間の冷却流体流路を流通する貯湯循環水を、蒸留膜と伝熱壁との間の凝縮空間に移動した水蒸気の熱で加熱することができる。これにより、燃料電池スタック及びバーナの少なくとも一方から排出される排ガスの熱を、貯湯タンクに貯留される湯水の加熱のために有効に活用することができる。
【0019】
また、請求項3に記載のように、請求項1又は請求項2に記載の燃料電池システムにおいて、前記熱交換器を一つ備え、前記排ガス流路には、前記燃料電池スタックの空気極及び前記バーナの両方から排出され水蒸気を含む排ガスが流通しても良い。
【0020】
このように構成されていると、燃料電池スタックの空気極及びバーナからの排ガスに含まれる水蒸気から凝縮水が生成されるので、燃料電池スタックの空気極及びバーナのうちのいずれか一方のみからの排ガスが排ガス流路に流通する場合に比して、上述の凝縮空間にて生成される凝縮水の生成量を増加させることができる。また、熱交換器が一つで済むので、コストダウンすることができる。
【0021】
また、請求項4に記載のように、請求項1又は請求項2に記載の燃料電池システムにおいて、前記熱交換器を一対備え、一方の前記熱交換器における前記排ガス流路には、前記燃料電池スタックの空気極から排出され水蒸気を含む排ガスが流通し、他方の前記熱交換器における前記排ガス流路には、前記バーナから排出され水蒸気を含む排ガスが流通しても良い。
【0022】
このように構成されていても、燃料電池スタックの空気極及びバーナからの排ガスに含まれる水蒸気から凝縮水が生成されるので、燃料電池スタックの空気極及びバーナのうちのいずれか一方のみからの排ガスが排ガス流路に流通する場合に比して、上述の凝縮空間にて生成される凝縮水の生成量を増加させることができる。
【0023】
また、一対の熱交換器の両方で別々に凝縮水を生成することができるので、凝縮水を改質触媒及び燃料電池スタックの少なくとも一方に安定して供給することができる。これにより、燃料電池システムの安定性を確保することができる。
【0024】
また、請求項5に記載のように、請求項1又は請求項2に記載の燃料電池システムにおいて、前記熱交換器を一対備え、一方の前記熱交換器における前記排ガス流路には、前記燃料電池スタックの空気極及び前記バーナの両方から排出され水蒸気を含む排ガスが流通し、他方の前記熱交換器における前記排ガス流路には、前記燃料電池スタックの燃料極から排出され水蒸気を含む排ガスが流通し、前記バーナには、他方の前記熱交換器における前記排ガス流路から排出される排ガスがバーナガスとして供給されても良い。
【0025】
このように構成されていると、燃料電池スタックの空気極及びバーナからの排ガスに含まれる水蒸気に加えて、燃料電池スタックの燃料極からの排ガスに含まれる水蒸気からも凝縮水が生成されるので、システム内で生成される凝縮水の生成量を増加させることができる。
【0026】
また、一対の熱交換器の両方で別々に凝縮水を生成することができるので、凝縮水を改質触媒及び燃料電池スタックの少なくとも一方に安定して供給することができる。これにより、燃料電池システムの安定性を確保することができる。
【0027】
さらに、バーナには、他方の熱交換器における排ガス流路から排出され水蒸気が取り除かれた排ガスがバーナガスとして供給されるので、バーナに供給されるバーナガスに含まれる水蒸気の含有量を低減することができる。これにより、バーナにおける例えば失火等の不具合発生を抑制できると共に、バーナとして、水蒸気の含有量が多いバーナガスに対応できる高価なものを用いる必要が無いので、その分、コストダウンすることができる。
【0028】
また、請求項6に記載のように、請求項1又は請求項2に記載の燃料電池システムにおいて、前記熱交換器を三つ備え、第一の前記熱交換器における前記排ガス流路には、前記燃料電池スタックの空気極から排出され水蒸気を含む排ガスが流通し、第二の前記熱交換器における前記排ガス流路には、前記バーナから排出され水蒸気を含む排ガスが流通し、第三の前記熱交換器における前記排ガス流路には、前記燃料電池スタックの燃料極から排出され水蒸気を含む排ガスが流通し、前記バーナには、第三の前記熱交換器における前記排ガス流路から排出される排ガスがバーナガスとして供給されても良い。
【0029】
このように構成されていても、燃料電池スタックの空気極及びバーナからの排ガスに含まれる水蒸気に加えて、燃料電池スタックの燃料極からの排ガスに含まれる水蒸気からも凝縮水が生成されるので、システム内で生成される凝縮水の生成量を増加させることができる。
【0030】
また、三つの熱交換器の各々で別々に凝縮水を生成することができるので、凝縮水を改質触媒及び燃料電池スタックの少なくとも一方に安定して供給することができる。これにより、燃料電池システムの安定性を確保することができる。
【0031】
さらに、バーナには、第三の熱交換器における排ガス流路から排出され水蒸気が取り除かれた排ガスがバーナガスとして供給されるので、バーナに供給されるバーナガスに含まれる水蒸気の含有量を低減することができる。これにより、バーナにおける例えば失火等の不具合発生を抑制できると共に、バーナとして、水蒸気の含有量が多いバーナガスに対応できる高価なものを用いる必要が無いので、その分、コストダウンすることができる。
【0032】
また、請求項7に記載のように、請求項1又は請求項2に記載の燃料電池システムにおいて、前記熱交換器として、前記排ガス流路に前記燃料電池スタックの空気極及び前記バーナの両方から排出され水蒸気を含む排ガスが流通する熱交換器、及び、前記排ガス流路に前記燃料電池スタックの燃料極から排出され水蒸気を含む排ガスが流通する前記熱交換器のうち少なくとも一方を備えても良い。
【0033】
また、請求項8に記載のように、請求項7に記載の燃料電池システムにおいて、前記熱交換器として、前記排ガス流路に前記燃料電池スタックの燃料極から排出され水蒸気を含む排ガスが流通する熱交換器を少なくとも備え、前記バーナには、前記熱交換器における前記排ガス流路から排出される排ガスがバーナガスとして供給されても良い。
【0034】
また、請求項9に記載のように、請求項1又は請求項2に記載の燃料電池システムにおいて、前記熱交換器として、前記排ガス流路に前記燃料電池スタックの空気極から排出され水蒸気を含む排ガスが流通する熱交換器、前記排ガス流路に前記バーナから排出され水蒸気を含む排ガスが流通する熱交換器、及び、前記排ガス流路に前記燃料電池スタックの燃料極から排出され水蒸気を含む排ガスが流通する熱交換器のうち少なくとも一つを備えても良い。
【0035】
また、請求項10に記載のように、請求項9に記載の燃料電池システムにおいて、前記熱交換器として、前記排ガス流路に前記燃料電池スタックの燃料極から排出され水蒸気を含む排ガスが流通する熱交換器を少なくとも備え、前記バーナには、前記熱交換器における前記排ガス流路から排出される排ガスがバーナガスとして供給されても良い。
【発明の効果】
【0036】
以上詳述したように、本発明の燃料電池システムによれば、メンテナンスコストの低減及び発電効率の向上を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】本発明の第一実施形態に係る燃料電池システムの全体構成を示す図である。
図2】本発明の第二実施形態に係る燃料電池システムの全体構成を示す図である。
図3】本発明の第三実施形態に係る燃料電池システムの全体構成を示す図である。
図4】本発明の第四実施形態に係る燃料電池システムの全体構成を示す図である。
図5図1図4に示される第一熱交換器の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
[第一実施形態]
はじめに、本発明の第一実施形態について説明する。
【0039】
図1に示されるように、本発明の第一実施形態に係る燃料電池システムS1は、脱硫器12と、燃料処理装置14と、燃料電池スタック16と、第一熱交換器18と、第二熱交換器20と、貯湯タンク22と、凝縮水回収・供給部24とを主要な構成として備えている。
【0040】
脱硫器12は、都市ガス管26と接続されている。この脱硫器12は、都市ガス管26を介して供給された都市ガスに含まれる硫黄化合物を吸着除去する。
【0041】
燃料処理装置14は、改質触媒28と、バーナ30と、シフト触媒32と、PROX触媒34とを有している。改質触媒28は、原料ガス管36を介して脱硫器12と接続されている。この改質触媒28には、脱硫器12にて硫黄化合物が吸着除去された都市ガスが原料ガス管36を通じて供給される。この改質触媒28は、原料ガス管36を通じて供給された都市ガス(原料ガス)を、後述する第一凝縮水供給管104を通じて供給された凝縮水を利用して水蒸気改質する。
【0042】
バーナ30には、第一空気ブロワ38が設けられた空気ガス管40と、バーナガス管42とが接続されている。このバーナ30は、空気ガス管40を通じて供給された空気ガスと、バーナガス管42を通じて供給されたバーナガスとの混合ガスを燃焼し、改質触媒28を加熱する。
【0043】
シフト触媒32は、改質触媒28で発生した一酸化炭素を水蒸気と反応させて水素と二酸化炭素に変換し、一酸化炭素濃度を低減させる。PROX触媒34には、後述する酸化ガス管60から分岐されたPROX空気管44が接続されている。このPROX触媒34には、PROX空気管44を通じて空気が供給される。このPROX触媒34は、貴金属触媒上で一酸化炭素と酸素を反応させて二酸化炭素に変換し、一酸化炭素を酸化除去する。
【0044】
そして、この燃料処理装置14では、以上により、脱硫器12から供給された都市ガス(原料ガス)から、水素ガスを含む燃料ガスが生成される。この燃料ガスは、燃料ガス管46を通じて後述する燃料電池スタック16の燃料極54に供給される。燃料ガス管46には、PROX空気管44から分岐されたブリードエア管48が接続されており、燃料ガス管46を流通する燃料ガスには、ブリードエア管48を通じて抽出された空気が混合される。
【0045】
燃料電池スタック16は、固体高分子形の燃料電池スタックであり、積層された複数の燃料電池セル50を有している。各燃料電池セル50は、電解質層52と、この電解質層52の表裏面にそれぞれ積層された燃料極54及び空気極56とを有している。
【0046】
燃料極54(アノード極)には、燃料ガス管46を通じて燃料処理装置14から燃料ガスが供給される。この燃料極54では、下記式(1)で示されるように、燃料ガス中の水素が水素イオンと電子とに分解される。燃料極54で生成された水素イオンは、電解質層52を通って空気極56に移動し、燃料極54で生成された電子は、外部回路を通って空気極56に移動する。
【0047】
(燃料極反応)
→2H+2e ・・・(1)
【0048】
一方、空気極56(カソード極)には、第二空気ブロワ58が設けられた酸化ガス管60を通じて酸化ガス(空気)が供給される。この空気極56では、下記式(2)で示されるように、電解質層52を通ってきた水素イオンと、外部回路を通ってきた電子が、酸化ガス中の酸素と反応して、水が生成される。
【0049】
(空気極反応)
4H+O+4e →2HO ・・・(2)
【0050】
そして、このようにして電子が燃料極54から空気極56に移動することにより、各燃料電池セル50において発電される。また、各燃料電池セル50は、発電時に上記反応に伴って発熱し、空気極56で生成された水は、水蒸気とされる。
【0051】
燃料極54には、燃料極排ガス管62を介してドレンポット64が接続されている。ドレンポット64では、燃料極54から排出された燃料極排ガスに含まれる水蒸気が凝縮される。ドレンポット64には、ドレン水排水管65の一端が接続されており、このドレン水排水管65の他端は、後述するドレンタンク102のドレン水排水管103に接続されている。ドレンポット64における凝縮水の貯留量が許容量を超えた場合には、この超えた分の凝縮水がドレン水排水管65及びドレン水排水管103を通じて外部に排出される。
【0052】
また、ドレンポット64には、上述のバーナガス管42が接続されている。燃料極54から排出されドレンポット64で水蒸気が取り除かれた燃料極排ガスには、燃料電池スタック16において未反応の水素ガスが残存しており、この未反応の水素ガスを含む燃料極排ガスは、バーナガス管42を通じてバーナ30にバーナガスとして供給される。
【0053】
また、バーナ30には、バーナ排ガス管66の一端が接続されており、上述の空気極56には、空気極排ガス管68の一端が接続されている。バーナ排ガス管66の他端は、後述する第一熱交換器18に接続されており、空気極排ガス管68の他端は、バーナ排ガス管66における第一熱交換器18側の部分に接続されている。
【0054】
第一熱交換器18は、本発明における「熱交換器」の一例であり、次のように構成されている。つまり、図5に示されるように、第一熱交換器18は、蒸留膜70と、内管72と、外管74とを有している。
【0055】
蒸留膜70は、中空円筒状に形成されている。この蒸留膜70は、水蒸気を透過させ液体を透過させない多孔質膜などで構成されている。この蒸留膜70は、燃料電池スタック16の発熱温度に適応し得るような材料で形成されることが好ましい。この材料としては、例えば、フッ素系樹脂などが挙げられる。この蒸留膜70の内側には、排ガス流路76が形成されており、この排ガス流路76の入口部は、図1に示されるバーナ排ガス管66と接続されている。
【0056】
この排ガス流路76には、図1に示されるバーナ排ガス管66及び空気極排ガス管68から排出され水蒸気を含む排ガス(バーナ排ガス及び空気極排ガス)が流通する。排ガス流路76の出口部には、図1に示される排気口78が接続されており、排ガス流路76を通過し水蒸気が取り除かれた排ガスは、この排気口78から外部に排出される。
【0057】
内管72は、天壁部80及び底壁部82を有する円筒状に形成されている。この内管72の軸芯部には、上述の蒸留膜70が貫通して配置されている。内管72の外周部は、蒸留膜70の周囲に環状に設けられた伝熱壁84として形成されており、この伝熱壁84と蒸留膜70との間は、蒸留膜70を透過した水蒸気が凝縮される凝縮空間86として形成されている。また、内管72の底壁部82には、凝縮水排水管88が設けられている。
【0058】
外管74は、中空円環状に形成されており、上述の蒸留膜70及び内管72と同軸上に配置されている。この外管74は、伝熱壁84よりも外径が大きく形成されている。この外管74の天壁部には、入口管90が設けられており、この外管74の底壁部には、出口管92が設けられている。この入口管90及び出口管92には、図1に示される貯湯タンク22と接続された第一貯湯水循環回路94が接続されている。
【0059】
また、この外管74の外周部は、伝熱壁84の周囲に環状に設けられた外壁96として形成されており、この外壁96と伝熱壁84との間は、図1に示される貯湯タンク22から供給された貯湯循環水(熱回収水)が流通する貯湯循環水流路98として形成されている。この貯湯循環水流路98と図1に示される貯湯タンク22との間では、貯湯循環水が循環する。この貯湯循環水流路98は、本発明における「冷却流体流路」の一例であり、この貯湯循環水流路98を流れる貯湯循環水は、本発明における「冷却流体」の一例である。
【0060】
そして、この第一熱交換器18では、貯湯循環水流路98に貯湯循環水が流通している状態で、排ガス流路76内の排ガスに含まれる水蒸気が蒸留膜70を透過して凝縮空間86に移動すると、この凝縮空間86に移動した水蒸気が伝熱壁84の表面上で熱を放出し凝縮される。また、このようにして凝縮空間86にて生成された凝縮水(蒸留水)は、凝縮水排水管88を通じて排水される。
【0061】
この凝縮水排水管88には、図1に示される凝縮水回収管100を介してドレンタンク102の入口部が接続されている。このドレンタンク102には、上述の第一熱交換器18にて生成され凝縮水回収管100を通じて回収された凝縮水が貯留される。ドレンタンク102における凝縮水の貯留量が許容量を超えた場合には、この超えた分の凝縮水がドレンタンク102から排出される。このドレンタンク102の出口部には、上述の改質触媒28に接続された第一凝縮水供給管104が接続されている。
【0062】
この第一凝縮水供給管104には、第一ポンプ106が設けられており、この第一凝縮水供給管104からは、第二ポンプ108が設けられた第二凝縮水供給管110が分岐されている。この第二凝縮水供給管110には、第二熱交換器20が設けられており、第二熱交換器20には、上述の貯湯タンク22と接続された第二貯湯水循環回路112が接続されている。この第二熱交換器20では、第二凝縮水供給管110を流通する凝縮水と、第二貯湯水循環回路112を流通する貯湯循環水との間で熱交換が行われ、これにより、凝縮水が貯湯循環水によって熱を奪われて冷却される。
【0063】
この第二凝縮水供給管110における第二熱交換器20よりも下流側には、燃料電池スタック16の燃料電池セル50を貫通する冷却回路114が接続されている。この冷却回路114の出口側(下流側)は、第二凝縮水供給管110における第二ポンプ108の下流側の部分に接続されている。
【0064】
以上の凝縮水回収管100、ドレンタンク102、第一ポンプ106、第二ポンプ108、第一凝縮水供給管104、第二凝縮水供給管110、第二熱交換器20、及び、冷却回路114は、凝縮水回収・供給部24を構成している。
【0065】
この凝縮水回収・供給部24において、第一熱交換器18の凝縮空間86(図5参照)にて生成された凝縮水は、凝縮水回収管100を通じてドレンタンク102に回収され、このドレンタンク102に回収された凝縮水の一部は、第一ポンプ106の作動に伴い第一凝縮水供給管104を通じて改質触媒28に供給され、この改質触媒28にて水蒸気改質用の水蒸気として利用される。一方、ドレンタンク102に回収された凝縮水の他の一部は、第二ポンプ108の作動に伴い第二凝縮水供給管110を通じて第二熱交換器20に供給され、この第二熱交換器20において冷却される。また、この第二熱交換器20にて冷却された凝縮水は、冷却回路114を通じて燃料電池セル50に供給され、この燃料電池セル50が冷却される。
【0066】
続いて、第一実施形態に係る燃料電池システムS1の作用及び効果について説明する。
【0067】
以上詳述したように、第一実施形態に係る燃料電池システムS1では、燃料処理装置14から燃料ガスが燃料電池スタック16の燃料極54に供給されると共に、第二空気ブロワ58が作動して酸化ガス管60から酸化ガスが燃料電池スタック16の空気極56に供給されると、この燃料電池スタック16において燃料ガス及び酸化ガスが反応し発電する。この発電に伴い燃料電池スタック16の空気極56からは、空気極排ガスが排出され、燃料処理装置14のバーナ30からは、バーナ排ガスが排出される。これらの排ガスは、水蒸気を含んでおり、空気極排ガス管68及びバーナ排ガス管66を通じて第一熱交換器18に供給される。
【0068】
この第一熱交換器18では、図5に示されるように、蒸留膜70によって排ガス流路76が形成されており、この蒸留膜70と伝熱壁84との間には、凝縮空間86が形成され、伝熱壁84と外壁96との間には、貯湯循環水が流通する貯湯循環水流路98が形成されている。従って、排ガス流路76に供給された排ガスに含まれる水蒸気は、蒸留膜70を透過して凝縮空間86に移動し、伝熱壁84の表面上で熱を放出し凝縮される。
【0069】
そして、このようにして凝縮空間86にて生成された凝縮水(蒸留水)は、図1に示されるドレンタンク102に回収され、このドレンタンク102に回収された凝縮水の一部は、第一凝縮水供給管104を通じて改質触媒28に供給され、この改質触媒28にて水蒸気改質用の水蒸気として利用される。一方、ドレンタンク102に回収された凝縮水の他の一部は、第二凝縮水供給管110を通じて第二熱交換器20に供給され、この第二熱交換器20において冷却される。また、この第二熱交換器20にて冷却された凝縮水は、冷却回路114を通じて燃料電池セル50に供給され、この燃料電池セル50が冷却される。
【0070】
このように、第一実施形態に係る燃料電池システムS1によれば、燃料電池スタック16の空気極56及びバーナ30から排出された排ガスから凝縮水を回収し、この凝縮水を改質触媒28及び燃料電池スタック16に供給する。従って、燃料電池スタック16の空気極56及びバーナ30から排出される排ガスを、改質触媒28における水蒸気改質用の水蒸気と、燃料電池セル50の冷却用の冷却水とを生成するために有効に活用することができる。
【0071】
また、上述のように、燃料電池スタック16及びバーナ30から排出された排ガスから凝縮水を回収し、この凝縮水を改質触媒28及び燃料電池スタック16に供給するので、外部から改質触媒28及び燃料電池スタック16への給水が不要である。これにより、外部からの水を改質触媒28及び燃料電池スタック16へ供給するための水供給施設を不要にできる。
【0072】
しかも、この燃料電池システムS1によれば、上述のように、排ガスに含まれる水蒸気から凝縮水を生成するために、交換や再生が不要な蒸留膜70(図5参照)が用いられている。従って、凝縮水を安定して生成させるための定期的なメンテナンスを不要にすることができるので、例えばイオン交換樹脂を備えた水処理装置を用いる場合に比して、メンテナンスコストを低減することができる。
【0073】
また、蒸留膜70は電気で再生する必要が無いので、蒸留膜70の性能を維持するために燃料電池システムS1にて発電された電力を使用することを回避できる。これにより、例えば電気脱イオン式の水処理装置を用いる場合に比して、燃料電池システムS1の発電効率を向上させることができる。
【0074】
さらに、この燃料電池システムS1によれば、第一熱交換器18の排ガス流路76(図5参照)には、燃料電池スタック16の空気極56及びバーナ30の両方から排出され水蒸気を含む排ガスが流通するので、燃料電池スタック16の空気極56及びバーナ30からの排ガスに含まれる水蒸気から凝縮水を生成することができる。これにより、燃料電池スタック16の空気極56及びバーナ30のうちのいずれか一方のみからの排ガスが排ガス流路76に流通する場合に比して、図5に示される凝縮空間86にて生成される凝縮水の生成量を増加させることができる。
【0075】
また、この燃料電池システムS1によれば、第一熱交換器18が一つのみ備えられており、この第一熱交換器18の排ガス流路76(図5参照)には、燃料電池スタック16の空気極56及びバーナ30の両方から排出され水蒸気を含む排ガスが流通する。従って、第一熱交換器18が一つで済むので、コストダウンすることができる。
【0076】
また、図5に示されるように、第一熱交換器18に設けられた蒸留膜70は、筒状に形成されると共に、その内側に排ガス流路76を形成しており、伝熱壁84は、蒸留膜70の周囲に環状に設けられ、外壁96は、伝熱壁84の周囲に環状に設けられている。従って、筒状に形成された蒸留膜70の全周に亘って水蒸気が蒸留膜70を透過し、この水蒸気から凝縮水を伝熱壁84の全周に亘って生成することができる。これにより、凝縮水の生成効率を向上させることができる。
【0077】
また、図1に示されるように、燃料電池システムS1には、湯水を貯留する貯湯タンク22が備えられており、この貯湯タンク22から供給された貯湯循環水は、図5に示される伝熱壁84と外壁96との間に形成された貯湯循環水流路98を流通する。従って、この貯湯循環水を、蒸留膜70と伝熱壁84との間の凝縮空間86に移動した水蒸気の熱で加熱することができる。これにより、図1に示される燃料電池スタック16及びバーナ30から排出された排ガスの熱を貯湯タンク22に貯留される湯水の加熱のために有効に活用することができる。
【0078】
続いて、第一実施形態の変形例について説明する。
【0079】
上述の第一実施形態において、第一熱交換器18の排ガス流路76(図5参照)には、燃料電池スタック16の空気極56及びバーナ30の両方から排出された排ガスが流通されるが、燃料電池スタック16の空気極56及びバーナ30のいずれか一方のみから排出された排ガスが流通しても良い。また、この場合に、燃料電池スタック16の空気極56及びバーナ30から排出された排ガスのうち排ガス流路76に流通されない排ガスは、外部に排出されても良い。
【0080】
このように構成されていても、固体高分子形の燃料電池スタック16を備えた燃料電池システムにおいて、燃料電池スタック16の空気極56及びバーナ30のいずれか一方から排出される排ガスを、凝縮水の生成のために有効に活用することができる。
【0081】
また、上述の第一実施形態において、第一熱交換器18にて生成されドレンタンク102に貯留された凝縮水は、改質触媒28及び燃料電池スタック16の両方に供給されて、改質触媒28における水蒸気改質と、燃料電池セル50の冷却の両方に利用される。しかしながら、ドレンタンク102に貯留された凝縮水は、改質触媒28及び燃料電池セル50のいずれか一方にのみ供給され、改質触媒28における水蒸気改質、及び、燃料電池セル50の冷却のうちのいずれか一方にのみ利用されても良い。
【0082】
また、上述の第一実施形態では、第一熱交換器18において凝縮水を生成するための冷却流体の一例として、貯湯タンク22から供給された貯湯循環水が用いられるが、貯湯循環水以外の冷却水が用いられても良い。また、第一熱交換器18において凝縮水を生成するための冷却流体として、例えば、酸化ガス管60を通じて空気極56に供給される酸化ガスなどの気体や、その他の気体及び液体が適宜用いられても良い。
【0083】
また、上述の第一実施形態では、図5に示されるように、蒸留膜70が筒状に形成されると共に、この筒状に形成された蒸留膜70の内側が排ガス流路76として形成されている。しかしながら、蒸留膜70は、例えば、排ガス流路76を形成する管体における周方向の一部のみを構成するなど、筒状以外の形状で形成されていても良い。また、伝熱壁84及び外壁96も、凝縮空間86及び貯湯循環水流路98(冷却流体流路)を形成できる構造であれば、例えば平板状や円弧状に形成されるなど、環状以外の形状で形成されていても良い。
【0084】
[第二実施形態]
次に、本発明の第二実施形態について説明する。
【0085】
図2に示される第二実施形態に係る燃料電池システムS2は、上述の第一実施形態に係る燃料電池システムS1(図1参照)に対し、次のように構造が変更されている。なお、第二実施形態において、上述の第一実施形態と同様の構造については、同一の符号を用い、その説明を省略する。
【0086】
第二実施形態に係る燃料電池システムS2は、上述の第一熱交換器18(図1参照)の代わりに、一対の第一熱交換器18A,18Bを備えている。この一対の第一熱交換器18A,18Bは、本発明における「熱交換器」の一例であり、上述の第一熱交換器18(図5参照)と同様の構成とされている。
【0087】
一方の第一熱交換器18Aにおける排ガス流路76(図5参照)の入口部は、空気極排ガス管68と接続されており、この一方の第一熱交換器18Aにおける排ガス流路76には、燃料電池スタック16の空気極56から排出され水蒸気を含む排ガスが流通する。
【0088】
これに対し、他方の第一熱交換器18Bにおける排ガス流路76(図5参照)の入口部は、バーナ排ガス管66と接続されており、この他方の第一熱交換器18Bにおける排ガス流路76には、バーナ30から排出され水蒸気を含む排ガスが流通する。
【0089】
一対の第一熱交換器18A,18Bにおける排ガス流路76(図5参照)の出口部には、図2に示される排気口78が接続されており、各排ガス流路76を通過し水蒸気が取り除かれた排ガスは、この排気口78から外部に排出される。
【0090】
また、一対の第一熱交換器18A,18Bにおける入口管90及び出口管92(図5参照)には、図2に示される貯湯タンク22と接続された第一貯湯水循環回路94A,94Bがそれぞれ接続されている。そして、一対の第一熱交換器18A,18Bにおける貯湯循環水流路98(図5参照)と図2に示される貯湯タンク22との間では、貯湯循環水が循環する。
【0091】
また、一対の第一熱交換器18A,18Bにおける凝縮水排水管88(図5参照)には、図2に示される凝縮水回収管100A,100Bを介してドレンタンク102の入口部がそれぞれ接続されている。このドレンタンク102には、上述の一対の第一熱交換器18A,18Bにてそれぞれ生成され凝縮水回収管100A,100Bを通じて回収された凝縮水が貯留される。
【0092】
この燃料電池システムS2において、以上の凝縮水回収管100A,100B、ドレンタンク102、第一ポンプ106、第二ポンプ108、第一凝縮水供給管104、第二凝縮水供給管110、第二熱交換器20、冷却回路114は、凝縮水回収・供給部24を構成している。
【0093】
この第二実施形態に係る燃料電池システムS2によっても、燃料電池スタック16の空気極56及びバーナ30からの排ガスに含まれる水蒸気から凝縮水を生成することができる。これにより、燃料電池スタック16の空気極56及びバーナ30のうちのいずれか一方のみからの排ガスが排ガス流路76に流通する場合に比して、図5に示される凝縮空間86にて生成される凝縮水の生成量を増加させることができる。
【0094】
また、この燃料電池システムS2のように、一対の第一熱交換器18A,18Bを備えていると、この一対の第一熱交換器18A,18Bの両方で別々に凝縮水を生成することができるので、凝縮水を改質触媒28及び燃料電池スタック16に安定して供給することができる。これにより、燃料電池システムS2の安定性を確保することができる。
【0095】
なお、この第二実施形態に係る燃料電池システムS2は、上述の一対の第一熱交換器18A,18Bのうちいずれか一方のみを備える構成とされても良い。
【0096】
[第三実施形態]
次に、本発明の第三実施形態について説明する。
【0097】
図3に示される第三実施形態に係る燃料電池システムS3は、上述の第一実施形態に係る燃料電池システムS1(図1参照)に対し、次のように構造が変更されている。なお、第三実施形態において、上述の第一実施形態と同様の構造については、同一の符号を用い、その説明を省略する。
【0098】
第三実施形態に係る燃料電池システムS3は、上述の第一熱交換器18(図1参照)の代わりに、一対の第一熱交換器18A,18Bを備えている。この一対の第一熱交換器18A,18Bは、本発明における「熱交換器」の一例であり、上述の第一熱交換器18(図5参照)と同様の構成とされている。
【0099】
一方の第一熱交換器18Aにおける排ガス流路76(図5参照)の入口部は、バーナ排ガス管66と接続されている。このバーナ排ガス管66における第一熱交換器18A側の部分には空気極排ガス管68の他端が接続されている。そして、一方の第一熱交換器18Bにおける排ガス流路76には、燃料電池スタック16の空気極56及びバーナ30から排出され水蒸気を含む排ガスが流通する。
【0100】
これに対し、他方の第一熱交換器18Bにおける排ガス流路76(図5参照)の入口部は、燃料極排ガス管62と接続されており、この他方の第一熱交換器18Bにおける排ガス流路76には、燃料電池スタック16の燃料極54から排出され水蒸気を含む排ガスが流通する。
【0101】
また、一方の第一熱交換器18Aにおける排ガス流路76(図5参照)の出口部には、図3に示される排気口78が接続されており、この一方の第一熱交換器18Aにおける排ガス流路76を通過し水蒸気が取り除かれた排ガスは、この排気口78から外部に排出される。
【0102】
これに対し、他方の第一熱交換器18Bにおける排ガス流路76(図5参照)の出口部には、バーナガス管42が接続されている。燃料極54から排出され他方の第一熱交換器18Bの蒸留膜70(図5参照)で水蒸気が取り除かれた燃料極排ガスには、燃料電池スタック16において未反応の水素ガスが残存しており、この未反応の水素ガスを含む燃料極排ガスは、バーナガス管42を通じてバーナ30にバーナガスとして供給される。
【0103】
また、一対の第一熱交換器18A,18Bにおける入口管90及び出口管92(図5参照)には、図3に示される貯湯タンク22と接続された第一貯湯水循環回路94A,94Bがそれぞれ接続されている。そして、一対の第一熱交換器18A,18Bにおける貯湯循環水流路98(図5参照)と図3に示される貯湯タンク22との間では、貯湯循環水が循環する。
【0104】
また、一方の第一熱交換器18Aにおける凝縮水排水管88(図5参照)には、図3に示される凝縮水回収管100Aを介してドレンタンク102の入口部が接続されている。これに対し、他方の第一熱交換器18Bにおける凝縮水排水管88(図5参照)には、図3に示される凝縮水回収管100Bを介してドレンタンク122の入口部が接続されている。このドレンタンク122には、上述の他方の第一熱交換器18Bにて生成され凝縮水回収管100Bを通じて回収された凝縮水が貯留される。
【0105】
ドレンタンク122における凝縮水の貯留量が許容量を超えた場合には、この超えた分の凝縮水がドレンタンク122から排出される。このドレンタンク122の出口部は、ドレン水排水管123を介して上述のドレンタンク102の入口部が接続されている。そして、このドレンタンク102には、上述の一対の第一熱交換器18A,18Bにてそれぞれ生成された凝縮水が貯留される。
【0106】
なお、蒸留膜方式において、燃料極54からの排ガスに含まれる揮発性成分は、水蒸気と共に揮発同伴する特性があるが、例えば、燃料極54からの排ガスに比較的多く含まれる可能性のあるアンモニアについては、原水のpHが6以下であれば透過側へのアンモニアの混入が無いことが示されている(化学工学論文集 第19巻 第2号(1993))、膜蒸留法における揮発性および不揮発性成分の透過特性、黒川ら)。
【0107】
この燃料電池システムS3において、以上の凝縮水回収管100A,100B、ドレンタンク102、第一ポンプ106、第二ポンプ108、第一凝縮水供給管104、第二凝縮水供給管110、第二熱交換器20、冷却回路114、ドレンタンク122、及び、ドレン水排水管123は、凝縮水回収・供給部24を構成している。
【0108】
この第三実施形態に係る燃料電池システムS3によれば、燃料電池スタック16の空気極56及びバーナ30からの排ガスに含まれる水蒸気に加えて、燃料電池スタック16の燃料極54からの排ガスに含まれる水蒸気からも凝縮水が生成されるので、システム内で生成される凝縮水の生成量を増加させることができる。
【0109】
また、この燃料電池システムS3においても、第二実施形態と同様に、一対の第一熱交換器18A,18Bを備えているので、この一対の第一熱交換器18A,18Bの両方で別々に凝縮水を生成することができる。これにより、凝縮水を改質触媒28及び燃料電池スタック16に安定して供給することができるので、燃料電池システムS3の安定性を確保することができる。
【0110】
また、この燃料電池システムS3によれば、バーナ30には、他方の第一熱交換器18Bにおける排ガス流路76(図5参照)から排出され水蒸気が取り除かれた排ガスがバーナガスとして供給されるので、バーナ30に供給されるバーナガスに含まれる水蒸気の含有量を低減することができる。これにより、バーナ30における例えば失火等の不具合発生を抑制できると共に、バーナ30として、水蒸気の含有量が多いバーナガスに対応できる高価なものを用いる必要が無いので、その分、コストダウンすることができる。
【0111】
なお、この第三実施形態に係る燃料電池システムS3は、上述の一対の第一熱交換器18A,18Bのうち第一熱交換器18Bのみを備える構成とされても良い。
【0112】
[第四実施形態]
次に、本発明の第四実施形態について説明する。
【0113】
図4に示される第四実施形態に係る燃料電池システムS4は、上述の第二実施形態に係る燃料電池システムS2(図2参照)に対し、次のように構造が変更されている。なお、第四実施形態において、上述の第二実施形態と同様の構造については、同一の符号を用い、その説明を省略する。
【0114】
第四実施形態に係る燃料電池システムS4は、上述の二つの第一熱交換器18A,18Bに加え、第一熱交換器18Cを備えている。この三つの第一熱交換器18A,18B,18Cは、本発明における「熱交換器」の一例であり、上述の第一熱交換器18(図5参照)と同様の構成とされている。
【0115】
第一の第一熱交換器18Aにおける排ガス流路76(図5参照)の入口部は、空気極排ガス管68と接続されており、この第一の第一熱交換器18Aにおける排ガス流路76には、燃料電池スタック16の空気極56から排出され水蒸気を含む排ガスが流通する。
【0116】
また、第二の第一熱交換器18Bにおける排ガス流路76(図5参照)の入口部は、バーナ排ガス管66と接続されており、この他方の第一熱交換器18Bにおける排ガス流路76には、バーナ30から排出され水蒸気を含む排ガスが流通する。
【0117】
さらに、第三の第一熱交換器18Cにおける排ガス流路76(図5参照)の入口部は、燃料極排ガス管62と接続されており、この第三の第一熱交換器18Cにおける排ガス流路76には、燃料電池スタック16の燃料極54から排出され水蒸気を含む排ガスが流通する。
【0118】
第一及び第二の第一熱交換器18A,18Bにおける排ガス流路76(図5参照)の出口部には、図4に示される排気口78が接続されており、各排ガス流路76を通過し水蒸気が取り除かれた排ガスは、この排気口78から外部に排出される。
【0119】
これに対し、第三の第一熱交換器18Cにおける排ガス流路76(図5参照)の出口部には、バーナガス管42が接続されている。燃料極54から排出され第三の第一熱交換器18Cの蒸留膜70(図5参照)で水蒸気が取り除かれた燃料極排ガスには、燃料電池スタック16において未反応の水素ガスが残存しており、この未反応の水素ガスを含む燃料極排ガスは、バーナガス管42を通じてバーナ30にバーナガスとして供給される。
【0120】
また、三つの第一熱交換器18A,18B,18Cにおける入口管90及び出口管92(図5参照)には、図4に示される貯湯タンク22と接続された第一貯湯水循環回路94A,94B,94Cがそれぞれ接続されている。そして、この三つの第一熱交換器18A,18B,18Cにおける貯湯循環水流路98(図5参照)と図4に示される貯湯タンク22との間では、貯湯循環水が循環する。
【0121】
また、第一及び第二の第一熱交換器18A,18Bにおける凝縮水排水管88(図5参照)には、図4に示される凝縮水回収管100A,100Bを介してドレンタンク102の入口部がそれぞれ接続されている。このドレンタンク102には、上述の第一及び第二の第一熱交換器18A,18Bにてそれぞれ生成され凝縮水回収管100A,100Bを通じて回収された凝縮水が貯留される。
【0122】
これに対し、第三の第一熱交換器18Cにおける凝縮水排水管88(図5参照)には、図4に示される凝縮水回収管100Cを介してドレンタンク122の入口部が接続されている。このドレンタンク122には、上述の第三の第一熱交換器18Cにて生成され凝縮水回収管100Cを通じて回収された凝縮水が貯留される。
【0123】
ドレンタンク122における凝縮水の貯留量が許容量を超えた場合には、この超えた分の凝縮水がドレンタンク122から排出される。このドレンタンク122の出口部は、ドレン水排水管123を介して上述のドレンタンク102の入口部が接続されている。そして、このドレンタンク102には、上述の三つの第一熱交換器18A,18B,18Cにてそれぞれ生成された凝縮水が貯留される。
【0124】
なお、第三実施形態で述べたように、蒸留膜方式において、燃料極54からの排ガスに含まれる揮発性成分は、水蒸気と共に揮発同伴する特性があるが、例えば、燃料極54からの排ガスに比較的多く含まれる可能性のあるアンモニアについては、原水のpHが6以下であれば透過側へのアンモニアの混入が無いことが示されている(化学工学論文集 第19巻 第2号(1993))、膜蒸留法における揮発性および不揮発性成分の透過特性、黒川ら)。
【0125】
この燃料電池システムS4において、以上の凝縮水回収管100A,100B,100C、ドレンタンク102、第一ポンプ106、第二ポンプ108、第一凝縮水供給管104、第二凝縮水供給管110、第二熱交換器20、冷却回路114、ドレンタンク122、及び、ドレン水排水管123は、凝縮水回収・供給部24を構成している。
【0126】
この第四実施形態に係る燃料電池システムS4によれば、燃料電池スタック16の空気極56及びバーナ30からの排ガスに含まれる水蒸気に加えて、燃料電池スタック16の燃料極54からの排ガスに含まれる水蒸気からも凝縮水が生成されるので、システム内で生成される凝縮水の生成量を増加させることができる。
【0127】
また、この燃料電池システムS4のように、三つの第一熱交換器18A,18B,18Cを備えていると、この三つの第一熱交換器18A,18B,18Cの各々で別々に凝縮水を生成することができるので、凝縮水を改質触媒28及び燃料電池スタック16に安定して供給することができる。これにより、燃料電池システムS4の安定性を確保することができる。
【0128】
また、この燃料電池システムS4によれば、バーナ30には、第三の第一熱交換器18Cにおける排ガス流路76(図5参照)から排出され水蒸気が取り除かれた排ガスがバーナガスとして供給されるので、バーナ30に供給されるバーナガスに含まれる水蒸気の含有量を低減することができる。これにより、バーナ30における例えば失火等の不具合発生を抑制できると共に、バーナ30として、水蒸気の含有量が多いバーナガスに対応できる高価なものを用いる必要が無いので、その分、コストダウンすることができる。
【0129】
なお、この第四実施形態に係る燃料電池システムS4は、上述の三つの第一熱交換器18A,18B,18Cのうちいずれか二つのみ、又は、いずれか一つのみを備える構成とされても良い。
【0130】
また、上述の第一実施形態における複数の変形例のうち第二乃至第四実施形態に適用可能な変形例は、第二乃至第四実施形態の変形例として採用されても良い。
【0131】
以上、本発明の第一乃至第四実施形態について説明したが、本発明は、上記に限定されるものでなく、上記以外にも、その主旨を逸脱しない範囲内において種々変形して実施可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0132】
S1,S2,S3,S4…燃料電池システム、12…脱硫器、14…燃料処理装置、16…燃料電池スタック、18,18A,18B,18C…第一熱交換器(熱交換器の一例)、20…第二熱交換器、22…貯湯タンク、24…凝縮水回収・供給部、26…都市ガス管、28…改質触媒、30…バーナ、32…シフト触媒、34…PROX触媒、36…原料ガス管、38…第一空気ブロワ、40…空気ガス管、42…バーナガス管、44…PROX空気管、46…燃料ガス管、48…ブリードエア管、50…燃料電池セル、52…電解質層、54…燃料極、56…空気極、58…第二空気ブロワ、60…酸化ガス管、62…燃料極排ガス管、64…ドレンポット、65…ドレン水排水管、66…バーナ排ガス管、68…空気極排ガス管、70…蒸留膜、72…内管、74…外管、76…排ガス流路、78…排気口、80…天壁部、82…底壁部、84…伝熱壁、86…凝縮空間、88…凝縮水排水管、90…入口管、92…出口管、94,94A,94B,94C…第一貯湯水循環回路、96…外壁、98…貯湯循環水流路(冷却流体流路の一例)、100,100A,100B,100C…凝縮水回収管、102…ドレンタンク、103…ドレン水排水管、104…第一凝縮水供給管、106…第一ポンプ、108…第二ポンプ、110…第二凝縮水供給管、112…第二貯湯水循環回路、114…冷却回路、122…ドレンタンク、123…ドレン水排水管
図1
図2
図3
図4
図5