特許第6096710号(P6096710)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6096710
(24)【登録日】2017年2月24日
(45)【発行日】2017年3月15日
(54)【発明の名称】燃料電池システム
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/06 20160101AFI20170306BHJP
   H01M 8/04 20160101ALI20170306BHJP
   H01M 8/0606 20160101ALI20170306BHJP
   H01M 8/12 20160101ALN20170306BHJP
【FI】
   H01M8/06 B
   H01M8/04 N
   H01M8/06 R
   !H01M8/12
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-93829(P2014-93829)
(22)【出願日】2014年4月30日
(65)【公開番号】特開2015-211012(P2015-211012A)
(43)【公開日】2015年11月24日
【審査請求日】2016年1月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000220262
【氏名又は名称】東京瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】多久 俊平
【審査官】 武市 匡紘
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−325982(JP,A)
【文献】 特開2001−143733(JP,A)
【文献】 特開平08−029298(JP,A)
【文献】 特開2010−170877(JP,A)
【文献】 特開2010−212107(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/00−8/24
B01D 53/22
B01D 53/34−53/96
B01D 61/00−71/82
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料ガスを水蒸気改質し水素ガスを含む燃料ガスを生成する改質触媒と、前記改質触媒から供給される燃料ガスと外部から供給される酸化ガスとを反応させて発電する固体酸化物形の燃料電池スタックとを有するホットモジュールと、
筒状に形成されると共にその内側に前記ホットモジュールから排出され水蒸気を含む排ガスが流通する排ガス流路を形成する蒸留膜と、前記蒸留膜の周囲に環状に設けられると共に前記蒸留膜を透過する水蒸気が凝縮される凝縮空間を前記蒸留膜との間に形成する伝熱壁と、前記伝熱壁の周囲に環状に設けられると共に冷却流体が流通する冷却流体流路を前記伝熱壁との間に形成する外壁とを有する熱交換器と、
前記凝縮空間にて生成される凝縮水を回収し、該凝縮水を前記改質触媒に供給する凝縮水回収・供給部と、
を備える燃料電池システム。
【請求項2】
湯水を貯留する貯湯タンクをさらに備え、
前記冷却流体流路を流通する冷却流体は、前記貯湯タンクと前記冷却流体流路との間で循環する貯湯循環水である、
請求項1に記載の燃料電池システム。
【請求項3】
前記ホットモジュールは、前記改質触媒、前記燃料電池スタック、及び、前記改質触媒を加熱するバーナにより構成され、
前記バーナには、前記燃料電池スタックの燃料極から排出される排ガスを含むバーナガスが供給され、
前記排ガス流路には、前記バーナから排出され水蒸気を含む排ガスが流通する、
請求項1又は請求項2に記載の燃料電池システム。
【請求項4】
前記ホットモジュールは、前記改質触媒及び前記燃料電池スタックにより構成され、
前記排ガス流路には、前記燃料電池スタックの燃料極から排出され水蒸気を含む排ガスが流通する、
請求項1又は請求項2に記載の燃料電池システム。
【請求項5】
前記排ガス流路から排出され水素ガスを含む排ガスが燃料ガスとして供給されるガス燃焼部をさらに備える、
請求項4に記載の燃料電池システム。
【請求項6】
前記排ガス流路には、前記燃料電池スタックの燃料極から排出され水蒸気を含む排ガスの一部が流通し、
前記燃料電池スタックの燃料極から排出された排ガスの残りは、前記改質触媒に供給される、
請求項4に記載の燃料電池システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体酸化物形の燃料電池スタックを備える燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池システムの分野においては、システム内部での排ガスに含まれる水蒸気を凝縮して生成した凝縮水(ドレン水)を、例えば改質触媒等で再利用する技術が提案されている。このような燃料電池システムによれば、外部から改質触媒等への給水が不要であるので、外部からの水を改質触媒等へ供給するための水供給施設を不要にできる。
【0003】
ところで、改質触媒等で凝縮水を再利用するためには、凝縮水から不純物を除去する必要がある。この不純物を除去する水処理装置としては、イオン交換樹脂を備えたものがある(例えば、特許文献1〜5参照)。
【0004】
しかしながら、このイオン交換樹脂を備えた水処理装置では、イオン交換樹脂カートリッジで吸着できる不純物の量に限りがある。このため、イオン交換樹脂カートリッジの交換や再生など定期的なメンテナンスが必要となり、メンテナンスコストが増加する。
【0005】
そこで、定期的なメンテナンスを不要にする技術として、電気脱イオン式の水処理装置が提案されている(例えば、特許文献6参照)。この電気脱イオン式の水処理装置では、不純物を除去するための樹脂を電気で再生させるため、定期的なメンテナンスが不要になるという利点がある。
【0006】
ところが、電気脱イオン式の水処理装置では、不純物を除去するための樹脂を再生させるために電力が必要になる。従って、燃料電池システムにて発電された電力を電気脱イオン式の水処理装置における樹脂の再生のために使用した場合には、燃料電池システムの発電効率が低下する。
【0007】
なお、水処理装置に関するその他の技術としては、特許文献7,8に記載の蒸留膜を用いたものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2013−243146号公報
【特許文献2】特許第5371554号公報
【特許文献3】特開平8−17457号公報
【特許文献4】特開平9−231990号公報
【特許文献5】特開2011−29144号公報
【特許文献6】特許4461553号公報
【特許文献7】特公昭49−45461号公報
【特許文献8】特開2011−167628号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、メンテナンスコストの低減及び発電効率の向上を実現できる燃料電池システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の燃料電池システムは、原料ガスを水蒸気改質し水素ガスを含む燃料ガスを生成する改質触媒と、前記改質触媒から供給される燃料ガスと外部から供給される酸化ガスとを反応させて発電する固体酸化物形の燃料電池スタックとを有するホットモジュールと、筒状に形成されると共にその内側に前記ホットモジュールから排出され水蒸気を含む排ガスが流通する排ガス流路を形成する蒸留膜と、前記蒸留膜の周囲に環状に設けられると共に前記蒸留膜を透過する水蒸気が凝縮される凝縮空間を前記蒸留膜との間に形成する伝熱壁と、前記伝熱壁の周囲に環状に設けられると共に冷却流体が流通する冷却流体流路を前記伝熱壁との間に形成する外壁とを有する熱交換器と、前記凝縮空間にて生成される凝縮水を回収し、該凝縮水を前記改質触媒に供給する凝縮水回収・供給部と、を備える。
【0011】
この燃料電池システムでは、燃料ガス及び酸化ガスが燃料電池スタックに供給されると、この燃料電池スタックにおいて燃料ガス及び酸化ガスが反応し発電する。この発電に伴いホットモジュールからは、水蒸気を含む排ガスが排出され、この排ガスは、熱交換器に供給される。この熱交換器では、蒸留膜によって排ガス流路が形成されており、この蒸留膜と伝熱壁との間には、凝縮空間が形成され、伝熱壁と外壁との間には、冷却流体が流通する冷却流体流路が形成されている。従って、排ガス流路に供給された排ガスに含まれる水蒸気は、蒸留膜を透過して凝縮空間に移動し、伝熱壁の表面上で熱を放出し凝縮される。そして、このようにして凝縮空間にて生成された凝縮水(蒸留水)は、凝縮水回収・供給部によって回収されると共に改質触媒に供給される。
【0012】
このように、この燃料電池システムによれば、ホットモジュールから排出された排ガスから凝縮水を回収し、この凝縮水を改質触媒に供給する。これにより、外部から改質触媒への給水が不要であるので、外部からの水を改質触媒へ供給するための水供給施設を不要にできる。
【0013】
しかも、この燃料電池システムによれば、上述のように、排ガスに含まれる水蒸気から凝縮水を生成するために、交換や再生が不要な蒸留膜が用いられている。従って、凝縮水を安定して生成させるための定期的なメンテナンスを不要にすることができるので、例えばイオン交換樹脂を備えた水処理装置を用いる場合に比して、メンテナンスコストを低減することができる。
【0014】
また、蒸留膜は電気で再生する必要が無いので、蒸留膜の性能を維持するために燃料電池システムにて発電された電力を使用することを回避できる。これにより、例えば電気脱イオン式の水処理装置を用いる場合に比して、燃料電池システムの発電効率を向上させることができる。
【0015】
また、蒸留膜は、筒状に形成されると共に、その内側に排ガス流路を形成し、伝熱壁は、蒸留膜の周囲に環状に設けられ、外壁は、伝熱壁の周囲に環状に設けられている
【0016】
したがって、筒状に形成された蒸留膜の全周に亘って水蒸気が蒸留膜を透過し、この水蒸気から凝縮水を伝熱壁の全周に亘って生成することができる。これにより、凝縮水の生成効率を向上させることができる。
【0017】
なお、請求項2に記載のように、請求項1に記載の燃料電池システムにおいて、湯水を貯留する貯湯タンクをさらに備え、前記冷却流体流路を流通する冷却流体は、前記貯湯タンクと前記冷却流体流路との間で循環する貯湯循環水であっても良い。
【0018】
このように構成されていると、伝熱壁と外壁との間の冷却流体流路を流通する貯湯循環水を、蒸留膜と伝熱壁との間の凝縮空間に移動した水蒸気の熱で加熱することができる。これにより、ホットモジュールから排出される排ガスの熱を、貯湯タンクに貯留される湯水の加熱のために有効に活用することができる。
【0019】
また、請求項3に記載のように、請求項1又は請求項2に記載の燃料電池システムにおいて、前記ホットモジュールは、前記改質触媒、前記燃料電池スタック、及び、前記改質触媒を加熱するバーナにより構成され、前記バーナには、前記燃料電池スタックの燃料極から排出される排ガスを含むバーナガスが供給され、前記排ガス流路には、前記バーナから排出され水蒸気を含む排ガスが流通しても良い。
【0020】
また、請求項4に記載のように、請求項1又は請求項2に記載の燃料電池システムにおいて、前記ホットモジュールは、前記改質触媒及び前記燃料電池スタックにより構成され、前記排ガス流路には、前記燃料電池スタックの燃料極から排出され水蒸気を含む排ガスが流通しても良い。
【0021】
また、請求項5に記載のように、請求項4に記載の燃料電池システムにおいて、前記排ガス流路から排出され水素ガスを含む排ガスが燃料ガスとして供給されるガス燃焼部をさらに備えても良い。
【0022】
また、請求項6に記載のように、請求項4に記載の燃料電池システムにおいて、前記排ガス流路には、前記燃料電池スタックの燃料極から排出され水蒸気を含む排ガスの一部が流通し、前記燃料電池スタックの燃料極から排出された排ガスの残りは、前記改質触媒に供給されても良い。
【発明の効果】
【0023】
以上詳述したように、本発明の燃料電池システムによれば、メンテナンスコストの低減及び発電効率の向上を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の第一実施形態に係る燃料電池システムの全体構成を示す図である。
図2】本発明の第二実施形態に係る燃料電池システムの全体構成を示す図である。
図3】本発明の第三実施形態に係る燃料電池システムの全体構成を示す図である。
図4図1図3に示される熱交換器の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
[第一実施形態]
次に、本発明の第一実施形態について説明する。
【0026】
図1に示されるように、本発明の第一実施形態に係る燃料電池システムS1は、脱硫器12と、改質触媒28と、バーナ30と、燃料電池スタック16と、熱交換器18と、貯湯タンク22と、凝縮水回収・供給部24とを主要な構成として備えている。
【0027】
脱硫器12は、都市ガス管26と接続されている。この脱硫器12は、都市ガス管26を介して供給された都市ガスに含まれる硫黄化合物を吸着除去する。
【0028】
改質触媒28は、原料ガス管36を介して脱硫器12と接続されている。この改質触媒28には、脱硫器12にて硫黄化合物が吸着除去された都市ガスが原料ガス管36を通じて供給される。この改質触媒28は、供給された都市ガス(原料ガス)を、後述する凝縮水供給管104を通じて供給された凝縮水を利用して水蒸気改質する。
【0029】
バーナ30には、後述するスタック排ガス管42が接続されている。このバーナ30は、スタック排ガス管42を通じて供給されたバーナガス(未反応の水素ガスを含むスタック排ガス)を燃焼し、改質触媒28を加熱する。そして、この改質触媒28では、脱硫器12から供給された都市ガス(原料ガス)から、水素ガスを含む燃料ガスが生成される。この燃料ガスは、燃料ガス管46を通じて後述する燃料電池スタック16の燃料極54に供給される。
【0030】
燃料電池スタック16は、固体酸化物形の燃料電池スタックであり、積層された複数の燃料電池セル50を有している。各燃料電池セル50は、電解質層52と、この電解質層52の表裏面にそれぞれ積層された燃料極54及び空気極56とを有している。
【0031】
空気極56(カソード極)には、空気ブロワ58が設けられた酸化ガス管60を通じて酸化ガス(空気)が供給される。この空気極56では、下記式(1)で示されるように、酸化ガス中の酸素と電子とが反応して酸素イオンが生成される。この酸素イオンは、電解質層52を通って燃料極54に到達する。
【0032】
(空気極反応)
1/2O+2e →O2− ・・・(1)
【0033】
一方、燃料極54では、下記式(2)及び式(3)で示されるように、電解質層52を通ってきた酸素イオンが燃料ガス中の水素及び一酸化炭素と反応し、水(水蒸気)及び二酸化炭素と、電子が生成される。燃料極54で生成された電子は、外部回路を通って空気極56に到達する。そして、このようにして電子が燃料極54から空気極56に移動することにより、各燃料電池セル50において発電される。また、各燃料電池セル50は、発電時に上記反応に伴って発熱する。
【0034】
(燃料極反応)
+O2− →HO+2e ・・・(2)
CO+O2− →CO+2e ・・・(3)
【0035】
燃料電池スタック16に接続されたスタック排ガス管42の上流側は、燃料極排ガス管62及び空気極排ガス管64に分岐されており、この燃料極排ガス管62及び空気極排ガス管64は、燃料極54及び空気極56にそれぞれ接続されている。燃料極54から排出された燃料極排ガスと、空気極56から排出された空気極排ガスとは、燃料極排ガス管62及び空気極排ガス管64を通じて排出されると共に、スタック排ガス管42内にて混合されてスタック排ガスとされる。このスタック排ガスは、燃料極排ガスに含まれる未反応の水素ガスを含んでおり、上述の通り、バーナ30にバーナガスとして供給される。
【0036】
この燃料電池システムS1において、上述の改質触媒28、バーナ30、及び、燃料電池スタック16は、モジュール化されており、ホットモジュール66を構成している。このホットモジュール66のうちのバーナ30には、バーナ排ガス管68の一端が接続されている。
【0037】
熱交換器18は、バーナ30の後段(下流側)に設けられている。この熱交換器18は、図4に示されるように、蒸留膜70と、内管72と、外管74とを有している。
【0038】
蒸留膜70は、中空円筒状に形成されている。この蒸留膜70は、水蒸気を透過させ液体を透過させない多孔質膜などで構成されている。この蒸留膜70は、燃料電池スタック16の発熱温度に適応し得るような材料で形成されることが好ましい。この材料としては、例えば、フッ素系樹脂などが挙げられる。この蒸留膜70の内側には、排ガス流路76が形成されており、この排ガス流路76の入口部には、図1に示されるバーナ排ガス管68の他端が接続されている。
【0039】
この排ガス流路76には、上述のバーナ排ガス管68から排出され水蒸気を含む排ガス(バーナ排ガス)が流通する。排ガス流路76の出口部には、図1に示される排気口78が接続されており、排ガス流路76を通過し水蒸気が取り除かれた排ガスは、この排気口78から外部に排出される。
【0040】
内管72は、天壁部80及び底壁部82を有する円筒状に形成されている。この内管72の軸芯部には、上述の蒸留膜70が貫通して配置されている。内管72の外周部は、蒸留膜70の周囲に環状に設けられた伝熱壁84として形成されており、この伝熱壁84と蒸留膜70との間は、蒸留膜70を透過した水蒸気が凝縮される凝縮空間86として形成されている。また、内管72の底壁部82には、凝縮水排水管88が設けられている。
【0041】
外管74は、中空円環状に形成されており、上述の蒸留膜70及び内管72と同軸上に配置されている。この外管74は、伝熱壁84よりも外径が大きく形成されている。この外管74の天壁部には、入口管90が設けられており、この外管74の底壁部には、出口管92が設けられている。この入口管90及び出口管92には、図1に示される貯湯タンク22と接続された貯湯水循環回路94が接続されている。
【0042】
また、この外管74の外周部は、伝熱壁84の周囲に環状に設けられた外壁96として形成されており、この外壁96と伝熱壁84との間は、図1に示される貯湯タンク22から供給された貯湯循環水(熱回収水)が流通する貯湯循環水流路98として形成されている。この貯湯循環水流路98と図1に示される貯湯タンク22との間では、貯湯循環水が循環する。この貯湯循環水流路98は、本発明における「冷却流体流路」の一例であり、この貯湯循環水流路98を流れる貯湯循環水は、本発明における「冷却流体」の一例である。
【0043】
そして、この熱交換器18では、貯湯循環水流路98に貯湯循環水が流通している状態で、排ガス流路76内の排ガスに含まれる水蒸気が蒸留膜70を透過して凝縮空間86に移動すると、この凝縮空間86に移動した水蒸気が伝熱壁84の表面上で熱を放出し凝縮される。また、このようにして凝縮空間86にて生成された凝縮水(蒸留水)は、凝縮水排水管88を通じて排水される。
【0044】
この凝縮水排水管88には、図1に示される凝縮水回収管100を介してドレンタンク102の入口部が接続されている。このドレンタンク102には、上述の熱交換器18にて生成され凝縮水回収管100を通じて回収された凝縮水が貯留される。ドレンタンク102における凝縮水の貯留量が許容量を超えた場合には、この超えた分の凝縮水がドレンタンク102から排出される。このドレンタンク102の出口部には、上述の改質触媒28に接続された凝縮水供給管104が接続されている。
【0045】
この凝縮水供給管104には、ポンプ106が設けられている。この凝縮水回収管100、ドレンタンク102、及び、ポンプ106は、凝縮水回収・供給部24を構成している。
【0046】
この凝縮水回収・供給部24において、熱交換器18に形成された凝縮空間86(図4参照)にて生成された凝縮水は、凝縮水回収管100を通じてドレンタンク102に回収され、このドレンタンク102に回収された凝縮水は、ポンプ106の作動に伴い凝縮水供給管104を通じて改質触媒28に供給され、この改質触媒28にて水蒸気改質用の水蒸気として利用される。
【0047】
続いて、第一実施形態に係る燃料電池システムS1の作用及び効果について説明する。
【0048】
以上詳述したように、第一実施形態に係る燃料電池システムS1では、改質触媒28から燃料ガスが燃料電池スタック16の燃料極54に供給されると共に、空気ブロワ58が作動して酸化ガス管60から酸化ガスが燃料電池スタック16の空気極56に供給されると、この燃料電池スタック16において燃料ガス及び酸化ガスが反応し発電する。この発電に伴い燃料電池スタック16からは、未反応の水素ガスを含むスタック排ガスが排出され、このスタック排ガスは、バーナガスとしてバーナ30にて燃焼され、このバーナ30からは、バーナ排ガスが排出される。このバーナ排ガスは、水蒸気を含んでおり、バーナ排ガス管68を通じて熱交換器18に供給される。
【0049】
この熱交換器18では、図4に示されるように、蒸留膜70によって排ガス流路76が形成されており、この蒸留膜70と伝熱壁84との間には、凝縮空間86が形成され、伝熱壁84と外壁96との間には、貯湯循環水が流通する貯湯循環水流路98が形成されている。従って、排ガス流路76に供給されたバーナ排ガスに含まれる水蒸気は、蒸留膜70を透過して凝縮空間86に移動し、伝熱壁84の表面上で熱を放出し凝縮される。
【0050】
そして、このようにして凝縮空間86にて生成された凝縮水(蒸留水)は、図1に示されるドレンタンク102に回収され、このドレンタンク102に回収された凝縮水は、凝縮水供給管104を通じて改質触媒28に供給され、この改質触媒28にて水蒸気改質用の水蒸気として利用される。
【0051】
このように、第一実施形態に係る燃料電池システムS1によれば、バーナ30から排出された排ガスから凝縮水を回収し、この凝縮水を改質触媒28に供給する。従って、バーナ30から排出される排ガスを、改質触媒28における水蒸気改質用の水蒸気を生成するために有効に活用することができる。
【0052】
また、上述のように、バーナ30から排出された排ガスから凝縮水を回収し、この凝縮水を改質触媒28に供給するので、外部から改質触媒28への給水が不要である。これにより、外部からの水を改質触媒28へ供給するための水供給施設を不要にできる。
【0053】
しかも、この燃料電池システムS1によれば、上述のように、排ガスに含まれる水蒸気から凝縮水を生成するために、交換や再生が不要な蒸留膜70(図4参照)が用いられている。従って、凝縮水を安定して生成させるための定期的なメンテナンスを不要にすることができるので、例えばイオン交換樹脂を備えた水処理装置を用いる場合に比して、メンテナンスコストを低減することができる。
【0054】
また、蒸留膜70は電気で再生する必要が無いので、蒸留膜70の性能を維持するために燃料電池システムS1にて発電された電力を使用することを回避できる。これにより、例えば電気脱イオン式の水処理装置を用いる場合に比して、燃料電池システムS1の発電効率を向上させることができる。
【0055】
また、図4に示されるように、熱交換器18に設けられた蒸留膜70は、筒状に形成されると共に、その内側に排ガス流路76を形成しており、伝熱壁84は、蒸留膜70の周囲に環状に設けられ、外壁96は、伝熱壁84の周囲に環状に設けられている。従って、筒状に形成された蒸留膜70の全周に亘って水蒸気が蒸留膜70を透過し、この水蒸気から凝縮水を伝熱壁84の全周に亘って生成することができる。これにより、凝縮水の生成効率を向上させることができる。
【0056】
また、図1に示されるように、燃料電池システムS1には、湯水を貯留する貯湯タンク22が備えられており、この貯湯タンク22から供給された貯湯循環水は、図4に示される伝熱壁84と外壁96との間に形成された貯湯循環水流路98を流通する。従って、この貯湯循環水を、蒸留膜70と伝熱壁84との間の凝縮空間86に移動した水蒸気の熱で加熱することができる。これにより、図1に示されるバーナ30から排出された排ガスの熱を貯湯タンク22に貯留される湯水の加熱のために有効に活用することができる。
【0057】
続いて、第一実施形態の変形例について説明する。
【0058】
上述の第一実施形態において、バーナ30には、燃料電池スタック16の燃料極54から排出された燃料極排ガスと、燃料電池スタック16の空気極56から排出された空気極排ガスとを含むスタック排ガスがバーナガスとして供給される。しかしながら、バーナ30には、燃料電池スタック16の燃料極54から排出された燃料極排ガスと、外部(燃料電池スタック16の空気極56以外)から供給された空気ガスとの混合ガスがバーナガスとして供給されても良い。
【0059】
また、上述の第一実施形態において、熱交換器18にて生成されドレンタンク102に貯留された凝縮水は、改質触媒28に供給されて、この改質触媒28における水蒸気改質に利用される。しかしながら、ドレンタンク102に貯留された凝縮水は、改質触媒28における水蒸気改質に利用されることに加え、その他で利用されても良い。
【0060】
また、上述の第一実施形態では、熱交換器18において凝縮水を生成するための冷却流体の一例として、貯湯タンク22から供給された貯湯循環水が用いられるが、貯湯循環水以外の冷却水が用いられても良い。また、熱交換器18において凝縮水を生成するための冷却流体として、例えば、酸化ガス管60を通じて空気極56に供給される酸化ガスなどの気体や、その他の気体及び液体が適宜用いられても良い。
【0061】
また、上述の第一実施形態では、図4に示されるように、蒸留膜70が筒状に形成されると共に、この筒状に形成された蒸留膜70の内側が排ガス流路76として形成されている。しかしながら、蒸留膜70は、例えば、排ガス流路76を形成する管体における周方向の一部のみを構成するなど、筒状以外の形状で形成されていても良い。また、伝熱壁84及び外壁96も、凝縮空間86及び貯湯循環水流路98(冷却流体流路)を形成できる構造であれば、例えば平板状や円弧状に形成されるなど、環状以外の形状で形成されていても良い。
【0062】
[第二実施形態]
次に、本発明の第二実施形態について説明する。
【0063】
図2に示される第二実施形態に係る燃料電池システムS2は、上述の第一実施形態に係る燃料電池システムS1(図1参照)に対し、次のように構造が変更されている。なお、第二実施形態において、上述の第一実施形態と同様の構造については、同一の符号を用い、その説明を省略する。
【0064】
第二実施形態に係る燃料電池システムS2において、ホットモジュール66は、改質触媒28及び燃料電池スタック16により構成されており、上述のバーナ30(図1)を備えない構成とされている。このホットモジュール66では、燃料電池スタック16の排熱により改質触媒28が加熱される。
【0065】
また、燃料電池スタック16の空気極56には、空気極排ガス管64が接続されており、空気極56から排出された排ガスは、この空気極排ガス管64を通じて外部に排出される。
【0066】
一方、燃料電池スタック16の燃料極54には、燃料極排ガス管62の一端が接続されており、この燃料極排ガス管62の他端は、上述の熱交換器18における排ガス流路76(図4参照)の入口部に接続されている。この排ガス流路76には、上述の燃料電池スタック16の燃料極54から排出され水蒸気を含む排ガス(燃料極排ガス)が流通する。
【0067】
そして、この熱交換器18では、貯湯循環水流路98に貯湯循環水が流通している状態で、排ガス流路76内の排ガスに含まれる水蒸気が蒸留膜70を透過して凝縮空間86に移動すると、この凝縮空間86に移動した水蒸気が伝熱壁84の表面上で熱を放出し凝縮される。また、このようにして凝縮空間86にて生成された凝縮水(蒸留水)は、上述のように、凝縮水回収・供給部24により回収され、この改質触媒28にて水蒸気改質用の水蒸気として利用される。
【0068】
なお、蒸留膜方式において、燃料極54からの排ガスに含まれる揮発性成分は、水蒸気と共に揮発同伴する特性があるが、例えば、燃料極54からの排ガスに比較的多く含まれる可能性のあるアンモニアについては、原水のpHが6以下であれば透過側へのアンモニアの混入が無いことが示されている(化学工学論文集 第19巻 第2号(1993))、膜蒸留法における揮発性および不揮発性成分の透過特性、黒川ら)。
【0069】
また、この第二実施形態に係る燃料電池システムS2は、ガス燃焼部120をさらに備える。このガス燃焼部120は、例えば、ガスエンジンやガスタービンなどその他の発電システムとされる。ガス燃焼部120の入口部は、熱交換器排ガス管122を介して上述の熱交換器18における排ガス流路76(図4参照)の出口部と接続されている。そして、排ガス流路76から排出され水素ガスを含む排ガスは、燃料ガスとしてガス燃焼部120に供給され燃焼される。
【0070】
この第二実施形態に係る燃料電池システムS2によれば、排ガス流路76から排出され水素ガスを含む排ガスを燃料ガスとしてガス燃焼部120に供給することができる。従って、この排ガス流路76から排出された排ガスをガス燃焼部120における燃料ガスとして有効に活用することができる。
【0071】
なお、第二実施形態に係る燃料電池システムS2において、燃料電池スタック16の空気極56から排出された排ガスは、空気極排ガス管64を通じて外部に排出されるが、燃料電池スタック16の燃料極54から排出され水蒸気を含む排ガスと混合されて上述の熱交換器18における排ガス流路76(図4参照)に供給されても良い。
【0072】
[第三実施形態]
次に、本発明の第三実施形態について説明する。
【0073】
図3に示される第三実施形態に係る燃料電池システムS3は、上述の第一実施形態に係る燃料電池システムS1(図1参照)に対し、次のように構造が変更されている。なお、第三実施形態において、上述の第一実施形態と同様の構造については、同一の符号を用い、その説明を省略する。
【0074】
第三実施形態に係る燃料電池システムS3において、ホットモジュール66は、改質触媒28及び燃料電池スタック16により構成されており、上述のバーナ30(図1)を備えない構成とされている。このホットモジュール66では、燃料電池スタック16の排熱により改質触媒28が加熱される。
【0075】
また、燃料電池スタック16の空気極56には、空気極排ガス管64が接続されており、空気極56から排出された排ガスは、この空気極排ガス管64を通じて外部に排出される。一方、燃料電池スタック16の燃料極54には、燃料極排ガス管62の一端が接続されている。この燃料極排ガス管62の他端側は、一対の排ガス供給管124,126に分岐されている。
【0076】
一方の排ガス供給管124は、上述の熱交換器18における排ガス流路76(図4参照)の入口部に接続されている。この排ガス流路76には、上述の燃料電池スタック16の燃料極54から排出され水蒸気を含む排ガス(燃料極排ガス)の一部が流通する。
【0077】
そして、この熱交換器18では、貯湯循環水流路98に貯湯循環水が流通している状態で、排ガス流路76内の排ガスに含まれる水蒸気が蒸留膜70を透過して凝縮空間86に移動すると、この凝縮空間86に移動した水蒸気が伝熱壁84の表面上で熱を放出し凝縮される。また、このようにして凝縮空間86にて生成された凝縮水(蒸留水)は、上述のように、凝縮水回収・供給部24により回収され、この改質触媒28に供給される。
【0078】
なお、蒸留膜方式において、燃料極54からの排ガスに含まれる揮発性成分は、水蒸気と共に揮発同伴する特性があるが、例えば、燃料極54からの排ガスに比較的多く含まれる可能性のあるアンモニアについては、原水のpHが6以下であれば透過側へのアンモニアの混入が無いことが示されている(化学工学論文集 第19巻 第2号(1993))、膜蒸留法における揮発性および不揮発性成分の透過特性、黒川ら)。
【0079】
他方の排ガス供給管126は、上述の原料ガス管36に接続されている。この原料ガス管36では、上述の燃料電池スタック16の燃料極54から排出された排ガス(未反応の水素ガスも含む)の残りと、脱硫器12にて硫黄化合物が吸着除去された都市ガスとが混合される。この原料ガス管36にて混合されたガスは、原料ガスとして改質触媒28に供給される。
【0080】
そして、この改質触媒28では、原料ガス管36を通じて供給された原料ガスが、凝縮水供給管104を通じて供給された凝縮水を利用して水蒸気改質される。
【0081】
この第三実施形態に係る燃料電池システムS3によれば、燃料電池スタック16の燃料極54から排出された排ガスを、熱交換器18の排ガス流路76(図4参照)及び改質触媒28にそれぞれ供給することができる。従って、この燃料電池スタック16の燃料極54から排出された排ガスを、熱交換器18における凝縮水生成と、改質触媒28における原料ガスとして有効に活用することができる。
【0082】
なお、第三実施形態に係る燃料電池システムS3において、燃料電池スタック16の空気極56から排出された排ガスは、空気極排ガス管64を通じて外部に排出されるが、燃料電池スタック16の燃料極54から排出され水蒸気を含む排ガスと混合されて上述の熱交換器18における排ガス流路76(図4参照)に供給されても良い。
【0083】
また、上述の第一実施形態における複数の変形例のうち第二及び第三実施形態に適用可能な変形例は、第二及び第三実施形態の変形例として採用されても良い。
【0084】
以上、本発明の第一乃至第三実施形態について説明したが、本発明は、上記に限定されるものでなく、上記以外にも、その主旨を逸脱しない範囲内において種々変形して実施可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0085】
S1,S2,S3…燃料電池システム、12…脱硫器、16…燃料電池スタック、18…熱交換器、22…貯湯タンク、24…凝縮水回収・供給部、26…都市ガス管、28…改質触媒、30…バーナ、36…原料ガス管、42…スタック排ガス管、46…燃料ガス管、50…燃料電池セル、52…電解質層、54…燃料極、56…空気極、58…空気ブロワ、60…酸化ガス管、62…燃料極排ガス管、64…空気極排ガス管、66…ホットモジュール、68…バーナ排ガス管、70…蒸留膜、72…内管、74…外管、76…排ガス流路、78…排気口、80…天壁部、82…底壁部、84…伝熱壁、86…凝縮空間、88…凝縮水排水管、90…入口管、92…出口管、94…貯湯水循環回路、96…外壁、98…貯湯循環水流路(冷却流体流路の一例)、100…凝縮水回収管、102…ドレンタンク、104…凝縮水供給管、106…ポンプ、120…ガス燃焼部、122…熱交換器排ガス管、124,126…排ガス供給管
図1
図2
図3
図4