【実施例】
【0022】
まず、本発明の一実施例である湿式錠剤成形装置100を用いた成形ライン1について、
図1に基づいて説明する。
【0023】
成型ライン1は、湿式錠剤成形装置100と、錠剤の表面を加熱乾燥させる表面乾燥機2と、錠剤の内部を加熱乾燥させる本乾燥機3と、重量選別機4と、で構成されている。
【0024】
湿式錠剤成形装置100は、水及び/又は有機溶媒で均一に湿潤化された原料(以下、「湿製原料」という)を錠剤に成形する。錠剤は、湿式錠剤成形装置100の下部から排出され、表面乾燥機2のベルトコンベア22上に落下するようになっている。湿式錠剤成形装置100の詳細については後述する。
【0025】
表面乾燥機2は、錠剤表面を加熱乾燥するチャンバー21と、チャンバー21内に配置されて湿式錠剤成形装置100から送られた錠剤を本乾燥機3に搬送するベルトコンベア22と、を備えている。錠剤が所定時間(例えば、5分間)かけてチャンバー21内を通過することで、錠剤表面が乾燥する。
【0026】
本乾燥機3は、錠剤の内部を加熱乾燥するチャンバー31と、チャンバー31内に配置されて、所定時間(例えば、3時間)をかけて時計回りに1回転するターンテーブル32と、を備えている。ターンテーブル32上には、錠剤を収容する6つの容器33が配置されている。本乾燥が終わると、容器33は反転してバケットコンベヤ34に錠剤を移し替える。
【0027】
重量選別機4は、バケットコンベア34を介して本乾燥機3から搬送された錠剤の重量を計測する。重量が許容範囲内の錠剤は、良品としてターンテーブル41上の良品回収容器42に集められる。また、重量が許容範囲外の錠剤は、不良品として良品とは区別されて、不良品回収容器43に集められる。
【0028】
次に、湿式錠剤成形装置100について、
図2〜4に基づいて説明する。
図2は、湿式錠剤成形装置100の正面図であり、
図3は、エジェクタ部132を省略した湿式錠剤成形装置100の右側面図であり、
図4は、ターンテーブル134上の第1の成形型部131の配置関係を示す図である。
【0029】
湿式錠剤成形装置100を用いて錠剤に成形される湿製原料は、例えば、薬物あるいは薬物を含有した機能性微粒子に対し、マントニール、乳糖、セルロース類糖の賦形剤、デンプン類の崩壊剤を混合し、結合剤を水及び/又は有機溶媒で調製したものを湿式練合されたものであり、乾式原料と比べて粘性を有している。なお、「機能性微粒子」とは、薬物あるいは薬物を含有した粒径400μm以下の微粒子に苦味マスキング、徐放性、腸溶性等の機能性膜をコーティングしたものをいう。
【0030】
湿式錠剤成形装置100は、予め撹拌混合された湿製原料を収容するホッパー110と、ホッパー110の下端に接続されて湿製原料を水平方向Hに送る原料送り機構120と、原料送り機構120から供給される原料を錠剤に成形する成形機構130と、を備えている。符号101は、湿式錠剤成形装置100を収容するカバーである。
【0031】
ホッパー110は、湿製原料を収容するケーシング111と、湿製原料を垂直方向Vの下方に送るスクリュー112と、スクリュー112の外周側に配置されてスクリュー112の回転方向とは逆向きに回転する回転翼113と、を備えている。スクリュー112と回転翼113とが相互に逆向きに回転しながら、湿製原料を垂直方向Vの下方に送ることにより、粘性を有する湿製原料がケーシング111にこびりつくことが抑制されている。湿製原料は、ホッパー110の投入口110aから投入され、ホッパー110の排出口110bから原料送り機構120に送られる。なお、符号114は、スクリュー112を回転させるモータであり、符号115は、回転翼113を回転させるモータであり、符号116は、投入口110aを塞ぐ開閉自在なカバーである。
【0032】
原料送り機構120は、湿製原料を収容するケーシング121と、ケーシング121内で湿製原料を水平方向Hに送るスクリュー122と、スクリュー122を駆動するスクリュー駆動部としてのサーボモータ123と、サーボモータ123を制御するスクリュー制御部124と、スクリュー122に作用する圧力を検知する圧力検知部125と、を備えている。ホッパー110から送られた湿製原料は、ケーシング121内を水平方向Hに向かって送られる。サーボモータ123は、モータ114、115、及び後述するターンテーブル用モータ134と同期運転するように制御されている。
【0033】
成形機構130は、第1の成形型部131と、エジェクタ部132と、第2の成形型部133と、を備えている。
【0034】
第1の成形型部131は、ターンテーブル134上に複数設置されており、本実施例では、6つの第1の成形型部131がまとまって配置されて第1の成形型部群Gを形成し、この第1の成形型部群Gは、ターンテーブル134の周縁に等間隔で6つ配置されている。ターンテーブル134は、ターンテーブル用モータ134aで回転軸134b回りに回動可能であり、第1の成形型部群Gは、ターンテーブル134が回動することにより、最上端で湿製原料が充填される配置(P1)、第2の成形型部133を清掃し離型剤を塗布する配置(P2)、最下端で湿製原料を錠剤に成形する配置(P3)、錠剤を離型する配置(P4)、第1の成形型部131を清掃する配置(P5)、及び、第1の成形型部131に離型剤を塗布する配置(P6)を順に繰り返すようになっている。離型剤は、シリコーン、流動パラフィン等の錠剤に影響を与えないものを少量使用する。
【0035】
湿製原料が充填される配置(P1)において、第1の成形型部131は、ケーシング121の開口部121aと対向するように配置されており、スクリュー122で送られる湿製原料は、ケーシング121から排出されて第1の成形型部131内に充填される。
【0036】
エジェクタ部132は、図示しないエアシリンダによって水平方向Hに往復動可能であり、後述する第1の形成面131aに接続されている。
【0037】
第2の成形型部133は、ターンテーブル134の最下端における第1の成形型部131と対向するように配置されている。第2の成形型部133は、軸部135回りに搖動可能に取り付けられている。
【0038】
次に、成形機構130の作用について、
図5に基づいて説明する。
図5は、構成を簡略化した成形機構130を示す。
【0039】
図5(a)は、第1の成形型部131が、ターンテーブル134の最上端に位置している状態を示す。このとき、第1の成形型部131は、ケーシング121の開口部121aと対向している。第1の成形型部131は、エジェクタ部132に連結された第1の形成面131aを備えている。
【0040】
スクリュー121が湿製原料を水平方向Hの下流側、即ち、
図5の紙面右側に向かって送り、湿製原料が第1の成形型部131内に充填され始めると、湿製原料を押し出すスクリュー122の圧力に応じてエジェクタ部132が
図4の紙面右側にスライドする。
【0041】
図5(b)は、湿製原料が第1の成形型部131に充填された状態を示す。湿製原料が第1の形成型部131内に充填されることにより、錠剤tの一方側面s1が、第1の形成面131aに応じた形状に成形される。
【0042】
湿製原料が第1の形成型部131内に充填されると、スクリュー121に作用する圧力が予め設定された限界圧力に達したことを圧力検知部125が検知し、スクリュー制御部124が、スクリュー121を僅かに逆回転させて湿製原料に作用する圧力を逃がした後にスクリュー121の回転を止める。これにより、湿製原料を所定量だけ第1の成形型部131内に供給することができる。また、湿製原料に作用する圧力を逃がすことにより、第1の成形型部131がケーシング121に対してせん断方向に移動する際に、錠剤tがケーシング121に擦れて錠剤tの表面に荒れや削れや生じることに起因する錠剤の重量のばらつきや、形状異常が抑制される。なお、限界圧力は、錠剤の重量に応じて任意に変更可能であり、これにより、多様な錠剤に対応することができる。スクリュー121の回転が止まった後に、ターンテーブル134が回転して、第1の成形型部131がケーシング121に対してせん断方向、即ち、
図5の紙面垂直方向に移動する。
【0043】
図5(c)は、第1の成形型部131がターンテーブル134の最下端に位置している状態を示す。第1の成形型部131がターンテーブル134の最下端まで移動すると、第1の成形型部131と第2の成形型部133とが接近する。第2の成形型部133は、第2の形成面133aを備えている。第2の形成面133aは、ネジ部133bを介して第2の形成型部133に取り付けられている。
【0044】
図5(d)は、錠剤tを成形している状態を示す。第1の成形型部131と第2の成形型部133とが密着した状態で、エジェクタ部132が第1の成形面131aを第2の成形面133aに近づけるように水平方向Hにスライドすることにより、錠剤tの他方側面s2が、第2の成形面に応じた形状に成形される。このとき、エジェクタ部132のプレス圧は、錠剤の易溶性又は易崩壊性が確保される範囲内で任意に設定される。また、エジェクタ部132のストローク量を調整することにより、錠剤tの厚みを調整することができる。
【0045】
図5(e)は、錠剤tを離型している状態を示す。第2の成形型部133が第1の成形型部131から離間し、エジェクタ部132が水平方向Hに更にスライドすることにより、錠剤tが第1の成形型部131から離型される。
【0046】
次に、湿式錠剤成形装置100を用いて成形された錠剤の重量の均一性について説明する。表1は、4つの型(型1〜4)を備えた湿式錠剤成形装置100によって成形された錠剤の重量(単位:g)を示している。なお、表1に示す重量は、湿式錠剤成形装置100で成形した錠剤を湿状態で測定した値である。また、表2は、表1における錠剤100個における重量のバラつきを示す。
錠剤の原料は、アンブロキソール塩酸塩を結晶セルロース(旭化成ケミカルズ株式会社製、商品名:セルフィアCP102)の核に結合剤を用いてレイヤリングし、得られた薬物含有の微粒子核に徐放化のためのエチルセルロースに可塑効果のある賦形剤を添加した水・有機溶媒混合系液を転動流動層造粒乾燥機(株式会社パウレック社製、商品名:MP−01)を用いてスプレーコーティングし、アンブロキソール塩酸塩含有微粒子(薬物含有量:20%)を得て、この微粒子6部に対してPVP30%水溶液1部を加えて混練することで得られたものである。
【0047】
【表1】
【0048】
【表2】
【0049】
表1、2に示すように、湿式錠剤成形装置100によって成形された錠剤100個は、重量のばらつきが3.24%であり、十分に良好な精度が得られることが確認できた。また、このように精度良く製せられた錠剤の崩壊時間は、日本薬局方の崩壊試験法に則り測定し、19〜24秒と易崩壊性であった。
【0050】
このようにして、本発明にかかる湿式錠剤成形装置100は、スクリュー122が湿製原料を水平方向Hに強制的に送ることにより、湿製原料の粘性に起因したこびりつきが抑制されるため、湿製原料を効率的に錠剤に成形することができる。また、第1の成形面131aと第2の成形面133aとを接近させて湿製原料を圧縮する際に、錠剤の錠剤硬度に応じてエジェクト部132のプレス圧を調整することにより、軟質な錠剤を成形可能なため、易溶性又は易崩壊性を有する錠剤を成形することができる。
【0051】
なお、本発明は、本発明の精神を逸脱しない限り種々の改変をなすことができ、そして、本発明が該改変されたものにも及ぶことは当然である。