(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6096743
(24)【登録日】2017年2月24日
(45)【発行日】2017年3月15日
(54)【発明の名称】柱頭スリーブを連結手段としたPCa製部材相互へのグラウト充填方法
(51)【国際特許分類】
E04G 21/12 20060101AFI20170306BHJP
E04B 1/21 20060101ALI20170306BHJP
E04C 5/18 20060101ALI20170306BHJP
【FI】
E04G21/12 105E
E04B1/21 C
E04C5/18 102
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-224185(P2014-224185)
(22)【出願日】2014年11月4日
(65)【公開番号】特開2016-89450(P2016-89450A)
(43)【公開日】2016年5月23日
【審査請求日】2016年11月17日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】390005186
【氏名又は名称】日本スプライススリーブ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100113321
【弁理士】
【氏名又は名称】熊田 武司
(74)【代理人】
【識別番号】100109966
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 哲夫
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 重隆
(72)【発明者】
【氏名】石川 利彦
(72)【発明者】
【氏名】緒方 努
【審査官】
西村 隆
(56)【参考文献】
【文献】
特開2007−255091(JP,A)
【文献】
特開2011−226069(JP,A)
【文献】
特開2008−002213(JP,A)
【文献】
特開昭48−065720(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/58
E04B 1/21
E04G 21/12
E04C 5/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の工程よりなる柱頭スリーブを連結手段としたPCa製部材相互へのグラウト充填方法。
1.PCa製柱の柱頭に一端面が露出するように柱主筋が内側下方空間に配設された複数のスリーブを埋設した柱を構築する
2.複数のスリーブが埋設された柱頭上へ小間隙を有して他のPCa製柱又はPCa製梁やPCa製仕口材等のPCa製水平部材を、それらから下方へ突出している主筋を該スリーブの内側上方空間に挿入しながら所定位置に構築する
3.スリーブの下方側に位置するグラウト供給管と接続した注入口より、1本のスリーブを残して複数のスリーブへスリーブ毎に注入手段を使用してグラウトを充填する
4.複数のスリーブ空間へのグラウト充填が過不足なく行われたかどうかを小間隙とした上目地部より確認する
5.PCa製柱とPCa製柱又はPCa製水平部材との間の上目地部となる小間隙の外周部にモルタルシール、木製型枠、エアーホース等のシール部材を間挿する
6.残した1本のスリーブの下方側に位置するグラウト供給管と接続した注入口より、該スリーブ空間や空隙及び上目地部となる小間隙全体に注入手段を使用してグラウトを充填する
7.小間隙の目地部までグラウトが充填されたかをシール部に設けたグラウト充填確認孔より確認する
8.グラウト供給管を含めた注入口側及びシール部に設けたグラウト充填確認孔を塞ぐ
【請求項2】
下記の工程よりなる柱頭スリーブを連結手段としたPCa製部材相互へのグラウト充填方法。
1.PCa製柱の柱頭に一端面が露出するように柱主筋が内側下方空間に配設された複数のスリーブを埋設した柱を構築する
2.複数のスリーブが埋設された柱頭上へ小間隙を有してPCa製梁やPCa製仕口材等のPCa製水平部材を配設し、該PCa製水平部材上に他の上側PCa製柱をその下方から突出している主筋を該PCa製水平部材の貫通孔を貫通させて該スリーブの内側上方空間に挿入しながら所定位置に構築する
3.スリーブの下方側に位置するグラウト供給管と接続した注入口より、1本のスリーブを残して複数のスリーブへスリーブ毎に注入手段を使用してグラウトを充填する
4.複数のスリーブ空間へのグラウト充填が過不足なく行われたかどうかを小間隙とした上目地部より確認する
5.PCa製柱とPCa製水平部材又はPCa製水平部材とPCa製柱との間の上・下目地部となる小間隙の外周部にモルタルシール、木製型枠、エアーホース等のシール部材を間挿する
6.残した1本のスリーブの下方側に位置するグラウト供給管と接続した注入口より、該スリーブ空間や空隙及び上・下目地部となる小間隙及び貫通孔全体に注入手段を使用してグラウトを充填する
7.小間隙の目地部までグラウトが充填されたかをシール部に設けたグラウト充填確認孔及び/又は上側PCa製柱に設けたグラウト排出通路からのグラウトの排出により確認する
8.グラウト供給管を含めた注入口側及びシール部に設けたグラウト充填確認孔を塞ぐ
【請求項3】
上記工程3.の残りの1本のスリーブは、PCa製柱の構造体内側から最奥に位置するスリーブとしたことを特徴とする請求項1又は2記載の柱頭スリーブを連結手段としたPCa製部材相互へのグラウト充填方法。
【請求項4】
上記工程3.の注入手段は、逆止弁付注入ノズルを介して簡易ポンプのノズル又は手動ポンプのホースとしたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか記載の柱頭スリーブを連結手段としたPCa製部材相互へのグラウト充填方法。
【請求項5】
上記工程6.の注入手段は、電動式ポンプを利用した高圧力送出手段としたことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか記載の柱頭スリーブを連結手段としたPCa製部材相互へのグラウト充填方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、PCa製柱やPCa製梁等で構築した構造体におけるPCa製柱相互又はPCa製柱とPCa製梁やPCa製仕口材等のPCa製水平部材との接合部相互及びPCa製水平部材を介してのPCa製柱の接合部相互の連結を該PCa製柱の上端部に配置したスリーブへのグラウトの充填によって達成するグラウト充填方法に関する。
【背景技術】
【0002】
PCa製柱やPCa製梁等を使用しての構造体は、それらPCa製柱相互の垂直部材の接合部又はPCa製柱とPCa製梁等のPCa製水平部材との接合部において、両者が強固に一体化されるように接合する必要がある。そこで該PCa製柱を製造する段階において該PCa製柱の柱頭部に筒状のスリーブを埋め込み、該スリーブの内側下方空間の中程に至るまで柱主筋を配置しておく。そのPCa製柱に他のPCa製柱や梁等から突出した鉄筋を該スリーブへ挿入し、該鉄筋をスリーブの内側上方空間の中程まで挿入し、そのスリーブ内側空間の空隙となっている鉄筋周囲をモルタルや合成樹脂混入モルタル、又はそれらに類似した材料等の充填材(以下、単にグラウトという)を充填させることにより鉄筋を固定し、PCa製部材相互を強固に一体接合できるようにしている。
【0003】
その際、スリーブの内側空間にグラウトを充填する方法として、下記するように、いくつかの公知手段がある。
【0004】
特許文献1は、プレキャストパネルゾーンと下部柱部材との接合工法であり、この接合工法は、プレキャストパネルゾーンと下部の目地空間及び鉄筋挿通孔と主筋との隙間に、グラウトを一工程により同時注入して一体に接合する方法である。
【0005】
また、特許文献2は、上階の柱用接続鉄筋を柱用仕口部の貫通孔を貫通させて下階の柱の継手部材に至るまで挿入し、該継手部材にグラウトを充填して硬化させた後、柱用仕口部の下目地部にグラウトを供給することで、該下目地部と貫通孔及び該貫通孔と連通する上目地部とに該グラウトが充填されることを特徴とするグラウト注入方法である。
【0006】
上記特許文献1は、PCa製柱の上面から柱主筋の柱用接続鉄筋が上方へ突出しているため、PCa製梁を一体化したPCa製パネルゾーンを、柱部材の上部で水平方向に移動することができなかったし、PCa製パネルゾーンの下端に形成した下目地部内と鉄筋挿通孔と主筋との隙間にグラウト注入する工法であり、上目地部内にグラウトを注入する方法ではなかった。
【0007】
また、特許文献2は、下目地部、貫通孔及び上目地部とを連続的にグラウト充填する方法であり、空間や隙間に空気溜まりが生じやすい方法であったし、そのことを確認できるものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2003−313944号公報
【特許文献2】特開2006−144251号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記欠点を解決したもので、PCa製部材相互の配設を容易とし、且つ、その接合部に生じている空間や隙間に空気溜まりが生じないようにグラウトを充填することができ、更に、そのグラウトの充填状態を外側から目視できることを可能としたグラウト充填方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、下記の工程よりなる柱頭スリーブを連結手段としたPCa製部材相互へのグラウト充填方法を特徴とする。
1.PCa製柱の柱頭に一端面が露出するように柱主筋が内側下方空間に配設された複数のスリーブを埋設した柱を構築する
2.複数のスリーブが埋設された柱頭上へ小間隙を有して他のPCa製柱又はPCa製梁やPCa製仕口材等のPCa製水平部材を、それらから下方へ突出している主筋を該スリーブの内側上方空間に挿入しながら所定位置に構築する
3.スリーブの下方側に位置するグラウト供給管と接続した注入口より、1本のスリーブを残して複数のスリーブへスリーブ毎に注入手段を使用してグラウトを充填する
4.複数のスリーブ空間へのグラウト充填が過不足なく行われたかどうかを小間隙とした上目地部より確認する
5.PCa製柱とPCa製柱又はPCa製水平部材との間の上目地部となる小間隙の外周部にモルタルシール、木製型枠、エアーホース等のシール部材を間挿する
6.残した1本のスリーブの下方側に位置するグラウト供給管と接続した注入口より、該スリーブ空間や空隙及び上目地部となる小間隙全体に注入手段を使用してグラウトを充填する
7.小間隙の目地部までグラウトが充填されたかをシール部に設けたグラウト充填確認孔より確認する
8.グラウト供給管を含めた注入口側及びシール部に設けたグラウト充填確認孔を塞ぐ
【0011】
また、下記の工程よりなる柱頭スリーブを連結手段としたPCa製部材相互へのグラウト充填方法を特徴とする。
1.PCa製柱の柱頭に一端面が露出するように柱主筋が内側下方空間に配設された複数のスリーブを埋設した柱を構築する
2.複数のスリーブが埋設された柱頭上へ小間隙を有してPCa製梁やPCa製仕口材等のPCa製水平部材を配設し、該PCa製水平部材上に他の上側PCa製柱をその下方から突出している主筋を該PCa製水平部材の貫通孔を貫通させて該スリーブの内側上方空間に挿入しながら所定位置に構築する
3.スリーブの下方側に位置するグラウト供給管と接続した注入口より、1本のスリーブを残して複数のスリーブへスリーブ毎に注入手段を使用してグラウトを充填する
4.複数のスリーブ空間へのグラウト充填が過不足なく行われたかどうかを小間隙とした上目地部より確認する
5.PCa製柱とPCa製水平部材又はPCa製水平部材とPCa製柱との間の上・下目地部となる小間隙の外周部にモルタルシール、木製型枠、エアーホース等のシール部材を間挿する
6.残した1本のスリーブの下方側に位置するグラウト供給管と接続した注入口より、該スリーブ空間や隙間及び上・下目地部となる小間隙及び貫通孔全体に注入手段を使用してグラウトを充填する
7.小間隙の目地部までグラウトが充填されたかをシール部に設けたグラウト充填確認孔及び/又は上側PCa製柱に設けたグラウト排出通路からのグラウトの排出により確認する
8.グラウト供給管を含めた注入口側及びシール部に設けたグラウト充填確認孔を塞ぐ
【0012】
更に、上記工程3.の残りの1本のスリーブは、PCa製柱の構造体内側から最奥に位置するスリーブとした柱頭スリーブを連結手段としたPCa製部材相互へのグラウト充填方法を特徴とする。
【0013】
また、上記工程3.の注入手段は、逆止弁付注入ノズルを介して簡易ポンプのノズル又は手動ポンプのホースとした柱頭スリーブを連結手段としたPCa製部材相互へのグラウト充填方法を特徴とする。
【0014】
更に、上記工程6.の注入手段は、電動式ポンプを利用した高圧力送出手段とした柱頭スリーブを連結手段としたPCa製部材相互へのグラウト充填方法を特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明のグラウト充填方法により、PCa製柱と連結する他のPCa製柱や他のPCa製水平部材を、その設置位置を前後左右に移動しながら調整設置することができ、部材相互を適正位置へ配設することが可能となった。
【0016】
また、グラウト充填の最初の工程において、複数の柱頭スリーブの内、1本のスリーブを残して他の全てのスリーブに下方位置から時間をかけてグラウトを1本1本充填し、それらを外部から目視により確認し、不十分な場合は補填し、スリーブ内に空気溜まりが生じることなくグラウト充填することが可能となった。
【0017】
更に、最終工程において、グラウトを充填させずに残した1本のスリーブから該スリーブの内側空間及び目地部の空隙へグラウトを充填することになるので、この最終工程におけるグラウトの充填領域が少なく、且つ、下方位置からのグラウトの注入となり、更に、目地部の周囲の一部にグラウト充填確認孔やグラウト排出通路を設けているので空気抜きとなり、グラウト充填によりスリーブの空間や隙間に存在する空気が外部へ押し出されやすく、空気溜まりができることを防止することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1(a)(b)(c)(d)(e)】本発明の柱頭スリーブを連結手段としたPCa製部材相互へのグラウト充填方法における施工工程を示す断面図。
【
図2】本発明のPCa製柱上端部の柱頭スリーブの配置状態を示す平面図。
【
図3(a)(b)(c)(d)(e)】本発明の柱頭スリーブを連結手段としたPCa製部材相互へのグラウト充填方法の他の実施例の施工工程を示す断面図。
【
図4(a)(b)(c)(d)(e)】本発明の柱頭スリーブを連結手段としたPCa製部材相互へのグラウト充填方法の他の実施例の施工工程を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参考に本発明を実施するための最良の形態について、その実施例に基づいて説明する。
【実施例1】
【0020】
図1(a)は、本発明に係る構造体の下側に位置するPCa製柱の側断面図を示し、該PCa製柱の先端位置に柱頭スリーブを埋設固定することで、それを利用して主筋やグラウト等により他の柱を強固に接続することができるもので、該PCa製柱1の上部における複数個のスリーブ2を埋設固定した配置状態は
図2の平面図に示している。
【0021】
構造体の構成要素となるPCa製柱1の上端部には複数個の筒状のスリーブ2が、その一端面3がPCa製柱1の上面と面一となるように製造段階で予め埋設固定している。
【0022】
該スリーブ2の埋設側となる内部側の他端面4からは、その開口部下方側よりPCa製柱1の柱主筋5の上端部6がスリーブ2の内側下方空間内へ略中央部に至るまで挿入されている。
【0023】
上記PCa製柱1を所定の施工場所に設置後、
図1(b)に示すように、該PCa製柱1の上に接続する他のPCa製柱7を、下方に突出した柱主筋8を該スリーブ2の上方側の開口部より内側上方空間内に挿入しながら、上目地部を形成する小間隙Hを確保して配置する。所定位置に配設後、スリーブに空気を吹き入れ、グラウト充填に支障がないかどうかを確認する。
【0024】
その後、
図1(c)に示すように、スリーブ2の埋設側となる他端面4側に接続した外方へ突出させたグラウト供給管9の一端を外部へ露出させた注入口10へ逆止弁付注入ノズルを嵌め込み、簡易ポンプ11のノズル12或いは手動ポンプ13のホース14をそれに挿入し、スリーブ2毎にスリーブ空間内にグラウトを充填する。
【0025】
該グラウトは、注入口10よりスリーブ2の空間内へ下方側よりスリーブ毎に緩やかな速度で充填される。個別のスリーブ毎に時間をかけて充填し、且つ、充填したグラウトの重量が下方側にかかるようにして充填することになるので、空気溜まりが生じることなく万遍なく空間全体となるスリーブ上端の一端面3の位置まで充填させることができる。この注入充填を各スリーブ2毎に繰り返す。その際、複数のスリーブの内、構造体の屋内側から一番遠い位置に設けたスリーブ2aの1本だけはグラウトを充填させずに残しておく。
【0026】
各スリーブ2毎にグラウト充填が終了後、小間隙Hの上目地部よりグラウトの注入状況を確認する。不足している場合は追加し、盛り上がりすぎている場合は棒等を使用して掻き落とす。
【0027】
その後、
図1(d)に示すように、PCa製柱1とPCa製柱7との小間隙Hの周囲の上目地部を形成する箇所にモルタルシール、木製型枠、エアーホース等のシール部材15を配設する。シール部材15には、
図2に示すように、その隅部にグラウト充填確認孔16を設ける。グラウトの流出が確認できるように幅寸法約6mm程の孔とする。また、注入口10には閉塞栓17を嵌入し、注入したグラウトが外へ逆流出することを防止する。
【0028】
その後、
図1(e)に示すように、残した1本のスリーブ2aの下方側に位置する注入口10aに、グラウトを押し上げる押圧力の強い電動ポンプ18の逆止弁付ホース19を挿入し、残った1本のスリーブ2aの空間及び接合部となるシール部材15で囲まれた上目地部となる空間Sへグラウトを注入する。
【0029】
上目地部全体がグラウトで充満されたかどうかは、シール部材15に設けた空気抜きを兼ねた充填確認孔16よりグラウトが流出することで確認することができる。グラウトの最終注入は、
図2に示すように、屋内側から最遠方に位置するスリーブ2aより行われるので、屋内側となる位置のグラウト充填確認孔16よりグラウトが流出することで上目地部全体が奥側よりグラウトで充填されたことを目視しながら確認することができる。
【実施例2】
【0030】
図3(a)は、本発明に係る構造体の下側に位置するPCa製柱の側断面図を示し、該PCa製柱の先端位置に柱頭スリーブを埋設固定することで、PCa製梁やPCa製仕口材等のPCa製水平部材と強固に接続することができるものである。複数個のスリーブの配置は、例えば、
図2に示すように、PCa製柱の大きさや強度の必要性に応じて適宜な配置が採用される。
【0031】
構造体の構成要素となるPCa製柱21の上端部には複数個の筒状スリーブ22が、その一端面23が該PCa製柱21の上面と面一となるように製造段階で予め埋設固定している。
【0032】
該スリーブ22の埋設側となる内部側の他端面24からは、その開口部下方側よりPCa製柱21の柱主筋25の上端部26がスリーブ22の内側下方空間内へ略中央部に至るまで挿入されている。
【0033】
上記PCa製柱21を所定の施工場所に設置後、
図3(b)に示すように、該PCa製柱21の上に接続するPCa製梁やPCa製仕口材等の他の部材となるPCa製水平部材27を、下方に突出した柱主筋28を該スリーブ22の上方側の開口部より内側上方空間内に挿入し、上目地部を形成する小間隙Hを確保して配置する。所定位置に配置後、各スリーブに空気を吹き入れ、グラウト充填に支障がないかどうかを確認する。
【0034】
その後、
図3(c)に示すように、スリーブ22の埋設側となる他端面側に接続した外方へ突出させたグラウト供給管29の一端を外部へ露出させた注入口30へ逆止弁付注入ノズルを嵌め込み、簡易ポンプ31のノズル32或いは手動ポンプ33のホース34をそれに挿入し、スリーブ22毎にスリーブ空間内にグラウトを充填する。
【0035】
該グラウトは、注入口30よりスリーブ22の空間内へ下方側よりスリーブ毎に時間をかけた緩やかな速度で充填される。空気溜まりが生じることなく万遍なく空間全体となるスリーブ上端の一端面23の位置まで充填させることができる。この注入充填を各スリーブ22毎に繰り返す。その際、複数のスリーブの内、構造体の屋内側から一番遠い位置に設けたスリーブ22aの1本だけはグラウトを充填させずに残しておく。
【0036】
各スリーブ22毎にグラウト充填が終了後、小間隙Hの上目地部よりグラウトの注入状況を確認する。不足している場合は追加し、盛り上がりすぎている場合は棒等を使用して掻き落とす。
【0037】
その後、
図3(d)に示すように、PCa製柱21とPCa製水平部材27との小間隙Hの周囲の上目地部を形成する箇所にモルタルシール、木製型枠、エアーホース等のシール部材35を配設する。シール部材35の隅部には、
図2と同様のグラウト充填確認孔36を設ける。グラウトの流出が確認できるように幅寸法約6mm程の孔とする。また、注入口30には閉塞栓37を嵌入し、注入したグラウトが外へ逆流出することを防止する。
【0038】
その後、
図3(e)に示すように、残した1本のスリーブ22aの下方側に位置する注入口30aに、グラウトを押し上げる押圧力の強い電動ポンプ38の逆止弁付ホース39を挿入し、残った1本のスリーブ22aの空間及び接合部となるシール部材35で囲まれた上目地部となる空間Sへグラウトを注入する。
【0039】
上目地部全体がグラウトで充満されたかどうかは、シール部材35に設けた空気抜きを兼ねた充填確認孔36よりグラウトが流出することで確認することができる。グラウトの最終注入は、
図2に示すように、屋内側から最遠方に位置するスリーブ22aより行われるので、屋内側となる位置のグラウト充填確認孔36よりグラウトが流出することにより上目地部全体が奥側よりグラウトで充填されたことを目視しながら確認することができる。
【実施例3】
【0040】
図4(a)は、本発明に係る構造体の下側に位置するPCa製柱の側断面図を示し、該PCa製柱の先端位置に柱頭スリーブを埋設固定し、柱主筋をPCa製梁やPCa製仕口材等のPCa製水平部材を貫通させて該スリーブ内に固定させることで、該PCa製水平部材上の上側PCa製柱と下側PCa製柱とを強固に接続することができるものである。複数個のスリーブの配置は、例えば、
図2に示すように、PCa製柱の大きさや強度の必要性に応じて適宜な配置が採用される。
【0041】
構造体の構成要素となるPCa製柱41の上端部には複数個の筒状スリーブ42が、その一端面43が該PCa製柱41の上面と面一となるように製造段階で予め埋設固定している。
【0042】
該スリーブ42の埋設側となる内部側の他端面44からは、その開口部下方側よりPCa製柱41の柱主筋45の上端部46がスリーブ42の内側下方空間内へ略中央部に至るまで挿入されている。
【0043】
上記PCa製柱41を所定の施工場所に設置後、
図4(b)に示すように、該PCa製柱41の上に接続するPCa製梁やPCa製仕口材等の他の部材となるPCa製水平部材47を介してその上に上側PCa製柱48を設置した実施例を示している。該PCa製水平部材47の仕口材に位置する箇所に適数個のシース管を埋設して貫通孔49を形成し、該PCa製柱48から下方に突出した柱主筋50を該スリーブ42の上方側の開口部より内側上方空間内に挿入し、該PCa製柱41とPCa製水平部材47との間の下柱上目地部を形成する小間隙H1及び該PCa製水平部材47とPCa製柱48との間の上柱下目地部を形成する小間隙H2を確保して各々を配置する。
【0044】
該PCa製柱48の下端部の側部にはその下端部となる上柱下目地部と連通するグラウト排出通路51を設け、その一端を外部へ露出するように形成している。各々の部材を所定位置に配置後、各スリーブに空気を吹き入れ、グラウト充填に支障がないかどうかを確認する。
【0045】
その後、
図4(c)に示すように、スリーブ42の埋設側となる他端面側に接続した外方へ突出させたグラウト供給管52の一端を外部へ露出させた注入口53へ逆止弁付注入ノズルを嵌め込み、簡易ポンプ54のノズル55或いは手動ポンプ56のホース57をそれに挿入し、スリーブ42毎にスリーブ空間内にグラウトを充填する。
【0046】
該グラウトは、注入口53よりスリーブ42の空間内へ下方側よりスリーブ毎に時間をかけた緩やかな速度で充填される。空気溜まりが生じることなく万遍なく空間全体となるスリーブ上端の一端面43の位置まで充填させることができる。この注入充填を各スリーブ42毎に繰り返す。その際、複数のスリーブの内、構造体の屋内側から一番遠い位置に設けたスリーブ42aの1本だけはグラウトを充填させずに残しておく。
【0047】
各スリーブ42毎にグラウト充填が終了後、小間隙Hの上目地部よりグラウトの注入状況を確認する。不足している場合は追加し、盛り上がりすぎている場合は棒等を使用して欠き落とす。
【0048】
その後、
図4(d)に示すように、PCa製柱41とPCa製水平部材47との小間隙H1及び該PCa製水平部材47とPCa製柱48との小間隙H2の周囲の上下の目地部を形成する箇所にモルタルシール、木製型枠、エアーホース等のシール部材58、59を配設する。シール部材58、59の隅部には、
図2と同様のグラウト充填確認孔60、61を設ける。グラウトの流出が確認できるように幅寸法約6mm程の孔とする。また、注入口53には閉塞栓62を嵌入し、注入したグラウトが外へ逆流出することを防止する。
【0049】
その後、
図4(e)に示すように、残した1本のスリーブ42aの下方側に位置する注入口53aに、グラウトを押し上げる押圧力の強い電動ポンプ63の逆止弁付ホース64を挿入し、残った1本のスリーブ42aの空間及び接合部となるシール部材58、59で囲まれた上・下目地部となる空間S1、S2及び貫通孔49へグラウトを注入する。
【0050】
シール部材58、59で囲まれた上・下目地部となる空間S1、S2及び貫通孔49の全体がグラウトで充満されたかどうかは、シール部材58、59に設けた充填確認孔60、61よりグラウトが流出することで確認することができる。また、特に、PCa製柱48の下端部の側部に設けた上柱下目地部と連通するグラウト排出通路51からグラウトが排出することにより該グラウトが空間全体に充填されたことを確認することができる。
【符号の説明】
【0051】
1、7、21、41、48 PCa製柱
2、22、42 スリーブ
3、23、43 一端面
4、24、44 他端面
5、8、25、28、45、50 柱主筋
6、26、46 上端部
27、47 PCa製水平部材
9、29、52 グラウト供給管
10、30、53 注入口
11、31、54 簡易ポンプ
12、32、55 ノズル
13、33、56 手動ポンプ
14、34、57 手動ポンプのホース
15、35、58、59 シール部材
16、36、60、61 グラウト充填確認孔
17、37、62 閉塞栓
18、38、63 電動ポンプ
19、39、64 電動ポンプのホース
49 貫通孔
51 グラウト排出通路