(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の空気入りタイヤの製造方法は、インナーライナーのタイヤ半径方向内側面にシーラント層を有する空気入りタイヤの製造方法であって、原料を混合することによりシーラント材を調製する調製工程と、加硫済みのタイヤを回転軸まわりに回転させ、かつ、シーラント材を供給する供給口に対してタイヤを幅方向および半径方向に移動させながら、前記調製工程で調製されたシーラント材をインナーライナーのタイヤ半径方向内側面に塗布する塗布工程とを含み、前記塗布工程では、前記タイヤ半径方向内側面に対してタイヤの幅方向に複数に予め設定された塗布エリアごとに予め設定されたタイヤの回転速度に従ってタイヤを回転させる空気入りタイヤの製造方法である。
【0011】
本発明の空気入りタイヤの製造方法では、タイヤ半径方向内側面に対してタイヤの幅方向に複数に予め設定された塗布エリアごとに予め設定されたタイヤの回転速度に従ってタイヤを回転させるので、インナーライナーのタイヤ半径方向内側面にシーラント層を有する空気入りタイヤ(シーラントタイヤ)を安定的に生産性良く製造することができる。該製法により得られたシーラントタイヤは、高精度に塗布されたシーラント層を有するため、シール性に優れる。
【0012】
以下、本発明のシーラントタイヤの製造方法の好適例について説明する。
【0013】
本発明では、シーラントタイヤは、例えば、シーラント材を構成する各成分を混合してシーラント材を調製し、次いで、得られたシーラント材を塗布等により加硫済みのタイヤのインナーライナーのタイヤ半径方向内側面(タイヤ内周面)に貼り付け、シーラント層を形成することにより、製造できる。該シーラントタイヤは、インナーライナーのタイヤ半径方向内側にシーラント層を有する。
【0014】
シーラント材はゴム成分と架橋の量により、硬さ(粘度)をコントロールして、使用温度に応じた粘度にコントロールする必要がある。そこでゴム成分のコントロールとして、液状ゴム、可塑剤、カーボンブラックの種類や量を調整する。一方、架橋の量のコントロールのために、架橋剤と架橋助剤の種類や量を調整する。
【0015】
シーラント材としては、粘着性を有するものであれば特に限定されず、通常のゴム組成物を使用することができる。例えば、ゴム組成物の主成分を構成するゴム成分として、ブチル系ゴムが用いられる。ブチル系ゴムとしては、ブチルゴム(IIR)の他、臭素化ブチルゴム(Br−IIR)、塩素化ブチルゴム(Cl−IIR)などのハロゲン化ブチルゴム(X−IIR)等も挙げられる。なかでも、流動性等の観点から、ブチルゴム、若しくはハロゲン化ブチルゴムのどちらか一方、又は両方を好適に使用できる。また、ブチル系ゴムは、ペレット化されたものを使用することが好ましい。これにより、連続混練機にブチル系ゴムを精度良く好適に供給でき、シーラント材を生産性よく製造できる。
【0016】
ブチル系ゴムとして、シーラント材の流動性の低下抑制の観点から、125℃のムーニー粘度ML1+8が20以上40未満のブチル系ゴムA及び/又は125℃のムーニー粘度ML1+8が40以上80以下のブチル系ゴムBの使用が好ましく、なかでも、少なくともブチル系ゴムAを用いることが好適である。なお、ブチル系ゴムA及びBを併用する場合、配合比は適宜設定すれば良い。
【0017】
ブチル系ゴムAの125℃のムーニー粘度ML1+8は、より好ましくは25以上、更に好ましくは28以上であり、また、より好ましくは38以下、更に好ましくは35以下である。20未満であると、流動性が低下するおそれがあり、40以上であると、併用する場合、その効果が得られないおそれがある。
【0018】
ブチル系ゴムBの125℃のムーニー粘度ML1+8は、より好ましくは45以上、更に好ましくは48以上であり、また、より好ましくは70以下、更に好ましくは60以下である。40未満であると、併用する場合、その効果が得られないおそれがある。80を超えると、シール性が低下するおそれがある。
【0019】
なお、125℃のムーニー粘度ML1+8は、JIS K−6300−1:2001に準拠し、試験温度125℃で、L形の形状を有するロータを余熱時間1分間とし、ロータの回転時間を8分間として測定されるものである。
【0020】
ゴム成分として、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、スチレンイソプレンブタジエンゴム(SIBR)、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、ブチルゴム(IIR)等のジエン系ゴム等、他の成分を併用しても良いが、流動性等の観点から、ゴム成分100質量%中のブチル系ゴムの含有量は、90質量%以上が好ましく、95質量%以上がより好ましく、100質量%が特に好ましい。
【0021】
シーラント材中の液状ポリマーとして、液状ポリブテン、液状ポリイソブテン、液状ポリイソプレン、液状ポリブタジエン、液状ポリα−オレフィン、液状イソブチレン、液状エチレンα−オレフィン共重合体、液状エチレンプロピレン共重合体、液状エチレンブチレン共重合体等が挙げられる。なかでも、粘着性付与等の観点から、液状ポリブテンが好ましい。液状ポリブテンとしては、イソブテンを主体とし、更にノルマルブテンを反応させて得られる長鎖状炭化水素の分子構造を持った共重合体等が挙げられ、水素添加型液状ポリブテンも使用可能である。
【0022】
液状ポリブテン等の液状ポリマーとして、高速走行時のシーラント材の流動を防止する観点から、100℃の動粘度が550〜625mm
2/sの液状ポリマーA及び/又は100℃の動粘度が3540〜4010mm
2/sの液状ポリマーBの使用が好ましく、該液状ポリマーA及びBの併用がより好ましい。
【0023】
液状ポリブテン等の液状ポリマーAの100℃における動粘度は、好ましくは550mm
2/s以上、より好ましくは570mm
2/s以上である。550mm
2/s未満であると、シーラント材の流動が生じるおそれがある。該100℃における動粘度は、好ましくは625mm
2/s以下、より好ましくは610mm
2/s以下である。625mm
2/sを超えると、シーラント材の粘度が高くなり、押し出し性が悪化するおそれがある。
【0024】
液状ポリブテン等の液状ポリマーBの100℃における動粘度は、好ましくは3600mm
2/s以上、より好ましくは3650mm
2/s以上である。3540mm
2/s未満であると、シーラント材の粘度が下がり過ぎて、タイヤ使用中に流動しやすくなり、シール性、ユニフォミティーが悪化するおそれがある。
該100℃における動粘度は、好ましくは3900mm
2/s以下、より好ましくは3800mm
2/s以下である。4010mm
2/sを超えると、シール性が悪化するおそれがある。
【0025】
液状ポリブテン等の液状ポリマーAの40℃における動粘度は、好ましくは20000mm
2/s以上、より好ましくは23000mm
2/s以上である。20000mm
2/s未満であると、シーラント材が柔らかく、流動が生じるおそれがある。該40℃における動粘度は、好ましくは30000mm
2/s以下、より好ましくは28000mm
2/s以下である。30000mm
2/sを超えると、シーラント材の粘度が高くなり過ぎて、シール性が悪化するおそれがある。
【0026】
液状ポリブテン等の液状ポリマーBの40℃における動粘度は、好ましくは120000mm
2/s以上、より好ましくは150000mm
2/s以上である。120000mm
2/s未満であると、シーラント材の粘度が下がり過ぎて、タイヤ使用中に流動しやすくなり、シール性、ユニフォミティーが悪化するおそれがある。
該40℃における動粘度は、好ましくは200000mm
2/s以下、より好ましくは170000mm
2/s以下である。200000mm
2/sを超えると、シーラント材の粘度が高くなり過ぎて、シール性が悪化するおそれがある。
【0027】
なお、動粘度は、JIS K2283−2000に準拠し、100℃、40℃の条件で測定される値である。
【0028】
液状ポリマーの含有量(液状ポリマーA、B等の合計量)は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは50質量部以上、より好ましくは100質量部以上、更に好ましくは150質量部以上である。50質量部未満では、粘着性が低下するおそれがある。該含有量は、好ましくは400質量部以下、より好ましくは300質量部以下、更に好ましくは250質量部以下である。400質量部を超えると、シーラント材の流動が生じるおそれがある。
【0029】
液状ポリマーA、Bを併用する場合、これらの配合比(液状ポリマーAの含有量/液状ポリマーBの含有量)は、好ましくは10/90〜90/10、より好ましくは30/70〜70/30、更に好ましくは40/60〜60/40である。上記範囲内であると、良好な粘着性が付与される。
【0030】
有機過酸化物(架橋剤)としては特に限定されず、従来公知の化合物を使用できる。有機過酸化物架橋系において、ブチル系ゴムや液状ポリマーを用いることで、粘着性、シール性、流動性、加工性が改善される。
【0031】
有機過酸化物(架橋剤)としては、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、ジベンゾイルパーオキサイド、p−クロロベンゾイルパーオキサイド等のアシルパーオキサイド類、1−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシフタレートなどのパーオキシエステル類、メチルエチルケトンパーオキサイドなどのケトンパーオキサイド類、ジ−t−ブチルパーオキシベンゾエート、1,3−ビス(1−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼンなどのアルキルパーオキサイド類、t−ブチルハイドロパーオキサイドなどのハイドロパーオキサイド類、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド等が挙げられる。なかでも、粘着性、流動性の観点から、アシルパーオキサイド類が好ましく、ジベンゾイルパーオキサイドが特に好ましい。また、有機過酸化物(架橋剤)は、粉体状態のものを使用することが好ましい。これにより、連続混練機に有機過酸化物(架橋剤)を精度良く好適に供給でき、シーラント材を生産性よく製造できる。
【0032】
有機過酸化物(架橋剤)の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1質量部以上、更に好ましくは5質量部以上である。0.5質量部未満では、架橋密度が低くなり、シーラント材の流動が生じるおそれがある。該含有量は、好ましくは40質量部以下、より好ましくは20質量部以下、更に好ましくは15質量部以下である。40質量部を超えると、架橋密度が高くなり、シーラント材が硬くなり、シール性が低下するおそれがある。
【0033】
架橋助剤(加硫促進剤)としては、スルフェンアミド系、チアゾール系、チウラム系、チオ尿素系、グアニジン系、ジチオカルバミン系、アルデヒド-アミン系、アルデヒド-アンモニア系、イミダゾリン系、キサントゲン酸系、及びキノンジオキシム化合物(キノイド化合物)からなる群より選択される少なくとも1種を使用することができるが、例えば、キノンジオキシム化合物(キノイド化合物)を好適に使用可能である。有機過酸化物に更に架橋助剤を添加した架橋系において、ブチル系ゴムや液状ポリマーを用いることで、粘着性、シール性、流動性、加工性が改善される。
【0034】
キノンジオキシム化合物としては、p−ベンゾキノンジオキシム、p−キノンジオキシム、p−キノンジオキシムジアセテート、p−キノンジオキシムジカプロエート、p−キノンジオキシムジラウレート、p−キノンジオキシムジステアレート、p−キノンジオキシムジクロトネート、p−キノンジオキシムジナフテネート、p−キノンジオキシムスクシネート、p−キノンジオキシムアジペート、p−キノンジオキシムジフロエート(difuroate)、p−キノンジオキシムジベンゾエート、p−キノンジオキシムジ(o−クロロベンゾエート)、p−キノンジオキシムジ(p−クロロベンゾエート)、p−キノンジオキシムジ(p−ビトロベンゾエート)、p−キノンジオキシムジ(m−ビトロベンゾエート)、p−キノンジオキシムジ(3,5−ジニトロベンゾエート)、p−キノンジオキシムジ(p−メトキシベンゾエート)、p−キノンジオキシムジ(n−アミルオキシベンゾエート)、p−キノンジオキシムジ(m−ブロモベンゾエート等が挙げられる。なかでも、粘着性、シール性、流動性の観点から、p−ベンゾキノンジオキシムが好ましい。また、架橋助剤(加硫促進剤)は、粉体状態のものを使用することが好ましい。これにより、連続混練機に架橋助剤(加硫促進剤)を精度良く好適に供給でき、シーラント材を生産性よく製造できる。
【0035】
キノンジオキシム化合物等の架橋助剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1質量部以上、更に好ましくは3質量部以上である。0.5質量部未満では、シーラント材の流動が生じるおそれがある。該含有量は、好ましくは40質量部以下、より好ましくは20質量部以下、更に好ましくは15質量部以下である。40質量部を超えると、シール性が低下するおそれがある。
【0036】
シーラント材には、カーボンブラック、シリカ、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、硫酸バリウム、タルク、マイカ等の無機充填剤、芳香族系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル、パラフィン系プロセスオイル等の可塑剤を添加しても良い。
【0037】
無機充填剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは10質量部以上である。1質量部未満では、紫外線による劣化により、シール性が低下するおそれがある。該含有量は、好ましくは50質量部以下、より好ましくは40質量部以下、更に好ましくは30質量部以下である。50質量部を超えると、シーラント材の粘度が高くなり過ぎて、シール性が悪化するおそれがある。
【0038】
紫外線による劣化を防止する観点から、無機充填剤としてカーボンブラックが好ましい。この場合、カーボンブラックの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは10質量部以上である。1質量部未満では、紫外線による劣化により、シール性が低下するおそれがある。該含有量は、好ましくは50質量部以下、より好ましくは40質量部以下、更に好ましくは25質量部以下である。50質量部を超えると、シーラント材の粘度が高くなり過ぎて、シール性が悪化するおそれがある。
【0039】
可塑剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは5質量部以上である。1質量部未満では、タイヤへの粘着性が低下し、充分なシール性が得られないおそれがある。該含有量は、好ましくは40質量部以下、より好ましくは20質量部以下である。40質量部を超えると、混練機内ですべりが生じ、シーラント材を混練することが困難となるおそれがある。
【0040】
シーラント材としては、ペレット化したブチル系ゴム、粉体の架橋剤、及び粉体の架橋助剤を混合することにより調製されたものであることが好ましく、ペレット化したブチル系ゴム、液状のポリブテン、可塑剤、粉体のカーボンブラック、粉体の架橋剤、及び粉体の架橋助剤を混合することにより調製されたものであることがより好ましい。これにより、連続混練機に各原料を好適に供給でき、シーラント材を生産性よく製造できる。
【0041】
シーラント材としては、ブチルゴムを含むゴム成分に対して、所定量の液状ポリマー、有機過酸化物、架橋助剤を配合したものが好ましい。
【0042】
シーラント材に、ブチルゴムに液状ポリブテン等の液状ポリマーを配合したものを用いること、特にブチルゴム、液状ポリマーとして、それぞれ異なる粘度の2種以上の材料を併用することで、粘着性、シール性、流動性、加工性がバランス良く改善される。これは、ゴム成分としてブチルゴムを用いた有機過酸化物架橋系に、液状ポリマー成分を導入して粘着性が付与されるとともに、特に異なる粘度の液状ポリマーや固形ブチルゴムにより高速走行時のシーラント材の流動が抑制されることで、粘着性、シール性、流動性、加工性がバランス良く改善される。
【0043】
シーラント材の粘度(40℃)は特に限定されないが、粘着性、流動性、及びシーラント材がタイヤの内周面に塗布された時点で、シーラント材が略紐状形状を好適に保持する等の観点から、好ましくは3000Pa・s以上、より好ましくは5000Pa・s以上であり、また、好ましくは70000Pa・s以下、より好ましくは50000Pa・s以下である。3000Pa・s未満であると、シーラント材の塗布後にタイヤを停止したときにシーラント材が流動し、膜厚を維持できないおそれがある。また、70000Pa・sを超えると、ノズルからシーラント材を吐出させることが困難となる。
なお、シーラント材の粘度は、JIS K 6833に準拠し、40℃の条件で、回転式粘度計により測定される値である。
【0044】
前述の各材料を混合してシーラント材を調製し、作製されたシーラント材をタイヤ内周面(インナーライナーのタイヤ半径方向内側部分)に適用することにより、インナーライナーのタイヤ半径方向内側にシーラント層を有するシーラントタイヤを製造できるが、本実施形態では、シーラント材を構成する各材料の混合は、連続混練機を用いて混合する。連続混練機としては、同方向回転又は異方向回転の多軸混練押出機、特に二軸混練押出機を用いて混合することが好ましい。
【0045】
前述の各材料(原料)を連続混練機により混合することによりシーラント材を順次調製する調製工程、及び、順次調製されるシーラント材を連続混練機の排出口に接続されたノズル(シーラント材を供給する供給口)から連続的に吐出することで形成される略紐状形状のシーラント材を、タイヤ駆動装置により回転駆動されたタイヤの内周面に連続的に塗布する塗布工程について説明する。
【0046】
連続混練機(特に、二軸混練押出機)は、原料を供給する供給口を複数有することが好ましく、少なくとも3つの供給口を有することがより好ましく、少なくとも上流側、中流側、下流側の3つの供給口を有することが更に好ましい。連続混練機(特に、二軸混練押出機)に上記各種原料を順次供給することにより、上記各種原料が混合され、順次連続的にシーラント材が調製される。
【0047】
連続混練機(特に、二軸混練押出機)への原料の供給は、粘度の高い材料から順に行うことが好ましい。これにより、各材料が充分に混合され、品質が一定のシーラント材を調製できる。また、粉体材料を投入すると混練性が良くなる為なるべく上流で投入する事が望ましい。
【0048】
連続混練機(特に、二軸混練押出機)への有機過酸化物の供給は、下流側の供給口から行うことが好ましい。これにより、有機過酸化物を供給してからシーラント材をタイヤに塗布するまでの時間を短くできるので、シーラント材の硬化が進む前にタイヤに塗布でき、より安定的にシーラントタイヤを製造できる。
【0049】
液状ポリマーを一度に多量に連続混練機(特に、二軸混練押出機)へ投入すると混練がうまくいかないため、連続混練機(特に、二軸混練押出機)への液状ポリマーの供給は、複数の供給口から行うことが好ましい。これにより、シーラント材の混練をより好適に行うことができる。
【0050】
連続混練機(特に、二軸混練押出機)を用いる場合、シーラント材は、少なくとも3つの供給口を有する連続混練機(特に、二軸混練押出機)を用い、当該連続混練機(特に、二軸混練押出機)の上流側の供給口から、ブチル系ゴム等のゴム成分、無機充填剤、及び架橋助剤を供給し、中流側の供給口から、液状ポリマーBを供給し、下流側の供給口から、液状ポリマーA、有機過酸化物、及び可塑剤を供給し、混練押出することにより調製されることが好ましい。なお、各供給口からは、液状ポリマー等の各材料の全量又は一部を供給してもよいが、各材料の全量中の95質量%以上を供給することが好ましい。
【0051】
連続混練機に投入される全ての原料が、定量供給制御可能な供給装置により制御されて、連続混練機に投入されることが好ましい。これにより、連続的かつ自動化された状態でシーラント材を調製することが可能となる。
【0052】
供給装置は、定量供給制御可能であれば特に限定されず、公知の供給装置を使用でき、例えば、スクリュー式フィーダー、プランジャーポンプ、ギアポンプ、モーノポンプ等を使用できる。
【0053】
ペレット化されたブチル系ゴム、粉体のカーボンブラック、粉体の架橋剤、及び粉体の架橋助剤等の固形原料(特に、ペレットや粉体)は、スクリュー式フィーダーを用いて定量供給することが好ましい。これにより、固形原料を精度良く定量供給することが可能となり、より品質の高いシーラント材、ひいてはより品質の高いシーラントタイヤを製造できる。
【0054】
また、各固形原料は、それぞれ別個の供給装置で供給することが好ましい。これにより、事前に各原料をブレンドする必要が無いため、量産時の材料の供給が容易になる。
【0055】
可塑剤は、プランジャーポンプを用いて定量供給することが好ましい。これにより、可塑剤を精度良く定量供給することが可能となり、より品質の高いシーラント材、ひいてはより品質の高いシーラントタイヤを製造できる。
【0056】
液状ポリマーは、ギアポンプを用いて定量供給することが好ましい。これにより、液状ポリマーを精度良く定量供給することが可能となり、より品質の高いシーラント材、ひいてはより品質の高いシーラントタイヤを製造できる。
【0057】
供給される液状ポリマーは、定温管理されていることが好ましい。定温管理することにより、より精度良く液状ポリマーを定量供給することが可能となる。供給される液状ポリマーの温度は、好ましくは20〜90℃、より好ましくは40〜70℃である。
【0058】
連続混練機(特に、二軸混練押出機)の混合は、混合の容易性、押し出し性の観点から、バレル温度30(好ましくは50)〜150℃で実施することが好ましい。
【0059】
充分な混合性の観点から、上流側で供給する材料の混合時間は、1〜3分、中流側で供給する材料の混合時間は、1〜3分であることが好ましい。一方、架橋を防止する観点から、下流側で供給する材料の混合時間は、0.5〜2分であることが好ましい。なお、各混合時間は、連続混練機(特に、二軸混練押出機)に供給されてから排出されるまでの滞留時間をいい、例えば、下流側で供給された材料の混合時間は、下流側の供給口への供給時から排出されるまでの滞留時間である。
【0060】
連続混練機(特に、二軸混練押出機)のスクリューの回転数や、温調機の設定で、排出口から吐出されるシーラント材の温度を調整でき、ひいてはシーラント材の硬化促進速度をコントロールできる。連続混練機(特に、二軸混練押出機)は、スクリューの回転数を上げると混練性と材料温度が上がる。なお、スクリューの回転数は吐出量には影響しない。スクリューの回転数は、充分な混合性、及び硬化促進速度のコントロールの観点から、50〜700(好ましくは550)rpmであることが好ましい。
【0061】
連続混練機(特に、二軸混練押出機)の排出口から吐出されるシーラント材の温度は、充分な混合性、及び硬化促進速度のコントロールの観点から、70〜150℃であることが好ましく、90〜130℃であることがより好ましい。シーラント材の温度が上記範囲内であると、塗布時から架橋反応が始まり、タイヤ内周面への良好な粘着性を有すると共に、架橋反応がより好適に進行し、シール性の高いシーラントタイヤを製造できる。また、後述の架橋工程を必要としない。
【0062】
連続混練機(特に、二軸混練押出機)の排出口から吐出されるシーラント材の量は、供給口への原料の供給量に基づいて決定される。供給口への原料の供給量は、特に限定されず、当業者であれば適宜設定可能である。ユニフォミティー及びシール性により優れたシーラントタイヤが好適に得られるという理由から、排出口から吐出されるシーラント材の量(吐出量)が実質的に一定であることが好ましい。
ここで、本明細書において、吐出量が実質的に一定とは、吐出量の変動が93〜107%(好ましくは97〜103%、より好ましくは98〜102%、更に好ましくは99〜101%)に収まることを意味する。
【0063】
連続混練機(特に、二軸混練押出機)の排出口にはノズルが接続されている。連続混練機(特に、二軸混練押出機)は材料を高圧で吐出できるので、ノズル(好ましくは抵抗の大きい小径ノズル)を排出口に取付けることにより、調製したシーラント材を細い略紐状形状(ビード状)にしてタイヤに貼り付けることができる。すなわち、シーラント材を連続混練機(特に、二軸混練押出機)の排出口に接続されたノズルから吐出して順次タイヤの内周面に塗布することで、シーラント材の厚さが実質的に一定となり、タイヤのユニフォミティーの悪化を防止でき、重量バランスに優れたシーラントタイヤを製造できる。
【0064】
次いで、混合したシーラント材を連続混練機(特に、二軸混練押出機)等押出機の排出口に接続されたノズルから吐出することで、加硫成形済みのタイヤの内周面に直接フィードし、内周面に適用すること等により、シーラントタイヤが製造される。これにより、二軸混練押出機等で混合され、かつ押出機内での架橋反応の進行が抑制されたシーラント材を、そのままタイヤ内周面に塗布できるため、塗布時から架橋反応が始まり、タイヤ内周面への良好な粘着性を有すると共に、好適に架橋反応が進行する。これにより、タイヤの内周面に塗布されたシーラント材は、好適に略紐状形状を保持したままシーラント層を形成する。従って、一連の工程でシーラント塗布加工が可能になり、生産性もより向上する。また、加硫成形済みのタイヤの内周面にシーラント材を塗布することにより、より生産性良くシーラントタイヤを製造できる。更に、連続混練機(特に、二軸混練押出機)の排出口に接続されたノズルから吐出されるシーラント材を順次タイヤの内周面に直接塗布することが好ましい。これにより、連続混練機(特に、二軸混練押出機)内での架橋反応の進行が抑制されたシーラント材を、そのままタイヤ内周面に連続的に塗布できるため、塗布時から架橋反応が始まり、タイヤ内周面への良好な粘着性を有すると共に、好適に架橋反応が進行し、より生産性良く重量バランスに優れたシーラントタイヤを製造できる。
【0065】
タイヤの内周面へのシーラント材の塗布は、少なくともトレッド部に対応するタイヤの内周面、より好ましくは、少なくともブレーカーに対応するタイヤの内周面に行えばよい。シーラント材の塗布が不要な部分への塗布を省略することにより、より生産性良くシーラントタイヤを製造できる。
ここで、トレッド部に対応するタイヤの内周面とは、路面に接するトレッド部のタイヤ半径方向内側に位置するタイヤの内周面を意味し、ブレーカーに対応するタイヤの内周面とは、ブレーカーのタイヤ半径方向内側に位置するタイヤの内周面を意味する。なお、ブレーカーとは、トレッドの内部で、かつカーカスの半径方向外側に配される部材であり、具体的には、
図9のブレーカー16などに示される部材である。
【0066】
通常、未加硫タイヤは、ブラダーを使用して加硫する。このブラダーは、加硫時に膨張し、タイヤの内周面(インナーライナー)に密着することとなる。そこで、加硫が終了した際に、ブラダーとタイヤの内周面(インナーライナー)とが癒着しないように、通常、タイヤの内周面(インナーライナー)には離型剤が塗布されている。
【0067】
離型剤としては、通常、水溶性ペイントや離型用ゴムが使用される。しかしながら、タイヤの内周面に離型剤が存在すると、シーラント材とタイヤの内周面との粘着性が低下するおそれがある。そのため、タイヤの内周面から予め離型剤を除去しておくことが好ましい。特に、タイヤの内周面のうち、少なくともシーラント材の塗布を開始する部分において、予め離型剤を除去しておくことがより好ましい。なお、タイヤの内周面のうち、シーラント材を塗布する全ての部分から予め離型剤を除去しておくことが更に好ましい。これにより、シーラント材のタイヤの内周面への付着性がより向上し、よりシール性の高いシーラントタイヤを製造できる。
【0068】
タイヤの内周面から離型剤を除去する方法としては、特に限定されず、バフ処理、レーザー処理、高圧水洗浄、洗剤(好ましくは中性洗剤)による除去等の公知の方法が挙げられる。
【0069】
ここで、
図7を使用して、シーラントタイヤの製造方法に用いる製造設備の一例を簡単に説明する。
製造設備は、二軸混練押出機60、二軸混練押出機60に原料を供給する材料フィーダー62、タイヤ10を固定して回転させるとともに、タイヤの幅方向及び半径方向に移動させるタイヤ駆動装置50を有する。二軸混練押出機60は、供給口61を5個有している。具体的には、上流側の供給口61aを3個、中流側の供給口61bを1個、下流側の供給口61cを1個有している。更に、二軸混練押出機60の排出口にはノズル30が接続されている。
【0070】
原料が材料フィーダー62から、二軸混練押出機60が有する供給口61を介して二軸混練押出機60に順次供給され、各原料が二軸混練押出機60により混練され、シーラント材が順次調製される。調製されたシーラント材は、二軸混練押出機60の排出口に接続されたノズル30から連続的に吐出される。タイヤ駆動装置50でタイヤ10を回転させながらトラバース及び/又は昇降させ(タイヤの幅方向及び/又は半径方向に移動させ)、ノズル30から吐出されるシーラント材を順次タイヤの内周面に直接塗布することにより、タイヤの内周面にシーラント材を連続的にらせん状に貼り付けることが可能となる。すなわち、タイヤを回転させながらタイヤの幅方向及び/又は半径方向に移動させつつ、連続混練機(特に、二軸混練押出機)から連続的に吐出されるシーラント材を、タイヤの幅方向の一方側から他方側に向けて、順次タイヤの内周面に直接塗布することにより、タイヤの内周面にシーラント材を連続的にらせん状に貼り付けることが可能となる。
【0071】
タイヤの内周面にシーラント材を連続的にらせん状に貼り付けることにより、タイヤのユニフォミティーの悪化を防止でき、重量バランスに優れたシーラントタイヤを製造できる。また、タイヤの内周面にシーラント材を連続的にらせん状に貼り付けることにより、タイヤ周方向及びタイヤ幅方向(特に、タイヤ周方向)においてシーラント材が均一なシーラント層を形成できるため、シール性に優れたシーラントタイヤを安定的に生産性良く製造できる。なお、シーラント材は、幅方向に重ならないように貼り付けられていることが好ましく、隙間なく貼り付けられていることがより好ましい。これにより、タイヤのユニフォミティーの悪化をより防止できると共に、より均一なシーラント層を形成できる。
【0072】
また、原料を連続混練機(特に、二軸混練押出機)に順次供給し、上記原料を連続混練機(特に、二軸混練押出機)により混合することによりシーラント材が順次調製され、順次調製されるシーラント材が、連続混練機(特に、二軸混練押出機)の排出口に接続されたノズルから連続的に吐出され、ノズルから連続的に吐出することで形成される略紐状形状のシーラント材が、タイヤ駆動装置により回転駆動されたタイヤの内周面に順次連続的に直接塗布される。これにより、生産性良くシーラントタイヤを製造できる。
【0073】
シーラント層は、略紐状形状のシーラント材を、連続的にらせん状にタイヤの内周面に塗布することにより形成されることが好ましい。これにより、タイヤの内周面に沿って連続的にらせん状に配置された略紐状形状のシーラント材によって構成されたシーラント層をタイヤの内周面に形成することが可能となる。シーラント層は、シーラント材が積層されて形成されてもよいが、シーラント材1層からなることが好ましい。
【0074】
シーラント材が、略紐状形状であると、シーラント材を連続的にらせん状にタイヤの内周面に塗布することにより、シーラント材1層からなるシーラント層を形成できる。シーラント材が、略紐状形状であると、塗布されるシーラント材にある程度の厚さがあるため、シーラント材1層からなるシーラント層であっても、タイヤのユニフォミティーの悪化を防止でき、重量バランスに優れると共に、良好なシール性を有するシーラントタイヤを製造できる。また、シーラント材を何層も積層することなく、1層塗布するだけでよいため、より生産性よくシーラントタイヤを製造できる。
【0075】
シーラント材をタイヤの内周面に巻き付ける回数は、タイヤのユニフォミティーの悪化を防止でき、重量バランスに優れると共に、良好なシール性を有するシーラントタイヤをより生産性よく製造できるという理由から、好ましくは20〜70回、より好ましくは20〜60回、更に好ましくは35〜50回である。ここで、巻き付ける回数が2回とは、タイヤ内周面を2周するようにシーラント材が塗布されていることを意味し、
図4において、シーラント材を巻き付ける回数は、6回である。
【0076】
連続混練機(特に、二軸混練押出機)を使用する事により、シーラント材の調製(混練)とシーラント材の吐出(塗布)を同時に連続的に行うことができ、高粘度で粘着性が高く取り扱いが難しいシーラント材をハンドリングすることなく直接タイヤの内周面に塗布でき、生産性良くシーラントタイヤを製造できる。また、バッチ式混練装置で硬化剤も含めて混練し、シーラント材を調製した場合、シーラント材の調製からタイヤに貼り付けるまでの時間が一定とならないが、有機過酸化物を含む原料を連続混練機(特に、二軸混練押出機)により混合することにより順次調製されるシーラント材を順次タイヤの内周面に塗布することにより、シーラント材の調製からタイヤに貼り付けるまでの時間が一定となるため、ノズルを使用してシーラント材を塗布する場合には、ノズルからのシーラント材の吐出量が安定し、更には、シーラント材のタイヤへの粘着性の低下を抑制しつつ一定の粘着性となり、高粘度で粘着性が高く取り扱いが難しいシーラント材を使用しても精度良くタイヤの内周面に塗布でき、安定的に一定の品質のシーラントタイヤを製造できる。
【0077】
次に、以下において、
図10を用いてタイヤ駆動装置について説明する。なお、
図10において、X方向がタイヤの幅方向(軸方向)、Y方向が
図10に示すタイヤ断面におけるタイヤの周方向、Z方向がタイヤの半径方向(昇降方向)である。
【0078】
図10に示されているように、タイヤ駆動装置50は、タイヤ10を起立状態で回転可能に保持するタイヤ回転保持機構703と、タイヤ10の上部を押さえるタイヤ上部押さえ機構704と、上記タイヤ回転保持機構703により保持されたタイヤ10を昇降させる昇降機構705と、上記タイヤ回転保持機構703により保持されたタイヤ10をタイヤの幅方向に移動させるタイヤ幅方向移動機構706とを備える。
【0079】
タイヤ駆動装置50は、更に、上記昇降機構705によるタイヤの昇降と、上記タイヤ幅方向移動機構706によるタイヤの幅方向への移動を制御する位置制御装置707と、上記タイヤ回転保持機構703により保持されたタイヤの回転を制御する回転制御装置708とを更に備える。
【0080】
タイヤ回転保持機構703は、2本のローラー等で構成されており、ローラーを回転させることで、タイヤ10を回転軸まわりに回転させながら起立状態で保持することができる。ローラーの回転は、回転制御装置708により制御される。これにより、回転制御装置708は、タイヤ回転保持機構により保持されたタイヤの回転を制御することができる。
【0081】
シーラント材を塗布する際におけるタイヤの回転速度は特に限定されないが、本発明の効果がより好適に得られるという理由から、好ましくは5m/min以上、より好ましくは10m/min以上であり、また、好ましくは30m/min以下、より好ましくは20m/min以下である。5m/min未満である場合及び30m/minを超える場合には、均一な厚さのシーラント材を塗布することが困難となる。
【0082】
タイヤ上部押さえ機構704は、シリンダ等で昇降可能に構成されており、タイヤ上部押さえ機構704がタイヤ10の上部を押さえることで、タイヤ10の回転時の浮き上がりを防止することができる。
【0083】
昇降機構705、タイヤ幅方向移動機構706は、例えば、モーター、ジャッキ、エンコーダー、インバーター等の機構によって実現することができる。
【0084】
昇降機構705により、タイヤ回転保持機構703及びタイヤ上部押さえ機構704のタイヤの半径方向(昇降方法、
図10におけるZ方向)への移動が可能となり、結果として、タイヤ回転保持機構により保持されたタイヤの昇降(
図10におけるZ方向の移動)が可能となる。
【0085】
また、タイヤ幅方向移動機構706により、タイヤ回転保持機構703及びタイヤ上部押さえ機構704のタイヤの幅方向(軸方向、
図10におけるX方向)への移動が可能となり、結果として、タイヤ回転保持機構により保持されたタイヤのタイヤ幅方向への移動(
図10のX方向の移動)が可能となる。
【0086】
昇降機構705及びタイヤ幅方向移動機構706によるタイヤの移動は、位置制御装置707により制御される。
【0087】
本実施形態では、ノズル30の位置が固定された状態で、位置制御装置707が、タイヤ幅方向移動機構706によるタイヤ10の幅方向への移動および昇降機構705によるタイヤ10の半径方向への移動を制御し、回転制御装置708が、タイヤ回転保持機構703により保持されたタイヤ10を回転させる。これにより、タイヤ10は、回転軸まわりに回転しながらタイヤ10の幅方向および/またはタイヤ10の半径方向へ移動するため、位置が固定されたノズル30から連続的に吐出されるシーラント材20がタイヤ10の内周面11に連続的に塗布されることになり、シーラント材20は、連続的にタイヤ10の内周面11にらせん状に貼り付けられることになる。
【0088】
本実施形態では、位置制御装置707が、タイヤ内周面11と、連続混練機の排出口に接続されたノズル30の先端31との距離を一定の範囲(たとえば、0.3mm以上2.5mm以下)に保つようにタイヤ10の移動を制御する。また、本実施形態では、回転制御装置708は、後述する
図12に示すような、タイヤ内周面11に対してタイヤ10の幅方向に複数に予め設定された塗布エリアごとに予め設定されたタイヤの回転速度に従ってタイヤ10を回転させる。この複数の塗布エリアは、後述する
図11(b)に示すように、エリア内でノズル30の先端31(シーラント材を供給する供給口)がX方向(幅方向)およびZ方向(半径方向)に相対的に直線状に移動するという条件下でノズル30の先端31(シーラント材を供給する供給口)とタイヤ内周面11(タイヤ半径方向内側面)との距離が一定の範囲(たとえば、0.3mm以上2.5mm以下)になるように設定される。回転制御装置708は、ノズル30の先端31に対するタイヤ内周面11の周速度が一定になるように、内径が大きい塗布エリアではタイヤ10の回転速度(角速度)を相対的に小さくし、内径が小さい塗布エリアではタイヤ10の回転速度(角速度)を相対的に大きくすることが好ましい。このように、タイヤ10の内周面11とノズル30の先端31との間隔を一定の距離範囲に保ち、かつ、ノズル30に対するタイヤ内周面11の周速度を一定に保つことで、シーラント材の厚さを高精度で均一にすることができる。なお、タイヤ10へのシーラント材の塗布を開始する際、最初の塗布エリアはタイヤ幅方向端部に位置するので内径は小さい。よって、シーラント材の厚さを均一にするためには本来的にはタイヤ10の回転速度(角速度)を大きくすることが好ましい。しかし、塗布の開始の際は、シーラント材が貼り付きにくい場合がある。そこで、回転制御装置708は、最初の塗布エリアについては、最後の塗布エリアと比較して、敢えてタイヤ10の回転速度(角速度)を小さくしてもよい。
【0089】
図11は、タイヤ10の一部を子午線方向に切った断面(タイヤの幅方向及び半径方向を含む平面で切った断面)を示している。通常、タイヤの内周面は、
図11に示すように、幅方向において中央部に位置するタイヤ内周面は略平らであるのに対して、トレッドの中央部からトレッドの端部であるショルダー部に向かうに従って、徐々にタイヤの半径方向内側に向かって高くなっている。
図11(a)の黒丸は、各塗布エリアの端部におけるノズル30の先端31の位置を示しており、
図11(b)の実線はノズル30の先端31が、タイヤ10に対して相対的に、幅方向(X方向)および半径方向(Z方向)に移動することを示している。なお、タイヤの幅方向中央に位置する塗布エリアにおいては、タイヤ内周面11は幅方向に略平らであるため、ノズル30の先端31の半径方向移動距離(昇降量)は0となる場合がある。
【0090】
このように、タイヤの内周面は、平らではなく、湾曲しており、タイヤ内周面11と、連続混練機の排出口に接続されたノズル30の先端31との距離を一定に保つためには、タイヤ内周面の幅方向中央部を塗布する際に比べて、幅方向端部を塗布する際のタイヤの昇降量を多く設定する必要がある。
【0091】
位置制御装置707は、タイヤをタイヤの幅方向の一方側から他方側に向けて移動させることにより、シーラント材一層からなるシーラント層を形成することが好まし。これにより、シーラント材を何層も積層することなく、1層塗布するだけでよいため、より生産性よくシーラントタイヤを製造できる。
【0092】
上述の通りに、位置制御装置707及び回転制御装置708が制御を行うことにより、
シーラント材を高精度に螺旋状に塗布することができ、また、シーラント材を高精度に均一な厚さで塗布することが可能になる。位置制御装置707及び回転制御装置708の詳細な設定、および塗布エリアの設定について、以下に詳述する。なお、本明細書において、ショルダー部に対応するタイヤ内周面とは、タイヤの内周面において、ブレーカーの端部からタイヤの半径方向と平行に外挿した線とタイヤの内周面とが交差する位置を意味する。また、本明細書において、タイヤに複数のブレーカーが設けられている場合、ブレーカーの端部は、複数のブレーカーのうち、最もタイヤ幅方向の長さが長いブレーカーの端部を意味する。
【0093】
(塗布エリアの決定)
塗布エリアは、タイヤ10の内周面11に対して、幅方向(X方向)に複数設定される。各塗布エリアは、幅方向における両端の位置で規定される。塗布エリアの決定のために以下を行う。
<ステップ1>
まず、基準となる、同サイズ、同一種類の加硫済みタイヤについて、
図11に示すような子午線方向に切ったX線断面図が撮影される。
<ステップ2>
次に、子午線方向に切ったX線断面図に基づいて、ショルダー部に対応するタイヤ内周面の一方側(たとえば
図11(a)紙面において左側)を、塗布開始点、すなわち、最初の塗布エリアの幅方向一方側端部に設定する。次に、ショルダー部に対応するタイヤ内周面の一方側から半径方向に所定距離(たとえば0.5mm)離間した位置を、塗布開始時のノズル30の先端31の位置(
図11(a)紙面において最も左側の黒丸)として設定する。この位置は、1番目のノズル先端位置である。なお、1番目のノズル先端位置が座標系の原点となり、n(n≧2)番目以降のノズル先端位置は、原点に対する幅方向(X方向)距離および半径方向(Z方向)距離で表される。
<ステップ3>
次に、X線断面図に基づいて、ショルダー部に対応するタイヤ内周面の他方側(たとえば
図11(a)紙面において右側)を、塗布終了点、すなわち、最後の塗布エリアの幅方向他方側端部に設定する。次に、ショルダー部に対応するタイヤ内周面の他方側から半径方向に所定距離(たとえば2mm)離間した位置を、塗布終了時のノズル30の先端31の位置(
図11(a)紙面において最も右側の黒丸)として設定する。この位置は、最後のノズル先端位置である。
<ステップ4>
次に、タイヤ内周面11とノズル30の先端31との半径方向(Z方向)における距離が所定範囲(たとえば、0.3mm以上2.5mm以下)内にあり、かつ、1番目のノズル先端位置を始点とする最大の線分を算出し、その線分における1番目のノズル先端位置とは反対側の点を2番目のノズル先端位置として設定する。2番目のノズル先端位置に対向するタイヤ内周面11の位置を、最初の塗布エリア(1番目の塗布エリア)の幅方向他方側端部に設定する。この位置は、2番目の塗布エリアの幅方向一方側端部と同義である。
<ステップ5>
次に、タイヤ内周面11とノズル30の先端31との半径方向(Z方向)における距離が所定範囲(たとえば0.3mm以上2.5mm以下)内にあり、かつ、n(n≧2)番目のノズル先端位置を始点とし、最後のノズル先端位置を終点とする線分がひけるかどうか判断する。
<ステップ6>
ステップ5の上記線分をひけない場合には、タイヤ内周面11とノズル30の先端31との半径方向(Z方向)における距離が所定範囲(この範囲は、塗布されるシーラント材の厚さの変動への影響が少ない範囲であり、たとえば0.3mm以上2.5mm以下)内にあり、かつ、n(n≧2)番目のノズル先端位置を始点とする最大の線分を算出し、その線分におけるn番目のノズル先端位置とは反対側の点をn+1番目のノズル先端位置として設定する。n+1番目のノズル先端位置に対向するタイヤ内周面11の位置を、n番目の塗布エリアの幅方向他方側端部に設定する。この位置は、n+1番目の塗布エリアの幅方向一方側端部と同義である。そして、nの値をn+1として、ステップ5へ戻る。
<ステップ7>
ステップ5の上記線分をひける場合には、n番目の塗布エリアが最後の塗布エリアとして設定され、最後の塗布エリアの幅方向他方側端部がn番目の塗布エリアの幅方向他方側端部となる。そして、塗布エリアの設定を終了する。
【0094】
上記のようにして塗布エリアを設定することで、ノズル30の先端31とタイヤ内周面11との半径方向における距離を、シーラント材の厚みに大幅な変動が生じないようにしつつ、塗布エリアの数を最小化することができる。塗布エリアの数が多過ぎるとタイヤ10の回転、前進、昇降の制御回数が増加し、生産性が落ちるが、塗布エリアの数が少な過ぎると、ノズル30の先端31とタイヤ内周面11との半径方向における距離を一定範囲内におさめながらタイヤ10を直線状に移動させることが不可能になり、曲線状に移動させるためにやはり制御回数が増加し、生産性が落ちる。上記の塗布エリアの設定によれば、シーラント材の厚みに大幅な変動を抑制しつつ、生産性の低下も抑制することができる。
【0095】
(タイヤの前進速度(タイヤの幅方向への移動速度)の決定)
前進速度は、次のようにして、塗布エリアごとに設定される。まず、対象となる塗布エリアにおける内径の相加平均と、塗布エリアの幅と、シーラント材の目標塗布厚さ(シーラント層の厚さ)とに基づいて、その塗布エリアにおけるシーラント材の目標塗布体積(シーラント層の体積)を算出する。
対象となる塗布エリアにおけるシーラント材の目標塗布体積=対象となる塗布エリアにおける内径の相加平均×2π×塗布エリアの幅×目標塗布厚さ
ここで、目標塗布厚さとは、シーラント材を塗布する際に目標とするシーラント層の厚さを意味し、塗布エリアにかかわらず一定であることが好ましい。
次に、次式に従って、対象となる塗布エリアにおける塗布時間を算出する。
対象となる塗布エリアにおける塗布時間=対象となる塗布エリアにおけるシーラント材の目標塗布体積×シーラント材の比重÷時間あたりの吐出重量
更に、次式に従って、対象となる塗布エリアにおける前進速度(タイヤの幅方向への移動速度)を算出する。
対象となる塗布エリアにおける前進速度=シーラント材の目標塗布幅(シーラント層の幅)÷対象となる塗布エリアにおける塗布時間
ここで、目標塗布幅とは、シーラント材を塗布する際に目標とするシーラント層の幅を意味し、塗布エリアにかかわらず一定であることが好ましい。
【0096】
(タイヤの回転速度(角速度)の決定)
次に、次式により、らせん1回転(タイヤ1回転)の塗布に要する時間である1回転時間を算出する。
1回転時間=目標塗布幅÷対象となる塗布エリアにおける前進速度
1回転時間より、対象となる塗布エリアにおけるタイヤの回転速度(角速度)が決定される。
対象となる塗布エリアにおけるタイヤの回転速度(角速度)=2π÷1回転時間
なお、ノズル30の先端31に対するタイヤ内周面11の平均周速度は、以下のように算出される。
対象となる塗布エリアにおけるタイヤ内周面11の平均周速度=対象となる塗布エリアにおけるタイヤの回転速度(角速度)×対象となる塗布エリアにおける内径の相加平均
この周速度は、上記のようにして設定されたタイヤの回転速度(角速度が)が内径に反比例する値となっているため、塗布エリアによらずに一定の値となる。
【0097】
(昇降速度の決定)
昇降速度は、塗布エリアごとの前進速度(タイヤの幅方向への移動速度)に基づいて前進する際に、追従する(すなわち、タイヤ内周面11と、ノズル30の先端31との距離を一定に保つ)速度に設定すればよい。たとえば、ある塗布エリアについて、塗布開始時のノズル先端位置と塗布終了時のノズル先端位置との間における前進距離と昇降距離との比が、前進速度と昇降速度との比となり、昇降速度が設定される。
【0098】
以上のようにして設定された、複数の塗布エリアと、ノズル先端位置と、塗布エリアごとの前進速度、回転速度、昇降速度とに基づいて、位置制御装置707及び回転制御装置708により、タイヤの幅方向への移動、タイヤの昇降、タイヤの回転が制御される。
【0099】
本実施形態では、複数の塗布エリアが設定され、塗布エリアごとに前進速度、回転速度、昇降速度が設定されているが、回転速度はタイヤ内面11の周速度(ノズル30の先端31に対するタイヤ内周面11の周速度)が一定になるように設定されているため、シーラント材の厚さを高精度に均一化することができる。しかも、回転速度は前進速度に基づいて設定されているため、高精度にらせん状にシーラント材を塗布することが可能になる。さらに、昇降速度も前進速度に基づいて設定されているため、断続的とならずに連続的に塗布することが可能になり、生産性の低下を抑制することができる。なお、上記のような設定によりシーラント材の貼り付き不良が生じるような場合には、回転速度を遅く設定するなど、微調整すればよい。また、対象となるタイヤが内径変化の少ないものである場合(たとえば全塗布エリアにおける最大内径÷最小内径≦1.3となるような場合)、全ての塗布エリアで前進速度を同一にしてもよい。
【0100】
図12および表1に、塗布エリア設定の一例を示す。
【表1】
ここで、塗布エリアごとの前進距離および昇降距離は、その塗布エリアにおける、塗布開始時のノズル先端位置の座標値(1番目のノズル先端位置を原点とする座標系)と塗布終了時のノズル先端位置の座標値(1番目のノズル先端位置を原点とする座標系)との差として算出される。
【0101】
なお、位置制御装置707及び回転制御装置708の具体的な構成の説明は省略するが、上記で説明した位置制御装置707及び回転制御装置708の制御指針を基に、当業者であれば、位置制御装置707及び回転制御装置708の具体的な構成を適宜設計することが可能である。位置制御装置707及び回転制御装置708は共通する制御装置によって実現されてもよい。
【0102】
ここで、以下において、タイヤの内周面にシーラント材を塗布する方法について説明する。
【0103】
<第1実施形態>
図1は、本発明のシーラントタイヤの製造方法で用いる塗布装置の一例を模式的に示す説明図である。また、
図2は、
図1に示す塗布装置を構成するノズルの先端付近の拡大図である。
【0104】
図1は、タイヤ10の一部を子午線方向に切った断面(タイヤの幅方向及び半径方向を含む平面で切った断面)を示しており、
図2は、タイヤ10の一部をタイヤの周方向及び半径方向を含む平面で切った断面を示している。
図1及び
図2においては、X方向がタイヤの幅方向(軸方向)、Y方向がタイヤの周方向、Z方向がタイヤの半径方向である。
【0105】
タイヤ10は、タイヤを固定して回転させるとともに、タイヤの幅方向及び半径方向に移動させるタイヤ駆動装置50にセットされている。このタイヤ駆動装置により、タイヤの軸周りの回転、タイヤの幅方向の移動及びタイヤの半径方向の移動が独立して可能になっている。
【0106】
ノズル30は、押出機(図示せず)の先端に取り付けられており、タイヤ10の内側に挿入することが可能である。そして、押出機から押し出された粘着性のシーラント材20が、ノズル30の先端31から吐出される。
【0107】
本発明のシーラントタイヤの製造方法では、まず、加硫工程で成形されたタイヤ10をタイヤ駆動装置50にセットし、ノズル30をタイヤ10の内側に挿入する。そして、
図1及び
図2に示すように、タイヤ10を回転させ、かつ、タイヤ10を幅方向に移動させながら、シーラント材20をノズル30から吐出することによってタイヤ10の内周面11に連続的に塗布する。
【0108】
後述するように、シーラント材20は略紐状形状であることが好ましく、より具体的には、シーラント材がタイヤの内周面に塗布された時点で、シーラント材が略紐状形状を保持することが好ましく、この場合、略紐状形状のシーラント材20は、連続的にタイヤ10の内周面11にらせん状に貼り付けられることになる。
【0109】
なお、本発明において、略紐状形状とは、幅よりも長さの方が長く、ある程度の幅及び厚さを有する形状を意味する。略紐状形状のシーラント材が連続的にタイヤの内周面にらせん状に貼り付けられた状態の一例を
図4に模式的に示す。また、
図4のシーラント材をシーラント材の塗布方向(長さ方向)と直交する直線AAで切断した際のシーラント材の断面の一例を
図8に模式的に示す。このように、略紐状形状のシーラント材は、ある程度の幅(
図8中、Wで示される長さ)とある程度の厚さ(
図8中、Dで示される長さ)を有する。なお、ここで、シーラント材の幅とは、塗布後のシーラント材の幅を意味し、シーラント材の厚さとは、塗布後のシーラント材の厚さ、より具体的には、シーラント層の厚さを意味する。
【0110】
略紐状形状のシーラント材は、具体的には、後述する、シーラント材の厚さ(塗布後のシーラント材の厚さ、シーラント層の厚さ、
図8中、Dで示される長さ)の好ましい数値範囲、及びシーラント材の幅(塗布後のシーラント材の幅、
図4中、Wで示される長さ、
図6中、W
0で示される長さ)の好ましい数値範囲を満たすシーラント材、より好ましくは、後述する、シーラント材の厚さと、シーラント材の幅の比率(シーラント材の厚さ/シーラント材の幅)の好ましい数値範囲を満たすシーラント材である。また、後述する、シーラント材の断面積の好ましい数値範囲を満たすシーラント材でもある。
【0111】
図3は、タイヤに対するノズルの位置関係を模式的に示す説明図である。
本発明では、上述の通り、
図3に示すように、ノズル30がタイヤ10に対して(a)〜(d)で示す位置に移動する間、タイヤ10の内周面11とノズル30の先端31との間隔を所定の距離d
0に保ちながらシーラント材を塗布することが好ましい。
【0112】
本発明の効果がより好適に得られるという理由から、間隔d
0は、好ましくは0.3mm以上、より好ましくは1.0mm以上である。0.3mm未満であると、ノズルの先端がタイヤの内周面に近すぎるため、所定の厚さを有するシーラント材を塗布することが困難となる。また、間隔d
0は、好ましくは3.0mm以下、より好ましくは2.0mm以下である。3.0mmを超えると、シーラント材をタイヤにうまく貼り付けられず、製造効率が低下するおそれがある。
ここで、間隔d
0とは、タイヤの内周面とノズルの先端とのタイヤの半径方向の距離である。
【0113】
また、本発明の効果がより好適に得られるという理由から、間隔d
0は、塗布後のシーラント材の厚さの30%以下が好ましく、20%以下がより好ましく、また、塗布後のシーラント材の厚さの5%以上が好ましく、10%以上がより好ましい。
【0114】
シーラント材の厚さ(塗布後のシーラント材の厚さ、シーラント層の厚さ、
図8中、Dで示される長さ)は特に限定されないが、本発明の効果がより好適に得られるという理由から、好ましくは1.0mm以上、より好ましくは1.5mm以上、更に好ましくは2.0mm以上、特に好ましくは2.5mm以上であり、また、好ましくは10mm以下、より好ましくは8.0mm以下、更に好ましくは5.0mm以下である。1.0mm未満であると、タイヤがパンクした際にパンク穴を確実に塞ぐことが困難となる。また、10mmを超えても、パンク穴を塞ぐ効果はあまり変わらず、タイヤの重量が増加してしまうため好ましくない。なお、シーラント材の厚さは、タイヤの回転速度、タイヤの幅方向の移動速度、ノズルの先端とタイヤの内周面との距離等を調整することにより調整することができる。
【0115】
シーラント材の厚さ(塗布後のシーラント材の厚さ、シーラント層の厚さ)は、実質的に一定であることが好ましい。これにより、タイヤのユニフォミティーの悪化をより防止でき、より重量バランスに優れたシーラントタイヤを製造できる。
ここで、本明細書において、厚さが実質的に一定とは、厚さの変動が90〜110%(好ましくは95〜105%、より好ましくは98〜102%、更に好ましくは99〜101%)に収まることを意味する。
【0116】
略紐状形状のシーラント材を使用する際、シーラント材の幅(塗布後のシーラント材の幅、
図4中、Wで示される長さ)は特に限定されないが、本発明の効果がより好適に得られるという理由から、好ましくは0.8mm以上、より好ましくは1.3mm以上、更に好ましくは1.5mm以上である。0.8mm未満であると、シーラント材をタイヤの内周面に巻き付ける回数が多くなり、製造効率が低下するおそれがある。また、シーラント材の幅は、好ましくは18mm以下、より好ましくは13mm以下、更に好ましくは9.0mm以下、特に好ましくは7.0mm以下、最も好ましくは6.0mm以下、より最も好ましくは5.0mm以下である。18mmを超えると、重量アンバランスが発生しやすくなるおそれがある。
【0117】
シーラント材の厚さ(塗布後のシーラント材の厚さ、シーラント層の厚さ、
図8中、Dで示される長さ)と、シーラント材の幅(塗布後のシーラント材の幅、
図4中、Wで示される長さ)の比率(シーラント材の厚さ/シーラント材の幅)は、好ましくは0.6〜1.4、より好ましくは0.7〜1.3、更に好ましくは0.8〜1.2、特に好ましくは0.9〜1.1である。該比率が1.0に近いほど、シーラント材の形状が理想的な略紐状形状となり、シール性の高いシーラントタイヤをより生産性良く製造できる。
【0118】
シーラント材の断面積(塗布後のシーラント材の断面積、
図8では、D×Wで算出される面積)は、本発明の効果がより好適に得られるという理由から、好ましくは0.8mm
2以上、より好ましくは1.95mm
2以上、更に好ましくは3.0mm
2以上、特に好ましくは3.75mm
2以上であり、好ましくは180mm
2以下、より好ましくは104mm
2以下、更に好ましくは45mm
2以下、特に好ましくは35mm
2以下、最も好ましくは25mm
2以下である。
【0119】
シーラント材が貼り付けられている領域の幅(以下、貼り付け領域の幅、シーラント層の幅ともいい、
図4では6×Wで表される長さ、
図6ではW
1+6×W
0で表される長さ)は特に限定されないが、本発明の効果がより好適に得られるという理由から、トレッド接地幅の80%以上が好ましく、90%以上がより好ましく、100%以上が更に好ましく、また、120%以下が好ましく、110%以下がより好ましい。
【0120】
シーラント層の幅は、本発明の効果がより好適に得られるという理由から、タイヤのブレーカー幅(ブレーカーのタイヤ幅方向の長さ)の85〜115%であることが好ましく、95〜105%であることがより好ましい。
なお、本明細書において、タイヤに複数のブレーカーが設けられている場合、ブレーカーのタイヤ幅方向の長さは、複数のブレーカーのうち、最もタイヤ幅方向の長さが長いブレーカーのタイヤ幅方向の長さを意味する。
【0121】
本明細書において、トレッド接地幅は、以下のように定められる。まず、正規リムにリム組みされかつ正規内圧が充填された無負荷の正規状態のタイヤに、正規荷重を負荷してキャンバー角0度で平面に接地させたときの最もタイヤ軸方向外側の接地位置を「接地端」Teと定める。そして、この接地端Te、Te間のタイヤ軸方向の距離をトレッド接地幅TWと定める。特に断りがない場合、タイヤ各部の寸法等は、この正規状態で測定された値である。
【0122】
上記「正規リム」とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めているリムであり、JATMAであれば“標準リム”、TRAであれば“Design Rim”、ETRTOであれば“Measuring Rim”となる。また、上記「正規内圧」とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている空気圧であり、JATMAであれば“最高空気圧”、TRAであれば表“TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES”に記載の最大値、ETRTOであれば“INFLATION PRESSURE”とするが、タイヤが乗用車用である場合には180kPaとする。
【0123】
また、上記「正規荷重」とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている荷重であり、JATMAであれば“最大負荷能力”、TRAであれば表“TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES”に記載の最大値、ETRTOであれば“LOAD CAPACITY”であるが、タイヤが乗用車用の場合には上記荷重の88%に相当する荷重とする。
【0124】
また、タイヤ駆動装置は、タイヤのビード部の幅を広げる手段を有することが好ましい。シーラント材をタイヤに塗布する際に、タイヤのビード部の幅を広げることにより、シーラント材をタイヤに容易に塗布することができる。特に、タイヤをタイヤ駆動装置にセットした後に、タイヤの内周面近傍にノズルを導入する際に、ノズルを平行移動するだけでノズルを導入でき、制御が容易となり、生産性が向上する。
【0125】
タイヤのビード部の幅を広げる手段としては、タイヤのビード部の幅を広げることが可能であれば特に限定されないが、互いに位置の変わらない複数(好ましくは2個)のロールを有する装置2組を用い、それぞれがタイヤ幅方向に動く機構等が挙げられる。該装置をタイヤ開口部両側からタイヤ内に入れてタイヤのビード部の幅を広げればよい。
【0126】
上記製造方法では、二軸混練押出機等で混合され、かつ押出機内での架橋反応の進行が抑制されたシーラント材を、そのままタイヤ内周面に塗布するため、塗布時から架橋反応が始まり、タイヤ内周面への良好な粘着性を有すると共に、架橋反応がより好適に進行し、シール性の高いシーラントタイヤを製造できる。そのため、シーラント材を塗布したシーラントタイヤを更に架橋する必要がなく、良好な生産性が得られる。
【0127】
なお、本発明では、必要に応じて、シーラント材を塗布したシーラントタイヤを更に架橋する架橋工程を行なってもよい。
架橋工程では、シーラントタイヤを加熱することが好ましい。これにより、シーラント材の架橋速度を向上でき、架橋反応をより好適に進行でき、より生産性良くシーラントタイヤを製造できる。加熱方法としては、特に限定されず、公知の方法を採用できるが、オーブンを使用する方法が好適である。架橋工程は、例えば、シーラントタイヤを70℃〜190℃(好ましくは150℃〜190℃)のオーブン内に2〜15分間入れればよい。
なお、塗布直後の流動しやすいシーラント材でも流動を防ぎユニフォミティーを悪化させずに架橋反応を行うことができるという理由から、架橋する際に、タイヤをタイヤ周方向に回転させることが好ましい。回転速度は、好ましくは300〜1000rpmである。具体的には、例えば、オーブンとして回転機構付きオーブンを使用すれば良い。
【0128】
また、架橋工程を別途行わない場合であっても、シーラント材の架橋反応が終了するまでタイヤをタイヤ周方向に回転させることが好ましい。これにより、塗布直後の流動しやすいシーラント材でも流動を防ぎユニフォミティーを悪化させずに架橋反応を行うことができる。回転速度は、架橋工程の場合と同様である。
【0129】
シーラント材の架橋速度を向上させるために、シーラント材を塗布する前に予めタイヤを温めておくことが好ましい。これにより、より生産性良くシーラントタイヤを製造できる。タイヤの予熱温度は、好ましくは40〜100℃、より好ましくは50〜70℃である。タイヤの予熱温度を上記範囲内とすることにより、塗布時から架橋反応が好適に始まり、架橋反応がより好適に進行し、シール性の高いシーラントタイヤを製造できる。また、タイヤの予熱温度を上記範囲内とすることにより、架橋工程を行う必要がなくなるため、生産性良くシーラントタイヤを製造できる。
【0130】
連続混練機(特に、二軸混練押出機)は一般に連続運転を行う。一方、シーラントタイヤを製造する際には、1のタイヤへの塗布が終了するとタイヤを取り替える必要がある。この際に、生産性の低下を抑制しつつ、より品質の高いシーラントタイヤを製造するために、以下の(1)、(2)の方法を採用すればよい。(1)の方法では、品質の低下、(2)の方法では、コストの増大というデメリットがあるため、状況に応じて適宜使い分ければ良い。
(1)連続混練機、全ての供給装置を同時に稼働、停止させることにより、シーラント材のタイヤの内周面への供給を制御する
すなわち、1のタイヤへの塗布が終了すると、連続混練機、全ての供給装置を同時に停止させ、タイヤを交換し(1分以内に交換することが好ましい)、連続混練機、全ての供給装置を同時に稼働させ、タイヤへの塗布を再開すればよい。タイヤの交換を速やかに(好ましくは1分以内に)行うことにより、品質の低下を抑制できる。
(2)連続混練機、全ての供給装置を稼働させたまま、流路を切り替えることにより、シーラント材のタイヤの内周面への供給を制御する
すなわち、連続混練機に、タイヤの内周面に直接フィードするノズルとは別の流路を設けておき、1のタイヤへの塗布が終了すると、タイヤの交換が終了するまで、調製されたシーラント材を別の流路から排出すれば良い。この方法では、連続混練機、全ての供給装置を稼働させたままシーラントタイヤを製造できるため、より品質の高いシーラントタイヤを製造できる。
【0131】
なお、本発明において、上記シーラントタイヤのカーカスに使用されるカーカスコードとしては、特に限定されず、繊維コード、スチールコード等が挙げられる。なかでも、スチールコードが好ましい。とりわけ、JISG3506に規定される硬鋼線材からなるスチールコードが望ましい。シーラントタイヤにおいて、カーカスコードとして、一般的に使用される繊維コードではなく、強度の高いスチールコードを使用することにより、大幅に耐サイドカット性能(縁石への乗り上げ等で生じるタイヤサイド部のカットに対する耐性)を改善することができ、サイド部も含めたタイヤ全体の耐パンク性をより改善することができる。
【0132】
スチールコードの構造としては、特に限定されず、例えば、1×n構成の単撚りスチールコード、k+m構成の層撚りスチールコード、1×n構成の束撚りスチールコード、m×n構成の複撚りスチールコード等があげられる。ここで、1×n構成の単撚りスチールコードとは、n本のフィラメントを撚りあわせて得られる1層の撚りスチールコードのことである。また、k+m構成の層撚りスチールコードとは、撚り方向、撚りピッチの異なる2層構造を持ち、内層にk本のフィラメント、外層にm本のフィラメントを有するスチールコードのことである。また、1×n構成の束撚りスチールコードとは、n本のフィラメントを束ねて撚りあわせて得られる束撚りスチールコードのことである。また、m×n構成の複撚りスチールコードとは、n本のフィラメントを下撚りして得られるストランドのm本を撚りあわせて得られる複撚りスチールコードのことである。nは1〜27の整数、kは1〜10の整数、mは1〜3の整数である。
【0133】
スチールコードの撚りピッチは、好ましくは13mm以下、より好ましくは11mm以下であり、また、好ましくは5mm以上、より好ましくは7mm以上である。
【0134】
スチールコードには、螺旋状に型付けされた型付フィラメントが少なくとも1本含まれることが好ましい。このような型付フィラメントは、スチールコードに比較的大きな隙間を設けてゴム浸透性を向上しうるとともに、低荷重時の伸びを維持でき、加硫成形時の成形不良の発生を防ぎうる。
【0135】
スチールコードの表面は、ゴム組成物に対する初期接着性を向上させるため、黄銅(真鍮)、Zn等でメッキすることが好ましい。
【0136】
スチールコードは、50N負荷時の伸びが、0.5〜1.5%であるのが好ましい。なお、前記50N負荷時の伸びが1.5%を超えると、高荷重時において補強コードの伸びが小さくなり、外乱吸収性を維持できなくなるおそれがある。逆に、前記50N負荷時の伸びが0.5%未満であると、加硫成形時において十分に伸びることができず、成形不良が生じるおそれがある。このような観点より、前記50N負荷時の伸びは、より好ましくは0.7%以上、また、より好ましくは1.3%以下である。
【0137】
スチールコードのエンズは20〜50(本/5cm)が好ましい。
【0138】
<第2実施形態>
第1実施形態の方法のみでは、シーラント材が略紐状形状の場合に、タイヤの内周面へのシーラント材の貼り付けが難しい場合があり、特に、貼り付け開始部分のシーラント材が剥離しやすいという問題があることが本発明者の検討の結果明らかとなってきた。そこで、上記シーラントタイヤの製造方法において、タイヤの内周面とノズルの先端との間隔を距離d
1にしてシーラント材を貼り付けた後、上記間隔を距離d
1より大きい距離d
2にしてシーラント材を貼り付けることを特徴としている。すなわち、位置制御装置707は、貼り付け開始時において、タイヤの内周面とノズルの先端との間隔を距離d
1に調整し、その後、上記間隔を距離d
1より大きい距離d
2に調整するように昇降機構705及びタイヤ幅方向移動機構706(特に、昇降機構705)を制御すればよい。これにより、貼り付け開始時においてタイヤの内周面とノズルの先端との間隔を近づけることで、貼り付け開始部分に対応するシーラント材の幅を広くすることができ、少なくともトレッド部に対応するタイヤの内周面に、粘着性を有し、かつ略紐状形状のシーラント材が連続的にらせん状に貼り付けられており、シーラント材の長さ方向における端部の少なくとも一方が、長さ方向に隣接する部分よりも幅が広い幅広部であることを特徴とするシーラントタイヤを容易に製造することができる。該シーラントタイヤでは、貼り付け開始部分に対応するシーラント材の幅を広くすることにより、当該部分の接着力を改善し、当該部分におけるシーラント材の剥離を防止することができる。
なお、第2実施形態の説明では、主に第1実施形態と異なる点のみを説明し、第1実施形態と重複する内容については記載を省略する。
【0139】
図5は、
図1に示す塗布装置を構成するノズルの先端付近の拡大図であり、(a)がシーラント材の貼り付け開始直後の状態、(b)が所定時間経過後の状態を示している。
【0140】
図5は、タイヤ10の一部をタイヤの周方向及び半径方向を含む平面で切った断面を示している。
図5においては、X方向がタイヤの幅方向(軸方向)、Y方向がタイヤの周方向、Z方向がタイヤの半径方向である。
【0141】
第2実施形態では、まず、加硫工程で成形されたタイヤ10をタイヤ駆動装置50にセットし、ノズル30をタイヤ10の内側に挿入する。そして、
図1及び
図5に示すように、タイヤ10を回転させ、かつ、タイヤ10を幅方向に移動させながら、シーラント材20をノズル30から吐出することによってタイヤ10の内周面11に連続的に塗布する。
【0142】
シーラント材20は、粘着性を有し、かつ略紐状形状であるため、トレッド部に対応するタイヤ10の内周面11に、連続的にらせん状に貼り付けられることになる。
【0143】
この際、貼り付け開始から所定時間の間は、
図5(a)に示すように、タイヤ10の内周面11とノズル30の先端31との間隔を距離d
1にしてシーラント材20を貼り付ける。そして、所定時間経過後、
図5(b)に示すように、タイヤ10を半径方向に移動させることで上記間隔を距離d
1より大きい距離d
2に変更してシーラント材20を貼り付ける。
【0144】
なお、シーラント材の貼り付けを終了する前に、上記間隔を距離d
2から距離d
1に戻してもよいが、製造効率、タイヤの重量バランスの観点からは、シーラント材の貼り付けを終了するまで距離d
2であることが好ましい。
【0145】
また、貼り付け開始から所定時間の間は上記距離d
1の値を一定に保ち、所定時間経過後は上記距離d
2の値を一定に保つことが好ましいが、d
1<d
2の関係を満たす限り、距離d
1及びd
2の値は必ずしも一定でなくてもよい。
【0146】
上記距離d
1の値は特に限定されないが、本発明の効果がより好適に得られるという理由から、好ましくは0.3mm以上、より好ましくは0.5mm以上である。0.3mm未満であると、ノズルの先端がタイヤの内周面に近すぎるため、シーラント材がノズルに付着しやすくなり、ノズルを掃除する頻度が高くなるおそれがある。また、上記距離d
1の値は、好ましくは2mm以下、より好ましくは1mm以下である。2mmを超えると、幅広部を設ける効果が充分に得られないおそれがある。
【0147】
上記距離d
2の値も特に限定されないが、本発明の効果がより好適に得られるという理由から、好ましくは0.3mm以上、より好ましくは1mm以上であり、また、好ましくは3mm以下、より好ましくは2mm以下である。距離d
2は、上述の調整後の間隔d
0と同一であることが好ましい。
【0148】
なお、本明細書において、タイヤの内周面とノズルの先端との距離d
1、d
2とは、タイヤの内周面とノズルの先端とのタイヤの半径方向の距離である。
【0149】
シーラント材を貼り付ける際におけるタイヤの回転速度は特に限定されないが、本発明の効果がより好適に得られるという理由から、好ましくは5m/min以上、より好ましくは10m/min以上であり、また、好ましくは30m/min以下、より好ましくは20m/min以下である。5m/min未満である場合及び30m/minを超える場合には、均一な厚さのシーラント材を貼り付けることが困難となる。
【0150】
以上の工程により、第2実施形態のシーラントタイヤを製造することができる。
図6は、第2実施形態のシーラントタイヤに貼り付けられているシーラント材の一例を模式的に示す説明図である。
【0151】
略紐状形状のシーラント材20は、タイヤの周方向に巻き付けられており、連続的にらせん状に貼り付けられている。そして、シーラント材20の長さ方向における一方の端部が、長さ方向に隣接する部分よりも幅が広い幅広部21となっている。この幅広部21が、シーラント材の貼り付け開始部分に対応している。
【0152】
シーラント材の幅広部の幅(塗布後のシーラント材の幅広部の幅、
図6中、W
1で示される長さ)は特に限定されないが、本発明の効果がより好適に得られるという理由から、幅広部以外の幅(
図6中、W
0で示される長さ)の103%以上が好ましく、110%以上がより好ましく、120%以上が更に好ましい。103%未満では、幅広部を設ける効果が充分に得られないおそれがある。また、シーラント材の幅広部の幅は、幅広部以外の幅の210%以下が好ましく、180%以下がより好ましく、160%以下が更に好ましい。210%を超えると、幅広部を形成するためにノズルの先端をタイヤの内周面に過度に近づける必要があるため、シーラント材がノズルに付着しやすくなり、ノズルを掃除する頻度が高くなるおそれがある。また、タイヤの重量バランスが崩れるおそれがある。
【0153】
なお、シーラント材の幅広部の幅は、長さ方向において実質的に一定であることが好ましいが、実質的に一定でない箇所があってもよい。例えば、幅広部は、貼り付け開始部分の幅が最も広く、長さ方向につれて幅が狭くなっていく形状であってもよい。ここで、本明細書において、幅が実質的に一定とは、幅の変動が90〜110%(好ましくは97〜103%、より好ましくは98〜102%、更に好ましくは99〜101%)に収まることを意味する。
【0154】
シーラント材の幅広部の長さ(塗布後のシーラント材の幅広部の長さ、
図6中、L
1で示される長さ)は特に限定されないが、本発明の効果がより好適に得られるという理由から、好ましくは650mm未満、より好ましくは500mm未満、更に好ましくは350mm未満、特に好ましくは200mm未満である。650mm以上であると、タイヤの内周面にノズルの先端を近づけている時間が長くなるため、シーラント材がノズルに付着しやすくなり、ノズルを掃除する頻度が高くなるおそれがある。また、タイヤの重量バランスが崩れるおそれがある。なお、シーラント材の幅広部の長さは短いほど好ましいが、タイヤの内周面とノズルの先端との距離を制御することを考慮すると、10mm程度が限界である。
【0155】
シーラント材の幅広部以外の幅(塗布後のシーラント材の幅広部以外の幅、
図6中、W
0で示される長さ)は特に限定されないが、本発明の効果がより好適に得られるという理由から、好ましくは0.8mm以上、より好ましくは1.3mm以上、更に好ましくは1.5mm以上である。0.8mm未満であると、シーラント材をタイヤの内周面に巻き付ける回数が多くなり、製造効率が低下するおそれがある。また、シーラント材の幅広部以外の幅は、好ましくは18mm以下、より好ましくは13mm以下、更に好ましくは9.0mm以下、特に好ましくは7.0mm以下、最も好ましくは6.0mm以下、より最も好ましくは5.0mm以下である。である。18mmを超えると、重量アンバランスが発生しやすくなるおそれがある。W
0は、上述のWと同一であることが好ましい。
【0156】
なお、シーラント材の幅広部以外の幅は、長さ方向において実質的に一定であることが好ましいが、実質的に一定でない箇所があってもよい。
【0157】
シーラント材が貼り付けられている領域の幅(以下、貼り付け領域の幅、シーラント層の幅ともいい、
図6ではW
1+6×W
0で表される長さ)は特に限定されないが、本発明の効果がより好適に得られるという理由から、トレッド接地幅の80%以上が好ましく、90%以上がより好ましく、100%以上が更に好ましく、また、120%以下が好ましく、110%以下がより好ましい。
【0158】
シーラント層の幅は、本発明の効果がより好適に得られるという理由から、タイヤのブレーカー幅(ブレーカーのタイヤ幅方向の長さ)の85〜115%であることが好ましく、95〜105%であることがより好ましい。
【0159】
第2実施形態のシーラントタイヤでは、シーラント材は、幅方向に重ならないように貼り付けられていることが好ましく、隙間なく貼り付けられていることがより好ましい。
【0160】
また、第2実施形態のシーラントタイヤでは、シーラント材の長さ方向におけるもう一方の端部(貼り付け終了部分に対応する端部)も、長さ方向に隣接する部分よりも幅が広い幅広部となっていてもよい。
【0161】
シーラント材の厚さ(塗布後のシーラント材の厚さ、シーラント層の厚さ、
図8中、Dで示される長さ)は特に限定されないが、本発明の効果がより好適に得られるという理由から、好ましくは1.0mm以上、より好ましくは1.5mm以上、更に好ましくは2.0mm以上、特に好ましくは2.5mm以上であり、また、好ましくは10mm以下、より好ましくは8.0mm以下、更に好ましくは5.0mm以下である。1.0mm未満であると、タイヤがパンクした際にパンク穴を確実に塞ぐことが困難となる。また、10mmを超えても、パンク穴を塞ぐ効果はあまり変わらず、タイヤの重量が増加してしまうため好ましくない。
【0162】
シーラント材の厚さ(塗布後のシーラント材の厚さ、シーラント層の厚さ)は、実質的に一定であることが好ましい。これにより、タイヤのユニフォミティーの悪化をより防止でき、より重量バランスに優れたシーラントタイヤを製造できる。
【0163】
シーラント材の厚さ(塗布後のシーラント材の厚さ、シーラント層の厚さ、
図8中、Dで示される長さ)と、シーラント材の幅広部以外の幅(塗布後のシーラント材の幅広部以外の幅、
図6中、W
0で示される長さ)の比率(シーラント材の厚さ/シーラント材の幅広部以外の幅)は、好ましくは0.6〜1.4、より好ましくは0.7〜1.3、更に好ましくは0.8〜1.2、特に好ましくは0.9〜1.1である。該比率が1.0に近いほど、シーラント材の形状が理想的な略紐状形状となり、シール性の高いシーラントタイヤをより生産性良く製造できる。
【0164】
シーラント材の断面積(塗布後のシーラント材の断面積、
図8では、D×Wで算出される面積)は、本発明の効果がより好適に得られるという理由から、好ましくは0.8mm
2以上、より好ましくは1.95mm
2以上、更に好ましくは3.0mm
2以上、特に好ましくは3.75mm
2以上であり、好ましくは180mm
2以下、より好ましくは104mm
2以下、更に好ましくは45mm
2以下、特に好ましくは35mm
2以下、最も好ましくは25mm
2以下である。
【0165】
第2実施形態では、シーラント材の粘度が上記範囲内であっても、特に、粘度が比較的高くても、貼り付け開始部分に対応するシーラント材の幅を広くすることにより、当該部分の接着力を改善し、当該部分におけるシーラント材の剥離を防止することができる。
【0166】
第2実施形態のシーラントタイヤは、上記の製造方法で製造することが好ましいが、シーラント材の少なくとも一方の端部を幅広部とすることができる限り、他の任意適当な製造方法で製造してもよい。